(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記バイブロハンマ(VH)の起振力を前記1又は複数のチャックユニット(2A、2B、2D、2E)に伝達するために、該バイブロハンマ(VH)の起振機(20)と該1又は複数のチャックユニット(2A、2B、2D、2E)の間に連結部材(6、3)を有することを特徴とする
請求項1〜3のいずれかに記載のバイブロハンマの把持装置。
2以上の前記チャックユニット(2A、2B、2D、2E)を連結する場合、少なくとも1組の隣り合う2つの該チャックユニット(2A、2B、2D、2E)の間に挿入されたスペーサ(5)を有することを特徴とする
請求項1〜4のいずれかに記載のバイブロハンマの把持装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バイブロハンマの一般的な把持装置では、鋼管内径が小さい場合に限らず、諸処の事情により鋼管を把持できない場合がある。また、一般的な把持装置により把持できない場合においてチャッキングプレートを溶接できない場合(例えば引き抜いた鋼管を他の現場に転用する場合等)もある。そのような場合、鋼管の管内から外方に押圧力を付加して突っ張り力により鋼管を把持しなければならないが、鋼管の変形や座屈を防止するための対抗力を管外に設けることが困難な場合がある。例えば、鋼管が地中に打ち込まれている場合、鋼管の外側に他の構造物が近接している場合、あるいは、水底に鋼管を打ち抜き施工する場合などがある。
【0007】
そして、鋼管の管内のみからの押圧力によって鋼管を把持する場合は、鋼管の変形や座屈を生じ易い天端又は下端の近傍を避け、例えば全長の中間部で鋼管を把持する必要がある。しかしながら、現状のバイブロハンマにおける把持装置は、専ら鋼管の天端近傍を把持するものであり、鋼管の天端以外の位置にて管内のみから押圧力を付加して確実に鋼管を把持可能でありかつ作業効率のよい技術は、未だ確立されていない。
【0008】
上記の問題点に鑑み、本発明は、バイブロハンマにおける鋼管の把持装置であって
、管内のみから押圧力を付加して確実に鋼管を把持可能でありかつ作業効率のよい把持装置及びこれを用いた鋼管杭の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、以下の構成を提供する。括弧内の数字は、後述する図面の符号であり、参考のために付する。
【0010】
本発明の態様は、鋼管(P)の内面に押圧力を付加して該鋼管(P)を把持するための、バイブロハンマ(VH)の把持装置(1A、1B、1C、1D、1E)であって、
前記鋼管(P)の内面に対し押圧力を付加する
べくエアにより弾性変形する押圧ラバー部(22)
と、
前記バイブロハンマ(VH)の起振力を上方から伝達されかつ上下方向に沿って連結された1又は複数のチャックユニット(2A、2B、2D、2E)と、を有し、
前記チャックユニット(2A、2B、2D、2E)の筐体(21)が筒体部(21a)を具備し、前記押圧ラバー部(22)は、該筒体部(21a)の外周面上に配置されかつ該筒体部(21a)の内部空間を通してエアを供給されることを特徴とする。
【0011】
上記態様において、前記押圧ラバー部(22)が、内側の中空のラバーチューブ(22a)と、外側の中実のラバーバンド(22b)とを重ねた二重構造であることを特徴とすることが、好適である。
【0012】
上記態様において、前記押圧ラバー部(22)が、中実のラバーバンド(22b)のみ又は中空のラバーチューブ(22a)のみからなる一重構造であることが、好適である。
【0014】
上記態様において、前記バイブロハンマ(VH)の起振力を前記1又は複数のチャックユニット(2A、2B、2D、2E)に伝達するために、該バイブロハンマ(VH)の起振機(20)と該1又は複数のチャックユニット(2A、2B、2D、2E)の間に連結部材(6、3)を有することが、好適である。
【0015】
上記態様において、2以上の前記チャックユニット(2A、2B、2D、2E)を連結する場合、少なくとも1組の隣り合う2つの該チャックユニット(2A、2B、2D、2E)の間に挿入されたスペーサ(5)を有することが、好適である。
【0016】
上記態様において、押圧状態にある前記押圧ラバー部(22)に対して上下方向の圧縮力を付加するための圧縮機構(9)を有することが、好適である。
【0017】
本発明の別の態様は、上記いずれかの態様のバイブロハンマの把持装置を用いて鋼管を把持して該鋼管の打込み又は引抜きを行うことを特徴とする鋼管杭の施工方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明による、バイブロハンマの把持装置は、エアにより弾性変形することにより鋼管の内面に対し押圧力を付加して鋼管を把持する押圧ラバー部を有する。これにより、鋼管の内面のみからの押圧力により鋼管を把持することができる。また、押圧ラバー部を適切な位置とすることにより、押圧力による鋼管の変形及び座屈を生じない。さらに、エアの供給と排気により把持と解放ができるので、作業性がよく効率的である。
【0019】
押圧ラバー部の位置は、起振機との間に設けられる連結部材や、押圧ラバー部を具備するチャックユニット同士の間に設けられるスペーサにより自在に設定可能である。これにより、鋼管の変形や座屈を生じない位置に押圧力を付加することができる。
【0020】
押圧ラバー部の位置を自在に設定可能であるので、鋼管における比較的下端に近い位置を把持でき、その位置に起振力を有効に伝達することができる。この結果、鋼管の打込みや引抜きが容易となる。特に、鋼管を引き抜く場合、土圧が最も大きい鋼管下端では押圧力による変形を生じないと考えられる。従って、鋼管の下端近傍の内面を把持することにより、その位置に起振力を有効に伝達することができる。
【0021】
また、鋼管を引き抜く場合、シルト層や粘土層のように鋼管外面との粘着力(付着力)の強い粘性土が周囲に存在する位置において鋼管内面を押圧ラバー部により把持することにより、その位置に起振力を有効に伝達することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。各実施形態の図面において、同じ構成要素又は類似の構成要素については同じ又は類似の符号を付している。なお、一般的に「把持」とは、物を両側から掴む意味で用いることが多いが、本明細書では、管状物の内面に押圧力を付加して突っ張り力により保持することを意味する。
【0024】
以下では、本発明の把持装置を、主として円筒形の鋼管に適用する例に基づいて説明するが、本発明の把持装置は角筒形の鋼管にも適用可能である。さらに、本発明の把持装置を、水底における杭の引抜き施工に適用する例に基づいて説明するが、本発明の把持装置は、当然に杭の打込みにも適用可能であり、また陸上での施工にも適用可能である。なお、鋼管は傾斜施工される場合もあるが、本明細書では、鋼管の軸方向を「上下方向」と表現する。また、鋼管の軸に近い方を「内」と、遠い方を「外」と表現する。
【0025】
(1)第1の実施形態
図1は、本発明によるバイブロハンマの把持装置の第1の実施形態の一例を含む施工状況を概略的に示す側面(一部断面)図である。
図2は、
図1の把持装置の主要部を鋼管Pと共に示した概略的な拡大側断面図である。
【0026】
図1は、水底Bに打ち込まれている鋼管Pを引き抜く施工状況を示している。バイブロハンマVHは、水面Sの上方に設置された起振機20と、その下面から下方に延びる把持装置10Aとを有する。把持装置10Aは、起振力を伝達するために起振機20に連結された連結部材である延長ロッド部6と、延長ロッド部6の下端に取り付けられたラバーチャック部1Aとを具備する。ラバーチャック部1Aが鋼管Pを把持する機能を有する。
【0027】
この例では、水中Wを介した施工になるので、起振機20からラバーチャック部1Aまで起振力を伝達する延長ロッド部6が必要である。陸上施工など、施工状況によって延長ロッド部6が不要な場合もある。一例として、延長ロッド部6は、起振機20と連結するための起振機連結具6bと、ヤットコアダプタ6aとから構成されている。ヤットコアダプタ6aは、必要に応じて、適宜の長さのものを1又は複数個連結する。
【0028】
ラバーチャック部1Aは、ヤットコアダプタ6aとの連結部材である最上段のチャックトップ3Aと、その下に3段連結されたチャックユニット2Aと、下端に連結されたチャックガイド4Aとを備えている。チャックユニット2Aは、径方向外向きに鋼管Pの内面に対し押圧力を付加しており、その摩擦力により鋼管Pを把持している。この押圧力を生じさせるためのエアを送り込むエアホースAの下端が、ラバーチャック部1Aの上端に取り付けられている。エア圧力は例えば7kg/cm
2を用いるが、この数値に限定はしない。上方からの起振力がチャックユニット2Aに伝達されると、鋼管Pに起振力が付加される。これにより、鋼管Pと周囲地盤との静摩擦力が動摩擦力に転換され、鋼管Pを容易に引抜くことができる。
【0029】
図2を参照して、
図1の把持装置10Aにおけるラバーチャック部1Aを詳細に説明する。ヤットコアダプタ6aの支柱61の下端に形成された外向きの連結用フランジ62と、チャックトップ3Aの上端に形成された外向きの連結用フランジ32が、適宜の固定具7により連結されている(他の連結用フランジ同士の連結においても同様)。なお「フランジ」は環状平板を意味する。複数の固定具7が周方向に均等に配置されている。連結面にリング状のシール材8aが介在することによりラバーチャック部1Aの内部空間の気密性を維持する(他の連結用フランジ同士の連結においても同様)。エアホースAの下端を取り付ける取付金具63が連結用フランジ62に設けられている。
【0030】
チャックトップ3Aは、剛体である上下に開口する中空の筒体部31と、上端の外向きの連結用フランジ32と、下端の内向きの連結用フランジ33とを具備する。エアホースAの下端は、チャックトップ3Aの内部空間に開口している。なお、
図2では、チャックトップ3Aを一体部品として示しているが、気密性が確保できるならば複数の部品を組み合わせて構成してもよい。
【0031】
チャックトップ3Aの下には、3段のチャックユニット2Aが連結されている。各段のチャックユニット2Aは同じ構造であり、任意の段数を連結することができる。1段のチャックユニット2Aの高さは、例えば220mm程度とする。
【0032】
チャックユニット2Aは、剛体である筐体21を具備する。筐体21は、上下に開口する中空の筒体部21aと、筒体部21aの上下端にそれぞれ形成された外向きのラバー支持フランジ21b及び内向きの連結用フランジ21cとを具備する。本例では、鋼管Pが円筒形であるので、筒体部21aは円筒形である。連結用フランジ21cは、チャックトップ3A、別のチャックユニット2A又はチャックガイド4Aとの連結に用いられる。なお、
図2では、チャックユニット2Aの筐体21を一体部品として示しているが、気密性が確保できるならば複数の部品を組み合わせて構成してもよい。
【0033】
筐体21の上下端のラバー支持フランジ21bと筒体部21aの外周面に囲まれた環状空間に押圧ラバー部22が収容されている。一例として、押圧ラバー部22は、径方向内側に位置する中空で軟質のラバーチューブ22aと、径方向外側に位置する中実で硬質のラバーバンド22bとを重ねた二重構造となっている。ラバーチューブ22aは、径方向内向きに設けられた少なくとも1つの給排気ノズル22cを具備する。給排気ノズル22cは、筒体部21aを貫通する給排気口21dに挿通されて内部空間に開口している。給排気ノズル22cを通して給排気が行われる。給排気ノズル22cと給排気口21dの間に滑り止めのシール材8bが設けられている。
【0034】
図3(a)は、
図2の押圧ラバー部22の斜視図である。内側の軟質のラバーチューブ22aとして、エアにより十分に膨張する柔軟性と強度を兼ね備えたゴム弾性材料を選択する。外側の硬質のラバーバンド22bとしては、軟質のラバーチューブ22aに比べて硬く特に耐摩耗性を有するゴム弾性材料を選択する。軟質ゴム弾性材料としては、例えば、タイヤチューブ等に用いられるブチルゴム等がある。硬質ゴム弾性材料としては、例えば、タイヤトレッド等に使用されるスチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、スチレンゴム等がある。これらの材料に限定するものではない。
【0035】
なお、ラバーチューブ22aは、ドーナツ状の連続的なチューブでなくともよく、1本の袋体を筒体部に沿うように曲げたものでもよい。ラバーバンド22bも、連続的な輪でなくともよく、1枚の板を曲げたものでもよい。ラバーチューブ22aとラバーバンド22bの接触面は、単に当接した状態でもよく、あるいは、接着等により接合してもよい。
【0036】
また、別の例として、ラバーチューブ22a及びラバーバンド22bはそれぞれ、周方向において複数個に分割されていてもよい。その場合、分割された各ラバーチューブ毎に給排気ノズル及び給排気口を設ける必要がある。
【0037】
再び
図2を参照すると、ラバーチャック部1Aの下端には、チャックガイド4Aが連結されている。チャックガイド4Aは、上端の内向きの連結用フランジ41bにより直ぐ上のチャックユニット2Aと連結されている。チャックガイド4Aは、ラバーチャック部1Aを鋼管Pに上方から挿入する際のガイドとなる略円錐形のガイド部41aを有する。ガイド部41aには、水抜き用の水抜孔41cが形成されているが、内部空間の気密性を維持する間は栓42で閉鎖されている。なお、
図2では、チャックガイド4Aを一体部品として示しているが、気密性が確保できるならば複数の部品を組み合わせて構成してもよい。
【0038】
以上のように、ラバーチャック部1Aは、チャックトップ3Aと、1又は複数段のチャックユニット2Aと、チャックガイド4Aとから構成されており、これらが径方向内向きの連結用フランジと固定具により上下方向に連結され、内部空間は互いに連通し、かつ外部に対して気密性が維持されている。エアホースAから送り込まれたエアは、内部空間から押圧ラバー部22の給排気ノズル22cを通ってラバーチューブ22a内に流入する。このエア圧力により、ラバーチューブ22aが全周に亘って弾性変形し膨張する。このラバーチューブ22aの膨張は、収容空間の唯一の開口である径方向外方に向かって行われる。この結果、ラバーバンド22bも弾性変形により伸張(径が拡張)し、鋼管Pの内面に密着して押圧力を付加する。
図2は、この押圧ラバー部22の弾性変形した状態すなわち押圧状態を示している。
【0039】
ラバーバンド22bと鋼管Pの内面との摩擦力により、鋼管Pが把持固定される。この摩擦力は、起振力が伝達されたときも押圧ラバー部22が滑ったり離脱したりしない大きさでなければならない。押圧力の大きさは、起振力の2倍程度とすることが好ましい。
【0040】
ここで、ラバーチャック部1Aの鋼管Pに対する適切な位置は、押圧ラバー部22の押圧力により鋼管Pが変形や座屈を生じない位置である。従って、1段目のチャックユニット2Aは、押圧力により変形や座屈を生じる可能性がある天端近傍領域よりも下方に配置しなければならない。鋼管Pにおいて、押圧力により変形や座屈を生じる領域は、押圧力の大きさと、鋼管Pの管径、板厚、土中の鋼管長さ等に基づく力学的演算により決定される。大まかな目安としては、例えば、鋼管Pの天端から、管径の2.5〜3.0倍に相当する長さ範囲には、チャックユニット2Aを配置しないようにする。チャックユニット2Aの位置は、連結部材であるヤットコアダプタ6a及び/又はチャックトップ3Aの長さを適切に調整することで設定可能である。
【0041】
さらに、エアホースAから排気することにより、ラバーチューブ22a内のエアも排気され、押圧ラバー部22は収縮する。
図3(b)の部分拡大図は、押圧ラバー部22が収縮状態にあるときを示している。ラバーチャック部1Aを鋼管Pに挿入する際(鋼管Pを把持していないとき)は、押圧ラバー部22は収縮状態となっており、ラバーバンド22bと鋼管Pの内面との間には隙間がある。
【0042】
(2)第2の実施形態
図4は、本発明によるバイブロハンマの把持装置の第2の実施形態の一例を含む施工状況を概略的に示す側面(一部断面)図である。
図5は、
図4の把持装置の主要部を鋼管Pと共に示した概略的な拡大側断面図である。
【0043】
図4は、
図1に示した第1の実施形態と同様に、水底Bに打ち込まれている鋼管Pを引き抜く施工状況を示している。バイブロハンマVHは、水面Sの上方に設置された起振機20と、その下面から下方に延びる把持装置10Bとを有する。把持装置10Bは、延長ロッド部6と、ラバーチャック部1Bとから構成される。把持装置10Bにおける第1の実施形態と同じ構成要素については、説明を省略する。第2の実施形態では、把持装置10Bのラバーチャック部1Bが、第1の実施形態のラバーチャック部1Aとは異なる。
【0044】
図5を参照して、
図4の把持装置10Bにおけるラバーチャック部1Bを詳細に説明する。ヤットコアダプタ6aの下端に連結されたチャックトップ3Bは、筒体部31の下端の連結用フランジ32が外向きに形成されている点が、第1の実施形態と異なる。
【0045】
チャックトップ3Bの下には、2段のチャックユニット2Bが連結されている。各段のチャックユニット2Bは同じ構造であり、任意の段数を連結することができる。
【0046】
チャックユニット2Bは、剛体である筐体21を具備する。筐体21は、上下に開口する中空の筒体部21aと、筒体部21aの中間部の外周面上に形成された上下一対の外向きのラバー支持フランジ21bと、筒体部21aの上下端にそれぞれ形成された外向きの連結用フランジ21cとを具備する。連結用フランジ21cは、チャックトップ3B、別のチャックユニット2B又はチャックガイド4Bとの連結に用いられる。
【0047】
上下一対のラバー支持フランジ21bと筒体部21aの外周面とに囲まれた環状空間に押圧ラバー部22が収容されている。押圧ラバー部22自体は、第1の実施形態と同様に、中空で軟質のラバーチューブ22aと、中実で硬質のラバーバンド22bとを重ねた二重構造である。なお、
図5では、チャックユニット2Bの筐体21を一体部品として示しているが、気密性が確保できるならば複数の部品を組み合わせて構成してもよい。
【0048】
ラバーチャック部1Bの下端には、チャックガイド4Bが連結されている。第2の実施形態のチャックガイド4Bは、上端の外向きの連結用フランジ41bにより直ぐ上のチャックユニット2Bと連結されている。連結用フランジ41bが外向きである点以外は、第1の実施形態と同様である。
【0049】
以上のように第2の実施形態では、ラバーチャック部1Bにおいて、チャックトップ3B、1又は複数段のチャックユニット2B及びチャックガイド4Bを上下方向に連結する連結用フランジ32、21c、41bが、径方向外向きである点において第1の実施形態と異なる。連結用フランジが外向きであるので、ラバーチャック部1Bの組立て作業が容易である。
【0050】
(3)第3の実施形態
図6は、本発明によるバイブロハンマの把持装置の第3の実施形態の一例を含む施工状況を概略的に示す側面(一部断面)図である。
図7は、
図6の把持装置の主要部を鋼管Pと共に示した概略的な拡大側断面図である。
【0051】
図6に示す施工状況は、第1及び第2の実施形態と同様である。第3の実施形態は、第2の実施形態の変形形態ともいえるので、共通する構成要素については説明を省略する。第2の実施形態と異なる点は、把持装置10Cのラバーチャック部1Cにおいて、1段目と2段目のチャックユニット2Bの間にスペーサ5が挿入されている点である。
【0052】
図7を参照して、
図6の把持装置10Cにおけるラバーチャック部1Cを説明する。
図7に示すように、2つのチャックユニット2Bの間にスペーサ5が挿入されている。スペーサ5は、上下に開口する中空の筒体部51aを具備する。筒体部51aの上下端にはそれぞれ外向きの連結用フランジ51bが形成されている。連結用フランジ51bは、上下のチャックユニット2Bとの連結に用いられる。連結面には、気密性を確保するためのシール材8aを配置する。
【0053】
スペーサ5は、各段のチャックユニット2Bの鋼管Pに対する位置を調整するために挿入される。これにより、鋼管Pの全長における適切な位置にチャックユニット2Bを配置することができる。例えば、鋼管Pの全長において、その周囲にシルト層や粘土層が存在する位置にチャックユニット2Bを配置することが好適である。シルト層や粘土層のような粘性土は、鋼管外面との粘着力(付着力)が大きい。従って、この位置において直接的に起振力を伝達することにより、鋼管Pを周囲の地盤から効率的に離脱させることができる。また、別の例として、鋼管Pの下端近傍に配置することも好適である。鋼管Pの下端は土圧が最も大きい位置であり、この位置において直接的に起振力を伝達することにより、鋼管Pの根元を地盤から容易に離脱させることができる。
【0054】
別の例として、1段目のチャックユニット2Bの位置を調整するために、スペーサ5を、チャックトップ3Bと1段目のチャックユニット2Bの間に挿入してもよい。
【0055】
なお、第3の実施形態は、第1の実施形態にも適用可能である。その場合、スペーサ5の上下端の連結用フランジは、内向きに形成する。
【0056】
(4)第4の実施形態
図8は、本発明によるバイブロハンマの把持装置の第4の実施形態の主要部の概略的な側断面図である。
図9(a)(b)は、
図8の部分拡大図であり、動作状態を示す図である。
図10は、
図8に示した第4の実施形態のチャックユニット2Dの展開図である。
図11(a)(b)は、
図8に示した第4の実施形態のチャックユニット2Dの動作状態を示す部分斜視図である。
【0057】
なお、
図10及び
図11は原理説明のための図であり、各部品の形状等は一例であってこれらの形状等に限定するものではない。
【0058】
第4の実施形態では、ラバーチャック部1Dが、第1〜第3の実施形態とは異なる構成を有する。
図8に示す例では、ラバーチャック部1Dは、チャックトップ3Aと、3段のチャックユニット2Dと、チャックガイド4Aとを有する。なお、チャックトップ3A及びチャックガイド4Aは第1の実施形態と同じであるが、これらに替えて、第2の実施形態のチャックトップ3B及びチャックガイド4Bとしてもよい。
【0059】
図8に示すように、第4の実施形態では、チャックユニット2Dの押圧ラバー部22に対して上下方向に圧縮力を付加するための圧縮機構9を備えている。圧縮機構9は、油圧シリンダ91と、ピストン連結部92と、引上げロッド94と、圧縮管96と、圧縮板97と、弾性部材98及び99と、を有する。
【0060】
油圧シリンダ91は、ヤットコアダプタ6aの下面に吊下するように取り付けられている。油圧シリンダ91が収縮することにより、引上げロッド94を上方に引き上げる。油圧シリンダ91を駆動する油圧機構については周知であるので図示及び説明を省略する。
【0061】
引上げロッド94は、1本の柱状部材であり、上端はピストン連結部92を介して油圧シリンダ91と連結されている。図示しないが、ピストン連結部92の連結用フランジ92aと、引上げロッド94の上端の連結用フランジ94aとの間に、適宜、スペーサを挿入することにより引上げロッド94の長さを調整可能である。
【0062】
圧縮板97は、各段のチャックユニット2Dの押圧ラバー部22と圧縮板ガイド部24との間に配置される。圧縮板97は、中心孔を有する中央平板部97aと、上下の内部空間を連通させるためのエア連通孔97bと、押圧ラバー部22の下面と圧縮板ガイド部24の上面との間に挟持された周縁部97cと、を具備する。
【0063】
さらに、圧縮板97の周縁部97cと筒体部21aとの間には緩衝用の弾性部材98が配置されている。また、上下2枚の圧縮板97の間には、円筒状の圧縮管96と緩衝用の弾性部材99が配置され、これらを引上げロッド94が貫通している。図示の例では、弾性部材98はゴム板であり、弾性部材99はコイルバネであるが、いずれも弾性材であればゴムでもコイルバネでもよい。
【0064】
引上げロッド94は、各段のチャックユニット2Dの圧縮板97の中心孔と圧縮管96と弾性部材99を貫通し、その下端は引上げプレート95と一体化されている。引上げプレート95は、最も下に位置する圧縮板97の下面に緩衝用の弾性部材99を介して当接している。
図8では、油圧シリンダ91は伸張し、引上げロッド94は降下位置にある。
図8では、押圧ラバー部22は鋼管Pを押圧している状態であるが、押圧ラバー部22に対して上下方向の圧縮力を付加していない状態である。
【0065】
図9は、3段目のチャックユニット2Dの一部を示した概略拡大図であり、押圧ラバー部22に対して上下方向の圧縮力を付加した状態を示している。
図8に示す圧縮機構9の油圧シリンダ91を収縮させ、引上げロッド94を引き上げると、
図9に示すように、引上げプレート95が圧縮板97を上方に押上げることにより、押圧ラバー部22と弾性部材98に対して上下方向の圧縮力を付加する。これにより、押圧ラバー部22と弾性部材98は圧縮変形する。押圧ラバー部22のラバーバンド22bの上下縁部22b1は上下に膨出した形状となる。この結果、鋼管Pに対する押圧力が増強されるとともに、接触面積も大きくなるので、摩擦力が強化される。
【0066】
なお、引上げロッド94及び引上げプレート95により引上げを行った場合、各段のチャックユニット2Dの圧縮板97は同時に上昇するので、各段の押圧ラバー部22に同時に圧縮力が付加されることとなる。
【0067】
図10及び
図11に示すように、引上げロッド94の降下状態(非圧縮状態)では、圧縮板97の周縁部97cは、圧縮板ガイド部24の圧縮板載置面24b上に載置されている(
図11(a)参照)。引上げロッド94を引き上げると、圧縮管96が弾性部材99を介して圧縮板97の下面を押し上げる。これにより、圧縮板97の周縁部97cは、圧縮板ガイド部24のガイド突起24aの側面に沿って上昇し、押圧ラバー部22及び弾性部材98を圧縮する(
図11(b)参照)。
【0068】
(5)第5の実施形態
図12は、本発明によるバイブロハンマの把持装置の第5の実施形態の主要部の概略的な側断面図である。
【0069】
第5の実施形態では、ラバーチャック部1Eが、第1〜第4の実施形態とは異なる構成を有する。
図12に示す例では、ラバーチャック部1Eは、チャックトップ3Aと、3段のチャックユニット2Eと、チャックガイド4Aとを有する。なお、チャックトップ3A及びチャックガイド4Aは第1の実施形態と同じであるが、これらに替えて、第2の実施形態のチャックトップ3B及びチャックガイド4Bとしてもよい。
【0070】
第5の実施形態では、チャックユニット2Eの押圧ラバー部22が、ラバーバンド22bのみからなる一重構造である点で、上述した実施形態と異なる。ラバーバンド22bは、硬質のゴム弾性材料が好適である。ラバーバンド22bは、エアが供給されていない状態では、筐体21の筒体部21aの外周面に当接している。本実施形態では、エアの給排出口21dが、周方向に複数配置されていることが好ましい。エアが供給されると、ラバーバンド22bと筒体部21aの外周面との間にエアが導入されるため、エア圧力により、ラバーバンド22bは周方向に伸張するように弾性変形する。この結果、ラバーバンド22bは径方向外側に移動し、ラバーバンド22bが鋼管Pの内面に対し押圧力を付加することとなる。
【0071】
(6)その他の実施形態
図13(a)は、押圧ラバー部の別の実施形態を示す斜視図であり、(b)は(a)のI−I断面図である。
図13(a)の押圧ラバー部22Bは、給排気ノズル22cを具備する軟質のラバーチューブ22aのみからなる一重構造であり、硬質のラバーバンドを備えない形態である。摩擦力が十分得られる場合は、この形態でもよい。
【0072】
図13(c)は、押圧ラバー部のさらに別の実施形態を示す斜視図である。
図13(c)の押圧ラバー部22Cは、角筒形の鋼管に適用される本発明の把持装置に採用される形態である。この場合、チャックユニットの筐体も基本的に角筒形で形成されることになる。さらに、角筒形の鋼管の場合、押圧ラバー部は、鋼管Pの対向する2つの内面に対してそれぞれ設ける形態や、4面に対してそれぞれ設ける形態も可能である。
【0073】
図14(a)はチャックユニットのさらに別の実施形態を示す収縮状態の部分側断面図であり、(b)は(a)の一部の拡大図であり、(c)は(a)に対応する膨張状態の図である。
【0074】
図14(a)に示すチャックユニット2A’の筐体21は、
図2のチャックユニット2Aとは、上端に形成した外向きのラバー支持フランジ21bの形状が異なる。
図14(b)の拡大図に示すように、ラバー支持フランジ21bの下面が、径方向外側のテーパー状の傾斜面21b1と、径方向内側の水平面21b2とから構成されている。外側の傾斜面21b1は、外側に向かって下がる傾斜である。この結果、押圧ラバー部22の収容空間の開口が狭くなるため、押圧ラバー部22、特に硬質ラバーバンド22bが脱落し難くなる。また、内側を水平面21b2としたことにより、
図14(c)に示すように、軟質ラバーチューブ22aが十分に膨張できる空間を確保できる。
【0075】
図14の例では、上側のラバー支持フランジ21bのみに傾斜面21b1を設けているが、下側のラバー支持フランジ21bに設けてもよく、また、双方に設けてもよい。
【0076】
図15(a)は、チャックユニットのさらに別の実施形態を示す部分平面図、(b)は側断面図である。
図15に示すチャックユニット2E’の硬質のラバーバンド22bは、表面に細かい突起を有する。これにより、鋼管Pを押圧する際の摩擦熱の発散を良好とし、かつ、摩擦力を増強することができる。
【0077】
以上に述べた本発明の各実施形態は、多様な変形が可能であり、かつ、これらを組み合わせて適用することも可能である。