(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の電線が通過する電線ノズルと、前記電線ノズルを経た前記複数の電線を巻き取る巻取ドラムと、を備え、前記複数の電線が撚り合わされたツイスト線を製造するツイスト線製造装置であって、
前記電線ノズルは、
前記複数の電線を回転不能に保持しながら前記巻取ドラムに向けて吐出し、
前記巻取ドラムは、
前記電線ノズルの周りを公転するように移動可能であり且つ前記公転の公転軸に平行な自転軸周りを自転するように回転可能であり、前記公転によって前記複数の電線をひねると共に、前記自転によって前記複数の電線を該巻取ドラムの外周面に巻き付ける、
ツイスト線製造装置。
複数の電線を回転不能に保持する電線ノズルと、前記電線ノズルの周りを公転するように移動可能であり且つ前記公転の公転軸に平行な自転軸周りを自転するように回転可能である巻取ドラムと、を用い、前記複数の電線が撚り合わされたツイスト線を製造するツイスト線製造方法であって、
複数の電線を、前記電線ノズルを通過させた後、前記巻取ドラムに取り付ける工程と、
前記巻取ドラムを公転させて前記複数の電線をひねると共に、前記巻取ドラムを自転させて前記複数の電線を該巻取ドラムの外周面に巻き付ける工程と、
を含む、ツイスト線製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来から、電線を介して伝送される信号が外部から受ける影響(外部磁束によるノイズ)を低減すると共に、その信号が外部へ及ぼす影響(外部への磁束放出)を低減することを目的とし、各種のツイスト線が提案されている。
図7(A)及び
図7(B)に示すように、一般に、ツイスト線Wtは複数の(本例では2本の)電線W1,W2を撚り合わせることによって製造される。
【0003】
例えば、従来のツイスト線製造装置の一つ(以下「従来装置」という。)は、撚り合わせる前の2本の電線を略平行に並べて電線対を形成し、その電線対の一端を回転不能に固定すると共に、その他端を電線対の軸線周りに回転させることにより、ツイスト線を製造するようになっている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照。)。
【0004】
図6は、従来装置と同様の原理によってツイスト線を製造する装置の概略斜視図である。
図6に示される装置100は、2本の電線W1,W2(電線対)を撚り合わせてツイスト線を製造する2つの機構101,102を備えている。この装置100は、ほぼ同じ長さの2本のツイスト線Wtを同時に製造するようになっている。具体的には、機構101,102は、共用のレール100A、各電線対の一端を把持すると共に各電線対の軸線周りに回転可能な回転側チャック100B、回転側チャック100Bを回転させる共用のモータ100C、各電線対の他端を把持すると共に回転不能に固定する固定側チャック100D、固定側チャック100Dを介して各電線対に張力を付与するテンション付与部100E、テンション付与部100Eが固定された共用の支持台100F、及び、これらを支持する基台100G、を備える。
【0005】
図6の装置100は、各電線対に張力を付与した状態にて回転側チャック100Bを回転させることにより、
図7(C)に示すように、電線対を形成する電線W1,W2(図中ではA,B)を互いの位置を入れ替えるように回転させ、電線W1,W2を撚り合わせるようになっている。具体的には、回転側チャック100Bの1回転は
図7(C)の(1)〜(5)の工程に対応し、回転側チャック100Bが2回転することによって
図7(B)のツイスト線Wtが形成されることになる。
【0006】
なお、
図7(B)に示す長さLpは、電線対がその軸線周りに360度回転するためのツイスト線Wtの長さ(換言すると、
図7(C)の(1)〜(5)の工程に対応する長さ)であり、ツイスト線Wtの「ピッチ長」と称呼される。また、
図7(B)に示す長さLtは、ツイスト線Wtの両端の端子部分を除いた電線部分の長さであり、ツイスト線Wtの「全長」(又は単に「長さ」)と称呼される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図6に示す装置100(及び従来装置)は、電線W1,W2同士を適切に撚り合わせる観点から、常に電線対W1,W2を長さ方向に引っ張った状態(引張応力を付与した状態)を維持しながら、回転側チャック100Bを回転させるようになっている。これは、電線W1,W2がたるんだ状態にて回転側チャック100Bを回転させると、ツイスト線のピッチ長Lpが不均一になる等の不具合が生じる可能性があるためである。
【0009】
ところが、電線対W1,W2を長さ方向に引っ張った状態を保つためには、基台100Gの長さを電線W1,W2の長さ(ひいては、最終的なツイスト線の目標長さ)以上とする必要がある。そのため、ツイスト線の目標長さが長くなるにつれて、装置100が大型化する。また、ツイスト線の目標長さの変更に応じて固定側チャック100Dの位置を変更する必要があり、ツイスト線を製造する工程が煩雑化する。
【0010】
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来装置よりも小型化が可能であり、ツイスト線の目標長さが変更されてもツイスト線の製造工程の煩雑化を出来る限り防ぐことが可能な、ツイスト線製造装置及びツイスト線製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するため、本発明に係るツイスト線製造装置は下記(1)〜(4)の特徴を有し、本発明に係るツイスト線製造方法は下記(5)の特徴を有している。
(1)
複数の電線が通過する電線ノズルと、前記電線ノズルを経た前記複数の電線を巻き取る巻取ドラムと、を備え、前記複数の電線が撚り合わされたツイスト線を製造するツイスト線製造装置であって、
前記電線ノズルは、
前記複数の電線を回転不能に保持しながら前記巻取ドラムに向けて吐出し、
前記巻取ドラムは、
前記電線ノズルの周りを公転するように移動可能であり且つ前記公転の公転軸に平行な自転軸周りを自転するように回転可能であり、前記公転によって前記複数の電線をひねると共に、前記自転によって前記複数の電線を該巻取ドラムの外周面に巻き付ける、
ツイスト線製造装置であること。
(2)
上記(1)に記載のツイスト線製造装置において、
前記巻取ドラムが、
前記ツイスト線の目標ピッチ長に基づいて定められた公転1回あたりの自転角度の大きさに従い、前記複数の電線を巻き取る、
ツイスト線製造装置であること。
(3)
上記(1)又は上記(2)に記載のツイスト線製造装置において、
前記巻取ドラムが前記複数の電線を巻き取るとき、
前記巻取ドラム及び前記電線ノズルの少なくとも一方が、前記巻取ドラムの自転軸方向における前記巻取ドラムと前記電線ノズルとの距離を徐々に変化させるように移動する、
ツイスト線製造装置であること。
(4)
上記(1)〜(3)の何れか一つに記載のツイスト線製造装置であって、
前記巻取ドラムを公転させるための第1モータと、
前記巻取ドラムを自転させるための第2モータと、
前記第1モータに対応して回転する筒状の第1軸、前記第1軸に相対回転不能に固定された回転体、及び、前記回転体の回転中心から所定距離だけ離れた位置において前記回転体に相対回転可能に支持された支持体、を含む第1機構と、
前記第2モータに対応して回転する柱状の第2軸であって前記第1軸の中空部分を貫通する第2軸、及び、前記第2軸と前記支持体とを繋ぐと共に前記第2軸の回転を前記支持体に伝達する伝達部、を含む第2機構と、
を備え、
前記巻取ドラムが前記支持体に同軸に取り付けられた、
ツイスト線製造装置であること。
(5)
複数の電線を回転不能に保持する電線ノズルと、前記電線ノズルの周りを公転するように移動可能であり且つ前記公転の公転軸に平行な自転軸周りを自転するように回転可能である巻取ドラムと、を用い、前記複数の電線が撚り合わされたツイスト線を製造するツイスト線製造方法であって、
複数の電線を、前記電線ノズルを通過させた後、前記巻取ドラムに取り付ける工程と、
前記巻取ドラムを公転させて前記複数の電線をひねると共に、前記巻取ドラムを自転させて前記複数の電線を該巻取ドラムの外周面に巻き付ける工程と、
を含む、ツイスト線製造方法であること。
【0012】
上記(1)の構成のツイスト線製造装置によれば、電線ノズルから巻取ドラムに向けて吐出された複数の電線(例えば、電線が2本の場合は電線対)は、電線ノズル側の端部が電線ノズルによって回転不能に保持され、巻取ドラム側の端部が巻取ドラムの公転に伴って回転(公転軸から離れた軌道上を移動する偏心旋回)することになる。換言すると、巻取ドラムの公転により、従来装置と同様、複数の電線がひねられることになる(例えば、
図4を参照。)。更に、このようにひねられた複数の電線は、巻取ドラムの自転によって巻取ドラムに巻き取られる。その結果、ツイスト線の目標長さに応じて巻取ドラムの公転および自転の回数を増減すれば、装置を肥大化させることなく、任意の目標長さに対応できることになる。したがって、本ツイスト線製造装置は、従来装置よりも小型化が可能であり、ツイスト線の目標長さが変更されてもツイスト線の製造工程の煩雑化を出来る限り防止できる。
【0013】
上記(2)の構成のツイスト線製造装置によれば、巻取ドラムの公転1回あたりの自転角度の大きさを目標ピッチ長に基づいて設定することにより、任意のピッチ長を有するツイスト線を製造できる。
【0014】
上記(3)の構成のツイスト線製造装置によれば、巻取ドラムの自転軸方向における巻取ドラムと電線ノズルとの距離が変化しながら(例えば、電線ノズルが静止し、巻取ドラムがその自転軸上をスライドするように移動しながら)複数の電線が巻取ドラムに巻き取られる。これにより、巻取ドラムの外周面上において、複数の電線が重なることが防がれる。その結果、最終的に巻取ドラムに巻き付けられた複数の電線が巻取ドラムから取り外されるとき、電線の絡み等を出来る限り防止できる。
【0015】
なお、電線ノズルと巻取ドラムとは上述したように相対移動すればよく、いずれか一方が静止し且つ他方が移動してもよく、双方が移動してもよい。また、電線ノズルと巻取ドラムとは、離れるように移動してもよく、近付くように移動してもよい。
【0016】
上記(4)の構成のツイスト線製造装置によれば、第1モータが作動すると、第1軸が回転すると共に回転体が回転する。その結果、回転体の偏心位置に取り付けられた支持体および巻取ドラムが、第1軸を中心に回転(即ち、公転)する。一方、第2モータが作動すると、第2軸が回転すると共に伝達部がその回転を支持体に伝達する。その結果、支持体に取り付けられた巻取ドラムが、支持体と共に回転(即ち、自転)する。即ち、第1機構は巻取ドラムの公転機構であり、第2機構は巻取ドラムの自転機構である。よって、本ツイスト線製造装置は、巻取ドラムの公転と自転とを互いに独立して行うことができる。
【0017】
上記(5)の構成のツイスト線製造方法によれば、上記(1)と同様、ツイスト線の目標長さに応じて巻取ドラムの公転および自転の回数を増減することにより、任意の目標長さに対応できる。したがって、本ツイスト線製造方法によれば、製造装置を従来装置よりも小型化させることが可能であり、ツイスト線の目標長さが変更されてもツイスト線の製造工程の煩雑化を出来る限り防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のツイスト線製造装置およびツイスト線製造方法によれば、従来装置よりも装置の小型化が可能であり、ツイスト線の目標長さが変更されてもツイスト線の製造工程の煩雑化を出来る限り防ぐことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一の実施形態に係るツイスト線製造装置(以下「装置1」という。)を、
図1〜
図5を参照しながら説明する。
【0021】
<主要な構成>
装置1は、
図1及び
図2に示すように、複数の電線を回転不能に保持する電線ノズル2、電線ノズル2の周りを公転するように移動可能であり且つ公転の公転軸に平行な自転軸周りを自転するように回転可能である巻取ドラム3、各部材を支持するフレーム4、電線ノズル2を巻取ドラム3の自転軸方向にスライドさせるガイドロッド5、電線ノズル2が取り付けられる板体6、ガイドロッド5を上記自転軸方向に摺動させるためのスクリューロッド7、スクリューロッド7を回転させるモータ8、ガイドロッド5とスクリューロッド7とを繋ぐアーム9、フレーム4を貫通すると共に相対回転可能に取り付けられた筒状の第1軸10、第1軸10に相対回転不能に固定されたブラケット11、ブラケット11を回転させるためのモータ12、モータ12の駆動力を第1軸10に伝達するプーリ13,14及びベルト15、ブラケット11における巻取ドラム3の設置位置と反対側の位置に取り付けられたカウンタウエイト16、巻取ドラム3を回転(自転)させるためのモータ17、第1軸10の中空部分を貫通すると共に相対回転可能に取り付けられた柱状の第2軸17a、モータ17の駆動力を第2軸17aを介して巻取ドラム3に伝達するプーリ18,19及びベルト20、巻取ドラム3の前端周縁に設けられた電線固定手段21(クリップ等)、並びに、巻取ドラム3の回転軸3S、を備えている。
【0022】
なお、後述するように、モータ12は巻取ドラム3の公転に寄与するモータであり、モータ17は巻取ドラム3の自転に寄与するモータである。以下、便宜上、モータ12を「第1モータ12」と称呼し、モータ17を「第2モータ17」と称呼する。
【0023】
<巻取ドラムの公転機構>
次いで、巻取ドラム3を公転させるための機構について説明する。
図2に示すように、装置1のフレーム4を貫通する第1軸10の前端(図中の右方向の端部)周面にブラケット11の中心部が固定されている。そして、ブラケット11の回転中心(第1軸10)から半径方向に所定距離だけずれた位置(偏心位置)に、巻取ドラム3の回転軸3Sが図示しない軸受を介して支持されている。
【0024】
第1モータ12の駆動軸12aは、第1軸10と平行であり、前端部(図中の右方向の端部)がプーリ13に接続されている。プーリ13は、第1軸10の後端部(図中の左方向の端部)に取り付けられたプーリ14と、ベルト15を介してトルク伝達可能に接続されている。
【0025】
よって、第1モータ12が回転駆動されると、駆動軸12a、プーリ13、ベルト15及びプーリ14を介して第1軸10が回転され、第1軸10に固定されたブラケット11が回転(旋回)する。その結果、ブラケット11の偏心位置に配置された巻取ドラム3が、第1軸10の軸線を中心として公転することになる。このとき、この第1軸10の軸線上に電線ノズル2が配置されているため、巻取ドラム3は電線ノズル2の周りを公転することになる。
【0026】
なお、ブラケット11にカウンタウエイト16が取り付けられているため、第1モータ12の駆動時、ブラケット11が円滑に回転(旋回)する。
【0027】
<巻取ドラムの自転機構>
次いで、巻取ドラム3を自転させるための機構について説明する。
図2に示すように、第2モータ17の第2軸17aは第1軸10の軸孔(中空部分)を貫通し、前端部(図中の右方向の端部)がブラケット11よりも前方(図中の右方向)に存在するようになっている。第2軸17aの前端部は、プーリ18に接続されている。
【0028】
巻取ドラム3の回転軸3Sには、プーリ19が同軸に設けられて(一体的に形成されて)いる。プーリ19は、第2軸17aの後端部(図中の左方向の端部)に取り付けられたプーリ14と、ベルト20を介してトルク伝達可能に接続されている。
【0029】
よって、第2モータ17が回転駆動されると、第2軸17a、プーリ18、ベルト20及びプーリ19を介して回転軸3Sが回転する。その結果、回転軸3Sに取り付けられた巻取ドラム3が、回転軸3Sの軸線を中心として自転することになる。
【0030】
装置1において、巻取ドラム3の公転軸(第1軸10の軸線)と、巻取ドラム3の自転軸(回転軸3S)と、は互いに平行になっている。また、上述したように、巻取ドラム3の公転軸(第1軸10の軸線)上に、電線ノズル2が配置されている。よって、巻取ドラム3は、電線ノズル2の周りを公転するように移動可能であり且つその公転軸に平行な自転軸周りを自転するように回転可能となっている。
【0031】
<電線ノズルのスライド機構>
次いで、電線ノズル2をスライドさせるための機構について説明する。
図2に示すように、フレーム4には、2本のガイドロッド5が前後方向(図中の左右方向)に摺動可能に設けられており、ガイドロッド5の前端部(図中の右方向の端部)には板体6が固定されている。
【0032】
フレーム4には、スクリューロッド7がガイドロッド5と平行に相対回転可能に取り付けられている。スクリューロッド7がモータ8によって回転駆動されると、ナット9aを介してアーム9が前後方向に移動し、アーム9に取り付けられたガイドロッド5がフレーム4に対して前後方向(図中の左右方向)に摺動する。その結果、板体6が前後方向に移動し、電線ノズル2が前後方向(巻取ドラム3の自転軸方向に平行に)にスライドする。
【0033】
<ツイスト線の製造方法>
電線ノズル2は、円柱形状を有しており、前後方向(図中の左右方向)に貫通する2つの電線通路2aを有している(
図1も参照。)。電線通路2aは、互いに分離(独立)しており、複数の(本例においては2本の)電線W1,W2を回転不能に保持しながら巻取ドラム3に向けて吐出するようになっている。以下、便宜上、複数の電線W1,W2を「電線対W1,W2」と称呼する。
【0034】
巻取ドラム3は、円柱形状を有しており、
図3に示すように、その前端周縁に電線固定手段21(本例においてはクリップ)を備えている。電線固定手段21は、電線ノズル2の電線通路2aを経た複数の電線W1,W2の端部を保持(係止)している。具体的には、電線固定手段21(クリップ)の開口先端に各電線の一部を挟むことにより、各電線が固定される。このように巻取ドラム3の前端周縁にて電線対W1,W2を固定することにより、巻取ドラム3に巻き取られた電線対W1,W2を巻取ドラム3から取り外すとき、固定部分(電線固定手段21)が取り外しの障害にならない。
【0035】
以下、装置1を用いてツイスト線を製造するための工程(1)及び(2)、並びに、製造されたツイスト線を装置1から取り外す工程(3)をより詳細に説明する。
【0036】
(1)ピッチ長の設定
上述したように電線ノズル2を通過した電線対W1,W2の端部を巻取ドラム3の電線固定手段21に固定した後、第1モータ12及び第2モータ17の各々を後述する回転数および回転角度にて駆動する。即ち、巻取ドラム3を公転させると共に自転させる。このとき、巻取ドラム3の公転の向きは特に制限されず、巻取ドラム3の自転の向きは電線対W1,W2を巻取り可能な向きに設定する。
【0037】
例えば、巻取ドラム3が1回(360度)公転する間に1回(360度)自転するように第1モータ12及び第2モータ17を駆動すると、
図4に示すように、電線固定手段21と電線ノズル2の出口との間に存在する電線対W1,W2(図中ではA,B)が偏心しながら互いの位置を入れ替えるように回転(偏心旋回)する。これにより、電線対W1,W2に1つのひねりが生じる。別の言い方をすると、このようにひねられた電線対W1,W2から形成されるツイスト線のピッチ長Lp(
図6参照)は、巻取ドラム3の電線固定手段21と電線ノズル2の吐出口との間の距離Lとなる。そして、この処理を繰り返すと(例えば、巻取ドラム3をM回公転させる間にM回自転させると)、長さLの電線対W1,W2にM個のひねりが生じると共に、その電線対W1,W2から形成されるツイスト線のピッチ長LpがL/Mとなる。
【0038】
そこで、ツイスト線のピッチ長Lpの目標値(目標ピッチ長)に対応した回数だけ上述した処理を繰り返すことにより、巻取ドラム3の電線固定手段21と電線ノズル2の吐出口との間に、その目標ピッチ長を有する電線対W1,W2(ツイスト線)を形成できる。なお、この時点では、電線対W1,W2は巻取ドラム3に巻き取られていない。
【0039】
(2)電線の巻き取り
上述したように巻取ドラム3の電線固定手段21と電線ノズル2の吐出口との間に目標ピッチ長を有する電線対W1,W2(ツイスト線)を形成した後、巻取ドラム3を、1回公転させながら、「1回(360度)+目標ピッチ長に相当する回転角度α」だけ自転させる。即ち、この場合、公転1回あたりの巻取ドラム3の自転角度の大きさは、「360+α」度である。これにより、巻取ドラム3の外周面に目標ピッチ長の分だけ電線対W1,W2が巻き取られつつ、電線ノズル2から目標ピッチ長の分だけ新たな電線対W1,W2が引き出され、引き出された新たな電線対W1,W2が1回ひねられる。その結果、巻取ドラム3の電線固定手段21と電線ノズル2の吐出口との間の電線対W1,W2のピッチ長が目標ピッチ長に維持されながら、巻取ドラム3に電線対W1,W2(ツイスト線)が巻き取られることになる。
【0040】
なお、“目標ピッチ長に相当する回転角度α”とは、その回転角度だけ巻取ドラム3を回転したときに電線対W1,W2が目標ピッチ長だけ巻取ドラム3の外周面に巻き取られることになる回転角度である。即ち、巻取ドラム3の断面(円形)の半径がrであり、目標ピッチ長がLptであるとき、「2πr×α/360=Lpt」の関係式を満たす回転角度である。
【0041】
そこで、ツイスト線の全長Ltの目標値(目標長さ)に対応した回数だけ上述した処理を繰り返すことにより、目標ピッチ長を有する電線対W1,W2(ツイスト線)を所望の長さだけ巻取ドラム3に巻き付けることができる。
【0042】
このように、上述した工程(1)及び(2)を経て、目標ピッチ長および目標長さを有するツイスト線が製造される。
【0043】
更に、このとき、巻取ドラム3の外周面を1周する分だけ電線対W1,W2(ツイスト線)が巻き取られる毎に、電線ノズル2を所定量(例えば、ツイスト線の幅)だけ巻取ドラム3に対して平行に移動(スライド)させることにより、巻取ドラム3の外周面上において電線対W1,W2(ツイスト線)が重なることが防がれる。
図5は、このように電線ノズル2を移動させながら(本例では図中の右方向にスライドさせながら)巻取ドラム3に電線対W1,W2(ツイスト線Wt)を多数回巻き付けた状態を示している。
図2と
図5との比較から明らかなように、モータ8の回転により板体6が図中の右方向に移動し、この移動に伴って電線ノズル2が図中の右方向に移動している。
【0044】
なお、本実施形態においては、第1モータ12の駆動力の伝達手段としてプーリ13,14及びベルト15を採用し、第2モータ17の駆動力の伝達手段としてプーリ18,19及びベルト20を採用している。しかし、これらに代えて、歯付きプーリ(歯車)及び歯付きベルトを採用してもよく、歯車列を採用してもよい。これら歯付きの伝達手段を採用することにより、更に精度良く巻取ドラム3を公転および自転させられる。
【0045】
(3)電線の取り外し
巻取ドラム3に目標長さの電線対W1,W2(ツイスト線)を巻き付けた後、電線固定手段21から電線対W1,W2の端部を取り外し、電線対W1,W2の全体を巻取ドラム3から引き抜くことにより、電線対W1,W2(ツイスト線)を装置1から取り外すことができる。なお、巻取ドラム3そのものを着脱自在に形成すれば、巻取ドラム3と電線対W1,W2(ツイスト線)とを一緒に、装置1から取り外すことも可能である。
【0046】
以上が、本発明の一の実施形態に係るツイスト線製造装置1及び同装置1を用いたツイスト線製造方法についての説明である。本実施形態のツイスト線制御装置およびツイスト線製造方法によれば、従来装置よりも装置の小型化が可能であり、ツイスト線の目標長さが変更されてもツイスト線の製造工程の煩雑化を出来る限り防ぐことが可能である。
【0047】
なお、上述した装置1では2本の電線W1,W2からツイスト線Wtが形成されている。しかし、本発明のツイスト線製造装置および製造方法は、必ずしも2本の電線からツイスト線Wtを形成する必要はなく、3本以上の電線からツイスト線Wtを形成するように構成されてもよい。
【0048】
ここで、上述した本発明に係るツイスト線製造装置およびツイスト線製造方法の実施形態の特徴を、下記(1)〜(5)に簡潔に纏めて列記する。
(1)
複数の電線が通過する電線ノズル(2)と、前記電線ノズルを経た前記複数の電線(W1,W2)を巻き取る巻取ドラム(3)と、を備え、前記複数の電線が撚り合わされたツイスト線(Wt)を製造するツイスト線製造装置であって、
前記電線ノズルは、
前記複数の電線を回転不能に保持しながら前記巻取ドラムに向けて吐出し、
前記巻取ドラムは、
前記電線ノズルの周りを公転するように移動可能であり且つ前記公転の公転軸(第1軸10)に平行な自転軸(回転軸3S)周りを自転するように回転可能であり、前記公転によって前記複数の電線をひねると共に、前記自転によって前記複数の電線を該巻取ドラムの外周面に巻き付ける、
ツイスト線製造装置。
(2)
上記(1)に記載のツイスト線製造装置において、
前記巻取ドラム(3)が、
前記ツイスト線の目標ピッチ長に基づいて定められた公転1回あたりの自転角度の大きさに従い、前記複数の電線を巻き取る、
ツイスト線製造装置。
(3)
上記(1)又は上記(2)に記載のツイスト線製造装置において、
前記巻取ドラム(3)が前記複数の電線(W1,W2)を巻き取るとき、
前記巻取ドラム及び前記電線ノズル(2)の少なくとも一方が、前記巻取ドラムの自転軸方向における前記巻取ドラムと前記電線ノズルとの距離を徐々に変化させるように移動する、
ツイスト線製造装置。
(4)
上記(1)〜(3)の何れか一つに記載のツイスト線製造装置であって、
前記巻取ドラムを公転させるための第1モータ(12)と、
前記巻取ドラムを自転させるための第2モータ(17)と、
前記第1モータに対応して回転する筒状の第1軸(10)、前記第1軸に相対回転不能に固定された回転体(ブラケット11)、及び、前記回転体の回転中心から所定距離だけ離れた位置において前記回転体に相対回転可能に支持された支持体(回転軸3S)、を含む第1機構と、
前記第2モータに対応して回転する柱状の第2軸(17a)であって前記第1軸の中空部分を貫通する第2軸、及び、前記第2軸と前記支持体とを繋ぐと共に前記第2軸の回転を前記支持体に伝達する伝達部(プーリ18,19及びベルト20)、を含む第2機構と、
を備え、
前記巻取ドラム(3)が、前記支持体(3S)に同軸に取り付けられた、
ツイスト線製造装置。
(5)
複数の電線(W1,W2)を回転不能に保持する電線ノズル(2)と、前記電線ノズルの周りを公転するように移動可能であり且つ前記公転の公転軸に平行な自転軸周りを自転するように回転可能である巻取ドラム(3)と、を用い、前記複数の電線が撚り合わされたツイスト線(Wt)を製造するツイスト線製造方法であって、
複数の電線を、前記電線ノズルを通過させた後、前記巻取ドラムに取り付ける工程と、
前記巻取ドラムを公転させて前記複数の電線をひねると共に、前記巻取ドラムを自転させて前記複数の電線を該巻取ドラムの外周面に巻き付ける工程と、
を含む、ツイスト線製造方法。
【0049】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
【0050】
本出願は、2014年6月13日出願の日本特許出願(特願2014−122654)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。