(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光透過性基材上に、端子部に電気的に接続されたセンサー部と、端子部に電気的に接続されていないダミー部を有する光透過性導電層を有し、該光透過性導電層は、第一の方向に伸びたセンサー部がダミー部を挟んで、第一の方向に対し垂直な第二の方向に任意の周期をもって複数列並ぶことで構成され、センサー部および/またはダミー部は、網目形状を有する金属パターンからなり、該金属パターンは、平面に配置された複数個の点(母点)に対して形成されるボロノイ辺からなる網目形状を有し、該母点は、第二の方向よりも第一の方向に長い多角形を平面充填されてできた図形が有する個々の多角形に対して1つ配置され、かつ該母点の位置が、多角形の重心と多角形の各頂点を結んだ直線の、重心から多角形の各頂点までの距離の90%以下の位置を結んでできる縮小多角形内の任意の位置にある、光透過性導電材料。
【背景技術】
【0002】
パーソナル・デジタル・アシスタント(PDA)、ノートPC、OA機器、医療機器、あるいはカーナビゲーションシステム等の電子機器においては、これらのディスプレイに入力手段としてタッチパネルが広く用いられている。
【0003】
タッチパネルには、位置検出の方法により光学方式、超音波方式、表面型静電容量方式、投影型静電容量方式、抵抗膜方式などがある。抵抗膜方式のタッチパネルでは、タッチセンサーとなる光透過性電極として、光透過性導電材料と光透過性導電層付ガラスとがスペーサーを介して対向配置されており、光透過性導電材料に電流を流し光透過性導電層付ガラスにおける電圧を計測するような構造となっている。一方、静電容量方式のタッチパネルでは、タッチセンサーとなる光透過性電極として、基材上に光透過性導電層を有する光透過性導電材料を基本的構成とし、可動部分が無いことを特徴とすることから、高い耐久性、高い光透過率を有するため、様々な用途において適用されている。更に、投影型静電容量方式のタッチパネルは多点同時検出ができるため、スマートフォンやタブレットPCなどに広く用いられている。
【0004】
一般にタッチパネルの光透過性電極に用いられる光透過性導電材料としては、基材上にITO(酸化インジウムスズ)導電膜からなる光透過性導電層が形成されたものが使用されてきた。しかしながら、ITO導電膜は屈折率が大きく、光の表面反射が大きいため、光透過性導電材料の光透過性が低下する問題や、ITO導電膜は可撓性が低いため、光透過性導電材料を屈曲させた際にITO導電膜に亀裂が生じて光透過性導電材料の電気抵抗値が高くなる問題があった。
【0005】
ITO導電膜に代わる光透過性導電層を有する光透過性導電材料として、光透過性基材上に光透過性導電層として金属細線を、例えば、金属細線の線幅やピッチ、更にはパターン形状などを調整して網目状に形成した光透過性導電材料が知られている。この技術により、高い光透過率を維持し、高い導電性を有する光透過性導電材料が得られる。金属細線による網目パターン(以下、金属パターン)の形状に関しては、各種形状の繰り返し単位を利用できることが知られており、例えば特開平10−41682号公報では、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形、(正)二十角形などの(正)n角形、円、楕円、星形等の繰り返し単位、及びこれらの2種類以上の組み合わせパターンが開示されている。
【0006】
上記した光透過性導電材料の製造方法としては、基板上に薄い触媒層を形成し、その上にレジストパターンを形成した後、めっき法によりレジスト開口部に金属層を積層し、最後にレジスト層及びレジスト層で保護された下地金属を除去することにより、金属パターンを形成するセミアディティブ方法が、例えば特開2007−287994号公報、特開2007−287953号公報などに開示されている。
【0007】
また近年、銀塩拡散転写法を用いた銀塩写真感光材料を導電性材料前駆体として用いる方法が知られている。例えば特開2003−77350号公報、特開2005−250169号公報や特開2007−188655号公報等では、基材上に物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層を少なくともこの順に有する銀塩写真感光材料(導電性材料前駆体)に、可溶性銀塩形成剤及び還元剤をアルカリ液中で作用させて、金属(銀)パターンを形成させる技術が開示されている。この方式によるパターニングは均一な線幅を再現することができることに加え、銀は金属の中で最も導電性が高いため、他方式に比べ、より細い線幅で高い導電性を得ることができる。更に、この方法で得られた金属パターンを有する層はITO導電膜よりも可撓性が高く折り曲げに強いという利点がある。
【0008】
これらの金属パターンを用いた光透過性導電材料は、液晶ディスプレイ上に重ねて置かれるため、金属パターンの周期と液晶ディスプレイの素子の周期とが干渉し、モアレが発生するという問題があった。液晶ディスプレイには画面サイズ、解像度に応じて様々な大きさの素子が使用されており、この問題を更に複雑にしている。
【0009】
この問題に対し、例えば特開2011−216377号公報(特許文献1)、特開2013−37683号公報(特許文献2)、特開2014−41589号公報(特許文献3)、特表2013−540331号公報(特許文献4)などでは、金属パターンとして、例えば「なわばりの数理モデル ボロノイ図からの数理工学入門」(非特許文献1)などに記載された、古くから知られているランダム図形を用いることで、干渉を抑制する方法が提案されている。特開2014−26510号公報(特許文献5)では、ランダムな金属パターンを用いた単位パターン領域を複数配置して形成したタッチパネル用電極基材が紹介されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明するにあたり、図面を用いて説明するが、本発明はその技術的範囲を逸脱しない限り様々な変形や修正が可能であり、以下の実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0019】
図1は、本発明の光透過性導電材料の一例を示す概略図である。
図1において、光透過性導電材料1は、光透過性基材2上の少なくとも一方に、金属パターンからなるセンサー部11とダミー部12、周辺配線部14、端子部15と、金属パターンがない非画像部13を有する。ここで、センサー部11及びダミー部12は網目形状の金属細線から構成されるが、
図1においては便宜上、網目形状は記載せずそれらの範囲を輪郭線aで示している。センサー部11は周辺配線部14を介して端子部15に電気的に接続しており、この端子部15を通して外部に電気的に接続することで、センサー部11で感知した静電容量の変化を捉えることができる。本発明において、センサー部11は端子部15と直接に接することで電気的に接続されていても良いが、
図1に示すように、複数の端子部15を近傍に集めるために、配線部14を介してセンサー部11が端子部15と電気的に接続されていることが好ましい。一方、端子部15に電気的に接続していない金属パターンは本発明では全てダミー部12となる。本発明において周辺配線部14、端子部15は特に光透過性を有する必要はないためベタパターン(光透過性を有さないパターン)でも良く、あるいはセンサー部11やダミー部12などのように光透過性を有する網目形状の金属細線であっても良い。
【0020】
図1において光透過性導電材料1が有するセンサー部11は、光透過性導電層面内において第一の方向(x方向)に伸びた列電極であり、該センサー部11はダミー部12を挟んで、光透過性導電層面内で第一の方向と垂直な方向である第二の方向(y方向)に複数列が並んでいる。本発明において、センサー部11は
図1にあるように、第二の方向(y方向)に一定の周期Lをもって複数列並んでいる。センサー部11の周期Lは、タッチセンサーとしての分解能を保つ範囲で任意の長さを設定することができる。センサー部11は一定の幅であっても良いが、
図1に示すように第一の方向(x方向)にパターン周期を有することが好ましい。
図1では、センサー部11に周期Mにて絞り部分を設けた例(ダイヤモンドパターンの例)を示した。また、センサー部11の幅(ダイヤモンドパターンにおいて絞られていない箇所の幅)も、タッチセンサーとしての分解能を保つ範囲で任意に設定することができ、それに応じてダミー部12の形状や幅も任意に設定することができる。
【0021】
本発明において、センサー部11および/またはダミー部12は、網目形状を有する金属パターンからなる。以下に本発明の光透過性導電材料が有する網目形状について説明する。
【0022】
センサー部11および/またはダミー部12が有する網目形状は、ボロノイ辺からなる網目形状(以下、ボロノイ図形と記載)である。ボロノイ図形とは、情報処理などの様々な分野で応用されている公知の図形であり、これを説明するために
図2を用いる。
図2はボロノイ図形を説明するための図である。
図2の(2−a)において、平面20上に複数の母点211が配置されている時、一つの任意の母点211に最も近い領域21と、他の母点に最も近い領域21とを直線である境界線22で区切ることで、平面20を分割した場合に、各領域21の境界線22をボロノイ辺と呼ぶ。ボロノイ辺は任意の母点と近接する母点とを結んだ線分の垂直二等分線の一部になる。ボロノイ辺を集めてできる図形をボロノイ図形と呼ぶ。
【0023】
図2の(2−b)は本発明で好ましく用いられる母点の配置方法を説明するための図である。平面20は36個(3×12個)の四角形23で隙間なく平面充填されており、四角形23の中には常に一つの母点211が配置されている。四角形23は光透過性導電層の第二の方向(y方向)よりも、第一の方向(x方向)に長い長方形になっている。
【0024】
図3は平面充填された多角形を説明するための図であり、(3−a)は六角形31で平面を隙間なく平面充填した例である。(3−b)は六角形31の第一の方向(x方向)の長さと第二の方向(y方向)の長さを示した図である。本発明では、第一の方向(x方向)にx軸、第二の方向(y方向)にy軸を設定した場合の多角形をx軸へ投影した線分の長さを多角形の第一の方向(x方向)の長さ、y軸へ投影した線分の長さを多角形の第二の方向(y方向)の長さと呼ぶ。(3−b)において六角形31の第一の方向(x方向)の長さはX31、第二の方向の長さはY31である。六角形31は光透過性導電層の第二の方向(y方向)よりも、第一の方向(x方向)に長い形状になっている。
【0025】
本発明においては、多角形は四角形や六角形以外に三角形を用いても良く、また複数の種類、複数の大きさの多角形を用いても良い。複数の種類、複数の大きさの多角形を用いる場合には、50%以上の個数の多角形が第二の方向(y方向)よりも、第一の方向(x方向)に長い形状であれば良い。多角形の選択の中では、単一種の形状の多角形が好ましい。また、単一の大きさの多角形が好ましい。
【0026】
前述の通り、母点は第二の方向よりも第一の方向に長い多角形を平面充填されてできた図形が有する個々の多角形に対して1つ配置される。その位置としては
図2の(2−b)、あるいはその拡大図である(2−c)を用いて説明する。本発明において母点211は、多角形の重心24と多角形の各頂点を結んだ直線において、その重心24から各頂点までの距離の、重心から90%以下の位置251、252、253、254を結んでできる縮小多角形である縮小四角形25内の任意の位置に配置される。(2−c)においては、多角形の重心から各頂点の90%の位置を結んでできる縮小多角形を取り上げたが、本発明では、90%以下の任意の範囲を選ぶことができる。また、各頂点までの重心からの距離の割合は一定であることが好ましいが、90%以下の範囲であればそれぞれ任意の値をとることもできる。縮小多角形を形成する重心から各頂点までの距離が短い場合には、モアレが発生しやすくなるため、縮小多角形の特に好ましい重心から各頂点までの距離は各頂点とも50〜80%である。
【0027】
本発明では、母点の位置を決定する平面充填される多角形は第一の方向、即ちセンサー部が伸びる方向と同じ方向に長い形状を有している。これより、ボロノイ辺はセンサー部の方向に配向した形状を取りやすくなる。平面充填される多角形の第一の方向と第二の方向の好ましい長さの比は1.1:1〜10:1であり、より好ましくは1.1:1〜5:1である。また、本発明では、センサー部の第二の方向(y方向)に最も短い部分(幅の最も狭い部分)において、同多角形は第二の方向に5個以上配置されることが好ましい。
図4及び
図5は多角形の配列を説明するための図である。
図4の(4−a)において、センサー部11は第一の方向(x方向)に伸びた列電極であり、ダミー部12との境界を仮の境界線R(実在しない線)で図示している。(4−a)において、センサー部11はKの部分で第二の方向(y方向)に最も短く(狭く)なっている。(4−b)は前記したKの部分の拡大図であり、
図5の(5−a)、(5−b)も同じくKの部分を図示している。
図5の(5−a)はKの部分において多角形がy方向に5.7個配置された状態を示しており、(5−b)は(5−a)の多角形内に本発明に従って母点を配置し、ボロノイ図形を作製する様子を示したものである。このように、第二の方向(y方向)においてセンサー部の最も狭い部分に、母点を配置する元となる多角形が5個以上並ぶことにより、金属パターンが不規則な形状であっても信頼性(例えば一箇所が断線しても電極として作用する)を保つことができるため好ましい。なお、母点を配置する元となる多角形の最も短い辺の長さは100〜2000μmであることが好ましく、より好ましくは120〜800μmである。
【0028】
先の
図1の説明において述べたように、センサー部とダミー部の間には電気的な接続はない。
図4の(4−a)において、センサー部11とダミー部12が有する金属パターンはボロノイ図形からなり、センサー部11は周辺配線14と電気的に接続している。前記した通り、センサー部11とダミー部12の境界に仮の境界線Rを図示しており、この仮の境界Rでセンサー部11とダミー部12の間で断線部が形成される。断線部の長さは3〜100μmであることが好ましく、より好ましくは5〜20μmである。
図4の(4−a)では断線部は仮の境界線Rに沿った位置にのみ有しているが、それ以外にもダミー部12中には任意の数の断線部を任意の位置に設けることもできる。
【0029】
本発明においては、センサー部11および/またはダミー部12は、例えば前述した36個の四角形で平面充填された四角形の縮小四角形内の母点によって形成されたボロノイ図形を単位パターンとし、この単位パターン領域を光透過性導電層内で繰り返すことで、形成するようにしても良い。
図6はこの単位パターン領域を説明するための概略図である。(6−a)は、網目形状を有する単位パターン領域の例である。網目形状を有する単位パターン領域61を繰り返した例が(6−b)である。(6−b)において単位パターン領域61の網目形状は、四角64で囲まれた単位パターン領域の範囲内において周期は存在しない。この単位パターン領域61(x方向の長さが62、y方向の長さが63)が、x方向に繰り返し周期62、y方向に繰り返し周期63で繰り返されて、一連の大きな金属パターンを形成している。ボロノイ図形による単位パターン領域をこのように繰り返した場合、隣り合う単位パターン領域との境界部で金属細線同士が繋がらず、特にセンサー部11においては断線してしまうことがあるので、単位パターン領域61の四角64上に位置する金属細線の位置は、繰り返した際に隣り合う単位パターン領域の金属細線と繋がるように、適宜調整することが望ましい。
【0030】
図6の(6−b)では、四角64の単位パターン領域61を光透過性導電層面内でx方向とy方向の2方向に繰り返して一連の大きな金属パターンを形成しているが、単位パターン領域61の範囲の輪郭形状は、それを用いて平面充填できる形状であれば、例えば正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形などの四角形、正六角形、及びこれらや他の形状との2種類以上の組み合わせなど、どのような形状でも構わない。また、繰り返す方向も単位パターン領域の範囲の輪郭形状に合わせて、光透過性導電層面内における少なくとも二方向を選択することができる。
【0031】
本発明においてセンサー部11、およびダミー部12(場合によっては周辺配線部14および端子部15等も)を構成する金属パターンは金属から構成され、該金属パターンは金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、及びこれらの複合材からなることが好ましい。これら金属パターンを形成する方法としては、銀塩感光材料を用いる方法、同方法を用いて得られた銀画像に無電解めっきや電解めっきを施す方法、スクリーン印刷法を用いて銀ペースト、銅ペーストなどの導電性インキを印刷する方法、銀インクや銅インクなどの導電性インクをインクジェット法で印刷する方法、あるいは蒸着やスパッタなどで導電性層を形成し、その上にレジスト膜を形成し、露光、現像、エッチング、レジスト層除去することで得る方法、銅箔などの金属箔を貼り、更にその上にレジスト膜を形成し、露光、現像、エッチング、レジスト層除去することで得る方法など、公知の方法を用いることができる。中でも製造される金属パターンの厚みが薄くでき、更に極微細な金属パターンも容易に形成できる銀塩拡散転写法を用いることが好ましい。これらの方法で作製した金属パターンの厚みは、厚すぎると後工程(例えば他の基材との貼合)が困難になる場合があり、また薄すぎるとタッチパネルとして必要な導電性を確保し難くなる。よって、その厚みは0.01〜5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜1μmである。またセンサー部11とダミー部12が有するボロノイ図形(ボロノイ辺)の線幅は好ましくは1〜20μm、より好ましくは2〜7μmである。センサー部11とダミー部12の全光線透過率は好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上である。また、センサー部11とダミー部12の全光線透過率は、差が±0.1%以内であることが好ましく、同じであることがより好ましい。センサー部11とダミー部12のヘイズ値は2以下が好ましい。センサー部11とダミー部12のb
*値は2.0以下が好ましく、1.0以下がより好ましい。
【0032】
本発明の光透過性導電材料が有する光透過性基材としては、ガラスやあるいはポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂等の公知の光透過性を有するシートを用いることが好ましい。ここで光透過性とは全光線透過率が60%以上であることを意味する。光透過性基材の厚みは50μm〜5mmであることが好ましい。また光透過性基材は指紋防汚層、ハードコート層、反射防止層、防眩層などの公知の層を有していても良い。
【0033】
本発明の光透過性導電材料は、前記した光透過性導電層を有する以外にも、ハードコート層、反射防止層、粘着層、防眩層など公知の層を任意の場所に有することができる。また、光透過性基材と光透過性導電層との間に、物理現像核層、易接着層、接着層など公知の層を有することができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0035】
<光透過性導電材料1>
光透過性基材として、厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。なおこの光透過性基材の全光線透過率は91%であった。
【0036】
次に下記処方に従い、物理現像核層塗液を作製し、上記光透過性基材上に塗布、乾燥して光透過性基材上に物理現像核層を設けた。
【0037】
<硫化パラジウムゾルの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
塩酸 40ml
蒸留水 1000ml
B液 硫化ソーダ 8.6g
蒸留水 1000ml
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
【0038】
<物理現像核層塗液の調製>銀塩感光材料の1m
2あたりの量
前記硫化パラジウムゾル 0.4mg
2質量%グリオキザール水溶液 0.2ml
界面活性剤(S−1) 4mg
デナコールEX−830 50mg
(ナガセケムテックス(株)製ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル)
10質量%SP−200水溶液 0.5mg
((株)日本触媒製ポリエチレンイミン;平均分子量10,000)
【0039】
続いて、光透過性基材に近い方から順に下記組成の中間層、ハロゲン化銀乳剤層、及び保護層を上記物理現像核液層の上に塗布、乾燥して、銀塩感光材料を得た。ハロゲン化銀乳剤は、写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀95モル%と臭化銀5モル%で、平均粒径が0.15μmになるように調製した。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸を用い、金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀1gあたり0.5gのゼラチンを含む。
【0040】
<中間層組成/1m
2あたり>
ゼラチン 0.5g
界面活性剤(S−1) 5mg
染料1 50mg
【0041】
【化1】
【0042】
【化2】
【0043】
<ハロゲン化銀乳剤層1組成/1m
2あたり>
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3.0g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0044】
<保護層1組成/1m
2あたり>
ゼラチン 1g
不定形シリカマット剤(平均粒径3.5μm) 10mg
界面活性剤(S−1) 10mg
【0045】
このようにして得た銀塩感光材料に、
図1のパターンの画像を有する透過原稿をそれぞれ密着し、水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介して露光した。なお、透過原稿の一部を拡大したのが
図7である(
図7には仮の境界線も示している)。センサー部11のy方向の最も狭い部分は0.8mmであった。
図7において、センサー部11とダミー部12が有するボロノイ図形を作製するにあたり、x、y方向に並び、x方向の一辺の長さが0.6mm、y方向の一辺の長さが0.15mmである長方形を平面充填し、その80%の縮小長方形の中に、母点をランダムに配置した。なお、前記したセンサー部11におけるy方向の最も狭い部分における長方形の数は5.3個である。ボロノイ辺の線幅は4μmとした。センサー部分とダミー部分との境界には20μmの断線部を設け、センサー部の全光線透過率は89.5%、ダミー部のそれは89.5%である。
【0046】
その後、下記拡散転写現像液中に20℃で60秒間浸漬した後、続いてハロゲン化銀乳剤層、中間層、および保護層を40℃の温水で水洗除去し、乾燥処理した。こうして光透過性導電層として、
図1の形状を有する金属銀画像を有する光透過性導電材料1を得た。得られた光透過性導電材料が有する光透過性導電層の金属銀画像は、
図1および
図7のパターンを有する透過原稿と同じ形状、同じ線幅であった。また金属銀画像の膜厚は共焦点顕微鏡で調べ、0.1μmであった。
【0047】
<拡散転写現像液組成>
水酸化カリウム 25g
ハイドロキノン 18g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸カリウム 80g
N−メチルエタノールアミン 15g
臭化カリウム 1.2g
全量を水で1000ml
pH=12.2に調整する。
【0048】
<光透過性導電材料2>
図1のパターンを有する透過原稿であるが、ボロノイ図形の作製において、x方向の一辺の長さが0.333mm、y方向の一辺の長さが0.27mmである長方形を平面充填し、その80%の縮小長方形の中に、母点をランダムに配置した以外は光透過性導電材料1と同様にして光透過性導電材料2を得た。センサー部11におけるy方向の最も狭い部分における長方形の数は2.96個である。パターンの線幅、全光線透過率は光透過性導電材料1と同じである。
【0049】
<光透過性導電材料3>
図1のパターンを有する透過原稿であるが、ボロノイ図形の作製において、一辺の長さが0.3mmである正方形を平面充填し、その80%の縮小正方形の中に、母点をランダムに配置した以外は光透過性導電材料1と同様にして光透過性導電材料3を得た。センサー部11におけるy方向の最も狭い部分における正方形の数は2.67個である。パターンの線幅、全光線透過率は光透過性導電材料1と同じである。
【0050】
<光透過性導電材料4>
図1のパターンを有する透過原稿であるが、ボロノイ図形の作製において、x方向の一辺の長さが0.9mm、y方向の一辺の長さが0.1mmである長方形を平面充填し、その80%の縮小長方形の中に、母点をランダムに配置した以外は光透過性導電材料1と同様にして光透過性導電材料4を得た。センサー部11におけるy方向の最も狭い部分における長方形の数は8個である。パターンの線幅、全光線透過率は光透過性導電材料1と同じである。
【0051】
<光透過性導電材料5>
図1のパターンを有する透過原稿であるが、ボロノイ図形の作製において、x方向の一辺の長さが0.9mm、y方向の一辺の長さが0.1mmである長方形を平面充填し、その90%の縮小長方形の中に、母点をランダムに配置した以外は光透過性導電材料1と同様にして光透過性導電材料5を得た。センサー部11におけるy方向の最も狭い部分における長方形の数は8個である。パターンの線幅、全光線透過率は光透過性導電材料1と同じである。
【0052】
<光透過性導電材料6>
図1のパターンを有する透過原稿であるが、ボロノイ図形の代わりに、x方向とy方向に対角線を有し、x方向の対角線の長さが500μm、y方向の対角線の長さが260μの菱形を単位図形とし、この単位図形が繰り返してなる網目形状を用いた透過原稿を用いた以外は光透過性導電材料1と同様にして光透過性導電材料6を得た。センサー部11におけるy方向の最も狭い部分における菱形の数は3.08個である。なお、パターンの線幅は4μm、センサー部及びダミー部の全光線透過率は89.3%である。
【0053】
得られた光透過性導電材料1〜6について、視認性、及び抵抗値の安定性(信頼性)について評価した。結果を表1に示す。なお、視認性については、得られた光透過性導電材料を、全面白画像を表示したFlatron23EN43V−B2 23型ワイド液晶モニタ(LG Electronics社製)の上に載せ、モアレ、あるいは砂目がはっきり出ているものを×、よく見ればわかるものを△、全くわからないものを○とした。抵抗値の安定性については、温度85℃湿度95%RHの環境下に各光透過性導電材料を600時間放置した後、
図1における端子部15とそれと電気的に接続している端子部15の間の導通を全端子間について調べ、断線の発生している割合を調べた。
【0054】
【表1】
【0055】
表1の結果から、本発明によって静電容量方式を用いたタッチパネルの光透過性電極として好適な、液晶ディスプレイに重ねてもモアレが発生せず、かつ視認性が良好で抵抗値の安定性(信頼性)に優れた光透過性導電材料が得られることがわかる。