(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ベース部接合領域の、前記ベース部接合面に垂直な方向における厚みは、前記摺動部品の内部に比べて表面を含む領域において大きくなっている、請求項1に記載の摺動部品。
前記摺動部には、前記ベース部に接合される面である摺動部接合面を含むように、前記摺動部の他の領域に比べて硬度の低い摺動部接合領域が形成されている、請求項1または2に記載の摺動部品。
前記ベース部材と前記摺動部材とが接合された状態で、前記摺動部材を加熱することにより、前記摺動部材の前記摺動部材接触面に接する前記摺動部材内の領域に他の領域に比べてα相の割合が多い領域を形成する工程をさらに備えた、請求項12に記載の摺動部品の製造方法。
前記主軸および前記基台部の少なくともいずれか一方には、前記ベース部材と前記摺動部材との接触荷重を検知する荷重センサが設置されている、請求項14に記載の摺動部品の製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のピストンシューの構造では、摺動部はベース部に対して係合して固定されているに過ぎない。そのため、たとえばピストンシューに衝撃が加わった場合、摺動部のベース部への固定状態が不安定となるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、摺動部がベース部に対して安定して固定された摺動部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従った摺動部品は、摺動面を有する摺動部品である。この摺動部品は、鋼または鋳鉄からなるベース部と、摺動面が形成され、銅合金からなり、ベース部に接合された摺動部とを備えている。そして、ベース部に、摺動部に接合される面であるベース部接合面を含むように、ベース部の他の領域に比べて結晶粒が小さいベース部接合領域が形成されつつ、ベース部と摺動部とが接合されている。
【0008】
本発明の摺動部品では、ベース部と摺動部とが接合されるとともに、ベース部接合面を含むように、ベース部の他の領域に比べて結晶粒が小さいベース部接合領域が形成されている。すなわち、本発明の摺動部品は、結晶粒が小さいことにより靱性に優れたベース部接合領域と摺動部とが接合された構造を有する。その結果、たとえば摺動部品に衝撃が加わった場合でも、摺動部がベース部に対して安定して固定される。このように、本発明の摺動部品によれば、摺動部がベース部に対して安定して固定された摺動部品を提供することができる。
【0009】
上記摺動部品においては、ベース部接合領域の、ベース部接合面に垂直な方向における厚みは、摺動部品の内部に比べて表面を含む領域において大きくなっていてもよい。このようにすることにより、接合面近傍において、亀裂の起点となる可能性のあるベース部の表層領域に、高い靱性をより確実に付与することができる。
【0010】
上記摺動部品においては、摺動部には、ベース部に接合される面である摺動部接合面を含むように、摺動部の他の領域に比べて硬度の低い摺動部接合領域が形成されていてもよい。これにより、摺動部とベース部との接合部におけるひずみを緩和することができる。
【0011】
上記摺動部品においては、摺動部接合領域の、摺動部接合面に垂直な方向における厚みは0.2mm以下であってもよい。このように、摺動部接合領域の厚みを必要以上に大きくしないことにより、摺動部に十分な強度を付与することができる。
【0012】
上記摺動部品において、上記銅合金は高力黄銅であってもよい。高力黄銅は、高い強度と優れた摺動特性とを併せ持つ材料であり、摺動部を構成する材料として好適である。
【0013】
上記摺動部品においては、上記摺動部を構成する高力黄銅は、マトリックスに比べて高い硬度を有する析出物を含み、摺動部接合領域内の析出物の大きさは、摺動部の他の領域の析出物の大きさに比べて小さくなっていてもよい。このようにすることにより、接合部近傍の摺動部の靱性を向上させることができる。
【0014】
上記摺動部品においては、摺動部接合領域内の摺動部接合面に接する領域に、上記析出物が集合した析出物集合部が形成されていてもよい。摺動部接合面近傍に微細な析出物の集合部を形成することにより、靱性を大幅に低下させることなく、摺動部接合面近傍の強度を向上させることができる。
【0015】
上記摺動部品においては、上記摺動部接合領域は、摺動部の他の領域に比べてα相の割合が多くなっていてもよい。このようにすることにより、接合部近傍の摺動部の靱性を向上させることができる。
【0016】
本発明に従った摺動部品の製造方法は、鋼または鋳鉄からなるベース部材と、銅合金からなる摺動部材とを準備する工程と、ベース部材を、摺動部材に接触させつつ相対的に滑らせることにより摩擦熱を発生させ、ベース部材において摺動部材に接触する面であるベース部材接触面を含む領域をA
1変態点以上の温度に加熱する工程と、加熱されたベース部材と、摺動部材とを接触させた状態で保持することにより上記ベース部材接触面を含む領域をA
1変態点未満の温度に冷却して、ベース部材と摺動部材とを接合する工程とを備えている。
【0017】
本発明の摺動部品の製造方法では、ベース部材を、摺動部材に接触させつつ相対的に滑らせることにより摩擦熱を発生させ、ベース部材接触面を含む領域をA
1変態点以上の温度に加熱する。その後、ベース部材と摺動部材とを接触させた状態で保持して冷却することにより、ベース部材接触面を含む領域の結晶粒が微細化されつつベース部材と摺動部材とが接合される。このようにすることにより、摺動部がベース部に対して安定して固定された上記本発明の摺動部品を容易に製造することができる。
【0018】
上記摺動部品の製造方法において、ベース部材接触面を含む領域をA
1変態点以上の温度に加熱する工程では、ベース部材が、摺動部材に対する相対的な位置を変えることなく、摺動部材に対して押し付けられつつ相対的に回転してもよい。
【0019】
このようにすることにより、摺動部材とベース部材との位置関係を変えることなく摩擦熱を発生させることができるため、摺動部材とベース部材とを所望の位置関係で接合することが容易となる。
【0020】
上記摺動部品の製造方法において、ベース部材接触面を含む領域をA
1変態点以上の温度に加熱する工程、およびベース部材と摺動部材とを接合する工程では、摺動部材においてベース部材に接触する面である摺動部材接触面の外周側において摺動部材が拘束されてもよい。
【0021】
このようにすることにより、軟化した摺動部材の変形量が抑制される。その結果、接合後の機械加工における加工量が低減され、摺動部材の材料の歩留りが向上する。また、摺動部材の厚みが小さい場合でも、摺動部材において塑性変形した領域が摺動部品の摺動面に露出することが抑制され、摺動部品の摺動特性が安定する。
【0022】
上記摺動部品の製造方法において、上記銅合金は高力黄銅であってもよい。高力黄銅は、高い強度と優れた摺動特性とを併せ持つ材料であるため、摺動部材を構成する材料として好適である。
【0023】
上記摺動部品の製造方法は、ベース部材と摺動部材とが接合された状態で、摺動部材を加熱することにより、摺動部材の摺動部材接触面に接する摺動部材内の領域に他の領域に比べてα相の割合が多い領域を形成する工程をさらに備えていてもよい。これにより、接合部近傍の靱性を向上させることができる。
【0024】
本発明に従った摺動部品の製造装置は、鋼または鋳鉄からなるベース部材と、銅合金からなる摺動部材とを接合することにより摺動部品を製造する摺動部品の製造装置である。この摺動部品の製造装置は、軸周りに回転可能な主軸と、主軸に対して軸方向に間隔を置いて配置された基台部と、主軸と基台部との間隔を調整する間隔調整部とを備えている。主軸には、基台部に対向するようにベース部材または摺動部材の一方を保持する第1保持部が設けられている。基台部には、第1保持部に対向するようにベース部材または摺動部材の他方を保持する第2保持部が設けられている。そして、間隔調整部により主軸と基台部との間隔を調整してベース部材と摺動部材とを接触させた状態において、摺動部材を保持する第1保持部または第2保持部が、摺動部材のベース部材に接触する面である摺動部材接触面の外周を取り囲むように、第1保持部材および第2保持部材が配置されている。
【0025】
本発明の摺動部品の製造装置を用いて上記摺動部品の製造方法を実施することにより、本発明の摺動部品を容易に製造することができる。より具体的には、第1保持部および第2保持部の一方にベース部材を、他方に摺動部材を保持した状態で主軸を軸周りに回転させつつ、間隔調整部により主軸と基台部との間隔を調整してベース部材を摺動部材に対して押し付けることにより、ベース部材および摺動部材を加熱する。その後、ベース部材と摺動部材とが接触した状態で冷却することにより、ベース部材と摺動部材とが接合される。
【0026】
ここで、本発明の摺動部品の製造装置では、ベース部材と摺動部材とが接触した状態において、摺動部材接触面の外周が第1保持部または第2保持部により取り囲まれる。そのため、ベース部材と摺動部材とを接合する際に、軟化した摺動部材が外周側において拘束される。その結果、軟化した摺動部材の変形量が抑制され、接合後の機械加工における加工量が低減されるため、摺動部材の材料の歩留りが向上する。また、摺動部材の厚みが小さい場合でも、摺動部材において塑性変形した領域が摺動部品の摺動面に露出することが抑制され、摺動部品の摺動特性が安定する。このように、本発明の摺動部品の製造装置によれば、摺動部材の材料の歩留りの向上および摺動部品の摺動特性の安定を達成しつつ、本発明の摺動部品を製造することができる。
【0027】
上記摺動部品の製造方法において、主軸および基台部の少なくともいずれか一方には、ベース部材と摺動部材との接触荷重を検知する荷重センサが設置されていてもよい。これにより、ベース部材と摺動部材との接触荷重を適切な範囲に調整することが容易となる。
【発明の効果】
【0028】
以上の説明から明らかなように、本発明の摺動部品および摺動部品の製造方法によれば、摺動部がベース部に対して安定して固定された摺動部品を提供することができる。また、本発明の摺動部品の製造装置によれば、本発明の摺動部品を容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0031】
図1は、本発明の一実施の形態である摺動部品としてのピストンシューの構造を示す概略断面図である。
図1を参照して、ピストンシュー1は、油圧ポンプや油圧モータのピストン本体(図示しない)に接続され、斜板に対して摺動する部品である。ピストンシュー1は、鋼からなるベース部2と、摺動面31が形成され、銅合金からなり、ベース部2に接合された摺動部3とを備えている。ベース部2を構成する鋼としては、たとえば調質処理、すなわち焼入処理および焼戻処理されたJIS規格SCM440などの機械構造用合金鋼または機械構造用炭素鋼を採用することができる。ベース部2は、球形状を有し、ピストン本体に搖動可能に接続されるべき球状部21と、球状部21に接続され、段付き円盤形状を有する円盤部22とを含んでいる。
【0032】
球状部21は、ピストン本体に形成された球面状の内壁を有する保持部(図示しない)に、搖動可能に保持される。また、球状部21の、円盤部22に接続される側とは反対側の端部には、平面状の平坦部21Aが形成されている。一方、円盤部22の、球状部21とは反対側の端部には、平面状のベース部接合面23が形成されている。
【0033】
そして、ベース部接合面23には、円盤部22よりも厚みが小さい円盤形状を有する摺動部3が接合されている。摺動部3は、一方の主表面である摺動部接合面32において円盤部22のベース部接合面23に接合されている。また、摺動部3の他方の主表面は、摺動面31となっている。この摺動面31は、たとえば油圧ポンプの斜板(図示しない)に対して摺動する。摺動部3が摺動特性に優れた銅合金からなっていることにより、斜板とピストンシュー1との摩擦力が抑制される。摺動部3を構成する銅合金としては、高力黄銅などの黄銅のほか、アルミ青銅などの青銅を採用することができるが、本実施の形態では摺動部3は高力黄銅からなっている。さらに、摺動面31には、同心円状に形成された円環状の複数の溝31Aが形成されている。これらの溝31Aに油が適量保持されることにより、斜板とピストンシュー1との摩擦力が一層抑制される。
【0034】
ピストンシュー1は、中心軸Aに対して対称な形状を有している。そして、ピストンシュー1には、中心軸Aを含む領域に、球状部21の平坦部21Aから摺動部3の摺動面31に至るようにピストンシュー1を貫通する直線状のセンター孔29が形成されている。センター孔29は、第1領域29Aと、第2領域29Bと、第3領域29Cと、第4領域29Dとを含んでいる。第1領域29Aは、平坦部21Aから摺動面31に向けて延在する。第2領域29Bは、第1領域29Aに接続されており、第1領域29Aよりも長手方向(軸A方向)に垂直な断面における断面積が小さい。第3領域29Cは、第2領域29Bに接続されており、摺動面31に近づくに従って軸方向に垂直な断面の断面積が大きくなっている。第4領域は、第3領域29Cに接続され、軸方向に垂直な断面の断面積が第3領域29Cよりも大きい。
【0035】
次に、ベース部2と摺動部3との接合部付近の構造について説明する。
図2は、
図1の領域IIを拡大して示す概略断面図である。
図2を参照して、ベース部2に、ベース部接合面23を含むように、ベース部2の他の領域に比べて結晶粒が小さいベース部接合領域24が形成されつつ、ベース部2と摺動部3とが直接接合されている。
【0036】
本実施の形態のピストンシュー1では、ベース部2の他の領域に比べて結晶粒が小さいベース部接合領域24が形成されたベース部2と摺動部3とが直接接合されている。つまり、ピストンシュー1は、結晶粒が小さいことにより靱性に優れたベース部接合領域24と摺動部3とが直接接合された構造を有している。そのため、摺動部3がベース部2に対して安定して固定されている。このように、ピストンシュー1は、摺動部3がベース部2に対して安定して固定された摺動部品である。
【0037】
ここで、
図2を参照して、ピストンシュー1の表面1Aを含む領域におけるベース部接合領域24の厚みt
2は、内部におけるベース部接合領域24の厚みt
1に比べて大きくなっていてもよい。これにより、接合面近傍において、亀裂の起点となる可能性のあるベース部2の表層領域に、高い靱性をより確実に付与することができる。本実施の形態では、ベース部接合領域24の厚みは、ピストンシュー1の表面1Aに近づくにしたがって徐々に大きくなっている。
【0038】
また、摺動部3には、ベース部2に接合される面である摺動部接合面32を含むように、摺動部3の他の領域に比べて硬度の低い摺動部接合領域34が形成されていてもよい。これにより、摺動部3とベース部2との接合部におけるひずみを緩和することができる。
【0039】
この摺動部接合領域34の、摺動部接合面32に垂直な方向における厚みは0.2mm以下であることが好ましい。このように、摺動部接合領域34の厚みを必要以上に大きくしないことにより、摺動部3に十分な強度を付与することができる。
【0040】
さらに、摺動部3を構成する高力黄銅は、マトリックスに比べて高い硬度を有する析出物を含み、摺動部接合領域34内の析出物の大きさは、摺動部3の他の領域の析出物の大きさに比べて小さくなっていてもよい。これにより、接合部近傍の摺動部の靱性を向上させることができる。
【0041】
また、摺動部接合領域34内の摺動部接合面32に接する領域に、上記析出物が集合した析出物集合部が形成されていてもよい。摺動部接合面32近傍に微細な析出物の集合部を形成することにより、靱性を大幅に低下させることなく、摺動部接合面32近傍の強度を向上させることができる。
【0042】
さらに、摺動部接合領域34は、他の領域に比べてα相の割合が多くなっていてもよい。これにより、接合部近傍の摺動部3の靱性を向上させることができる。
【0043】
次に、上記ピストンシュー1の製造方法について説明する。
図3は、ピストンシューの製造方法の概略を示すフローチャートである。また、
図4は、ピストンシューの製造装置の構造を示す概略図である。また、
図5は、ピストンシューの製造装置の動作を示す概略断面図である。また、
図6は、ピストンシューの製造装置に含まれる拘束治具の構造を示す概略平面図である。
【0044】
図3を参照して、本実施の形態におけるピストンシュー1の製造方法では、まず工程(S10)として成形部材準備工程が実施される。この工程(S10)では、
図5を参照して、調質処理された機械構造用合金鋼からなるベース部材4と、高力黄銅からなる円盤形状の摺動部材5とが準備される。ベース部材4は、円盤状の形状を有する円盤部4Bと、円盤部4Bに接続され、外径が円盤部よりも小さい円筒部4Cとを備えている。円盤部4Bの円筒部4Cとは反対側の端部には、摺動部材5に接合されるべき平坦面であるベース部材接触面4Aが形成されている。また、摺動部材5の一方の主表面は、ベース部材4に接合されるべき平坦面である摺動部材接触面5Aとなっている。
【0045】
次に、工程(S20)として洗浄工程が実施される。この工程(S20)では、工程(S10)において準備されたベース部材4および摺動部材5が洗浄される。より具体的には、ベース部材4および摺動部材5が、メタノール、エタノール、アセトンなどの液体を用いて洗浄される。これにより、ベース部材4および摺動部材5を準備するための切断、加工などのプロセスにおいてベース部材4および摺動部材5に付着した異物等が除去される。なお、本実施の形態のピストンシュー1の製造方法では、摺動部材接触面5Aに対する精密な仕上げ加工は省略することが可能であり、たとえば摺動部材接触面5Aは切断ままの状態であってもよい。
【0046】
次に、
図3を参照して、閉塞摩擦接合工程が実施される。この閉塞摩擦接合工程は、接合準備工程、摩擦工程および冷却工程を含んでいる。ここで、閉塞摩擦接合を実施することでピストンシューを製造するピストンシュー(摺動部品)の製造装置について説明する。
【0047】
図4を参照して、ピストンシューの製造装置である閉塞摩擦接合装置9は、軸α周りに回転可能な主軸95と、主軸95に対して軸α方向に間隔を置いて配置された基台部98と、主軸95と基台部98との間隔を調整する間隔調整部97と、主軸95および基台部98を支持するフレーム90とを備えている。
【0048】
主軸95には、基台部98に対向するようにベース部材4を保持する第1保持部としてのチャック94が設けられている。また、主軸95には、主軸95を軸α周りに回転駆動する主軸モータ95Bが接続されている。さらに、主軸95には、ベース部材4と摺動部材5との接触荷重を検知する荷重センサ96が設置されている。この荷重センサ96は、チャック94に加わるベース部材4と摺動部材5との接触の反力の大きさから、ベース部材4と摺動部材5との接触荷重を検知する。荷重センサ96は、閉塞摩擦接合装置9において必須の構成ではないが、これを設置することにより、ベース部材4と摺動部材5との接触荷重を適切な範囲に調整することが容易となる。
【0049】
一方、基台部98には、チャック94に対向するように摺動部材5を保持する第2保持部としての拘束治具93が設けられている。より具体的には、
図4および
図5を参照して、基台部98は、ベース体91と、治具ホルダ92と、拘束治具93とを含んでいる。ベース体91は、フレーム90上に設置されている。治具ホルダ92は、ベース体91上に固定されている。拘束治具93は、治具ホルダ92に形成された凹部である治具保持部92Aに嵌め込まれて固定されている。拘束治具93は、
図6に示すように、2つの部品99,99に分離することができる。また、拘束治具93の摺動部材5を保持する領域である保持部93Aは、平面的に見て(軸αに沿った方向から見て)、円盤形状を有する摺動部材5の外周面に外接する多角形形状、具体的には六角形形状を有している。
【0050】
図4を参照して、フレーム90内には、軸αに対して平行に延在するシャフト90Aが設置されている。このシャフト90Aは、主軸95を支持する主軸支持部90Cをシャフト90Aの延在方向に沿って移動可能に支持している。さらに、シャフト90Aには、シャフト90Aを駆動する主軸移動モータ90Bが接続されている。シャフト90Aが主軸移動モータ90Bによって駆動されることにより、主軸支持部90Cにより支持される主軸95が軸α方向に移動する。これにより、主軸95と基台部98との間隔を調整することができる。シャフト90A、主軸支持部90Cおよび主軸移動モータ90Bは、間隔調整部97を構成する。
【0051】
そして、間隔調整部97により主軸95と基台部98との間隔を調整してベース部材4と摺動部材5とを接触させた状態(
図5の状態)において、第2保持部としての拘束治具93が、摺動部材5のベース部材4に接触する面である摺動部材接触面5Aの外周を取り囲むように、チャック94および拘束治具93が配置されている。別の観点から説明すると、
図5を参照して、軸α方向における拘束治具93の保持部93Aの高さは、摺動部材5の厚みよりも大きい。
【0052】
次に、閉塞摩擦接合工程の具体的な手順を説明する。
図7は、閉塞摩擦接合工程における主軸95の回転数、ベース部材4と摺動部材5との接触荷重(押し付け荷重)、およびベース部材4と摺動部材5との接合部の温度の経時的変化を示す図である。
図4および
図5を参照して、工程(S30)として実施される接合準備工程では、ベース部材4が円筒部4Cの外周面においてチャック94に保持されるとともに、摺動部材5が拘束治具93の保持部93Aにセットされる。このとき、ベース部材接触面4Aと摺動部材接触面5Aとが対向し、かつベース部材4および摺動部材5の中心軸がチャック94の回転軸αに一致するように、ベース部材4および摺動部材5は配置される。
【0053】
次に、工程(S40)として摩擦工程が実施される。この工程(S40)では、主軸95が主軸モータ95Bにより駆動されて軸α周りに回転するとともに、主軸移動モータ90Bにより駆動されて基台部98に近づく。これにより、チャック94が軸α周りに回転しつつ、拘束治具93に近づく。このとき、
図7を参照して、時刻S
0において回転を開始した主軸95の回転数は、時刻S
1に所望の回転数に到達し、その後当該回転数が維持される。さらに、時刻S
2には
図5に示すようにベース部材接触面4Aと摺動部材接触面5Aとが接触する。これにより、ベース部材4は、摺動部材5に対する相対的な位置を変えることなく、摺動部材5に対して荷重Lにて押し付けられつつ相対的に回転する。その結果、
図7に示すように、ベース部材4と摺動部材5との接触部(接合部)の温度が摩擦熱により上昇する。そして、時刻S
3には、荷重センサ96により検知される押し付け荷重(ベース部材接触面4Aと摺動部材接触面5Aとの接触荷重)が所望の大きさに到達し、その後当該押し付け荷重が維持される。この間、ベース部材4と摺動部材5との接触部の温度は上昇を続ける。
【0054】
そして、時刻S
4には、ベース部材4と摺動部材5との接触部の温度はA
1変態点以上であって固相線温度未満にまで上昇する。その結果、ベース部材4のうちベース部材接触面4Aを含む領域はA
1変態点以上固相線温度未満の温度に加熱され、当該領域を構成する鋼は液相を含まないオーステナイト状態となる。
【0055】
一方、加熱された摺動部材5は軟化し、摺動部材5と拘束治具93との隙間93Bを充填するように変形する(
図6参照)。その結果、ベース部材4が軸α周りに回転しても、摺動部材5はこれに従って回転しない。
【0056】
次に、工程(S50)として冷却工程が実施される。この工程(S50)では、まず主軸95の回転数を低下させ、時刻S
5にはその回転を停止する。その後、荷重センサ96により検知される押し付け荷重を低下させる。この間、ベース部材4と摺動部材5とは互いに押し付け合う状態を維持しつつ、ベース部材4と摺動部材5との接触部は冷却される。これにより、ベース部材4と摺動部材5とが接合される。そして、時刻S
6には、押し付け荷重が0とされ、ベース部材4と摺動部材5とが接合されて構成される構造体が閉塞摩擦接合装置9から取り出される。
【0057】
ここで、ベース部材4のうち、工程(S40)においてA
1変態点以上の温度にまで加熱されたベース部材接触面4Aを含む領域は、工程(S50)においてA
1変態点未満の温度に冷却される。このように、一旦A
1変態点以上の温度に加熱された後、A
1変態点未満の温度に冷却された当該領域の結晶粒は微細化される。その結果、他の領域に比べて結晶粒が小さいベース部接合領域24(
図2参照)が形成される。以上の手順により、閉塞摩擦接合工程が完了する。
【0058】
次に、工程(S60)として、機械加工工程が実施される。この工程(S60)では、工程(S50)において得られた構造体に対して機械加工が実施される。具体的には、
図1を参照して、摺動部材5の外周面が加工されることにより円盤状の摺動部3が形成される。また、ベース部材4の円筒部が加工されることにより、球状部21が形成される。さらに、センター孔29、平坦部21Aおよび溝31Aも、この工程において形成される。
【0059】
次に、工程(S70)としてガス軟窒化工程が実施される。この工程(S70)では、
図1を参照して、工程(S60)において形成された球状部21が、別途準備されたピストン本体に形成された球面状の内壁を有する保持部(図示しない)に嵌め込まれたうえで、ガス軟窒化処理が実施される。具体的には、アンモニアガスを含む雰囲気中でA
1変態点未満の温度に加熱されることにより、ベース部材4(ベース部2)およびピストン本体(図示しない)の表層部に窒化層が形成される。また、このとき、ガス軟窒化処理のための加熱により、摺動部材5の摺動部材接触面5Aに接する摺動部材5内の領域に、他の領域に比べてα相の割合が多い領域が形成される。これにより、
図2を参照して、摺動部接合領域34は、他の領域に比べてα相の割合が多くなる。
【0060】
次に、工程(S80)として仕上げ工程が実施される。この工程では、工程(S70)においてガス軟窒化処理が実施されたベース部材4、摺動部材5およびピストン本体(図示しない)に対して、必要に応じて仕上げ処理が実施される。以上の手順により、本実施の形態におけるピストンシュー1が、ピストン本体と組み合わせられた状態で完成する。
【0061】
このように、本実施の形態におけるピストンシューの製造方法によれば、上記本実施の形態のピストンシュー1を製造することができる。ここで、工程(S40)として実施される摩擦工程は、たとえばベース部材4を摺動部材5に対して相対的に往復させることにより実施することもできるが、ベース部材4が、摺動部材5に対する相対的な位置を変えることなく回転することにより、摺動部材5とベース部材4とを所望の位置関係で接合することが容易となる。
【0062】
また、
図6を参照して、工程(S40)においてベース部材4が、摺動部材に対する相対的な位置を変えることなく回転することにより、ベース部材4の摺動部材5に対する周速は、軸αから離れるにしたがって速くなる。そのため、摩擦による発熱は、ベース部材4の外周側において大きくなる。その結果、ベース部材4のうち摩擦熱によりA
1変態点を超える領域の厚みはベース部材4の外周側において大きくなる。これにより、
図2を参照して、他の領域に比べて結晶粒の大きさが小さいベース部接合領域24の厚みを、内部に比べて外周側、すなわちピストンシュー1の表面1Aを含む領域において大きくすることができる。さらに、
図6を参照して、上記本実施の形態におけるベース部材4の円筒部4Cの外径は、円盤部4Bに比べて小さくなっている。これにより、ベース部材接触面4Aの外周部において発生した摩擦熱は、円筒部4Cへと伝わりにくくなっている。その結果、ベース部材4のうち摩擦熱によりA
1変態点を超える領域の厚みは、ベース部材4の外周側において一層大きくなる。そのため、本実施の形態におけるピストンシュー1の製造方法によれば、ベース部接合領域24の厚みを、内部に比べて外周側、すなわちピストンシュー1の表面1Aを含む領域において大きくすることが容易となっている。
【0063】
また、本実施の形態におけるピストンシュー1の製造方法では、
図5を参照して、軸α方向における保持部93Aの高さは、摺動部材5の厚みよりも大きくなっている。その結果、工程(S40)および(S50)において、摺動部材接触面5Aの外周側において摺動部材5が拘束された状態が維持される。これにより、軟化した摺動部材5の変形量を抑制することができる。より具体的には、製造されるピストンシュー1において、摺動部材5の変形によって形成される摺動部接合領域34の、摺動部接合面32に垂直な方向における厚みを0.2mm以下とすることができる。その結果、接合後の機械加工における加工量が低減されるため、摺動部材5の材料の歩留りが向上する。また、摺動部材5の厚みが小さい場合でも、摺動部材5において塑性変形した領域がピストンシュー1の摺動面31に露出することが抑制され、摺動部3の摺動特性が安定する。また、硬度の低い摺動部接合領域34の厚みを必要以上に大きくしないことにより、摺動部3に十分な強度を付与することができる。
【0064】
ここで、
図6を参照して、軟化した摺動部材5は、摺動部材5と拘束治具93との隙間93Bを充填するように変形する。そのため、隙間93Bを適切な大きさに調整し、摺動部材5の変形量を抑制することができる。
【0065】
なお、上記実施の形態においては、摺動部材が固定され、ベース部材が運動(回転)する場合について説明したが、本発明の摺動部品の製造方法はこれに限られず、ベース部材が固定されて摺動部材が運動(回転)してもよいし、両方が運動(回転)することにより一方が他方に対して相対的に滑るものであってもよい。
【0066】
また、上記実施の形態においては、閉塞摩擦接合装置9(摺動部品の製造装置)として、主軸が軸方向に移動可能な構造について説明したが、本発明の摺動部品の製造装置はこれに限られず、基台部が軸方向に移動可能なものであってもよい。
【0067】
さらに、上記実施の形態においては、拘束治具93の保持部93Aの形状が平面的に見て(軸αに沿った方向から見て)六角形形状である場合について説明したが、採用可能な拘束治具はこれに限られず、保持部の形状は他の多角形(たとえば八角形など)であってもよいし、摺動部材5よりもわずかに大きな直径を有する円形であってもよい。
【0068】
また、上記実施の形態においては、ピストンシューを摺動部品の一例として説明したが、本発明の摺動部品はこれに限られず、鋼または鋳鉄からなるベース部と銅合金からなる摺動部とが接合されて構成される種々の摺動部品に適用することができる。また、上記実施の形態では、ベース部材(ベース部)が鋼からなる場合について説明したが、ベース部材(ベース部)は鋳鉄からなるものであってもよい。
【実施例】
【0069】
(実施例1)
上記実施の形態と同様の形状を有するベース部材および摺動部材を準備し(
図5参照)、上記実施の形態においてピストン本体との結合を省略した手順を実施し、ベース部材と摺動部材とが閉塞摩擦接合により接合された試験片(ピストンシュー)を作製した。そして、当該試験片の組織および硬度を測定する実験を行った。実験結果は以下の通りである。
【0070】
図8は、ベース部2(鋼)と摺動部3(高力黄銅)との接合部付近の金属組織を示す写真である。より具体的には、
図8は、得られた試験片を接合面に垂直な断面で切断し、塩化第二鉄溶液にてエッチングした状態を示している。また、
図9は、
図8のA−1〜4、B−1〜4、C−1〜4およびD−1〜4を拡大して示す光学顕微鏡写真である。
図9の各写真の右上部の数値は、各写真内の結晶粒径(単位:μm)を示している。
【0071】
図8を参照して、ベース部2と摺動部3とは全域にわたって良好に接合されていることが確認される。また、ベース部2の、接合界面に沿った領域には、濃くエッチングされた濃色領域が存在している。
【0072】
図9を参照して、この濃色領域に対応するA−3、B−3、C−3およびD−3の各領域の結晶粒径は、濃色領域外に対応するA−4、B−4、C−4およびD−4に比べて結晶粒径が小さくなっている。
【0073】
このことから、上記実施の形態と同様の方法で製造されたピストンシューには、ベース部接合面を含むように、ベース部の他の領域に比べて結晶粒が小さいベース部接合領域が形成されることが確認される。また、当該ベース部接合領域(濃色領域)の接合面に垂直な方向における厚みは、摺動部品であるピストンシューの内部に比べて表面を含む領域において大きくなっていることが確認される(
図8上部の写真参照)。
【0074】
また、
図8のA、B、CおよびDの各領域の硬度を、接合界面に垂直な方向に測定した。測定結果を
図10に示す。
図10において、横軸は接合界面からの距離を示しており、横軸の値が0である点が接合界面である。また、
図10において横軸の値が負の領域はベース部2(鋼)、正の領域は摺動部3(高力黄銅)に対応する。
図10を参照して、硬度は接合界面を境界として不連続となっている。このことから、ベース部2を構成する鋼と摺動部3を構成する高力黄銅とは、他の物質が介在することなく、直接良好に接合されていることが確認される。
【0075】
また、
図11は、摺動部3の接合界面近傍の硬度分布を示している。
図11を参照して、接合界面からの距離が100μm以内の領域では、接合界面に近づくにしたがって硬度が低下している。すなわち、
図11の測定結果から、摺動部には、摺動部接合面を含むように、摺動部の他の領域に比べて硬度の低い摺動部接合領域が形成されていることが確認される。この低硬度領域である摺動部接合領域と金属組織との対応については、以下に説明する。
【0076】
図12は、銅合金の組織を説明するための光学顕微鏡写真である。また、
図13は、
図8の領域A−1〜2、B−1〜2、C−1〜2およびD−1〜2、すなわち摺動部を構成する高力黄銅の金属組織を示す光学顕微鏡写真である。
図12を参照して、摺動部を構成する高力黄銅は、マトリックスを構成するα相71およびβ相72と、マトリックスよりも高い硬度を有する析出物73とを含んでいる。そして、
図13を参照して、摺動部接合領域内(A−2、B−2、C−2およびD−2の接合界面近傍)の析出物の大きさは、摺動部の他の領域(たとえばA−1、B−1、C−1およびD−1)の析出物の大きさに比べて小さくなっていることが分かる。すなわち、低硬度領域である摺動部接合領域は、析出物の大きさの小さい領域に対応する。また、
図13から明らかなように、摺動部接合領域の厚みは0.2mm以下となっている。
【0077】
さらに、
図13を参照して、摺動部接合領域内の摺動部接合面に接する領域に、析出物が集合した析出物集合部73Aが形成されていることが確認される。また、
図13を参照して、摺動部接合領域(A−2、B−2、C−2およびD−2の接合界面近傍)にはβ相がほとんど見られず、当該領域は他の領域に比べてα相の割合が多くなっていることが確認される。このような摺動部の組織は、以下のように形成されるものと考えられる。
【0078】
図14は、ピストンシューの摺動部内における析出物の分布状態を示す模式図である。上記実施の形態において説明した閉塞摩擦接合の摩擦工程では、ベース部材4が摺動部材5に対して押し付けられつつ回転する。
図14を参照して、高力黄銅からなる摺動部材5の内部には、大型析出物73Bと小型析出物73Cとが存在している。摩擦工程開始前においては、大型析出物73Bと小型析出物73Cとは混在して一様に分布している。そして、摩擦工程の初期においては、摩擦熱により接触面近傍が加熱される。
【0079】
その後、時間の経過とともに摺動部接合領域に対応する摺動部材5の接触面近傍領域82は、摩擦熱により軟化する。その結果、ベース部材4と摺動部材5との接触荷重により接触面近傍領域82が変形し始める。そして、変形が進行する過程において、大型析出物73Bが砕かれて、小型析出物73Cとなる。これにより、接触面近傍領域82内の大型析出物73Bが減少し、小型析出物73Cの割合が多くなる。このとき、変形した摺動部材5の一部は、少量のバリ59としてベース部材4の外周面に付着する。
【0080】
そして、さらに時間が経過すると、摩擦熱により軟化した接触面近傍領域82が完全に変形し、
図14に示すように、変形した接触面近傍領域82内に小型析出物73Cが密集する。その結果、摺動部接合領域内の摺動部接合面に接する領域(A−2、B−2、C−2およびD−2の接合界面近傍)に、微細な析出物が集合した析出物集合部73Aが形成されるものと考えられる。また、このように塑性変形した接触面近傍領域82が軟窒化工程において再加熱されることにより、他の領域に比べてα相の割合が多い摺動部接合領域が形成されるものと考えられる。
【0081】
(実施例2)
本実施の形態と同様の手順により、鋼(JIS規格SCM440H)からなるベース部材と高力黄銅からなる摺動部材とを閉塞摩擦接合により接合した試験片を準備し、せん断試験を実施することにより接合部の強度を確認する実験を行った。試験の手順は以下の通りである。
【0082】
図15は、せん断強度試験の試験方法を説明するための概略断面図である。
図15を参照して、試験片50は、鋼製のベース部材51と高力黄銅製の摺動部材52とが上記実施の形態と同様の閉塞摩擦接合により接合された構造を有している。せん断試験装置60は、試験片を保持する凹部である試験片保持部61Aを有する本体部61と、試験片50に対して荷重を付加する荷重付与部62とを備えている。試験片保持部61Aは、ベース部材51を挿入することにより、摺動部材52のみが試験片保持部61Aから突出する形状を有している。そして、荷重付与部62を矢印γの向きに降下させることにより、ベース部材51と摺動部材52との接合界面に沿った方向に荷重をかけることが可能となっている。試験片は2個準備し、試験片が破断した時点の応力(せん断応力)を算出した(実施例AおよびB)。また、比較のため、ベース部材51と摺動部材52との間に圧粉体を挟んで焼結接合して得られた試験片も準備し、同様に試験に供した(比較例AおよびB)。
【0083】
図16は、せん断強度試験の試験結果を示す図である。
図16を参照して、従来のピストンシューと同様の構造を有する比較例のせん断強度が25.2kgf/mm
2であったのに対し、閉塞摩擦接合により作製した実施例のせん断強度は、29.2〜34.4kgf/mm
2となっていた。この強度は、従来品を大きく上回り、母材強度に比べて遜色ないものである。以上の実験結果から、本発明の摺動部材の製造方法によれば、摺動部がベース部に対して強固に固定された摺動部品を提供できることが確認された。
【0084】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって示された範囲、ならびに請求の範囲と均等な意味および範囲内でのすべての変更、改良が含まれることが意図される。