(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6159913
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】ハサミ
(51)【国際特許分類】
B26B 13/22 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
B26B13/22
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-76857(P2016-76857)
(22)【出願日】2016年3月18日
【審査請求日】2016年3月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】316004642
【氏名又は名称】藤岡 直人
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 直人
【審査官】
須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−036330(JP,A)
【文献】
実開昭56−072563(JP,U)
【文献】
特開2014−061370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26B13/00−17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の刃に連結された一対の持ち手と連動して可動する、一対の押さえ具を有する平行リンク機構を用いた切断対象を固定する固定機構を有しており、
前記平行リンク機構は、
前記一対の持ち手の動きに連動して、前記一対の押さえ具が接近離間するように設けられているハサミ。
【請求項2】
前記平行リンク機構は、
平行な一対の押さえ具と、
両端に回転軸をもつ直線状のリンク部材と、
2つの直線部分とそれをつなぐ連結部分を有する弾性体により構成されており、
一対の押さえ具は、
一方の押さえ具が一方の刃に固定されており、
リンク部材の一方の回転軸は一方の刃に対して回転可能に連結されており、他方の回転軸は他方の押さえ具に回転可能に連結されており、
弾性体は、
一方の直線部分が他方の押さえ具に回転可能に連結されており、他方の直線部分は他方の刃と連動して移動する持ち手に連結されており、連結部分はハサミの要に回転支持されている
る、請求項1のハサミ。
【請求項3】
刃の回転を平行リンク機構に伝えるリンク部分に、弾性体を用いた請求項1のハサミ。
【請求項4】
刃線に沿った方向において、リンク部材と押さえ具の間にスペースが設けられた請求項2のハサミ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断する箇所を固定し狙い通りに真っ直ぐ切ることができるハサミに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハサミでものを切断する際、意図した箇所を正確に切断するためには切断する対象を安定させ、刃と切断対象の角度を一定にする必要がある。これらの作業を行いやすくする工夫として、刃部に紙を乗せるための板状のガイドを設けたものはあったが(特許文献1:特開2001−137570)、切断する対象の固定は出来ず正確な切断のためには不十分である。
【0003】
また切断片が飛散するのを防ぐ目的で、刃と別に上下から紙を挟み押さえる構造をもつものもあるが(特許文献2:特開2004−154206、特許文献3:特開2014−61370)、切断対象とハサミの固定が確実でなかったり操作が複雑になったり切断箇所の視認性が低下したりするという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−137570
【特許文献2】特開2004−154206
【特許文献3】特開2014−61370
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする問題点は、ハサミでものを切断する際に、切断しようとする対象の変形や、手ぶれによってハサミの刃の角度が切断するもの(例えば紙等)に対して一定とならず、意図した直線を切ることができない場合があるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハサミは、切断対象と刃の角度を固定するため、ハサミの開閉に連動して平行に動いて切断対象を固定する押さえ機構を有することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のハサミは上下の押さえ部によりハサミと紙の角度を固定する機構を有する。押さえ部は平行に可動するため、面と面で切断対象を押さえることができる。これによりハサミと紙が切断の途中でずれてしまうことを防ぐ。その結果ハサミによる正確な切断を容易にする。また切りたい箇所と押さえ部のエッジ(つまり刃)を一致させてからハサミを動かせばよいので失敗することが大幅に少なくなる。また、薄くて切りにくいような紙でも押さえてから切るので切りやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】切断途中における押さえ部による切断対象の固定の様子を示した図
【
図4】押さえ部と刃部の両方が閉じられた状態を示す図
【
図5】切断した紙がリンクと押さえ部Bの間からおくられることを示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、ハサミに、押さえ具A5と押さえ具B6とを設けたことに特徴を有している。押さえ具B6は、ハサミにおける一方の刃B2の表面に設けられていて、その上面と刃B2の裏面とが交わるエッジが刃線となっている(
図7参照)。
【0010】
一方、押さえ具A5は、ハサミにおける一対の刃A1,B2の動き(紙などを切る動き)に合わせて、押さえ具B6に対して移動するように設けられている。
具体的には、押さえ具A5は、2つの可動部を持ち、それぞれリンク部材7と弾性体8に接続される。
リンク部材7は両端にひとつずつの回転軸を持ち、押さえ具A5と押さえ具B6を連結する部材である。リンク部材7の一方の端は押さえ具A5に回転支持され、他端は刃B2に回転支持される。
弾性体8は、弾性を持ち、二つの直線状部分と連結部分からなる部材であり、押さえ具A5と刃A1と接続されている持ち手A3を接続する。弾性体の直線部分A8aの端は支持部A9で押さえ具A5に回転支持され、弾性体の連結部分8cは要(ねじ)4で回転支持される。
この弾性体8を、リンク部材7と弾性体の直線部分A8aが略平行となるように設けることで(
図1参照)、押さえ具A5、押さえ具B6、リンク部材7、弾性体の直線部分A8aによって平行リンク機構が構成される。
【0011】
また、弾性体の直線部分B8bは支持部B10で持ち手3に固定されており、持ち手A3の動きに伴う刃A1の回転を平行リンク機構に伝える。したがって、押さえ具A5は刃A1の回転に連動し、押さえ具B6に対して平行移動する。これにより、はさみで切断する箇所を押さえ具A5と押さえ具B6で上下からはさむように動作するので、押さえ具A5と押さえ具B6によって紙を固定した状態で、一対の刃A1,B2によって紙を切断できる。
【0010】
本発明のハサミによって紙を切断する際には、まず、一対の刃A1,B2を開いて(
図1〜
図3参照)、上下の押さえ具A5,B6が離れた状態にして両者の間に紙を配置する。
その状態から、持ち手A3を動かすことで刃A1が回転するが、押さえ具A5もそれに連動して移動する。
一対の刃A1,B2が閉じる過程で、弾性体8が刃A1の回転を平行リンク機構に伝え、押さえ具A5は押さえ具B6と平行を保ち接近する。
そして、一対の刃A1,B2が紙を切断する前に押さえ具A5は押さえ具B6と面と面で接触し、紙を押さえつけ、紙が動かないように固定する(
図5)。
その後さらに刃A1が回転することで、紙は切断される。このとき、平行リンク機構の一辺に弾性体8を用いているため、弾性体8があっても刃A1の回転を阻害せず、一対の刃A1,B2を閉じることが可能である。
同時に弾性体8の弾性力により、押さえ具A5が紙を押さえつける力が強まる。これにより既存のハサミと同じ操作でありながら、紙などを直線に切断する作業を容易にする。
【0011】
図5に示すように、ハサミの刃線に沿う方向に対して、リンク部材7の支点と押さえ具B6の間にスペースを設けることで、切断された紙は押さえ具B6とリンク部材7の間から下へおくられ、リンク機構が切断の邪魔とならないようになっている。したがってサイズの大きな紙などであっても連続して切り進むことができる。
また、紙の切断されていない部分はリンク部材7よりも奥に進行することができないので、必ず押さえ具A5,B6によって固定してから紙を切断することができる。
【符号の説明】
【0012】
A1 刃
B2 刃
A3 持ち手
A4 要(ねじ)
5 押さえ具
B6 押さえ具
7 リンク部材
8 弾性体
A8a 弾性体の直線部分
B8b 弾性体の直線部分
8c 弾性体の連結部分
A9 支持部
B10 支持部
【要約】
【課題】 切断対象と刃の角度を固定するため、ハサミの開閉に連動して平行に動いて切断対象を固定する押さえ機構を有するハサミを提供する。
【解決手段】 本発明は刃の動きに連動する一対の押さえ部を有するハサミであって、切断する紙を上下の押さえ具ではさんでからハサミの刃が噛みあうことによって意図した箇所の切断を容易にするハサミである。既存のハサミと同様の操作によって「紙の固定」と「切断」という2つの動作を行うことができる。押さえ部は切断する対象を平行に挟み押さえるので切断対象の厚みによらず安定した状態で保持できる。押さえ部で押さえてから切ることで切断する箇所を確認してから切ることができ、また切る途中でハサミがずれることを防ぐ。
【選択図】
図1