特許第6159794号(P6159794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6159794
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】平板状セラミックの焼結方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/64 20060101AFI20170626BHJP
   C22C 27/04 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   C04B35/64
   C22C27/04 101
   C22C27/04 102
【請求項の数】27
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-507196(P2015-507196)
(86)(22)【出願日】2013年4月18日
(65)【公表番号】特表2015-516362(P2015-516362A)
(43)【公表日】2015年6月11日
(86)【国際出願番号】US2013037251
(87)【国際公開番号】WO2013158932
(87)【国際公開日】20131024
【審査請求日】2016年3月11日
(31)【優先権主張番号】13/842,878
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/635,129
(32)【優先日】2012年4月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮川 浩明
(72)【発明者】
【氏名】パン、コアン
(72)【発明者】
【氏名】藤井 宏中
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ビン
(72)【発明者】
【氏名】望月 周
(72)【発明者】
【氏名】中村 年孝
【審査官】 小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/097137(WO,A1)
【文献】 特開2010−132528(JP,A)
【文献】 特開2007−063124(JP,A)
【文献】 特開2004−083341(JP,A)
【文献】 特開平11−004073(JP,A)
【文献】 特開2009−215142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/64
C04B 35/50
C22C 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックを焼結させて焼結セラミック板を製造する方法であって、
第一のメッシュと第二のメッシュの間でセラミック前駆体材料を加熱する段階を含み、
加熱中に、前記セラミック前駆体材料の少なくとも第一の側面である第一の部分が前記第一のメッシュと接触し、および前記セラミック前駆体材料の少なくとも第二の側面である第二の部分が、前記第二のメッシュと接触し、
前記セラミック前駆体材料と、前記第一のメッシュおよび前記第二のメッシュの少なくとも一方との接触点または線の数が500以上/インチ(2.54cm×2.54cm)であって、
それによって焼結セラミック板を製造し、
前記セラミック前駆体材料が、セラミック粒子を含有する未焼結セラミック成形体の形態であり、
前記焼結セラミック板が、半透明の蛍光体である焼結セラミック板を製造する方法。
【請求項2】
前記第一のメッシュおよび前記第二のメッシュのいずれかまたは両方が、熱伝導性材料から構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱伝導性材料が、未焼結セラミック成形体の焼結温度より高い減成温度を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記減成温度が、前記焼結温度より少なくとも200℃高い、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記熱伝導性材料が、ステンレス鋼、鉄合金、銅合金、ニオブ、モリブデン、ニッケル合金、白金、タンタル、チタン、及びタングステンから選択される請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記セラミック前駆体材料が、前記第一のメッシュおよび前記第二のメッシュと摺接する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記セラミック前駆体材料が、前記第一のメッシュおよび前記第二のメッシュと複数の実質的に周期的な接触点で摺接する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記セラミック前駆体材料が、前記第一のメッシュおよび前記第二のメッシュと複数の実質的に均一に分布した接触点で摺接する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記セラミック前駆体材料に、前記焼結セラミック板の反りを減少させ、前記セラミック前駆体材料と前記第一のメッシュおよび前記第二のメッシュの摺動係合を可能にするために十分な圧力を印加する段階をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
十分な圧力の前記印加が、前記第一のメッシュ上に0.1g/cmから20g/cmの金属板を置くことを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記セラミック前駆体材料が、バインダーおよび溶剤の実質的にすべてを蒸発または燃焼させるために十分に高い温度で加熱された前記溶剤、バインダーおよびセラミック粒子のスラリーの生成物である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記セラミック前駆体材料が、セラミック粒子を含有する未焼結グリーンシートの形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記焼結セラミック板の反りが、50μm/mm未満の垂直変位である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第一のメッシュおよび前記第二のメッシュのいずれかまたは両方が、複数の織り合わされたワイヤを含み、前記複数の織り合わされたワイヤが、平面上に複数の実質的に均一に分布した接触点を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記セラミック前駆体材料が、酸化物材料を含有する未焼結セラミック成形体の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記酸化物材料が、金属元素を含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記酸化物材料が、ケイ素を含有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記セラミック前駆体材料が、ガーネット材料を含有する未焼結セラミック成形体の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ガーネット材料が、イットリウムを含有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記セラミック前駆体材料が、窒化物材料を含有する未焼結セラミック成形体の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記セラミック前駆体材料が、酸窒化物材料を含有する未焼結セラミック成形体の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記酸窒化物材料が、金属元素を含有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記酸窒化物材料が、ケイ素を含有する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記第一のメッシュおよび前記第二のメッシュのいずれかまたは両方が、90°の角度で交差するワイヤを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記第一のメッシュおよび前記第二のメッシュのいずれかまたは両方が、10°、15°、30°、45°、60°または80°の角度で交差するワイヤを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記第一のメッシュおよび前記第二のメッシュのいずれかまたは両方が、両方の寸法に関して同じであるメッシュサイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記第一のメッシュおよび前記第二のメッシュのいずれかまたは両方が、両方の寸法に関して同じでないメッシュサイズを有する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
蛍光体などのセラミック材料を2つのメッシュ構造間での前駆体材料の加熱により焼結させることができる方法を、本明細書において開示する。かかる方法は、セラミック材料の反り、たわみおよび割れを減少させる。かかる方法に従って製造されるセラミック材料、およびこれらのセラミック材料を含有するデバイスも本明細書において開示する。
【背景技術】
【0002】
粉末の焼結は、様々なセラミック材料の製造における工程の一部である。一般的に言うと、焼結は、水とバインダーと解膠剤とセラミック粉末とを混合してスラリーを形成すること、その後、そのスラリーを噴霧乾燥などにより乾燥させて乾燥粉末を形成すること、その乾燥粉末を金型などにおいてプレスしてグリーン体(すなわち、未焼結セラミックアイテム)を形成すること、そのグリーン体を低温で加熱してバインダーを燃焼除去すること、その後、高温で焼結させて、セラミック粒子を互いに融合させてセラミック材料にすることを含む。
焼結は、セラミック粉末が圧密されるので、セラミック材料の大きな収縮を伴うことは公知である。そしてまた収縮は、セラミック材料の反り、またはたわみおよび割れ、ならびに表面損傷を生じさせる。
本開示は、セラミック材料の焼結に付随する、かかる困難を減少させるまたは無くすセラミック材料焼結方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、蛍光体などのセラミック材料の焼結方法であって、前駆体材料を2つのメッシュ(またはラティス)構造間で加熱する段階を含む方法に関する。これらの方法は、セラミック材料の反り、またはたわみおよび割れ、を減少させる。一定の実施形態では、焼結工程における加熱段階(単数または複数)を圧力下で行うときにこれらの方法を用いることができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一部の実施形態は、セラミックの焼結方法であって、第一のメッシュと第二のメッシュの間でセラミック前駆体材料を加熱する段階を含み、加熱中に、前記セラミック前駆体材料の少なくとも第一の部分が前記第一のメッシュと接触し、および前記セラミック前駆体材料の少なくとも第二の部分が前記第二のメッシュと接触し、それによって焼結セラミック板を製造する方法を含む。さらなる実施形態において、前記セラミック前駆体材料は、セラミック粒子を含有する未焼結セラミック成形体の形態である。一定の実施形態において、前記セラミック前駆体材料は、前記第一のメッシュおよび前記第二のメッシュと摺接する。
【0005】
一定の実施形態において、前記メッシュは、熱伝導性材料を含有する。さらなる実施形態において、前記熱伝導性材料は、未焼結セラミック成形体の焼結温度より高い減成温度を有する。一部の実施形態において、前記減成温度は、前記焼結温度より少なくとも200℃高い。
【0006】
前記方法の一部の実施形態において、前記セラミック前駆体材料は、溶剤、バインダーおよびセラミック粒子からのスラリーの生成物であって、前記バインダーおよび溶剤の実質的にすべてを蒸発または燃焼させるために十分に高い温度で加熱されたスラリーの生成物である。一定の実施形態において、前記セラミック前駆体材料は、セラミック粒子を含有する未焼結グリーンシートの形態である。
【0007】
一部の実施形態において、前記セラミック前駆体材料は、前記第一のメッシュおよび/または前記第二のメッシュと複数の実質的に周期的な分布接触点または線で摺接する。一定の実施形態において、接触点または線の数は、おおよそ500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500または10000である。
【0008】
本方法の一定の実施形態は、前記前駆体材料に、前記焼結セラミック板の反りを減少させるが、前記セラミック前駆体材料と前記第一のメッシュおよび/または前記第二のメッシュの摺動係合を可能にするために十分な圧力を印加する段階をさらに含む。一部の実施形態において、前記焼結セラミック板の反りは、50μm/mm未満の垂直変位である。一部の実施形態において、十分な圧力の前記印加は、前記第一のメッシュ上に約0.1gm/cm2から約20gm/cm2の金属板を置くことを含む。
【0009】
本方法の一定の実施形態において、前記熱伝導性材料は、ステンレス鋼、鉄、鉄合金、銅、銅合金、ニオブ、ニオブ合金、モリブデン、モリブデン合金、ニッケル、ニッケル合金、白金、白金合金、タンタル、タンタル合金、チタン、チタン合金、タングステン、タングステン合金、レニウム、レニウム合金、またはこれらの任意の組み合わせを含有する。一部の実施形態において、前記熱伝導性材料は、実質的にタングステンを含有する。他の実施形態において、前記熱伝導性材料は、タングステン:モリブデン合金を含有する。一定の実施形態において、前記タングステン:モリブデン合金は、約3%モリブデンである。
【0010】
一部の実施形態において、前記第一のメッシュおよび前記第二のメッシュのいずれかまたは両方は、平織物として構成される。他の実施形態において、前記第一のメッシュおよび前記第二のメッシュのいずれかまたは両方は、綾織物として構成される。
【0011】
一部の実施形態において、前記セラミック前駆体材料は、酸化物材料を含有する未焼結セラミック成形体の形態である。一定の実施形態において、前記酸化物材料は、金属元素、例えば、限定ではないが、ケイ素などを含有する。他の実施形態において、前記セラミック前駆体材料は、ガーネット材料、例えば、限定ではないが、イットリウムなどを含有する未焼結セラミック成形体の形態である。他の実施形態において、前記セラミック前駆体材料は、窒化物材料を含有する未焼結セラミック成形体の形態である。他の実施形態において、前記セラミック前駆体材料は、酸窒化物材料を含有する未焼結セラミック成形体の形態である。一定の実施形態において、前記酸窒化物材料は、例えば、限定ではないが、ケイ素などの金属元素を含有する。
【0012】
一部の実施形態において、前記第一のメッシュおよび前記第二のメッシュのいずれかまたは両方は、約10°、約15°、約30°、約45°、約60°または約80°の角度で交差するワイヤを含む。一部の実施形態において、前記第一のメッシュおよび前記第二のメッシュのいずれかまたは両方は、90°の角度で交差するワイヤを含む。
【0013】
一部の実施形態において、前記第一のメッシュおよび前記第二のメッシュのいずれかまたは両方は、約5ワイヤ毎インチから約500ワイヤ毎インチであるメッシュサイズを有する。一定の実施形態において、前記メッシュサイズは、約40ワイヤ毎インチ、約50ワイヤ毎インチ、約60ワイヤ毎インチ、約70ワイヤ毎インチ、または約80ワイヤ毎インチである。一定の実施形態において、前記第一のメッシュおよび前記第二のメッシュのいずれかまたは両方は、約30ワイヤ毎インチから約100ワイヤ毎インチのメッシュサイズ、および約400μm未満のワイヤ径を有する。
【0014】
一部の実施形態において、前記第一のメッシュおよび前記第二のメッシュのいずれかまたは両方は、両方の寸法に関して同じであるメッシュサイズを有する。一定の実施形態において、前記メッシュサイズは、約40×40ワイヤ毎インチ、約50×50ワイヤ毎インチ、約60×60ワイヤ毎インチ、約70×70ワイヤ毎インチ、または約80×80ワイヤ毎インチである。
【0015】
一部の実施形態において、前記第一のメッシュおよび前記第二のメッシュのいずれかまたは両方は、両方の寸法に関して同じでないメッシュサイズを有する。
【0016】
さらなる実施形態は、本明細書に記載する方法のいずれかに従って製造される焼結セラミック板に関する。さらに他の実施形態は、本明細書にて開示の方法のいずれかによって製造される焼結セラミック板を含む照明デバイスに関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A-C】図1A〜Cは、交差するワイヤを含むメッシュの実施形態における接触点を図示するものである。図1Aおよび1Bは、織り合わされたタイプのメッシュの実施形態を具体的に描写するものである。
【0018】
図1D図1Dは、綾織物についての接触線を描写するものである。
【0019】
図2A-2B】図2AおよびBは、交差するワイヤが互いに上に重なっているメッシュの実施形態を図示するものである。
【0020】
図3図3は、セラミック材料を焼結させるための板の構成の実施形態を図示するものである。
【0021】
図4図4は、セラミック蛍光体を含む発光デバイスの実施形態を図示するものである。
【0022】
図5図5は、本明細書における一定の実施形態に関して記載の反りについての測定法を図示するものである。
【0023】
図6図6は、前記メッシュに関して測定されたたわみと測定された接触点または線数との相関関係を図示するものである。
【0024】
図7図7は、前記メッシュに関して測定された表面粗度(Ra)と接触点または線数との相関関係を図示するものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書に記載する方法では、セラミック前駆体材料を2つのメッシュ構造、例えば第一のメッシュと第二のメッシュ、の間で加熱する。前記前駆体材料は、多くの場合、平板の形態である。一般に、前記前駆体材料の第一の部分、または板の場合には第一の側面が、前記第一のメッシュと接触し、および第二の部分、または板の第二の側面が、前記第二のメッシュと接触する。前記第一のメッシュおよび前記第二のメッシュは、同じタイプのメッシュであってもよいし、または異なるタイプのメッシュであってもよく、および同じ材料を含有してもよいし、または異なる材料を含有してもよい。
【0026】
第一のメッシュまたは第二のメッシュ(本明細書では総称して「メッシュ」と呼ぶ)は、交差するストリップまたはワイヤ(以後、総称して「ワイヤ」と呼ぶ)を含有する任意の構造を指す。本明細書において用いる場合の「交差する」とは、ワイヤが接触している接触点50を作ることを単に意味する。例えば、図1A〜1Cを参照されたし。交差するワイヤは、メッシュ開口部60を作る。図1C。メッシュカウントまたはメッシュのサイズ70は、インチ、cmまたは他の測定単位あたりの任意の一方向でのワイヤ(一般に、ある方向では「縦糸」と呼ばれ、他の方向では「よこ糸(weft)」または「横糸(shute)」と呼ばれる)の数を指す。図1Cを参照されたし。様々な実施形態のいずれにおいても前記メッシュの具体的特徴は、状況;例えば、メッシュサイズ、メッシュ開口部のサイズおよび形状などに依存して様々であり得る。
【0027】
一部の実施形態において、前記メッシュは、そのメッシュの交差するワイヤが織り合わされるように構成される。「織り合わされた」とは、各ワイヤが、その交差するワイヤの1本以上の上および下を通ることを意味する。図1Aは、ワイヤ10、20および30がワイヤ15、25、35および45と織り合わされている、1つのタイプの織り合わされたメッシュ構成の例を描写するものである。ワイヤ30がワイヤ15、25、35および45と織り合わされている、図1Bも参照されたし。かかる実施形態では、あるワイヤが別のワイヤの上に配置されると接触点が形成される。織り合わされた構造でワイヤ30がワイヤ15、25、35および45と交差する点ごとに接触点50が形成される、図1Bを参照されたし。一部の実施形態において、前記メッシュは、そのメッシュの交差するワイヤが互いに上に重なるように構成される。ワイヤ205、215、225および235がワイヤ210、220および230の上に重なっている、図2Aを参照されたし。ワイヤ210がワイヤ205、215、225および235の上に重なっている、図2Bも参照されたし。
【0028】
一部の実施形態では、前記メッシュを、織り合わされ、上に重ねられているワイヤの組み合わせとして構成することができる;すなわち、前記メッシュの交差するワイヤは、交互に上に重なり、かつ互いに織り合わされている。
【0029】
メッシュの交差するワイヤが、1本ではなく、同時に2本(以上の)交差するワイヤの上にありかつ下にある綾織物(図1D)などの織物については、接触点ではなく接触線が形成され得る。かかる接触線85は、2本以上の交差するワイヤの上に重なっているワイヤ部分によって形成され得る。
【0030】
ワイヤは、ほぼあらゆる角度で互いに交差し得る。例えば、メッシュは、互いに実質的に垂直である交差するワイヤを含むことがある;すなわち、前記交差するワイヤは、互いに対して直角すなわち90°である。図1Aは、ワイヤ10、20および30とワイヤ15、25、35および45が実質的に直角である、かかるメッシュ構成の例を描写するものである。図1Cおよび図2Aも参照されたし。メッシュは、互いに対して別の角度、例えば、10°、15°、30°、45°、60°、80°、またはこれらの値のいずれかを境界とするもしくはこれらの値のいずれかの間の任意の角度をなして、交差するワイヤを含むこともある。
【0031】
一部の実施形態において、前記メッシュ開口部は、正方形である。他の実施形態において、前記メッシュ開口部は、長方形である。
【0032】
一部の実施形態では、前記接触点または線を前記メッシュ全体にわたって周期的に分布させることができる。一部の実施形態では、前記接触点または線を前記メッシュ全体にわたって実質的に規則的にまたは均一に分布させるかまたは規則的または均一な間隔に配置させることができる。接触点または線は、メッシュ全体にわたって互いに実質的に同じであり得る。
【0033】
メッシュ内のワイヤ間の間隔は、様々な実施形態において状況に依存して変わることがあり、その結果、様々なメッシュサイズとなる。一部の実施形態において、メッシュは、約5ワイヤ/インチから約500ワイヤ/インチ、約7ワイヤ/インチから約200ワイヤ/インチ、約10ワイヤ/インチから約200ワイヤ/インチ、約10ワイヤ/インチから約100ワイヤ/インチ、約15ワイヤ/インチから約200ワイヤ/インチ、約15ワイヤ/インチから約100ワイヤ/インチ、約20ワイヤ/インチから約200ワイヤ/インチ、約20ワイヤ/インチから約100ワイヤ/インチ、約10ワイヤ/インチ、約30ワイヤ/インチ、約40ワイヤ/インチ、約50ワイヤ/インチ、約60ワイヤ/インチのメッシュサイズ、またはこれらの値のいずれかを境界とする範囲のもしくはこれらの値のいずれかの間の範囲の任意のメッシュサイズを有することがある。前記メッシュサイズは、両方の寸法に関して同じ、例えば、10×10、20×20、30×30、40×40、50×50、60×60、70×70、80×80、90×90、100×100など(例えば、正方形のメッシュ)であることもあり、または異なる、例えば10×20、20×30など(例えば、長方形のメッシュ)である、こともある。
【0034】
前記メッシュは、任意の形状、例えば、正方形、長方形、円形、長円形などであってよい。
【0035】
メッシュ内のワイヤ断面は、略円形であってもよく(例えば、図1Aおよび1B参照)、または別の形状、例えば正方形、長方形(例えば、図2B参照)、長円形、半円形などを有してもよい。前記メッシュ内のワイヤのサイズも、様々な実施形態において様々であり得る。ワイヤは、任意の適する範囲の直径または厚みを有してよい。例えば、一部のワイヤは、約10μmから約1mm、約20μmから約500μm、約50μmから約400μm、約50μm、約70μm、約69μm、約100μm、約102μm、約120μm、約127μm、約130μm、約380μm、約381μmの直径、またはこれらの値のいずれかを境界とする範囲のもしくはこれらの値のいずれかの間の範囲の任意の直径を有することがある。メッシュの前記交差するワイヤは、同じサイズのものである場合もあり、または異なるサイズのものである場合もある。
【0036】
メッシュは、金属、例えばステンレス鋼、鉄、銅、ニオブ、モリブデン、ニッケル、白金、タンタル、チタン、タングステンもしくはレニウム、または上述の金属のいずれかを含有する合金、またはそれらの任意の組み合わせを含む、熱を伝導することが可能な任意の金属から成ってよい。一部の実施形態において、前記メッシュは、実質的にタングステンを含有することができる。一部の実施形態において、前記メッシュは、モリブデンを含有することができる。一部の実施形態において、前記メッシュは、タングステンおよびモリブデンを含有することができる。一部の実施形態において、前記メッシュは、0.1〜99.9%モリブデン:99.9〜0.01%タングステンを含有することができる。一部の実施形態において、前記メッシュは、40原子%〜60原子%モリブデン:60原子%〜40原子%タングステンを含有することができる。1つの実施形態において、前記メッシュは、50原子%モリブデン:50原子%タングステンを含有することができる。一部の実施形態において、前記メッシュは、タングステンおよびモリブデンの少なくとも一方を含有することができ、およびさらにレニウムを含有することができる。通常、メッシュの前記材料は、焼結すべき前駆体材料の焼結温度より高い減成または融解温度を有することになる。一部の実施形態において、前記金属は、所望の焼結温度より少なくとも200℃高い融解温度を有する。
【0037】
一部の実施形態において、前記メッシュは、交差するワイヤが直角に織り合わされる、「平織物」として構成される。一部の実施形態において、前記メッシュは、より太いワイヤが正方形メッシュ開口部を生じさせるために使用される、および各ワイヤが、交互に、2本のワイヤの上にあり、2本のワイヤの下にある、「綾織物」として構成される。(例えば、図1Dに描写されているもの)。ワイヤの重なりを「互い違いに配列すること」により、斜め綾模様が綾織メッシュにおいて生成される。一部の実施形態において、前記メッシュは、「平織濾布」織物または「畳織物」として構成される。この構成では、交差するワイヤが「平織物」におけるように直角に織り合わされるが、より太い縦ワイヤとより細い横ワイヤが使用され、それにより前記横ワイヤが捲縮されて、より小さい、三角形のメッシュ開口部を生じさせる結果となる。一部の実施形態において、前記メッシュは、「綾織濾布」織物として構成される。この構成では、「綾織物」の場合のように、各ワイヤは、交互に、2本のワイヤの上にあり、2本のワイヤの下にあるが、縦糸および横糸に異なるワイヤサイズが使用される。これにより、通常の綾織物の2倍のメッシュカウントが可能になる。一部の実施形態において、前記メッシュは、より細いワイヤが特殊ワイヤ配置でより太いワイヤの上に重なってより高いメッシュカウントを生じさせる、「ミクロン」織物として構成される。ミクロン織メッシュは極めて耐久性があり、かかる構成を用いると、1平方インチあたり1,000,000ほどもの多さのメッシュ開口部を有することが可能である。一部の実施形態において、前記メッシュは、極細ワイヤが使用され、該ワイヤが例えばステンレス鋼を含有する、「格子(または格子仕様)」織物として構成される。かかるメッシュ構成は、結果として、非常に高いメッシュ開口面積パーセントを生じさせることができる。
【0038】
一部の実施形態では、一方または両方のメッシュを焼結前に前駆体材料に接合させない。一部の実施形態では、メッシュを前記前駆体材料と摺接させることがある。一部の実施形態では、セラミック成形体などの前記前駆体材料を前記メッシュと複数の接触点または線で摺接させることがある。セラミック成形体は、セラミック粒子を含有することがある。「摺接された」は、固体前駆体材料が、該前駆体材料とメッシュとの接触面の方向に収縮または移動することができる状態を含む。これは、固体セラミック成形体における割れまたは反りの形成の減少を助長することができる。
【0039】
2つのメッシュ構造間で前駆体材料を加熱するために、任意の適する加熱レジメを用いてよい。例えば、前記前駆体材料を約1000℃から約3000℃、約1500℃から約2000℃、または約1800℃の最高温度に加熱することがある。求められる焼結効果を得るために望まれるだけ長く、例えば、約1時間から約50時間、約3時間から約20時間、約5時間から約20時間、または例えば約5時間、加熱を行ってよい。一部の実施形態では、最高温度、例えば1000〜3000℃、への加熱を、約1時間から約10時間の期間にわたって行うことがあり、そしてその後、その材料をその最大温度で約1時間から約20時間保持することがある。
【0040】
一部の実施形態では、金属などの伝導性材料から成り得る伝導板によって前記メッシュ構造を加熱することがある。かかる伝導金属としては、鉄合金、銅合金、ニオブ、モリブデン、ニッケル合金、白金、タンタル、チタン、タングステンなどを挙げることができる。図3に描写されているものなどの構成を用いることにより、加熱を遂行してもよい。かかる構成では、前駆体材料310は、第一のメッシュ320と第二のメッシュ330の間にサンドイッチされており、第一のメッシュ320および第二のメッシュ330と熱接触する。そしてまた、メッシュ320は、熱伝導板340と熱接触し、メッシュ330は、熱伝導板350と熱接触する。かくして、板340および板350は、メッシュ320および330を通して前駆体材料を加熱することができる。メッシュ320およびメッシュ330は、同じ材料を含有してもよく、または異なる材料を含有してもよい。
【0041】
このタイプの構成では、伝導板340および伝導板350などの伝導板により前駆体材料310などの前駆体材料を加圧させることもでき、これは、加熱に伴うたわみおよび割れの減少を助長する。一部の実施形態では、反りを減少させるために十分な圧力を前記前駆体材料に印加することができる。一部の実施形態において、印加される圧力は、前記メッシュと前記前駆体材料間の摺動係合をなお可能にするほどに十分低い。一部の実施形態では、前記第一および第二のメッシュを通して前記前駆体材料を底板に押し付ける天板の重量によって、圧力を印加する。一部の実施形態において、前記天板、例えば(参考までに言うと、前記第一のメッシュ上に置かれていると記述することができる)板350は、約0.01g/cmから約100g/cm、または約0.1g/cmから約20g/cmの重量を有する。一部の実施形態において、板は、約2.5g/cmから約7.5g/cmの重量を有する。一部の実施形態において、前記板は、2インチ×2インチ正方形の熱伝導性材料、例えばタングステンであってよく、および重量約15g、約23gまたは約25gであってよい。
【0042】
一部の実施形態において、反りは、平板状セラミック片の厚みの百分率としての反りの量として定量して、約20%未満、約10%未満、または約5%未満である。一部の実施形態において、反りは、約100μm/mm未満、約50μm/mm未満、または約10μm/mm未満である。
【0043】
前駆体組成物は、少なくとも2つの異なる原子元を含有する任意の組成物;例えば、Al、ZrO、Yなど、を含むことがある。
【0044】
前駆体組成物は、少なくとも2つの異なる原子元を含有する化合物であって、前記2つの異なる元素の少なくとも一方が酸素を含むものである化合物を含む、二元素酸化物を含有することがある。
【0045】
前駆体組成物は、少なくとも2つの異なる原子元を含有する化合物であって、前記2つの異なる元素が酸素を含まないものである化合物を含む、二元素非酸化物を含有することがある。
【0046】
一部の実施形態において、前駆体材料は、単一または複数の酸化物材料を含有することがある。
【0047】
一部の実施形態において、前駆体組成物は、前駆体ホスト材料であることができる。一部の実施形態において、前記ホスト材料は、単一の無機化学化合物を含有する粉末;例えば、イットリアおよびアルミナと比較してYAl12(YAG)粉末であってもよい。前記ホスト材料は、約0.1μmから約20μmの平均粒度径を有することができる。
【0048】
一部の実施形態において、前駆体組成物は、蛍光体粉末を含有することができる。蛍光体粉末は、酸化物、例えば、金属元素またはケイ素(ケイ酸塩、リン酸塩、アルミン酸塩、ホウ酸塩、タングステン酸塩、バナジン酸塩(vanatate)、チタン酸塩、モリブデン酸塩を含む)の酸化物、またはこれらの酸化物の組み合わせを含むことができるが、それらに限定されない。蛍光体粉末は、硫化物、酸硫化物、酸フッ化物、窒化物、炭化物、ニトリドホウ酸塩(nitridobarates)、塩化物、蛍光ガラスまたはこれらの組み合わせも含むことができる。
【0049】
一部の実施形態において、前駆体組成物は、1つ以上の酸窒化物、例えば、金属元素またはケイ素を含有する酸窒化物を含有することがある。
【0050】
前駆体組成物は、ホスト−ドーパント材料、例えば、主として単一固体状態化合物である材料を含むことがあり、または1つ以上の非ホスト原子、またはドーパント原子、によって置換されている、そのホスト構造中に少量の1つ以上の原子を有するホスト材料を含むことがある。一部の実施形態において、前駆体組成物は、ガーネットホスト材料または窒化物ホスト材料であることができる。一部の実施形態において、前記前駆体組成物は、ドーパント材料をさらに含有することができる。
【0051】
一部の実施形態において、前記前駆体組成物は、ガーネットホスト材料を含むことができる。本明細書において用いる場合、「ガーネット」は、通常の当業者によりガーネットとして識別されるであろう任意の材料、および本明細書においてガーネットとして識別される任意の材料を含む。一部の実施形態において、用語「ガーネット」は、混合金属酸化物などの無機化合物の三元構造を指す。
【0052】
一部の実施形態において、前記ガーネットは、酸素と、第II族、第III族、第IV族、第V族、第VI族、第VII族、第VIII族またはランタニド金属を含む少なくとも2つの異なる元素とから成ることがある。例えば、前記ガーネットは、酸素と次の元素のうちの2つ以上の元素の組み合わせとから成ることがある:Ca、Si、Fe、Eu、Ce、Gd、Tb、Lu、Nd、Y、La、In、AlおよびGa。
【0053】
一部の実施形態では、合成ガーネットを、式A(EOを用いて記載することがあり、この式中のA、DおよびEは、第II族、第III族、第IV族、第V族、第VI族、第VII族、第VIII族元素およびランタニド金属を含む元素である。A、DおよびEは、単一の元素を表すこともあり、または大部分のA、DもしくはEを表す主要元素と、同じく第II族、第III族、第IV族、第V族、第VI族、第VII族、第VIII族元素およびランタニド金属を含む少量の1つ以上のドーパント元素とを表すこともある。したがって、上記式を(主要A+ドーパント)(主要D+ドーパント)([主要E+ドーパント]Oに展開することができる。
【0054】
ガーネット粒子において、Aの主要元素またはドーパント元素原子(例えば、Y3+)は、十二面体配位サイトにあることもあり、または不規則六面体で8個の酸素原子によって配位されていることもある。さらに、Dの主要元素またはドーパント元素原子(例えば、Al3+、Fe3+など)は、八面体サイトにあることがある。最後に、Eの主要元素またはドーパント元素原子(例えば、Al3+、Fe3+など)は、四面体サイトにあることがある。
【0055】
一部の実施形態において、ガーネットは、3軸が実質的に等しい長さであり、互いに垂直である、立方晶系で結晶化することができる。これらの実施形態において、この物理的特性は、結果として生ずる材料の透明性または他の化学的もしくは物理的特性の一因となり得る。一部の実施形態において、前記ガーネットは、式YFe(FeOまたは(YFe12)によって表すことができる、イットリウム鉄ガーネット(YIG)であってもよい。YIGでは、5個の鉄(III)イオンが2つの八面体サイトおよび3つの四面体サイトを占有することがあり、不規則六面体の場合はイットリウム(III)イオンに8個の酸素イオンが配位する。YIGにおいて、前記2つの配位サイトの鉄イオンは、異なる回転を呈示することがあり、その結果、磁性挙動が生じることがある。例えば、希土類元素で特定のサイトを置換することにより、興味深い磁性を得ることができる。
【0056】
一部の実施形態は、所望の光学特性、例えば、透明性または半透明性を有し得る金属酸化物ガーネット、例えば、YAGまたはGdGa12(GGG)を含む。これらの実施形態では、エレクトロルミネセンスデバイスのための蛍光体粉末などの用途のために、その十二面体サイトに他の希土類カチオンを部分的にドープすることができ、またはその十二面体サイトを他の希土類カチオンで完全に置換することができる。一部の実施形態では、特定のサイトをセリウムなどの希土類元素で置換する。一部の実施形態において、希土類元素または他のドーパントでのドーピングは、光学特性などの特性の調整に有用であり得る。例えば、一部のドープされた化合物は、電磁エネルギーの印加により発光することができる。蛍光体用途では、一部の実施形態は、式(A1−xRE12によって表され、この式中のAおよびDは、二価、三価、四価または五価元素であり;Aは、例えば、Y、Gd、La、Lu、Yb、Tb、Sc、Ca、Mg、Sr、Ba、Mnおよびこれらの組み合わせを含んでよく;Dは、例えば、Al、Ga、In、Mo、Fe、Si、P、Vおよびこれらの組み合わせを含んでよく;ならびにREは、例えばCe、Eu、Tb、Nd、Pr、Dy、Ho、Sm、Er、Cr、Niを含む、希土類金属または遷移元素、およびこれらの組み合わせであってよい。この化合物は、有用な光学特性、例えば、透明性、半透明性、または所望の色の放射を有する、立方晶系材料であり得る。
【0057】
一部の実施形態において、ガーネットは、イットリウム・アルミニウム・ガーネット、YAl12(YAG)を含むことがある。一部の実施形態において、YAGにはネオジム(Nd3+)がドープされていることがある。本明細書において開示するように調製されたYAGは、レーザーにおけるレーザー媒質として有用であり得る。レーザー用途のための実施形態としては、ネオジムおよびクロムがドープされたYAG(Nd:Cr:YAGまたはNd/Cr:YAG);エルビウムドープYAG(Er:YAG)、イッテルビウムドープYAG(Yb:YAG);ネオジム−セリウム二重ドープYAG(Nd:Ce:YAG、またはNd,Ce:YAG);ホルミウム−クロム−ツリウム三重ドープYAG(Ho:Cr:Tm:YAG、またはHo,Cr,Tm:YAG);ツリウムドープYAG(Tm:YAG);およびクロム(IV)ドープYAG(Cr:YAG)を挙げることができる。一部の実施形態において、YAGにはセリウム(Ce3+)がドープされていることがある。セリウムドープYAGは、発光デバイス;例えば、発光ダイオードおよび陰極線管、において蛍光体として有用であり得る。他の実施形態としては、ジスプロシウムドープYAG(Dy:YAG);およびテルビウムドープYAG(Tb:YAG)が挙げられ、これらもまた発光デバイスにおける蛍光体として有用である。一部の実施形態は、ガドリニウムドープYAG(Gd:YAG)、例えば、イットリウムおよびガドリニウムの原子の総数に基づき約0.1原子%から40原子%、約1原子%から約35原子%、約5原子%から約25原子%、約8原子%から約15原子%、または約10原子%ガドリニウムを有するガドリニウムドープYAGを含む。
【0058】
一部の実施形態において、前記焼結セラミック板は、ルテチウムアルミニウム酸化物、例えば、場合によりドープされているルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LuAG)であってもよい。一部の実施形態において、前記LuAgは、アンドープである。
【0059】
一部の実施形態において、前記ガーネットホスト材料は、イットリウムの酸化物と、アルミニウムの酸化物と、ルテチウムの酸化物と、ガドリニウムの酸化物とを含有する前駆体材料であることができる。
【0060】
一部の実施形態において、前記窒化物ホスト材料は、一般式M−−A−−B−−N:Zによって表される四元ホスト材料構造を有する材料であることができる。かかる構造は、蛍光体の発光効率を増加させることがある。一部の実施形態において、Mは二価元素であり、Aは三価元素であり、Bは四価元素であり、Nは窒素であり、およびZは、ホスト材料におけるドーパント/活性体である。
【0061】
Mは、Mg、Be、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Hg、またはこれらの組み合わせであってもよい。Aは、B(ホウ素)、Al、Ga、In、Ti、Y、Sc、P、As、Sb、Bi、またはこれらの組み合わせであってもよい。Bは、C、Si、Ge、Sn、Ni、Hf、Mo、W、Cr、Pb、Zr、またはこれらの組み合わせであってもよい。Zは、1つ以上の希土類元素、1つ以上の遷移金属元素またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0062】
窒化物材料において、元素Mとドーパント元素Zのmol比Z/(M+Z)は、約0.0001から約0.5であってよい。元素Mと活性体元素Zのmol比Z/(M+Z)がその範囲にあるとき、その活性体の過剰な含有量に起因する濃度消光による、発光効率の低下を回避することが可能であり得る。その一方で、前記モル比がその範囲にあるとき、前記活性体の過度に少ない含有量に起因する過度に少ない発光寄与原子量による、発光効率の低下を回避することも可能であり得る。付加される活性化元素Zのタイプに依存して、Z/(M+Z)の至適百分率は変わり得る。一部の実施形態において、0.0005から0.1の範囲のZ/(M+Z)mol比は、発光改善をもたらすことができる。
【0063】
MがMg、Ca、Sr、Ba、Znまたはこれらの組み合わせである組成物については、原料を容易に得ることができ、環境負荷が低い。それ故、かかる組成物は、好ましいものであり得る。
【0064】
材料中のMがCaであり、AがAlであり、BがSiであり、およびZがEuである組成物については、原料を容易に得ることができ、環境負荷が低い。加えて、かかる組成物を有する蛍光体の発光波長は、赤色領域である。赤色系蛍光体は、青色発光ダイオード(LED)および黄色蛍光体と組み合わせたとき調整された色温度で高い演色評価数(CRI)を有する暖かい白色光を生じさせることが可能であり得る。それ故、かかる組成物は、好ましいものであり得る。
【0065】
窒化物ホスト前駆体の一部の例としては、Ca(例えば、少なくとも2Nを有するCa)、AlN(例えば、少なくとも3Nを有するAlN)、Si(例えば、少なくとも3Nを有するSi)が挙げられる。用語2Nは、少なくとも99%純粋な純度を指す。用語3Nは、少なくとも99.9%純粋な純度を指す。
【0066】
一部の実施形態において、前駆体組成物は、ドーパント前駆体をさらに含むことができる。一部の実施形態において、前記ドーパントは、希土類化合物または遷移金属であることができる。一部の実施形態において、前記ドーパントは、Ce3+、Gd3+、およびまたはEu2+を含有することができる。適する前駆体ドーパント材料としては、CeO、Ce(NO、[Ce(NO]・[6HO]、Ce、Gd、および/またはEuNが挙げられるが、これらに限定されない。他の適する前駆体ドーパント材料としては、所望のドーパント材料のそれぞれの金属酸化物;例えば、Tm、Prおよび/またはCrの酸化物が挙げられる。
【0067】
一部の実施形態において、前駆体材料は、セラミック成形体の形態であってよい。セラミック成形体は、ある程度緻密化または予備成形されている前駆体材料を含む。セラミック成形体は、焼結の助けになる材料、例えば、溶剤またはバインダーを含むことがある。焼結前または焼結中、前記材料は、一切の溶剤、バインダーおよび/または一切の他の有機材料を除去するために十分高い温度に加熱され得る。
【0068】
一部の実施形態において、セラミック成形体は、セラミック粒子を含有するグリーンシートの形態であることがある。
【0069】
一部の実施形態において、ガーネット材料、およびスラリーまたはグリーンシートの製造に有用な他の材料、例えばフラックス添加剤、可塑剤、溶剤は、2011年1月28日出願の米国特許第8,283,843号明細書、および2009年2月19日出願の米国特許第8,169,136号明細書に記載されているような材料であることができ、前記特許文献は、スラリーまたはグリーンシートを製造するための材料に関して開示しているすべてについて、参照により本明細書に援用されている。
【0070】
図4は、蛍光体セラミックをLEDに組み込むことができる1つの方法の例を示す。蛍光体セラミック101をLED102の上に配置することができ、その結果、LEDからの光は、前記蛍光体セラミックを通過した後この系を離れる。LEDから放射された光の一部は、前記蛍光体セラミックによって吸収され、その後、ルミネセンス放射によってより低い波長の光に変換され得る。かくして、LEDによって放射される光の色を、蛍光体セラミック101などの蛍光体セラミックによって変更することができる。
【実施例】
【0071】
(実施例1)
本実施例では、おおよそ4.5m/gのブルナウアー・エメット・テラー(Brunauer−Emmett−Teller:BET)表面積を有する57.06gのY粒子、および5.6m/gのBET表面積を有する42.94gのAl粒子を、250mL ZrOボール・ミル・ジャー(Torrey Hills Technologies,LLC、カリフォルニア州サンディエゴ)に添加した。YAGを形成するために、全粉末重量は、100.00gであり、YのAlに対する混合比は、mol%で3:5の化学量論比であった。分散剤(2.00pph、2.00g)、および焼結助剤としてのオルトケイ酸テトラエチル(0.50pph、0.50g)もそのミルジャーに添加した。トルエン(33.33g)をミルジャーに添加し、その後、ミルジャーの内容物を、その混合物が液体のように見えるまで手で撹拌した。その後、3mm径の130gのZrO粉砕媒体をそのミルジャーに添加し、ミルジャーの中の混合物を、第一混合段階として約24時間、ベンチトップ遊星ボールミル(MTI Corporation、カリフォルニア州リッチモンド)によって粉砕した。
【0072】
並行して、21.00gのポリ(ビニルブチラール−co−ビニルアルコール−co−ビニルアセテート)(PVB)、10.50gのフタル酸n−ブチルベンジル(BBP)および10.50gのポリエチレングリコール(PEG)を90gのトルエンに、すべを約24時間撹拌しながら、溶解することによって、高分子バインダーと可塑剤のバインダー溶液を調製した。
【0073】
上で調製したバインダー溶液(47.14g)をミルジャーの中のセラミック粒子の粉砕溶液に、最終スラリー中に7.50pph PVB、3.75pph BBPおよび3.75pph PEGを含有するように添加した。その後、この混合物をベンチトップ遊星ボールミルによってさらに約24時間さらにボールミル粉砕した。全ボールミル粉砕工程が完了したら、得られたスラリーを、0.05mmの孔径を有するシリンジ援用金属スクリーンフィルタに通して濾過して、凝集したセラミック粒子を除去した。得られたスラリーの粘度は、400cPから800cPの範囲であった。その後、そのスラリーをシリコーン被覆ポリエチレンテレフタレート基板フィルム(Paul N.Gardner Company,Inc.、フロリダ州ポンパノビーチ)上に、調整可能なフィルムアプリケータ(Gardner Company)を用いて1.1m/分のキャスト速度でキャストした。所望のグリーンシート厚に依存して、そのフィルムアプリケータのブレードギャップを調整した。そのキャストテープを周囲雰囲気で乾燥させて、最終的におおよそ80〜100μm厚セラミック・グリーンシートを得た。
【0074】
乾燥させたグリーンシートをカミソリの刃によって適切なサイズに切断し、切断されたグリーンシートをPET基板から取り外し、複数のシートを層状に積み重ねて、80ミクロンから3.0mm厚の範囲の所望の厚みのグリーンシート積層体を得た。TBH−100H加熱プレス(Sansho Industry、日本国)を使用して室温で約5分間24MPaで、その後、約85℃で約5分間16MPaでこの組立品を積層した。その後、25W COレーザーを備えているVLS 2.30レーザー彫刻・切断システム(Universal Laser Systems)を使用して、それらの積層成形体を切断して、12mm×12mm、18.5mm×18.5mm、30mm×30mmもしくは50mm×50mm正方形形状または80mm径円板のグリーン積層成形体を得た。切断積層成形体の各サイズは、それぞれ、10mm×10mm、15mm×15mm、25mm×25mmもしくは40mm×40mm正方形形状または65mm径円板形平板状セラミック片であった。
【0075】
次の段階として、積層成形体から高分子バインダーを除去した。それらの積層成形体を、脱バインダー工程中の積層成形体のたわみ、反りおよび曲げを回避するために、40%公称間隙率を有するAl多孔質カバー板間にサンドイッチした。複数のグリーン積層成形体を多孔質Alカバー板(ESL ElectroScience、ペンシルバニア州キング・オブ・プロシア)間に交互に積み重ねた。脱バインダーおよび素焼き(Bisk−firing)のためにST−1700C−445箱型炉(SentroTech Corporation、オハイオ州ブレア)を使用して空気中で約2時間、それらの積層成形体を約1200℃に加熱した。加熱および冷却速度は、それぞれ、<0.7℃/分および<4.0℃/分であった。加熱要素がタングステン製である高温炉であって、機械式ポンプが取り付けられている炉を使用して、それらの脱バインダー/素焼きブランク試料を1800℃で約5時間、10−3Torr真空下で十分に焼結させた。炉室内で、ブランク試料をタングステンメッシュおよびタングステン板で交互にサンドイッチした。用いたメッシュタイプを下の表1に要約する。比較例4も参照されたし。
【0076】
この最終焼結工程の加熱速度は、約16.7℃/分(〜400℃)、8.0℃/分(400〜1000℃)、5.0℃/分(1000〜1400℃)、3.3℃/分(1400〜1500℃)、および1.5℃/分(1500〜1800℃)であり、これに対して冷却速度は、焼結中の割れを最小にするために8.0℃/分であった。
【0077】
タングステンメッシュは、焼結中に「点接触」および/または「2次元(2−D)線接触」(「面接触」でない)を支持することができる。この点または2−D線接触により、高温での焼結中の薄いグリーン成形体の収縮が可能になる。結果として、タングステンメッシュによりYAG平板状セラミック片は1800℃で割れることなく焼結された。
【0078】
要約すると、グリーン成形体は、(a)キシレン−エタノール混合溶剤、トルエン、もしくは水による、スラリータイプ;または(b)YAGセラミックについてのドーピング元素;または(c)1700〜1800℃の間の異なる焼結温度;または(e)光散乱のために(完全透明YAG板ではなく)最終焼結YAG板中の気泡の存在に関係なく、割れのない略平板状の薄いセラミック片になるようにうまく焼結された。これらの方法は、真空焼結にばかりでなく、H、N、Arおよび混合ガス焼結にも適用可能であるはずである。
【0079】
表1は、本実施例1および残りの実施例の平板状セラミックの焼結に使用した様々なタイプのメッシュの要約を示す(「M」=メッシュ;「CE」=比較例;「W」=タングステン;「Mo」=モリブデン)。メッシュ1〜7は、正方形の形状のメッシュであった;すなわち、([縦ワイヤ毎インチ]×[横ワイヤ毎インチ]での)メッシュサイズは、両方の寸法に関して同じであった。
【表1】
(実施例2)
【0080】
次のことを除き、実施例1において述べたとおりに水性スラリーを調製した:133.55gのY粒子と、2.9m/gのBET表面積を有する23.82gのGd粒子と、111.68gのAl粒子と、最終グリーンシート用の高分子バインダーの主成分としての45.00gのアクリル系ポリマー水溶液(固形分:35重量%)と、水性スラリー用の脱泡剤としての2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールエトキシレート溶液の0.49gの水溶液と、可塑剤としての4.87gの2−アミノ−2−メチル−1プロパノール水溶液と、125.00gのミリQ水とを、水性スラリー調製物のために、124mmの内径を有する1.0L高密度ポリエチレン(HDPE)肉厚ジャー(BHB−1100、Kinki Youki、日本国)に添加した。
【0081】
その後、そのHDPEジャーの内容物を、その混合物が液体のように見えるまで手で振盪した。5〜10mm径の1.5kg ZrO粉砕媒体をそのHDPEジャーに添加し、HDPEジャーの中の混合物を、約16時間、700シリーズ「ローラー型」ジャーミル(US Stoneware、オハイオ州イースト・パレスティーン)によって70rpmで粉砕した。その後、追加の55.59gのアクリル系ポリマー水溶液を、そのHDPEジャーの中のセラミック粒子の粉砕溶液に、最終水性スラリー中に60容量%セラミック粒子を最終的に含有するように添加した。その後、この混合物をローラー型ジャーミルによってさらにおおよそ4時間さらに粉砕した。全ボールミル粉砕工程が完了したら、得られたスラリーを、0.05mmの孔径を有するシリンジ援用金属スクリーンフィルタに通して濾過して、凝集したセラミック粒子を除去した。得られたスラリーの粘度は、200cPから350cPの範囲であった。その後、そのスラリーを75μm厚シリコーン被覆ポリエチレンテレフタレートMylar基板フィルム(Hansung Systems Inc.、大韓民国)上に、自動ロール・ツー・ロール・モデル102テープキャスター(DreiTek、カリフォルニア州バレー・センター)を用いて200mm/分のキャスト速度でキャストした。所望のグリーンシート厚に依存して、そのフィルムアプリケータのブレードギャップを調整した。各々が0.5mの長さを有する5つの異なる加熱ゾーンにおいて55〜80℃でそのキャストテープを乾燥させて、最終的に、45または60μm厚いずれかのYAGセラミック・グリーンシートを得た。
【0082】
乾燥させたグリーンシートを、カミソリの刃を使用して約135mm×135mmになるように切断した。同じ組成を有する、4層の45μm厚グリーンシートまたは3層の60μm厚グリーンシートいずれかを陽極酸化アルミニウム板上に組み立て、この組立品を真空バッギングした後、プレスした。ILS−66等方圧積層プレス(isostatic lamination press)(Keko Equipment、スロベニア国)を使用して10分間40MPa、80℃での冷間等方圧プレス(cold isostatic press:CIP)を用いて、この組立品を積層した。結果として、おおよそ135mm×135mm×0.17mmの積層されたグリーン積層体を得た。その後、実施例1において概説したものと同じである後続の素焼きおよび焼結工程のために、25W COレーザーを備えているVLS 2.30レーザー彫刻・切断システム(Universal Laser Systems)を使用して、そのグリーン積層体を18.5mm×18.5mm立体形状に切断した。
【0083】
加熱要素がタングステン製である高温炉であって、より高い真空レベルのための拡散ポンプが取り付けられている炉を使用して、それらの脱バインダー/素焼きブランク試料を1800℃で約5時間、10−5Torr真空下で十分に焼結させた。この最終焼結工程の加熱速度は、約16.7℃/分(〜400℃)、8.0℃/分(400〜1000℃)、2.5℃/分(1000〜1400℃)、(1.7℃/分 1400〜1500℃)、および0.8℃/分(1500〜1800℃)であり、これに対して冷却速度は、焼結中の割れを最小にするために8.0℃/分であった。最終的に、15mm×15mmサイズのセラミック板を得た。
【0084】
本実施例においてメッシュ7(表1参照)は有意なたわみを示した。下の表3およびたわみ測定の説明を参照されたし。
(実施例3)
【0085】
架橋ポリ(メチルメタクリレート)製であるポリマービーズであって、8μmのビーズ直径を有する4.47gのビーズも、6.0容量%気孔を作るために初めの16時間のボールミル粉砕後にHDPEジャーの中の粉砕溶液に添加したことを除き、実施例2において詳述したとおりに類似YAGセラミックを加工した。これらのビーズは、素焼き後に気泡を生ずることになり、これらの気孔は、タングステン炉を使用する焼結の終了後でさえ残存した。結局、これらの気孔は、光散乱をもたらした。
【0086】
本実施例においてメッシュ7(表1参照)は有意なたわみを示した。下の表3およびたわみ測定の説明を参照されたし。
(実施例4)
【0087】
97.50gのY粒子と、73.38gのAl粒子と、27.00gのアクリル系ポリマー水溶液と、水性スラリー用の脱泡剤としての2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールエトキシレート溶液の0.32gの水溶液と、可塑剤としての3.18gの2−アミノ−2−メチル−1プロパノール水溶液と、60.00gのミリQ水とを、80mmの内径を有する16オンス(0.45L)ポリプロピレン(PP)肉厚ジャー(Parkway Plastics Inc.、ニュージャージー州ピスカタウェイ)に添加したことを除き、実施例2において詳述したとおりに類似YAGセラミックを加工した。
【0088】
その後、5〜10mm径の760g ZrO粉砕媒体をそのPPジャーに添加し、PPジャーの中の混合物を、約16時間、700シリーズ「ローラー型」ジャーミル(US Stoneware、オハイオ州イースト・パレスティーン)によって96rpmで粉砕した。その後、追加の38.63gのアクリル系ポリマー水溶液を、そのPPジャーの中のセラミック粒子の粉砕溶液に、最終水性スラリー中に60容量%セラミック粒子を最終的に含有するように添加した。その後、この混合物をローラー型ジャーミルによってさらに約4時間さらに粉砕した。そのスラリーをテープキャストして、最終的におおよそ60μm厚のセラミック・グリーンシートを得た。乾燥させたグリーンシートを、カミソリの刃を使用して約135mm×135mmになるように切断した。同じ組成を有する7層の60μm厚グリーンシートを陽極酸化アルミニウム板上に組み立てた。この組立品を真空バッギングし、その後、80℃で10分間、40MPaで等方圧プレスした。
(実施例5)
【0089】
2.0m/gのBET表面積を有する75.24gのLu粒子と、32.13gのAl粒子と、15.00gのアクリル系ポリマー水溶液と、水性スラリー用の脱泡剤としての2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールエトキシレート溶液の0.14gの水溶液と、可塑剤としての1.35gの2−アミノ−2−メチル−1プロパノール水溶液と、30.00gのミリQ水とを、80mmの内径を有する8オンス(0.23L)ポリプロピレン(PP)肉厚ジャー(Parkway Plastics Inc.、ニュージャージー州ピスカタウェイ)に添加したことを除き、実施例2のYAGセラミックにおいて詳述したとおりに透明LuAGセラミックを加工した。
【0090】
その後、5〜10mm径の380g ZrO粉砕媒体をそのPPジャーに添加し、PPジャーの中の混合物を、約16時間、700シリーズ「ローラー型」ジャーミル(US Stoneware、オハイオ州イースト・パレスティーン)によって96rpmで粉砕した。その後、追加の12.81gのアクリル系ポリマー水溶液を、そのPPジャーの中のセラミック粒子の粉砕溶液に、最終水性スラリー中に60容量%セラミック粒子を最終的に含有するように添加した。その後、この混合物をローラー型ジャーミルによってさらに約4時間さらに粉砕した。そのスラリーをテープキャストして、最終的におおよそ65μm厚のセラミック・グリーンシートを得た。乾燥させたグリーンシートを、カミソリの刃を使用して約135mm×135mmになるように切断した。同じ組成を有する3層の65μm厚グリーンシートを陽極酸化アルミニウム板上に組み立てた。この組立品を真空バッギングし、その後、80℃で10分間、40MPaで等方圧プレスした。
(実施例6)
【0091】
同じ組成を有する2層の65μm厚グリーンシートを陽極酸化アルミニウム板上に組み立てたことを除き、実施例5において詳述したとおりに透明LuAGセラミックを加工した。この組立体を真空バッギングし、その後、80℃で10分間、40MPaで等方圧プレスした。
【0092】
上の実施例1〜6に従って調製したセラミック試料の要約を表2に要約する。
【表2】
(比較例1)
【0093】
実施例1〜6におけるようにして得たガーネットセラミック板を上部カバー板なしでタングステン板上で焼結させた。すべての試料は、タングステン製の高温真空炉(1800℃)での焼結後、たわんでいた。焼結中に上部カバー板がなかったため、ほとんどいずれの平板状セラミックも得られなかった。
(比較例2)
【0094】
ガーネットセラミックの4片の18.5mm×18.5mmブランク試料を、比較例1で見られたようなたわみを減少させるために、(タングステンメッシュを用いずに)50mm×50mm×0.38mmの直径の15mgタングステン板間にサンドイッチした。タングステン板の、算術平均値Raによって表される、表面粗度は、0.65ミクロンであった。高温真空タングステン炉(1800℃)を使用する焼結後、150ミクロン未満の厚みのガーネットセラミックはすべて割れ、これに対して350ミクロン厚ガーネットセラミックについてはおおよそ50%が割れた。試料の割れの理由は、タングステン板に粘着する試料の面積が小さいためであるようであった。(メッシュを使用するときのような、スポット接触と区別して)かかる面接触は焼結中の試料収縮を抑制し、それ故、焼結工程中に割れをもたらした。これは、より薄いセラミックに関して特に顕著であった。
(比較例3)
【0095】
ガーネットセラミックの4片の18.5mm×18.5mmブランク試料を、たわみを減少させるために、(タングステンメッシュを用いずに)50mm×50mm×0.38mmの直径の15mgタングステン板間にサンドイッチした。本実施例におけるタングステン板の表面粗度(Ra)は、3.46ミクロンであった。比較例2におけるように、高温真空タングステン炉(1800℃)を使用する焼結後、150ミクロン未満の厚みのガーネットセラミックはすべて割れ、これに対して350ミクロン厚ガーネットセラミックについてはおおよそ50%が割れた。試料の割れの理由もまた、タングステン板に粘着する試料の面積が小さいためであるようであり、かかる面接触は焼結中の試料収縮を抑制し、その結果、焼結中に割れをもたらした。
(比較例4)
【0096】
ガーネットセラミックの4片の18.5mm×18.5mmブランク試料を、たわみを防止するために、50mm×50mm×1.0mmのサイズを有する10mgの(タングステンメッシュ+タングステン板ではなく)多孔質ジルコニア板の間にサンドイッチした。ジルコニアの高い融点(〜2400℃)のため、ジルコニア板を選択した。ジルコニアカバー板の利用は、得られるYAGセラミックについて所望の平坦度レベルを生じさせる結果に時にはなったが、1675℃より上ではYAG板の表面が多くの場合ジルコニアカバー板と反応し、その反応が、視覚的に容易に認めることができるYAG板表面の不均一な表面粗度をもたらした。加えて、YAGおよびジルコニアは、多くの場合、高温で反応し、およびかかる高温では2つの酸化物平板状セラミック片が付着するので、YAGセラミックを1700℃より上で焼結させることができない。
(比較例5)
【0097】
YAG平板状セラミック片を、たわみを減少させるために、(タングステンメッシュではなく)モリブデン箔でサンドイッチした。これは、YAG板のより高温(>1700℃)での焼結を可能にした。加えて、YAGセラミックは、焼結中に割れず、均一な高い透明度を維持した。これは、高温での焼結中にYAGとモリブデン間の反応がないためであった可能性がある。しかし、焼結YAG板について所望の平坦度レベルを達成しなかった。たわんだ平板状セラミック片しか得られなかった。高温での焼結中に、モリブデン箔もたわみ、これが、焼結YAGセラミックのたわみの原因となった可能性がある。
(比較例6)
【0098】
YAG平板状セラミック片を、非常に太いタングステンフィラメント径を有する非常に粗いタングステン6メッシュでサンドイッチした。その粗いメッシュ構造のために、焼結YAGセラミックは、そのメッシュ構造に従ってわずかなたわみを示したが、目につく割れは観察されず、歩留りは100%のままであった。
【0099】
1800℃でジルコニアを使用すると、セラミック片のすべてが割れ、ジルコニアに粘着した。1800℃でモリブデンを使用すると、割れはなかったが、その箔は高温でたわんだ。1800℃でタングステン板を使用すると、セラミック片の75%〜50%が割れた(すなわち、目に見える割れ)。
たわみおよび粗度測定
【0100】
たわみの測定方法の一例は、次のとおりである。2枚の平板を、所定の距離を離して互いに平行に配置する。図5を参照されたし。板の全厚(D)(距離A+B)、およびたわみがある試料の垂直変位(距離C+E)をマイクロメータによって測定し、ここで、Cは、たわみのない試料の既知の厚みであり、およびEは、たわみ量である。2枚の平行な板の外表面をマイクロメータの測定距離範囲内に置く。それらの板を、板間に試料を挿入するために十分な距離に配置する。挿入したら、あごが板に触れるまであごを近づけ、あご間の全距離をマイクロメータによって測定する(D)。その後、測定した全距離から板およびたわんでいない試料の既知距離の値を減算するD−(A+B+C)によって、試料のたわみ量(E)を計算することができる。
【0101】
実施例1〜6からのセラミック試料のたわみ測定は、本開示の方法がセラミック材料のたわみを減少させることを実証した。実施例1〜6に記載したすべてのセラミック試料の反りを、マイクロメータおよびノギスを使用して測定した。マイクロメータは、より小さい表面積を有する測定面(先端、直径約5mm)を有する。ノギスは、より大きい表面積の測定面(あご面約30mm)を有する。セラミック試料を両方の計器で測定した。「良好」試料は、マイクロメータまたはノギスによって測定したときに実質に同様の厚みを有し、これは、たわみが殆どまたは全くないことを示す。マイクロメータによる厚み測定を各セラミック平面上の5カ所の異なる位置で行った。これらのたわみ測定の平均値を表3に提示する。この表は、実施例1〜6の15mm×15mmセラミック板のたわみについてのマイクロメータおよびノギスを使用する実験結果を示す。
【表3】
【0102】
メッシュ7(表1参照)は、実施例2および3の条件下で、それぞれ0.27mmおよび0.31mmのたわみで、有意なたわみを提示した。
【0103】
表3に要約した測定されたたわみと、メッシュにおける接触点または線の数との相関関係を、実施例1〜6のそれぞれについて図6AおよびBに提示する。この提示内容から、使用したメッシュにおける接触点または線の数を増加させる本記載プロセスに従って製造されたすべてのセラミックについてたわみが最小化されたことは、明白である。
【0104】
セラミックの平坦度を維持しながら、焼結セラミックの表面粗度を最小にすることも重要である。でなければ、焼結セラミックの大きな粗度が、厚み測定に影響を及ぼし得る。そのため、メッシュを使用して焼結されたガーネットセラミックの(算術平均値Raによって表される)表面粗度を、携帯用粗度試験機(モデル54−400−110、Fred V.Fowler Companry Inc.、マサチューセッツ州ニュートン)により、セラミック平面上の5カ所の異なる位置で測定した。測定困難のため、一切のたわんだおよび/または割れた試料をこの測定から除外した。すべての平板状試料の表面粗度測定の平均値の要約を表4に提示する。
【表4】
【0105】
表4に提示したとおりの測定値Raとメッシュとの相関関係を図7AおよびBに提示する。この提示内容から、使用したメッシュにおける接触点または線の数を増加させる本記載プロセスに従って製造されたすべてのセラミックについて表面粗度が最小化されたことは、明白である。
【0106】
別段の指示がない限り、本明細書および請求項において用いる成分の量、特性、例えば、分子量、反応条件など、を表すすべての数は、すべての場合、用語「約」によって修飾されていると解するべきである。したがって、相反する指示がない限り、本明細書および添付の請求項に示す数値パラメータは、得ようと努める所望の特性に依存して変わることがある近似値である。最低限でも、および本請求項の範囲への均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告する有効桁数に照らしておよび通常の丸め技法の適用によって解釈すべきである。
【0107】
本発明を説明する文脈の中で(特に、後続の請求項の文脈の中で)用いる用語「a」、「an」、「the」および同様の指示物は、本明細書中で別段の指示がない限り、または文脈が明らかに矛盾しない限り、単数形と複数形の両方を包含すると解釈すべきである。本明細書に記載するすべての方法は、本明細書中で別段の指示がない限り、または文脈が明らかに矛盾しない限り、任意の適する順序で行うことができる。本明細書に提供するありとあらゆる例、または例示的な言葉(例えば、「などの」)の使用は、本発明を単によりよく例証することを意図したものであり、いずれの請求項の範囲に対しても制限を課さない。本発明の実施に不可欠な要素であって、いずれの請求項にも記載されていない要素を示すと解釈すべき言葉は、本明細書にはない。
【0108】
本明細書に開示する代替要素または実施形態の群分けは、限定と解釈すべきでない。各群構成員に個別に言及することもあり、またはその群の他の構成員もしくは本明細書中で見つけられる他の要素との任意の組み合わせで言及することもあり、および各群構成員を個別に請求項に記載することもあり、またはその群の他の構成員もしくは本明細書中で見つけられる他の要素との任意の組み合わせで請求項に記載することもある。便宜および/または特許性の理由から、ある一定の群の1つ以上の構成員をある一定の群に組み入れることもあり、またはある一定の群から削除することもあることが予期される。何らかのかかる組み入れまたは削除が存在する場合、本明細書は、添付の請求項において用いるすべてのマーカッシュ群の記述を満たすように変更したその群を含有すると考えられる。
【0109】
本発明を実施するための本発明者らが知る最高の方式を含めて、一定の実施形態を本明細書に記載する。勿論、これらの記載する実施形態の変形形態が、上記説明を読むことで、通常の当業者には明らかになるであろう。本発明者は、かかる変形形態を適宜用いることを当業者に予期しており、および本発明者らは、本明細書に具体的に記載する以外の別な方法で本発明が実施されることを意図している。したがって、本請求項は、適用可能な法律によって許されるような、本請求項に記述する主題のすべての変更形態および等価物を含む。さらに、本明細書中で別段の指示がない限り、または文脈が明らかに矛盾しない限り、上記要素の、それらのすべての可能な変形形態での、あらゆる組み合わせが考えられる。
【0110】
最後に、本明細書において開示する実施形態は、本請求項の原理の例証となるものであると解するべきである。用いることができる他の変更形態は、本請求項の範囲内である。それ故、例として、限定としてではなく、代替実施形態を本明細書における教示に従って用いてもよい。したがって、本請求項は、示すおよび記載するまさにそのとおりの実施形態に限定されない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7