特許第6159622号(P6159622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クレハの特許一覧

<>
  • 特許6159622-スチームトラップ 図000002
  • 特許6159622-スチームトラップ 図000003
  • 特許6159622-スチームトラップ 図000004
  • 特許6159622-スチームトラップ 図000005
  • 特許6159622-スチームトラップ 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6159622
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】スチームトラップ
(51)【国際特許分類】
   F16T 1/00 20060101AFI20170626BHJP
【FI】
   F16T1/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-177259(P2013-177259)
(22)【出願日】2013年8月28日
(65)【公開番号】特開2015-45377(P2015-45377A)
(43)【公開日】2015年3月12日
【審査請求日】2016年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】有賀 淳
(72)【発明者】
【氏名】高木 貴文
(72)【発明者】
【氏名】富岡 嘉明
(72)【発明者】
【氏名】河間 博仁
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−303686(JP,A)
【文献】 特開平06−094191(JP,A)
【文献】 特開2005−172070(JP,A)
【文献】 特開2001−208291(JP,A)
【文献】 特開2007−162885(JP,A)
【文献】 特開2001−027391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16T 1/00− 1/48
F16K 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流入側の面を天側に、流体流出側の面を地側にして配設される、オリフィスが設けられたオリフィス板、および、
上記オリフィスに付着した異物を除去する当該オリフィスに遊挿された第1の異物排除体と、上記流体流入側の面に付着した異物を除去する第2の異物排除体とを有した清掃部材を備えており、
上記清掃部材は、上記流体流入側の面に引っ掛けて配されており、
上記第2の異物排除体が、上記流体流入側の面に移動可能に接触していることを特徴とするスチームトラップ。
【請求項2】
上記オリフィス板の流体流出側の面側に露出した上記第1の異物排除体の端部には、上記オリフィスから流出した流体と接触することによって位置または姿勢を変える構造体が設けられていることを特徴とする請求項に記載のスチームトラップ。
【請求項3】
上記第1の異物排除体は、上記オリフィスの断面積の50〜80%を占める太さを有した線状物であることを特徴とする請求項1または2に記載のスチームトラップ。
【請求項4】
流体流入側の面を天側に、流体流出側の面を地側にして配設される、オリフィスが設けられたオリフィス板、および、
上記オリフィスに付着した異物を除去する当該オリフィスに遊挿された第1の異物排除体と、上記流体流入側の面に付着した異物を除去する第2の異物排除体とを有した清掃部材を備えており、
上記オリフィス板の流体流出側の面側に露出した上記第1の異物排除体の端部には、上記オリフィスから流出した流体と接触することによって位置または姿勢を変える構造体が設けられており、
上記構造体は、天側に頂点を向けた円錐体であり、側面には当該頂点から地側に向かって螺旋構造が形成されていることを特徴とするスチームトラップ。
【請求項5】
上記構造体は、複数の羽部を有していることを特徴とする請求項に記載のスチームトラップ。
【請求項6】
上記オリフィスは、鉛直方向に形成されており、上記オリフィスから流体が排出されている状態において、上記第1の異物排除体は、鉛直方向に対して傾斜した姿勢となることを特徴とする請求項1からまでの何れか1項に記載のスチームトラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気輸送管や蒸気使用機器等の蒸気配管系に発生する蒸気が凝縮した復水をオリフィスから自動的に系外に排出するスチームトラップに関し、特に、オリフィスに付着堆積する異物を排除する清掃部材を備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
復水をオリフィスから外部に排出するスチームトラップ、いわゆるオリフィス式スチームトラップとして、オリフィスに付着堆積する異物を排除する清掃部材を備えたものが知られている。
【0003】
特許文献1には、復水排出孔の下流側に該復水排出孔よりも開口面積の小さなオリフィスを形成し、該オリフィスの上流端に一部を位置せしめた転動部材を該オリフィスを貫通して配置した復水排出装置が開示されている。復水排出孔の下流側に復水排出孔よりも開口面積の小さなオリフィスを形成しているため、復水排出孔の圧力がその上流側の圧力に近い高圧に保たれ、復水が復水排出孔を緩かに流下し、金属イオンが復水排出孔の表面に付着しない。また、このオリフィスの表面に付着する金属イオンの塩や酸化物は、復水流によって転動する転動部材によって取り除かれる構成となっている。
【0004】
特許文献2には、トラップケーシングに形成した入口と出口の間の隔壁にオリフィスを設け、入口側の復水をオリフィスから出口側に排出するオリフィス式スチームトラップが開示している。トラップケーシングに形成したネジ部に対するトラップケーシングの外部からのネジ進退操作によりオリフィス内をオリフィスの軸方向に進退してオリフィスの異物を排除する清掃部材を設けている。
【0005】
特許文献3および4には、弁ディスクを有したいわゆるディスク式スチームトラップが開示されており、弁ディスクが開弁して流体が通過するときに転動する転動部材を有し、この転動部材が出口通路を狭めようとする異物を取り除く構成となっている。
【0006】
特許文献5には、排気オリフィスを開閉するニードル弁と排気オリフィスを清掃するピンとを取り付けたオートドレン装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−303686号公報(1997年11月28日公開)
【特許文献2】特開2008−309290号公報(2008年12月25日公開)
【特許文献3】特開平6−58496号公報(1994年3月1日公開)
【特許文献4】特開平6−94191号公報(1994年4月5日公開)
【特許文献5】特開平8−28789号公報(1996年2月2日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のような従来技術では、オリフィス式スチームトラップにおいて、オリフィスが設けられたオリフィス板の復水流入側の面に付着堆積する異物を除去できないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、オリフィスに付着堆積する異物だけでなく、オリフィスが設けられたオリフィス板の流体流入側の面に付着堆積する異物も除去できるオリフィス式スチームトラップを提供することにある。
【0010】
本発明に係るスチームトラップは、上記の課題を解決するために、
流体流入側の面を天側に、流体流出側の面を地側にして配設される、オリフィスが設けられたオリフィス板、および、
上記オリフィスに付着した異物を除去する当該オリフィスに遊挿された第1の異物排除体と、上記流体流入側の面に付着した異物を除去する第2の異物排除体とを有した清掃部材を備えていることを特徴としている。
【0011】
上記の構成によれば、オリフィスに遊挿された第1の異物排除体によって当該オリフィスに付着した異物を除去するだけでなく、第2の異物排除体によってオリフィス板の流体流入側の面に付着堆積する異物も除去できるオリフィス式スチームトラップを提供することができる。
【0012】
よって、オリフィスの詰まりが生じにくく、メンテナンスが長期間不要であるスチームトラップを提供することができる。
【0013】
なお、本願明細書における「異物」とは、スチームトラップを流れる復水に含まれる金属イオンの塩や金属の酸化物であったり、スチームトラップの上流から流れた錆である。
【0014】
また本発明に係るスチームトラップは、上記の構成に加えて、
上記清掃部材は、上記流体流入側の面に引っ掛けて配されており、
上記第2の異物排除体が、上記流体流入側の面に移動可能に接触していることが好ましい。
【0015】
上記の構成によれば、オリフィス板の流体流入側の面に引っ掛けるという簡易な方法によって清掃部材を配設することができる。
【0016】
また上記の構成によれば、第2の異物排除体が、オリフィス板の流体流入側の面に移動可能に接触していることから、移動および接触によって流体流入側の面に付着した異物を効果的に除去することができる。
【0017】
また本発明に係るスチームトラップは、上記の構成に加えて、
上記オリフィス板の流体流出側の面側に露出した上記第1の異物排除体の端部には、上記オリフィスから流出した流体と接触することによって位置または姿勢を変える構造体が設けられていることが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、流体と接触することによって位置または姿勢を変える構造体を第1の異物排除体の端部に設けていることから、構造体に連動して第1の異物排除体の位置または姿勢が変わり、オリフィスに付着した異物を効率的に除去することができる。
【0019】
また本発明に係るスチームトラップは、上記の構成に加えて、
上記第1の異物排除体は、上記オリフィスの断面積の50〜80%を占める太さを有した線状物であることが好ましい。
【0020】
上記の構成によれば、オリフィスの断面積の20〜50%は流体の流路として確保されており、第1の異物排除体が当該オリフィスに遊挿された状態でも、流体の流出(排出)を妨げることなく、オリフィスに付着した異物の除去と、流体の排出とを同時並行でおこなうことができる。
【0021】
また本発明に係るスチームトラップは、上記の構成に加えて、
上記構造体は、天側に頂点を向けた円錐体であり、側面には当該頂点から地側に向かって螺旋構造が形成されていることが好ましい。
【0022】
上記の構成によれば、オリフィスからの排出される流体が、側面に形成された螺旋構造を伝って流れることに伴い、構造体が揺れ動くことから、これに連動して第1の異物排除体の位置または姿勢が変わり易く、よって、オリフィスに付着した異物を効率的に除去することができる。
【0023】
また本発明に係るスチームトラップは、上記の構成に加えて、
上記構造体は、複数の羽部を有していることが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、オリフィスからの排出される流体が、複数の羽部に当たることによって構造体が揺れ動くことから、これに連動して第1の異物排除体の位置または姿勢が変わり易く、よって、オリフィスに付着した異物を効率的に除去することができる。
【0025】
また本発明に係るスチームトラップは、上記の構成に加えて、
上記オリフィスは、鉛直方向に形成されており、
上記オリフィスから流体が排出されている状態において、上記第1の異物排除体は、鉛直方向に対して傾斜した姿勢となることが好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、オリフィスから流体が排出されている間に、傾斜した姿勢の第1の異物排除体が、鉛直方向に形成されたオリフィスに遊挿された状態となることから、オリフィスの開口端部に集中的に第1の異物排除体が接触する状況を提供することができ、当該開口端部に付着した異物を効果的に除去することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、オリフィスに遊挿された第1の異物排除体によって当該オリフィスに付着した異物を除去するだけでなく、第2の異物排除体によってオリフィスの復水流入側の面に付着堆積する異物も除去でき、オリフィスの詰まりが生じにくく、メンテナンスが長期間不要であるスチームトラップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係るスチームトラップの一実施形態を示す断面図である。
図2図1に示すスチームトラップに具備された清掃部材が姿勢を変化させた状態を示す断面図である。
図3】本発明に係るスチームトラップに具備された清掃部材の変形例を示した図である。
図4】本発明に係るスチームトラップに具備された清掃部材の変形例を示した図である。
図5】本発明に係るスチームトラップに具備された清掃部材の変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔実施形態1〕
本発明に係るスチームトラップの一実施形態について、図1および図2に基づいて説明する。
【0030】
図1は、本実施形態1のスチームトラップの構成を示す断面図である。図1に示すように、スチームトラップ1は、上部ケーシング2と、下部ケーシング3と、オリフィス板4と、ガスケット5と、清掃部材6とを備えている。
【0031】
上部ケーシング2および下部ケーシング3は、スチームトラップ1の外殻を構成しており、それぞれには内部に流路が設けられている。上部ケーシング2と下部ケーシング3とは、互いを螺合することによって連結し、上部ケーシング2および下部ケーシング3に連通する内部流路が形成される。なお、図1では、上部ケーシング2が外周面に螺子山を有する雄螺子であり、下部ケーシング3が内周面に螺子山を有する雌螺子となっているが、本発明はこれに限定されるものではなく雄雌が反対であってもよい。
【0032】
上部ケーシング2および下部ケーシング3は、一般的なスチームトラップの外殻を構成する材料から構成することができる。
【0033】
オリフィス板4は、例えばステンレス鋼(SUS材)から構成することができる。オリフィス板4は、下部ケーシング3に設けられた流路の一端に形成された開口部を閉塞するように配設されている。下部ケーシング3の流路の径は当該開口部の径よりも大きく、開口部の周囲にはこれらの径の差に相当する段部3aが形成されている。オリフィス板4は、当該開口部の径よりも大きな径を有しており、その段部3aの流路側に配設されている。また、段部3aに配設されたオリフィス板4は、下部ケーシング3の流路側に向いた面の外周を、雌螺子の上部ケーシング2の端部に押圧されている。すなわち、オリフィス板4は、下部ケーシング3の開口部の周囲に形成されている段部3aと、上部ケーシング2の端部とに挟持されている。
【0034】
ガスケット5は、オリフィス板4と上部ケーシング2の端部との間に配設されている。ガスケット5により、オリフィス板4と上部ケーシング2の端部との隙間が密閉されて、流体が漏出することを防ぐことができる。
【0035】
なお、オリフィス板4と上部ケーシング2の端部との間ではなく、下部ケーシング3の開口部の周囲に形成されている段部3aと、オリフィス板4との間に配設されていてもよい。あるいは、オリフィス板4と上部ケーシング2の端部との間にも、段部3aとオリフィス板4との間にも配設されていてもよい。
【0036】
オリフィス板4には、その中心部に流体排出孔40(オリフィス)が設けられている。
【0037】
流体排出孔40は、下部ケーシング3の流路と、スチームトラップ1外部とを連通する貫通孔として、オリフィス板4における、下部ケーシング3の流路に面した流体流入面41(流体流入側の面)側から、流体流入面41の裏面であるスチームトラップ1外部に面した流体流出面42(流体流出側の面)側に貫通して設けられている。本実施形態では、オリフィス板4に設けられた流体排出孔40は一つであるが、本発明はこれに限定されるものではなく複数個設けられていてもよい。
【0038】
本実施形態1のスチームトラップ1は、オリフィス板4の流体流入面41を天側に、流体流出面42を地側にしてオリフィス板4を下部ケーシング3内に配設しており、流体排出孔40は、オリフィス板4を鉛直方向に貫通している。
【0039】
以下に、本実施形態1の特徴的構成の一つである清掃部材6を説明するが、その前に、比較構成として、清掃部材6を具備していないスチームトラップについてその問題点を説明する。
【0040】
<比較構成のスチームトラップの問題点>
比較構成のスチームトラップは、本実施形態1のスチームトラップ1が有する清掃部材6を具備していない以外は本実施形態1のスチームトラップと同一とする。
【0041】
比較構成のスチームトラップを用いて、スチームトラップの上流から流れてきた復水をオリフィスから外部に排出すると、オリフィスに復水に含まれる金属イオンの塩や酸化物であったり、スチームトラップの上流から流れた錆であったりが、異物として、付着堆積する。孔に異物が堆積すると、流体の排出効率を下げることになり、放置すると孔が異物によって閉塞されて復水が排出できない事態を招く。
【0042】
比較構成のスチームトラップにおいて、この異物を除去するためには、例えば先述した上部ケーシングおよび下部ケーシングの螺合を外して内部からオリフィス板を取り出して清掃するという分解作業および洗浄作業という手間を要する。あるいは、スチームトラップの外部から作業員がオリフィスに棒状体を挿入して清掃するという方法も考えられる。
【0043】
しかしながら、異物は、孔だけでなく、オリフィス板の流体流入面にも付着するため、この異物の排除には、先述の分解作業および洗浄作業が必要となる。
【0044】
一般的にスチームトラップは、蒸気輸送管や蒸気使用機器等の蒸気配管系に発生する蒸気が凝縮した復水を系外に排出するべく、多数配設されている。そのため、多数配設されている比較構成のスチームトラップを個々に作業員が清掃するとなると、非常に手間となる。以上が、比較構成のスチームトラップの問題点である。
【0045】
そこで、本実施形態1のスチームトラップ1は、この問題を解決するべく、清掃部材6を具備している。
【0046】
清掃部材6は、オリフィス板4の流体排出孔40に貫通している第1の異物排除体61を有し、上端部を流体流入面41に引っ掛けることによって、オリフィス板4にぶら下がった態様の部材である。
【0047】
第1の異物排除体61は、オリフィス板4の流体排出孔40に付着した異物を除去するための部分であり、流体排出孔40に遊挿されている。
【0048】
また、清掃部材6は、流体流入面41に引っ掛けている部分によって、流体流入面41に付着した異物を除去することができる。以下では、この部分を第2の異物排除体62と記載する。
【0049】
第1の異物排除体61および第2の異物排除体62は、針金のような線状体を図2に示すように屈曲させて実現することができる。清掃部材6は、流体排出孔40から排出される流体と接触して、第1の異物排除体61および第2の異物排除体62の少なくとも何れかがどのような位置や姿勢をとったとしても、流体排出孔40から脱離することはない。
【0050】
清掃部材6はオリフィス板4に対して固定されているのではなく、単に引っ掛けて配されているだけである。そのため、清掃部材6に下部ケーシング3の流路を流れた流体が接触することにより、第2の異物排除体62は移動し、流体流入面41との接触位置を変えることができ、その(第2の異物排除体62の)接触部62aは、流体の流速や圧力に応じて流体流入面41上を摺動したり、流体流入面41を叩くようにして移動したりする。これにより、流体流入面41における流体排出孔40の周辺領域に付着した異物を排除することができる。なお、流体流入面41における流体排出孔40の周辺領域とは、流体排出孔40を中心とした360°の範囲である。
【0051】
なお、流体排出孔40の周辺領域からの異物の排除とは、流体排出孔40の周辺領域の異物を流体排出孔40を通じてスチームトラップ1の外部に排出すること以外にも、流体排出孔40の周辺領域の異物を流体流入面41における流体排出孔40から遠い位置に移動させることも含む。
【0052】
第1の異物排除体61は、第2の異物排除体62の位置や姿勢の変化に伴い、あるいは、流体流入面41側から流体排出孔40を流れる流体(復水)との接触を受けて、流体排出孔40内において位置や姿勢を変える。例えば、流体排出孔40の中心軸に対して垂直方向に移動したり、僅かではあるが当該中心軸に沿った方向にも移動することもできる。更には、第1の異物排除体61の長手方向、すなわち挿通方向に沿った軸(軸心)が、流体排出孔40の中心軸に対して傾斜するように姿勢を変えることもある。このような第1の異物排除体61の位置や姿勢の変化に伴い、第1の異物排除体61の表面と、流体排出孔40の内壁面との接触箇所が変わる。これにより、流体排出孔40に在る異物あるいは流体排出孔40に付着堆積した異物を排除することができる。
【0053】
なお、流体排出孔40からの異物の排除とは、異物を流体排出孔40を通じてスチームトラップ1の外部に排出すること以外にも、流体排出孔40から流体排出孔40の周辺領域へ排出することも含む。流体排出孔40から先述した流体排出孔40の周辺領域へ排出された異物は、先述したように第2の異物排除体62によって排除される。
【0054】
第1の異物排除体61は、断面円形あるいは楕円形の線状物(例えば針金)から構成することができるだけでなく、断面矩形(例えば断面六角形)の線状物から構成してもよい。
【0055】
第1の異物排除体61は、流体排出孔40の断面積の50〜80%を占める太さを有した線状物であることが好ましい。これにより、流体排出孔40の断面積の20〜50%は流体の流路として確保されており、第1の異物排除体61が流体排出孔40に遊挿された状態でも、流体の流出(排出)を妨げることなく、流体排出孔40に付着した異物の除去と、流体の排出とを同時並行でおこなうことができる。
【0056】
また、流体排出孔40に遊挿された第1の異物排除体61は、オリフィス板4の流体流入面41側において流路に露出した部分と、流体流出面42側から外部に露出した部分を有している。そして、この流体流出面42側から外部に露出した部分の端部には、流体排出孔40から流出した流体と接触することによって位置または姿勢を変える構造体63が設けられている。
【0057】
構造体63は、清掃部材6の下端にぶら下がった重りのような部材であり、流体排出孔40から排出される流体と接触し易いように流体排出孔40の径よりも大きく構成されている。本実施形態1では、構造体63は図1に示すように管状物であり、第1の異物排除体61を構成する線状物をその管内に挿通させることによって第1の異物排除体61の端部に取り付けられている。
【0058】
構造体63は、流体排出孔40から排出された流体(復水)によって劣化することがないような材質から構成することができる。また、流体排出孔40から排出された流体が接触することによって構造体63の位置または姿勢が変わる程度に軽量のものが好ましい。よって、構造体63は例えばゴム管から構成することができる。
【0059】
なお、本実施形態1では構造体63をゴム管から構成するが、構造体63は第1の異物排除体61と一体のものであってもよい。例えば、第1の異物排除体61が針金だった場合に、第1の異物排除体61の下端においてその針金を絡めて玉状にしたものを構造体63として構成してもよい。
【0060】
また、第1の異物排除体61の端部に構造体63を設けたことによって、第1の異物排除体61の軸心が、流体排出孔40から流体が排出されていない状態であっても、流体排出孔40の中心軸に対して傾斜するように構成されてもよい。この状態を図2に示す。傾斜した第1の異物排除体61は、流体排出孔40の両端部に重点的に接触して両端部に付着した異物を効果的に排除することができる。第1の異物排除体61は、流体が排出されていない状態で流体排出孔40の中心軸に対して傾斜していても、流体が第1の異物排除体61、第2の異物排除体62または構造体63に接触することによって、その位置や姿勢を変えることができる。
【0061】
すなわち、第1の異物排除体61と、第2の異物排除体62と、構造体63とは一体化された構造である。そのため、第1の異物排除体61、第2の異物排除体62または構造体63のいずれかの位置や姿勢が流体によって変化すれば、第1の異物排除体61および第2の異物排除体62は位置や姿勢を変えて、異物を排除する。
【0062】
なかでも、清掃部材6の下端に設けた構造体63によって、第1の異物排除体61および第2の異物排除体62の位置または姿勢が変わり易くなるので、構造体63は異物の排除効率を高めることができる。要するに、構造体63は振り子の役目を担っている。
【0063】
なお、一例としては、流体排出孔40の直径を約1mm、好ましくは0.7〜0.9mmとすることができ、流体排出孔40の長さを2mm(つまり、オリフィス板4の厚さが2mm)とすることができる。また、図1に示した流体の圧力は、0.3〜0.9MPa程度とすることができる。
【0064】
また、第1の異物排除体61と第2の異物排除体62は、一本の針金から形成することができる。一本の針金を、流体排出孔40の長さに相当する長さとその両端に設ける余長分の長さほど直線状にして第1の異物排除体61とし、その一方の端に構造体63を設け、他方の端は、L字型に屈曲してその先端を更に直角に曲げることによって流体流入面41に接触する第2の異物排除体62を形成することができる。なお、一例として流体排出孔40の長さを2mmとした場合に、第1の異物排除体61における流体排出孔40に遊挿された部分を含む直線部分の長さは、5cmとすることができる。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。
【0065】
また、図1および図2に示すように、その直線部分と第2の異物排除体62とは平行になっており、これらの離間間隔は流体排出孔40の径よりも大きく構成されている。これにより、流体排出孔40から清掃部材6が下方に落下することがない。
【0066】
以上のように、本実施形態1のスチームトラップ1によれば、オリフィス板4の流体排出孔40に付着した異物を除去する、流体排出孔40に遊挿された第1の異物排除体61と、流体流入面41に付着した異物を除去する第2の異物排除体62とを有した清掃部材6を備えている。これにより、流体排出孔40に遊挿された第1の異物排除体61によって流体排出孔40に付着した異物を除去するだけでなく、第2の異物排除体62によってオリフィス板4の流体流入面41に付着堆積する異物も除去できる。そのため、オリフィス板4の詰まりが生じにくく、メンテナンスが長期間不要であるスチームトラップ1を提供することができる。
【0067】
一例として、先述した比較構成のスチームトラップと、本実施形態1のスチームトラップ1とを同一条件下においてオリフィス板の流体排出孔の詰まりを比較したところ、比較構成のスチームトラップでは1〜2.5ヶ月で異物による詰まりが生じてメンテナンス(分解・清掃)が必要になったのに対して、本実施形態1のスチームトラップ1では、6ヶ月以上もメンテナンス不要であった。
【0068】
なお、第1の異物排除体61の下端に構造体63を設けなくとも、流体が第1の異物排除体61および第2の異物排除体62に接触することによってこれらの位置や姿勢は変わり、流体排出孔40および流体流入面41に付着堆積する異物を除去することができる。しかしながら、構造体63を設けることにより、清掃部材6の重心が下方にずれて、流体との接触による清掃部材6の位置や姿勢の変化を生じやすくなる。
【0069】
また、本実施形態1では、下部ケーシング3が流体流出面42よりも下方に大きく突出してはおらず、構造体63はスチームトラップ1外部に露出している。そのため、スチームトラップ1外部の気流(風など)も構造体63の位置や姿勢を変える要因である。すなわち、構造体63はその位置や姿勢が比較的変わり易く、流体排出孔40および流体流入面41の清掃をより一層効率的に行うことができる。
【0070】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図3に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0071】
本実施形態2と実施形態1との相違点は、第1の異物排除体61の下端に設けられた構造体の形状の違いにある。本実施形態2の構造体63´は、天側に頂点を向けた円錐体であり、側面には当該頂点から地側に向かって螺旋構造64が形成されている。
【0072】
流体排出孔40から排出される流体は、構造体63´の天側に接触すると、側面に形成された螺旋構造64を伝って流れる。そして、これに伴い、構造体63´が揺れ動き、これに連動して第1の異物排除体61の位置または姿勢が変わり、また第2の異物排除体62の位置または姿勢も変わる。本実施形態2の構造体63´がその形状から揺れ易いため、第1の異物排除体61および第2の異物排除体62の位置または姿勢が変わり易く、よって、オリフィス板の流体排出孔および流体流入面における流体排出孔の周辺領域に付着した異物を効率的に除去することができる。
【0073】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、図4に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0074】
本実施形態3と実施形態1との相違点は、第1の異物排除体61の下端に設けられた構造体の形状の違いにある。本実施形態3の構造体63´´は、複数の羽部65を有して構成されたプロペラ型である。
【0075】
流体排出孔40から排出される流体は、複数の羽部65の少なくとも一枚に当たり、これにより、構造体63´´が揺れ動く。そして、構造体63´´の揺れに連動して第1の異物排除体61の位置または姿勢が変わり、また第2の異物排除体62の位置または姿勢も変わる。本実施形態3の構造体63´´がその形状から揺れ易いため、第1の異物排除体61および第2の異物排除体62の位置または姿勢が変わり易く、よって、オリフィス板の流体排出孔および流体流入面における流体排出孔の周辺領域に付着した異物を効率的に除去することができる。
【0076】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、図5に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0077】
本実施形態3と実施形態1との相違点は、第2の異物排除体62の形状にある。本実施形態4の第2の異物排除体62´は、流体排出孔40に遊挿された部分を含む第1の異物排除体61の直線部分から分岐した部分から構成されている。第2の異物排除体62´は当該直線部分から垂直方向に分岐しており、当該分岐部分が流体流入面41に接触することによって、流体流入面41に清掃部材6が引っ掛かった状態を実現している。第1の異物排除体61の直線部分が流体排出孔40に鉛直方向に遊挿された状態で、第2の異物排除体62´は流体流入面41に接触している。そのため、流体によって第1の異物排除体61の位置や姿勢が変化することにより、流体流入面41に対する第2の異物排除体62´の位置や姿勢が変化して、流体流入面41に付着した異物を第2の異物排除体62´が排除することができる。
【0078】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、オリフィス式スチームトラップに利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 スチームトラップ
2 上部ケーシング
3 下部ケーシング
3a 段部
4 オリフィス板
5 ガスケット
6 清掃部材
40 流体排出孔(オリフィス)
41 流体流入面
42 流体流出面
61 第1の異物排除体
62、62´ 第2の異物排除体
62a 接触部
63、63´、63´´ 構造体
64 螺旋構造
65 羽部
図1
図2
図3
図4
図5