(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記二つのブレーキ系統は、一方の前記ブレーキ系統に対するブレーキ操作に連動して他方のブレーキ系統の車輪ブレーキに制動力を発生させる連動ブレーキ制御可能に構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブレーキ液圧制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のブレーキ液圧制御装置において、例えば前輪のブレーキ操作子を操作すると、連動ブレーキ制御により後輪のブレーキ系統において後輪の車輪ブレーキに通じる液圧路が昇圧されることになる。かかる状態において、後輪のブレーキ操作子を操作すると、後輪のマスタシリンダからポンプの吸入側にブレーキ液が吐出されることとなるが、吐出されるブレーキ液の行き場所がなく、通常のブレーキ操作子を操作したときのような操作フィーリングが得
られないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、前記した問題を解決し、ブレーキ液圧制御装置にて昇圧される側のブレーキ系統のブレーキ操作子を操作した際の操作フィーリングを改善することができるブレーキ液圧制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、前輪側および後輪側の車輪ブレーキをそれぞれ独立したマスタシリンダで作動させる二つのブレーキ系統を有するバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置であって、前記二つのブレーキ系統のうち、少なくとも昇圧される側の一方の前記ブレーキ系統は、マスタシリンダから車輪ブレーキに至る液圧路と、前記液圧路に設けられたカット弁と、前記マスタシリンダと前記カット弁との間の前記液圧路から分岐する吸入路と、前記液圧路へ通じる吐出路と、
前記車輪ブレーキから前記吸入路に至る開放路と、前記吸入路のブレーキ液を吸入して前記吐出路に吐出するポンプと、前記吸入路に設けられた吸入弁と、前記吸入弁と前記ポンプとの間の前記吸入路に設けられた可変受容手段と、
前記開放路に設けられ、前記車輪ブレーキから逃されるブレーキ液を一時的に貯溜するリザーバと、前記リザーバと前記ポンプとの間に設けられ、前記リザーバ側から前記ポンプ側へのブレーキ液の流入のみを許容するチェック弁と、を備え、前記可変受容手段は、ブレーキ液が流入することで容積変化してブレーキ液を貯溜し、前記吸入路におけるブレーキ液の圧力上昇を吸収することを特徴とする。
【0008】
このブレーキ液圧制御装置によれば、吸入弁を開弁させつつカット弁を閉弁させるブレーキ液圧制御装置にて昇圧される側のブレーキ系統においてブレーキ操作子が操作されたとしても、吸入路に設けられた可変受容手段が容積変化して可変受容手段にブレーキ液が流入するので、吸入路におけるブレーキ液の圧力上昇が吸収される。
したがって、ブレーキ液圧制御装置にて昇圧される側のブレーキ系統のブレーキ操作子を操作した場合であっても、通常のブレーキ操作時と同様の操作フィーリングが得られ、違和感のないブレーキフィーリングが得られる。
【0009】
また、本発明は、前記可変受容手段は、シリンダ室と、このシリンダ室内を移動するピストンと、このピストンを付勢するスプリングと、を備えており、前記可変受容手段は、ブレーキ操作子の操作で発生した前記マスタシリンダのブレーキ液圧を受けたときに、前記ピストンが前記スプリングの付勢力に抗して移動することで、前記シリンダ室にブレーキ液を貯溜することを特徴とする。
【0010】
このブレーキ液圧制御装置によれば、構成がシンプルであり、コストを抑えつつ違和感のないブレーキフィーリングを好適に得ることができる。
【0011】
また、本発明は、前記二つのブレーキ系統は、一方の前記ブレーキ系統に対するブレーキ操作に連動して他方のブレーキ系統の車輪ブレーキに制動力を発生させる連動ブレーキ制御可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
このブレーキ液圧制御装置によれば、吸入弁を開弁させつつカット弁を閉弁させる連動ブレーキ制御中に、連動される側のブレーキ系統においてブレーキ操作子が操作されたとしても、吸入路に設けられた可変受容手段が容積変化して可変受容手段にブレーキ液が流入するので、吸入路におけるブレーキ液の圧力上昇が吸収される。
したがって、連動ブレーキ制御中に連動される側のブレーキ系統のブレーキ操作子を操作した場合であっても、通常のブレーキ操作時と同様の操作フィーリングが得られ、違和感のないブレーキフィーリングが得られる。
【0013】
また、本発明は、前記二つのブレーキ系統は、前輪側ブレーキ系統および後輪側ブレーキ系統であり、少なくとも連動される側の前記ブレーキ系統は、前輪側ブレーキ系統であることを特徴とする。
【0014】
このブレーキ液圧制御装置によれば、通常、手で操作されるブレーキ操作子において、通常のブレーキ操作時と同様の操作フィーリングが得られ、違和感のないブレーキフィーリングが得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ブレーキ液圧制御装置にて昇圧される側のブレーキ系統のブレーキ操作子を操作した際の操作フィーリングを改善することができるブレーキ液圧制御装置が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、説明において、同一の要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置Uは、自動二輪車、自動三輪車、オールテレーンビークル(ATV)、自動四輪車などの車両に好適に用いられるものであり、車両の車輪に付与する制動力(ブレーキ液圧)を適宜制御する。以下においては、ブレーキ液圧制御装置Uを自動二輪車に適用した例について説明するが、ブレーキ液圧制御装置Uが搭載される車両を限定する趣旨ではない。
【0019】
ブレーキ液圧制御装置Uは、前輪側のブレーキ系統K1および後輪側のブレーキ系統K2を備えて構成される。前輪側のブレーキ系統K1は、操作子としてのブレーキレバーL1の操作に応じて前輪ブレーキFを制動するものであり、前輪ブレーキFに付与する制動力を制御手段としての制御装置7により適宜制御することによって、前輪ブレーキFのアンチロックブレーキ制御が可能になっている。
また、後輪側のブレーキ系統K2は、操作子としてのブレーキペダルL2の操作に応じて後輪ブレーキRを制動するものであり、後輪ブレーキRに付与する制動力を制御装置7により適宜制御することによって、後輪ブレーキRのアンチロックブレーキ制御が可能になっている。
また、後輪側のブレーキ系統K2は、前輪側のブレーキレバーL1の操作に連動して連動ブレーキ制御可能であり、また、前輪側のブレーキ系統K1は、後輪側のブレーキペダルL2の操作に連動して連動ブレーキ制御可能である。
【0020】
以下、
図1に示すブレーキ液圧回路を詳細に説明する。なお、ブレーキ系統K1,K2は、実質的に同一の構成であるので、以下においては主としてブレーキ系統K1について説明し、適宜ブレーキ系統K2について説明する。
ブレーキ系統K1は、入口ポートJ1から出口ポートJ2に至る系統である。なお、入口ポートJ1には、液圧源であるマスタシリンダMC1に至る配管H1が接続され、出口ポートJ2には、前輪ブレーキFに至る配管H2が接続されている。
ブレーキ系統K2は、入口ポートJ3から出口ポートJ4に至る系統である。なお、入口ポートJ3には、マスタシリンダMC2に至る配管H3が接続され、出口ポートJ4には、後輪ブレーキRに至る配管H4が接続されている。
【0021】
マスタシリンダMC1は、ブレーキ液を貯蔵するブレーキ液タンク室が接続されたシリンダ(図示せず)をそれぞれ有しており、シリンダ内にはブレーキ操作子であるブレーキレバーL1の操作によりシリンダの軸方向へ摺動してブレーキ液を流出するマスタピストン(図示せず)が組み付けられている。ここで、後輪側のマスタシリンダMC2には、ブレーキ操作子としてブレーキペダルL2が接続されている点が異なっている。
【0022】
ブレーキ系統K1は、レギュレータRE、制御弁手段V、吸入弁4、リザーバ5、ポンプ6、可変受容手段10を備える。
なお、以下の説明では、入口ポートJ1からレギュレータREに至る液圧路を「出力液圧路A」と称し、レギュレータREから前輪ブレーキFに至る液圧路を「車輪液圧路B」と称する。また、出力液圧路Aから分岐しポンプ6に至る液圧路を「吸入路C」と称し、ポンプ6から車輪液圧路Bに至る液圧路を「吐出路D」と称し、さらに、車輪液圧路Bから吸入路Cに至る液圧路を「開放路E」と称する。また、「上流側」とは、マスタシリンダMC1(MC2)側のことを意味し、「下流側」とは、前輪ブレーキF(後輪ブレーキR)側のことを意味する。
【0023】
レギュレータREは、出力液圧路Aから車輪液圧路Bへのブレーキ液の流入を許容する状態および遮断する状態を切り換える機能と、出力液圧路Aから車輪液圧路Bへのブレーキ液の流入が遮断されているときに、車輪液圧路Bおよび吐出路Dのブレーキ液圧を設定値以下に調節する機能とを有しており、カット弁1、チェック弁1aおよびリリーフ弁1bを備えて構成されている。
【0024】
カット弁1は、出力液圧路Aと車輪液圧路Bとの間に介設された常開型の電磁弁からなり、開弁状態にあるときに上流側から下流側へのブレーキ液の流入を許容し、閉弁状態にあるときに遮断する。カット弁1を構成する常開型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置7に対して電気的に接続されており、制御装置7からの指令に基づいて電磁コイルが励磁されると、閉弁して上流側から下流側へのブレーキ液の流入を遮断し、電磁コイルが消磁されると、開弁して上流側から下流側へのブレーキ液の流入を許容する。
【0025】
チェック弁1aは、その上流側から下流側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、カット弁1に並列に接続されている。
リリーフ弁1bは、カット弁1となる常閉型の電磁弁に機能として付加されており、電磁弁を駆動させるための電磁コイルに与える電流値を制御することで開弁圧が制御され、車輪液圧路Bのブレーキ液圧から出力液圧路Aのブレーキ液圧を差し引いたときの値が設定値以上になると開弁する。
【0026】
制御弁手段Vは、車輪液圧路Bを開放しつつ開放路Eを遮断する状態、車輪液圧路Bを遮断しつつ開放路Eを開放する状態、および車輪液圧路Bと開放路Eを遮断する状態を切り換える機能を有しており、入口弁2、チェック弁2aおよび出口弁3を備えて構成されている。
【0027】
入口弁2は、車輪液圧路Bに設けられた常開型の電磁弁からなり、開弁状態にあるときに上流側から下流側へのブレーキ液の流入を許容し、閉弁状態にあるときに遮断する。入口弁2を構成する常開型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置7と電気的に接続されており、制御装置7からの指令に基づいて電磁コイルが励磁されると閉弁し、電磁コイルが消磁されると開弁する。
チェック弁2aは、その下流側から上流側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、各入口弁2と並列に接続されている。
【0028】
出口弁3は、開放路Eに介設された常閉型の電磁弁からなり、閉弁状態にあるときに前輪ブレーキF側からリザーバ5側へのブレーキ液の流入を遮断し、開弁状態にあるときに許容する。出口弁3を構成する常閉型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置7と電気的に接続されており、制御装置7からの指令に基づいて、電磁コイルを励磁すると開弁し、電磁コイルを消磁すると閉弁する。
【0029】
吸入弁4は、吸入路Cを開放する状態および遮断する状態を切り換えるものであり、吸入路Cに設けられた常閉型の電磁弁からなる。吸入弁4を構成する常閉型の電磁弁は、その弁体を駆動させるための電磁コイルが制御装置7と電気的に接続されており、制御装置7からの指令に基づいて電磁コイルを励磁すると開弁し、電磁コイルを消磁すると閉弁する。
【0030】
リザーバ5は、開放路Eに設けられており、各出口弁3が開放されることによって逃がされるブレーキ液を一時的に貯留する機能を有している。また、リザーバ5とポンプ6との間には、リザーバ5側からポンプ6側へのブレーキ液の流入のみを許容するチェック弁5aが介設されている。
【0031】
ポンプ6は、吸入路Cと吐出路Dとの間に介設されている。ポンプ6はモータ20の回転力によって駆動され、吸入路Cのリザーバ5に貯留されたブレーキ液を吸入して、吐出路Dに吐出する。また、カット弁1が閉弁状態にあり、吸入弁4が開弁状態にあるときには、ポンプ6は、マスタシリンダMC1、出力液圧路Aおよび吸入路Cに貯留されているブレーキ液を吸入して、吐出路Dに吐出する。これにより、連動ブレーキ制御時においてブレーキレバーL1を操作していない状態でも(ブレーキペダルL2の操作によって)前輪ブレーキFにブレーキ液圧を作用させることが可能となる。
【0032】
なお、出力液圧路Aには、マスタシリンダMC1におけるブレーキ液圧の大きさを計測する液圧センサ8aが設けられている。液圧センサ8aで計測されたブレーキ液圧の値は、制御装置7に随時取り込まれ、液圧センサ8aで計測されたブレーキ液圧の大きさに基づいて、連動ブレーキ制御等が行われる。
【0033】
また、後輪側のブレーキ系統K2の出力液圧路Aには、後輪ブレーキRに作用するブレーキ液圧の大きさを計測する液圧センサ8bが設けられている。液圧センサ8bで計測されたブレーキ液圧の値は、制御装置7に随時取り込まれ、液圧センサ8bで計測されたブレーキ液圧の大きさに基づいて、連動ブレーキ制御等が行われる。
【0034】
モータ20は、前輪側のブレーキ系統K1にあるポンプ6および後輪側のブレーキ系統K2にあるポンプ6の共通の動力源であり、制御装置7からの指令に基づいて作動する電動部品である。
【0035】
制御装置7は、液圧センサ8a、液圧センサ8b、図示しない前輪に固着されたパルサーギアの側面に対向して固定配置される前輪用の車輪速度センサおよび同じく図示しない後輪に固着されたパルサーギアの側面に対向して固定配置される後輪用の車輪速度センサからの出力に基づいて、レギュレータREのカット弁1、制御弁手段Vの入口弁2および出口弁3および吸入弁4の開閉、並びに、モータ20の作動を制御するものである。
【0036】
可変受容手段10は、吸入路Cにおいて、吸入弁4とポンプ6との間に設けられている。ブレーキ系統K1の可変受容手段10は、ブレーキ系統K1のカット弁1が閉弁し吸入弁4が開弁する連動ブレーキ制御中に、ブレーキレバーL1が操作されたときに、容積変化してブレーキ液を貯溜することで、吸入路Cにおけるブレーキ液の圧力上昇を吸収するように作用する。
同様にブレーキ系統K2の可変受容手段10は、ブレーキ系統K2のカット弁1が閉弁し吸入弁4が開弁する連動ブレーキ制御中に、ブレーキペダルL2が操作されたときに、容積変化してブレーキ液を貯溜することで、吸入路Cにおけるブレーキ液の圧力上昇を吸収するように作用する。
可変受容手段10は、シリンダ室10aと、このシリンダ室10a内を移動するピストン10bと、このピストン10bを付勢するスプリング10cと、を備えている。
【0037】
このような可変受容手段10は、吸入路Cのブレーキ液圧が昇圧したときに、ピストン10bがスプリング10cの付勢力に抗してシリンダ室10a内の容積を広げる側に移動し、シリンダ室10a内にブレーキ液を貯溜する。
【0038】
なお、スプリング10cは圧縮状態でシリンダ室10a内に収容されており、ピストン10bに初期押圧力が付与されている。なお、スプリング10cの初期押圧力(スプリング10cのばね定数と初期圧縮量)は、シリンダ室10a内においてピストン10bの受圧面に作用するブレーキ液圧の値が設定値よりも大きくなった場合に、ピストン10bがスプリング10cの弾性力およびシリンダ室10a内との摩擦抵抗力に抗してシリンダ室10a内を移動する大きさに設定されている。
【0039】
なお、連動ブレーキ制御時は、可変受容手段10にブレーキ液が流入することによって、ポンプ6に接続される吸入路Cにおけるブレーキ液の脈動が減衰される。
さらに、本実施形態では、吐出路Dにダンパ9aおよびオリフィス9bが設けられており、可変受容手段10、ダンパ9aおよびオリフィス9bの協働作用によってブレーキ液の脈動が効果的に減衰されるようになっている。
【0040】
次に、
図1の液圧回路を主に参照しつつ、制御装置7によって実現される通常のブレーキ制御、アンチロックブレーキ制御および連動ブレーキ制御について説明する。
【0041】
(通常のブレーキ制御)
各車輪がロックする可能性のない通常のブレーキ制御時には、前記した複数の電磁弁を駆動させる複数の電磁コイルは、いずれも制御装置7によって消磁させられる。つまり、通常のブレーキ制御においては、カット弁1および入口弁2が開弁状態になっており、出口弁3および吸入弁4が閉弁状態になっている。
【0042】
このような状態のときに運転者がブレーキレバーL1を操作すると、その操作力に起因してマスタシリンダMC1で発生したブレーキ液圧は、出力液圧路A、カット弁1および車輪液圧路Bを介してそのまま前輪ブレーキFに伝達され、前輪が制動されることとなる。なお、ブレーキレバーL1を緩めると、車輪液圧路Bに流入したブレーキ液がカット弁1および出力液圧路Aを介してマスタシリンダMC1に戻される。
なお、後輪側のブレーキ系統K2においても同様にして後輪が制動されることとなる。
【0043】
(アンチロックブレーキ制御)
アンチロックブレーキ制御は、車輪がロック状態に陥りそうになったときに実行されるものであり、その前輪ブレーキF(後輪ブレーキR)に対応する制御弁手段Vを制御して、前輪ブレーキF(後輪ブレーキR)に作用するブレーキ液圧を減圧、増圧あるいは一定に保持する状態を適宜選択することによって実現される。なお、減圧、増圧および保持のいずれを選択するかは、前輪用の車輪速度センサおよび後輪用の車輪速度センサから得られた車輪速度に基づいて、制御装置7によって判断される。
【0044】
そして、制御装置7が前輪ブレーキFに作用するブレーキ液圧を減圧すべきであると判断した場合には、制御弁手段Vにより車輪液圧路Bが遮断され、開放路Eが開放される。具体的には、制御装置7により入口弁2を励磁して閉弁状態にするとともに、出口弁3を励磁して開弁状態にする。このようにすると、前輪ブレーキFに通じる車輪液圧路Bのブレーキ液が開放路Eを通ってリザーバ5に流入し、その結果、前輪ブレーキFに作用していたブレーキ液圧が減圧される。
【0045】
また、制御装置7が前輪ブレーキFに作用するブレーキ液圧を一定に保持すべきであると判断した場合には、制御弁手段Vにより車輪液圧路Bおよび開放路Eがそれぞれ遮断される。具体的には、制御装置7により入口弁2を励磁して閉弁状態にするとともに、出口弁3を消磁して閉弁状態にする。このようにすると、前輪ブレーキF、入口弁2および出口弁3で閉じられた液圧路内にブレーキ液が閉じ込められることになり、その結果、前輪ブレーキFに作用しているブレーキ液圧が一定に保持される。
【0046】
さらに、制御装置7が前輪ブレーキFに作用するブレーキ液圧を増圧すべきであると判断した場合には、制御弁手段Vにより車輪液圧路Bが開放され、開放路Eが遮断される。具体的には、制御装置7により入口弁2を消磁して開弁状態にするとともに、出口弁3を消磁して閉弁状態にする。そして、制御装置7によりモータ20を駆動させると、モータ20の駆動に伴ってポンプ6が作動し、リザーバ5に貯留されていたブレーキ液が吐出路Dを介して車輪液圧路Bに還流する。
【0047】
(連動ブレーキ制御)
連動ブレーキ制御は、運転者がブレーキレバーL1およびブレーキペダルL2の一方のみを操作した場合、あるいは両方を操作したが他方の操作が不十分である場合において、その制動力(ブレーキ液圧)の大きさに応じた制動力を他方の車輪ブレーキにも作用させる必要があると判断されたときに実行される。
【0048】
例えば、運転者が前輪を制動すべくブレーキレバーL1を操作したときに、制御装置7に入力されたブレーキレバーL1の操作量や液圧センサ8aで計測されたブレーキ液圧の大きさといった各種情報に基づいて、後輪にも制動力を作用させる必要があると制御装置7が判断した場合には、制御装置7は、ブレーキ系統K1の液圧センサ8aにより計測された圧力値に基づいて、後輪側のブレーキ系統K2を制御する。
具体的に、
図2に示すように、ブレーキ系統K2において、カット弁1を励磁して閉弁状態にするとともに、吸入弁4を励磁して開弁状態にしたうえで、モータ20を作動させてポンプ6を駆動し、吸入路C側(マスタシリンダMC2側)にあるブレーキ液を吐出路Dに吐出させる。これにより、後輪ブレーキRにブレーキ液圧が作用し、後輪が制動される。
なお、図中、ブレーキ系統K2において太線で表示した流路は、ポンプ6で昇圧される流路であり、主流路以外は説明を省略している。
【0049】
ここで、ブレーキ系統K2に対して連動ブレーキ制御を実行している際に、
図3に示すように、運転者によりブレーキペダルL2が操作されると、出力液圧路Aから分岐した吸入路C(吸入弁4)にマスタシリンダMC2で発生したブレーキ液圧が作用する。なお、図中、破線で表示した流路は、ブレーキペダルL2の操作で昇圧される流路であり、主流路以外は説明を省略している。
そうすると、吸入路Cに設けられた可変受容手段10のピストン10bがマスタシリンダMC2で発生したブレーキ液圧を受けて押圧され、スプリング10cの付勢力に抗して移動する。これにより、シリンダ室10aの容積が拡がる方向に変化し、シリンダ室10aにブレーキ液が流入して、吸入路Cにおけるブレーキ液の圧力上昇が可変受容手段10により吸収される。
【0050】
このように、吸入路Cに作用するブレーキ液圧によって可変受容手段10のピストン10bがスプリング10cの付勢力に抗して移動する(変位する)ことにより、ブレーキペダルL2のストロークが許容されるとともに、擬似的なペダル反力を発生させてこれがブレーキペダルL2に付与される。この結果、運転者にとって違和感のないブレーキフィーリングが得られる。
【0051】
以上説明した本実施形態のブレーキ液圧制御装置Uでは、例えばブレーキ系統K2に対して、連動ブレーキ制御中を実行しているときにブレーキペダルL2が操作されて、吸入弁4とポンプ6との間の吸入路Cのブレーキ液圧が上昇すると、吸入路Cに設けられた可変受容手段10が容積変化して可変受容手段10にブレーキ液が流入し、吸入路Cにおけるブレーキ液の圧力上昇が吸収される。
したがって、連動ブレーキ制御中に連動される側(昇圧される側)のブレーキ系統K2のブレーキペダルL2を操作した場合に、通常のブレーキ操作時と同様の操作フィーリングが得られ、違和感のないブレーキフィーリングが得られる。
【0052】
また、可変受容手段10は、シリンダ室10aと、このシリンダ室10a内を移動するピストン10bと、このピストン10bを付勢するスプリング10cと、からなるので、構成がシンプルであり、コストを抑えつつ違和感のないブレーキフィーリングを好適に得ることができる。
【0053】
(第2実施形態)
図4〜
図6を参照して第2実施形態のブレーキ液圧制御装置について説明する。本実施形態が前記第1実施形態と異なるところは、連動される側のブレーキ系統が、前輪側のブレーキ系統K1のみとされている点である。つまり、ブレーキ系統K2は、連動ブレーキ制御のない独立したブレーキ系統となっている。
ブレーキ系統K1は、第1実施形態で説明したものと同様である。ブレーキ系統K2は、第1実施形態で説明したものから、レギュレータRE、吸入弁4および可変受容手段10が排除された構成となっている。つまり、独立したブレーキ系統K2の方がブレーキ系統K1よりも簡素になっている。
【0054】
このような構成において、運転者が後輪を制動すべくブレーキペダルL2を操作したときに、制御装置7に入力されたブレーキペダルL2の操作量や液圧センサ8bで計測されたブレーキ液圧の大きさといった各種情報に基づいて、前輪にも制動力を作用させる必要があると制御装置7が判断した場合には、制御装置7は、ブレーキ系統K2の液圧センサ8bにより計測された圧力値に基づいて、前輪側のブレーキ系統K1を制御する。
具体的に、
図5に示すように、ブレーキ系統K1において、カット弁1を励磁して閉弁状態にするとともに、吸入弁4を励磁して開弁状態にしたうえで、モータ20を作動させてポンプ6を駆動し、吸入路C側(マスタシリンダMC1側)にあるブレーキ液を吐出路Dに吐出させる。これにより、前輪ブレーキFにブレーキ液圧が作用し、前輪が制動される。
【0055】
ここで、ブレーキ系統K1に対して連動ブレーキ制御を実行している際に、運転者によりブレーキレバーL1が操作されると、
図6に示すように、出力液圧路Aから分岐した吸入路C(吸入弁4)にマスタシリンダMC1で発生したブレーキ液圧が作用する。
そうすると、吸入路Cに設けられた可変受容手段10のピストン10bがマスタシリンダMC1で発生したブレーキ液圧を受けて押圧され、スプリング10cの付勢力に抗して移動する。これにより、シリンダ室10aの容積が拡がる方向に変化し、シリンダ室10aにブレーキ液が流入して、吸入路Cにおけるブレーキ液の圧力上昇が可変受容手段10により吸収される。
【0056】
このように、吸入路Cに作用するブレーキ液圧によって可変受容手段10のピストン10bがスプリング10cの付勢力に抗して移動する(変位する)ことにより、ブレーキレバーL1のストロークが許容されるとともに、擬似的なペダル反力を発生させてこれがブレーキレバーL1に付与される。この結果、運転者にとって違和感のないブレーキフィーリングが得られる。
【0057】
本実施形態のブレーキ液圧制御装置Uによれば、通常、手で操作されるブレーキレバーL1において、通常のブレーキ操作時と同様の操作フィーリングが得られ、違和感のないブレーキフィーリングが得られる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、本実施形態では、
図1に示すように、本発明のブレーキ液圧制御装置を自動二輪車に適用した場合を例として説明しているが、本発明のブレーキ液圧制御装置は独立した系統のブレーキ系統を有するのであれば、四輪のバーハンドル車両にも適用可能であり、この場合には、一方のブレーキ系統に二つの前輪の車輪ブレーキが連結され、他方のブレーキ系統に二つの後輪の車輪ブレーキに連結される。
また、ブレーキペダルL2をブレーキレバーL2としてブレーキレバーL1,L2としてもよく、また、ブレーキレバーL1をブレーキペダルL1としブレーキペダルL2をブレーキレバーL2として逆の構成となるようにしてもよい。