特許第6159729号(P6159729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オークソセル ラボラトリーズ, インコーポレイテッドの特許一覧

特許6159729細胞を処理するためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6159729
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】細胞を処理するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/08 20060101AFI20170626BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20170626BHJP
【FI】
   C12M3/08
   C12N5/0775
【請求項の数】24
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-540230(P2014-540230)
(86)(22)【出願日】2012年11月8日
(65)【公表番号】特表2014-534817(P2014-534817A)
(43)【公表日】2014年12月25日
(86)【国際出願番号】US2012064130
(87)【国際公開番号】WO2013070899
(87)【国際公開日】20130516
【審査請求日】2015年9月25日
(31)【優先権主張番号】61/557,127
(32)【優先日】2011年11月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514112617
【氏名又は名称】オークソセル ラボラトリーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】タギザデ, ルーズベ アール.
(72)【発明者】
【氏名】ミード, ジョン
【審査官】 川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/117821(WO,A1)
【文献】 特開平07−246085(JP,A)
【文献】 特開2007−289076(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0161818(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0139704(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0158226(US,A1)
【文献】 特表2001−509590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00−3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織細切ツールであって、
組織試料のための区画と、
ハンドルによって作動可能であり、かつ、前記区画内を移動可能である中実部材と、
前記区画の一端における回転可能な切断表面と、
滅菌密閉された容器と
を備え、
前記区画は、前記中実部材と前記回転可能な切断表面との間に前記組織試料を位置付けるように構成されており、一方向における前記ハンドルの作動が、前記中実部材を前記回転可能な切断表面に向かう方向のみに移動させ、
さらに、前記回転可能な切断表面は、前記中実部材を介して圧縮されて前記回転可能な切断表面に接触して前記回転可能な切断表面を通過する組織試料が、前記滅菌密閉された容器内に、細切された組織として堆積されるように、前記区画を前記滅菌密閉された容器から分離する、組織細切ツール。
【請求項2】
前記回転可能な切断表面は、4平方ミリメートル以下の平均断面を有する断片に前記組織試料を細切するように定寸される、請求項1に記載の組織細切ツール。
【請求項3】
前記平均断面は、1平方ミリメートル以下である、請求項2に記載の組織細切ツール。
【請求項4】
前記断片の平均断面を減少させるための第2の切断表面をさらに備える、請求項〜3のいずれか1項に記載の組織細切ツール。
【請求項5】
前記回転可能な切断表面は、自動切断システムを備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組織細切ツール。
【請求項6】
前記回転可能な切断表面に近接して位置付けられる少なくとも1つの細切器濾膜をさらに備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組織細切ツール。
【請求項7】
その動作の間、前記組織細切ツールを安定化させるための吸引カップをさらに備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組織細切ツール。
【請求項8】
前記滅菌密閉された容器と連通する流体導管と、前記流体導管内に配置されたフィルタとをさらに備える、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組織細切ツール。
【請求項9】
前記滅菌密閉された容器は、前記容器内への流体の滅菌導入を可能にする、少なくとも1つの密閉されたアクセスポートを備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組織細切ツール。
【請求項10】
前記区画の内部表面は、螺刻される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組織細切ツール。
【請求項11】
前記区画を密閉するためのガスケットをさらに備える、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組織細切ツール。
【請求項12】
その端部近傍の前記区画の一部は、一定断面を有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組織細切ツール。
【請求項13】
その端部近傍の前記区画の一部は、テーパ状または円錐形状である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組織細切ツール。
【請求項14】
前記中実部材は、前記区画の一部と噛合し、前記区画の一部を充填するように成形されている、請求項12または13に記載の組織細切ツール。
【請求項15】
前記回転可能な切断表面を前記組織試料に向かって移動させるためのシャフトクランクをさらに備える、請求項1に記載の組織細切ツール。
【請求項16】
請求項1に記載の組織細切ツールの前記中実部材と前記回転可能な切断表面との間に位置付けられた組織試料を細切する方法であって、
前記中実部材を介して前記組織試料を圧縮して前記組織細切ツールの前記回転可能な切断表面に接触させて前記回転可能な切断表面を通過させることを含む、方法。
【請求項17】
組織試料を消化させる方法であって、
請求項16に記載の方法に従って、前記組織試料を細切することと、
酵素を注入することであって、それによって、前記酵素が、前記細切された組織を消化する、ことと
を含む、方法。
【請求項18】
前記酵素は、コラゲナーゼである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
細胞を組織試料から分離する方法であって、
請求項16に記載の方法に従って、前記組織試料を細切することと、
未消化組織を除去することと
を含む、方法。
【請求項20】
前記組織試料を希釈することをさらに含み、前記未消化組織は、その後、濾過によって除去される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記濾過によって生成された濾過物を沈殿させることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
沈殿した細胞を再懸濁させ、前記再懸濁させられた沈殿した細胞を濾過することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記組織試料は、ウォートンジェリー幹細胞を含む、請求項16〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記組織試料には血管がない、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2011年11月8日に出願された、米国仮特許出願第61/557,127号に対する優先権およびその利益を主張するものであり、該米国仮特許出願の全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
種々の実施形態では、本発明は、組織を処理し、標的細胞を単離および収集するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
組織試料からの生体細胞の精製は、解離ならびに他の手動操作および処理ステップ、ある場合には、細胞培養を伴う、労力を要するプロセスであり得る。精製プロセスの間、細胞の無菌状態を維持することもまた、重要な懸念である。積層フードが、無菌状態を維持するために使用され得るが、いくつかの不利点に悩まされる。例えば、そのようなフードは、高価で、比較的に移動不可であり、扱いが煩雑であって、かつ貴重な実験室空間を占有する。細胞精製プロセスの効率は、別の懸念であって、精製プロセスをさらに複雑にする。幹細胞等の希少細胞を組織試料から単離することは、可能な限り多くの細胞を回収するための効率的プロセスを要求する。
【0004】
これらの細胞の投与に依拠する潜在的療法を進展させるために、幹細胞等の細胞を抽出および収集するための実践的で、費用効果的である滅菌、ならびに効率的機構および方法の必要性が残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、効率的かつ費用効果的に、細胞を組織から抽出および収集する。本発明者らは、組織が、効果的に断片化されることができ、結果として生じる細胞が、複数の構成要素を伴うシステムまたはキットを使用して、精製されることができることを発見した。本発明の利点は、例えば、弁、クランプ、および熱シールの使用を通して、ある構成要素が、処理の間に除去される場合でも、無菌状態が、プロセス全体を通して維持されることができるように、組織処理が閉鎖システム内で行なわれることである。さらに、ステップの一部または全部は、用途またはユーザの具体的必要性に従って、自動または手動で達成されることができる。
【0006】
したがって、一側面では、本発明は、組織細切ツールに関する。組織細切ツールは、組織試料のための区画と、区画の一端における切断表面と、滅菌密閉された容器とを含む。切断表面は、切断表面を通過する組織試料が容器内に堆積され得るように、区画を滅菌密閉された容器から分離する。切断表面は、4平方ミリメートル以下の平均断面を有する断片に組織試料を細切にするように定寸されることができる。例えば、その平方ミリメートルの数値は、本発明の種々の実施形態では、3以下、2以下、1以下、0.5以下、0.3以下、0.2以下、0.1以下、または0.05以下であってもよい。組織細切ツールはまた、断片の平均断面をさらに減少させるための第2の切断表面を含むことができる。組織細切ツールの切断表面は、自動切断システムを含むことができる。例えば、切断表面は、半自動鋏を含んでもよい。1つ以上の細切器濾膜が、切断表面に近接して位置付けられてもよい。組織細切ツールはさらに、その動作の間、ツールを安定化させるための吸引カップを含んでもよい。組織細切ツールはまた、または代替として、滅菌密閉された容器と連通する流体導管と、流体導管内の1つ以上のフィルタ等の分離器ユニットとを含むことができる。滅菌密閉された容器は、随意に、滅菌密閉された容器が、容器内への流体の滅菌導入を可能にする、少なくとも1つの密閉されたアクセスポートを含む。
【0007】
組織細切ツールでは、組織試料のための区画は、組織試料への力の印加を促進し、切断表面を越えてそれを滅菌密閉された容器内へ付勢するための1つ以上の特徴を組み込むことができる。例えば、区画の一部は、中実部材を受容し、組織試料を圧接するように成形されることができる。そのような中実部材は、随意に、そこに接続されるか、または別個の構成要素として提供されるかどうかにかかわらず、組織細切ツールとともに含まれることができる。
【0008】
一実施形態では、切断表面近傍の区画の一部は、相対的に成形された中実部材が、組織試料を切断表面内またはそれを通して圧接しながら、区画内に導入され、その部分を充填し得るように、実質的に、一定断面を有する。別の実施形態では、切断表面近傍の区画は、テーパ状または円錐形状端部を有する。いくつかの実施形態では、区画の内部表面は、螺刻された中実部材が区画内に誘導され得るように、螺刻される。いくつかの実施形態では、区画はまた、ガスケットを含み、中実部材が区画内に導入されると、改良されたシールを提供することができる。さらに別の実施形態では、組織細切ツールは、切断表面を組織試料に向かって移動させるためのシャフトクランクを含む。
【0009】
本発明はまた、ツールの切断表面を通して、組織試料を付勢することによって、前述の組織細切ツールのいずれかを使用する方法を提供する。本発明は、組織試料を細切し、随意に、酵素が細切された組織の消化を増強させるように、酵素を滅菌密閉された容器に注入する方法を提供する。酵素は、別個にまたは組み合わせて、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、またはディスパーゼ等のプロテアーゼであることができる。これらのステップは、随意に、組織試料を細切および/または消化し、約40ミクロンより大きい断片(例えば、細孔サイズ約500ミクロンを有するフィルタによって留保される断片、または細孔サイズ約300ミクロンを有するフィルタによって留保される断片、または細孔サイズ約250ミクロンを有するフィルタによって留保される断片、または細孔サイズ約150ミクロンを有するフィルタによって留保される断片、または細孔サイズ約100ミクロンを有するフィルタによって留保される断片、または細孔サイズ約70ミクロンを有するフィルタによって留保される断片、または細孔サイズ約40ミクロンを有するフィルタによって留保される断片)を除去することによって、細胞を組織試料から分離する方法に組み込まれることができる。これらのより大きな断片は、本明細書では、「未消化組織」と称され、濾過または沈殿によって除去されることができる。これらの方法は、種々の中実組織のいずれかからの細胞を精製するために効果的である。例えば、本明細書に説明される方法は、胎盤または臍帯組織等の脂肪組織または後産組織、あるいはより具体的には、ウォートンジェリーを含む組織からの幹細胞等の細胞を分離することができる。いくつかの実施形態では、組織試料は、実質的に、血管がなく、随意に、組織が区画内に載置される前に、組織から解離されることができる。
【0010】
別の側面では、本発明は、細胞を細胞収集デバイス内に沈殿させるステップを含む、細胞収集方法に関する。細胞収集デバイスは、細胞を含む流体のための滅菌容器と、滅菌容器と連通する流体通路とを含む。流体通路は、細胞捕捉ゾーンの容積が、滅菌容器の容積の5%未満であり得るような細胞捕捉ゾーンを含み、滅菌容器および細胞捕捉ゾーンは、滅菌容器内の流体からの細胞の沈殿が、細胞を細胞捕捉ゾーン内に集結させるように構成されることができる。本側面または以下の側面のいずれかは、以下の実施形態のいずれかを有することができる。細胞収集デバイスはさらに、流体通路と連通する、第2の滅菌容器、および/または第2の滅菌容器内への材料の通過を調整するための可撤性クランプを含む。第2の滅菌容器は、熱密閉可能である、および/またはバッグであることができる。細胞収集方法はまた、細胞収集デバイスを遠心分離し、細胞の沈殿を加速させるステップを含むことができ、細胞は、ウォートンジェリー幹細胞であることができる。流体は、機械的に細切および/または酵素で消化された臍帯組織を含む。細胞収集方法はさらに、抗凍結剤を細胞に添加するステップを含むことができる。抗凍結剤は、DMSO、アルブミン、および/またはデキストランを含む。本方法はまた、自己由来血漿を細胞に添加するステップを含むことができる。
【0011】
さらに別の側面では、本発明は、細胞を含む流体と、細胞を格納するための滅菌容器と、滅菌容器と連通する流体通路とを有する、細胞収集デバイスに関する。流体通路は、細胞捕捉ゾーンを含み、細胞捕捉ゾーンの容積は、滅菌容器の容積の5%未満であることができ、滅菌容器および細胞捕捉ゾーンは、滅菌容器内の流体からの細胞の沈殿が、細胞を細胞捕捉ゾーン内に集結させるように構成されることができる。本側面または以下の側面のいずれかは、以下の実施形態のいずれかを有することができる。細胞収集デバイスはまた、または代替として、流体通路と連通する、第2の滅菌容器、および/または第2の滅菌容器内への材料の通過を調整するための可撤性クランプを含む。第2の滅菌容器は、熱密閉可能である、および/またはバッグであることができる。
【0012】
さらに別の側面では、本発明は、滅菌容器が沈殿において使用するために適合されることができるように、細胞を含む流体のための滅菌容器と、滅菌容器と連通する流体通路とを有する、細胞収集デバイスに関する。流体通路は、細胞捕捉ゾーンの容積が、滅菌容器の容積の5%未満であることができ、滅菌容器および細胞捕捉ゾーンが、滅菌容器内の流体からの細胞の沈殿が、細胞を細胞捕捉ゾーン内に集結させるように構成されることができるように、その間に細胞捕捉ゾーンを画定する、第1および第2の弁を含む。本側面または以下の側面のいずれかは、以下の実施形態のいずれかを有することができる。滅菌容器は、遠心分離において使用するために適合されることができる。細胞収集デバイスはまた、または代替として、第2の弁と連通する第2の滅菌容器、および/または第2の滅菌容器内への材料の通過を調整するための可撤性クランプを含む。第2の滅菌容器は、熱密閉可能である、および/またはバッグであることができる。
【0013】
なおもさらに別の側面では、本発明は、細胞を格納するための滅菌容器と、滅菌容器と連通する流体通路と、流体通路と連通する、第2の滅菌容器とを有する、細胞収集デバイスに関する。流体通路は、細胞捕捉ゾーンの容積が、滅菌容器の容積の5%未満であって、滅菌容器および細胞捕捉ゾーンが、滅菌容器内の流体からの細胞の沈殿が、細胞を細胞捕捉ゾーン内に集結させるように構成されることができるように、細胞捕捉ゾーンを含む。第2の滅菌容器は、バッグ、熱密閉可能容器、および可撤性クランプから成る群から選択される要素を含む。
【0014】
別の側面では、本発明は、組織を受容するための区画と、4平方ミリメートル以下の平均断面を有する断片に組織試料を細切にするように定寸される、切断表面と、細切された組織の懸濁液を保持するための滅菌密閉された容器と、組織を受容するための区画の容積の少なくとも10倍の容積を有する、滅菌容器と、滅菌密閉された容器と流体連通する、フィルタバッグと、フィルタバッグと流体連通する、沈殿バッグとを含む、細胞収集デバイスに関する。フィルタバッグは、約250μmより大きい粒子を留保するために十分に小さい細孔サイズを有する、少なくとも1つのフィルタを含有する。沈殿バッグは、沈殿した細胞の集結を助長するためのテーパ状部分を含む。
本願明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
組織細切ツールであって、
組織試料のための区画と、
前記区画の一端における切断表面と、
滅菌密閉された容器と
を備え、
前記切断表面は、前記切断表面を通過する組織試料が、前記滅菌密閉された容器内に堆積されるように、前記区画を前記滅菌密閉された容器から分離する、ツール。
(項目2)
前記切断表面は、4平方ミリメートル以下の平均断面を有する断片に前記組織試料を細切にするように定寸される、項目1に記載の組織細切ツール。
(項目3)
前記平均断面は、1平方ミリメートル以下である、項目2に記載の組織細切ツール。
(項目4)
前記断片の平均断面を減少させるための第2の切断表面をさらに備える、前記項目のいずれか1項に記載の組織細切ツール。
(項目5)
前記切断表面は、自動切断システムを備える、前記項目のいずれか1項に記載の組織細切ツール。
(項目6)
前記自動切断システムは、半自動鋏を備える、項目5に記載の組織細切ツール。
(項目7)
前記切断表面に近接して位置付けられる、少なくとも1つの細切器濾膜をさらに備える、前記項目のいずれか1項に記載の組織細切ツール。
(項目8)
その動作の間、前記組織細切ツールを安定化させるための吸引カップをさらに備える、前記項目のいずれか1項に記載の組織細切ツール。
(項目9)
前記滅菌密閉された容器と連通する流体導管と、前記流体導管内に配置されたフィルタとをさらに備える、前記項目のいずれか1項に記載の組織細切ツール。
(項目10)
前記滅菌密閉された容器は、前記容器内への流体の滅菌導入を可能にする、少なくとも1つの密閉されたアクセスポートを備える、前記項目のいずれか1項に記載の組織細切ツール。
(項目11)
前記区画の内部表面は、螺刻される、前記項目のいずれか1項に記載の組織細切ツール。
(項目12)
前記区画を密閉するためのガスケットをさらに備える、前記項目のいずれか1項に記載の組織細切ツール。
(項目13)
その端部近傍の前記区画の一部は、実質的に、一定断面を有する、前記項目のいずれか1項に記載の組織細切ツール。
(項目14)
その端部近傍の前記区画の一部は、テーパ状または円錐形状である、前記項目のいずれか1項に記載の組織細切ツール。
(項目15)
前記区画の一部と噛合し、それを充填するように成形される、中実部材をさらに備え、前記中実部材は、前記切断表面を通して、その中に配置される前記組織試料を付勢するように、前記区画の一部内で移動可能である、項目13または14に記載の組織細切ツール。
(項目16)
前記切断表面を前記組織試料に向かって移動させるためのシャフトクランクをさらに備える、項目1に記載の組織細切ツール。
(項目17)
キットであって、
項目1−14のいずれかに記載の組織細切ツールと、
前記区画の一部と噛合し、それを充填するように成形される、中実部材であって、前記切断表面を通して、その中の前記組織試料を付勢するように、前記区画の一部内を移動可能である、中実部材と
を備える、キット。
(項目18)
組織試料を細切する方法であって、
前記項目のいずれか1項に記載の組織細切ツールの切断表面を通して、前記組織試料を付勢するステップを含む、方法。
(項目19)
組織試料を消化させる方法であって、
項目18に記載の方法に従って、前記組織試料を細切するステップと、
酵素を前記滅菌密閉された容器内に注入し、それによって、前記酵素が、前記細切された組織を消化するステップと
を含む、方法。
(項目20)
前記酵素は、コラゲナーゼである、項目19に記載の方法。
(項目21)
細胞を組織試料から分離する方法であって、
項目19または20に記載の方法に従って、前記組織試料を消化させるステップと、
未消化組織を除去するステップと
を含む、方法。
(項目22)
前記未消化組織は、濾過によって除去される、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記組織試料は、ウォートンジェリー幹細胞を含む、項目18−22のいずれか1項に記載の方法。
(項目24)
前記組織試料は、実質的に、血管がない、項目23に記載の方法。
(項目25)
細胞を細胞収集デバイス内に沈殿させるステップを含む、細胞収集方法であって、前記細胞収集デバイスは、
細胞を含む流体のための滅菌容器と、
前記滅菌容器と連通する流体通路であって、前記流体通路は、細胞捕捉ゾーンを備え、前記細胞捕捉ゾーンの容積は、前記滅菌容器の容積の5%未満であって、前記滅菌容器および前記細胞捕捉ゾーンは、前記滅菌容器内の流体からの細胞の沈殿が、細胞を前記細胞捕捉ゾーン内に集結させるように構成される、流体通路と
を備える、方法。
(項目26)
前記細胞収集デバイスはさらに、前記流体通路と連通する、第2の滅菌容器を備える、前記項目のいずれか1項に記載の細胞収集方法。
(項目27)
前記細胞収集デバイスはさらに、前記第2の滅菌容器内への材料の通過を調整するための可撤性クランプを備える、前記項目のいずれか1項に記載の細胞収集方法。
(項目28)
前記第2の滅菌容器は、熱密閉可能である、項目26または27に記載の細胞収集方法。
(項目29)
前記第2の滅菌容器は、バッグを備える、項目26−28のいずれか1項に記載の細胞収集方法。
(項目30)
前記細胞収集デバイスを遠心分離し、前記細胞の沈殿を加速させるステップをさらに含む、項目25に記載の細胞収集方法。
(項目31)
前記細胞は、ウォートンジェリー幹細胞である、項目25−30のいずれか1項に記載の細胞収集方法。
(項目32)
前記流体は、細切および/または酵素で消化された臍帯組織を含む、項目31に記載の細胞収集方法。
(項目33)
抗凍結剤を前記細胞に添加するステップをさらに含む、項目25−32のいずれか1項に記載の細胞収集方法。
(項目34)
前記抗凍結剤は、DMSOを含む、項目33に記載の細胞収集方法。
(項目35)
前記抗凍結剤は、アルブミンを含む、項目33または34に記載の細胞収集方法。
(項目36)
前記抗凍結剤は、デキストランを含む、項目33−35のいずれか1項に記載の細胞収集方法。
(項目37)
自己由来血漿を前記細胞に添加するステップをさらに含む、項目25−36のいずれか1項に記載の細胞収集方法。
(項目38)
細胞収集デバイスであって、
細胞を含む流体と、
前記細胞を格納するための滅菌容器と、
前記滅菌容器と連通する流体通路であって、前記流体通路は、細胞捕捉ゾーンを備え、前記細胞捕捉ゾーンの容積は、前記滅菌容器の容積の5%未満であって、前記滅菌容器および前記細胞捕捉ゾーンは、前記滅菌容器内の流体からの細胞の沈殿が、細胞を前記細胞捕捉ゾーン内に集結させるように構成される、流体通路と
を備える、デバイス。
(項目39)
前記流体通路と連通する、第2の滅菌容器をさらに備える、前記項目のいずれか1項に記載の細胞収集デバイス。
(項目40)
前記第2の滅菌容器内への材料の通過を調整するための可撤性クランプをさらに備える、前記項目のいずれか1項に記載の細胞収集デバイス。
(項目41)
前記第2の滅菌容器は、熱密閉可能である、項目39または40に記載の細胞収集デバイス。
(項目42)
前記第2の滅菌容器は、バッグを備える、項目39−41のいずれかに記載の細胞収集デバイス。
(項目43)
細胞収集デバイスであって、
細胞を含む流体のための滅菌容器であって、沈殿において使用するために適合される、滅菌容器と、
前記滅菌容器と連通する流体通路であって、前記流体通路は、細胞捕捉ゾーンを備え、前記細胞捕捉ゾーンの容積は、前記滅菌容器の容積の5%未満であって、前記滅菌容器および前記細胞捕捉ゾーンは、前記滅菌容器内の流体からの細胞の沈殿が、細胞を前記細胞捕捉ゾーン内に集結させるように構成される、流体通路と
を備える、デバイス。
(項目44)
前記滅菌容器は、遠心分離において使用するために適合される、項目43に記載の細胞収集デバイス。
(項目45)
前記流体通路と連通する、第2の滅菌容器をさらに備える、項目43または44に記載の細胞収集デバイス。
(項目46)
前記第2の滅菌容器内への材料の通過を調整するための可撤性クランプをさらに備える、前記項目のいずれか1項に記載の細胞収集デバイス。
(項目47)
前記第2の滅菌容器は、熱密閉可能である、項目45または46に記載の細胞収集デバイス。
(項目48)
前記第2の滅菌容器は、バッグを備える、項目45−47のいずれか1項に記載の細胞収集デバイス。
(項目49)
細胞収集デバイスであって、
前記細胞を格納するための滅菌容器と、
前記滅菌容器と連通する流体通路であって、前記流体通路は、細胞捕捉ゾーンを備え、前記細胞捕捉ゾーンの容積は、前記滅菌容器の容積の5%未満であって、前記滅菌容器および前記細胞捕捉ゾーンは、前記滅菌容器内の流体からの細胞の沈殿が、細胞を前記細胞捕捉ゾーン内に集結させるように構成される、流体通路と、
前記流体通路と連通する、第2の滅菌容器であって、バッグ、熱密閉可能容器、および可撤性クランプから成る群から選択される要素を備える、第2の滅菌容器と
を備える、デバイス。
(項目50)
細胞収集デバイスであって、
組織を受容するための区画と、
4平方ミリメートル以下の平均断面を有する断片に前記組織試料を細切にするように定寸される、切断表面と、
前記細切された組織の懸濁液を保持するための滅菌密閉された容器であって、前記組織を受容するための区画の容積の少なくとも10倍の容積を有する、滅菌容器と、
前記滅菌密閉された容器と流体連通する、フィルタバッグであって、約250μmより大きい粒子を留保するために十分に小さい細孔サイズを有する、少なくとも1つのフィルタを備える、フィルタバッグと、
前記フィルタバッグと流体連通する、沈殿バッグであって、沈殿した細胞の集結を助長するためのテーパ状部分を備える、沈殿バッグと
を含む、デバイス。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の他の特徴および利点ならびに本発明自体は、付随の図面とともに熟読されることによって、種々の実施形態の以下の説明からより完全に理解され得る。
【0016】
図1図1は、本発明のある実施形態による、組織細切ツールを図式的に描写する。
【0017】
図2図2は、本発明のある実施形態による、組織細切ツールの中実部材の概略斜視図である。
【0018】
図3図3は、図2の中実部材の概略斜視図である。
【0019】
図4図4は、本発明のある実施形態による、切断表面を部分的に示す、概略斜視図である。
【0020】
図5図5Aおよび5Bは、本発明の実施形態による、中実部材およびその相補的区画を部分的に示す、概略図である。
【0021】
図6A図6Aは、本発明の別の実施形態による、組織細切ツールの側面図である。
【0022】
図6B図6Bは、図6Aの組織細切ツールの線E−Eに沿った断面図である。
【0023】
図6C図6Cは、図6Aの組織細切ツールの分解図である。
【0024】
図7図7は、本発明のさらに別の実施形態による、組織細切ツールの概略斜視図である。
【0025】
図8図8は、本発明のある実施形態による、所望の細胞を組織試料から収集および単離するための手順ステップの概略を提供する。
【0026】
図9図9は、本発明のある実施形態による、所望の細胞を組織試料から収集および単離するための手順ステップの概略を提供する。
【0027】
図10A図10A−10Gは、所望の細胞を組織試料から収集および単離するための手順を描写する。
図10B図10A−10Gは、所望の細胞を組織試料から収集および単離するための手順を描写する。
図10C図10A−10Gは、所望の細胞を組織試料から収集および単離するための手順を描写する。
図10D図10A−10Gは、所望の細胞を組織試料から収集および単離するための手順を描写する。
図10E図10A−10Gは、所望の細胞を組織試料から収集および単離するための手順を描写する。
図10F図10A−10Gは、所望の細胞を組織試料から収集および単離するための手順を描写する。
図10G図10A−10Gは、所望の細胞を組織試料から収集および単離するための手順を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の全体的理解を提供するために、細胞を処理するためのシステムおよび方法を含む、ある例証的実施形態について説明する。しかしながら、本明細書に説明されるシステムおよび方法は、対処される用途に適切となるように適合および修正されてもよく、かつ本明細書に説明されるシステムおよび方法は、他の好適な用途においても採用され得ることが、当業者によって理解されるであろう。そのような適合および修正は全て、本発明の範囲内であると見なされるものとする。さらに、本明細書に説明される種々の実施形態の特徴は、相互に排他的ではなく、種々の組み合わせおよび順列において存在し得ることを理解されたい。
(組織細切ツール)
【0029】
図1は、図式的には、本発明の一実施形態による、組織細切ツール10を描写する。組織細切ツール10は、組織試料が受容され、最初に格納され得る、区画12と、滅菌密閉された容器14とを含む。区画12は、第1および第2の端部16、18間に延在する一方、滅菌密閉された容器14自体は、第1および第2の端部18、20間に延在する。切断表面108は、区画12の第2の端部18、すなわち、同等に、滅菌密閉された容器14の第1の端部18に位置し、したがって、区画12を滅菌密閉された容器14から分離する。図示されるように、組織細切ツール10はまた、中実部材100を含む。中実部材100は、部分的に、(想像線に示されるように)区画12内に位置するように描写される。中実部材100の一部はまた、区画12外にも位置するように示される。螺刻部105は、中実部材100のその外部部分上に描写される。
【0030】
図2は、組織細切ツール10の中実部材100の実施形態を描写する。組織細切ツール10の他の部分(例えば、区画12および滅菌密閉された容器14)は、示されない。中実部材100は、より大きい直径のプランジャ104(螺刻部105とともに示される)およびより小さい直径のネジシャフト106を含む。ハンドル114は、中実部材100の一端に配置される。中実部材100の反対端には、切断表面108が、より小さい直径のネジシャフト106の端部に取着される。図示されるように、より小さい直径のネジシャフト106は、切断表面108からハンドル114(より小さい直径のネジシャフト106もまた、結合される)まで延在し、そうすることによって、より小さい直径のネジシャフト106は、より大きい直径のプランジャ104の中空(例えば、中心)部分107を通して延設される。一実施形態では、ネジシャフト106は、そのある長さに沿った螺刻部109を特徴とし、プランジャ104は、その中空部分107内に相補的溝111を含む。このように、プランジャ104は、ネジシャフト106と螺着可能に係合される。故に、ハンドル114が回転されると、ネジシャフト106もまた、(随意に)ネジシャフト106の端部に取着された切断表面108と同様に、回転される。さらに、ネジシャフト106の回転は、例えば、切断表面108に向かって、プランジャ104の平行移動を生じさせる。プランジャ104と切断表面108との間の区画12内に格納される組織試料は、したがって、(随意に、回転する)切断表面108と接触するように圧接され、以下にさらに説明されるように、それによって、切断され得る。
【0031】
より大きい直径のプランジャ104の螺刻された部分105は、組織試料を受容する、区画12の相補的に螺刻された内部部分と係合および噛合することができる。プランジャ104と区画12との間の螺着係合は、ユーザが、より容易に、ハンドル114を使用して、プランジャ104を区画12内で平行移動させ、かつ切断表面108に向かっておよびそれを通して、組織試料を摺動または押動させることができるように、てこの作用および制御を提供する。図1に図示されるように、プランジャ104は、区画12の内部中空空洞と噛合し、実質的にそれを充填するように定寸される。ある実施形態では、再び、図2を参照すると、ガスケット118が、プランジャ104の一端に配置されてもよい。ともに、ガスケット118およびプランジャ104は、実質的に、区画12の内部中空空洞の内径を充填し、それによって、区画12内に気密真空シールを生成し得る。ガスケット118は、実質的に、切断表面108に相補的形状であってもよい。例えば、ガスケットの底部表面および切断表面108の上部表面は両方とも、丸形または平坦であることができる。ある実施形態では、ガスケット118は、平坦表面を形成する。組織試料は、切断表面108を通して付勢され、したがって、ガスケット118が、組織試料に接触し、駆動させると、細切される。
【0032】
切断表面108は、組織試料が、切断表面108を通して押動されると、組織試料からの組織を損傷せずに、組織試料をより小さい部分に切断、分解、または分離するように構成される、任意の表面であることができる。例えば、切断表面108は、組織試料を、4平方ミリメートル以下または1平方ミリメートル以下の平均断面を伴う、より小さい部分に細切することができるが、組織試料をより大きいまたはより小さい部分に細切することができる切断表面も、想定される。組織細切ツールは、細切された組織試料の平均断面をさらに減少させるために、第2の切断表面を含むことができる。切断表面の実施例として、鋭利縁を伴う格子、開口部を横断する複数の鋭利ワイヤ、区画の内側の唇縁上に静置する複数の孔を伴う鋼板または円盤、オフセットされ、鋭利縁を有する、プレート内の孔、および開口を画定する鋭利表面のメッシュが挙げられる。加えて、または代替として、切断表面が開口を画定する、ある実施形態では、プランジャ104の端部は、切断表面108の開口と噛合する、フィンガ等の複数の突起を形成し、切断表面108を通して、組織試料を押動するように補助することができる。代替実施形態では、プランジャ104の端部は、平坦であることができる。さらに、切断表面108は、テクスチャ加工されることができる、あるいは複数の突起(例えば、滑止め)を形成し、摩擦表面を生成する、または圧力が組織試料に印加されるにつれて、組織試料を切断表面108上に維持することができる。さらなる実施形態では、切断表面108は、半自動鋏等の自動切断システムを含んでもよい。
【0033】
ある実施形態では、随意のノーズナット(図示せず)が、切断表面108を中心として配置され、組織試料がそれを通して付勢されるにつれて、切断表面108を定位置に保定してもよい。例えば、随意のノーズナットは、組織試料を受容する、区画12に可撤性に取着されることができる。随意のノーズナットは、区画12の陥凹表面と係合し、スナップ嵌合接続を形成する、突起を含むことができる。加えて、または代替として、随意のノーズナットの螺刻された部分が、区画12の同様にかつ相補的に螺刻された部分に係合することができる。随意のノーズナットが、区画12と完全に係合されると、切断表面108は、随意のノーズナットの唇縁によって、定位置に配置および保定される。
【0034】
図3は、組織細切ツール10の中実部材100の斜視図を描写する。組織細切ツールの他の部分(例えば、区画12および滅菌密閉された容器14)は、示されない。前述のように、中実部材100は、より大きい直径のプランジャ104(螺刻部105とともに示される)およびより小さい直径のネジシャフト106を含む。ハンドル114が、中実部材100の一端に配置される。中実部材100の反対端には、切断表面108が、より小さい直径のネジシャフト106の端部に取着される。一実施形態では、図示されるように、切断表面108は、細切円盤112に隣接する切断刃110を含む。
【0035】
図4は、組織細切ツール10の例示的切断表面108の斜視図を描写する。切断表面108は、切断刃110を含む。加えて、切断表面108は、組織試料がそれを通して付勢されることを可能にする、開口116を伴う、細切円盤112を含む。
【0036】
図5Aおよび5Bは、組織細切ツール10の中実部材100の2つの実施形態を描写する。図5Aに描写される一実施形態では、中実部材100のプランジャ104は、その端部近傍において、実質的に、円筒形形状である。図5Bに描写される第2の実施形態では、中実部材100のプランジャ104は、テーパ状または円錐形状端部を有する。各実施形態では、中実部材100は、中実部材100が、区画12内で移動可能であって、切断表面108を通して、区画12内に配置される組織試料を付勢するように、相補的に成形される、区画12と噛合し、それを充填するように成形される。組織試料が、切断表面108を通して通過するにつれて、その切断された部分は、例えば、バッグであり得る、滅菌密閉された容器14内に堆積される。加えて、または代替として、区画12の内部空洞は、中実部材100が、区画12に可撤性に固着されることができ、ユーザが、依然として、中実部材100を区画12内に平行移動させるためのてこの作用および制御(図示せず)を有するように、陥凹チャネルまたは表面(例えば、カム表面)を画定し、プランジャ104から突出する突起に係合することができる。
【0037】
図6Aは、本発明の別の実施形態による、組織細切ツール200の側面図を描写する。図6Bは、図6Aに示される組織細切ツール200の線E−Eに沿った断面図を描写する一方、図6Cは、図6Aに示される組織細切ツール200の分解図を描写する。組織細切ツール200は、基部204と、リザーバ208と、ハンドル212とを含む。示されるように、基部204は、リザーバ208に螺着係合するために、螺刻された部分216を含んでもよい。例えば、リザーバ208の内部表面は、基部204の螺刻された部分216に補完する、溝218を特徴とし得る。したがって、組織細切ツール200の組立の際、リザーバ208は、基部204上にネジ留めされてもよい。
【0038】
図示されるように、吸引カップ220が、基部204の底部部分224に結合されてもよい。一実施形態では、吸引カップ220は、組織細切ツール200のための安定性を提供する。例えば、動作時、ユーザは、吸引カップ220を使用して、組織細切ツール200を台(または、他の支持表面)に結合してもよい。安定性が、それによって、例えば、以下にさらに説明されるように、ユーザが、ハンドル212を旋回するとき、または別様に、力を組織細切ツール200に付与するとき、組織細切ツール200に提供される。
【0039】
図6Bに最も明確に示されるように、リザーバ208内に含まれるのは、最初に、組織試料を格納するための区画228である。加えて、少なくとも1つの切断表面(シャフトクランク232を通して、ハンドル212に結合される)は、リザーバ208内で移動可能である。例えば、図6Cに最も明確に示されるように、第1の切断表面236、第1の細切器濾膜240、第2の切断表面244、および第2の細切器濾膜248(それぞれ、シャフトクランク232を通して、ハンドル212に結合される)は、シャフトクランク232の作動(例えば、回転)を通して、リザーバ208内を移動可能であってもよい。シャフトクランク232は、例えば、ハンドル212を介して、ユーザによって手動で作動されてもよく、または、代替として、自動的に、別個のデバイスを介して、機械作動されてもよい。当業者によって理解されるであろうように、第1および第2の切断表面236、244は、前述の例示的切断表面のいずれかであってもよい。加えて、第1および第2の細切器濾膜240、248は、図示されるように、異なるように定寸された開口を含んでもよい。
【0040】
動作時、シャフトクランク232が回転されるにつれて、第1および第2の切断表面236、244も同様に、回転され、リザーバ208内において、区画228内に格納される組織試料に向かって下向きに移動する。第1の切断表面236は、組織試料と接触し、それを1つ以上のより小さい部分に切断する。それらのより小さい組織部分は、次いで、第1の細切器濾膜240の開口を通して通過され、再び、第2の切断表面244によって、さらにより小さい部分に切断され、最後に、第2の細切器濾膜248の開口を通して通過される。第1および第2の切断表面236、244は、実質的に、組織試料の全て(または、少なくとも、所与の用途のために十分な量の組織試料)が、細切され、第2の濾膜248を通して通過するまで、回転され、リザーバ208内を下向きに移動する。第2の濾膜248の通過に応じて、細切された組織試料は、収集され、リザーバ208の容器252内に格納される。図6A−6C等に描写されないが、リザーバ208の上部部分は、実際は、容器252が、滅菌密閉された容器252であるように、キャップされ、リザーバ208の内部部分は、滅菌されてもよい。
【0041】
当業者によって理解されるであろうように、かつ前述のように、リザーバ208の区画228は、図6Bに示されるように、第1および第2の切断表面236、244ならびに第1および第2の細切器濾膜240、248の下方に位置する一方、リザーバ208の滅菌密閉された容器252は、第1および第2の切断表面236、244ならびに第1および第2の細切器濾膜240、248の上方に位置する。したがって、図6A−6Cに描写される組織細切ツール200の実施形態では、区画228および滅菌密閉された容器252のサイズは、第1および第2の切断表面236、244が、下向きに(または、上向きに)回転されるにつれて、変動する。
【0042】
また、当業者によって理解されるであろうように、図6A−6Cにおける組織細切ツール200の描写は、非限定的である。実際、変形例、修正、および他の実装も、想定される。例えば、2つより少ないあるいはそれより多い切断表面236、244および/または細切器濾膜240、248が、採用されてもよい。別の実施例として、シャフトクランク232およびハンドル212は、ハンドル212が、水平平面(図示されるように)ではなく、垂直平面内で回転可能であるように結合されてもよい。
【0043】
図7は、本発明の実施形態の別の図に従う、組織細切ツール300を描写し、その動作の原理は、図6A−6Cに描写される組織細切ツール200のものに類似する。前述のように、組織細切ツール300は、基部304と、リザーバ308と、ハンドル312とを含む。示されるように、リザーバ308の上部部分は、ネジ315およびウイングナット317の使用を通して、その底部部分に結合される。組織細切ツール300はまた、吸引カップ320を含み、動作の間、前述の安定性をツール300に提供する。例えば、第2の濾膜348を通して通過後、細切された組織試料が収集される、リザーバ308の容器352もまた、図示される。前述のように、リザーバ308の上部部分は、容器352が、滅菌密閉された容器352であるように、キャップされ、リザーバ308の内部部分は、滅菌されてもよい。
(細胞単離および収集方法)
【0044】
本発明はまた、標的細胞を単離および収集するための組織の効率的および滅菌処理の方法を提供する。図8は、細胞を単離および収集するための手順ステップの概略を提供する。概して、組織試料は、最初に、組織試料をツールの切断表面を通して、滅菌密閉された容器内に付勢することによって、前述の組織細切ツールのいずれかを使用して、細切されることができる。本発明はまた、化学物質または酵素に暴露することによって、組織試料をさらに消化させる随意の方法を提供する。例えば、細切された組織は、酵素が細切された組織を消化するように、酵素を容器内に注入することによって、消化されてもよい。酵素は、別個にまたは組み合わせにおける、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、またはディスパーゼ等のプロテアーゼであることができる。これらのステップは、加えて、または随意に、細切および/または酵素で消化された組織試料を任意のより大きい断片(前述のような「未消化組織」)から分離する、例えば、傾瀉、吸引、沈殿、または好ましくは、濾過する方法に組み込まれる。いくつかの実施形態では、粘性であり得る、細切および/または酵素で消化された組織は、分離ステップ前に、洗浄または希釈されることができる。標的細胞の細切および/または酵素で消化された組織からの分離は、細切および/または酵素で消化された組織を含有する混合物からの細胞の沈殿によって達成されることができる。重力沈殿が、使用され得るが、沈殿プロセスは、例えば、遠心分離によって加速されることができる。加えて、および代替として、標的細胞は、滅菌容器内に移され、後の使用のために、凍結保存される。
【0045】
ある実施形態では、細切および/または酵素で消化された組織試料を未消化組織から分離するための方法は、図9に描写されるように、2つ以上の濾過ステップを含んでもよい。例えば、細切および/または酵素で消化された組織試料は、可変サイズのフィルタを使用して、複数の濾過ステップを受けてもよい。ある実施形態では、細切および/または酵素で消化された組織試料は、最初に、粗い未消化組織を除去するために、例えば、約500ミクロン、約250ミクロン、約150ミクロン、または約100ミクロンの大きい細孔のフィルタを使用する、第1の濾過ステップを受ける。加えて、第2の濾過ステップは、膠原線維等の付加的汚染物質を除去するために、例えば、約70ミクロンまたは約40ミクロンの小さい細孔のフィルタを使用する、第1の濾過ステップからの溶出液を濾過するために実施されることができる。細切および/または酵素で消化された組織は、概して、粘性であるため、組織は、プロセスの任意の段階において、適切な滅菌溶液(緩衝塩溶液等)で洗浄または希釈されることができる。例えば、細切および/または酵素で消化された組織が、第1の濾過ステップに続いて、未消化組織から分離された後、さらなる洗浄が、行なわれ、第2の濾過ステップの前に、細切および/または酵素で消化された組織をさらに清浄することができる。複数回の濾過に続いて、実質的に、組織試料がない標的細胞が、沈殿によって収集されることができる。
【0046】
図10Aは、所望の細胞を組織試料から収集および単離するための例示的手順を描写する。組織試料は、最初に、区画内に載置されてもよく、そこで、より小さい部分に細切、分解、または分離されることができる。任意の酵素消化前に、組織試料を細切する利点は、酵素が作用し得る、組織試料の表面積全体が、増加されることである。区画は、区画内に導入される組織試料が、直接、容器内に通過されることができるように、容器(例えば、消化バッグ)の1つのポート(例えば、開口)に嵌合および取着されてもよい。区画は、容器に可撤性に取着されてもよく、またはそうでなくてもよい。
【0047】
容器は、細切された組織試料および流体を保持する、滅菌密閉された内部空間を画定する。容器は、材料および流体を容器内に導入する、またはそこから分注するための密閉されたポートを含んでもよい。例えば、容器は、流体を導入するための1つ以上の注入ポートと、流体および材料を容器から分注または吸引するための1つ以上の抜取ポートとを含んでもよい。さらに、代替実施形態では、注入ポートおよび抜取ポートはそれぞれ、流体および材料が、容器へおよびそこから一方向のみに移動され得るように構成されることができる。さらに、ポートは、区画から容器の反対端に配置されることができるが、ポートはまた、容器の周縁の任意の部分に沿って配置されることができる。ある実施形態では、ポートは、容器に可撤性に固着されない。加えて、または代替として、注入器、換気口、キャップ付き換気口、またはルアー接続を用いて噛合する他のデバイスが、ポートに取着されることができる。ポートは全て、無菌状態が維持されるように、綿棒で消毒可能であってもよい。
【0048】
続いて、細切された組織は、随意に、例えば、化学物質または酵素に暴露することによって、消化されることができる。ある実施形態では、細切された組織は、別個にまたは組み合わせにおいて、酵素、例えば、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、またはディスパーゼ等のプロテアーゼによって消化されてもよい。酵素は、酵素が細切された組織を消化するように、直接、容器内に導入されてもよい。例えば、流体、材料、または空気を格納し得る、注入器または任意の他のデバイスが、容器に接続され(例えば、ルアー接続を介して)、例えば、プロテアーゼを容器内に分注し、細切された組織試料を消化させるために使用されることができる。細切された組織試料の消化を増強させるために、容器は、容器を中心として酵素を循環させるように、反転されることができる。細切された組織試料の酵素による分解率に応じて、容器は、静置されることができ、細切された組織試料は、37℃で一定時間の間、例えば、約1〜3時間、酵素でインキュベートされることができるが、細切された組織試料を消化させるために、より長い時間または短い時間も想定される。加えて、または代替として、インキュベーションプロセスを補助するために、容器は、随意に、オービタルシェーカーで周期的に混合される、あるいは一連のローラまたは他の圧縮式デバイスを通して移動され、容器内の細切された組織試料の分解を補助することができる。組織試料が約10mLである実施例では、ユーザは、約10mLの酵素を容器内に注入することができるが、より多いまたは少ない酵素も想定される。細切された組織試料が消化されると、約20−30mLの消化された組織試料がもたらされる。
【0049】
細胞が、細切および/または酵素で消化された組織から分離される前に、未消化組織のいかなる残りの断片も、随意に、細胞の後続精製を促進するために除去される。そのサイズに応じて、未消化組織は、例えば、物理的抽出、傾瀉、吸引、沈殿、または好ましくは、濾過によって除去されることができる。随意に、除去された未消化組織は、幹細胞の増大のための播種源等の他の目的のために保管および/または使用されてもよい。
【0050】
図10A−10Dは、分離が濾過によって達成される、種々の実施形態を図示する。具体的には、図10A−10Dは、消化された組織試料を保持するための容器を、容器に可撤性に取着されることができる、フィルタユニットに接続する、流体通路を描写する。フィルタユニットは、随意に、減少サイズの単一フィルタまたは複数のフィルタを使用してもよい。代替として、フィルタは、容器が2つの下位空間に分割されるように、容器内に嵌合および配置されてもよい。フィルタは、容器内に対称的または非対称的に載置されてもよい。加えて、または代替として、フィルタは、ポート、例えば、抜取ポート内に嵌合されてもよい。フィルタのサイズは、用途に応じて、約500ミクロン、約250ミクロン、約150ミクロン、約100ミクロン、約70ミクロン、約40ミクロン、またはその任意の範囲であることができる。粘性であり得る、消化された組織試料は、得られた組織試料が、より容易に、さらなる処理のために、フィルタを通して、下流容器または構成要素内に移動されることができるように、濾過に先立って、希釈されてもよい。希釈溶液の実施例として、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、5%ヒト血清アルブミン、生理食塩水、ヘタスターチ、および新鮮血漿(例えば、自己由来血漿)が挙げられる。ある実施形態では、流体を格納することができる、注入器または任意の他のデバイスが、注入ポートを介して、容器内に希釈溶液を分注するために使用される。消化された組織試料が約20−30mLである実施例では、ユーザは、約250mLの希釈容器を容器内に注入することができるが、より多いまたは少ない溶液も想定される。その結果、容器は、約250−300mLの希釈され、消化された組織試料を保持する。濾過に続いて、溶出液は、例えば、真空、吸引、または重力によって、好ましくは、ラインクランプ(例えば、バタフライ型ラインクランプ)によって調整される、流体通路を介して、第2の滅菌容器(例えば、洗浄/遠心分離バッグ)内に推進されてもよい。
【0051】
細胞を希釈され、細切および/または酵素で消化された組織から単離することは、種々の機構によって達成されることができる。ある実施形態では、標的細胞は、沈殿によって、希釈され、細切および/または酵素で消化された組織から単離される。重力沈殿が使用され得るが、沈殿プロセスは、例えば、遠心分離によって加速されることができる。本発明は、システムの適切な遠心分離を保証するためのカスタマイズされた遠心バケット、埋め金、および平衡錘を含むことができる。
【0052】
沈殿は、標的細胞を希釈され、細切および/または酵素で消化された組織試料から分離する。細胞収集を促進するために、実質的に細胞がない上澄みは、随意に、好ましくは、ラインクランプによって調整される、出口ポートおよび流体通路を介して、除去される。上澄みは、例えば、傾瀉または吸引によって除去されてもよい。第2の滅菌容器が圧縮性バッグである実施例では、上澄みは、バッグを物理的に圧搾することによって傾瀉されてもよい。代替として、上澄みは、例えば、真空、吸引、または重力によって除去されてもよい。随意に、上澄みは、ラインクランプによって調整される、出口ポートおよび流体通路を通して、第2の滅菌容器に接続される、廃棄物容器内に除去されることができる。ある実施形態では、除去された上澄みは、細胞を維持する(培養物中に)等の他の目的のために保管および使用されてもよい。
【0053】
標的細胞を収集するために、少量の希釈溶液(例えば、20mlの自己由来血漿)が、第2の滅菌容器の底部に収集し得るように、細胞ペレットを再懸濁させるために添加されることができる。図10Aに描写される実施形態に示されるように、第2の滅菌容器は、容器の底部に位置する流体通路内、および随意に、移送容器(例えば、移送バッグ)内への標的細胞の移動を促進するために十分な角度にテーパ状にされる、底部を有することができる。代替として、図10Bに描写されるように、標的細胞は、容器の側面に位置する流体通路内、および随意に、移送容器内に移動されてもよい。第2の滅菌容器から、流体通路内および随意に移送容器内への細胞の移動は、真空または吸引によって促進されることができ、ラインクランプによって調整されてもよい。
【0054】
必要に応じて、精製された標的細胞は、すぐに使用されることができる。しかしながら、典型的には、細胞は、後の使用のために、凍結保存される。長期保管を達成するために、細胞は、随意の移送容器から、冷凍に適した密閉可能滅菌容器(例えば、凍結バッグ)内に移送されることができる。代替として、細胞は、直接、後の使用のために、第2の滅菌容器から冷凍可能容器内に収集されることができる。抗凍結剤は、標的細胞の保管および保存を補助するために添加され、例えば、別個にまたは組み合わせにおける、ジメチル・スルホキシド(DMSO)、アルブミン、および/またはデキストランが挙げられ得る。抗凍結剤は、沈殿に続いて、第2の滅菌容器内の細胞に添加されてもよい。代替として、抗凍結剤は、長期保管および後の使用のために、随意の移送容器または冷凍可能容器内の細胞に添加され、それと混合されてもよい。
【0055】
ある実施形態では、細切および/または酵素で消化された組織を未消化組織から分離するための方法は、図10C−10Dに描写されるように、2つ以上の濾過ステップを含んでもよい。例えば、細切および/または酵素で消化された組織は、粗い未消化組織を除去するために、第1の濾過ステップを受けてもよい。細切および/または酵素で消化された組織は、概して、粘性であるため、組織は、プロセスの任意の段階において、適切な滅菌溶液で洗浄または希釈されることができる。例えば、細切および/または酵素で消化された組織が、第1の濾過ステップに続いて、未消化組織から分離された後、さらなる洗浄が、行なわれ、第2の濾過ステップに先立って、組織をさらに清浄することができる。ある実施形態では、第2の濾過ステップは、膠原線維等の汚染物質を細切および/または酵素で消化された組織から除去するために、より小さいサイズのフィルタを利用してもよい。第2の濾過ステップに続いて、標的細胞は、沈殿によって収集され、容器の底部(図10C)または容器の側面(図10D)のいずれかに位置する流体通路を通して、随意の移送バッグ内に移動されてもよい。代替として、細胞は、長期保管および後の使用のために、直接、滅菌凍結バッグ内に収集されてもよい。
【0056】
細切された組織試料を分離するための付加的例示的プロセスは、図10E−10Gに描写される。これらのプロセスのそれぞれでは、組織試料は、図7の細切器等の細切器内に載置される。動作時、細切器は、1つ以上の切断表面を通して、組織試料を押勢し、細かく細切された組織を切断表面の他側に堆積させる。生理食塩水バッグが、細切器から組織を洗い流すために提供される。典型的には、最大500mLの生理食塩水が、本目的のために使用され得る。細切器から洗い流されると、細切された組織は、随意の消化バッグ(図示されるように)内に流動し得、そこで、細切された組織は、さらなる処理に先立って、酵素で消化されてもよい(図10A−10Dを参照して説明されるように)。随意の消化バッグは、希釈バッグと流体連通する。代替として、機械的細切が、任意の酵素による消化の必要性を不要にする場合、細切された組織は、直接、希釈バッグ内に流動することができる。機械的に細切された組織(酵素による消化を受けるかどうかにかかわらず)は、粘性であり得る。希釈バッグは、組織および生理食塩水の混合を促すように、機械的に操作されることができる。希釈バッグはまた、随意の注入ポートと嵌合され、必要に応じて、希釈バッグ内への付加的生理食塩水の注入を可能にする。
【0057】
組織懸濁液は、次いで、粘度が十分に低減されると、濾過される。図10E−Gに示されるように、懸濁液は、希釈バッグから、少なくとも1つのバッグ内フィルタを有する、フィルタバッグ内に通過する。図10Eは、約40−70μmより大きい粒子を留保する、単一バッグ内フィルタを伴う実施形態を描写する。図10Fは、約150−250μmより大きい粒子を留保する、単一バッグ内フィルタを伴う実施形態を描写する。図10Fでは、バッグ内フィルタからの濾過物は、次いで、約40−70μmより大きい粒子を留保する、第2のライン内フィルタユニットを通して通過する。図10Gは、フィルタバッグが、連続して2つのバッグ内フィルタを含有し、各バッグ内フィルタが、少なくとも300cmの表面積を有し、第1のフィルタが、約500μmより大きい粒子を留保し、第2のフィルタが、約100μmより大きい粒子を留保する、実施形態を描写する。図10E−Gのそれぞれでは、フィルタバッグは、第1のフィルタからの残余分の除去を可能にするポートを含む。本残余分は、随意に、培養細胞のための組織外植片として使用されることができる。
【0058】
図10E−Gにおける濾過物は、図10A−Dに描写されるもののように、遠心分離バッグ内に通過する。細胞は、沈殿(例えば、遠心分離)によって、懸濁液から分離され、バッグの底部部分またはバッグの底部部分に接続された流体通路内に集結される。上澄みは、随意に、廃棄物容器に接続された管類を通して、除去されることができる(例えば、傾瀉、吸引、真空、吸引、またはバッグの圧縮によって)。上澄みは、細胞を培養物中に維持する等の他の目的のために使用されてもよい。
【0059】
標的細胞を収集するために、少量の希釈溶液(例えば、20mlの自己由来血漿)が、沈殿した細胞を再懸濁させるために添加されることができる。図10E−Gに示されるように、再懸濁された細胞は、図10Gに示されるように、随意に、少なくとも100cmの表面積を有するフィルタを含有し、約40μmを上回る粒子を留保する第2のフィルタバッグ等の第2のフィルタバッグを通して通過後、遠心分離バッグから、移送バッグ内に通過することができる。細胞は、凍結バッグに移送されることができ、図10A−Dに関して前述のように、DMSO、アルブミン、および/またはデキストラン等の1つ以上の抗凍結剤が、添加されることができる。
【0060】
本明細書に説明される方法は、細胞を種々の中実組織から精製するために効果的である。例えば、本明細書に説明される方法は、幹細胞等の細胞を脂肪組織または後産組織、胎盤または臍帯組織等、あるいはより具体的には、ウォートンジェリーを含む組織等から分離することができる。精製されたウォートンジェリー幹細胞は、骨、軟骨、脂肪、または筋肉等の種々の組織のいずれかを治療あるいは再生するために使用されることができる。これらの細胞はまた、造血生着を促進し、宿主における免疫反応を調整および抑制する潜在性を有し得る。
【0061】
精製された細胞に加え、本明細書に説明される方法は、また、付加的有用生成物をもたらす。例えば、細胞が、細切および/または酵素で消化された組織から分離されると、残りの細胞欠失組織は、細胞を維持する(例えば、培養物中に)ために使用され得る、富栄養滅菌溶液となる。さらに、消化プロセス後に残っている未消化組織の任意の断片もまた、有用であり得る。例えば、未消化臍帯組織は、間葉系幹細胞の増大のための播種源として利用されることができる。
【0062】
本明細書で採用される用語および表現は、限定ではなく、説明の観点における用語および表現として使用され、そのような用語および表現の使用において、図示および説明される特徴またはその一部のいかなる均等物も除外することを意図するものではない。加えて、本発明のある実施形態が説明されるが、本明細書に開示される概念を組み込む他の実施形態も、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、使用されてもよいことは、当業者に明白となるであろう。故に、説明される実施形態は、あらゆる観点において、制限ではなく、例証にすぎないものとして、見なされるものとする。さらに、本明細書に説明される構成は、例証であって、いかようにも限定として意図されるものではない。同様に、物理的説明が、説明目的のために提供されたが、いかなる特定の理論または機構に拘束されること、またはそれに従って、請求項を限定することを意図するものではない。
(参照による引用)
【0063】
本明細書に引用される特許文献および科学論文のそれぞれの全開示が、すべての目的で参照により組み込まれる。
(均等物)
【0064】
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態において実施されてもよい。したがって、上記の実施形態は、本明細書に記載される発明を制限するものではなく、あらゆる面において例示的であるとみなされるべきである。よって、発明の範囲は、上述の記載によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の均等物の意味および範囲の内にあるすべての変更は、特許請求の範囲に包含されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G