(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態の構成例を説明するためのブロック図である。
図1に示した配線用遮断器1は、電路遮断部11と、制御回路12と、複数の変流器13と、操作部19と、複数の電源側端子21と、複数の負荷側端子22と、複数のバスバー23と、複数のバスバー24とを備えている。また、電路遮断部11は、複数の接点14と、引外しコイル15とを備え、電路(回路)に流れる電流を遮断する。制御回路12は、出力部16と、入力部17と、制御部18とを備えている。制御部18は、電路遮断部11を電子式制御により遮断する。
【0017】
なお、本願において配線用遮断器とは、電源側端子と、負荷側端子と、電源側端子と負荷側端子との間の回路に設けられた接点と、同回路に所定の過電流が流れた場合に接点を開放するための構成を備えた開閉手段を意味する。この場合に、配線用遮断器は、遮断器、MCCB(Molded Case Circuit Breaker)、MCB(Molded Circuit Breaker)、ブレーカー等とも呼ぶことができる。
【0018】
図1に示した例では、配線用遮断器1の複数の電源側端子21には例えば単相3線式引込線の電圧線及中性線が接続される。電源側端子21に接続された単相3線式引込線は、例えば電力会社等が運営する図示していない電線路に接続されている。複数の電源側端子21を介して入力された電力は、複数のバスバー23、複数の接点14及び複数のバスバー24を介して、複数の負荷側端子22から出力される。また、複数の負荷側端子22においては、ケーブル31を介して、電気機器4が接続されている。
【0019】
電路遮断部11において、複数の接点14は、引外しコイル15と図示していないバネ、電磁石、トグル機構等と協働し、例えば図示していない取手が動かされた場合に接点14を閉成し、引外しコイル15が励磁された場合に接点14を開放する。引外しコイル15には、出力部16が出力した電流が入力される。出力部16は、制御部18から所定の信号が入力された場合に、引外しコイル15を励磁する。あるいは、出力部16は、入力部17において変流器13の出力に基づき所定の過電流が検出された場合に、入力部17が出力したその過電流が検出されたことを示す信号を制御部18を介さずに直接入力することで引外しコイル15を励磁するようにしてもよい。
【0020】
複数の変流器13は、複数のバスバー24に流れる電流を所定の変流比でそれぞれ変換して出力する。複数の変流器13から出力された電流は、入力部17に入力される。入力部17は、複数の変流器13が出力した交流電流を例えば全波整流し、さらに所定の電圧値に変換して出力する。なお、電流検出は、変流器に限らず、例えばホール素子を用いた検出器等を用いて行うこともできる。
【0021】
操作部19は、例えば、複数の負荷側端子22に接続するケーブル31の種別を設定あるいは選択するためのディップスイッチ、ロータリースイッチ等の操作子を備えている。操作部19の各操作子の操作状態は入力部17を介して制御部18へ入力される。
【0022】
制御部18は、例えばマイクロコンピュータを用いて構成することができる。制御部18は、内部に図示していない、CPU(中央処理装置)、揮発性及び不揮発性メモリ、クロック回路、A/D(アナログ・デジタル)変換器、デジタル入出力回路、タイマ回路等を備え、不揮発性メモリに格納されている所定のプログラムを実行することで所定の信号を入出力する。制御部18は、各変流器13から出力された電流の値に基づき各バスバー24に流れる電流値I1を検知する。そして、制御部18は、取得した電流値に基づき実効値やピーク値を算出し、算出した結果に基づき過電流や短絡電流が検知された場合に、出力部16を制御して引外しコイル15を励磁し、各接点14を開放する。本実施形態において制御部18は、プログラムを実行することで実現される主な機能としての引外し制御部181と、不揮発性メモリ中の所定の記憶領域及び記憶領域に記憶されたデータとからなるケーブル種別依存遮断特性記憶部182とを有している。
【0023】
なお、本願において、「ケーブルの種別」とは、ケーブルの導線の太さ及びケーブルの構造を規定する類別である。また、ケーブルの種別は、ケーブルの構造として、単心と複心との違い、各構成要素の形成の仕方の違い、導線(導体)、絶縁体等の材料の違い等を定める。
【0024】
引外し制御部181は、ケーブル種別依存遮断特性記憶部182に記憶されているケーブル種別依存遮断特性(以下では単に遮断特性ともいう)を表すデータを参照して、電路に用いるケーブル31の種別に依存する遮断特性に基づき、電路遮断部11の引外し動作を制御することで、電路遮断部11及びケーブル31を含む電路を遮断する処理を行う。
【0025】
ここで
図2から
図8を参照して、ケーブル種別依存遮断特性について説明する。
図2は、ケーブル31の構造例を模式的に示した断面図である。
図2(a)は単心のケーブル31aを示す。
図2(b)は2心1条のケーブル31bを示す。
図2(c)は3心1条のケーブル31cを示す。
図2(a)のケーブル31aは、導体101を絶縁体102で被覆し、さらにシース103で覆うことで構成されている。
図2(b)のケーブル31bは、絶縁体102をそれぞれ被覆した2本の導体101に、介在104をはさんでバインダ(テープ)105を巻き付け、さらにシース103で覆うことで構成されている。
図2(c)のケーブル31cは、絶縁体102をそれぞれ被覆した3本の導体101に、介在104をはさんでバインダ105を巻き付け、さらにシース103で覆うことで構成されている。
【0026】
図3は、
図2(a)に示した単心のケーブル31aの常時許容電流及び短絡時許容電流の例を示した特性図である。
図3は、導体の断面積がそれぞれ14、22及び38mm
2の単心の600V CVケーブルCV14、CV22及びCV38の常時許容電流及び短絡時許容電流の時間・電流特性を示している。CVケーブルは、絶縁体材料に架橋ポリエチレンを用い、シース材料にビニルを用いた電力ケーブルである。また、常時許容電流は、許容電流とも呼ばれ、連続して通電可能な電流である。一方、短絡時許容電流は、瞬時許容電流又は短時間許容電流とも呼ばれ、短絡時、地絡時等において短時間に限って流せることができる電流である。短絡時許容電流は、
図3において斜線で示されるように時間に応じて変化する。単心のCV14、CV22及びCV38の常時許容電流は、それぞれ100A、130A及び190Aである。
【0027】
短絡時許容電流Iは、JCS(日本電線工業会規格)0168によって下式で計算される。
【0029】
ここで、Qは導体の熱容量であり、銅の場合、3.4J/°C・cm
3、アルミの場合、2.5J/°C・cm
3である。Aは導体の断面積(mm
2)である。aは20°Cにおける導体の温度係数であり、銅の場合、0.00393、アルミの場合、0.00403である。r
1は20°Cにおける交流導体抵抗(Ω/cm)である。T
1は短絡前の導体温度(°C)である。T
2は短絡時の最高許容温度(°C)である。そして、tは短絡電流の持続時間(秒)である。
【0030】
また、短絡時許容電流Iは、絶縁体及び導体の種類に応じて次の簡易式で求めることができる。
【0032】
Kは定数であり、絶縁体の種類が架橋ポリエチレンで、導体の種類が銅の場合、K=134である。
【0033】
次に、
図4は、
図2(b)に示した2心1条のケーブル31bの常時許容電流及び短絡時許容電流の例を示した特性図である。
図4は、導体の断面積がそれぞれ14、22及び38mm
2の2心1条の600V CVケーブルCV14、CV22及びCV38の常時許容電流及び短絡時許容電流の時間・電流特性を示している。2心1条のCV14、CV22及びCV38の常時許容電流は、それぞれ91A、120A及び170Aである。
【0034】
次に、
図5は、
図2(c)に示した3心1条のケーブル31cの常時許容電流及び短絡時許容電流の例を示した特性図である。
図5は、導体の断面積がそれぞれ14、22及び38mm
2の3心1条の600V CVケーブルCV14、CV22及びCV38の常時許容電流及び短絡時許容電流の時間・電流特性を示している。3心1条のCV14、CV22及びCV38の常時許容電流は、それぞれ76A、100A及び140Aである。
【0035】
次に、
図3〜
図5に示した常時許容電流及び短絡時許容電流の特性を有するケーブル31を例として、本実施形態におけるケーブル種別依存遮断特性について説明する。本実施形態において、ケーブル種別依存遮断特性とは、電路に用いるケーブル31の種別に依存する遮断特性であって、所定の電流値の電流を継続して流すことを許容する遮断時間を、電路に用いるケーブル31の種別に応じて定めたものである。また、所定の電流値の電流を継続して流すことを許容する遮断時間は、電路に用いるケーブル31の種別と、流す電流の定格電流値とに応じて定めたものである。そして、ケーブル種別依存遮断特性は、電路に用いるケーブル31の常時鏡電流及び短絡時許容電流を超えず、かつ、所定の規格に定められた時間・電流引外し特性を満足するものである。なお、遮断特性は、他に、引外し特性、時間・電流引外し特性、動作特性等とも呼ばれる。
【0036】
ここでは、一例として、配線用遮断器1の定格電流を100Aとする場合について説明する。JIS(日本工業規格)C8222(旧JIS C8370)では、瞬時引外しタイプJの配線用遮断器について、定格電流Inが100Aの場合、次の時間・電流引外し特性を規定している。すなわち、定格電流Inで不動作(つまり非遮断)、定格電流Inの1.25倍で2時間以内に動作(つまり遮断)、そして、定格電流Inの2倍で6分以内に動作と規定されている。
【0037】
定格電流Inを100Aとした場合、電路に流れる電流つまりケーブル31に流れる電流が100A(実効値、以下同じ。)では配線用遮断器1は不動作でなければならない。一方、
図3から
図5に破線Raの右端の黒丸で示した定格電流の1.25倍の125Aの電流が流れた場合、2時間以内で配線用遮断器1は動作しなければならない。また、
図3から
図5に破線Rbの右端の黒丸で示した定格電流の2倍の200Aの電流が流れた場合、6分以内で配線用遮断器1は動作しなければならない。
【0038】
以上のようにJIS C8222では、定格電流で不動作、定格電流の125%で2時間以内に動作、そして定格電流の200%で6分以内に動作と規定されているだけである。したがって、例えば、101Aの電流が流れた場合に1分以内で動作してもよいし、199Aの電流が流れた場合に1時間59分で動作してもよい。つまり、
図3から
図5に、破線Raで示した2時間(7200秒)で100A超から125Aまでの範囲と、破線Rbで示した6分(360秒)で100A超から200Aまでの範囲とを通過する特性であれば、JIS C8222の要求を満たすことができる。一方、ケーブル31の性能をできるだけ生かすには、破線Ra及び破線Rbを通り、ケーブル31の常時許容電流及び短絡時許容電流の時間・電流特性で許容される時間をできるだけ長く、電流値をできるだけ大きくした遮断特性を設定することが望ましい。
【0039】
規格上の要求と、ケーブル31の性能の有効利用とを図るケーブル種別依存遮断特性の例を、
図6から
図8に示した。
図6は、
図3に示した常時許容電流及び短絡時許容電流の特性を有する単心のケーブル31aに適した遮断特性の例を示した図である。
図7は、
図4に示した常時許容電流及び短絡時許容電流の特性を有する2心1条のケーブル31bに適した遮断特性の例を示した図である。
図8は、
図5に示した常時許容電流及び短絡時許容電流の特性を有する3心1条のケーブル31cに適した遮断特性の例を示した図である。なお、
図6から
図8では、
図3から
図5に示した各CVケーブルの常時許容電流及び短絡時許容電流の特性を同様に示し、CV22のケーブル種別に依存する遮断特性を破線の太線で示し、また、CV38のケーブル種別に依存する遮断特性を実線の太線で示している。
【0040】
図6に示した例では、CV14については、常時許容電流が100Aであり、この例における配線用遮断器1の定格電流100Aと同一である。そのため、一般的な定格電流100Aの配線用遮断器を選択した場合には、その配線用遮断器が、125A以上で2時間以内に遮断、そして200Aで6分以内に遮断させるという条件を満たして動作したとしても、同条件の基ではCV14を保護することができない。そこで、本実施形態の配線用遮断器1は、CV14の常時許容電流と短絡時許容電流とで決まる特性まで遮断特性を低減させる。CV22については、常時許容電流が130Aなので、破線の太線で示したように、2時以上の時間領域で電流値125Aの規格上の制限を受け、2時間未満の時間領域ではCV22の常時許容電流と短絡時許容電流とで決まる特性を満たす遮断特性にする。例えば、2時間未満の時間領域ではCV22の常時許容電流と短絡時許容電流とで決まる特性に一致した遮断特性にする。CV38については、常時許容電流が190Aなので、実線の太線で示したように、2時以上の時間領域で電流値125Aの規格上の制限を受け、2時間未満で200A未満の領域ではCV38の常時許容電流と短絡時許容電流とで決まる特性を満たす遮断特性にする。例えば、2時間未満の時間領域ではCV38の常時許容電流と短絡時許容電流とで決まる特性に一致した遮断特性にする。また、CV38では、200A以上の電流領域で電流値200Aの規格上の制限を受け、6分未満の領域ではCV38の短絡時許容電流で決まる特性を満たす遮断特性にする。例えば、6分未満の領域ではCV38の短絡時許容電流で決まる特性に一致した遮断特性にする。
【0041】
すなわち、
図6に示したように本実施形態のケーブル種別依存遮断特性は、上述したように、所定の電流値の電流を継続して流すことを許容する遮断時間を、保護する電路に用いるケーブルの種別に応じて定める。また、本実施形態のケーブル種別依存遮断特性は、所定の電流値の電流を継続して流すことを許容する遮断時間を、電路に用いるケーブルの種別と、流す電流の定格電流値とに応じて定める。また、本実施形態のケーブル種別依存遮断特性は、電路に用いるケーブルの常時許容電流及び短絡時許容電流を超えず、かつ、所定の規格に定められた時間・電流引外し特性を満足するように定められている。
【0042】
図7に示した例では、2心1条のCV14については、常時許容電流が91Aであり、この例における配線用遮断器の定格電流100Aに満たない。そのため、一般的な定格電流100Aの配線用遮断器を選択した場合には、その配線用遮断器が、定格電流、125A以上で2時間以内に遮断、そして200Aで6分以内に遮断させるという条件を満たして動作したとしても、同条件の基では2心1条のCV14を保護することができない。そこで、本実施形態の配線用遮断器1は、2心1条のCV14の常時許容電流と短絡時許容電流とで決まる特性まで遮断特性を低減させる。例えば、2心1条のCV14の性能を最大限に生かすには例えば配線用遮断器1の定格電流を91Aまで低減させるとともに、91A以上の遮断特性を2心1条のCV14の短絡時許容電流とで決まる特性を満たす遮断特性にする。要するに、2心1条のCV14の場合、2心1条のCV14の常時許容電流と短絡時許容電流とで決まる特性に一致した遮断特性にする。
2心1条のCV22については、常時許容電流が120Aと、この例における配線用遮断器1の定格電流の125%の電流125A未満なので、破線の太線で示したCV22の常時許容電流と短絡時許容電流とで決まる特性そのものが、配線用遮断器1の遮断特性として最適な遮断特性になる。2心1条のCV38については、常時許容電流が170Aなので、実線の太線で示したように、2時以上の時間領域で電流値125Aの規格上の制限を受け、2時間未満で200A未満の領域では2心1条のCV38の常時許容電流と短絡時許容電流とで決まる特性を満たす遮断特性にする。例えば、2時間未満で200A未満の領域では2心1条のCV38の常時許容電流と短絡時許容電流とで決まる特性に一致した遮断特性にする。また、2心1条のCV38では、200A以上の電流領域で電流値200Aの規格上の制限を受け、6分未満の領域では2心1条のCV38の短絡時許容電流で決まる特性を満たす遮断特性にする。例えば、6分未満の領域では2心1条のCV38の短絡時許容電流で決まる特性に一致した遮断特性にする。
【0043】
図8に示した例では、3心1条のCV14については、常時許容電流が76Aであり、この例における配線用遮断器1の定格電流100Aに満たない。そのため、一般的な定格電流100Aの配線用遮断器を選択した場合には、その配線用遮断器が、定格電流、125A以上で2時間以内に遮断、そして200Aで6分以内に遮断させるという条件を満たして動作したとしても、同条件の基では3心1条のCV14を保護することができない。そこで、本実施形態の配線用遮断器1は、3心1条のCV14の性能を最大限に生かすには例えば配線用遮断器1の定格電流を76Aまで低減させる。
3心1条のCV22については、常時許容電流が100Aと、この例における配線用遮断器1の定格電流100Aとが同一なので、破線の太線で示したCV22の常時許容電流と短絡時許容電流とで決まる特性そのものが、配線用遮断器1の遮断特性として最適な遮断特性になる。3心1条のCV38については、常時許容電流が140Aなので、実線の太線で示したように、2時以上の時間領域で電流値125Aの規格上の制限を受け、2時間未満で200A未満の領域では3心1条のCV38の常時許容電流と短絡時許容電流とで決まる特性を満たす遮断特性にする。例えば、2時間未満で200A未満の領域では3心1条のCV38の常時許容電流と短絡時許容電流とで決まる特性に一致した遮断特性にする。また、3心1条のCV38では、200A以上の電流領域で電流値200Aの規格上の制限を受け、6分未満の領域では3心1条のCV38の短絡時許容電流で決まる特性を満たす遮断特性にする。例えば、6分未満の領域では3心1条のCV38の短絡時許容電流で決まる特性に一致した遮断特性にする。
【0044】
図1に示したケーブル種別依存遮断特性記憶部182は、
図6から
図8を参照して説明したケーブル種別依存遮断特性を、ケーブル種別を表す情報とともに1又は複数組記憶する。ただし、ケーブル種別依存遮断特性記憶部182は、ケーブル種別依存遮断特性を1つのみ記憶する場合には、ケーブル種別を表す情報は記憶しなくてもよい。ケーブル種別依存遮断特性記憶部182は、例えば、電流と時間との対応関係を示すデータを含むテーブルとして記憶したり、電流と時間との対応関係を示す1又は複数の数式を記憶したりすることで、
図6から
図8に示したケーブル種別依存遮断特性を記憶することができる。
【0045】
そして、引外し制御部181は、ケーブル種別依存遮断特性記憶部182に記憶されているケーブル種別依存遮断特性を表すデータを参照して、電路に用いるケーブル31の種別に依存する遮断特性に基づき、電路遮断部11の引外し動作を制御する。その際、引外し制御部181は、ケーブル種別依存遮断特性記憶部182に記憶されている複数のケーブル種別依存遮断特性のいずれかを、操作部19の設定に従い、ケーブル31の種別を特定し、特定したケーブル31の種別から適する遮断特性を選択することができる。すなわち、配線用遮断器1は、電路に用いるケーブル31の種別から適する遮断特性を例えばユーザの指示に従い選択可能とすることができる。ただし、操作部19の設定は、例えば工場出荷前のみ変更可能な形態としてユーザによる変更を認めたいようにすることもできる。この場合、配線用遮断器1に対しては、電路に用いるケーブル31の種別に応じて遮断特性を定める型式を定めることができる。この場合、型式は、電路に用いるケーブルの種別に対応する識別情報として機能する。すなわち、配線用遮断器1に対して型式を定めるということは、配線用遮断器1に対して電路に用いるケーブルの種別に対応する識別情報を付与し、付与した識別情報に対応する遮断特性を配線用遮断器1に対して定めるという意味である。ユーザは、ケーブルの種別に応じて適切な型式を指定することで、使用するケーブルの性能に適したケーブル種別依存遮断特性を有する配線用遮断器1を選択することができる。
【0046】
次に、
図9から
図11を参照して、
図1に示した配線用遮断器1の動作例について詳細に説明する。
図9は、
図8を参照して説明した3心1条のケーブルCV38の実線の太線で示したケーブル種別依存遮断特性と、そのケーブル種別依存遮断特性を階段状の特性で近似したケーブル種別依存遮断特性STとを示す。ケーブル種別依存遮断特性STは、引外し制御部181における電流値と時間とに基づく計算等の処理を少なくするために、階段状の設定としている。
【0047】
図10は、
図9に示した階段状のケーブル種別依存遮断特性STを用いる場合の引外し制御部181の動作例を示したフローチャートである。また、
図11は、
図9に示した階段状のケーブル種別依存遮断特性STを、ケーブル種別依存遮断特性記憶部182に記憶する場合のテーブルの構成例を説明するための図である。
【0048】
図10に示したフローは、一例として、1ミリ秒毎に繰り返して実行される動作である。
図10に示した処理では、引外し制御部181は、カウント値(i)、電流制限値(i)と、計数制限値(i)の3種類の配列変数を使用する(ここでi=0、1、…、N−1。Nは配列の要素数)。カウント値(i)は、電流値I1(
図1)の実効値が電流制限値(i)に設定されている電流制限値以上である場合に1だけ増分され、電流制限値以上でない場合に1だけ減分される変数である。電流制限値(i)には、
図9に示したケーブル種別依存遮断特性STの各段階に対応する電流値が設定される。電流制限値(i)は、ケーブル種別依存遮断特性記憶部182に記憶されている値である。そして、計数制限値(i)は、ケーブル種別依存遮断特性STにおいて各段階に対応する各電流値に対応する各継続時間が設定される。計数制限値(i)は、ケーブル種別依存遮断特性記憶部182に記憶されている値である。
【0049】
図11は、ケーブル種別依存遮断特性記憶部182の構成例として、
図9に示した階段状のケーブル種別依存遮断特性STに対応する電流制限値(i)と計数制限値(i)とを表すテーブルの構成を示した図である。電流制限値(i)は電流の実効値(A)そのものであり、計数制限値(i)は
図9の時間(秒)の値を1ミリ秒で除した値(すなわち1000倍した値)である。
図11に示したテーブルでは、例えば125Aに7200秒、140Aに900秒、169Aに648秒、200Aに360秒、268Aに100秒、…というように、ケーブル種別依存遮断特性STの各段に対応する値が格納される。これらの値のうち、i=0の125Aと7200秒との対応関係と、i=3の200Aと360秒との対応関係とは、JIS C8222に規定された定格電流Inの1.25倍と2倍の電流と時間との対応関係に対応している。ケーブル種別依存遮断特性記憶部182がi=0の設定とi=3の設定とを含むことで、引外し制御部181は、JIS C8222規格に定められた時間・電流引外し特性を満たすことができる。i=1の140Aは、3心1条のケーブルCV38の常時許容電流に対応している。また、i=0、1及び3以外の電流値と時間との対応関係は、短絡時許容電流と時間との対応関係に対応している。なお、
図11に示したケーブル種別依存遮断特性記憶部182の構成例は一例であって、
図11に示した例のN=12に代えて、要素数Nは減らしたり増やしたりすることができる。
【0050】
次に、
図10を参照して引外し制御部181の動作例について説明する。
図10に示した処理では、まず、引外し制御部181は変流器13の検出値に基づき電路に流れる電流の実効値を算出する(ステップS101)。次に、引外し制御部181は、ステップS101で算出した電流値が、瞬時引外し設定電流以上か否かを判定する(ステップS102)。瞬時引外し設定電流は、予め定めた瞬時引外し動作を行う場合のしきい値である。例えば
図9の特性図で、時間0.01秒に対応するケーブルCV38の短絡時許容電流の値とすることができる。ステップS102で瞬時引外し設定電流以上であると判定された場合(ステップS102でYESの場合)、引外し制御部181は出力部16を介して電路遮断部11を制御して電路を遮断する(ステップS111)。一方、ステップS102で瞬時引外し設定電流以上でないと判定された場合(ステップS102でNOの場合)、引外し制御部181は変数iに0を格納する(ステップS103)。
【0051】
ステップS103で変数iに0を格納した後、引外し制御部181はステップS101で算出した電流値が、電流制限値(i)以上か否かを判定する(ステップS104)。例えばi=0の場合、引外し制御部181は電流値が電流制限値(0)=125A以上か否かを判定する。
【0052】
ステップS104で電流値が電流制限値(i)以上でないと判定された場合(ステップS104でNOの場合)、引外し制御部181はカウント値(i)が0であるか否かを判定する(ステップS109)。カウント値(i)が0でない場合(ステップS109でNOの場合)、引外し制御部181は、カウント値(i)を1だけ減分する(ステップS110)。カウント値(i)が0である場合(ステップS109でYESの場合)又はステップS110でカウント値(i)を1だけ減分した場合、引外し制御部181は変数iを1だけ増分する(ステップS107)。次に、ステップS107で変数iを1だけ増分した後、引外し制御部181は変数iが配列の要素数N以上であるか否かを判定する(ステップS108)。変数iがN以上の場合(ステップS108でYESの場合)、引外し制御部181は処理を終了し、
図10に示した処理を呼び出した他の処理に復帰する。一方、変数iがN以上でない場合(ステップS108でNOの場合)、引外し制御部181はステップS104に戻り、ステップS101で算出した電流値が、電流制限値(i)以上か否かを判定する(ステップS104)。例えば、i=1の場合、引外し制御部181は電流値が電流制限値(1)=140A以上か否かを判定する。次に、引外し制御部181はステップS104の判定結果に応じた処理を行う。以降、上記と同様である。
【0053】
他方、上述したステップS104で電流値が電流制限値(i)以上であると判定された場合(ステップS104でYESの場合)、引外し制御部181はカウント値(i)を1だけ増分する(ステップS105)。次に、引外し制御部181はカウント値(i)が計数制限値(i)より大きいか否かを判定する(ステップS106)。例えば、i=0の場合、引外し制御部181はカウント値(0)が計数制限値(0)=7200000より大きいか否かを判定する。ステップS106でカウント値(i)が計数制限値(i)より大きいと判定された場合(ステップS106でYESの場合)、引外し制御部181は出力部16を介して電路遮断部11を制御して電路を遮断する(ステップS111)。一方、ステップS106でカウント値(i)が計数制限値(i)より大きくないと判定された場合(ステップS106でNOの場合)、引外し制御部181は変数iを1だけ増分する(ステップS107)。次に、引外し制御部181はステップS108とそれ以降の処理を行う。
【0054】
引外し制御部181は、
図10に示した処理を1ミリ秒毎に繰り返し実行することで、電路に用いるケーブル31の種別に依存する遮断特性で電路遮断部11を制御する。
【0055】
なお、
図10に示した動作は一例であって、引外し制御部181の動作は例えば次のように変更することができる。すなわち、
図10に示した動作例ではすべてのカウント値(i)の増分又は減分を同じ周期(つまり1ミリ秒毎)で行っているが、例えば、1ミリ秒毎に行うものと、10ミリ秒毎に行うものとを混在させる等、異なる周期でカウント値(i)の増分又は減分を行うようにしてもよい。また、ステップS102の判定処理は実効値ではなく電流値のピーク値を基準として行うようにしてもよい。また、カウント値(i)は減分時に1以外の値で減分してもよい。
【0056】
以上のように本実施形態の配線用遮断器1によれば、配線用遮断器1が電路に用いるケーブル31の種別に依存する遮断特性を有する。したがって、使用するケーブル31に適した遮断特性を持つ配線用遮断器1を提供することができる。なお、本実施形態の配線用遮断器1は、電路に用いるケーブルの種別に依存する遮断特性を有する遮断器としてとらえることができるほか、次のような態様を有するものとしてとらえることができる。すなわち、本実施形態の配線用遮断器1は、保護対象の電路に用いるケーブルの種別に依存する遮断特性を有する遮断器としてとらえることができる。また、本実施形態の配線用遮断器1は、保護するケーブルの種別に依存する遮断特性を有する遮断器としてとらえることができる。また、本実施形態の配線用遮断器1は、保護の対象にするケーブルの種別に依存する遮断特性を有する遮断器としてとらえることができる。
【0057】
また、本実施形態の配線用遮断器1によれば、規格上の遮断特性と、ケーブルの耐熱性を十分に発揮する遮断特性を持つことができる。すなわち、定格電流を超える領域の遮断特性をケーブルの性能上限に近づけることができる。また、本実施形態の配線用遮断器1は、定格電流の規定倍率に対する遮断性能と、使用するケーブルに合った最適な通電時間と遮断時間特性とを容易に両立させて持つことができる。これによれば、例えば電気機器4が発生させる定格を超える過渡的な負荷変動による不要なトリップを回避しやすくなる。すなわち、本実施形態の配線用遮断器1によれば、電気機器4の負荷変動による通電電流での不要動作を防げる。そのため、配線用遮断器1を電力会社との引込開閉器として使用する場合に定格電流を下げることが可能になるため、電力需要家の電力料金の削減ができる。
【0058】
以上、本発明の配線用遮断器1の一実施形態について説明したが、本発明の実施形態は上記のものに限定されない。本発明の実施形態は、例えば、上記の実施形態を次のように変形したものとすることができる。すなわち、例えば、接点14は、機械式に限らず、半導体素子を用いて構成したものであってもよい。その場合、引外しコイル15等は省略することができる。また、制御部18が実行するプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体又は通信回線を用いて頒布することができる。