特許第6159885号(P6159885)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6159885ジロートンクリーム剤形の局所用抗炎症薬学的組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6159885
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】ジロートンクリーム剤形の局所用抗炎症薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/381 20060101AFI20170626BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20170626BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20170626BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20170626BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20170626BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20170626BHJP
【FI】
   A61K31/381
   A61K47/44
   A61K47/10
   A61K47/24
   A61K9/06
   A61P17/00
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-525982(P2016-525982)
(86)(22)【出願日】2014年8月13日
(65)【公表番号】特表2016-534079(P2016-534079A)
(43)【公表日】2016年11月4日
(86)【国際出願番号】KR2014007525
(87)【国際公開番号】WO2015064898
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2016年4月20日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0130165
(32)【優先日】2013年10月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516119298
【氏名又は名称】クリエント カンパニー, リミテッド
【氏名又は名称原語表記】QURIENT CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ナム, キ イェン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジョン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】オ, ス ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ, セ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】アン, ジ イェ
【審査官】 今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/056994(WO,A1)
【文献】 特表2009−527484(JP,A)
【文献】 特表2004−528360(JP,A)
【文献】 特表2004−525169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 31/00−31/80
A61K 33/00−33/44
A61K 47/00−47/69
A61P 1/00−43/00
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分として、
ジロートン(zileuton)0.05〜2重量%;水30〜34重量%;白色ワセリン36〜40重量%;白蝋4〜8重量%;プロピレングリコール16〜22重量%;ホスホリポン(phospholipon)90H(登録商標)2〜6重量%;および保存剤0.005〜0.04重量%;を含むジロートンクリーム剤形の局所用抗炎症薬学的組成物。
【請求項2】
前記活性成分は、ジロートン0.1〜1重量%;水31〜33重量%;白色ワセリン37〜39重量%;白蝋5〜7重量%;プロピレングリコール18〜20重量%;ホスホリポン90H(登録商標)3〜5重量%;および保存剤0.01〜0.03重量%;を含む請求項1に記載のジロートンクリーム剤形の局所用抗炎症薬学的組成物。
【請求項3】
前記保存剤は、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イソブチルパラベン、ブチルパラベン、2−フェノキシエタノール、および4−ヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される1つ以上である請求項1に記載のジロートンクリーム剤形の局所用抗炎症薬学的組成物。
【請求項4】
前記組成物は、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)、にきび(acne)、じんましん(urticaria)、乾癬(psoriasis)、湿疹(eczema)、水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid)のような水疱性皮膚疾患(bullous skin diseases)、膠原病(collagenosis)、シェーグレン・ラルソン(Sjogren−Larsson)症候群、または肥満細胞症(mastocytosis)の皮膚病変のにきび改善または治療のためのものである請求項1に記載のジロートンクリーム剤形の局所用抗炎症薬学的組成物。
【請求項5】
前記組成物は、人体の皮膚に対する局所塗布のためのものである請求項1に記載のジロートンクリーム剤形の局所用抗炎症薬学的組成物。
【請求項6】
前記ジロートンは、ラセミ(racemic)ジロートンである請求項1に記載のジロートンクリーム剤形の局所用抗炎症薬学的組成物。
【請求項7】
活性成分として、ジロートン0.05〜2重量%;水30〜34重量%;白色ワセリン36〜40重量%;白蝋4〜8重量%;プロピレングリコール16〜22重量%;ホスホリポン90H(登録商標)2〜6重量%;および保存剤0.005〜0.04重量%を30〜80℃の温度、600〜1200rpmおよび10〜60分の撹拌条件で混合する段階を含むジロートンクリーム剤形の局所用抗炎症薬学的組成物の製造方法。
【請求項8】
ジロートン0.1〜1重量%;水31〜33重量%;白色ワセリン37〜39重量%;白蝋5〜7重量%;プロピレングリコール18〜20重量%;ホスホリポン90H(登録商標)3〜5重量%;および保存剤0.01〜0.03重量%で混合する請求項7に記載のジロートンクリーム剤形の局所用抗炎症薬学的組成物の製造方法。
【請求項9】
前記保存剤は、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イソブチルパラベン、ブチルパラベン、2−フェノキシエタノール、および4−ヒドロキシ安息香酸からなる群から選択される1つ以上である請求項7に記載のジロートンクリーム剤形の局所用抗炎症薬学的組成物の製造方法。
【請求項10】
混合された活性成分を600rpm以下で、20〜30℃で冷却する段階をさらに含む請求項7に記載のジロートンクリーム剤形の局所用抗炎症薬学的組成物の製造方法。
【請求項11】
前記ジロートンは、ラセミジロートンである請求項7に記載のジロートンクリーム剤形の局所用抗炎症薬学的組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロイコトリエン(leukotriene)によって誘発される皮膚疾患の局所治療のためのジロートン(zileuton)クリーム剤形に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロイコトリエンは、アラキドン酸の代謝産物であって、炎症、浮腫、粘液分泌などに深く関与する炎症因子として知られている。これまで開発されたロイコトリエン阻害剤としては、ジロートン(Zileuton;(±)−1−(1−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)エチル)−1−ヒドロキシ尿素〔(±)−1−(1−(benzo[b]thiophen−2−yl)ethyl)−1−hydroxyurea〕)がある。
【0003】
ジロートンは、立体異性体である(R)−1−(1−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)エチル)−1−ヒドロキシ尿素〔(R)−1−(1−(benzo[b]thiophen−2−yl)ethyl)−1−hydroxyurea〕と(S)−1−(1−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)エチル)−1−ヒドロキシ尿素〔(S)−1−(1−(benzo[b]thiophen−2−yl)ethyl)−1−hydroxyurea〕の混合物であって、喘息疾患の治療適応症に許可されており、経口投与で1日2回投薬することが知られている。これは、臨床によって効果的に喘息の炎症反応を抑制する薬理効果を示すことが知られている。
【0004】
このようなジロートンを経口投与した時、アトピー性皮膚炎患者の症状が緩和される臨床効果が発見された。しかし、ジロートンは、このような優れた炎症抑制効果にもかかわらず広く使われていない状況であり、これは、この化合物が持っている毒性が主な原因である。
【0005】
ジロートンは、肝毒性が激しいため、経口投与の場合、患者の肝機能に関するモニタリングが伴わなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、局所的皮膚炎症反応による疾患、例えばアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)、にきび(acne)、様々な種類のじんましん(urticaria)、乾癬(psoriasis)、湿疹(eczema)、水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid)のような水疱性皮膚疾患(bullous skin diseases)、膠原病(collagenosis)、シェーグレン・ラルソン(Sjogren−Larsson)症候群、肥満細胞症(mastocytosis)の皮膚病変などにジロートンを局所的に適用して薬理効果を極大化するとともに、全身吸収を最小化して、化合物による毒性を最小化するクリーム剤形の局所用薬学的組成物およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、活性成分として、ジロートン0.05〜2重量%;水30〜34重量%;白色ワセリン36〜40重量%;白蝋4〜8重量%;プロピレングリコール16〜22重量%;ホスホリポン(phospholipon)90H2〜6重量%;および保存剤0.005〜0.04重量%を含むクリーム剤形の局所用薬学的組成物を提供する。
【0008】
前記クリーム剤形の局所用薬学的組成物は、より具体的には、ジロートン0.1〜1重量%;水31〜33重量%;白色ワセリン37〜39重量%;白蝋5〜7重量%;プロピレングリコール18〜20重量%;ホスホリポン90H3〜5重量%;および保存剤0.01〜0.03重量%で構成することができる。
【0009】
前記クリーム剤形の局所用薬学的組成物は、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)、にきび(acne)、様々な種類のじんましん(urticaria)、乾癬(psoriasis)、湿疹(eczema)、水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid)のような水疱性皮膚疾患(bullous skin diseases)、膠原病(collagenosis)、シェーグレン・ラルソン(Sjogren−Larsson)症候群、または肥満細胞症(mastocytosis)の皮膚病変のにきび改善または治療のためのものとすることができる。
【0010】
前記クリーム剤形の局所用薬学的組成物は、人体の皮膚に対する局所塗布のためのものであり、前記ジロートンは、ラセミ(racemic)ジロートンとすることができる。
【0011】
また、本発明は、活性成分として、ジロートン0.05〜2重量%;水30〜34重量%;白色ワセリン36〜40重量%;白蝋4〜8重量%;プロピレングリコール16〜22重量%;ホスホリポン90H2〜6重量%;および保存剤0.005〜0.04重量%を30〜80℃の温度、600〜1200rpmおよび10〜60分の撹拌条件で混合する段階を含むクリーム剤形の局所用薬学的組成物の製造方法を提供する。
【0012】
前記クリーム剤形の局所用薬学的組成物の製造方法は、混合された活性成分を600rpm以下、20〜30℃で冷却する段階をさらに含むことができ、前記ジロートンは、ラセミジロートンとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)、にきび(acne)、様々な種類のじんましん(urticaria)、乾癬(psoriasis)、湿疹(eczema)、水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid)のような水疱性皮膚疾患(bullous skin diseases)、膠原病(collagenosis)、シェーグレン・ラルソン(Sjogren−Larsson)症候群、肥満細胞症(mastocytosis)の皮膚病変などに効果的な治療効果を示すジロートンを主成分として含有するクリーム形態の局所用薬学的組成物を提供することができる。
【0014】
前記クリーム形態の局所用薬学的組成物は、ロイコトリエン阻害剤であるジロートンを効果的に皮膚に吸収させ、同時に全身吸収量は最小化する薬動学的プロファイルを有し、化学的・物理的安定性を保有している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る剤形をアトピーマウスモデルに局所塗布して、薬効を検証した実験模式図である。
図2】本発明に係る剤形をアトピーマウスモデルに局所塗布して測定したマウスの耳の厚さである。
図3】ミニブタにおいて、本発明に係る剤形の薬動学的プロファイルの研究結果である。
図4】ミニブタにおいて、本発明に係る剤形の薬動学的プロファイルの研究結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者は、アトピー性皮膚炎、にきびなどに効果的な治療効果を示すジロートンを主成分として含有するクリーム形態の局所製品を提供するために、クリーム剤形に使用される成分のうちのジロートンに適用することができる成分を探し、前記成分のクリーム組成を見つけた後、ジロートンの最適濃度、物理化学的安定性を具現することができる安定化条件を究明することによって、本発明を完成した。
【0017】
したがって、本発明は、活性成分として、ジロートン0.05〜2重量%;水30〜34重量%;白色ワセリン36〜40重量%;白蝋4〜8重量%;プロピレングリコール16〜22重量%;ホスホリポン90H2〜6重量%;および保存剤0.005〜0.04重量%を含むクリーム剤形の局所用薬学的組成物を提供する。
【0018】
前記クリーム剤形の局所用薬学的組成物は、より具体的には、ジロートン0.1〜1重量%;水31〜33重量%;白色ワセリン37〜39重量%;白蝋5〜7重量%;プロピレングリコール18〜20重量%;ホスホリポン90H3〜5重量%;および保存剤0.01〜0.03重量%で構成することができる。
【0019】
最も具体的には、前記クリーム剤形の局所用薬学的組成物は、ジロートン0.1〜1重量%;水32重量%;白色ワセリン38重量%;白蝋6重量%;プロピレングリコール18〜20重量%;ホスホリポン90H4重量%;および保存剤0.02重量%で構成することができる。
【0020】
本発明におけるジロートンは、下記化学式1のような立体異性体である(R)−1−(1−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)エチル)−1−ヒドロキシ尿素〔(R)−1−(1−(benzo[b]thiophen−2−yl)ethyl)−1−hydroxyurea〕と(S)−1−(1−(ベンゾ[b]チオフェン−2−イル)エチル)−1−ヒドロキシ尿素〔(S)−1−(1−(benzo[b]thiophen−2−yl)ethyl)−1−hydroxyurea〕の混合物であって、白色のパウダー形態であり、ラセミジロートンとすることができる。すなわち、本発明は、ラセミジロートンに最適化された活性成分でクリーム剤形を製造したものである。
【0021】
【化1】
【0022】
前記ジロートンは、化学的に合成して使用するか、商業的に購入して用いることができる(Cornerstone Therapeutics Inc.の商品名ZYFLO、ZYFLO CRなど)。
【0023】
本発明のクリーム剤形の局所用薬学的組成物に使用される白色ワセリン(white petrolatum)、白蝋(white wax)、プロピレングリコールおよびホスホリポン90H(phospholipon 90H)は、商業的に購入して用いることができる。
【0024】
前記保存剤として、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イソブチルパラベン、ブチルパラベン、2−フェノキシエタノール、または4−ヒドロキシ安息香酸などを使用することができるが、これに特に制限するものではない。前記保存剤も商業的に購入して用いることができる。
【0025】
本発明に係るクリーム剤形の局所用薬学的組成物は、25〜40℃の条件で4週間、物理的および化学的安定性が維持されることを特徴とする。
【0026】
本発明の一具体例によれば、本発明に係るクリーム剤形の局所用薬学的組成物は、アトピー実験動物モデル(Delayed Type Hypersensitivity Reaction in mouse)で薬効を検証した。アトピー誘発のためにDNFBを利用し、1日3回、マウスの皮膚に塗布した後、薬効を測定し、過量の薬物を最適化されていない試験用ビヒクルであるアセトンを使用して投薬した。実験の結果、本発明に係るクリーム剤形の局所用薬学的組成物を投与したマウスモデルで炎症反応と浮腫による耳の厚さの増加が効果的に抑制され、前記組成物が効果的に炎症抑制作用を誘発することが分かった。
【0027】
全身吸収による薬理効果が含まれているかどうかを究明するために、皮膚吸収および体内吸収パターンを調査した。そのために、ヒトと最も類似した皮膚構造を有するミニブタで皮膚PKを調査した。実験の結果、効果的な皮膚吸収パターンを示したが、体内吸収パターンを示さなかった。すなわち、本発明に係るクリーム剤形の局所用薬学的組成物は、効果的に皮膚吸収を誘導し、体内吸収を最小化して皮膚投薬に適合した剤形であることを確認した。
【0028】
したがって、前記クリーム剤形の局所用薬学的組成物は、ロイコトリエン形成抑制による抗−炎症効果を示すことができ、アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis)、にきび(acne)、様々な種類のじんましん(urticaria)、乾癬(psoriasis)、湿疹(eczema)、水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid)のような水疱性皮膚疾患(bullous skin diseases)、膠原病(collagenosis)、シェーグレン・ラルソン(Sjogren−Larsson)症候群、肥満細胞症(mastocytosis)の皮膚病変などの疾患改善または治療に効果的である。
【0029】
前記にきびは、丘疹性ざ瘡(acne papulosa)、膿疱性ざ瘡(acne pustulosa)、丘疹膿疱性ざ瘡(acne papulopustolosa)および重症炎症性ざ瘡(severe inflammatory acne)からなる群から選択される炎症性ざ瘡であることができる。
【0030】
前記クリーム剤形の局所用薬学的組成物は、人体の皮膚に対する局所塗布のためのものとすることができる。具体的には、1日基準として1回から4回の局所塗布を行うことができる。
【0031】
また、本発明は、活性成分として、ジロートン0.05〜2重量%;水30〜34重量%;白色ワセリン36〜40重量%;白蝋4〜8重量%;プロピレングリコール16〜22重量%;ホスホリポン90H2〜6重量%;および保存剤0.005〜0.04重量%を30〜80℃の温度、600〜1200rpmおよび10〜60分の撹拌条件で混合する段階を含むクリーム剤形の局所用薬学的組成物の製造方法に関するものである。
【0032】
前記クリーム剤形の局所用薬学的組成物の製造方法は、より具体的には、ジロートン0.1〜1重量%;水31〜33重量%;白色ワセリン37〜39重量%;白蝋5〜7重量%;プロピレングリコール18〜20重量%;ホスホリポン90H3〜5重量%;および保存剤0.01〜0.03重量%で混合することを含むことができる。
【0033】
前記クリーム剤形の局所用薬学的組成物の製造方法は、最も具体的には、ジロートン0.1〜1重量%;水32重量%;白色ワセリン38重量%;白蝋6重量%;プロピレングリコール18〜20重量%;ホスホリポン90H4重量%;および保存剤0.02重量%で混合することを含むことができる。
【0034】
前記クリーム剤形の局所用薬学的組成物の製造方法は、混合された活性成分を600rpm以下で、20〜30℃で冷却する段階をさらに含むことができる。
【0035】
前記段階を経て製造されたクリーム剤形は、25〜40℃で4週間、安定性を維持することができ、局所塗布に適合することができる。
【0036】
下記で本発明に係るクリーム剤形の実施例を開示する。ただし、下記実施例は、本発明を例示するものであって、本発明の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【0037】
<実施例>ジロートンクリーム剤形の製造
【0038】
1.クリーム剤形の適合性スクリーニング実験
ジロートンのクリーム剤形を製造するために、一般的に使われるクリーム構成成分との適合性をスクリーニングした。そのために、5mgのジロートン(製品名:Q301)を5mgの賦形剤に溶解させた後、50℃条件で最大4週間までTRS%(Total Related Substances)の変化を観察した。これは、50℃での賦形剤安定性を実験したものである。
【0039】
その結果、下記表1に示すように、ステアリルアルコール(stearyl alcohol)、ホスホリポン90H(phospholipon 90H)、白蝋(white wax)、二酸化チタン(titanium dioxide)、HPMC F4M、カルボマー(carbomer(carbopol 940))、プロピレングリコールステアレート(propylene glycol stearate)、アルミニウムスターチオクテニルコハク酸(aluminum starch octenylsuccinate)が適合し、セテアレス−20(Ceteareth−20)は適合しなかった。
【0040】
【表1】
【0041】
溶液の安定性検査においては、ジロートンを可溶化する溶媒(エタノール、PEG400、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、カプリオール90、ベンジルアルコール、水)との適合性をスクリーニングした。そのために、10mgのジロートンを2mLのビヒクルに溶解させた後、25℃、40℃、70℃条件でTRS%変化を観察した。
【0042】
その結果、下記表2および表3に示すように、大部分の溶媒が25℃条件では、ジロートンと適合したが、40℃または70℃条件では不安定であった。下記表2は、25℃での溶液の安定性実験の結果であり、下記表3は、40℃または70℃での溶液の安定性実験の結果である。
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
2.組成比最適化実験
前記適合性スクリーニング実験において、適合判定を受けた構成成分を組み合わせて加速条件(30℃、40℃)で安定した溶媒およびクリーム剤形成分の組成比をスクリーニングした。
【0046】
そのために、プロピレングリコール、水などの溶媒を除いた残りの成分を表4に記載された組成比に応じて、70℃下で混合した後、残りの溶媒を70℃800rpm以下で30分間撹拌することによって、下記表4の組成比に応じて混合した。混合された剤形は、100rpm以下で撹拌しながら室温まで冷却した。すなわち、下記表4は、最適化された成分比率に関する実験の結果である。
【0047】
【表4】
【0048】
前記表4に示すように、022−4、023−5、028−5、028−6、028−7、029−12、029−14のような適切なクリーム形状を有する組成比を発見した。前記結果から、水、白色ワセリン、白蝋、プロピレングリコール間の含量比率がその範囲内で、臨界的意義を有することを確認した。
【0049】
3.剤形加工方法の最適化実験
前記組成比最適化実験で発見された組成比をもとに、ターゲット薬物濃度(1%)と物理的および化学的安定性を満足させる条件をスクリーニングした。そのために、プロピレングリコール、水などのような溶媒を除いた残りの成分を下記表5に記載された組成比に応じて、70℃下で混合した後、下記表5に記載された混合条件を参考にして、残りの溶媒を70℃800rpm以下で混合した。混合された剤形は、100rpm以下で撹拌しながら室温まで冷却した。
【0050】
物理的安定性は、25℃、30℃または40℃の条件で一定期間放置した後、肉眼で相分離の有無を確認する方式によって測定した。これは、最適化された剤形加工方法を見つけるための実験である。
【0051】
【表5】
【0052】
前記表5に示すように、033−4、033−5、033−6、033−7のように、1%以上の薬物濃度と25℃で良い物理的安定性を有する剤形条件を発見した。また、前記剤形は、エタノールを含んでいないが、これはエタノールが物理的安定性を阻害するためである。
【0053】
次に、剤形加工方法の最適化のための実験として、撹拌時間がクリーム形状に影響を与えるかどうかを知るために、5、30、60分に撹拌時間を変化させて観察した。その結果、表6に示すように、30分の撹拌条件が最適であると確認された。
【0054】
【表6】
【0055】
4.溶媒の最適化実験
1%薬物濃度に合わせるために、過量のプロピレングリコールを使用することが物理的安定性に不利な影響を与えると判断されて、ターゲット薬物濃度を下げ、安定性が高い組成比を見つけようとした。
【0056】
サンプルに対するスケールを高める場合、036−1および040−1剤形は、物理的安定性は低いが、化学的安定性は高かった。したがって、スケールを高めた後の物理的安定性を改善するために、薬物のローディング量を下げた剤形を製造した。そのために062−1剤形を選択し、この剤形をもとに薬物ローディング量を最大1%まで向上させて、物理的安定性は維持しながら、化学的安定性も確保することができる溶媒をスクリーニングした。
【0057】
前記スクリーニング実験は、プロピレングリコール、水などのような溶媒を除いた残りの成分を下記表7に示している組成比に応じて、70℃で混合した後、70℃30分間800rpm以下の撹拌条件で、残りの溶媒を下記表7の組成比に応じて混合した。混合された剤形は、100rpm以下で撹拌しながら室温まで冷却した。
【0058】
化学的安定性は、25℃または40℃条件で一定時間放置した後、LC分析によってTRS%変化を測定する方式で観察した。
【0059】
【表7】
【0060】
前記表7に示すように、溶媒としてNMPとベンジルアルコールをスクリーニングしたが、すべての物理的安定性条件で相分離を示した。また、溶媒としてカプリオール90(capryol90)をスクリーニングしたが、すべての物理的安定性試験条件で相分離を示した。
【0061】
結局、062−1条件で加工方法を変えて、薬物ローディング量を1%に高めて、ターゲット薬物濃度と物理的安定性をすべて満足させる条件のクリーム剤形を発見した。しかし、化学的安定性は、40℃条件で3週間後、有意的なTRS%変化を観察した。
【0062】
また、下記表8に示すように、局所外用剤クリームとしての基準を満足させることができる賦形剤の選択および概略的な組成比を備えた後に、臨界的区間を定めるための実験を行った。
【0063】
【表8】
【0064】
前記表8に示すように、臨界的数値から外れた組成比の賦形剤を使用した剤形の場合、物理的安定性が低下する現象が観察された。すなわち、表8の剤形079−1のように白色ワセリンとプロピレングリコールの組成比がそれぞれ33と25で臨界的数値から外れた場合には、4週目から油相と水相の分離による物理的安定性が低くなる現象が肉眼で観察された。
【0065】
このような実験の結果による候補剤形は、下記表9の通りである。
【0066】
【表9】
【0067】
前記表9に示すように、081−1、081−2剤形は、臨床2相まで開発のための条件は充足させており、最終剤形開発のために062−1の30℃加速条件で化学的安定性を測定する一方、新しい組成比および加工方法を開発しようとした。
【0068】
これにより、下記表10に示すように、プロピレングリコールの含量を最適化して、プロピレンパラベンを保存剤として追加した。その結果、下記表10による組成比のクリーム剤形、089−1、089−2剤形は、30℃加速条件で化学的/物理的安定性を満足させた。
【0069】
【表10】
【0070】
一方、比較例として使用された下記表11の組成比を有するクリーム剤形は、有効な効果を示すターゲット薬物濃度の範疇で30℃加速条件で化学的/物理的安定性が良くないことを確認した。
【0071】
【表11】
【0072】
<実験例1>089剤形を用いたコンセプト研究の証拠
一般的に使用されるマウスを用いたアトピー性皮膚炎動物モデルにおいて、前記実施例の089剤形の皮膚投薬が薬理効果を示すかを究明するための生体内実験を行った。そのために、BALB/cマウスをグループ当たり10匹にして総4グループに分離した。グループは、ビヒクル(アセトン)、陽性対照群(デキサメタゾン0.05mg/ear)、ジロートングループで構成した。前記ジロートングループは、アセトンビヒクルを使用した場合(1mg/ear)と089クリーム剤形の場合(0.2mg/earおよび0.02mg/ear)に分けた。
【0073】
図1に示すように、0日と1日目にすべてのグループに25μlの0.5%DNFB(ジニトロフルオロベンゼン:dinitrofluorobenzene)溶液を1回塗布して、耳に炎症を誘発した。以後、5日目にもう一度20μlの0.3%DNFB溶液を1回塗布して耳に炎症を誘発した。5日目の刺激以後、1時間、6時間、23時間後、デキサメタゾンとジロートンをアセトンビヒクルに溶解させて耳に塗布した。5日目の刺激以後、24時間目になる時点で耳の厚さを測定し、耳の組織を獲得して組織病理学的観察を行った。
【0074】
図2に示すように、ビヒクルとして089剤形を使用したグループがQ301(API:活性医薬成分〔Active Pharmaceutical Ingredient〕)を効果的に皮膚に伝達し、アセトンを使用したグループよりも炎症および浮腫による耳の厚さの増加を効果的に抑制した。
【0075】
組織病理学的観察によってジロートンの優れた炎症抑制作用を観察した。
【0076】
【表12】
【0077】
<実験例2>ミニブタを用いたPK研究実験
前記実験例1において、全身吸収による薬理効果が含まれているかを究明してみる必要がある。最終剤形の皮膚吸収および体内吸収パターンを究明するためには、ヒトと最も類似した皮膚構造を持っているミニブタを使用することができる。したがって、クリーム剤形の開発過程で導出された臨床剤形である089剤形を活用して、ヒトと最も類似した皮膚構造を持っているミニブタで皮膚PKを観察した。
【0078】
そのために、100cmの皮膚に20mgのQ301(API:活性医薬成分〔Active Pharmaceutical Ingredient〕)を089剤形を使用して塗布した。089剤形塗布後、0.25、0.5、1、1.5、2、3、4、6、8時間後に血漿内のジロートンの濃度を測定した。089剤形塗布後、1、8時間後に皮膚のジロートン濃度を測定した。濃度測定時の皮膚層は、表面、皮下、真皮、表皮に分離して測定した。皮下層は、テープ剥離(tape stripping)方法を使用して分離し、strip 1、strip 2−5、strip 6−12、strip 13−24で深さ別に分けて濃度を測定した。実験条件は、表13および表14に示した。
【0079】
【表13】
【0080】
【表14】
【0081】
図3および4に示すように、089剤形は、効果的な皮膚吸収パターンを示した。089剤形は、ミニブタで体内吸収パターンを示さなかった。プロピレングリコールを使用したクリーム剤形は、効果的に皮膚吸収を誘導し、体内吸収を最小化して今後の皮膚投薬のためのジロートンの候補剤形として適合していることが分かる。
【0082】
以上で、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明は、様々な変化と変更および均等物を使用することができる。本発明は、前記実施例を適切に変形して、同一に応用できることが明確である。したがって、前記記載の内容は、下記特許請求範囲の限界によって決まる本発明の範囲を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、ロイコトリエンによって誘発される皮膚疾患の局所治療のためのジロートンクリーム剤形を提供するためのもので、産業上の利用可能な発明である。
図1
図2
図3
図4