(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コイルの励磁または消磁に基づいて固定接点と当接または該固定接点から離反する可動接点を有するリレースイッチの前記可動接点が前記固定接点に向かって移動する移動時間内に、前記コイルを励磁から消磁または消磁から励磁へと一時的に反転させる駆動信号を入力して前記可動接点の移動速度を減速制御するリレースイッチの作動制御装置において、
前記駆動信号を入力する駆動信号入力時から前記可動接点が前記固定接点に当接する到達時までの間が制御時間として予め設定され、前記駆動信号入力時の到達の際に前記駆動信号を入力するリレー制御ユニットを備え、
前記リレー制御ユニットは、
前記移動時間と前記制御時間との差分時間の値を格納する記憶部と、
前記可動接点の移動開始時から該記憶部に格納された前記差分時間の経過の際に前記駆動信号を入力する駆動信号生成回路と、
を備えることを特徴とするリレースイッチの作動制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について、
図1〜
図4に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態に係る作動制御装置の概略を説明する図である。図示のように、作動制御装置10は、リレー制御ユニット11及びリレー回路20を備える。リレー制御ユニット11は、リレー回路20のリレースイッチ30で発生する作動音を低減制御するものである。このリレー制御ユニット11の説明に先立って、本実施の形態のリレー回路20の構成について説明する。
【0023】
リレー回路20は、本実施の形態では、電源25とアース26との間で閉回路を構成する励磁回路21、第1負荷回路22及び第2負荷回路23を備え、この第1負荷回路22と第2負荷回路23の通電状態は、リレースイッチ30によって切替可能に形成されている。
【0024】
励磁回路21は、12Vの電圧を印加する電源25からアース26に向かってコイル31、トランジスタ21aが順に配列されて形成されている。本実施の形態では、トランジスタ21aはnpn型のトランジスタであって、エミッタが接地されている。
【0025】
第1負荷回路22は、負荷となる抵抗22a、第1負荷回路22に通電状態が切り替えられている場合の常開側の固定接点であるNO(ノーマルオープン)接点32aが、電源25からアース26に向かって順に配列されている。
【0026】
一方、第2負荷回路23は、負荷となる抵抗23a、第2負荷回路23に通電状態が切り替えられている場合の常閉側の固定接点であるNC(ノーマルクローズ)接点32bが、電源25からアース26に向かって順に配列されている。
【0027】
リレースイッチ30は、コイル31、NO接点32a、NC接点32b及び可動接点33によって構成され、本実施の形態では、可動接点33がNC接点32bに当接する際に収縮するスプリング33aによって、NO接点32aとNC接点32bとの間で可動接点33が切替可能に形成されたいわゆるヒンジ型リレースイッチとして構成されている。
【0028】
このリレースイッチ30は、コイル31が通電されるとコイル31が励磁して可動接点33がNO接点32aに当接し、コイル31が消電されるとコイル31が消磁して可動接点33がNC接点32bに当接する。
【0029】
このように、リレースイッチ30の可動接点33がNO接点32aまたはNC接点32bに当接する際に、通常は、接点打力によって大きな作動音が発生する。
【0030】
リレー回路20は更に、リレー制御ユニット11とトランジスタ21aとの間を接続してトランジスタ21aにベース電流I
4を供給するベース電流供給線24A、及びベース電流供給線24Aとアース26との間を接続する補助線24Bを備える。
【0031】
ベース電流供給線24Aは、トランジスタ21aと作動制御装置10の内部抵抗との間の電圧を調整する抵抗24aを備え、補助線24Bは、ベース電流供給線24Aとアース26との間の電圧を調整する抵抗24bを備える。
【0032】
このようなリレー回路20は、ベース電流I
4がベース電流供給線24Aを介してトランジスタ21aに供給されると、電源25の電圧印加によって励磁回路21に電流I
1が供給され、電源25とアース26との間が通電する。励磁回路21の通電によって、コイル31が通電して励磁される。
【0033】
コイル31の励磁によって、本実施の形態では、NC接点32bに当接している可動接点33が、スプリング33aの付勢力に抗してNC接点32bから離反してNO接点32aに向かって移動してNO接点32aに当接し、電源25の電圧印加によって第1負荷回路22に電流I
2が供給される。
【0034】
一方、ベース電流I
4が消電すると、コイル31が消電して消磁される。コイル31の消磁によって、NO接点32aに当接している可動接点33が、スプリング33aの付勢力によってNO接点32aから離反してNC接点32bに向かって移動してNC接点32bに当接し、電源25の電圧印加によって第2負荷回路23に電流I
3が供給される。
【0035】
次に、リレー制御ユニット11について説明する。このリレー制御ユニット11は、通電状態検知回路12、演算部13、記憶部14及び駆動信号生成回路15を順に備える。
【0036】
通電状態検知回路12は、第1負荷回路22のNO接点32aと第2負荷回路23のNC接点32bの通電状態を検知する回路である。
【0037】
この通電状態検知回路12は、本実施の形態では、NO接点32aを介して電流I
2が第1負荷回路22に通電されている場合は、検知線12aが抵抗22aとアース26との端子間の電圧を検知し、NC接点32bを介して電流I
3が第2負荷回路23に通電されている場合は、検知線12bが抵抗23aとアース26との端子間の電圧を検知する。
【0038】
このような通電状態検知回路12は、コイル31に通電されてコイル31の励磁が開始されたときから可動接点33がNO接点32aまたはNC接点32bに当接するまでの時間を移動時間tmとして検知する。
【0039】
すなわち、可動接点33がNO接点32aからNC接点32bに切り替えられるための可動接点33の移動時間tm、または可動接点33がNC接点32bからNO接点32aに切り替えられるための可動接点33の移動時間tmが検知される。
【0040】
図2は、演算部13の概略を説明する図であり、(a)は演算部13のブロック図、(b)は演算部13の演算処理の内容の概略を説明する図である。
【0041】
図2(a)で示すように、演算部13は、通電状態検知回路12で検知された移動時間tmを取得して所定の演算処理を行うものである。
【0042】
この演算部13には、移動時間tm内において、コイル31を励磁から消磁または消磁から励磁へと一時的に反転させる駆動信号を入力するタイミングである駆動信号入力時sから、可動接点33がNO接点32aまたはNC接点32bに当接する到達時eまでの間の制御時間tctrが、予め設定されている。
【0043】
移動時間tmからこの制御時間tctrを減算して得られた、コイル31の励磁または消磁に基づいてNO接点32aとNC接点32bとの間で可動接点33の移動開始時から駆動信号入力時sまでの時間が、差分時間tsとして記憶部14に格納される。
【0044】
すなわち、
図2(b)で示すように、演算部13では、ts(差分時間)=tm(移動時間)−tctr(制御時間)の演算処理が実行される。後述するように、この演算処理により求められた差分時間tsの経過の際に、例えば、コイル31を消磁から励磁へと一時的に反転させる駆動信号Pが入力される。
【0045】
図1で示すように、駆動信号生成回路15は、本実施の形態では、パルス生成回路で構成されており、ベース電流供給線24Aに駆動信号Pを入力する。ベース電流供給線24Aに駆動信号Pが入力されることによって、ベース電流供給線24Aにベース電流I
4が供給される。
【0046】
この駆動信号Pの入力回数は、駆動信号生成回路15に内蔵された図示しないカウンタによって計数される。
【0047】
次に、作動制御装置10によるリレースイッチ30の作動制御について説明する。
【0048】
図3は、作動制御装置10によるリレースイッチ30の作動制御のプロセスを示したフローチャートであり、
図4は、作動制御装置10によるリレースイッチ30の作動制御の結果を示す図である。
【0049】
図示のように、ステップS1において、駆動信号生成回路15から駆動信号Pがベース電流供給線24Aに入力されると、ステップS2において、駆動信号Pの入力回数が1回目であるか否かが、駆動信号生成回路15に内蔵されたカウンタによって計数される。
【0050】
駆動信号Pの入力回数が1回目である場合は、ステップS3において、ts(差分時間)=tm(移動時間)−tctr(制御時間)に基づいて差分時間tsが算出される。
【0051】
すなわち、可動接点33がNC接点32bに当接されている場合において、駆動信号Pの入力に基づく電源25の電圧印加により励磁回路21に電流I
1が供給され、コイル31が通電して励磁される。コイル31の励磁によって、NC接点32bに当接している可動接点33が、NC接点32bから離反してNO接点32aに向かって移動する。
【0052】
可動接点33が移動する際に、可動接点33がNC接点32bから離反することによって検知線12bで検知していた第2負荷回路23側の電圧が消滅した時間と、可動接点33がNO接点32aに当接することによって検知線12aが第1負荷回路22側の電圧を検知した時間との差分が、通電状態検知回路12によって可動接点33の移動時間tmとして検知される。
【0053】
あるいは、可動接点33がNO接点32aに当接されている場合において、駆動信号Pの入力に基づく電源25の電圧の消滅により励磁回路21の電流I
1が消電され、コイル31が消電して消磁される。コイル31の消磁によって、NO接点32aに当接している可動接点33が、NO接点32aから離反してNC接点32bに向かって移動する。
【0054】
可動接点33が移動する際に、可動接点33がNO接点32aから離反することによって検知線12aで検知していた第1負荷回路22側の電圧が消滅した時間と、可動接点33がNC接点32bに当接することによって検知線12bが第2負荷回路23側の電圧を検知した時間との差分が、通電状態検知回路12によって可動接点33の移動時間tmとして検知される。
【0055】
演算部13において、検知した移動時間tmから演算部13に予め設定された制御時間tctrが減算されて差分時間tsが算出され、ステップS4において、算出された差分時間tsが記憶部14に格納される。
【0056】
一方、ステップS2において、駆動信号Pの入力回数が1回目でない場合は、演算部13で差分時間tsが既に算出されて記憶部14に格納されている場合である。
【0057】
すなわち、リレー回路20によって第1負荷回路22の抵抗22a及び第2負荷回路23の抵抗23aの切替制御が実行されており、記憶部14に格納された差分時間tsに基づいて、一定の時間として予め設定された制御時間tctrにおいて、可動接点33がNO接点32aに当接する速度が減速制御される。
【0058】
駆動信号Pの入力回数が1回目でない場合は、ステップS5において、可動接点33の移動時間tm内において、差分時間tsを経過したか否かが判断される。
【0059】
具体的には、駆動信号Pの入力によりコイル31が通電して励磁され、コイル31の励磁によって、NC接点32bに当接している可動接点33が、スプリング33aの付勢力に抗してNC接点32bから離反してNO接点32aに向かって移動する。
【0060】
このとき、
図4(a)で示すように、可動接点33がNC接点32bから離反することによってNC接点32bがOFFとなる。一方、可動接点33がNC接点32bから離反してNO接点32aに向かって接点移動区間を移動する移動時間tm内においてはNO接点32aもOFFであり、可動接点33がNO接点32aに当接して移動時間tmが終了する際に、NO接点32aがONとなる。
【0061】
この移動時間tm内において、差分時間tsを経過した際に制御時間tctrに移行し、ステップS6において、駆動信号入力時sの到達の際に、駆動信号生成回路15が、ベース電流供給線24Aに駆動信号パルスPを入力する。
【0062】
この駆動信号Pの入力によって、ベース電流I
4が消電し、コイル31が消磁される。
【0063】
すなわち、コイル31が励磁から消磁に一時的に反転する。コイル31の消磁によって、NO接点32aに向かって接点移動区間を移動する可動接点33がNC接点32b側に付勢され、可動接点33のNO接点32aに向かう移動速度が減速する。
【0064】
可動接点33が減速した状態で、駆動信号Pを再度入力することでベース電流I
4が通電し、コイル31が再度励磁される。コイル31が再度励磁されることによって、移動速度が減速した可動接点33がNO接点32aに向かって移動し、減速した状態でNO接点32aに当接する。
【0065】
このように、一定の時間として予め設定された制御時間tctrにおいて、可動接点33がNO接点32aに当接する速度が減速することにより、可動接点33がNO接点32aに当接する際の接点打力が弱まって、可動接点33がNO接点32aに当接する際の作動音が低減される。
【0066】
さらに、接点打力が弱まることによって、可動接点33がNO接点32aに当接する際のバウンドが抑制され、バウンドに伴うチャタリング現象の発生が防止される。
【0067】
一方、NO接点32aに当接した可動接点33がNC接点32bに切り替えられる場合は、駆動信号Pの入力が遮断されてコイル31が消電して消磁され、コイル31の消磁によって、NO接点32aに当接している可動接点33が、スプリング33aの付勢力によってNO接点32aから離反してNC接点32bに向かって移動する。
【0068】
このとき、
図4(b)で示すように、可動接点33がNO接点32aから離反することによってNO接点32aがOFFとなる。一方、可動接点33がNO接点32aから離反してNC接点32bに向かって接点移動区間を移動する移動時間tm内においてはNC接点32bもOFFであり、可動接点33がNC接点32bに当接して移動時間tmが終了する際に、NC接点32bがONとなる。
【0069】
この移動時間tm内において、差分時間tsを経過した際に制御時間tctrに移行し、ステップS6において、駆動信号入力時sの到達の際に、駆動信号生成回路15が、ベース電流供給線24Aに駆動信号Pを入力する。
【0070】
この駆動信号Pの入力によって、ベース電流I
4が通電し、コイル31が励磁される。
【0071】
すなわち、コイル31が消磁から励磁に一時的に反転する。コイル31の励磁によって、NC接点32bに向かって接点移動区間を移動する可動接点33がNO接点32a側に付勢され、可動接点33のNC接点32bに向かう移動速度が減速する。
【0072】
可動接点33が減速した状態で、駆動信号Pを再度入力することでベース電流I
4が消電し、コイル31が再度消磁される。コイル31が再度消磁されることによって、移動速度が減速した可動接点33がNC接点32bに向かって移動し、減速した状態でNC接点32bに当接する。
【0073】
このように、一定の時間として予め設定された制御時間tctrにおいて、可動接点33がNC接点32bに当接する速度が減速することにより、可動接点33がNC接点32bに当接する際の接点打力が弱まって、可動接点33がNC接点32bに当接する際の作動音が低減される。
【0074】
さらに、接点打力が弱まることによって、可動接点33がNC接点32bに当接する際のバウンドが抑制され、バウンドに伴うチャタリング現象の発生が防止される。
【0075】
このような作動制御装置10は、例えば、電気自動車やいわゆるハイブリッド型自動車といった電動車両において、モータとバッテリコントロールユニット(BCU)との間を接続するコンタクタとしてリレースイッチ30を用いた場合に、コンタクタの作動音を低減するために適用することができる。
【0076】
この場合、差分時間tsの算出及び記憶部14への格納は、BCUの作動点検時に実行する、あるいはBCUの車両搭載後であって製品出荷前に実行する等、好適なタイミングで行うことができる。
【0077】
このような電動車両に作動制御装置10を用いた場合において、コンタクタによって接続される周辺機器等に不具合が発生した際には、コンタクタを介して通電中であっても、接続を遮断する必要がある。
【0078】
このような場合に、作動制御装置10によって可動接点33がNO接点32aまたはNC接点32cに当接する速度を減速させると、接点間にアークが発生して接点を損傷する、更には接点が溶着することも懸念される。
【0079】
従って、かかる場合は、作動制御装置10による可動接点33の減速制御を行うことなく、速やかにコンタクタの接続を遮断するように構成することが望ましい。
【0080】
上記構成のリレースイッチ30の作動制御装置10は、可動接点33がNO接点32aまたはNC接点32bに当接する際の接点打力を弱めるべく可動接点33がNO接点32aまたはNC接点32bに当接する速度を減速制御するに際して、可動接点33の移動時間tm内において、予め設定された制御時間tctrに基づいて、ベース電流供給線24Aを介してトランジスタ21aに駆動信号Pを入力する。
【0081】
従って、一定の時間として予め設定された制御時間tctrの駆動信号入力時sに到達した際に駆動信号Pを入力してコイル31を励磁または消磁に一時的に反転することによって、ばね定数の相違や組付誤差等に基づく同仕様の個々のリレースイッチ30の間での個体差に影響されることなく、同仕様の個々のリレースイッチ30において、一定の時間として予め設定された制御時間tctr内で、可動接点33がNO接点32aまたはNC接点32bに当接する速度を安定的に減速制御することができる。
【0082】
駆動信号Pは、差分時間tsの経過の際に駆動信号生成回路15によって入力される。
【0083】
この差分時間tsは、個体差の存在する移動時間tmから予め設定された制御時間tctrを減算する簡易な演算によって得られ、この演算結果が、記憶部14に格納される。
【0084】
この格納された差分時間tsに基づいて、個々のリレースイッチ30の個体差のバラツキに影響されることなく、一定のタイミングで駆動信号Pを入力するように設定することができる。
【0085】
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。上記実施の形態では、リレースイッチ30がいわゆるヒンジ型リレースイッチで構成された場合を説明したが、例えば、プランジャ型リレースイッチや、その他の有接点のリレースイッチで構成されていてもよい。
【0086】
上記実施の形態では、リレー制御ユニット11がリレー回路20のリレースイッチ30の作動音を低減する場合を例として説明したが、リレー回路20の構成を限定するものではなく、種々の回路構成におけるリレースイッチの作動音を低減することができる。
【0087】
上記実施の形態では、リレースイッチ30によって切替制御が実行される負荷が抵抗22a、23aである場合を説明したが、例えば、負荷が各種の電子機器であってもよい。