(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ピストン用シール部材は、カップシールであり、前記ピストン用シール部材の外周縁部は反圧力室側から圧力室側へのブレーキ液の流通のみを許容することを特徴とする請求の範囲第2項に記載のシリンダ装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、本発明のシリンダ装置であるモータシリンダ装置を、
図1に示す車両用ブレーキシステムAに適用した場合を例として説明する。
【0015】
図1に示す車両用ブレーキシステムAは、原動機(エンジンや電動モータ等)の起動時に作動するバイ・ワイヤ(By Wire)式のブレーキシステムと、非常時や原動機の停止時などに作動する油圧式のブレーキシステムの双方を備えるものである。
車両用ブレーキシステムAは、ブレーキペダルP(ブレーキ操作子)の踏力によってブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダ装置A1と、電動モータ20を利用してブレーキ液圧を発生させるモータシリンダ装置A2と、車両挙動の安定化を支援する液圧制御装置A3と、を備えている。
マスタシリンダ装置A1、モータシリンダ装置A2および液圧制御装置A3は、別ユニットとして構成されており、外部配管を介して連通している。
【0016】
車両用ブレーキシステムAは、エンジン(内燃機関)のみを動力源とする自動車のほか、モータを併用するハイブリッド自動車やモータのみを動力源とする電気自動車・燃料電池自動車などにも搭載することができる。
【0017】
マスタシリンダ装置A1は、タンデム式のマスタシリンダ71と、ストロークシミュレータ72と、リザーバ73と、常開型遮断弁74,75と、常閉型遮断弁76と、圧力センサ77,78と、メイン液圧路79a,79bと、連絡液圧路79c,79dと、分岐液圧路79eとを備え、前記した各部品が基体60に組み付けられるとともに、各液圧路が基体60の内部に形成されている。
【0018】
マスタシリンダ71は、ブレーキペダルPの踏力をブレーキ液圧に変換するものであり、第一シリンダ穴61aの底面側に配置された第一ピストン71aと、プッシュロッドP1に接続された第二ピストン71bと、第一シリンダ穴61aの底面と第一ピストン71aとの間の第一圧力室71eに収容された第一弾性部材71cと、両ピストン71a,71bの間の第二圧力室71fに収容された第二弾性部材71dと、を備えている。
【0019】
第二ピストン71bは、プッシュロッドP1を介してブレーキペダルPに連結されている。両ピストン71a,71bは、ブレーキペダルPの踏力を受けて第一シリンダ穴61a内を摺動し、両圧力室71e,71f内のブレーキ液を加圧する。両圧力室71e,71fには、メイン液圧路79a,79bがそれぞれ通じている。
【0020】
ストロークシミュレータ72は、ブレーキペダルPに対して擬似的な操作反力を発生させるものであり、第二シリンダ穴61b内を摺動するピストン72aと、ピストン72aを底面側に付勢する二つの弾性部材72b,72cと、を備えている。
ストロークシミュレータ72は、分岐液圧路79eおよびメイン液圧路79aを介して、マスタシリンダ71の第一圧力室71eに通じており、第一圧力室71eで発生したブレーキ液圧によってピストン72aが作動する。
【0021】
リザーバ73は、ブレーキ液を貯溜する容器であり、マスタシリンダ71に接続される給液穴73a,73bを有しており、メインリザーバ(図示せず)から延ばされたホースが接続されている。
【0022】
メイン液圧路79a,79bは、マスタシリンダ71を起点とする液圧路である。メイン液圧路79a,79bの終点である出力ポート65a,65bには、液圧制御装置A3に至る管材Ha,Hbが接続されている。
【0023】
連絡液圧路79c,79dは、入力ポート65c,65dからメイン液圧路79a,79bに至る液圧路である。入力ポート65c,65dには、モータシリンダ装置A2に至る管材Hc,Hdが接続されている。
【0024】
分岐液圧路79eは、第一圧力室71eに通じるメイン液圧路79aから分岐し、ストロークシミュレータ72に至る液圧路である。
【0025】
常開型遮断弁74,75は、メイン液圧路79a,79bを開閉するものであり、いずれもノーマルオープンタイプの電磁弁からなる。
一方の常開型遮断弁74は、メイン液圧路79aと分岐液圧路79eとの交差点からメイン液圧路79aと連絡液圧路79cとの交差点に至る区間においてメイン液圧路79aを開閉する。
他方の常開型遮断弁75は、メイン液圧路79bと連絡液圧路79dとの交差点よりも上流側においてメイン液圧路79bを開閉する。
【0026】
常閉型遮断弁76は、分岐液圧路79eを開閉するものであり、ノーマルクローズタイプの電磁弁からなる。
【0027】
圧力センサ77,78は、ブレーキ液圧の大きさを検知するものであり、メイン液圧路79a,79bに通じるセンサ装着穴(図示せず)に装着されている。
一方の圧力センサ77は、常開型遮断弁74よりも下流側に配置されており、常開型遮断弁74が閉じられた状態(メイン液圧路79aが遮断された状態)にあるときに、モータシリンダ装置A2で発生したブレーキ液圧を検知する。
他方の圧力センサ78は、常開型遮断弁75よりも上流側に配置されており、常開型遮断弁75が閉じられた状態(メイン液圧路79bが遮断された状態)にあるときに、マスタシリンダ71で発生したブレーキ液圧を検知する。
圧力センサ77,78で取得された情報は、図示しない電子制御ユニット(Electronic Control Unit)に出力される。
【0028】
マスタシリンダ装置A1は、管材Ha,Hbを介して液圧制御装置A3に連通しており、常開型遮断弁74,75が開弁状態にあるときにマスタシリンダ71で発生したブレーキ液圧は、メイン液圧路79a,79bおよび管材Ha,Hbを介して液圧制御装置A3に入力される。
【0029】
モータシリンダ装置A2は、タンデム式のスレーブシリンダ10と、電動モータ20と、駆動伝達部30と、リザーバ40と、を備えている(
図2参照)。
【0030】
スレーブシリンダ10は、マスタシリンダ71で発生したブレーキ液圧に対応したブレーキ液圧を発生させるものである。
スレーブシリンダ10は、基体11と、基体11に形成されたスレーブシリンダ穴11aの底面11d側に配置された第一スレーブピストン12と、スレーブシリンダ穴11aの開口部11e側に配置された第二スレーブピストン13と、スレーブシリンダ穴11aの底面11dと第一スレーブピストン12との間に形成された第一圧力室11bに収容された第一弾性部材14と、両スレーブピストン12,13の間に形成された第二圧力室11cに収容された第二弾性部材15と、を備えている。
【0031】
第二スレーブピストン13の後部には、駆動伝達部30のロッド31が当接している。そして、第一スレーブピストン12および第二スレーブピストン13は、ロッド31からの入力を受けてスレーブシリンダ穴11a内を摺動し、両圧力室11b,11c内のブレーキ液を加圧する。また、両圧力室11b,11cは、管材Hc,Hdにそれぞれ通じている。
【0032】
電動モータ20は、図示しない電子制御ユニットからの制御信号に基づいて駆動制御されるサーボモータであり、基体11の後部上側に配置され、駆動伝達部30に固定されている(
図2参照)。電動モータ20の後端面の中心部からは出力軸21が突出している。
【0033】
駆動伝達部30は、出力軸21の回転駆動力を直線方向の軸力に変換するものであり、基体11の後部に取り付けられている(
図2参照)。
【0034】
駆動伝達部30は、第二スレーブピストン13に当接しているロッド31と、ロッド31の外周面に形成された螺旋状のねじ溝に沿って転動する複数のボール32と、ボール32に螺合される筒状のナット部材33と、出力軸21の回転駆動力をナット部材33に伝達するギヤ機構34と、を備えている。前記した各部品はハウジング35内に収容されている。
【0035】
ハウジング35の前端部には、基体11に固定されるシリンダ固定部35aが設けられている。シリンダ固定部35aには、基体11の後部が挿入される開口部35bと、ハウジング35の外面に形成されたフランジ部35c(
図2参照)と、が形成されている。
ハウジング35の後部上側には、電動モータ20が固定されるモータ固定部35dが形成されている。モータ固定部35dには、出力軸21が挿入される開口部35eが形成されている。
【0036】
そして、出力軸21の回転駆動力がギヤ機構34を介してナット部材33に入力されると、ナット部材33とロッド31との間に設けられたボールねじ機構によって、ロッド31に直線方向の軸力が付与され、ロッド31が軸方向に進退移動する。
【0037】
リザーバ40は、ブレーキ液を貯溜する容器であり、スレーブシリンダ10の基体11の前部上側に配置されている(
図2参照)。リザーバ40は、基体11に接続される給液部41,42を有しており、メインリザーバ(図示せず)から延ばされたホースが接続されている。
【0038】
モータシリンダ装置A2は、管材Hc,Hdを介してマスタシリンダ装置A1に連通している。そして、常開型遮断弁74,75が閉弁状態にあるときに、モータシリンダ装置A2で発生したブレーキ液圧は、管材Hc,Hdを介してマスタシリンダ装置A1に入力され、連絡液圧路79c,79dおよび管材Ha,Hbを介して、液圧制御装置A3に入力される。
【0039】
液圧制御装置A3は、車輪のスリップを抑制するアンチロックブレーキ制御(ABS制御)、車両の挙動を安定化させる横滑り制御やトラクション制御などを実行し得るような構成を具備しており、管材を介してホイールシリンダWに接続されている。
なお、図示は省略するが、液圧制御装置A3は、電磁弁やポンプ等が設けられた液圧ユニット、ポンプを駆動するための電動モータ、電磁弁やモータ等を制御するための電子制御ユニットなどを備えている。
【0040】
次に車両用ブレーキシステムAの動作について概略説明する。
車両用ブレーキシステムAが正常に機能する正常時には、常開型遮断弁74,75が閉弁するとともに、常閉型遮断弁76が開弁する。
この状態でブレーキペダルPを操作すると、マスタシリンダ71で発生したブレーキ液圧は、ホイールシリンダWに伝達されずに、ストロークシミュレータ72に伝達され、ピストン72aが変位することにより、ブレーキペダルPのストロークが許容されるとともに、擬似的な操作反力がブレーキペダルPに付与される。
【0041】
また、図示しないストロークセンサ等によって、ブレーキペダルPの踏み込みが検知されると、モータシリンダ装置A2の電動モータ20が駆動され、スレーブシリンダ10の両スレーブピストン12,13が変位することにより、両圧力室11b,11c内のブレーキ液が加圧される。
図示しない電子制御ユニットは、スレーブシリンダ10から出力されたブレーキ液圧(圧力センサ77で検知されたブレーキ液圧)と、マスタシリンダ71から出力されたブレーキ液圧(圧力センサ78で検知されたブレーキ液圧)とを対比し、その対比結果に基づいて電動モータ20の回転数等を制御する。
【0042】
スレーブシリンダ10で発生したブレーキ液圧は、液圧制御装置A3を介して各ホイールシリンダWに伝達され、各ホイールシリンダWが作動することにより、各車輪に制動力が付与される。
【0043】
なお、モータシリンダ装置A2が作動しない状況(例えば、電力が得られない場合や非常時など)においては、常開型遮断弁74,75がいずれも開弁状態となり、常閉型遮断弁76が閉弁状態となるので、マスタシリンダ71で発生したブレーキ液圧は、ホイールシリンダWに伝達されるようになる。
【0044】
次に、モータシリンダ装置A2のスレーブシリンダ10の具体的な構造を説明する。
【0045】
基体11は、アルミニウム合金製の鋳造品であり、
図3に示すように、有底円筒状のスレーブシリンダ穴11aが前後方向に延在している。スレーブシリンダ穴11aは、前側(
図3の左側)に底面11dが形成され、後側(
図3の右側)に開口部11eが形成されている。
また、基体11の後部にハウジング取付部16が形成され、基体11の上部にリザーバ取付部17が形成されている。
【0046】
ハウジング取付部16の外面には、
図2に示すように、フランジ部16bが形成されている。ハウジング取付部16のフランジ部16bと、シリンダ固定部35aのフランジ部35cとをボルトB1によって固着することで、基体11の後部に駆動伝達部30が連結されている。
【0047】
スレーブシリンダ穴11aには、
図3に示すように、第一スレーブピストン12および第二スレーブピストン13が配置されており、底面11dと第一スレーブピストン12との間には第一圧力室11bが形成され、両スレーブピストン12,13の間には第二圧力室11cが形成されている。
図1に示すように、第一圧力室11bは接続ポート11fを介して管材Hcに通じており、第二圧力室11cは接続ポート11gを介して管材Hdに通じている。
【0048】
第一スレーブピストン12は、
図4に示すように、円形断面の軸部材12aからなる金属部品である。軸部材12aの前部の外周面に第一フランジ部12bが形成され、軸部材12aの軸方向の略中間部の外周面に第二フランジ部12cが形成されている。
【0049】
第一フランジ部12bには、
図5(a)に示すように、補給路12iが軸方向に貫通している。補給路12iは、第一圧力室11b側および反第一圧力室11b側に開口した円筒状の貫通穴である。本実施形態では、六つの補給路12iが第一フランジ部12bの周方向に等間隔に配置されている。
【0050】
図3に示すように、軸部材12aにおいて、第一フランジ部12bと第二フランジ部12cとの間の中間軸部には、貫通穴12hが上下方向に貫通している。貫通穴12hは、軸部材12aの軸方向に延ばされた長穴であり(
図4参照)、後記する規制部材19が挿通されている。
【0051】
また、軸部材12aの後端面12fには、有底円筒状の挿入穴12gが開口している(
図4参照)。
【0052】
第一フランジ部12bの前面には、第一フランジ部12bよりも前方に突出した円形断断面の突起部12eに外嵌された環状のゴム部品である第一ピストン用シール部材18aが接している。第一ピストン用シール部材18aによって各補給路12iの前側(第一圧力室11b側)の開口部が塞がれている。
【0053】
第一ピストン用シール部材18aは、突起部12eの基部12dに外嵌される円筒部18bと、円筒部18bの後端縁部から径方向に張り出されたリップ部18cと、を備えたカップシールである。リップ部18cは外方に向かうに従って前側(第一圧力室11b側)に傾斜しており、リップ部18cの外周面がスレーブシリンダ穴11aの内周面に接している。
【0054】
突起部12eには、第一ピストン用シール部材18aの抜け止めを構成する環状の抜け止め部材12jが外嵌されている。抜け止め部材12jは、突起部12eの基部12dおよび第一ピストン用シール部材18aの円筒部18bに当接している。
【0055】
第二フランジ部12cの後側には、軸部材12aの全周に亘って凹溝12kが形成されている。凹溝12kには、カップシールである第二ピストン用シール部材18dが外嵌されている。
【0056】
規制部材19は、スレーブシリンダ穴11a内に突出している。本実施形態の規制部材19は、スレーブシリンダ穴11aを上下方向に貫通した棒状の部材であり、第一スレーブピストン12の貫通穴12hに挿通されている。規制部材19の上端部はスレーブシリンダ穴11aの内周面に開口した取付穴11hに挿入され、下端部はスレーブシリンダ穴11aの内周面に開口した凹部11iに挿入されている。
【0057】
なお、第一スレーブピストン12が後進したときには、貫通穴12hの内周面の前端部が規制部材19に当接することで、第一スレーブピストン12の後退限が規制される。また、第一スレーブピストン12が前進したときには、貫通穴12hの内周面の後端部が規制部材19に当接することで、第一スレーブピストン12の前進限が規制される。
【0058】
第一圧力室11bには、第一弾性部材14が収容されている。第一弾性部材14は、スレーブシリンダ穴11aの底面11dと、第一スレーブピストン12の前端面12d(抜け止め部材12j)との間に介設されたコイルばねである。第一弾性部材14は、第一スレーブピストン12が前進したときに圧縮され、その弾性力によって第一スレーブピストン12を後退限(初期位置)に復帰させる。
【0059】
第二スレーブピストン13は、
図4に示すように、円形断面の軸部材13aからなる金属部品である。軸部材13aの軸方向の略中間部の外周面には、第一フランジ部13bおよび第二フランジ部13cが形成されている。第一フランジ部13bには、複数の補給路13iが軸方向に貫通している。
【0060】
第一フランジ部13bの前面には、
図3に示すように、軸部材13aに外嵌されたカップシールである第三ピストン用シール部材18eが接している。
第二フランジ部13cの後側には、スレーブシリンダ穴11aの開口部11eに内嵌されたガイド部材18fが設けられている。ガイド部材18fは、中心部に貫通穴が形成されており、軸部材13aが摺動自在に内挿されている。ガイド部材18fは、スレーブシリンダ穴11aの内周面と軸部材13aの外周面との間をシールしている。
【0061】
軸部材13aの前部は、第一スレーブピストン12の挿入穴12gに挿入されている。軸部材13aの前部に形成された貫通穴13dには、挿入穴12g内に突出した規制部材13eが挿通されている。そして、第二スレーブピストン13がスレーブシリンダ穴11a内を前後進したときに、貫通穴12gの内周面が規制部材13eに当接することで、第二スレーブピストン13の前進限および後退限が規制される。
【0062】
軸部材13aの後端面13fには、有底円筒状のガイド穴13gが開口している(
図4参照)。
図1に示すように、ガイド穴13gには、駆動伝達部30のロッド31が挿入されており、ロッド31の前端面がガイド穴13gの底面13hに当接している。
【0063】
第二弾性部材15は、
図3に示すように、第三ピストン用シール部材18eの前側で、軸部材13aを囲繞しているコイルばねである。第二弾性部材15は、第一スレーブピストン12の後端部と、第二スレーブピストン13の第一フランジ部13bとの間に介設されている。
第二弾性部材15は、第二スレーブピストン13が前進したときに、第一スレーブピストン12と第二スレーブピストン13との間で圧縮され、その弾性力によって第二スレーブピストン13を後退限(初期位置)に復帰させる。
【0064】
リザーバ取付部17は、リザーバ40の取付座となる部位であり、基体11の上部に形成されている。リザーバ取付部17は、前後のリザーバユニオンポート17a,17bと、第一連通穴17c(
図5(a)参照)と、第二連通穴17dと、連結部17eと、を備えている。
【0065】
前後のリザーバユニオンポート17a,17bは、いずれも円筒状を呈しており、基体11の上部に突設されている。また、リザーバユニオンポート17a,17bの内周面の上部には拡径部17fが形成されている。
また、前後のリザーバユニオンポート17a,17bの間には連結部17eが設けられている。
【0066】
前側のリザーバユニオンポート17aの底面17gには、
図5(b)に示すように、円筒状の取付穴11hが開口している。取付穴11hは、底面17gからスレーブシリンダ穴11aの内周面に貫通している。取付穴11hには規制部材19の上部が挿入されている。
取付穴11hは、底面17gの中心よりも後側に位置しており、底面17gの外周縁部の近傍に開口している。
【0067】
また、前側のリザーバユニオンポート17aの底面17gには、第一連通穴17cが開口している。
図5(a)に示すように、第一連通穴17cは、上端がリザーバユニオンポート17aの底面17gに開口し、下端がスレーブシリンダ穴11aの内周面に開口した円筒状の貫通穴である。
【0068】
第一連通穴17cは、
図5(b)に示すように、第一圧力室11bが加圧されたときに、第一圧力室11bからブレーキ液が流入しないように、第一ピストン用シール部材18aの後側(反第一圧力室11b側)でスレーブシリンダ穴11aの内周面に開口している必要がある。
第一スレーブピストン12が後退限に位置した状態(
図5(b)の状態)では、第一ピストン用シール部材18aが、底面17gの前部に重なる位置まで後退し、第一連通穴17cの下端部が第一フランジ部12bの外周面に重なる位置に開口している状態となる。このように、第一ピストン用シール部材18aと取付穴11hとの前後方向の間隔が小さくなるため、底面17gの中央領域に第一連通穴17cを開口させることが難しい。
【0069】
そこで、本実施形態では、第一連通穴17cを、底面17gの中心に対して、
図5(b)の右側の領域に開口させている。このように、第一連通穴17cを底面17gの中央領域から横方向にずらして、底面17gの外周縁部の近傍に開口させることで、第一連通穴17cを第一ピストン用シール部材18aの後側に配置しつつも、第一連通穴17cと取付穴11hとの干渉を避けることができる。
【0070】
図3に示すように、第二連通穴17dの一端は後側のリザーバユニオンポート17bの内周面に開口し、第二連通穴17dの他端は第二スレーブピストン13の第一フランジ部13bの後側でスレーブシリンダ穴11aの内周面に開口している。
【0071】
前後のリザーバユニオンポート17a,17bには、リザーバ40の下面に突設された円筒状の給液部41,42がそれぞれ挿入されており、リザーバユニオンポート17a,17bの上端には、リザーバ40の容器本体43が載置される。
前後の給液部41,42の間に形成された連結部45(
図2参照)は、スプリングピン45aによって、リザーバ取付部17の連結部17eに固定されている。
【0072】
給液部41,42には、容器本体43の貯溜空間43aに連通する給液穴41a,42aが上下方向に貫通している。
貯溜空間43aは、前側の給液穴41aおよび第一連通穴17c(
図5(a)参照)を介してスレーブシリンダ穴11aに連通している。貯溜空間43a内のブレーキ液は、第一連通穴17cからスレーブシリンダ穴11aの内周面と第一フランジ部12bの外周面との隙間を通じて、第一フランジ部12bの後側に流入する。
また、貯溜空間43aは、後側の給液穴42aおよび第二連通穴17dを介してスレーブシリンダ穴11aに連通している。
【0073】
ブレーキパッドの磨耗や車両挙動制御時の吸引作用によって、第一圧力室11b内のブレーキ液圧が、第一ピストン用シール部材18aの後側のブレーキ液圧よりも低下すると、その圧力差によって第一ピストン用シール部材18aのリップ部18cが内側に撓んだ状態となり、ブレーキ液が第一ピストン用シール部材18aの外周縁部を後側から前側に越えて第一圧力室11bに流入する。
【0074】
このように、第一ピストン用シール部材18aの外周縁部に形成されたリップ部18cは、後側(反第一圧力室11b側)から前側(第一圧力室11b側)へのブレーキ液の流入のみを許容する逆止弁を構成している。
したがって、第一スレーブピストン12の前進時には、第一圧力室11bから第一ピストン用シール部材18aの後側(第一連通穴17c側)へのブレーキ液の流入を防ぎつつ、第一圧力室11bのブレーキ液圧が低下した場合には、第一ピストン用シール部材18aの外周縁部を越えて第一圧力室11bにブレーキ液を供給することができる。
【0075】
また、ブレーキ液は、第一スレーブピストン12の第一フランジ部12bの後側から各補給路12iを通じて、第一ピストン用シール部材18aの後側(第一フランジ部12bの前側)に流入する。
したがって、車両挙動制御時の吸引作用によって、第一圧力室11bのブレーキ液圧が大きく低下する場合など、第一圧力室11bに吸引されるブレーキ液の流量が大きい場合でも、各補給路12iを通じて、第一圧力室11bにブレーキ液をスムーズに流入させることができる。
【0076】
また、第二圧力室11cにブレーキ液が吸引される場合には、第三ピストン用シール部材18eの外周縁部を越えて第二圧力室11cに流入する。
【0077】
前後のリザーバユニオンポート17a,17bの拡径部17fには、給液部41,42に外嵌された環状のリザーバ用シール部材44が内嵌されている。リザーバ用シール部材44は、リザーバユニオンポート17a,17bの内周面と、給液部41,42の外周面との間をシールするゴム部品である。
この構成では、リザーバユニオンポート17aの底面17gに形成された取付穴11hおよび第一連通穴17cは、リザーバ用シール部材44によって、外部空間に対してシールされていることになる。
【0078】
前側の給液部41は、
図5(b)に示すように、取付穴11hに対向して配置される抜け止め部41cと、第一連通穴17cに対向して配置される切り欠き部41dと、を有している(
図5(a)参照)。つまり、給液部41の上半分は、周方向に切れ目のない完全な円筒状であり、給液部41の下半分は、周方向の略半分を欠損させた円弧状(C形状)の軸断面となっている。
【0079】
抜け止め部41cは、
図3に示すように、リザーバユニオンポート17aの底面17gの近傍に配置されている。このように、抜け止め部41cが規制部材19の上方に配置されることで、取付穴11hからの規制部材19の抜け止めが構成されている。
【0080】
切り欠き部41dは、
図5(b)に示すように、給液部41の先端側に軸方向に延ばされており、給液部41の下端縁部41bの周方向の略半分(
図5(b)の右側)を欠損させた部位である。切り欠き部41dは、リザーバ用シール部材44の近傍まで高さ方向に欠損しており、切り欠き部41dによって第一連通穴17cの上方の空間が広くなっている。
【0081】
以上のようなモータシリンダ装置A2では、
図5(a)に示すように、リザーバ40の給液部41の下端縁部41bによって規制部材19の抜け止めが構成されている。また、給液部41に外嵌されたリザーバ用シール部材44によって、規制部材19の取付穴11hが外部空間に対してシールされている。このように、基体11のスペースを有効に利用して規制部材19が設けられているため、部品点数を低減することができるとともに、基体11を小型化することができる。
【0082】
また、リザーバユニオンポート17aの内周面と給液部41の外周面との隙間Sに空気が入り込んだとしても、給液部41の切り欠き部41dを通じてリザーバ40内に空気が排出されるため、リザーバユニオンポート17a内に空気が溜まるのを防ぐことができる。なお、切り欠き部41dはリザーバ用シール部材44の近傍まで形成されているため、リザーバユニオンポート17aの内周面と給液部41の外周面との隙間Sから空気を確実に排出することができる。
【0083】
また、第一連通穴17cが給液部41の切り欠き部41dに対向する位置に形成されているため、給液部41から第一連通穴17cにブレーキ液のスムーズに流入させることができる。
また、給液部41に切り欠き部41dを形成することで、第一連通穴17cをリザーバユニオンポート17aの底面17gの外周縁部に寄せることができるため、スレーブシリンダ10の設計の自由度を高めることができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である
。
【0085】
また、
図5(a)に示すように、第一スレーブピストン12の第一フランジ部12bには、六つの補給路12iが形成されているが、その数は限定されるものではない。さらに、第一フランジ部12bの外周縁部に形成した溝部によって補給路を構成してもよい。