特許第6159912号(P6159912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 青木 一彦の特許一覧

<>
  • 特許6159912-淡水製造装置 図000002
  • 特許6159912-淡水製造装置 図000003
  • 特許6159912-淡水製造装置 図000004
  • 特許6159912-淡水製造装置 図000005
  • 特許6159912-淡水製造装置 図000006
  • 特許6159912-淡水製造装置 図000007
  • 特許6159912-淡水製造装置 図000008
  • 特許6159912-淡水製造装置 図000009
  • 特許6159912-淡水製造装置 図000010
  • 特許6159912-淡水製造装置 図000011
  • 特許6159912-淡水製造装置 図000012
  • 特許6159912-淡水製造装置 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6159912
(24)【登録日】2017年6月16日
(45)【発行日】2017年7月5日
(54)【発明の名称】淡水製造装置
(51)【国際特許分類】
   E03B 3/28 20060101AFI20170626BHJP
【FI】
   E03B3/28
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-255928(P2016-255928)
(22)【出願日】2016年12月28日
【審査請求日】2016年12月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517002982
【氏名又は名称】青木 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104307
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 尚司
(72)【発明者】
【氏名】青木 一彦
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−038926(JP,A)
【文献】 特開2014−125872(JP,A)
【文献】 特開2004−313842(JP,A)
【文献】 特開2010−209586(JP,A)
【文献】 特表平10−508350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 1/00〜 11/16
B01D 53/26〜 53/28
C02F 1/28
B01D 1/00〜 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ密閉された空間を形成し得る筐体と、
前記筐体内に出し入れされる水分凝縮体と、
前記筐体内で前記水分凝縮体から排出された水を含む気体を冷却して淡水として回収する水分回収機構と、
を備え、
前記筐体は前記水分凝縮体を出し入れする1以上の開閉可能な開口部を有し、
前記水分回収機構は、
前記筐体外に備えられた熱交換器と、
前記空間内で排出された水分を含む気体を前記熱交換器に供給する排気路と、
前記空間内に前記水分回収機構で水分が除去された気体を供給する給気路と、を有する淡水製造装置。
【請求項2】
ほぼ密閉された空間を形成し得る筐体と、
前記筐体内に出し入れされる水分凝縮体と、
前記筐体内で前記水分凝縮体から排出された水を含む気体を冷却して淡水として回収する水分回収機構と、
を備え、
前記筐体は前記水分凝縮体を出し入れする1以上の開閉可能な開口部を有し、
前記水分回収機構は、
前記空間内に気体を送る供給装置と、
前記空間内に排出された水分を含む気体を回収する回収バルーンと、を有する淡水製造装置。
【請求項3】
前記水分凝縮体を前記筐体内から出し入れする搬入出機構を備えた請求項1又は2に記載の淡水製造装置。
【請求項4】
前記水分凝縮体を、前記筐体内と、前記筐体外において水分凝縮体と空気を接触し得る吸湿域との間で搬送する搬送機構を備えた請求項1〜3の何れか1項に記載の淡水製造装置。
【請求項5】
ほぼ密閉された空間を形成し得る筐体と、
前記筐体内に出し入れされる水分凝縮体と、
前記筐体内で前記水分凝縮体から排出された水を含む気体を冷却して淡水として回収する水分回収機構と、
を備え、
前記筐体は前記水分凝縮体を出し入れする1以上の開閉可能な開口部を有し、
前記水分凝縮体を、前記筐体内と、前記筐体外において水分凝縮体と空気を接触し得る吸湿域の間で搬送する無端軌道式の搬送機構を備えた淡水製造装置。
【請求項6】
前記吸湿域の少なくとも一部が、太陽光の遮光下にある遮光域に設けられた請求項4又は5に記載の淡水製造装置。
【請求項7】
前記水分回収機構は、
前記筐体外に備えられた熱交換器と、
前記空間内で排出された水分を含む気体を前記熱交換器に供給する排気路と、
前記空間内に前記水分回収機構で水分が除去された気体を供給する給気路と、
を有する請求項5に記載の淡水製造装置。
【請求項8】
当該水分回収機構は、
前記空間内に気体を送る供給装置と、
前記空間内に排出された水分を含む気体を回収する回収バルーンと、
を備えた請求項5に記載の淡水製造装置。
【請求項9】
前記吸湿域の少なくとも一部が、太陽光の遮光下にある遮光域に設けられた請求項7又は8に記載の淡水製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は淡水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気中の水分をゼオライトのような多孔質材からなる水分凝縮体に吸着させた後、水分凝縮体から水分を排出させることで淡水を得る装置が、例えば特許文献1や特許文献2に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された装置は、ほぼ密閉した空間を形成する筐体内に配置され、複数の通気路を有する水分凝縮体と、前記通気路の一部に当該通気路に気流を作る気流発生手段を備えている。この装置では、筐体外から外気が残る通気路に供給されることで外気に含まれる水分が水分凝縮体に吸着され、吸着された水分が水分凝縮体内を移動して、ヒータなどの気流発生手段を備えた通気路から排出される。排出された水分を含む空気が筐体の内壁面で冷却されることで得られた結露水が淡水として回収される。
【0004】
特許文献2に開示された装置は、ほぼ密閉した空間を形成する筐体と、筐体内に配置された水分凝縮体と、水分凝縮体から排出された水分を含む空気を冷却して結露水として回収する水分回収機構を備えている。この装置では夜間に筐体を開放し、空気に含まれる水分を水分凝縮体に凝縮させる。その後、昼間に筐体をほぼ密閉状態にし、太陽光を利用して水分凝縮体から水分を排出させると同時に、排出された水分を含む空気を筐体と熱交換器の間で循環させることで結露水が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−209586号公報
【特許文献2】特開2014−125872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の淡水製造装置は、水分凝縮体内を水分が移動するという水分凝縮体の性質を利用するために水分の回収効率はその水分移動特性に制約される。このために、水分凝縮体の吸湿能力の他に水分移動特性を考慮しなければ十分な量の淡水を回収できない。また、水分凝縮体の吸湿能力を高めても水分移動特性が良好でなければ十分な量の淡水を回収できなかった。そして、砂漠においては昼間時の空気中の水分量は夜間に比べて少ない。従って、気流発生手段を備えるために昼夜を問わず淡水を回収できると言っても昼間の水分回収量は少なく、気流発生手段の電力消費エネルギーを鑑みると淡水の回収効率は悪く、水分凝縮体の吸湿能力を十分に活かしているとは言えない。
【0007】
一方、特許文献2の淡水製造装置は、夜間に水分凝縮体に水分を吸着させ、それを昼間の太陽エネルギーで排出させているので、水分凝縮体の水分移動特性を考慮する必要はない。ところが、昼夜を問わず筐体内に水分凝縮体が置かれた状態にあるので、昼間における水分の回収量は夜間における水分吸着量に依存する。このため、夜間における水分吸着量が少なければ、高い吸湿能力を有する水分凝縮体を用いても水分の回収量の増大には結びつかず、水分凝縮体の吸湿能力を十分に活かすことができなかった。
【0008】
本願発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであって、本願発明が解決するための課題は、水分凝縮体の吸湿能力をできるだけ最大限に活用し、さらに効率良く空気中から淡水を回収するための装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明では、ほぼ密閉された空間を形成し得る筐体に、水分凝縮体を出し入れするための1以上の開口部を設け、水分凝縮体を出し入れできる構造にした。
【発明の効果】
【0010】
本願発明に係る淡水製造装置は、ほぼ密閉された空間を形成し得る筐体に水分凝縮体を出し入れするための1以上の開口部が設けられている。このため、水分凝縮体から水分を排出する空間(排湿域)と、水分凝縮体に水分を吸着させる空間(吸湿域)を分離して、水分凝縮体と空気を接触させる吸湿時間を水分凝縮体から水分を排出させる排湿時間よりも長くすることができる。この結果、水分凝縮体への水分吸着量が増加し、昼間における淡水の排出量(回収量)が増加する。また、水分を回収するための冷却時には、水分凝縮体を筐体外に取り出せるので、水分凝縮体への再吸着が防止される。これにより、排出された水分をほぼもれなく回収され、得られる淡水量が増加する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本願発明の第1の実施例である淡水製造装置の概略構成図である。
図2図2図1に示す淡水製造装置の一部を示す概略構成図である。
図3図3図1に示す淡水製造装置で用いられる水分凝縮体の収容容器を示す図である。
図4図4図1に示す淡水製造装置における水分回収方法を示す説明図である。
図5図5は本願発明の第2の実施例である淡水製造装置の概略構成図である。
図6図6図5に示す淡水製造装置から水分凝縮体が搬出された際の状態を示す図である。
図7図7は本願発明の第3の実施例である淡水製造装置の概略構成図である。
図8図8図7に示す淡水製造装置の使用方法を示す説明図である。
図9図9は本願発明の第4の実施例である淡水製造装置の概略構成図である。
図10図10図9に示す淡水製造装置の使用方法を示す説明図である。
図11図11は本願発明の第5の実施例である淡水製造装置の概略構成図である。
図12図12図11に示す淡水製造装置の使用方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願発明に係る淡水製造装置は、ほぼ密閉された空間を形成し得る筐体と、前記空間内に出し入れされる水分凝縮体と、前記空間内で前記水分凝縮体から排出された水を含む気体を冷却して淡水として回収する水分回収機構と、を備え、前記筐体は前記水分凝縮体を出し入れする1以上の開閉可能な開口部を有する。
【0013】
水分凝縮体は、空気中の水分を吸着し、周囲又はそれ自体の温度上昇に伴って吸着した水分を排出する機能を果たし、係る機能を発揮する水分脱着素材から作製される。水分脱着素材は係る機能を発揮する素材であれば限定されず、例えば、特許文献1や2に開示された多孔質材が例示される。より具体的に例示すれば、当該材質として、石灰石や黒曜石、トルマリンのような電気石、軟石、火山石などの自然石、シリカ、珪藻土、鹿沼土、フライアッシュ、ゼオライト、石灰岩、粘土、玄武岩、ガラス、金属、セラミック、高分子収着剤、コークス、木炭(備長炭)、メタルシリケート、シリカゲルなどが示される。これらのうち、吸着放出のよいフライアッシュ、珪藻土、シリカゲル、ゼオライトが好ましく用いられる。また、ここにいう金属として、例えば鉄、銅、ニッケル、ステンレス鋼、アルミ合金などが例示される。また、高分子吸着剤として、デンプン系吸着剤やセルロース系吸着剤、ポリアクリル酸塩系吸着剤、ポリビニルアルコール系吸着剤、ポリアクリルアミド系吸着剤、ポリオキシエチレン系吸着剤、ポリアクリル酸ナトリウム系吸着剤などが例示される。もっとも、これらの素材に限られないのはいうまでもない。
【0014】
本願発明においては、水分凝縮体の形状(形態)は筐体内への出し入れを考慮して適宜決定され得る。例えば、特許文献1や2に記載されたような柱状など所定の形状に成型加工された水分凝縮体や粒状の水分凝縮体、成型加工前の粉体状の水分凝縮体が用いられるが、好ましくは粒状の水分凝縮体である。粒状の水分凝縮体は、所定の形状に加工された水分凝縮体に比べて実質的な比表面積が大きく、その吸湿能を十分に活かすことができるだけでなく、加工コストも安価になる。
【0015】
筐体は開口部が閉じられた際にほぼ密閉され得る空間を有する。空間は完全に密閉された状態に保たれることが望ましいが、本願発明では、水分凝縮体から排出された水分を含む空気がほぼ内部に留めておける程度に密閉されていればよい。筐体の壁面には、筐体内部の空間や水分凝縮体が太陽光の輻射熱で暖められるように、太陽光の輻射熱が透過できる強化ガラスや強化プラスチックなどが好ましく用いられる。
【0016】
筐体は1つ以上の開口部を有し、水分凝縮体を出し入れできるように開閉可能となった開閉扉が開口部に備えられる。なお、本明細書において、水分凝縮体を出し入れすることには、水分凝縮体を搬入することや水分凝縮体を搬出することのいずれか一方のみを意味する場合も含まれる。すなわち、1つの開口部が水分凝縮体の搬入や搬出のいずれか一方にのみ利用される場合や、その双方に利用される場合もあり得る。開口部が設置される箇所や開口部の個数は特に限定されることはなく、水分凝縮体を出し入れする方法により適宜定められる。例えば、出し入れが無端軌道式の搬送機構で行われる場合であれば、1つの開口部が対向する筐体側面にそれぞれ設けられる。また、出し入れがいわゆる自動倉庫で用いられるクレーンのような搬入出機構で行われる場合であれば、筐体側面の1箇所又は対向する側面のそれぞれ1箇所に設けられる。ホースのような中空導管で出し入れが行われる場合には、筐体の上面に1つ又は複数の開口部が設けられる。ジャッキやテーブルリフタのような持ち上げ機構で行われる場合には、1つ又は複数の開口部が筐体の底面に設けられ、また、底面全体が開口部となり得る。さらには、筐体の上面に搬入口となる1つの開口部と、筐体の底面に搬出口となる1の開口部が備えられる場合もある。
【0017】
筐体内には好ましくは水分凝縮体が収容される容器又は水分凝縮体が配置される架台が備えられ得る。粒状や粉状の水分凝縮体であれば容器が用いられ、柱状体の水分凝縮体のように成型加工された水分凝縮体であれば載置される架台が用いられる。水分凝縮体が収容又は載置され得る限りそれらの形状は特に制限もなく、水分凝縮体の形態や水分凝縮体を出し入れする方法によって適宜定められる。例えば、無端軌道式の搬送機構が用いられる場合、無端軌道が架台としての機能を果たす。クレーンのような搬入出機構が用いられる場合では、上下左右に多数の載置部が配列された保持棚(ラック)が用いられる。載置部には、水分凝縮体が直接載置され、あるいは水分凝縮体が載置されたパレットや水分凝縮体が収容された容器が配置される。容器や架台は筐体内に固定されるか、取り出し可能に筐体内に設置され得る。また、架台や容器が備えられることなく、筐体の底面や開口部の開閉扉が架台として利用され得る場合もある。例えば、持ち上げ機構が用いられた場合には、水分凝縮体は底面の開閉扉に直接載置され得る。
【0018】
水分凝縮体は、筐体外の吸湿域において空気と接触される。本明細書において吸湿域とは、水分を含む空気と水分凝縮体が接触することで水分凝縮体に水分を吸着させるための空間を意味し、筐体外の任意の箇所である。吸湿域は、空気と接触させる領域であればよく、静止状態で水分凝縮体と空気を接触させる領域でもあり、移動する水分凝縮体と空気を接触させる領域でもあり得る。吸湿域は閉じられた空間でもあり得るが、好ましくは開放された空間である。前者であれば、吸湿域となる閉じられた空間内に水分を含む空気を供給する装置が必要となるが、後者であれば水分を含む大気下に放置するだけでよいからである。また、吸湿域の一部又はその全てが好ましくは太陽光の遮光下にある遮光域であることが好ましい。遮光下であるとは太陽光が水分凝縮体に直接当たらないことを意味する。直射日光による水分凝縮体からの排湿量を少なくするためである。吸湿域における接触は夜間に限られず、好ましくは昼夜を問わず数日間、望ましくは水分凝縮体の吸湿能の限界近くまで行われる。
【0019】
水分を吸着した水分凝縮体は筐体内に入れられ、太陽光が照射することで水分凝縮体から水分が排出され、筐体内の湿度が高められる。湿度が上昇した筐体内の気体は水分回収機構にて冷却され、淡水として回収される。水分回収機構は水分を含む気体を冷却して淡水を回収できる構造であれば特に限定されない。水分回収機構は、前記筐体外に備えられる機構でもあり、筐体内に淡水として回収される機構でもあり得る。
【0020】
筐体外に備えられる水分回収機構として、例えば熱交換器(冷却器)を備えた水分回収機構が示される。この水分回収機構は、筐体から水分を含む気体を熱交換器に送る排気路と、熱交換器にて水分が除去された気体を筐体内に送る給気路を備え、筐体と熱交換器の間で循環路が構成される。熱交換器は、例えば地中に配置され、砂漠における地下の冷熱により水分を含む気体を冷却する。また、筐体の空間内に気体を供給する気体供給装置と、筐体の空間内に排出された水分を含む気体を回収する回収バルーンを備えた水分回収機構が示される。例えば回収バルーンは筐体の一端に備えられ、気体供給装置は他端に備えられる。気体供給装置は筐体内に気体を供給して、水分凝縮体から排出された水分を含む筐体内の気体を回収バルーンに排出させる。筐体内に供給される気体は大気(気体供給装置周辺の空気)であり、除湿された空気であり、窒素ガスのような単離されたガスなどの気体でもあり得る。気体供給装置は、給気路を介して筐体内部と接続された補給バルーンであり、コンプレッサなどの送風装置でもあり得る。回収バルーンと筐体間の排気路上と、気体供給装置と筐体間の給気路上にはそれぞれ開閉バルブが備えられる。排出された水分を含む気体の回収前は、回収バルーンは気体がほぼ排出された状態に維持される。気体供給装置から気体が筐体内に送られると、水分凝縮体から排出された水分を含む筐体内の気体が回収バルーンに送られる。回収バルーンが夜間の冷気で冷却されると回収バルーン内部に結露水が生じる。
【0021】
筐体内部において水分が回収される機構として、筐体全体が夜間の冷気で冷却されることで筐体内に結露水が生じる水分回収機構が示される。この場合、筐体全体の冷却効率を高めるために、筐体に例えば冷却フィンが備えられ得る。
【0022】
筐体に水分凝縮体を入れた状態で水分を回収することもできる。また日没前、好ましくは筐体内外の温度が高い時間帯に筐体から水分凝縮体が取り出される。筐体内に排出された水分が水分凝縮体に再吸着されるのを防ぐためである。
【0023】
本願発明の淡水製造装置は筐体内へ水分凝縮体を出し入れするための搬入出機構を含み得る。搬入出機構は、筐体の開口部に水分凝縮体を搬入出できる機構であれば特に制限されない。また、本明細書において水分凝縮体を出し入れすることには、水分凝縮体の搬入や水分凝縮体の搬出のいずれか一方のみを意味する場合も含まれる。搬入出機構も水分凝縮体の搬入専用の機構であり、搬出専用の機構であり、搬入出の双方に利用される機構でもあり得る。搬入出機構は、例えば、ローラコンベアやベルトコンベアのような無端軌道を用いた搬送装置であり、クレーンであり、ジャッキであり、リフタであり、昇降のみを行うテーブルリフタであり、油圧ショベルであり得る。クレーンは、水分凝縮体を昇降し、かつ水平方向にも搬送する機構である。ジャッキは、水分凝縮体を昇降する機構であり、リフタは水分凝縮体を上下に昇降し、かつ水平方向にも移動する機構である。油圧ショベルは、先端にバケットやグラップルが取り付けられたアームにより水分凝縮体を移動する機構である。また、搬入出機構は、ホースのような中空の導管を備えた搬入出装置でもあり得る。導管を用いた搬入出機構は、水分凝縮体をポンプなどの送出機構によって導管を介して筐体内に搬入し、吸引ポンプなどの吸引機構によって導管を介して筐体外に搬出する。これらの機構は、水分凝縮体のみを搬入出する機構でもあり、架台や容器と共に水分凝縮体を搬入出する機構でもあり得る。
【0024】
さらに本願発明の淡水製造装置は筐体から搬出された水分凝縮体や筐体に搬入する水分凝縮体を、筐体近傍や搬入出機構と吸湿域との間で搬送する搬送機構を含み得る。搬送機構は、例えば、ローラコンベアやベルトコンベアを用いた搬送装置であり、前記クレーンであり、前記リフタであり、前記油圧ショベルであり、中空の導管を備えた搬入出装置でもあり得る。好ましく用いられる搬送機構は、前記の搬入出機構を兼ね備えたものである。搬送機構は、筐体内から搬出された水分凝縮体を吸湿域に移動し、吸湿域で水分を吸着した水分凝縮体を筐体近傍若しくは筐体内に移動する。
【0025】
このように本願発明の淡水製造装置は、筐体に水分凝縮体を出し入れできる開口部を備えているので、水分凝縮体に水分を吸着させる吸湿域と、水分凝縮体から水分を排出させる排湿域を明確に区分できる。このために、昼夜のサイクルを問わず筐体外において水分凝縮体に十分な量の水分を吸着させ、筐体内において吸着した水分を排出させることができる。その結果、水分凝縮体の吸湿能を十分に活用して、1日でより多くの淡水量を得ることができる。言い換えると、本願発明の淡水製造装置は、筐体内で排湿させる水分凝縮体を交換することにして、筐体外で水分を含んだ空気との接触時間をより長く確保できるようにした装置である。そして、夜間の冷気を利用して筐体全体を冷却することで、水分凝縮体が搬出された筐体内に結露水を集めることができる装置でもある。もちろん、水分凝縮体が収められた状態で結露水を得ることもできる。
【0026】
以下、本願発明の淡水製造装置について下記の実施例に基づいてさらに具体的に説明する。なお、本願発明の淡水製造装置は下記の実施例に限られないのは言うまでもない。
【実施例1】
【0027】
図1は本願発明の第1の実施例に係る淡水製造装置1を示す概略構成図であり、図2は当該淡水製造装置1の一部を示す概略構成図である。淡水製造装置1は、直方体状の筐体10と、粒状の水分凝縮体20と、水分凝縮体20を搬送する無端軌道式のコンベア30を備える。筐体10はほぼ密閉状態に維持され得る内部空間11を有する。筐体10の壁面は強化ガラスなどの太陽光を透過する素材から作製されている。筐体10の対向する側面にはそれぞれ開閉扉14が備えられた開口部12,13が1つずつ設けられている。コンベア30は無端軌道31上を移動する連続して備えられた複数の架台32を有し、無端軌道31の駆動により架台32が順送りされる。1つの架台32には水分凝縮体20が収容される1つの容器21が載置され、容器21は架台32から取り外し可能となっている。当該容器21は図3に示すように金属製の枠部材を有し、その上面は開口され、その他の周面及び底面が金網のような網目部材から作製されている。無端軌道31上には容器21が載置されていない架台32が複数個連続して配置された非載置領域33が設けられる。排出された水分の回収する際に筐体10内に水分凝縮体20が搬入されないようにするためである。無端軌道31の長さや非載置領域33が設けられる数や長さは、筐体10外において吸湿させる時間や後述する吸湿域40までの距離、筐体10の長さなどによって適宜調節される。
【0028】
無端軌道31の一部は、搬入口となる一方の開口部12から搬出口となる他方の開口部13を通過して筐体10内に設置されている。開閉扉14が閉じられた状態でも無端軌道31上の架台32のみが移動できるように開口部12,13は備えられている。残る無端軌道31は筐体10外に設置され、筐体10の内外で循環する無端軌道31が形成されている。コンベア30は手動又は動力で架台32を移動させる手動制御式のコンベア30でもあり、自動制御により架台を移動させる自動制御式のコンベア30でもあり得る。自動制御式のコンベア30であれば、コンベア30の無端軌道31の移動を自動的に制御する制御部(図示せず)を備える。制御部は、好ましくは水分凝縮体20が夜明け前後から日没前後までの間筐体10内に滞留し、筐体10から搬出された水分凝縮体20が2〜5日間程度吸湿域40に滞留するように架台32の移動を制御する。また、制御部は、2つの開閉扉14の開閉を制御する。
【0029】
筐体10外の無端軌道31の上方には、その一部分に直射日光を遮る遮蔽物41が備えられ、当該遮蔽物41の下方は遮光域42となっている。遮光域42を除いては、無端軌道31の周囲は開放されており、筐体10内を除く無端軌道31上は遮光域42を含めて水分凝縮体20が大気と接触して大気中の水分を吸着する吸湿域40となっている。遮蔽物41は、例えば布製のシートであり、木製やスレート製の板状材、建物などの設置物でもあり、木などの自然物などでもあり得る。筐体10外に搬出された水分凝縮体20は吸湿域40において大気と接触し、主として夜間において大気中の水分を吸着する。
【0030】
開口部12,13が開閉扉14により閉じられた際は筐体10内がほぼ密閉された状態に維持される。複数個の水分凝縮体20が適宜の間隔で筐体10内外の無端軌道31上に配置され、1乃至数個(図示するものでは4個)の水分凝縮体20が1度の回収の際に搬入側の開口部12から筐体10内に搬送され、搬出側の開口部13から筐体10外に搬出される。
【0031】
水分回収機構50は、筐体10の対向する側面の一方に備えられた補給バルーン51と、その対向する側面に備えられた回収バルーン52を含む。補給バルーン51は開閉バルブ53を備えた給気路54により筐体10の内部空間11に接続されている。補給バルーン51は筐体10内の気体を回収バルーン52に送り出すのに十分な容量を有し、回収バルーン52は筐体内10内の気体を回収するのに十分な容量を有する。回収バルーン52は開閉バルブ55と排気ポンプ56を備えた排気路57により筐体10の内部空間11に接続されている。水分凝縮体20から排出された水分を含む気体の回収前は、給気路54上の開閉バルブ53は閉じられており、補給バルーン51は空気で充満された状態に保たれている。排気路57上の開閉バルブ55も閉じられており、回収バルーン52は排気された状態に保たれている。
【0032】
気温が上昇する前の夜明け前後に、吸湿域40において吸湿した数個(図示するものでは4個)の水分凝縮体20は容器21に収容された状態でコンベア30によって、搬入側の開口部12から筐体10内に搬入される。搬入後は、2つの開口部12,13は共に閉じられて筐体10の内部空間11はほぼ密閉された状態に保たれる(図4(a))。その状態で放置すると、太陽光の輻射熱により水分凝縮体20から水分が排出され、筐体10内部の湿度は高まる。その後、水分凝縮体20からの排出が終わった頃、好ましくは気温が低下する日没までに、搬出側の開口部13から水分凝縮体20が収容された容器21が搬出され、搬出された後に搬出側の開口部13は閉じられた状態に保たれる。このとき、容器21が載置されていない架台32が数個連続した非配置領域33が筐体10に位置して、筐体10内には吸湿した水分凝縮体は存在しない。
【0033】
次いで、排気路57上の開閉バルブ55と給気路54上の開閉バルブ53が開かれ、排気ポンプ56の作動により補給バルーン51から空気が筐体10に供給されると共に回収バルーン52に筐体10内の空気が排出される。回収バルーン52に十分な量の気体が充満した頃に、排気路57上の開閉バルブ55と給気路54上の開閉バルブ53が閉じられる(図4(b))。その後、回収バルーン52は排気路57に取り付けられた状態で放置され、回収バルーン52は夜間の冷気により冷却される。この結果、水分凝縮体20から排出された水分は結露水として回収され、得られた淡水は回収バルーン52から取り出されるとともに、回収バルーン52内部の気体は排出される(図4(c))。一方、補給バルーン51には図示されないポンプにより気体が供給される。
【0034】
一方、筐体10から搬出された水分凝縮体20は、筐体10外である吸湿域40に移動して主として夜間に水分を吸着する。そして、好ましくは水分を吸着した水分凝縮体20は容器21に入れられた状態で翌日の昼間頃には遮光域42に移動される。遮光域42では、直射日光が遮られるので直射日光による水分凝縮体20からの排湿が抑えられる。その後、再び夜間になれば遮光域42又は遮光域42外の吸湿域40において水分凝縮体20は大気中の水分を吸着する。こうして幾日か分の昼夜を経て、上記のように再び筐体10内に搬入される。この結果、水分凝縮体20の吸湿能を最大限に活かすことができ、日中に回収できる水分量を増大させることができる。特に、吸排湿能が大きいとされるB型シリカゲルを用いれば、1日で十分な量の淡水を得ることができる。
【0035】
上記の説明では、筐体10内で排湿させた水分凝縮体20を筐体10外に搬出させた後に、筐体10内の空気を回収バルーン52に回収させることで、水分凝縮体20への再吸着を防止している。もっとも、搬出のために筐体10内の水分を多く含む気体が多量に筐体10外に排出されるおそれもあり、回収量が減少することもあり得る。その場合には、昼間に排湿させた水分凝縮体20を筐体10外に搬出させることなく筐体10内の空気を回収バルーン52に回収し、その後に水分凝縮体20を筐体外に搬出してもよい。また、当該装置1では架台32を備えないベルトやローラを用いたコンベア30も用いられ得る。そして、筐体10外にある無端軌道31の上方全てに遮蔽物41を配置したり、筐体10から搬出された水分凝縮体20を直ちに遮光域42に移動してもよい。
【実施例2】
【0036】
図5は第2の実施例である淡水製造装置1の概略構成図である。当該淡水製造装置1は、直方体状の筐体10と、複数個の容器21に収容された水分凝縮体20と、水分凝縮体20を筐体10内に搬入出するリフト機構60と、地表面下に配置された熱交換器71を有する水分回収機構70とを備えている。筐体10は支持体15により地表から持ち上げられた状態に支持され、底面に複数(図示するものでは4つ)の開口部16を備えている。この開口部16はそれぞれ水分凝縮体20の搬入口と搬出口を兼ねている。筐体10の内部において開口部16の周囲には、ゴムパッキンなどの封止部材22が備えられている。筐体10には、水分凝縮体20を筐体10に搬入した際にそれぞれの開口部16を塞いで底面の一部を形成する複数(図示するものでは4つ)の板状の架台18が設けられている。リフト機構60は、架台18を載せる1つの支持台61と支持台61を上下させる2つのジャッキ62を備えている。水分凝縮体20は実施例1と同様な透湿性(網目状)の容器21に収容されている。各架台18には水分凝縮体20が入った1つの容器21が配置され、容器21の下端周縁に位置する箇所にはゴムパッキンなどの封止部材17が備えられている。また、水分凝縮体20を筐体10から搬出した際に、それぞれの開口部16を塞ぐ天板19が筐体内10に備えられている。天板19は太陽光の輻射熱が透過できるガラス(強化ガラス)や強化プラスチックなどから作製されている。図5に示すように、容器21(水分凝縮体20)を架台18に乗せた状態で支持台61を上昇させると、容器21(水分凝縮体20)の上面が天板19を押し上げる。水分凝縮体20が筐体10内に納められると架台18上の封止部材17が筐体10の底面と当接し、筐体10の内部空間11がほぼ密閉した状態に保たれる。また、図6に示されるように水分凝縮体20を筐体10から取り出した際には、天板19が筐体10の底面の封止部材22と当接し、筐体10の内部空間11がほぼ密閉した状態に保たれる。なお、開口部16周囲の密閉部材22は、天板19の下面に備えることとしてもよい。
【0037】
この装置1における水分回収機構70は、筐体10と熱交換器71の間に設けられた排気路72と、熱交換器71と筐体10の間に設けられた給気路73を有し、筐体10と熱交換器71の間で気体が循環する循環路74が構成されている。循環路74には気体を循環させる循環ポンプ75が備えられている。筐体10内で水分凝縮体20から排湿された水分を含む気体は排気路72を通って熱交換器71に送られる。熱交換器71で水分が回収された後の気体は給気路73を通って筐体10内に送られる。
【0038】
筐体10外は吸湿域となっており、筐体10の近傍には遮蔽物41により直射日光が遮られた遮光域(図示せず)が設けられている。容器21に収容された水分凝縮体20は水分凝縮体20が容器21に収容された状態で数日間水分を含んだ空気(外気)と接触される。その後、気温が上昇する前の夜明け前後に、フォークリフトなどの搬送機構(図示せず)によって水分凝縮体20が収容された容器21は支持台61に載置された架台18上に搬送、載置された後に、リフト機構60によって持ち上げられて筐体10内に納められる。また、水分凝縮体20が搬入されると循環ポンプ75を稼動して、筐体10内の気体を熱交換器71に送る。その後、太陽光の輻射熱により水分凝縮体20から水分が排出されると、この水分を含む気体は熱交換器71で冷却され、得られた結露水は淡水として汲み上げポンプ76により回収される。この装置では、水分凝縮体20から排出された水分は直ちに熱交換器71により冷却されるので、水分凝縮体20に再吸着される水分量が抑えられ、水分凝縮体20から排出される水分のほぼ全量が淡水として回収され得る。そして、日没前の筺体10内部の湿分が最高に高くなった時にのみ、循環ポンプ75を稼動することにすれば循環ポンプ75の消費電力量を低減できる。
【0039】
また、当該装置1においても、水分凝縮体20からの排湿が終わった頃、好ましくは気温が低下する日没までに開口部16から水分凝縮体20が入った容器21を搬出した後に、水分回収機構70により水分を回収することもできる。つまり、水分凝縮体20を搬出した後に、開口部16を架台18で閉じた状態に保ち、循環ポンプの稼動により筐体10内の水分を多く含む気体は熱交換器71で冷却して、水分を回収する。
【実施例3】
【0040】
図7はさらに別な実施例である淡水製造装置1の概略構成図である。この筐体10はその上面に水分凝縮体20を搬入出するための複数(図示するものでは3つ)の開口部16を備えている。開口部16にはそれぞれ開閉可能な開閉扉14が備えられており、開閉扉14により開口部16が閉じられた状態では筐体10の内部空間11はほぼ密閉状態に保たれる。この淡水製造装置1では、容器21は筐体10内に据え置かれている点で、実施例1や実施例2の淡水製造装置1と異なっている。実施例3の淡水製造装置1における水分回収機構50は実施例1と同様に補給バルーン51と回収バルーン52などを備えている。また、筐体10の近傍には図示しない遮蔽域が設けられ、当該遮蔽域には複数個の吸湿用容器(図示せず)が備えられている。吸湿用容器は、例えば網目部材から作製された透湿性を有する容器であり、その大きさや個数は適宜定められ、筐体10から搬出された水分凝縮体20は吸湿用容器に入れられた状態で、好ましくは遮蔽域にて数日間放置される。
【0041】
淡水製造装置1は、中空導管であるホース35と、ホース35を介して粒状の水分凝縮体20を筐体10内の容器21と吸湿用容器との間で搬送するポンプ装置(図示せず)を有する搬入出機構を備えている。ポンプ装置に駆動によりホース35の先端から水分凝縮体20が吐出され、ポンプ装置の駆動を逆転させることでホース35の先端から容器21内の水分凝縮体20を吸引して、好ましくは遮蔽域にある吸湿用容器に吐出する。もっとも、筐体10と吸湿用容器の間に中継用の補給用容器を備え、補給用容器を介して水分凝縮体20を搬入出してもよい。
【0042】
この装置1では、夜明け前後にポンプ装置を駆動して、1つの開口部16から空の容器21に、遮蔽域で水分を吸着した水分凝縮体20を吐出させる(図8(a))。次にホース35を隣接した開口部16に移動して、別な空の容器21に水分凝縮体20を吐出させる(同図(b))。そして、夜明け前後には全ての筐体10内の容器21に水分凝縮体20を充填し、その後全ての開閉扉14を閉じた状態で日中放置する(同図(c))。水分凝縮体20から十分に水分が排出された頃に給気路54上の開閉バルブ53及び排気路57上の開閉バルブ55を開き、排気ポンプ56を駆動して筐体10内の気体を回収バルーン52に回収する(同図(d))。その後、日没前後に開閉扉14を開き、開口部16から容器21内の水分凝縮体20を順次搬出して、全ての容器21を空にして放置する(同図(e)(f))。一方、回収バルーン52は夜間の冷気で冷却され、回収バルーン52内に結露水が得られる。上記の説明においては、水分凝縮体20の搬出時に筐体10内の気体が筐体外10に排気されるのを防止するため、水分凝縮体20が筐体10外に搬出される前に筐体10内の気体を回収することにしているが、水分凝縮体20の搬出後に筐体10内の気体を回収バルーン52に排出することもできる。
【実施例4】
【0043】
図9は第4の実施例である淡水製造装置1の概略構成図、図10は当該淡水製造装置1の使用方法を説明する図である。当該淡水製造装置1は、筐体10内部において水分が回収される構成であって、当該装置1では水分凝縮体20を取り出した後の筐体10を夜間の冷気によって冷却することで筐体10内に淡水が得られる。
【0044】
当該淡水製造装置1の筐体10は角柱状に作製され、筐体10は、その1つの側面と平行に配置された1つの仕切板81と、水分凝縮体20が出し入れされる複数の筒状の容器21を備える。仕切板81は筐体10の内部空間11を、水分凝縮体20の搬入出室11Aと、水分凝縮体20から水分を排湿する排湿室11Bの2つの部屋に分割している。搬入出室11Aの筐体上面には水分凝縮体20の搬入口である1つの開口部12が設けられ、搬入出室11Aの筐体底面には水分凝縮体20の搬出口である1つの開口部13が設けられている。2つの開口部12,13にはそれぞれ開閉可能な開閉扉14が取り付けられており、2つの開閉扉14が閉じられた状態では筐体10の内部空間11はほぼ密閉された状態に保たれる。容器21は金網などから作製され、通気性が担保されている。容器21は筐体10の底面とほぼ平行に配置され、筐体10内に固定されている。
【0045】
容器21は、排湿室11Bにおいて仕切板81から筐体10の側面に至るまで配置され、容器21の片端は筐体10の側面で塞がれ、他端は開放されている。そして、仕切板81にはこの開放端に位置して容器21の数と同数の穴81aが開設されている。筐体10は仕切板81に平行して上下にスライドする平板上のシャッター82を備える。シャッター82は仕切版81の穴81aを開閉する。シャッター82は複数の穴82aを有し、これらの穴82aは、シャッター82がその下辺が最下段にある容器21のやや上方にまで引き上げられた際に、仕切穴81の穴81aと重なる位置に開設されている。この結果、シャッター82を全て引き上げられることなく、全ての容器21の開放端は搬入出室11Aに向けて開かれる。そして、シャッター81が最も下げられた際にはシャッター82により仕切板81の全ての穴81aは塞がれる。
【0046】
筐体10はその左右側面に外側に突設された軸65によって設置台66に軸支されている。筐体10は容器21の開放端が上に来る位置からほぼ水平、好ましくは水平からやや傾いた位置まで軸65の周りに回転する。軸65には図示しない複数の歯車を組み合わせた減速機構が備えられており、手動で筐体10が回転される。もっとも、モータなどの駆動機構を備え、駆動機構によって筐体10を回転させてもよい。
【0047】
筐体10の近傍には図示しない遮蔽域が設けられ、当該遮蔽域には複数個の吸湿用容器(図示せず)が備えられている。吸湿用容器は例えば網目部材から作製された透湿性を有する容器であり、その大きさや個数は適宜定められる。筐体10から搬出された粒状の水分凝縮体20は吸湿用容器に入れられ、遮蔽域にて数日間放置される。遮蔽域において水分を吸着した水分凝縮体20は、夜明け前後の気温が上昇する前に例えばポンプ装置(図示せず)に接続されたホース36から、筐体上部の開口部12から搬入出室11Aがほぼ満たされる程度に投入される(図10(a))。このとき、シャッター82は最も下げられた状態にあり、仕切板81の穴81aはシャッター82で塞がれている。また、開口部13は閉じられている。次いで、開口部12と開口部13を閉じた状態で筐体10を約90度回転させた後、シャッター82をスライドさせて、容器21内部に水分凝縮体20を入れる(図10(b))。その後、シャッター81を元の状態にスライドさせて仕切板81の穴81aを全て塞いだ後、筐体10を約90度反転させて容器21をほぼ水平状態に戻す(図10(c))。昼間この状態が維持されると、太陽光の輻射熱により水分凝縮体20から水分が排出され、排湿室11B内の湿度は上昇する。そして、水分凝縮体20からの排出が終わった頃に、好ましくは気温が低下する日没頃までに、シャッター81を再びスライドさせて仕切板81の穴81aを全て開いた状態で筐体10をやや傾斜させて水分凝縮体20を搬入出室11Aに移動させる(図10(d))。この時点では開口部12,13は閉じられたままである。次にシャッター82をスライドさせて仕切板81の穴81aを全てシャッター82で塞いだ後、筐体10をほぼ水平状態に戻し、水分凝縮体20を開口部13から取り出す(図10(e))。次に開閉扉14により開口部13を閉じてこの状態で放置する(図10(f))。そうすると、夜間の冷気によって筐体10全体が冷却され、筐体10内には結露水が得られる。一方、筐体10から取り出された水分凝縮体20はコンベアやポンプ装置などの搬送装置あるいは人力によって遮蔽域に搬送され、遮蔽域に備えられた吸湿用容器内で数日間放置される。
【0048】
この実施例では、搬入出室11Aと排湿室11Bの間に仕切板81とシャッター82の2つの間仕切りが備えられているので、水分凝縮体20を筐体10外に取り出す際に、水分を多く含む気体が筐体10外に排出されるのを少なくできる。もっともシャッター82の設置は任意であり、シャッター82により仕切板81の穴81aを塞ぐことなく、筐体10を傾けて排湿させた後の水分凝縮体20を開口部13から取り出し、その後筐体10を夜間の冷気で冷やすこともできる。
【実施例5】
【0049】
図11は第5の実施例である淡水製造装置1の概略構成図である。当該淡水製造装置1も、筐体10内部において水分が回収される構成を有し、水分凝縮体20を取り出した後の筐体10を夜間の冷気によって冷却することで淡水が得られる。
【0050】
筐体10は筐体10上部の一部分が側方に飛び出した形状を有しており、側方に飛び出た筐体10部分の下方は筐体10から取り出された水分凝縮体20を吸湿域に搬送するための搬出空間45となっている。搬出空間45にはコンベアなどの搬送装置46が配置されている。搬送装置46は取り出された水分凝縮体20を吸湿域へ連続的又は間歇的に搬送する手段である。搬送空間45と反対側にある筐体10の片端部上面には搬入口である開口部12が1つ設けられている。また、搬出空間45との境界面にある筐体10底面には搬出口である開口部13が1つ設けられている。開口部12,13には開閉扉14がそれぞれ備えられており、開閉扉14により開口部12,13が閉じられた際には内部空間11はほぼ密閉状態に保たれる。
【0051】
筐体10内には脚26を有する架台25が備えられている。架台25は上面が開放された箱型形状を有し、粒状の水分凝縮体20を収容する容器となっている。架台25の底面は、搬入口側が搬出口側に比べてわずかに高くなった傾斜面となっている。架台25の搬出口側にある側面25aはヒンジ機構27により架台25の底面に取り付けられている。側面25aの上部には巻取装置39から引き出された牽引ロープ38の一端が取り付けられている。牽引ロープ38が巻取装置39により巻き取られることで、架台25の側面25aは架台25の側面は閉じられた状態となり、牽引ロープ38が緩められると側面25aは架台25の外側に倒れることで架台25の側方が開かれる。牽引ロープ38の筐体10からの引き出し箇所(筐体10の上面)には、筐体10からの気体漏れを防ぐための封止部材(図示せず)が備えられている。
【0052】
筐体10外には、遮蔽物により直射日光が遮られた遮光域(図示せず)が設けられており、遮光域で粒状の水分凝縮体は数日間水分を含んだ空気(外気)と接触される。その後、夜明け前後の気温が上昇する前に油圧ショベルなどの搬送機構や人手によって、水分凝縮体20は開口部12から投入され、誘導部材28上を流れ落ちて架台25内に搬入される。図示した装置1では搬送機構としてポンプ装置によってホース37から水分凝縮体20が吐出される。このとき、牽引ロープ38は巻き取られて架台25の側方は閉じられている。開口部13も閉じられている(図12(a))。次に、水分凝縮体20の搬入が終わると開口部12が閉じられ、好ましくは直射日光の当たる場所の下で放置される(同図(b))。そして、好ましくは太陽光の輻射熱により水分凝縮体からの排出が終わる日没前に、開口部14が開かれると共に牽引ロープ38が緩められると架台25の側面25aが開かれ、水分凝縮体20は開口部13から搬送装置46上に搬出される(同図(c))。その後、開閉扉14により開口部13が閉じられ夜間の冷気によって筐体10全体が冷却される(同図(d))。冷却により筐体10内に溜まった結露水は、筐体10の取出口(図示せず)から淡水として取り出される。
【0053】
この装置1では、架台25の傾斜を利用して水分凝縮体20を筐体内20から取り出すこととしているが、傾斜した架台25の代わりに、油圧シリンダーなどの昇降装置を用いて架台を傾けることにしてもよい。また、架台25の側面25aの開閉も適宜な方法で開閉させてもよいのはいうまでもない。
【0054】
なお、第4の実施例や第5の実施例において、第1の実施例や第2の実施例に備えられた水分回収機構を備えることもできるし、第1〜第3の実施例において、水分回収機構を備えることなく、筐体を夜間の冷気で冷却することで筐体内に生じた結露水を回収する水分回収機構を構成することもできる。このように、本発明の淡水製造装置では水分凝縮体を交換可能な開口部を筐体に設ければよく、水分凝縮体の搬入手段や搬出手段、水分回収機構は適宜な方法を組み合わせることができる。また、上記の各実施例では粒状の水分凝縮体が用いられたが、角柱状などに成型された水分凝縮体が用いられ得るのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の淡水製造装置によると、水分凝縮体の吸湿能力が十分に活かされ、昼時における淡水製造量が増大する。
【符号の説明】
【0056】
10 筐体
12 搬入口となる開口部
13 搬出口となる開口部
20 水分凝縮体
21 容器
25 架台
30 コンベア
36 搬入出手段であるホース
51 補給バルーン
52 回収バルーン
81 仕切板
【要約】
【課題】 水分凝縮体の吸湿能力をできるだけ最大限に活用し、さらに効率良く空気中から淡水を回収するための装置を提供する。
【解決手段】 本願発明に係る淡水製造装置1は、水を吸脱着する、例えばシリカゲルのような水分凝縮体20と、ほぼ密閉された内部空間11を形成し得る筐体10と、前記内部空間11内で排出された水分を含む空気を冷却して淡水として回収する水分回収機構50と、無端軌道式の搬送装置であるコンベア30を備え、前記筐体10は前記水分凝縮体20を出し入れする2つの開口部12,13を有し、前記コンベア30の無端軌道31の一部は前記開口部12,13を通して筐体10内に配置される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12