【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、この課題は、主たる請求項の特徴を備える装置によって解決される。本発明の好適な設計および更なる発展形は、従属請求項の特徴によるものである。
【0005】
本発明にかかる装置は、第1端に供給用開口部と、第2端に排出用開口部とを有する分離チャンバを備える。上記分離チャンバは、円筒形状または円錐台形状の分離チャンバ壁に取り囲まれており、この分離チャンバ壁は、通常、供給側端部が上で排出側端部が下となって垂直方向を向いている。このような垂直配置により、物質を上から重量計量的に供給することができる。
【0006】
上記分離チャンバは、この分離チャンバ壁の円筒形状によって規定される円筒軸の方向に、少なくとも2つ、好ましくは3つの連続した区間を有する。上記3つの区間のそれぞれには、それぞれロータ筐体と衝撃ツールとを有する少なくとも1つのロータが配され、この衝撃ツールは、少なくとも本装置の動作中、ロータ筐体から分離チャンバ内へ半径方向に延びる。例えば衝撃ツールとして鎖が用いられる場合、これらの鎖は、当然ながら、対応するロータが十分な速度で回転している場合にのみ分離チャンバ内に半径方向に延びる。本請求項のために、このような衝撃ツールもまた、ロータ筐体から分離チャンバ内に半径方向に延びる衝撃ツールとみなされる。上記衝撃ツールによって、場合によっては後述のように分離チャンバ壁に配されたバッフルプレートと接続して、後述のようなやり方で集合体を細分化することができる。
【0007】
上記ロータは、その連続した区間に、半径が分離チャンバの第2端に向かって大きくなるロータ筐体を含み、各ロータ筐体の半径と分離チャンバの半径との差は第1端から第2端に向かって小さくなる。したがって、上記ロータのロータ筐体は、連続した区間がおおよそ円錐形状であり、この円錐の半径が第1端から第2端に向かって大きくなる。このように、供給用開口部から供給される物質集合体が、分離チャンバ内を進むにつれてより半径方向外側に位置し、衝撃ツールの速度が対応して内側のエリアよりも早くなることを実現することができる。上記円錐は、その直径が第2端に向かって連続的または段階的、例えばカスケード状に増加する。上記分離チャンバ壁の半径は、同じであっても、供給用開口部から排出用開口部に向かって大きくなってもよく、これによって分離チャンバ内で次第に長い距離を運動する粒子の速度が増加することにもなる。また、上記分離チャンバ壁の半径は第1端から第2端に向かって小さくなってもよい。上記分離チャンバ壁の半径が通常は底部に位置する第2端に向かって大きくなる場合、半径は連続的または段階的に変化してもよい。このために、いずれにせよ、各ロータ筐体の半径と分離チャンバ壁の半径との差は、この2つの半径の差が第1端から第2端に向かって軸方向に小さくなるよう調整されることになる。これにより、上記分離チャンバの容量は、物質が分離チャンバ内を軸方向に進行するにつれて小さくなり、これによって粒子密度の高まり、ひいては相互衝撃およびこの粒子の衝撃ツールまたはバッフルプレートに対する衝撃の増加につながるよう実現することになる。これに加えて、各隣接する区間におけるロータの回転方向は、逆回転であることが好ましい。このようにして、上記区間の1つにおいて衝撃ツールによって加速される粒子が、次の区間における二重反転衝撃ツールと真っ向から衝突することが実現される。よって、この衝突速度は、粒子速度と衝撃ツールの速度との和である。これにより、上記分離チャンバ壁の上記衝撃ツールおよび/またはバッフルプレートに対する上記金属粒子の衝突速度が極めて高いものとなり、これによって、密度および/またはコンシステンシーの異なる、例えば弾力性の異なる物質が内部に含まれる場合、集合体が破壊されることになる。また、異なる区間におけるロータの回転速度が、上記分離チャンバの第1端から第2端に向かって増加することが好ましい。また、このように、上記ロータの回転速度、したがって衝撃ツールの速度が増加するため、粒子密度が増加する範囲において衝突速度が分離チャンバの第2端に向かって増加することが実現できる。
【0008】
よって、上述した技術的特徴の組み合わせにより、一方では供給用開口部から分離チャンバに供給される集合体の速度は排出用開口部に向かって増加することになり、同時に粒子密度も増加することになる。これにより、上記分離チャンバの排出用開口部前の最後の区間において、集合体は、例えば200m/sを超える速度でバッフルプレートまたは衝撃ツールに衝突することが実現される。このように、上記物質集合体の破裂は、従来のハンマーミルやインパクトミルによって粉砕することなく実現することができる。そのため、特に集合体に含まれる金属粒子について、その粒子サイズを不都合に縮小させることなく取り出すことができる。
【0009】
したがって、提案される装置は、従来のハンマーミルやインパクトミルを用いては不可能なやり方で、例えば鉄または鉄を含まない金属などの金属をスラグ構造またはスケール構造から分離することを可能とする。この過程で、提案される装置は、金属部品自体を破壊することなく、分解対象の集合体の衝撃ツールおよび/またはバッフルプレートに対する衝撃エネルギーの最大化を実現する構成を用いる。その結果、経済的に妥当なやり方でスラグ内のごく小さな金属粒子でさえ、分解・分離することができる。したがって、本発明により、分離対象の集合体の衝突速度を極めて高いものとすることができ、これにより、ほんのわずかの粉砕効果で集合体を細分化することができるようになる。
【0010】
好ましくは、各区間におけるロータはそれぞれの駆動部を有しており、少なくとも1つの別の区間の駆動部とは独立して動作または制御可能である。このように、ロータの回転速度は、様々な分離対象の集合体に適用することができる。
【0011】
上記ロータ筐体は、円錐台状に構成されることが好ましい。これにより、集合体および金属粒子は、実質的に落下速度を減少させることなく分離チャンバの一層外側のエリアに搬送される。上記分離チャンバの連続した区間におけるロータのロータ筐体は、円錐台形状を形成することが好ましく、ここで、異なるロータのロータ筐体が合わせて円錐形状または円錐台形状を形成するように、直接連続した円錐台の互いに向き合う端部における直径が同じであることが好ましい。このように、分離チャンバの軸方向の物質の処理量を著しく低減することなく、供給される金属粒子および物質集合体を分離チャンバ全体で半径方向に外側のエリアに向かって搬送することができる。ただし、上記1個のまたは複数のロータ筐体の直径の増加は段階的なものであってもよく、ここで、各区間においてロータ筐体の直径が一定である1つ以上の軸方向エリアが形成され、このロータ筐体の後続の段のエリアの直径がより大きいものであることが好ましい。このバージョンは、軸方向における分離チャンバでの物質の処理量がより妨げられるという問題を有している。
【0012】
好適な実施形態において、上記衝撃ツールは、容易に交換可能なようにロータに設けられたレセプタクルに保持される。また、交換の容易性の観点から、上記ロータ筐体は、同様にして上記ロータに設けられた複数の交換可能なロータ筐体要素から構成されることが好ましい。上記ロータ筐体により物質粒子を集合体から分離チャンバの半径方向に外側のエリアに搬送する際、ロータ筐体は多くの衝撃を受けてある程度摩耗するため、単に個々の損傷したロータ筐体要素を交換することによって、ロータ全体を交換しなければならない場合に比べると著しく費用効率がよくなる。
【0013】
以下に、例として、3つの区間を有する分離チャンバに基づいて、提案された装置を説明する。また、本装置は、2つの区間、または4以上の区間を有するものとして実現してもよく、基本的に同様の方法で機能する。以下、上記分離チャンバの第1端すなわち供給用開口部側の第1区間を、前処理チャンバと呼ぶ。この前処理チャンバから第2端に向かう方向に第2区間が続くが、これを加速チャンバと呼ぶ。残る第2端すなわち排出用開口部側に面した第3区間を、高速衝撃チャンバと呼ぶ。
【0014】
本発明の好適な変化形において、上記分離チャンバの第1および/または第2および/または第3区間には、軸方向にオフセットした2つ以上の衝撃ツール用のレセプタクルが設けられている。このようにして、分離チャンバの区間ごとに衝撃ツールの数を広い範囲で調整することができる。これは、先の2つの区間においては、粒子および集合体の加速の向上を伴い、第3区間においては、衝撃ツールに対する集合体または粒子の衝突の制御可能性を高めることになる。少なくとも第2区間においては、上記ロータ筐体が押し上げ棒を有してもよく、この押し上げ棒は軸方向および半径方向に分離チャンバ内に延びる。この押し上げ棒は、運動する物質の粒子をロータ筐体のエリアにおいてさらに奥に運び、分離チャンバのさらに半径方向外側のエリアにおいてこれらを加速し、この粒子を高速衝撃チャンバの衝撃ツールによってより効果的に細分化することができるようにする。この特徴は本発明の基本的な思想に有用であり、これによれば、上記衝撃ツールまたはバッフルプレートに対する粒子または集合体の衝突がおおよそ200m/sの範囲の速度で実現される程度まで、分離チャンバにおける全粒子の運動エネルギーを可能な限り増大させられることになる。このような衝撃速度により、金属部品自体を破断することなく、極めて確実に集合体の粉砕および制御された分解を実現することができるということが分かる。ただし、この過程において、端部において最速となる衝撃ツールの運動速度は、音速を超えてはならない。
【0015】
上記分離チャンバ内での粒子または集合体の衝突回数を増やすために、分離チャンバ壁上に内部に向かって軸方向および半径方向に延びるバッフルプレートを設けてもよい。このように、上記衝撃ツールによって加速された粒子がこれらのバッフルプレートに衝突して細分化することができる。
【0016】
上記装置が意図されたように動作する場合、その結果として、供給用開口部から排出用開口部すなわち第1端から第2端に向かって集合体または粒子の物質流が生じる。上記装置の好適な実施形態において、分離チャンバ内の物質流の供給方向に後続の区間は、その前の区間よりも多数の衝撃ツールを備えてもよい。これは、粒子と衝撃ツールとの衝突のより多くが、上記衝撃ツールがより高速となる区間にシフトするという利点がある。よって、例えば前処理チャンバ内の衝撃ツールの数をさらに少なくすることもできるが、これは、上記前処理チャンバの目的が、集合体の粒子が後続の加速チャンバの衝撃ツールの運動範囲に入ることができるよう、粒子を半径方向に外側に向かって運ぶことであるためである。したがって、加速チャンバにはより多数の衝撃ツールを設ける必要がある。さらに、上記前処理チャンバにおいて、半径方向にさらに外側に位置するエリアに向かって粒子を効率的に搬送するために、ロータ筐体上に押し上げ棒を形成してもよい。
【0017】
物質流に沿って前処理チャンバの後に続く加速チャンバには、前処理チャンバよりも明らかに多くの衝撃ツールが設けられることが好ましい。これらの衝撃ツールは、外方向に向けて、また第2端、すなわち通常は高速衝撃チャンバの下方向に向かってに向けて、第2端付近に高密度で存在する粒子を加速するために用いられる。また、上記加速チャンバにおけるロータのロータ筐体には、粒子をさらに外側のエリアに搬送する機能を有する押し上げ棒が設けられていてもよい。ここで、粒子は、高速衝撃チャンバ方向へ移動しつつ、同時に加速チャンバ内のより多数の衝撃ツールによって大きく加速される。
【0018】
好ましくは、上記衝撃ツールのほとんどが、第3区間、すなわち高速衝撃チャンバに設けられている。これら衝撃ツールの目的は、この区間の分離チャンバにおいて、ロータ筐体の半径が大きくなるためより高密度で高速衝撃チャンバ内に存在する粒子を、高い確率で粉砕することである。衝撃ツールおよび対応するロータの回転速度は、高速衝撃チャンバ内が最も高くなることが好ましい。外側エリアでの衝撃ツールの速度は200m/sを超えるように選択されてもよいが、300m/s未満、すなわち音速を下回る速度であることが好ましい。したがって、第2端に向かって連続する区間において衝撃ツールの数を増やし回転速度を早くすること、および回転方向を二重反転とすることによって、特に、ある区間から次の区間への移行部分における衝撃エネルギーが最大となる。
【0019】
これにより、集合体の機械的分解がとりわけ効果的に行われることになる。個別の成分に分解された集合体は、排出用開口部を通じて分離チャンバから排出されたのち、例えばサイクロン、磁気選別器、または渦電流選別器など、従来の分別チャンバまたは選別チャンバなどの現在知られている方法で選別される。上記区間のうちのあるロータの回転速度は、第1端の側に配された区間のロータの回転速度に対して、1:1から5:1の間の割合、好ましくは2:1から4:1の間の割合であってもよい。これにより、金属粒子または金属を含有する粒子の衝突速度および衝撃ツールに対する衝突可能性を、最大化することができることがわかる。また、好ましくは、第2区間側の最後の区間におけるロータの回転速度は、ここでの衝撃ツールの縁端の絶対速度が100m/sから300m/sの間となるよう、好ましくは130m/sから200m/sの間、または200m/sから300m/sの間となるよう調整される。
【0020】
分離チャンバ壁の半径に対する第1区間のロータ筐体の半径の割合は、0.15から0.5の間の割合であることが好ましい。第2区間のロータ筐体の半径は、その割合が分離チャンバ壁の半径に対して0.34から0.65の間の割合であることが好ましい。第3区間における対応する割合は、0.55から0.85の間であることが好ましい。このようなロータ筐体の半径と分離チャンバ壁の半径の割合により、第2端に向かって粒子密度が高まるという利点と合わせて、半径方向にさらに外側に向って広がるエリアへの粒子の制御搬送が特に効果的に実現される。同時に、ロータ筐体の拡大は、分離チャンバ壁の半径がロータ筐体の半径と同じ割合では増加しないとしても、粒子の流れにそれほどの影響を与えない。さらに外側に向って広がるエリアでは内側のエリアよりも衝撃ツールの速度が速いため、これは最終的に粒子密度の増加および衝撃エネルギーの増加につながる。
【0021】
標準的な事例では、分離チャンバ内のロータ筐体の直径は、例えば、上から下に向って、500mmまたは600mmから、1400mmまたは1500mmに増加する。同時に、上記分離チャンバ壁の直径が、上部でおおよそ1200mmもしくは1300mmから下部でおおよそ1900mmまで増加してもよく、または1700mmから1900mmの範囲で一定であってもよい。いずれの場合にも、ロータ筐体と分離チャンバ壁との間の距離は第1端から第2端に向かって小さくなる。これは、少なくとも分離チャンバの軸方向のある程度の距離にわたって平均的に減少していけば十分である。ただし、例えば分離チャンバ壁が段階的に拡大するエリア、または分離チャンバ壁が1つ以上の有用とみなされる突起を含む場合などの個々の事例においては、ロータ筐体と分離チャンバ壁との間の距離が、局所的に分離チャンバの排出用開口部に向って増加すると安全である。3つの区間を有する上記の例で見込まれるロータの回転速度は、例えば、第1区間のロータについては500RPMまたは600RPMであり、第2区間のロータについては900RPMまたは1000RPMであり、第3区間のロータについては1400RPMまたは1500RPMである。第3区間のロータは、第1および第2区間のロータとは反対方向に回転し、第1および第2区間のロータは同じ方向に回転する。このようにして、第3区間すなわち高速衝撃チャンバの外側エリアにおいて、140m/sを超える衝撃ツールの速度を実現することができる。前処理チャンバおよび加速チャンバ内の粒子の逆加速により、200m/sを超える衝撃速度を実現することができる。
【0022】
このように、衝撃ツールおよび/またはバッフルプレートに衝突する際、金属粒子または金属を含有する粒子の集合体の衝突速度、ひいては衝撃エネルギーを、妥当かつ物理的に可能な範囲内で制御および最大化することができる。
【0023】
衝撃ツールは、例えば、鎖および/またはバッフルプレートから形成されてもよく、鎖および/またはバッフルプレートを含んでもよい。このような衝撃ツールは、例えばドイツ公開公報DE102005046207(A1)において実際に知られている。
【0024】
本装置は、分離チャンバの第1端に供給ホッパ、および/または分離チャンバの第2端に排出ホッパを有することが好ましい。この排出ホッパにより、機械的に分解された物質が、例えば、コンベヤベルトまたは選別装置の方に導かれる。
【0025】
上記の装置が、スラグ中の金属粒子の細分化に限定されるものではないことは明らかである。それどころか、あらゆるタイプの密度および/または弾力性の異なる物質を含む物質集合体の細分化に用いることができる。
【0026】
本装置の標準的な実施形態において分離チャンバ壁および/または衝撃ツールおよび/またはロータ筐体は、好ましくは、金属またはセラミック金属合成物質などの硬質で耐衝撃性のある物質で構成される。
【0027】
また、分離チャンバの1つ以上または全てにおいて、1つのロータだけでなく、2つ以上のロータが軸方向に連続して設けられてもよい。さらに、区間の数を変更してもよく、特に、2、3、4、5、またはそれ以上の数の区間があってもよい。
【0028】
上記分離チャンバ壁は、分離チャンバ壁に沿って上から落ちてくる物質を分離チャンバの内側の方向に向けてこの物質が再度衝撃ツールに届くようにするための、複数の環状の内側を向いた周辺突起を有することが好適である。このようにして、落ちてくる物質が衝撃ツールの運動範囲に戻り、効果的に粉砕のために供給される。