(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の方法において、前記水溶性及び/または水膨潤性材料粒子、並びに前記実質的に非水溶性のポリマー粒子の前記メジアン粒子サイズが、1μm〜20μmの範囲にあるように独立に選択されるものである、方法。
請求項1記載の方法において、前記水溶性及び/または水膨潤性被覆用材料粒子が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ−(エチレンオキシド)、ポリメタクリレート、ラクトース、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを有する親水性ポリマー粒子である、方法。
請求項1記載の方法において、前記実質的に非水溶性のポリマー粒子が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、カルナウバワックス、キャスターワックス、ポリアミドワックス、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを有するものである、方法。
請求項1記載の方法において、前記実質的に非水溶性のポリマー粒子の前記メジアン粒子サイズと、前記水溶性及び/または水膨潤性材料粒子の前記メジアン粒子サイズとの間の比が、1:1.5〜1:6の範囲にある、方法。
請求項1記載の方法であって、前記水溶性及び/または水膨潤性材料粒子が、前記混合する工程において、前記コア粒子と、前記実質的に非水溶性の粒子と、水溶性及び/または水膨潤性材料粒子との合計重量の0.1重量%〜25重量%を有するものである、方法。
請求項9記載の方法であって、前記水溶性及び/または水膨潤性材料粒子が、前記混合する工程において、前記コア粒子と、前記実質的に非水溶性の粒子と、水溶性及び/または水膨潤性材料粒子との合計重量の0.5重量%〜20重量%を有するものである、方法。
請求項1記載の方法であって、前記実質的に非水溶性のポリマー粒子が、前記混合する工程において、前記コア粒子と、前記実質的に非水溶性の粒子と、水溶性及び/または水膨潤性材料粒子との合計重量の最大で50重量%を有するものである、方法。
請求項1記載の方法であって、前記実質的に非水溶性のポリマー粒子が、前記混合する工程において、前記コア粒子と、前記実質的に非水溶性の粒子と、水溶性及び/または水膨潤性材料粒子との合計重量の5重量%〜25重量%を有するものである、方法。
請求項1記載の方法において、前記混合する工程における前記水溶性及び/または水膨潤性材料粒子と、前記実質的に非水溶性のポリマー粒子との間の粒子数比が、1:10〜1:100の範囲にある、方法。
請求項1記載の方法において、前記混合する工程における前記水溶性及び/または水膨潤性材料粒子と、前記実質的に非水溶性のポリマー粒子との間の粒子数比が、1:20〜1:80の範囲にある、方法。
請求項1記載の方法であって、さらに、前記混合する工程の前に、前記水溶性及び/または水膨潤性材料粒子を、100nm以下のメジアン粒子サイズを有する疎水性シリカで乾燥被覆する工程を有する、方法。
請求項1記載の方法であって、前記水溶性及び/または水膨潤性材料粒子が、前記混合する工程において、前記コア粒子及び実質的に非水溶性のポリマー粒子に段階的に加えられるものである、方法。
請求項1記載の方法であって、前記実質的に非水溶性のポリマー粒子が、前記混合する工程において、前記コア粒子並びに水溶性及び/または膨潤性材料粒子に段階的に加えられるものである、方法。
請求項1記載の方法において、前記混合する工程中に媒体粒子が存在し、前記媒体粒子が、ふるい分けによって前記被覆されたコア粒子から分離することができる体積平均メジアン粒子サイズを有する、方法。
請求項1記載の方法において、前記コア粒子はコア粒子の混合物を有し、被覆されたコア粒子の少なくとも1つの分画が、被覆されたコア粒子の少なくとも1つの別の分画からふるい分けによって分離される、方法。
請求項1記載の方法であって、さらに、20nm〜500nmの範囲にあるメジアン粒子サイズを有する疎水性シリカで前記被覆されたコア粒子を乾燥被覆する工程を有する、方法。
請求項1記載の方法において、胃腸管内での溶出を示す米国薬局方の溶出試験において、同じ組成物及びサイズの被覆されていないコア粒子から放出される前記医薬品有効成分の量の少なくとも95%が30分以内に放出される、方法。
請求項1記載の方法において、胃腸管内での溶出を示す米国薬局方の溶出試験において、同じ組成物及びサイズの被覆されていないコア粒子から放出される前記医薬品有効成分の量の少なくとも99%が30分以内に放出される、方法。
請求項1記載の方法において、前記混合する工程、及び前記被覆されたコア粒子上の被覆を、実質的に連続的な膜に、または連続的な膜に変形させるため、前記被覆されたコア粒子を機械的圧力にさらす工程は、同時に実行される、方法。
請求項33記載の方法において、前記混合する工程、及び前記被覆されたコア粒子上の被覆を、実質的に連続的な膜に、または連続的な膜に変形させるため、前記被覆されたコア粒子を機械的圧力にさらす工程は、10〜100の強度数を伴う振動によって実行される、方法。
請求項33記載の方法において、前記混合する工程、及び前記被覆されたコア粒子上の被覆を、実質的に連続的な膜に、または連続的な膜に変形させるため、前記被覆されたコア粒子を機械的圧力にさらす工程は、超音波混合によって実行される、方法。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、流体エネルギーミル(FEM)を用いてポリエチレン(PE)ワックスで被覆されたアスコルビン酸の溶出特性を示す。
【
図2A】
図2Aは、20重量%ポリエチレン(PE)ワックスで被覆されたアスコルビン酸の、 低倍率での走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図2B】
図2Bは、20重量%PEワックスで被覆されたアスコルビン酸の、高倍率でのSEM画像である。
【
図3】
図3は、様々な加工時間を用いてPEワックスで被覆されたアスコルビン酸の溶出特性を示す。
【
図4A】
図4Aは、PEワックスで被覆されたアスコルビン酸のSEM画像である。
【
図4B】
図4Bは、ポリマー層が磨損している、PEワックスで被覆されたアスコルビン酸の、SEM画像である。
【
図5】
図5は、様々な搭載量でPEワックスで被覆されたアスコルビン酸の溶出特性を示す。
【
図6】
図6は、PEワックスで被覆された様々なサイズのアスコルビン酸粒子の溶出効率を示す。
【
図7】
図7は、PEワックスの段階的追加または単回量追加によりPEワックスで被覆された、アスコルビン酸の溶出特性を示す。
【
図8】
図8は、媒体の存在下でPEワックスで被覆された、アスコルビン酸の溶出特性を示す。
【
図9A】
図9Aは、PEワックスで被覆された(媒体無し)粗大アスコルビン酸(362μm)の、低倍率でのSEM画像である。
【
図9B】
図9Bは、PEワックスで被覆された(媒体無し)粗大アスコルビン酸(362μm)の、高倍率でのSEM画像である。
【
図10A】
図10Aは、PEワックスで被覆された(媒体有り)粗大アスコルビン酸(362μm)の、低倍率でのSEM画像である。
【
図10B】
図10Bは、PEワックスで被覆された(媒体有り)粗大アスコルビン酸(362μm)の、高倍率でのSEM画像である。
【
図11A】
図11Aは、PEワックスで被覆された(媒体無し)微細アスコルビン酸(55μm)の、低倍率でのSEM画像である。
【
図11B】
図11Bは、PEワックスで被覆された(媒体無し)微細アスコルビン酸(55μm)の、高倍率でのSEM画像である。
【
図12A】
図12Aは、PEワックスで被覆された(媒体有り)微細アスコルビン酸(55μm)の、低倍率でのSEM画像である。
【
図12B】
図12Bは、PEワックスで被覆された(媒体有り)微細アスコルビン酸(55μm)の、高倍率でのSEM画像である。
【
図13】
図13は、連続的な上部PEポリマー層とともにその下の数層の不連続PEワックスを示す、削り取られた被覆片のSEM画像である。
【
図14】
図14は、媒体の様々な濃度での存在下、PEワックスで被覆された、アスコルビン酸の溶出特性を示す。
【
図15】
図15は、PEワックス及び様々な搭載量でのヒドロキシプロピルセルロース(HPC)で被覆された、アスコルビン酸の溶出特性を示す。
【
図16】
図16は、PEワックス及び様々な搭載量でのヒドロキシプロピルセルロース(HPC)で被覆された、イブプロフェン(87μm)の溶出特性を示す。
【
図17】
図17は、PEワックス及び様々な搭載量でのHPCで被覆された、イブプロフェン(41μm)の溶出特性を示す。
【
図18】
図18は、予混合の追加有り及び無しでPEワックス及びHPCで被覆された、イブプロフェンの溶出特性を示す。
【
図19】
図19は、PEワックス被覆中にエチルセルロースが存在するまたはしない、イブプロフェンの溶出特性を示す。
【
図20】
図20は、PEワックスと混合された、シリカで被覆されたラクトース製剤(100% SACを有するSorbolac 400、300% SACを有するSorbolac400、及び300% SACを有するGranulac230)の溶出特性を示す。
【
図21】
図21は、PEワックス及び様々な搭載量でのHPCで被覆された、アスコルビン酸の溶出特性を示す。
【
図22】
図22は、被覆プロセスにおいて様々な媒体粒子を用いてPEワックスで被覆された、アスコルビン酸の溶出特性を示す。
【
図23】
図23は、PEワックスで被覆された異なるサイズのアスコルビン酸の溶出特性を示す。
【
図24A】
図24Aは、連続的ポリマー層を有するアスコルビン酸粒子の、低倍率でのSEM画像である。
【
図24B】
図24Bは、連続的ポリマー層を有するアスコルビン酸粒子の、高倍率でのSEM画像である。
【
図25A】
図25Aは、不連続ポリマー層を有するアスコルビン酸粒子の、低倍率でのSEM画像である。
【
図25B】
図25Bは、不連続ポリマー層を有するアスコルビン酸粒子の、高倍率でのSEM画像である。
【
図26】
図26は、PEワックスで被覆された異なるサイズのアスコルビン酸の溶出特性を示す。
【
図27】
図27は、PEワックスで被覆されたアスコルビン酸の溶出特性を示す。
【
図28】
図28は、異なるサイズのガラスビーズの存在下、PEワックスで被覆されたアスコルビン酸の溶出特性を示す。
【
図29】
図29は、サイズごとに分画へと分けられた、PEワックスで被覆されたアスコルビン酸の溶出特性を示す。
【
図30】
図30は、PEワックス及び様々な親水性ポリマーで被覆されたアスコルビン酸の溶出特性を示す。
【
図31】
図31は、表9中に列挙される条件で様々なPEワックス搭載量を用いて加工された、425μm−500μm(左上)、150μm−250μm(左中)、及び90μm−125μm(左下)についての積算篩下分布率を示す。対応するサイズ統計はx
10、x
50、x
90(右)、また式(2)−(4)から計算される理論的サイズ増加(右)は破線により示される。
【
図32】
図32は、表9中に列挙される条件で様々なPEワックス搭載量を用いて加工された、45μm−63μm(左上)及び45μm−500μm(左下)についての積算篩下分布率を示す。対応するサイズ統計はx
10、x
50、x
90(右)、また式(2)−(4)から計算される理論的サイズ増加(右)は破線により示される。
【
図33】
図33A−33Dは、(a)23.5重量%PE(SC〜7.4)で被覆された425μm−500μmアスコルビン酸、(b)15.1重量%PE(SC〜4.7)で被覆された425μm−500μmアスコルビン酸、(c)29.9重量%PE(SC〜4.4)で被覆された250μm−500μmアスコルビン酸、(d)26.5重量%PE (SC〜2.0)で被覆された90μm−125μmアスコルビン酸、からのポリマーシェル断面のSEM画像を示す。
【
図34】
図34は、表9中に列挙される条件により様々な量のPEワックスで被覆された、様々なサイズのアスコルビン酸についての被覆厚を示す。被覆厚は、式(2)−(4)及び変形因子から導出される。点はx
50に対する被覆厚に対応し、上バーはx
90に対応し、また下バーはx
10に対応する。
【
図35】
図35は、表9中に列挙される条件で様々なPEワックス搭載量を用いて加工された、425μm−500μm(左上)、150μm−250μm(左中)、及び90μm−125μm(左下)の放出特性を示す。点により表される実験データ、及び溶出モデルである。自己相似性を表す、t
50により標準化された放出特性は、右に与えられる。
【
図36】
図36は、表9中に列挙される条件で様々なPEワックス搭載量を用いて加工された、45μm−63μm(左上)及び45μm−500μm(左下)の放出特性を示す。点により表される実験データ、及び実線により表される溶出モデルである。自己相似性を表す、t
50により標準化された放出特性は、右に与えられる。
【
図37】
図37は、様々な加工時間をかけて25重量%PEワックスを用い、100gにてLabRAM中で加工された、様々なサイズのアスコルビン酸についての質量分率密度分布を示す。6μmにおけるピークは、アスコルビン酸表面から取り除かれた未変形PEワックスに対応する。
【
図38】
図38は、25重量%PEワックスを用い、100gにてLabRAM中で加工された、(a)1分、(b)120分、(c)240分、及び(d)300分における、アスコルビン酸粒子サイズ90μm−125μmのSEM画像を示す。
【
図39】
図39は、1分−300分かけて、25重量%PEワックスを用いて、100g(上)、75g(中)、及び55g(下)にてLabRAM中で加工された、様々なサイズのアスコルビン酸粒子についての初期溶出速度を示す。溶出速度の低下は、不連続から連続的な被覆への変換に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好まれる実施形態の詳細な開示
例示的な目的で、本発明の原理は様々な代表的な実施形態に言及することにより開示される。本明細書においては本発明の一定の実施形態が特に開示されるが、当業者は、同じ原理が他のシステム及び方法において同等に適用可能でありかつ用いられうることを容易に認識するであろう。開示される本発明の実施形態を具体的に説明する前に、本発明はその適用において、示されるいかなる特定の実施形態の詳細にも限定されないことが理解されるべきである。さらに、本明細書において使用される用語は、開示の目的のためであり、限定の目的のためではない。
【0018】
いくらかの方法は、本明細書において一定の順序で示される工程への言及とともに開示されるが、多くの場合において、これらの工程は当業者により認められうるいかなる順序で実施されてもよい。つまり、従って本新規の方法は、本明細書で開示される工程の特定の段取りに限定されない。さらに、本明細書において開示される数多くの材料及び方法の実施形態のそれぞれは手短かに開示されており、ゆえに、本明細書において開示される材料及び/または方法の各実施形態、選択物、範囲、または他の特徴は、本出願において開示されるいかなる1つまたはそれより多い他の実施形態、選択物、範囲、または他の特徴と組み合わせられうることが理解されるべきである。
【0019】
文脈が明らかに別に規定しない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられる単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数形の参照対象を含むことに留意されなければならない。さらに、用語「a」(または「an」)、「1つまたはそれより多い」、及び「少なくとも1つ」は、本明細書においては互換的に使用されうる。用語「comprising」、「including」、「having」、及び「constructed from」もまた、互換的に使用されうる。
【0020】
本発明は、味マスキングされた医薬製剤を調製するための、無溶媒被覆方法に関する。本発明の無溶媒被覆工程は、液体の可塑剤を使用せずにもまた用いられうる。本無溶媒被覆方法は、APIを有するコア粒子から始まる。被覆用材料は、可溶性の被覆用材料、及び実質的に非水溶性のポリマーを含む。
【0021】
本発明はまた、機械的で乾燥した方法でもある。30μmから2mmの粒子サイズを有するAPIが被覆されうる。本方法は、サイズ範囲の下端の(つまり100μmより小さい)API粒子を被覆するのに特に効果的である。被覆は、あらゆる種類のホストの味マスキング、制御放出、膜被覆、またはそれらのあらゆる組み合わせのために用いられうる。水溶性APIを顆粒化する(これはまた別の標準的手法である)のは難しい可能性があるため、被覆は水溶性APIに対してより魅力的である。APIを含有する微細なまたは流動化するのが難しい粒子(つまり、100ミクロンより小さい直径を有する粒子)の被覆もまた、先の方法を用いるにあたり問題となりうる。
【0022】
本発明は、水溶性及び/または水膨潤性の被覆用材料と、実質的に非水溶性の被覆用材料との組み合わせを使用する。ここで、少なくとも一方は、被覆方法により膜が作製されうるように変形可能である。本発明は、制御放出製剤を得るために被覆用材料のこの組み合わせを使用する。
【0023】
本発明の方法は、無溶媒であってもよく、また好ましくは可塑剤の使用を要さない。本発明の方法の一実施形態においては、より微細なホストの被覆を達成しまた大きい粒子の摩滅を回避または最小化するため、ホスト粒子の二元混合物またはホスト粒子の多分散混合物などの媒体が用いられる。糖またはガラスビーズなどの非ホスト材料である他の媒体もまた、用いられても良い。同被覆方法は、非医薬材料に対してもまた適しているが、本明細書においてはAPIを用いて例示される。
【0024】
本発明の方法の最初の工程において、APIコア粒子は、水溶性及び/または膨潤性被覆用材料粒子と非水溶性ポリマー粒子との組み合わせと混合され、その水溶性及び/または膨潤性粒子が非水溶性で変形可能な連続的ポリマー層内に埋め込まれたAPIコア粒子を生成する。被覆されたAPIコア粒子はそれから、その被覆を連続的な膜へと変形させるため、機械的圧力、高温、またはそれらの組み合わせを受ける。被覆されたAPIコア粒子中のAPIは口腔内で直ちには遊離せず、ゆえに斯くして粒子は味マスキングされうるが、APIは比較的短時間で被覆された医薬製剤から放出される。
【0025】
APIコア粒子は、望ましくない味を有するまたは痺れを引き起こす、医薬品有効成分を有するかもしれない。あらゆる種類のAPIが、本発明の方法によって溶出速度を変更する目的で、被覆されうる。望ましくない味を有するまたは痺れを引き起こすAPIもまた、本発明の方法を用いて味マスキングされうる。本発明の方法において被覆されうる代表的なAPIは、アスコルビン酸、イブプロフェン、メトホルミン、アセトアミノフェン、セチリジン、インデロキサジン、オンダンセトロン、アルテムエーテル、ニフルム酸、ジクロフェナク、勃起不全のための薬物、及び非ステロイド系抗炎症薬を含むがこれに限定されない。
【0026】
コア粒子は、10μmから2000μmの範囲、10μmから1000μmの範囲、40μmから500μmの範囲、30μmから400μmの範囲、または40μmから300μmの範囲にある、体積平均メジアン粒子サイズを有しうる。いくらかの実施形態においては、APIコア粒子は、その範囲の下端に近い体積平均メジアン粒子サイズ、つまり30μmから100μmを有しうる。
【0027】
APIコア粒子は、2つまたはそれより多い医薬品有効成分を、別々の粒子中または同じ粒子中のいずれかに有しうる。これは、2つの薬剤が同じ医薬製剤中に配合されうる併合療法のための強みを提供するかもしれない。APIコア粒子は、APIから形成されてもよく、または他の薬剤的に許容可能な成分とともに配合されたAPIを有してもよい。
【0028】
いくつかの実施形態においては、顕著に異なる粒子サイズを有するAPIコア粒子の組み合わせが用いられうる。例えば、APIコア粒子の一方のサイズが他方のAPIコア粒子のサイズの1−100倍または3−10倍である、2つのAPIコア粒子サイズが用いられてもよい。例えば、APIコア粒子の一方のサイズは、250から1000μm、より好ましくは300μmから500μmの範囲にある体積平均メジアン粒子サイズを有しうる。APIコア粒子の他方のサイズは、20μmから100μmの範囲にある体積平均メジアン粒子サイズを有しうる。
【0029】
いくつかの実施形態においては、類似しないサイズのAPIコア粒子の使用は、類しするサイズを有するAPIコア粒子のみの使用よりも、両サイズのAPIコア粒子上のポリマー被覆に、より優れた味マスキング特性を提供することができる。混合の間の顕著に異なる粒子サイズの使用は、粒子上に連続的な膜被覆を提供することが示されてきた。
【0030】
水溶性及び/または膨潤性材料は粒子形であり、0.5μmから20μmの範囲、または1μmから10μmの範囲にあるメジアン粒子サイズを有する。水膨潤性材料は、水の吸収に際し膨潤する材料であり、また医薬品業界において打錠用に作られる混合物のための添加剤として用いられる典型的な崩壊剤から選択されうる。代表的な水膨潤性材料は、クロスポビドン、クロスカルメロース、及びデンプングリコール酸ナトリウムを含む。そのような材料は、水中で可溶でない場合は、水の吸収に際しその直径が、水にさらされる前の当初の直径の120−600%、より好ましくは200−600%まで増加しうるように膨潤しなければならない。更にもっと膨潤する材料も用いられうるが、そのような高度な膨潤は成功のために必要ではない。
【0031】
水溶性材料は、中性pH及び20℃での水中で少なくとも50mg/mlの溶解度を有する。水溶性材料は、水中で容易に可溶であり、また3−60μg/m
2sの固有溶解速度を有するべきである。60−300μg/m
2sのより高い固有溶解速度を有する水溶性材料もまた用いられうるが、以下により詳しく論じられるように、100−300%の表面被覆率の量で疎水性シリカ層によりまず被覆されるべきである。水溶性材料の例は、スクロースなどの糖、マンニトール及びソルビトールなどのポリオール、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ラクトース、並びにポリ−(エチレンオキシド)(PEO)などの微粒子化が可能な材料と、ポリメタクリレート類(Eudragitブランドのポリマー)と、それらの組み合わせとを含む。親水性ポリマーは、使用されうる特に有用な材料の部類である。
【0032】
混合工程において用いられる水溶性及び/または水膨潤性材料の量は、APIコア粒子及び被覆用材料の合計重量の0.1重量%から25重量%、または0.5重量%から13重量%の範囲にある。
【0033】
水溶性及び/または水膨潤性材料で被覆された粒子は、APIの溶出速度を遅くするために、100%から400%のSACとなるように任意で疎水性シリカで乾燥被覆されてもよい。本選択肢は、APIの味をマスキングするには速く溶解及び/または膨潤しすぎる被覆用材料のために特に有益である。疎水性シリカでの乾燥被覆は、湿潤性には乏しいがそれでも可溶な粒子を生成しうる。
【0034】
乾燥被覆に用いられるシリカ粒子は、疎水性シリカまたは疎水性加工されたシリカを含む。例は、Aerosil R972シリカ(Degussa)、CAB−O−SIL EH−5シリカ(Cabot)、OX−50シリカ(Degussa)、COSMO55(Catalyst & Chemical Ind. Co. Ltd(日本))、P−500疎水性シリカ(Catalyst & Chemical Ind. Co. Ltd(日本))、及びTS5シリカ(Cabot)を含む。いくらかの実施形態においては、1種類より多い種類のシリカが組み合わせで用いられうる。例えば、APIコア粒子を被覆するために、TS5及びAerosil R972が一緒に用いられうる。
【0035】
シリカでの乾燥被覆は、当業者に既知のいかなる適切な装置によって完遂されても良い。適切な装置は、Comil(U3 Quadro Comil of Quadro 米国ペンシルバニア)、LabRAM(Resodyne 米国ミネソタ)、Magnetically Assisted Impact Coater(MAIC、Aveka 米国ミネソタ)、及びFluid Energy Mill(FEM、Qualification Micronizer of Sturtevant 米国マサチューセツ)を含むがこれに限定されない。FEMは粒子を同時に粉砕しかつ乾燥被覆することができ、当初の粒子サイズと等しい、またはより小さい粒子が望ましい場合は当初の粒子サイズの50%より小さい、粒子サイズを達成する。粒子の乾燥被覆は、そのような装置を使用して、比較的短時間で完遂されうる。例えば100gの被覆されたAPIコア粒子は、LabRAMを使用して5から10分で乾燥被覆されうる。
【0036】
非水溶性ポリマーもまた粒子形であり、1μmから20μm、5μmから12μm、または5−6μmの範囲にあるメジアン粒子サイズを有する。非水溶性ポリマーは、機械的圧力、高温、またはそれらの組み合わせの下で変形可能であり、ゆえに20℃での測定下で420MPa以下、または200MPa以下、または100MPa以下のヤング係数を有するように選択される。あるいは、実際に加工に用いられる高温または低温で測定される場合、変形可能性は、20℃での測定下で420MPa以下、または200MPa以下、または100MPa以下のヤング係数と同等であるべきである。ゆえに例えば、変形のために非水溶性ポリマーを軟化させるために高い加工温度が用いられてもよい、あるいは、高温での軟化及び機械的圧力の組み合わせが用いられてもよいと考えられる。
【0037】
非水溶性ポリマーは、容易に変形可能な微粒子化されたポリマーから選択されてもよい。非水溶性ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、カルナウバワックス、キャスターワックス、ポリアミドワックス、及びそれらの組み合わせから構成される群から選択されてもよい。
【0038】
非水溶性層は、0−20×10
−12m
2/sまたはより好ましい5−15×10
−12m
2/sの範囲にある、APIの拡散率を可能にするべきである。被覆は、口腔内の味放出を示す溶出試験において、放出の最初の1分間、あるいはより好ましくは放出の最初の2分間、API放出に顕著な遅延または減少を生じる。その被覆はまた、胃腸管内での溶出を示す米国薬局方の標準的な溶出試験において、30分時点で、被覆されていないAPIコア粒子の放出の少なくとも90%を可能にもする。具体的には、被覆された粒子から成る試験試料からの放出は、最初の60秒間は被覆によりほぼ阻止され、口腔内の味放出を示す溶出試験において薬剤の0.1%より少量が溶出し、より好ましくは、口腔内の味放出を示す溶出試験において薬剤の0.01%より少量が溶出する。また、いくらかの実施形態においては、口腔内の味放出を示す溶出試験において、相当するサイズの被覆されていない薬剤粒子の試験試料からの放出と比較して、120秒時点で、薬剤の約1%より少量が、より好ましくは、0.5%より少量が溶出する。
【0039】
成功した味マスキングは放出が顕著に遅れるまたはほぼ阻止されることで達成されうるが、それは胃腸管内での薬剤放出を害するべきではない。従って被覆は、薬剤放出量が、胃腸管内での溶出を示す米国薬局方の溶出試験において、相当するサイズの被覆されていない薬剤粒子の試験試料から放出されるであろう量の少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは、胃腸管内での溶出を示す米国薬局方の溶出試験において、相当するサイズの被覆されていない薬剤粒子の試験試料から放出されるであろう量の少なくとも99%となるように、最初の5分間をこえて溶出特性に顕著に影響し得ないようなものである。
【0040】
非水溶性ポリマー粒子の数は、水溶性及び/または膨潤性粒子の数よりずっと大きくなければならない。具体的には、シリカを添加剤とはみなさずに、非水溶性粒子の数は、その他すべての被覆用添加剤粒子の数の10−1000倍、あるいはより好ましくは、その他すべての被覆用添加剤粒子の数の20−100倍の範囲でありうる。いくらかの実施形態においては、混合工程の水溶性及び/または膨潤性粒子と非水溶性ポリマー粒子との間の粒子数比は、1:10から1:100の範囲、または1:20から1:80の範囲にある。混合工程において用いられる非水溶性ポリマー粒子の量は、コア粒子及び被覆の合計重量の0重量%から50重量%、10重量%から50重量%、または5重量%から25重量%の範囲にある。
【0041】
混合工程において用いられる、APIコア粒子とAPIコア粒子を被覆するのに使用される粒子との間の粒子数比は、粒子のサイズに基づいて調節されうる。概して言えば、少なくとも90−100%、より好ましくは100−200%の、APIコア粒子の被覆用粒子での表面被覆率が達成されるべきである。APIコア粒子の理論的表面被覆率は、粒子が球形でサイズが均一であると想定し、粒子サイズに基づいて計算されうる。APIコア粒子の理論的表面被覆率100%を達成するために、必要な被覆用粒子量が計算されうる。粒子が異なる形を有するまたは不均一である場合、当業者は計算を調節してもよい。いくらかの実施形態においては、理論的表面被覆率100%から400%を提供するのに十分な過剰の被覆用粒子が用いられてもよく、一定の状況下では、最大1000%までの表面被覆率さえも用いられてよい。理論的表面被覆率は、下記の実施例22において示されるように計算される。
【0042】
水溶性及び/または水膨潤性被覆用粒子、並びに非水溶性ポリマー粒子のメジアン粒子サイズは、お互いがお互いの6倍以内となるように選択されうるが、好ましくは水溶性及び/または水膨潤性被覆用材料粒子サイズがより小さい。一定の実施形態においては、水溶性及び/または膨潤性被覆用材料粒子は、非水溶性ポリマー粒子よりも大きい。非水溶性ポリマー粒子の水溶性及び/または水膨潤性被覆用材料粒子に対するサイズ比は、1:1.5から1:3の範囲にありうる。これは、被覆中のより大きい粒子が被覆から突出するのを防止しうる。水溶性及び/または膨潤性粒子が被覆から突出する場合、水溶性材料が速く溶解しすぎるかもしれないために、不十分な味マスキングまたは制御放出が生じうる。一方、水溶性及び/または膨潤性粒子が非水溶性ポリマーと比較して小さすぎる場合、その粒子はポリマー被覆の表面に十分に近くないかもしれず、ゆえに速く溶解して被覆されたAPIコア粒子からのAPI放出に影響を与えることができないであろう。
【0043】
いくらかの実施形態においては、水溶性及び/または膨潤性材料と、実質的に非水溶性のポリマーとの両者が変形可能なポリマーである。その材料/ポリマーは機械的圧力により連続的な被覆へと変形させられるため、材料/ポリマーの少なくとも一方の変形可能性が本発明の無溶剤被覆のために重要である。一般に、変形可能な材料は、融解温度より低いガラス転移温度Tgを有する。熱可塑性ポリマーは、そのTgより低い温度では硬くなり、Tgより高い温度では柔らかくなる。変形可能なポリマーは、ゴム状で、破断することなく弾性または可塑性変形が可能でありうる。
【0044】
いくらかの実施形態においては、APIコア粒子と被覆用粒子との間の接触を確実により均一にするため、被覆用成分が予混合される。被覆用粒子、つまり水溶性及び/または膨潤性粒子と非水溶性ポリマー粒子との完全な混合物を生成するため、一般には粒子の摩滅なしに、予混合が用いられる。例えば、予混合は、LabRAM超音波混合装置を100Gで1分間、あるいは60RPMで回転する回転ドラムを1時間使用して達成されうる。
【0045】
コア粒子はそれから予混合された被覆用粒子と混合され、あるいは被覆用粒子がコア粒子にバッチごとにもしくは段階的に追加されうる。それから、例えばより激しい混合工程を用いることにより、被覆された粒子に機械的圧力が適用される。混合工程における成分の混合は、被覆用材料をAPI粒子上に十分に分散させて不連続に被覆し、その後APIコア粒子上の不連続被覆を変形させるためである。衝突は、APIコア粒子の表面に付着していない被覆用粒子の付着を促進する。継続する衝突は被覆用粒子を変形させ、これがAPIコア粒子の表面上に実質的に連続的な被覆を形成する。
【0046】
機械的圧力を適用する混合工程は、被覆用材料の特徴、コア粒子のサイズ、及び搭載量に応じて、約1から約40分間の期間、実施されうる。いくらかの場合においては、とくに微細なコア粒子が関与する場合、最大4時間の期間が用いられうる。当業者は、方法の様々な時点において採取された試料のSEM画像を用いて乾燥被覆されたAPI粒子のサイズを監視することにより、混合工程の適切な長さを決定しうる。いくらかの実施形態においては、成分が混合されている間に、被覆用粒子がAPIコア粒子に段階的な方式で加えられうる。ある実施形態においては、被覆用粒子のすべてをAPIコア粒子に一度に加えるのではなく、被覆用粒子が等間隔で3つの等量のバッチに分けて加えられる。被覆用材料の段階的追加は、外側の層だけを変形させるのではなく、各被覆層を個別に変形させることを可能にする。
【0047】
ある実施形態においては、混合は高エネルギー振動により実施される。振動は、振動強度数により記述されうる。ここで、その強度数は混合槽の加速度を9.81m/s
2で割ったものである。本発明には、10−100の間の強度数が適切である。粗大粒子は低い強度数を要し、一方で大きすぎる強度数の使用はAPIに破損を引き起こす。より微細な粒子は、最大100の高い強度数を要する。粒子サイズ/密度とともに振動は衝突エネルギーを決定し、そのエネルギーが十分に高い場合はポリマーを変形させる。衝突エネルギーは、ガラス、ジルコニア、もしくは鋼鉄ビーズなどの密な媒体、またはスクロースなどの粗大な材料を加えることにより増加しうる。これは、100μmより小さい粒子サイズを有するAPIの被覆においてとくに重要である。例えば、その成分が混合槽に配置されてもよく、それから混合槽が振盪される。振盪は粒子を高速で衝突させ、それがAPIコア粒子表面上の被覆用粒子を表面に広がるように変形させ、これにより実質的に連続的な被覆を形成する。高エネルギー振動を提供可能な装置が、本発明においては使用されうる。混合槽の加速度を変化させることにより、望ましい強度数を獲得することができよう。
【0048】
別の実施形態においては、低周波数を用いた超音波混合により混合が行われる。それは、音響圧力波の混合槽への伝播により混合槽に移動させられる高強度の音響エネルギーである。10−100の範囲にある振動強度数は、約60Hzの周波数に対して好適である。超音波混合はバルク流がないという長所を有し、混合は混合容積の至る所でミクロスケールで起こる。典型的な超音波混合装置では、技術設計されたプレート、偏心重錘、及びばねを有する機械的システム中に、振動する機械的駆動体が運動を引き起こす。そのエネルギーはそれから、混合槽において、混合工程の成分へと音響的に移動させられる。本システムは、共振状態で操作されうる。
【0049】
混合のための代表的な装置は、Design Integrated Technology, Inc.のResonantAcoustic(登録商標) mixer、the Sonic Mixer 2Lまたは20L、及び、東京のJapan Unix(登録商標) Companyにより製造されるUni−cyclone mixerのUM 113S、またはより大きいUM 125を含む。例えばLabRAMにおいては、混合工程は、音響圧力波を介して機械的エネルギーを混合工程における成分へ直接移動させる、非常に高効率な方法を提供する。混合される材料の特質及び特徴に混合装置の操作パラメータを適合させることにより、共振が達成される。一般に、APIまたは被覆されるホストの顕著な摩滅なしにポリマー変形が起こるような、適切な強度で十分な衝突数を可能にする、あらゆる装置が用いられうる。
【0050】
装置、操作条件、加工時間、及び被覆されるAPIの多分散度は、(a)被覆が均一でかつ十分に変形し、また(b)その方法がコア粒子の顕著な摩滅を生じないように、当業者により選択されうる。選択される方法においては、非水溶性ポリマーはAPI表面じゅうに分散され、その後、例えば転倒、振動、または、ポリマー変形を生じるのに十分な激突による圧力を提供する適切な混合装置またはミル中における激突により、機械的に変形させられるべきである。圧力は、粒子自身、激突媒体、槽壁、及び/または、羽根もしくは攪拌翼などの混合装置の他の部位の、機械的相互作用から生じうる。適切な機材は、約0.01−10m/sまたは約1−5m/sの相対速度を有する粒子、媒体、または槽の幾何学的形状による激突を生じうる。そのような衝突の速度は、容易には測定されないかもしれないが、コンピュータシミュレーションにより推定されうる。
【0051】
代わりに、加工の効果は、他の様々な方法で、被覆された産物の性能により定量化されうる。混合強度は、ポリマーが変形するように十分高くあるべきだが、ホスト粒子または既に変形しよく広がった被覆層を破損または摩滅するほど過度ではない。摩滅は、粒子サイズ分析装置中で測定される、または、最適な加工時間と比較した長い加工時間での被覆されたAPIの放出の増加により確認される、微粉の存在または増加により決定されうる。より具体的には、被覆された医薬粉末の平均サイズは、当初の被覆されていない粉末と比べおよそ同じまたはより大きいことが予期される。例えば、方法の後の被覆された粒子の平均粒子サイズは、一般に当初の粒子サイズの90%以上あり、またより好ましくは、当初の粒子サイズの95%以上ある。
【0052】
サイズ減少は方法がよく機能していないかもしれないことを示すが、それ自身だけは、非水溶性の被覆用ポリマーが十分に変形しよく広がった、または変形した層が過剰な加工によって損傷していないことを確証はしない。選択された方法または機材の結果、材料がよく被覆されたかどうかの分析は、被覆されていない粉末の溶出とほぼ同等の溶出を30分では達成しつつ、初期にはほぼ溶出が阻止されるという望ましい溶出の特徴を達成する能力を試験する。加工装置により付与される被覆の質は、下記の実施例24−25中に例証される方法などの他の方法によっても評価されうる。まず、実施例24中に例証されるように、粒子サイズの決定におけるRodos/Helosの使用は、被覆がよく変形させられたかどうかを示すことができる。不溶性ポリマーが不連続にまたは緩くしか付着していない場合、そのような測定値は、Rodos装置により及ぼされる分散力によって起こる被覆された粒子の剥離の結果、微粉の存在を示す。一方で、本方法により被覆がよく変形させられた場合は、Rodos/Helos粒子サイズ測定において有意な微粉の存在は検出されない。実施例25に示されるように、被覆された粒子は、その有効表面積を測定するためにもまた分析されうる。不十分な強度及び/または不十分な加工時間を用いて調製された被覆は、不連続であることが予期され、また、適切な強度及び/または加工時間を示すよく変形した被覆よりも、大きい表面積を示すであろう。さらに、加工時間が長過ぎる場合、測定される表面積は適切なレベルから増加することが予期され、これは被覆層の摩滅及び/または損傷を示唆する。
【0053】
いくらかの実施形態においては、混合工程における成分はまた、衝突数または衝突強度を増大するための媒体粒子も有する。本媒体粒子は、無機粒子、ガラスビーズ、セラミックビーズ、ステンレス鋼ビーズなどの金属ビーズ、塩類、糖類、瑪瑙、及びそれらの組み合わせから構成される群から選択されうる。一般に、API密度と比べ等しいまたはより高い密度を有するあらゆる材料が、媒体として用いられうる。媒体のサイズ及び種類は、一般に、過度な摩滅を回避し、かつポリマーを十分に変形させるように選択される。少なくとも約1.6g/mlの密度を有するあらゆる粒子が、用いられうる。
【0054】
いくらかの実施形態においては、媒体粒子の存在が、より優れた味マスキングをもたらしうる、APIコア粒子上の実質的に連続的なポリマー皮膜の形成を向上させる。本媒体粒子は、好ましくはAPIコア粒子とは顕著に異なるメジアン粒子サイズを有し、メジアン粒子サイズの典型的な比は、3:1から25:1、好ましくは3:1から10:1である。媒体粒子またはAPIコア粒子は、本発明のさまざまな実施形態における粒子の大きい方となるように選択されうる。混合工程における成分中のAPIコア粒子数と媒体粒子数との間の比は、1:30から1:300の範囲に、より好ましくは1:50から1:200の範囲にありうる。本成分を混合した後、媒体粒子は、粒子サイズの違いに基づく篩い分けにより、被覆されたAPIコア粒子から分離されてもよい。媒体粒子とAPIコア粒子のサイズ差を用いることは、本分離を効率よくかつ単純にする。加工後の工程においてナノシリカまたは実質的に同等の材料の乾燥被覆により適用される、ナノ被覆は、この分離を容易にする。
【0055】
媒体粒子の使用の代わりに、本方法では2つの異なるAPIコア粒子サイズが用いられてもよい。例えば、300μmから500μmの範囲にある体積平均メジアン粒子サイズを有するAPIコア粒子と、30μmから100μmの範囲にある体積平均メジアン粒子サイズを有するAPIコア粒子との組み合わせが用いられてもよい。両サイズのAPIコア粒子は、同じAPIを有してもよい。被覆された粒子はその後、サイズの違いに基づいて、例えば篩い分けにより、分離されうる。さらに別の実施形態においては、30−500μmの範囲にある粒子を含有するAPI粒子の、多分散したサイズ分布が用いられてもよい。
【0056】
いくらかの実施形態においては、任意で、本発明の方法は、熱処理を用いた硬化工程を使用してもよい。硬化工程は、高温にて行われる。硬化温度Tcは、ポリマーのガラス転移温度Tgまたは軟化温度Tsに依存する。一般に、TcはTgまたはTsより5−40℃高く、好ましくは10−30℃高く、より好ましくは10−20℃高い。硬化時間は一般にTcとTgとの差に応じて半時間から1時間までで変化し、差が大きいほど短い硬化時間を要する。ある実施形態においては、硬化は、被覆されたAPI粒子が断続的にかき混ぜられながら、加熱された空気炉中で行われうる。
【0057】
一定の種類の被覆されたAPIコア粒子は、貯蔵の間、接着及び粘結に見舞われうる。これを防止するため、本発明は、被覆されたAPIコア粒子をシリカで乾燥被覆するさらなる工程を有してもよく、それは口腔内での分散をも補助しうる。そのシリカは、上で開示されたのと同じシリカでもよい。ある実施形態においては、被覆されたAPIコア粒子の流動性を向上させるため、被覆されたAPIコア粒子が、少なくとも100%の表面被覆率を提供するのに十分な量のシリカ粒子と混合される。例えば、1重量%のAerosil R972フュームドシリカなどのシリカ粒子である。0.1から2重量%の範囲にあるシリカ量、または約20から約100%の表面被覆率を提供するのに十分な量が用いられうる。シリカ被覆は、LabRAMを50Gで30秒間使用して、または被覆されたAPIコア粒子をシリカ粒子と単純に混合することにより、適用される。
【0058】
被覆されたAPIコア粒子は、APIの味がマスキングされ、患者によって容易に嚥下または咀嚼されることさえも可能にする。APIは、なおも、被覆されたAPIコア粒子から比較的短時間で放出される。被覆されたAPIコア粒子からのAPIの溶出を評価するには、米国薬局方の溶出試験が用いられうる。その溶出試験は、37℃において、0.4g/Lドデシル硫酸ナトリウム(SDS、粉末を確実に湿潤させるために用いられる)を有するpH7.2のリン酸緩衝溶液培地を用い、50RPMで回転している米国薬局方の装置II(パドル)中で行われる。溶出した医薬品有効成分の比率が、経時的に測定される。被覆されたAPIコア粒子は、米国薬局方の溶出試験での測定で30分またはそれより短い時間で、あるいは米国薬局方の溶出試験での測定で20分またはそれより短い時間で、APIを放出しうる。
【0059】
本発明の方法は、APIコア粒子の表面上に実質的に連続的なポリマー被覆を生成するための、無溶剤の方法である。被覆されたAPIコア粒子は、淀みなくよく流れ、また有効成分のバイオアベイラビリティに顕著に影響することなく、実質的または完全に無味にされうる。被覆されたAPIコア粒子は、概して溶剤ベースの被覆法に付随する、顕著な凝集または長い乾燥時間に見舞われなくてもすむ。さらに、本発明は、粉末流動特質、味マスキング能力、またはバイオアベイラビリティに顕著に影響することなく、加工時間の実質的短縮、及びAPIコア粒子の摩滅の最小化を提供する。流動特質が十分でない場合、上で開示されたナノ−シリカ被覆の適用が、流動特質をさらに向上させるために用いられうる。
【0060】
本発明は、次に、以下の非限定的な実施例によりさらに例証される。
【実施例1】
【0061】
変形可能なポリマーである、粒子サイズ5.5μmを有するポリエチレン(PE)ワックスが、アスコルビン酸を被覆するのに使用された。別に特定されない限り、この同じPEワックスが下記で示されるほかの実施例において使用された。本ポリエチレンワックスは、ヤング係数200MPaを有し、10重量%の搭載量でアスコルビン酸と混合された。その粉末は、流体エネルギーミル(FEM)を使用して、20psi及び30psiの粉砕圧力にて加工された。
図1は、様々な条件下でポリエチレンワックスで被覆されたアスコルビン酸の溶出特性を示す。アスコルビン酸の溶出速度は、20psiの粉砕圧力にてポリエチレンワックスで被覆されると顕著に減少し、30psiではさらに減少した。本実施例は、アスコルビン酸がFEM中で粉砕されるにつれ、ポリエチレンワックスが変形し広がったことを証明する。より高い粉砕圧力は、より大きい粒子速度とより大きい粒子間の衝突力との相関性により、変形方法をさらに容易にした。
図1はまた、粉砕工程後にポリマー被覆を硬化させることは、新たな薬剤表面を生むため、アスコルビン酸の溶出速度を顕著に減少させることも示す。本発明は、本方法の混合及び/または被覆工程の間の新たな薬剤表面の産出を回避するまたは最小化することにより、この問題を解決する。
【実施例2】
【0062】
変形可能なワックスポリマーであるカルナウバワックスが、FEM中でアスコルビン酸を被覆するのに使用された。カルナウバワックスは、15μmのメジアン粒子サイズと、ポリエチレンワックスより低いヤング係数(<200MPa)とを有した。3つの異なる体積平均メジアン粒子サイズ(341μm、192μm、及び93μm)のアスコルビン酸が、3つの異なる圧力(10、20、及び30psi)で10重量%カルナウバワックスと共粉砕された。表1は、被覆の結果を示す。高い粉砕圧力は、高速の粒子衝突を促進し、APIコア粒子表面上にポリマーをよりよく延ばし、かつ被覆された粒子のサイズを減少させた。
【0063】
【表1】
【0064】
ポリマー被覆は、当初の粒子サイズが小さいほど向上することもまた観察された。表1を参照。この結果は、アスコルビン酸粒子の破損の度合い、または表面積の増加(粒子が破損するにつれ、被覆されなければならない新たな表面が露出した)が原因であるとすることはできない。表面積の増加百分率から分かるように、当初の粒子サイズがより小さいほど、実際には、より小さい新たに生じた被覆されるべき表面を要した。
【0065】
粒子被覆の質は2つの要因により影響された。第一の要因は相互作用し衝突している粒子の数、そして第二の要因は当初のコア粒子サイズである。被覆はミル中での粒子衝突により達成されるため、粒子衝突が多いほどより優れた被覆を生じた。予期された通り、より大きいコア粒子ほど、同重量でより小さいサイズを有するコア粒子と比較して、粒子を完全に被覆するのにより少量の被覆用材料を要した。
【実施例3】
【0066】
LabRAMを50Gにて様々な加工時間用いて、体積平均メジアン粒子サイズ344μmを有するアスコルビン酸が、10重量%PEワックス(メジアン粒子サイズ5.5μm)で被覆された。
図3は、加工時間30分において溶出が最低速度に達することを示し、これは最も優れた被覆に対応する(
図4A)。30分を超えて混さらに合することは、溶出速度を増加させた。
図4BのSEM画像は、「過度の加工」または30分を超えた時点での加工は、ポリマー層を磨損させまたは侵食したことを明らかにする。「過度の加工」は、多少の摩滅/破損の結果であるかもしれず、それはより低い混合強度を用いることにより回避されうる。
【実施例4】
【0067】
LabRAMを100Gにて30分間用いて、体積平均メジアン粒子サイズ334μmを有するアスコルビン酸上に、様々な量のPEワックス(メジアン粒子サイズ5.5μm)が塗布された(
図5)。ポリエチレンワックス搭載量が10重量%から25重量%まで増加すると、溶出試験の結果は顕著な改善を示した。PE搭載量を25重量%から50重量%まで増加することによっては、さらなる改善は最小限しか観察されなかった。硬化を用いると更なる被覆の向上(つまり、溶出速度の減少)が達成された。硬化された試料は、1分の時点において、非常に遅い溶出及び最小限量のアスコルビン酸の溶出を示した。
【実施例5】
【0068】
図6に示されるように、様々な粒子サイズを有するアスコルビン酸が、LabRAMを用いてPEワックスで被覆された。広範囲のAPIコア粒子サイズ(23−344μm)について、アスコルビン酸の溶出がPEワックスの表面被覆率により制御されることが観察された。ここで、溶出効率とは、APIがいかに速く溶出したかの度合いである。0%の溶出効率は溶出の完全な阻止に対応し、また100%の溶出効率は即時的な溶出に対応する。
【実施例6】
【0069】
PEワックスが、250μmより大きい体積平均メジアン粒子サイズを有するアスコルビン酸(AA)コア粒子(AA>250)に、段階的な方式で加えられた。各段階において、PEワックスの8.3%がアスコルビン酸粒子に加えられ、続いてLabRAMを40Gにて10分間用いて超音波混合が行われた。本方法は3回繰り返され、合計ポリマー搭載量25%を達成した。段階的に被覆されたアスコルビン酸は、110℃にて20分間硬化された。
図7に示されるように、溶出特性は、段階的方式での被覆は、一度に全てのPEワックスを加える類似した方法と比較して、アスコルビン酸の溶出を顕著に遅くすることを示した。この観察結果は、段階的な被覆用粒子の追加は、バッチごとの追加よりも、味マスキングにより効果的でありうることを示した。段階的追加は、外側層のみではなく、各層の変形を可能にする。これは、段階的追加の各段階において、100%の表面被覆率が加えられるべきであることを示唆する。
図7に示されるように、ポリマー層の硬化は、溶出速度をさらに少し低下させた。
【実施例7】
【0070】
体積平均メジアン粒子サイズ362μmを有するアスコルビン酸が、媒体粒子の存在無しまたは有りで、25重量%PEワックスで被覆された(
図8)。ガラスビーズまたは更なるアスコルビン酸のより小さい粒子(体積平均メジアン粒子サイズ54μm)のいずれかの存在下で被覆された場合、顕著により低いアスコルビン酸溶出速度が観察された。後者の方法は、その方法で使用されたアスコルビン酸粒子の両サイズについて、アスコルビン酸の溶出を最大5分間までほぼ阻止する被覆を生成した。アスコルビン酸粒子とは異なるサイズを有するガラスビーズなどの媒体粒子を用いて被覆が行われた場合もまた、類似の効果が観察された。
【0071】
これらの実験は、API溶出をほぼ阻止する、APIコア粒子上の優れたポリマー被覆を生成した。ポリマー層の物質的特質もまた、媒体粒子の存在により影響を受けた。媒体粒子が存在しなかった場合、粗大アスコルビン酸粒子(
図9A及び9B)または微細アスコルビン酸粒子(
図11A及び11B)のいずれかが、不連続ポリマー層として被覆された。しかしながら、本被覆方法において媒体粒子が使用された場合、粗大アスコルビン酸粒子(
図10A及び10B)及び微細アスコルビン酸粒子(
図12A及び12B)の両者が、連続的なポリマー層として被覆された。連続的ポリマー層とは、下にいくつかの不連続層を有する連続的な上部の層であってもよい(
図13)。
【実施例8】
【0072】
媒体粒子量の被覆方法への効果を例証するため、体積平均メジアン粒子サイズ362μmを有するアスコルビン酸粒子が、体積平均メジアン粒子サイズ55μmを有するアスコルビン酸粒子の存在下、25重量%PEワックスを用いて被覆された。約1:100の粗大粒子対微細粒子の比が、最善の結果を提供した(
図14)。この比は、粒子衝突数と衝突力との間の均衡を意味するかもしれない。
【実施例9】
【0073】
API溶出を短期間阻止する(味マスキング)だけでなく、最大30分のより長い時点においてAPIの最大の放出(バイオアベイラビリティ)をも提供するポリマー被覆を獲得するため、アスコルビン酸粒子を被覆するのに、親水性ポリマーでヒドロキシプロピルセルロース(HPC)が疎水性PEワックスとともに用いられた。体積平均メジアン粒子サイズ372μmを有するアスコルビン酸粒子が、25重量%PEワックス、及びメジアン粒子サイズ13μmを有する様々だがより少量のHPCで被覆された。その結果生じたポリマー層は、連続的なポリマー層中に水溶性HPC及び非水溶性PEの粒子を含有した。
図15は、HPC有りまたは無しの全ての配合組成について、最初の60秒間は溶出速度が同じであったことを示す。しかしながら、60秒間の後は、HPC量が増加するほど溶出速は増加した。本実施例は、HPCが湿潤し溶解するための60秒間の遅延時間の後、溶解したHPCにより露出した表面積によって、溶出速度が増加したことを例証する。本被覆用配合組成は、遅延時間の間はアスコルビン酸の溶出をほぼ完全に阻止し、また5分以内のアスコルビン酸のほぼ完全な溶出を提供することが可能である。
【実施例10】
【0074】
体積平均メジアン粒子サイズ(d
50)87μm(d
10=45μm、d
50=87μm、d
90=177μm)を有するイブプロフェンが、12.5重量%PEワックス(メジアン粒子サイズ5.5μm)で、メジアン粒子サイズ402μmを有する36重量%スクロースの存在下、LabRAM中で100Gにて30分間被覆された。これは、イブプロフェンとスクロースとの間の粒子数比約200に相当する。APIの最大の放出の可能性を提供するため、様々な量のHPC(0重量%、0.5重量%、または2.9重量%)が加えられた。その溶出特性は、
図16に示される。0%HPCを有する製剤は、苦い知覚またま喉焼けのない優れた味マスキングをもたらしたが、2%未満のAPIが2分で溶出した。0.5重量%のHPCが加えられると、被覆されたイブプロフェン粒子は、優れた味マスキングを示し、溶出速度は2分間でAPIの90%が放出されるまでに向上した。2.9重量%のHPCでは、イブプロフェンは最大30秒間のみ味マスキングされ、溶出試験は2分間で100%のAPIが放出されることを示した。
【0075】
12.5重量%PE及び0.5重量%のHPCの配合組成で被覆されたイブプロフェン粒子は、次いで、味マスキングされた医薬品製剤の流動性を向上させるため、1重量%のAerosil R972シリカと混合された。安息角は51.1°から40.2°へと改善し、粉末流動に顕著な改善を確認した。さらに、被覆されたイブプロフェン粒子の溶出特性は、シリカによって影響されなかった。
【0076】
媒体粒子(スクロース)が取り除かれた後、被覆されたイブプロフェンは、63μmの篩を使用して微細及び粗大分画へとさらに分離された。微細及び粗大分画の両者とも完全に無味であることが認められ、これはイブプロフェン粒子が、かなり広範囲のサイズにわたり実際に味マスキングされうることを示した。
【実施例11】
【0077】
幅広いサイズ分布(スパン1.95、d
10=24μm、d
50=70μm、d
90=160μm)を有するイブプロフェン粒子が、PEワックス及びHPC粒子(12.5重量%PE及び0.5重量%のHPC)で被覆された。この実施例は、APIコア粒子のサイズ分布の、本無溶剤被覆方法の味マスキング効率への影響を例証する。実施例10において開示されたのと同じ被覆条件を用いて、PEワックスが段階的方式で加えられた。つまり、イブプロフェン及び媒体粒子に被覆用材料の半分を加え、30分間加工し、それから残り半分の被覆用材料をもう30分の加工のために加える。PEワックスの段階的追加はそのイブプロフェンがよく味マスキングされるのを可能にした。イブプロフェンはそれから、篩い分けにより5つの区分(<38、38−63、63−90、90−125、>125)に分けられた。味試験は、最も微細な分画を除いて、全てのサイズ区分がよく味マスキングされることを示した。
【実施例12】
【0078】
体積平均メジアン粒子サイズ41μmを有するイブプロフェン粒子(ibu−41)が、実施例10と同じ手順により被覆された。イブプロフェンが、31重量%スクロース(d
50=235μm)の存在下、25重量%PEワックス(メジアン粒子サイズ5.5μm)で、LabRAM中で被覆された。これは、イブプロフェンとスクロースとの間の粒子数比約200に相当する。その溶出結果は、
図17に示される。0%HPCを有する配合組成は、苦い味またま喉焼けのない優れた味マスキングをもたらした。しかしながら、溶出は非常に遅く、2分間ではAPI放出は1.5%未満、また3時間では20%未満であった。配合組成に0.5重量%HPCを追加すると、わずかに苦い味、及びわずかだが注目すべき胸焼けを生じた。しかしながら、溶出はなおも遅く不完全で、3時間で60%未満のAPIを放出した。これは、イブプロフェンのサイズがHPCのサイズ(13μm)に近づいていることが原因であるかもしれず、このことがHPCを被覆層に含ませ難くする。HPCは、特にこれらの小さいサイズにおいては、比較的速く溶解するポリマーであることが知られている。さらに、味マスキングと完全な溶出の両方を達成するためには、もう1つ別の種類の添加剤が追加されなければいけないかもしれない。それは、より小さいサイズ(〜5μm)のもの、またはより遅く溶解する特質のもののいずれかである。
【実施例13】
【0079】
LabRAMを100Gにて1分間用いて、HPC粒子がPEワックス粒子と適切な割合で予混合された。これらの予混合された粉末は、それからイブプロフェン粒子及び媒体粒子に加えられた。本被覆方法は、実施例12と同じであった。
図18は、予混合がイブプロフェンの放出を顕著に増加させるために用いられうることを示すが、3時間ではまだ完全な放出は達成されなかった。これは、疎水性PEワックス粒子が親水性HPC粒子のいくらかを覆いうることが原因であるかもしれない。その結果、HPCは、ポリマー被覆層中に、完全な放出を達成するのに必要な十分な穴を生成できなかった。
【0080】
別の親水性ポリマーであるエチルセルロース(d
50=17μmを有するEC)が、被覆方法においてHPCの代わりに使用された。イブプロフェン粒子が、下記表2に開示される濃度で、スクロース媒体粒子(d
50=235μm)の存在下、PEワックスとECとの混合物で被覆された。全ての被覆用配合組成で、ほぼ完全な放出が達成された(
図19)。HPC及びエチルセルロースを用いる被覆用配合組成間の溶出特性における違いは、少なくとも部分的にはサイズの違い(d
50=13μmを有するHPC、及びd
50=17μmを有するEC)が原因であるかもしれない。より大きいEC粒子はワックス粒子(ワックス層は厚さ11μmと予期される)によって容易には覆われることができず、従って完全な放出は達成されなかった。全ての被覆用配合組成がほぼ完全な放出を達成したにも関わらず、最も低いEC搭載量のみがイブプロフェンを十分に味マスキングすることができた。より高いEC搭載量は、唾液が被覆層をより速く浸透することを可能にした。
【0081】
【表2】
【0082】
他の2つの親水性ポリマーである市販のラクトース粉末(Sorbolac 400=8μm、及びGranulac 230=18μm)もまた、イブプロフェン粒子ibu−41(体積平均メジアン粒子サイズ41μm)を被覆するため、PEワックスとともに使用された。ラクトース粒子の湿潤及び溶出を遅くするため、ラクトース粒子はAerosil R972(疎水性シリカ)で前処理された。湿潤性に乏しいが可溶性のラクトース粒子を生成するため、ラクトース粉末は、100%または300%いずれかの表面積被覆率となるようにシリカで前処理された(表3)。ラクトース粉末が湿潤し最終的には水表面より下に沈むことができるかどうかを調べるため、脱イオン水中に少量の被覆されたラクトースを配置することにより、シリカで被覆されたラクトースの湿潤が定性的に評価された。 Aerosil R972 100%SACで前処理されたGranulac 230のみが、表面下に沈むのに十分な湿潤可能性を提供することが観察された。
【0083】
【表3】
【0084】
シリカで被覆されたラクトース(100%SACを有するSorbolac 400、300%SACを有するSorbolac 400、及び300%SACを有するGranulac 230)が、最終ラクトース濃度0.5%を獲得するため、表4に開示される全体系中で、PEワックスと混合された。全ての配合組成がAPIのほぼ完全な放出を達成したが、Sorbolac 400が300%SACでシリカで被覆された配合組成1のみが、よく味マスキングされた(
図20を参照)。
【0085】
【表4】
【実施例14】
【0086】
本発明の超音波混合方法は、APIコア粒子に破損または凝集を引き起こさなかった。イブプロフェン−87(体積平均メジアン粒子サイズ=87μmを有する)及びイブプロフェン−41(体積平均メジアン粒子サイズ=41μmを有する)のサイズ分布が、被覆の前及び後に測定された(表5)。d
10、d
50、及びd
90は粒子サイズの増加を示したが、これはポリマー層の追加が原因であった。これは、API粒子の凝集が観察されなかったSEM画像によって確認される。ここで、イブプロフェン−87のための被覆用配合組成は表6中の配合組成2であった。また、イブプロフェン−41のための被覆用配合組成は表7中の配合組成5である。
【0087】
【表5】
【実施例15】
【0088】
イブプロフェン−87(表6)及びイブプロフェン−41(表7)を被覆するため、様々な配合組成が用いられた。最良の味マスキングがなされた配合組成が必ずしも速いまたは完全な溶出の可能性を与えるとは限らないため、80%のイブプロフェンが放出された時点が評価のための基準として用いられた。さらに、被覆されたAPIコア粒子上へのAerosil R972の流動補助剤としての追加は、媒体粒子(スクロース)とイブプロフェンとが分離される際の容易性もまた増加させることが観察された。ここで、スクロースは被覆方法中に媒体として加えられ、最終製剤の一部ではない。
【0089】
【表6】
【0090】
【表7】
【実施例16】
【0091】
アスコルビン酸粒子(362μm)が、様々な種類の媒体粒子の存在下、LabRAMを用いて25重量%PEワックスで被覆された。全ての媒体濃度は25重量%であった。媒体粒子は、1/8インチのステンレス鋼ビーズ、34μmジャガイモでんぷん粒子、75μmガラスビーズ、55μmアスコルビン酸(AA)粒子を含んだ。重いステンレス鋼玉(1/8インチ)から生じる高強度の衝突は、摩滅及び乏しい溶出をもたらした。光学観察は、362μmアスコルビン酸粒子の深刻な破損を示した。一方で、柔らかいジャガイモでんぷんから生じる低強度の衝突もまた、乏しい被覆をもたらした。75μmガラスビーズではより優れた結果が観察され、これは溶出特性に顕著な減少をもたらした。驚いたことに、55μmアスコルビン酸はさらに遅い溶出をもたらし、ガラスビーズのような潜在的な混入の問題には煩わされなかった。
図22を参照。
【実施例17】
【0092】
粗大アスコルビン酸粒子(体積平均メジアン粒子サイズ362μmを有する)及び微細アスコルビン酸粒子(体積平均メジアン粒子サイズ55μmを有する)が、LabRAMを100Gにて30分間使用して、25%PEワックスで被覆された。被覆された粒子の溶出特性は、粗大及び微細粒子が同時に被覆されると、粗大及び微細粒子が別々に被覆された場合と比較して、より優れた結果が達成されることを示した(
図23)。
【0093】
SEM画像は、媒体の使用は硬化の使用無しに連続的な表面を提供することができ(
図24A−24B)、一方で媒体粒子が加えられなかった場合はポリマー被覆は不連続な層である(
図25A−25B)ことを示す。連続的なポリマー層は溶出速度を顕著に減少させ、味マスキングを向上させた。
【0094】
媒体粒子が使用されなかった場合、高質の被覆を獲得するためには、顕著により高いポリマー搭載量が必要とされた(362μmAAと50%PE、または55μmAAと66%PE)。このレベルのポリマー搭載量は、医薬組成物の総合的な有効性の低下をもたらした。粗大(362μm)及び微細(55μm)粒子のアスコルビン酸が同時に被覆された場合、より低いPE搭載量が溶出時間の同じだけの減少を達成することができる(
図26)。
【実施例18】
【0095】
粗大アスコルビン酸粒子(体積平均メジアン粒子サイズ362μmを有する)及び微細アスコルビン酸粒子(体積平均メジアン粒子サイズ55μmを有する)が、LabRAMを100Gにて30分間使用して、25%PEワックスで被覆された。被覆後、粗大及び微細粒子は篩い分けにより分離され、溶出特性が分画間で比較された(
図27)。微細粒子及び篩い分けされていない粉末は同じ溶出特性を有していたが、一方で粗大粒子は、微細粒子及び篩い分けされていない粉末よりもずっと遅く溶出した。
【実施例19】
【0096】
様々なサイズのガラスビーズの存在下、体積平均メジアン粒子サイズ354μmを有するアスコルビン酸粒子が被覆された。LabRAMを100Gにて1時間使用して、アスコルビン酸粒子が、アスコルビン酸1グラムあたり0.0363gのPEワックスで被覆された。これは、表面被覆の約2倍量と同等である。媒体粒子は、溶出試験の前に篩い分けにより取り除かれた。その結果は、媒体濃度がより高く、媒体粒子サイズがより小さいほど、被覆を顕著に向上させ、またアスコルビン酸の溶出を遅くしたことを示す(
図28)。
【実施例20】
【0097】
イブプロフェン(d
10=24、d
50=70、d
90=170)が、HPC(メジアン粒子サイズ=9μm)とPEワックス(メジアン粒子サイズ=5.5μm)との混合物で、4:96の重量比で被覆された。このポリマー混合物の13%が、食用に適する402μmスクロース媒体粒子の存在下、イブプロフェンの表面上へと塗布された。本ポリマーは単回量で加えられてLabRAMを100Gにて30分間用いて塗布されてもよく、あるいは、ポリマー混合物が2段階(ポリマー6.5%、LabRAMを100Gにて15分間用いて塗布され、次いで他方のポリマー6.5%を加え、LabRAMを100Gにて再び15分間用いて塗布する)で加えられてもよい。
【0098】
単回量で加えられたポリマー混合物で被覆されたイブプロフェンは、不快な味を生じた。その被覆された粉末は、3区分へと篩い分けられた。<45、45−63、63−90であり、その全てが十分に味マスキングされていなかった。一方で、段階的追加を用いてポリマー混合物で被覆されたイブプロフェンは、よく味マスキングされた。その被覆された粉末は、3区分へと篩い分けられた。<45、45−63、63−90であり、最も微細な区分(<45)を除いて、その全てがよく味マスキングされていた。最も微細な粒子を取り除いた後は、被覆されたイブプロフェン粉末は、完全に無味であった。溶出結果は、最も微細な粒子が最も速い初期溶出速度を有することを示した。これが、不快な味をもたらすのであろう。しかしながら、最も微細な粒子も、3時間後に完全には溶出しなかった。<45、45−63、及び63−93のサイズ区分について、85%の放出はそれぞれ、40、18、及び32分で達成された(
図29)。
【実施例21】
【0099】
体積平均メジアン粒子サイズ41μmを有するイブプロフェン粒子が、疎水性ポリマーとしてのPEワックス(メジアン粒子サイズ5.5μm)と、親水性ポリマーとしての様々な異なるポリマーとで、96:4(疎水性:親水性)の搭載量で被覆された。その親水性ポリマー粒子は、HPC(9μm)、EC(17μm)、Aerosil R972で乾燥被覆されたラクトース(8μm)、及びAerosil R972で乾燥被覆されたラクトース(18μm)であった。異なる親水性ポリマーを有する被覆用配合組成は、速い放出をなおも達成しながら、いずれもイブプロフェンを味マスキングすることができた。より大きいサイズを有する親水性ポリマー粒子は、より小さいサイズを有するものよりも、わずかに良い溶出を提供した(
図30)。
【実施例22】
【0100】
加工後の被覆層厚へのポリマー含有量の影響を定めるため、アスコルビン酸の45μm−63μm、90μm−125μm、150μm−250μm、425μm−500μm、及び45μm−500μmの篩区分が、様々な量のPEワックス(0−30重量%)と混合され、表8中の条件に従い加工された。表2の加工条件は最適化されていないが、最終被覆厚へのポリマー含有量の影響を理解するための基本を提供する。ガラスビーズが使用される実験においては、サイズ測定の前にガラスビーズは篩い除かれた。
【0101】
【表8】
【0102】
【表9】
【0103】
0−30重量%で被覆された様々なサイズのアスコルビン酸についての、積算質量分率粒子サイズ分布、及び対応する統計(x
10、x
50、及びx
90)が、
図31−32に示される。レーザー回折により決定されるサイズ分布は、明白な粒子の破損または凝集の特徴は示さない。さらに、x
10、x
50、及びx
90は、全てポリマー含有量に対して線形的に増加し、凝集または微細粒子のより粗大な粒子への粘着がないことをも確認する。粒子サイズが粒子サイズ分析装置の検出上限に接近していたため、アスコルビン酸425μm−500μmに対するサイズ測定には少々のばらつきがある。
【0104】
ポリマー厚を推定するため、表面被覆率の観念が用いられた。推定は、設計の視点から必要なことである。ホストの表面を単一層で覆うのに必要とされる被覆用粒子数は、単純な幾何学から概算されうる。被覆用粒子の断面積は被覆用粒子で層が成されるホストの表面積を占領しなければならないため、アスコルビン酸上に単一層を形成するのに必要とされるPEワックス粒子数は、式(2)により与えられる。
【0105】
【数1】
【0106】
式中、l
AAは立体系のアスコルビン酸粒子の辺長、d
PEは球形であると推測されるPEワックスの直径である。Nは単一層を塗布(つまり、一表面被覆)するための粒子数を与えるため、理論的にはPEワックス及びアスコルビン酸の所与の質量によって構成されうる、層数または表面被覆倍数であるSCは、式(3)により与えられる。
【0107】
【数2】
【0108】
式中、ρ
AA及びρ
PEは、それぞれアスコルビン酸及びPEワックスの粒子密度である。続いて、アスコルビン酸に接着したPEワックスの層数(つまりSC)は、式(4)により与えられる、変形方法後の被覆層厚であるt
coatingに対応する。
【0109】
【数3】
【0110】
式中、f
deformは変形因子であり、激突により促進されるポリマー層の変形/圧縮を考慮するために含められた。変形因子は、この一組の式において唯一の未知数であるため(他のすべては直接的に測定可能)、「フィッティングパラメータ」として用いられた。ポリマー厚を推定する際、PEワックスはまた、サイズがそのメジアンサイズと等しい直径 で単分散するとも仮定された。さらに、SC>1については、ポリマーの一層が別の層上に積み重なるため、被覆用材料は六方最密充填に従うと仮定された。さらに、被覆用粒子に起因する粒子表面積の増加を考慮するため、個々の被覆それぞれが表面に適用される毎にl
AAが更新される。
【0111】
様々なポリマー含有量及びホスト粒子サイズについて、x
10、x
50、及びx
90に対する粒子直径を推定するために式(2)−(4)が用いられ、
図31−32に示される。理論的ポリマー厚は、すべてのサイズについて、粒子直径の増加を非常に良く予測する。45μm−63μmアスコルビン酸を除いて、実験的に測定されたx
10、x
50、及びx
90値は理論値と一致する。これは、質量あたり等分量のPEワックスが存在すると結論付け、また、いずれのサイズ分布もとりわけ広いことはないが、より大きい粒子がより微細な粒子より優先的に、あるいはより微細な粒子がより大きい粒子より優先的に、被覆されるわけではないことを意味する。45μm−63μmアスコルビン酸については、x
10は予期されたより大きく増加し、一方でx
90は予期されたより増加が小さかった。これは、最も微細な粒子がある程度優先的にPEワックスで被覆されたことを意味する。
【0112】
前に述べたように、変形因子は被覆厚を正確に推定するために必要であった。興味深いことに、45μm−63μm、90μm−125μm、150μm−250μm、及び425μm−500μmのアスコルビン酸について、変形因子は非常に類似し、それぞれ0.70、0.60、0.72、及び0.60の値を有し、いずれも顕著な変形/圧縮を示した。加工条件及び粒子サイズに大きい違いがあるため、変形因子のこの一貫性は、ポリマーの特徴であるかもしれず、またその変形可能性(つまり、ヤング係数)に関連するかもしれない。反対に、45μm−500μmアスコルビン酸は変形因子0.9を有した。
【0113】
この表面被覆率ベースの被覆厚の分析においては、PEワックスが連続的な膜へと変形する前に実際に複数の層を形成するかどうかは疑問であるかもしれない。このため、23.5重量%PEワックスで被覆された425μm−500μmアスコルビン酸の試料が、水に溶解させられ、ポリマーシェルのみが残った。そのシェルは二分され、
図33Aに示されるように、SEMにより画像化された。メジアンサイズx
50に基づけばSCは7.5となると予測され、また変形因子に基づけば実際の厚さは29.2μmとなることが予測される。
図33Aは非常に良い一致を示し、ここでSCの最良推定値は実際に約7、また厚さは約30μmである。この結果は、表面被覆率及びポリマー厚を推定するのに用いられる分析に、大きな信用を与える。さらに、
図33Aからは、あたかもPEワックスの外側表面のみが連続的な層へと変形し、一方でそれに続く層はほぼ不連続のままであるが圧縮され多孔性の内側被覆を形成しているかのように見える。
【0114】
被覆厚の理論的判定が非常に良く粒子サイズ測定値を予測したため、被覆厚のポリマー含有量及びホスト粒子サイズに対する関係を表すべく、それらが
図34に再び描かれた。
図34は、広範囲の被覆厚(0−50μm)が乾燥ポリマー被覆により達成されうることを明らかに示す。さらに、ホスト粒子サイズは、被覆厚に顕著な制限を引き起こす。45μm−63μmアスコルビン酸は、その大きい表面積ゆえ、約5μmの被覆厚を獲得するためには大量のポリマー(〜25重量%)を必要とする。一方で、425μm−500μmアスコルビン酸は、同じ被覆厚を獲得するのに〜5重量%しか必要としない。それでも、乾燥ポリマー被覆は、56.8μm−521.6μmの粒子を凝集または破損なしに被覆することが示された。さらに、被覆厚は、正確に予測されることが可能であったし、また次の実施例で論じられるように、例えば制御放出の応用における微粒子の設計において有用な手段としての役目をしうる。
【実施例23】
【0115】
乾燥ポリマー被覆の制御放出の潜在的可能性を評価するため、実施例22において粒子サイズの性質決定のために加工されたアスコルビン酸を対象にして、溶出試験も行われた。
図35−36は、様々なサイズ及びポリマー含有量(つまり、被覆厚)のアスコルビン酸に関する溶出特性を示す。アスコルビン酸は水溶性が高く、これらの図に示されるように、PEワックスでの被覆後、溶出速度に大きな減少が観察される。425μm−500μmのアスコルビン酸は60秒未満で溶出するが、30重量%PEで被覆されると完全な溶出は2.5時間かかり、これは2桁の規模を超えてより遅い溶出速度を与える。同様に、150μm−250μmのアスコルビン酸は60秒未満で溶出するが、30重量%PEで被覆されると完全に溶出するのに1.5時間より長くかかる。90μm−125μmは20秒未満で溶出するが、27重量%PEで被覆されると完全に溶出するのに2時間より長くかかる。45μm−63μmのアスコルビン酸は、その薄い被覆ゆえ、未被覆のままの場合の10秒に対して、24重量%PEで被覆されると10分で溶出した。この溶出が一次微粒子に関するものであり、顆粒剤、ペレット剤、または錠剤に関するものではないことを考慮すると、これらの結果は大いに注目に値する。さらに、溶出速度の低下は一般に、可塑剤乾燥ポリマー被覆におけるような長々しい硬化工程の後に観察されるが、本方法においては、溶出速度の大きな低下を達成しつつその工程は回避することができる。
【0116】
溶出のメカニズムを調べるため、試料の50%が溶出するのにかかる時間t
50が測定された。各試料についてt
50により溶出時間を標準化すると、
図35−36に見られるように、試料間に自己相似性の挙動を示した。この自己相似性は、ポリマーの量または厚さに関わらず、時間のスケールに違いを有するだけで同じメカニズムによってホストが溶出することを示す。この場合、溶出したアスコルビン酸対時刻の、ゼロ次拡散メカニズムに近づく線形特性である。本結論は、90μm−125μm、150μm−250μm、及び425μm−500μmのアスコルビン酸について有効である。45μm−63μm及び45μm−500μmのアスコルビン酸は、なおも自己相似性の溶出挙動を示すが、ややゼロ次放出からは逸脱し、予期されるよりも遅い溶出速度を示す。
【0117】
本セクションでは、我々は非常に水溶性であるアスコルビン酸の放出速度が、可塑剤、溶剤、または追加の熱処理無しに、乾燥ポリマー被覆により顕著に低下したことを示してきた。425μm−500μm、150μm−250μm、及び90μm−125μmのアスコルビン酸について、徐放医薬製剤のために有益なメカニズムの一種であるゼロ次放出が達成された。放出速度/拡散率に対して、表面被覆率は大きな影響を有することが示された。これらの結果は、ストリップフィルム剤、口腔内崩壊剤、錠剤、及びカプセル剤を含む様々な剤形の、延長放出製剤のための水溶性に乏しい薬剤を含む他の薬剤に対して、合理的に拡張されうる。
【0118】
しかしながら、前述の開示においては、本発明の多数の特徴及び長所が論述されてきたが、本発明の構造及び機能の詳細と共に、開示は例示のみであり、また変更は、特に本発明の原理範囲内における要素の形、サイズ、及び、配置の事項について、添付の特許請求の範囲が表現される用語の広い一般的な意味により表される最大範囲まで、詳細になされうることが、理解されるべきである。
【実施例24】
【0119】
不連続ワックス対変形したワックス
乾燥被覆手順後のポリマー層の厚さを決定するため、また粒子破損または凝集のあらゆる効果も決定するため、加工前及び後に粒子サイズ測定が行われた。本研究で使用されたHelosレーザー回折粒子サイズ分析装置に、Rodos粉末分散ユニットが装備された。粉末分散ユニットは、圧縮空気を使用して、さもなければ一次粒子ではなく凝集物として測定されるであろう、凝集性粉末を分散させた。そのような測定値は、選択された加工強度及び加工時間に基づき、被覆の性質を同定または例証するために用いられうる。被覆がよく広がっていずよく変形してない場合、ワックス粒子は表面から剥離するかもしれない。PEワックスがアスコルビン酸表面上の変形した層ではなく個別の粒子のままである場合、分散ユニットは2つの構成成分を分離できることが観察された。ゆえに、測定後、粒子サイズ分布において、PEワックスとアスコルビン酸とからの別個の寄与が観察されることができた。様々な試料についての粒子サイズ分布が、
図37中に示される。1分で加工された全ての試料について、密度分布における大きな寄与が1−20μmの範囲中に見られ、これはPEワックスのサイズに対応する。5分加工についてさえも、予期された通り加工時間1分においてよりは少ないものの、微細な範囲に粒子がかなり存在する。この時点においてはPEワックスは個別の粒子として存在するため、SEM画像中に見られるように、粒子はアスコルビン酸表面から引き離され、個々に測定されうる。不連続ポリマー層が変形する、より長い加工時間においては、PEワックスに対応するピークからの寄与はより小さい。不連続層が完全に連続層へと変形したさらに長い加工時間においては、PEワックスに対するピークは観察されなかった。PEワックスに対するピークが観察されない加工時間は、例えば
図38のSEM画像、及び例えば
図39の最低溶出速度ともよく一致する。この結果、このような粒子サイズ測定値は、ポリマーが個別の粒子または変形による連続的な層として存在するかどうかを判定することもでき、また被覆の完全性を調べるのにも用いられうる。
【実施例25】
【0120】
被覆の質を評価するための表面積測定
20重量%のPEワックスが、LabRAM中で75Gにてd
50=405ミクロンのアスコルビン酸上へと塗布され、加工時間5分、30分、及び2時間において試料が採取された。5分において被覆は、
図38セクション(a)に示されるSEM画像とほぼ類似し、不連続であることが観察され、またSurface Energy Analyzer(New Inverse Gas Chromatography instrument、SEA、Surface Measurement Systems, Ltd.、英国)の表面積分析装置オプションを用いると、表面積3.71m
2/gを有していた。30分においては、被覆は完全に変形し、ずっと縮小した表面積0.88m
2/gが測定された。2時間においては、摩滅の存在が観察され、また測定表面積は増加し1.21m
2/gであった。この表面積の増加は、過度に強烈な混合条件での過度な加工による微粉の存在によるものである。これらの長期の加工時間においては、容出時間もまた増加することも観察された(例えば、
図39、表面積測定値を通じて確証される)。参考までに、405ミクロンのアスコルビン酸自身の表面積は、例えば約0.01m
2/gとずっと小さいことが予期されるが、それに対し、加工されていない微細なワックスの表面積は30m
2/gを超えると測定された。ゆえに、同じ割合でのこれらの構成成分の物理的混合は、約6m
2/gの表面積を有するであろう。これにより、大きい表面積を示す混成の被覆された粉末は、被覆がよく変形しておらず均一でないこと示すことが確認される。同様に、表面積が小さいほど、変形のレベルが高いことを示す。本実施例は多孔性被覆による表面積の役割を例証するが、そのような手法は、表面積が、十分に不連続から十分に連続的な被覆への変形により明らかに減少し、またそれから多少の摩滅により増加するため、被覆の指標を提供することもまたできる。
【0121】
前述の実施例は、例証及び開示のみの目的で提供されてきた。本発明の範囲は、本明細書に添付の特許請求の範囲から決定されるものである。