特許第6159920号(P6159920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6159920-ラミネートされた発色組成物 図000020
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6159920
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】ラミネートされた発色組成物
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20170703BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   B32B27/18 Z
   B32B27/32 Z
【請求項の数】23
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-549403(P2014-549403)
(86)(22)【出願日】2012年12月12日
(65)【公表番号】特表2015-509052(P2015-509052A)
(43)【公表日】2015年3月26日
(86)【国際出願番号】EP2012075201
(87)【国際公開番号】WO2013098076
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年12月2日
(31)【優先権主張番号】1151298-5
(32)【優先日】2011年12月30日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】391053799
【氏名又は名称】テトラ ラバル ホールディングス アンド ファイナンス エス エイ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ラディスラフ・ハーダレック
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・レーバーガー
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ジャーヴィス
(72)【発明者】
【氏名】クリス・ワイアーズ
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−137261(JP,A)
【文献】 特開平08−025809(JP,A)
【文献】 特表2008−538548(JP,A)
【文献】 特開2005−144784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 〜43/00
B65D65/00 〜65/46
C09D11/00 〜13/00
B41M 5/035
5/18
5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク配合物を有する基材を得る方法であって、
- 基材を用意する工程と、
- 前記基材をインク配合物でコーティングする工程であって、
前記インク配合物が、熱活性化酸発生剤(TAG)と造塩発色性ロイコ染料とを含み、
前記熱活性化酸発生剤が、
式(I):
【化1】
[式中、
Xはケイ素またはホウ素であり;
「n」は、1から5の整数であり;
「o」は、0(ゼロ)または1の整数であり;
「p」は、0(ゼロ)または1の整数であり;
EおよびFは、以下:
【化2】
(式中、各R6およびR7は、水素、C1〜4-アルキル、C1〜4-アルコキシ、ハロゲン、アミノ、およびカルボキシからなる群より個別に選択される)からなる群より個別に選択され;
X=ケイ素の場合はいつでも、o=1、p=0でありかつR1は、アリール、アラルキル、もしくはC1〜4-アルキルであるか、またはo=1、p=1でありかつR1およびR2が一緒になって、a、b、c、d、e、f、g、およびhからなる群より選択される残基を形成し;
X=ホウ素の場合はいつでも、o=0およびp=0であり;
R3、R4、およびR5は、水素、C1〜12-アルキル、C1〜6-ヒドロキシアルキル、アリル、アラルキル、およびアリールスルホニルからなる群より個別に選択され、ここで、アラルキルもしくはアリールスルホニルは、C1〜4-アルキルで置換されていてもよく;または
R3およびR4は、それらが結合している窒素と一緒になって、モルホリノまたはピペリジノ環を形成し、かつR5は、水素、C1〜12-アルキル、C1〜6-ヒドロキシアルキル、アリル、アラルキル、およびアリールスルホニルからなる群より選択され、ここで、アラルキルもしくはアリールスルホニルは、C1〜4-アルキルで置換されていてもよい]
に従う、ホウ素もしくはケイ素を含む有機金属化合物のアミン塩;および
アミンで中和されたポリアルキルナフタレンポリスルホン酸誘導体
からなる群から選択される、工程と、
- コーティングされた前記基材を熱可塑性ポリマー層で覆うことによって、インク配合物を、基材と熱可塑性ポリマー層との間および/または熱可塑性ポリマー層内に位置させる工程であって、
前記インク配合物を前記熱可塑性ポリマー層で覆う前記工程が、溶融押出によって実施され;前記熱可塑性ポリマーが、ポリオレフィンであり;前記溶融押出におけるポリマー溶融の温度が200から340℃の間である、工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記造塩発色性ロイコ染料が、フルオランである、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記フルオランが、2'-アニリノ-6'-[エチル(p-トリル)アミノ]-3'-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9'-[9H]キサンテン]-3-オンである、請求項2に記載の方法
【請求項4】
前記インク配合物が、近赤外吸収剤をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法
【請求項5】
前記近赤外吸収剤が、還元されたインジウムスズ酸化物である、請求項4に記載の方法
【請求項6】
前記インク配合物が、架橋剤をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法
【請求項7】
前記架橋剤が、ZnOである、請求項6に記載の方法
【請求項8】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリエチレンまたはポリプロピレンである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法
【請求項9】
前記熱可塑性ポリマー層の厚さが、10から60μmである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法
【請求項10】
基材が、紙、厚紙、段ボール紙、板紙、プラスチックフィルム、硬質プラスチック成形品、織物、木、金属、ガラス、または革である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法
【請求項11】
前記インク配合物が、バインダー、光安定化剤、インク流動性/レオロジー調整剤、乾燥速度調整剤、および/または接着促進剤をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法
【請求項12】
前記インク配合物が水性である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法
【請求項13】
前記溶融押出における前記熱可塑性ポリマー溶融の温度が280から330℃の間である、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
基材をコーティングする前記工程が、フレキソ印刷によって実施される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
- 熱可塑性ポリマー層で覆われたコーティングされた基材の、マーキングが意図される部分に照射を行って、マーキングを形成する工程
さらにむ、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
コーティングの一部のみが、マーキングを形成するために照射される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
インク配合物が、決められたパターンでコーティングされ、決められたパターンの少なくとも一部が、マーキングを形成するために照射される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
基材が、レーザー、ダイオード、ファイバー結合ダイオードアレイシステム、またはダイオードアレイシステムからなる群より選択される照射源によって照射される、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記照射源が、780から2500nmの範囲の動作波長を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
照射源が、Nd:YAGレーザーまたはNIRファイバーレーザーである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
液体食品と接触する、熱可塑性ポリマーの最内層と、
請求項1から20のいずれか一項に記載の方法によって得られた基材と、
前記熱可塑性ポリマーの最内層と前記基材との間に配置されたバリア材料と
を含む液体食品包装材料であって、
基材の熱可塑性ポリマー層が、液体食品包装材料の最外層である、液体食品包装材料。
【請求項22】
前記バリア材料が、金属が蒸着された層またはアルミニウムホイルを含むプラスチックフィルムまたはプラスチックシートである、請求項21に記載の液体食品包装材料。
【請求項23】
請求項21または22に記載の液体食品包装材料を含む、液体食品包装。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク配合物でコーティングされたマーキング可能な基材であって、インク配合物が熱可塑性ポリマー層で覆われることによって、インク配合物が基材と熱可塑性ポリマー層との間および/または熱可塑性ポリマー層内に位置し、その結果としてインク配合物が保護される、基材に関する。さらに、本発明は、そのようなマーキング可能な基材を得る方法、および基材にマーキングするための方法、例えば、画像形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材中または基材上において色の変化を生じさせ、それにより基材上にマーキングを出現させることによって、効果的なマーキングを達成するための様々な提案が、当技術分野においてなされている。当技術分野において、様々な不可逆性の熱変色性マーキング成分、すなわち、活性化可能な顔料が開示されている。そのような不可逆性の熱変色性マーキング成分でコーティングされた基材は、熱の適用、例えば、レーザーなどによって、着色することができ、その結果、コーティングされた基材をマーキングすることができる。また、レーザーまたはいくつかの他の照射源による基材のマーキングは、典型的には基材にマーキングするプロセスの際にレーザーおよび/または基材が移動するような印刷または画像形成を意味し得る。
【0003】
一例として、WO 02/01250において、レーザーマーキングにおけるマーキング成分としての、オキシ金属塩、例えば、オクタモリブデン酸アンモニウム(AOM)の使用について開示されている。AOMは、10,600nmレーザー放射線で直接マーキングすることができるマーキング成分の一例である。約10μmの波長を有するレーザー放射線は、例えば、10,000nmから12,000nmの範囲の発光波長の中-IRのCO2レーザーによって得ることができる。しかしながら、中-IRのCO2レーザーは、それらの物理的な体積サイズのために、既存の生産ラインへの導入にあまり適していない。
【0004】
NIRファイバーレーザーは、アンビリカルコードによって数メートル離れたレーザーに接続された、生産ラインに適合する小さい印刷ヘッドを有し得る。したがって、その物理的な体積サイズに起因して既存の生産ラインへの導入にとってあまり適していないという中-IRCO2レーザーの欠点は、NIR(近赤外)レーザーの使用とインク配合剤へのNIR吸収剤の添加により克服することができる。NIR吸収剤は、近赤外レーザー照射を吸収し、伝導熱へと変換する。したがって、マーキング成分、例えば、AOMとNIR吸収剤とを含むインク配合物は、中-IRレーザーの代わりにNIRレーザーを使用することによってマーキングすることができる。NIRレーザーの一般的な例は、Nd:YAGレーザーである。
【0005】
ロイコ染料は、ある形態においては無色であるが、特定の刺激へ曝露させることにより有色形態へと変化し得るマーキング成分である。ほとんどのロイコ染料は、造塩発色性(halochromic)であり、すなわち、それらは、pHの変化に応答し、典型的にはアルカリ条件下では無色であるが、酸性環境では有色となる。造塩発色性ロイコ染料の色の変化は、ロイコ染料がプロトン化された場合に生じ得る。そのようなプロトン化によって、ロイコ染料の共役系に変化が生じ得、その結果、共役系が形成され得、可視光のフォトンを吸収する能力を有するようになり、結果として有色に見える。
【0006】
造塩発色性ロイコ染料と、加熱によりプロトンを放出する熱酸発生剤(TAG)とを組み合わせることにより、造塩発色性ロイコ染料も、熱的マーキング、例えばレーザー画像形成において使用することができる。周知の有効なTAGは、ベンジルヒドロキシベンゾエートであり、これは、様々な造塩発色性ロイコ染料と組み合わせることにより、良好なマーキング性を有するインク配合物がもたらされる。
【0007】
ある特定の用途では、熱可塑性ポリマー層で基材を覆う必要がある。熱可塑性ポリマー層でインク基材を覆うことにより、基材のある特定の特性、例えば、液体に対する不透過性が向上する。さらに、熱可塑性ポリマー層は、マーキングおよび画像も保護する。典型的には、最外層または外側の層のうちの1つで覆われた、紙、厚紙、段ボール紙、または板紙の少なくとも1つの層を含むラミネートである、包装材料の場合、基材は、典型的には、ラミネート上に溶融押出された低密度ポリエチレン(LDPE)またはポリプロピレンである。そのようなポリオレフィンの場合、ポリオレフィンの溶融押出において、典型的には、200℃から340℃の温度が用いられる。
【0008】
既に説明したように、当技術分野におけるマーキング成分は、典型的には、熱活性化される。典型的には、そのようなマーキング成分が溶融押出によってオーバーラミネートされた場合、マーキング成分の活性化により退色が生じる。したがって、包装材料ラミネートの最外層は、典型的には溶融押出ポリオレフィン層であるので、マーキング前の退色を避けるために、加熱によって活性化されるマーキング成分は現在、包装材料ラミネートの最外層上にコーティングされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO 02/01250
【特許文献2】WO 2006/108745
【特許文献3】WO 10/029331
【特許文献4】US 5,187,019
【特許文献5】US 4,251,665
【特許文献6】GB 1,347,467
【特許文献7】GB 1,389,716
【特許文献8】US 5,166,350 A
【特許文献9】EP 0 546 577 A1
【特許文献10】DE 2130845
【特許文献11】US 3,959,571 A
【特許文献12】GB 2 002 801 A
【特許文献13】GB 2,154,597 A
【特許文献14】EP 0 187 329 A1
【特許文献15】GB 1,548,059
【特許文献16】US 6,911,262
【特許文献17】WO 2008/050153
【特許文献18】WO 2005/068207
【特許文献19】WO 2005/012442
【特許文献20】WO 2007/141522
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
インク配合物を保護するため、溶融押出によってオーバーラミネートする際に、マーキング可能なインク配合物を退色しにくいようにすることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、上記において明確にした、当技術分野における1つまたは複数の不備および欠点の、単独でまたは任意の組み合わせでの緩和、軽減、排除、または回避を、インク配合物でコーティングされた基材を提供することによって試みるものである。このインク配合物は、造塩発色性ロイコ染料と熱活性化酸発生剤(TAG)とを含み、熱活性化酸発生剤(TAG)は、
式(I):
【0012】
【化1】
【0013】
[式中、
Xはケイ素またはホウ素であり;
「n」は、1から5の整数であり;
「o」は、0(ゼロ)または1の整数であり;
「p」は、0(ゼロ)または1の整数であり;
EおよびFは、以下:
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、各R6およびR7は、水素、C1〜4-アルキル、C1〜4-アルコキシ、ハロゲン、アミノ、およびカルボキシからなる群より個別に選択される)
からなる群より個別に選択され;
X=ケイ素の場合はいつでも、o=1、p=0でありかつR1は、アリール、アラルキル、もしくはC1〜4-アルキルであるか、またはo=1、p=1でありかつR1およびR2が一緒になって、a、b、c、d、e、f、g、およびhからなる群より選択される残基を形成し;
X=ホウ素の場合はいつでも、o=0およびp=0であり;
R3、R4、およびR5は、水素、C1〜12-アルキル、C1〜6-ヒドロキシアルキル、アリル、アラルキル、およびアリールスルホニルからなる群より個別に選択され、ここで、アラルキルもしくはアリールスルホニルは、C1〜4-アルキルで置換されていてもよく;または
R3およびR4は、それらが結合している窒素と一緒になって、モルホリノまたはピペリジノ環を形成し、かつR5は、水素、C1〜12-アルキル、C1〜6-ヒドロキシアルキル、アリル、アラルキル、およびアリールスルホニルからなる群より選択され、ここで、アラルキルもしくはアリールスルホニルは、C1〜4-アルキルで置換されていてもよい]
による、ホウ素もしくはケイ素を含む有機金属化合物のアミン塩;および
アミン中和されたポリアルキルナフタレンポリスルホン酸誘導体
からなる群より選択され、
前記基材が熱可塑性ポリマー層で覆われることによって、インク配合物が基材と熱可塑性ポリマー層との間および/または熱可塑性ポリマー層内に位置している。
【0016】
本発明のさらなる態様は、液体食品包装材料に関する。液体食品包装材料は、液体食品と接触するポリオレフィン最内層、例えば、本明細書に記載されるような基材、およびバリア層、例えば、ポリオレフィン最内層と基材との間に配置された酸素バリア層を含む。基材の熱可塑性ポリマー層は、液体食品包装材料の最外層である。本発明の追加の態様は、そのような液体食品包装材料を含む液体食品包装に関する。
【0017】
本発明のさらなる態様は、そのような基材を得るための方法に関する。そのような方法は、
- 基材を用意する工程と、
- 前記基材を本明細書において上述したインク配合物でコーティングする工程と、
- 前記コーティングされた基材を熱可塑性ポリマー層で覆うことによって、インク配合物を、基材と熱可塑性ポリマー層との間および/または熱可塑性ポリマー層内に位置させる工程と
を含む。
【0018】
本発明のさらなる態様は、マーキング可能な基材を得るための方法であって、前記基材が、熱活性化酸発生剤(TAG)および造塩発色性ロイコ染料を含むインク配合物でコーティングされており、前記基材が熱可塑性ポリマー層でさらに覆われることによって、インク配合物が基材と熱可塑性ポリマー層との間および/または熱可塑性ポリマー層内に位置している方法に関する。そのような方法では、基材を準備する。この基材は、熱活性化酸発生剤(TAG)および造塩発色性ロイコ染料を含むインク配合物でコーティングされる。続いて、インク配合物は、熱可塑性ポリマー層で覆われる。そのような方法において、熱活性化酸発生剤(TAG)および造塩発色性ロイコ染料は、前記インク配合物を熱可塑性ポリマー層で覆う工程の結果として得られる1976 CIE(L*、a*、b*)空間による色差、すなわち、
【0019】
【数1】
【0020】
が、4未満となり、かつ780〜2500nmの範囲の動作波長を有するレーザーで基材に放射線照射することによって少なくとも0.7のODBを有するマーキングが達成され得るように、選択される。
【0021】
本発明のさらなる態様は、本明細書において開示される方法によって得ることができる基材であって、780〜2500nmの範囲の動作波長を有するレーザーを基材に照射することによって少なくとも0.7のODBを有するマーキングが得られるように、マーキングすることができる基材に関する。
【0022】
本発明のさらなる態様は、本明細書において上述により説明した基材をマーキングする方法に関する。そのような方法は、
- コーティングされた基材の、マーキングが意図される部分に照射を行って、マーキングを形成する工程
を含む。
本発明のさらなる有利な特徴は、従属請求項において定義される。さらに、本発明の有利な特徴については、本明細書において開示される実施形態において詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、ロール供給充填装置を図式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ある特定の熱酸発生剤を使用することで、約300℃での、ポリオレフィン、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)の溶融押出による被覆の際に、少ない程度にしか退色されない、造塩発色性ロイコ染料を含むインク配合物を得ることができることが見出された。さらに、驚くべきことに、そのようなインク配合物は、いかなる方法でも、インク配合物を覆っている熱可塑性ポリマー層を破壊することなく、基材をマーキングするために効率的に活性化させることができることが見出された。通常、340℃を超える温度への曝露は、LDPEを破壊するであろう。したがって、そのようなインク配合物は、基材、例えば梱包材料での使用に非常に適している。
【0025】
したがって、1つの態様では、熱活性化酸発生剤(TAG)と造塩発色性ロイコ染料とを含むインク配合物でコーティングされた基材であって、前記熱活性化酸発生剤が、
式(I):
【0026】
【化3】
【0027】
[式中、
Xは、ケイ素またはホウ素であり;
「n」は、1から5、好ましくは1または2の整数であり;
「o」は、0(ゼロ)または1の整数であり;
「p」は0(ゼロ)または1の整数であり;
EおよびFは、
【0028】
【化4】
【0029】
(式中、各R6およびR7は、C1〜4-アルキル、C1〜4-アルコキシ、ハロゲン、アミノ、およびカルボキシからなる群より個別に選択され;好ましくは、R6およびR7は水素である)
からなる群より個別に選択され;
X=ケイ素の場合はいつでも、o=1、p=0でありかつR1は、アリール、アラルキル、もしくはC1〜4-アルキルであるか、またはo=1、p=1でありかつR1およびR2が一緒になって、a、b、c、d、e、f、g、およびhからなる群より選択される残基を形成し;
X=ホウ素の場合はいつでも、o=0およびp=0であり;
R3、R4、およびR5は、水素、C1〜12-アルキル、C1〜6-ヒドロキシアルキル、アリル、アラルキル、およびアリールスルホニルからなる群より個別に選択され、ここで、アラルキルもしくはアリールスルホニルは、C1〜4-アルキルで置換されていてもよく;または
R3およびR4は、それらが結合している窒素と一緒になって、モルホリノまたはピペリジノ環を形成し、かつR5は、水素、C1〜12-アルキル、C1〜6-ヒドロキシアルキル、アリル、アラルキル、およびアリールスルホニルからなる群より選択され、ここで、アラルキルもしくはアリールスルホニルは、C1〜4-アルキルで置換されていてもよい]
による、ホウ素もしくはケイ素を含む有機金属化合物のアミン塩;および
アミンで中和されたポリアルキルナフタレンポリスルホン酸誘導体
からなる群より選択され、
熱可塑性ポリマー層で覆われることによって、インク配合物が基材と熱可塑性ポリマー層との間および/または熱可塑性ポリマー層内に位置している、基材に関する。
【0030】
ある実施形態によれば、本明細書において使用される場合、アルキルは、直鎖状または分岐鎖状の飽和炭化水素基を意味することが意図される。さらに、ある実施形態によれば、アルコキシは、-O-アルキル基を意味することが意図される。アラルキルは、ある実施形態によれば、アルカンジイルアリールを意味することが意図される。さらに、ある実施形態によれば、アリールスルホニルは、-SO2アリール基を意味することが意図される。ある実施形態によれば、本明細書において使用される場合、アリールは、完全に非局在化したπ電子系を有する、炭素環(全て炭素)または2つ以上の縮合した炭素環(2つの隣接する炭素原子を共有する環)を意味することが意図される。ある実施形態によれば、カルボキシは、本明細書において使用される場合、-COOHまたは-COO-基を意味することが意図される。ある実施形態によれば、アミノは、本明細書において使用される場合、-NH2を意味することが意図される。いくつかの実施形態において、アミノは、-NHC1〜4アルキルならびに-N(C1〜4アルキル)2をさらに含み得る。ある実施形態によれば、ハロアルキルは、本明細書において使用される場合、少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン、例えばフルオロで置換されている、直鎖状または分岐鎖状の飽和炭化水素基を意味することが意図される。
【0031】
本明細書において使用される場合、「Cx1-x2」における整数「x1」および「x2」は、関連する基の炭素原子の数を意味しており、すなわち、当該基は、「x1」から「x2」個の炭素原子を有する。例えば、「C1〜4アルキル」基は、1から4個の炭素を有する全てのアルキル基、すなわち、CH3-、CH3CH2-、CH3CH2CH2-、(CH3)2CH-、CH3CH2CH2CH2-、CH3CH2CH(CH3)-、および(CH3)3C-、を意味する。
【0032】
C1〜4-アルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、およびtert-ブチルであり;C1〜4-アルコキシの例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、sec-ブトキシ(butyoxy)、イソブトキシ、およびtert-ブトキシであり;ハロゲンの例は、塩素、臭素、フッ素、およびヨウ素であり;アリールの例は、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、およびピリジルであり;アラルキルの例は、ベンジルおよび2-フェニルエチルであり;C1〜12-アルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチルおよびtert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ならびにドデシルであり;C1〜6-ヒドロキシアルキルの例は、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、2-ヒドロキシプロピル、3-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチル、5-ヒドロキシペンチル、および6-ヒドロキシヘキシルであり;ならびに、アリールスルホニルの例は、フェニルスルホニルおよびトシルである。
【0033】
一実施形態によれば、熱活性化酸発生剤(TAG)は、式(I)によるホウ素もしくはケイ素を有する有機金属化合物のアミン塩である。そのような塩は、WO 2006/108745において開示されている。
【0034】
好ましくは、R6およびR7は水素である。さらに、R3、R4、およびR5は、好ましくは、水素、C1〜12-アルキル、およびアリルからなる群より個別に選択され;あるいは、R3およびR4は、それらが結合している窒素と一緒に、モルホリノまたはピペリジノ環を形成し、ならびにR5は、水素、C1〜12-アルキル、およびアリルからなる群より選択される。ホウ素を有する有機金属化合物のアミン塩の好ましい例は、EおよびFが、a、b、f、g、およびhからなる群より個別に選択され、例えば、a、b、およびgから個別に選択される、式(I)による塩である。ケイ素を有する有機金属化合物のアミン塩の好ましい例は、EおよびFが、a、b、c、d、およびeからなる群より個別に選択され、例えば、a、b、およびcから個別に選択される、式(I)による塩である。X=ケイ素、o=1、およびp=0の場合はいつでも、R1はフェニルであることが好ましい。
【0035】
EおよびFの基の例として、aは、ベンジル酸の残基であり得、bは、マンデル酸の残基であり得、ならびにcは、ナフタレン-2,3-ジオールの残基であり得る。さらに、そのような例において、R6およびR7は、水素であり得る。
【0036】
式(I)による化合物の典型的な例は、以下の通りである。
【0037】
【化5】
【0038】
ある実施形態によれば、熱活性化酸発生剤(TAG)は、アミン中和されたポリアルキルナフタレンポリスルホン酸誘導体である。そのような誘導体の例は、WO 10/029331において開示されている。さらに、WO 10/029331によるそのような誘導体は、US 5,187,019およびUS 4,251,665において開示されている。
【0039】
ポリアルキルナフタレンポリスルホン酸誘導体のポリアルキルナフタレンポリスルホン酸は、式(II):
【0040】
【化6】
【0041】
[式中、
「t」は、2〜6の整数、例えば2、であり;
「s」は、2〜6の整数、例えば2、であり;
各C1〜24アルキルは、同じタイプのアルキルまたは異なるアルキルであり;
各C1〜24アルキルおよび-SO-3は、それぞれ、ナフタレンの任意の置換可能な炭素原子に結合している]
による、ポリアルキルナフタレンポリスルホン酸であり得る。
【0042】
ある実施形態によれば、ポリアルキルナフタレンポリスルホン酸を中和するアミンは、典型的には、プロトン化可能な窒素元素を有する。そのようなアミンの好ましい例としては、アンモニウム、アニリノ、オキサゾリジン、および二環式のオキサゾリジン塩が挙げられる。
【0043】
これに関して有用なアンモニウム化合物は、以下の一般式(III):
NR13R14R15H+ (III)
[式中、R13、R14、およびR15は、水素、分岐鎖状もしくは直鎖状であってもよいC1〜24アルキル、またはヒドロキシC1〜10アルカンジイルから、それぞれ独立して選択される]
を有し得る。アンモニウム化合物の好ましい例としては、トリエタノールアンモニウムおよびN,N-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム化合物が挙げられる。
【0044】
本発明において有用なアニリノ化合物は、以下の一般式(IV):
【0045】
【化7】
【0046】
[式中、R23およびR24はそれぞれ、分岐鎖状もしくは直鎖状であってもよいC1〜24アルキル、またはヒドロキシC1〜10アルカンジイルから独立して選択される]
を有し得る。
【0047】
好適な二環式のオキサゾリジンは、一般式(V):
【0048】
【化8】
【0049】
[式中、
各R25は、水素、C1〜6アルキル、およびヒドロキシC1〜6アルカンジイルからなる群より独立して選択され;
R26は、水素、C1〜6アルキル、またはヒドロキシC1〜6アルキレンである]
を有し得る。
【0050】
好ましくは、R25は水素であり、R26はC1〜6アルキル、またはヒドロキシメチレン(metylene)(-CH2OH)である。最も好ましい二環式のオキサゾリジンは、1-アザ-3,7-ジオキサ-5-エチルビシクロ(3.3.0)オクタンである。
【0051】
好適なオキサゾリジン化合物としては、一般式(VI):
【0052】
【化9】
【0053】
[式中、
各R31は独立して、水素、C1〜6アルキル、ハロゲン、ハロC1〜6アルキル、またはC1〜6アルコキシからなる群より選択され;ならびに
R32は、水素、C1〜6アルキル、ハロゲン、ハロC1〜6アルキル、またはC1〜6アルコキシである]
を有するオキサ-アザシクロペンタン化合物が挙げられる。
【0054】
好ましいオキサ-アザシクロペンタンは、4,4-ジメチル-1-オキサ-3-アザ-シクロペンタンである。
【0055】
ポリアルキルナフタレンポリスルホン酸および中和アミンは、様々なモル比において付加体を形成することができ、当該モル比は、用いられる特定の化合物およびそれらの特性に依存するであろう。例えば、ポリアルキルナフタレンポリスルホン酸のスルホン酸基と二環式のオキサゾリジンまたはオキサアザシクロペンタンとのモル比は、約0.5から約1.5の範囲であり得る。最も好ましいモル比は、約1.0である。
【0056】
アミン中和されたポリアルキルナフタレンポリスルホン酸のpH(水中)は、6.5以上であることが好ましい。典型的には、当該pHは、6.5から8.0の範囲である。
【0057】
本明細書において開示されるインク配合物での使用にとって好適なアミン中和されたポリアルキルナフタレンポリスルホン酸は、King Industries, Inc.からNacure(商標)の商標名において入手することができる。
【0058】
様々な造塩発色性ロイコ染料を、インク配合物に用いることができる。WO 06/108745に、ロイコ染料の例が示されている。造塩発色性ロイコ染料の例としては、フタリド、フルオラン、トリアリールメタン(triaryllmethane)、ベンゾオキサジン、キナゾリン、スピロピラン、キノン、チアジン、オキサジンおよびそれらの混合物である。
【0059】
フタリドの様々な既存の例の中でも特に、クリスタルバイオレットラクトン(3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチル-アミノフタリド)、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)フタリド、3,3-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド(例えばCiba(登録商標) Pergascript(登録商標) Red I 6 Bの商品名で販売されている)、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチル-インドール-3-イル)-フタリド、7-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-3-メチル-1-フェニルスピロ[4H-クロメノ-[2,3-c]ピラゾール-4(1H)-3'フタリド、3,6,6'-トリス(ジメチルアミノ)スピロ[フルオレン-9,3'-フタリド]、3,6,6'-トリス(ジエチルアミノ)スピロ[フルオレン-9,3'-フタリド]、3,3-ビス-[2-(p-ジメチルアミノフェニル)-2-(p-メトキシフェニル)エテニル-4,5,6,7-テトラブロモフタリド、3,3-ビス-[2-(p-ジメチルアミノ-フェニル)-2-(p-メトキシフェニル)エテニル-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3,3-ビス[1,1-ビス(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル]-4,5,6,7-テトラブロモフタリド、3,3-ビス-[1-(4-メトキシフェニル)-1-(4-ピリジノフェニル)エチレン-2-イル]-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシ-フェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリドおよび3-(4-シクロヘキシルエチルアミノ-2-メトキシ-フェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリドに言及することができる。フタリドは、当技術分野において公知の方法によって調製することができ、例えば、クリスタルバイオレットラクトンは、GB 1,347,467に記載されるようにして調製することができ、3,3-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリドは、GB 1,389,716に記載されるようにして調製することができる。
【0060】
フルオランの様々な既存の例の中でも特に、3-ジ(エチル)アミノ-6-メチル-7-(tert-ブトキシカルボニル)アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ジベンジルアミノフルオラン、3-ジブチルアミノ-7-ジベンジルアミノフルオラン、3-ジエチル-アミノ-6-メチル-7-(ジベンジルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-tert-ブチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(エトキシカルボニル)-フルオラン(例えばCiba(登録商標) Pergascript(登録商標) Orange IGの商品名で販売されている)、3-ジエチルアミノ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-6,8-ジメチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチルフルオラン、S-シクロヘキシルアミノ-[θ]-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-ベンゾ[a]フルオラン、3-ジエチルアミノ-ベンゾ[c]フルオラン、3-ジメチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(2,4-ジメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(3-トリフルオロメチルアニリノ)-フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(2-クロロアニリノ)-フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(2-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(p-オクチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(p-オクチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(p-メチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-エトキシエチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(3-メチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチル-アミノ-7-(3-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジエチル-アミノ-7-(2-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン(例えばCiba(登録商標) Pergascript(登録商標) Black I-2Rの商品名で販売されている)、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(2,4-ジメチルアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(2-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(4-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(2-フルオロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(3-トリフルオロメチル-アニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-6-エトキシエチル-7-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-クロロ-アニリノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(4-メチルアニリノ)-フルオラン、3-ジブチルアミノ-7-(2-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジブチルアミノ-7-(2-フルオロ-アニリノ)フルオラン、3-ジペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジペンチルアミノ-6-メチル-7-(4-2-クロロアニリノ)フルオラン、3-ジペンチル-アミノ-7-(3-トリフルオロメチルアニリノ)-フルオラン、3-ジペンチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジペンチルアミノ-7-(4-クロロ-アニリノ)フルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-プロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-メチル-N-シクロヘキシルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-シクロヘキシルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-ヘキシルアミノ)-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)-アミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-p-トルイジノ)アミノ-7-メチルフルオラン、3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-7-(2-クロロアニリノ)-フルオラン、3-(N-エチル-N-イソアンニルアミノ)-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-テトラヒドロフルフリル-アミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-ブチル-N-イソアミルアニリノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-イソプロピル-N-3-ペンチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N-エチル-N-エトキシプロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、2-メチル-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-メトキシ-6-p-(p-ジメチル-アミノフェニル)-アミノアニリノフルオラン、2-クロロ-3-メチル-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノ-アニリノフルオラン、2-ジエチルアミノ-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-フェニル-6-メチル-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、2-ベンジル-6-p-(p-フェニルアミノ-フェニル)アミノアニリノフルオラン、3-メチル-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)-アミノアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-p-(p-ジブチル-アミノフェニル)アミノアニリノフルオランおよび2,4-ジメチル-6-[(4-ジメチルアミノ)アニリノ]フルオランに言及することができる。フルオランは、当技術分野における公知の方法によって調製することができ、例えば、3-ジエチルアミノ-7-ジ-ベンジルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-tert-ブチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノ-フルオラン、および3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(2,4-ジメチルアニリノ)フルオランは、US 5,166,350 Aに記載のようにして調製することができ、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(3-メチルアニリノ)フルオランは、EP 0 546 577 A1に記載のようにして調製することができ、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオランは、DE 2130845に記載のようにして調製することができ、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオランおよび3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオランは、US 3,959,571 Aに記載のようにして調製することができ、3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオランは、GB 2 002 801 Aに記載のようにして調製することができ、ならびに3-(N-メチル-N-プロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオランは、GB 2,154,597 Aに記載のようにして調製することができる。
【0061】
ベンゾオキサジンの様々な既存の例の中でも特に、EP 0 187 329 A1に記載のようにして調製することができる2-フェニル-4-(4-ジエチルアミノフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-6-メチル-7-ジメチルアミノ-3,1-ベンゾオキサジン、ならびに2-フェニル-4-(4-ジエチルアミノフェニル)-4-(4-メトキシフェニル)-8-メチル-7-ジメチルアミノ-3,1-ベンゾオキサジンに言及することができる。キナゾリンの例は、4,4'-[1-メチルエチリデン)ビス(4,1-フェニレンオキシ-4,2-キナゾリンジイル)]ビス[N,N-ジエチルベンゼンアミン]である。トリアリールメタンの例は、ビス(N-メチルジフェニルアミン)-4-イル-(N-ブチルカルバゾール)-3-イル-メタンであり、これは、GB 1,548,059に記載のようにして調製することができる。
【0062】
スピロピランの様々な既存の例の中でも特に、1',3',3'-トリメチルスピロ[2H-1-ベンゾピラン-2,2'-インドリン]、1,3,3-トリ-メチルスピロ[インドリン-2,3'-[3H]ナフト[2,1-b][1,4]オキサジン]、および1',3',3'-トリメチルスピロ-[2H-1-ベンゾチオピラン-2,2'-インドリン]に言及することができる。キノンの例は、ヘマトキシリンであり、オキサジンの例は、3,7-ビス(ジメチル-アミノ)-10-ベンゾイルフェノキサジンである。チアジンの例は、3,7-ビス(ジメチルアミノ)-10-ベンゾイルフェノチアジンである。
【0063】
造塩発色性ロイコ染料は、フタリド、フルオラン、またはそれらの混合物であり得る。さらに、造塩発色性ロイコ染料は、3,3-ビス(1-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド(例えば、Ciba(登録商標) Pergascript(登録商標) Red I6Bの商標名において販売されている)、3-ジ-エチルアミノ-7-(エトキシカルボニル)-フルオラン(例えば、Ciba(登録商標) Pergascript(登録商標) Orange IGの商標名において販売されている)、または3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン(例えば、Ciba(登録商標) Pergascript(登録商標) Black I-2Rの商標名において販売されている)であり得る。別のロイコ染料は、ETAC(Yamada Chemical Co. Ltd.製)として商業的に知られている2'-アニリノ-6'-[エチル(p-トリル)アミノ]-3'-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9'-[9H]キサンテン]-3-オンである。
【0064】
ある実施形態によれば、造塩発色性ロイコ染料は、フルオラン、例えば、2'-アニリノ-6'-[エチル(p-トリル)アミノ]-3'-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9'-[9H]キサンテン]-3-オンである。
【0065】
それぞれ、様々な量のTAGおよびロイコ染料を使用することができる。当該インク配合物は、5から40重量%、例えば、10から30重量%のロイコ染料を含んでいてもよい。さらに、インク配合物は、5から50重量%、例えば、10から40重量%のTAGを含んでいてもよい。ロイコ染料:TAGの重量比は、1:1から1:5、例えば、1:2から1:5または1:1から1:3であり得る。
【0066】
インク配合物の活性化のためのNIRレーザーの使用は、ある特定の用途、例えば、既存の生産ラインへの導入において有利であるため、1つの態様では、インク配合物は、近赤外吸収剤もさらに含んでいてもよい。インク配合物は、0.1から10重量%、例えば、0.25から5重量%の近赤外吸収剤を含んでいてもよい。
【0067】
様々なタイプのNIR吸収剤が当技術分野において公知であり、その例は、
- 有機染料/顔料タイプ。そのようなNIR吸収剤の例は、例えば、US 6,911,262およびWO 2008/050153において開示されている。
- 化学量論的無機顔料タイプ、例えば、ヒドロキシルリン酸銅(II)などの銅塩。このタイプのNIR吸収剤の例は、WO 2005/068207において開示されており;ならびに
- 導電性ポリマー。導電性ポリマーは、重合状態において、連結したモノマー(典型的には環)を含む材料であり、当該モノマーは、共役しており、その結果、正または負電荷の非局在化/伝導を可能にし得る。このタイプのNIR吸収剤の例は、WO 2005/012442において開示されている。
【0068】
NIR吸収剤のさらなる例は、WO 2005/012442、WO 2005/068207、WO 2007/141522、およびWO 2008/050153において開示されている。
【0069】
好ましいタイプのNIR吸収剤は、WO 2007/141522において開示されている。当該刊行物では、様々なタイプの非化学量論的無機顔料タイプが開示されている。非化学量論的とは、化合物中における元素の比率が整数で表し得ない事実を意味する。非化学量論的無機NIR吸収剤の好ましい例は、還元されたインジウムスズ酸化物(r-ITO)である。
【0070】
ある実施形態によれば、インク配合物は、還元されたインジウムスズ酸化物を、典型的にはナノ粉末の形態において含む。還元されたインジウムスズ酸化物は、酸化スズでドープされた酸化インジウムを含む非化学量論的化合物であり、この場合、ドープされた酸化インジウムは還元されている。インジウムスズ酸化物の還元により、酸素が除去され、その結果、過剰なインジウムおよび/またはスズがゼロ酸化状態において、すなわち、金属インジウムおよび/またはスズの状態において残される。いかなる理論に束縛されるものではないが、固体格子を通って自由に移動する自由電子が生じると考えられる。この自由電子は、電気伝導性を付与し、r-ITOの場合には、NIR吸収特性を付与する。
【0071】
ある実施形態によれば、インク配合物中の還元されたインジウムスズ酸化物(r-ITO)は、1976 CIE(L*、a*、b*)空間により、50以下の明度(L*)を示す粉末形態のr-ITOである。好ましくは、粉末形態のr-ITOは、1976 CIE(L*、a*、b*)空間により、少なくとも20の明度(L*)を示す。
【0072】
1976 CIE(L*、a*、b*)空間は、1976年にCIE(Commision Internationale de lEclairage;または英語ではThe International Commission on Illumination)によって採用された色モデルである。それは、L、a、bと呼ばれていたRichard Hunterの以前の系を基にした反対色系である。色対立は、1960年代の半ばの発見と関連があり、視神経と脳との間のどこかで網膜の色刺激が、明るさと暗さ、赤と緑、および青と黄の間の区別へと変換されることを示唆している。1976 CIE(L*、a*、b*)空間色モデルでは、これが、3つの軸:L*、a*、b*、での値によって示される。中央の垂直軸は、明度(L*として示される)を表しており、0(黒)から100(白)へと延びている。色軸は、ある色が、赤と緑の両方、または青と黄の両方となることができない事実に基づいており、それは、これらの色がお互いに反対色であるためである。各軸上では、値は正から負へと広がっており、a軸上において、正の値は赤の量を示しており、その一方で、負の値は、緑の量を示している。b軸上において、正の値は黄の量を示しており、その一方で、負の値は青の量を示している。両方の軸に対して、ゼロは無彩色の灰色である。1976 CIE(L*、a*、b*)空間は、デバイスに依存しないため、非常に重要となり、色管理に使用されている。一例として、1976 CIE(L*、a*、b*)空間は、ICC(International Color Consortium)の、デバイスに依存しないモデルとして使用されている。
【0073】
r-ITOは、典型的には青色であり、したがって、典型的には負のa値を示す。マーキング用途において使用される場合、好ましくは、上記において示したように、粉末形態において、50以下の明度(L*)を有するべきである。したがって、好ましくは、本明細書において開示されるような、マーキング用途での使用のためのr-ITOは、暗色、例えば、暗青色であるべきである。
【0074】
r-ITOの試料の明度(L*)は、比色定量(colometry)によって測定することができる。一例として、GretagMacbeth製のSpectroEye分光測定器/濃度計を使用することができる。r-ITOの試料の明度(L*)の測定のために、粉末用セルを使用することができる。さらに、以下の設定照明タイプ:D65、D50、およびTL84;標準観測角:2°または10°、が使用され得る。好ましいのは、照明タイプD65および標準観測角2°である。
【0075】
ただし、上記において示されたように、1976 CIE(L*、a*、b*)空間は、デバイスに依存しない色モデルであり、したがって、他の分光測定器も使用して、r-ITOの試料の色を測定してもよい。
【0076】
ある実施形態によれば、還元されたインジウムスズ酸化物(r-ITO)における、0モル%を超える、例えば、少なくとも25モル%または少なくとも50モル%のスズが、ゼロ酸化状態のスズであり得る。さらに、還元されたインジウムスズ酸化物(r-ITO)における、100モル%未満、例えば、75モル%以下のスズが、ゼロ酸化状態のスズであり得る。その上、前記還元されたインジウムスズ酸化物(r-ITO)における、0モル%を超え、例えば、少なくとも5モル%だが25モル%以下の、あるいは少なくとも5モル%だが15モル%以下のインジウムが、ゼロ酸化状態のインジウムであり得る。
【0077】
明度は還元度に関連し得るが、他のパラメータ、例えば、化学量論、粒径、異物混入なども、r-ITOの明度に影響を及ぼし得る。上記において詳しく説明したように、本発明者らは、明度が、NIR吸収剤を含むインク配合物のマーキング性の標示のパラメータであることを見出した。
【0078】
還元されたインジウムスズ酸化物は、典型的には、粒子の形態において、すなわち、粉末として存在する。還元されたインジウムスズ酸化物の粒子は、10nmから10μmの範囲のメジアン粒径を有し得る。さらに、粒子は、ナノ粒子であり得、したがって、メジアン粒径は、1μm未満、例えば、250nm未満であり得る。ナノ粒子は、少なくとも10nmのメジアン粒径を有し得る。粒径を減少させると、NIR吸収特性が高められるであろう。
【0079】
ある実施形態によれば、メジアン粒径は、ISO規格9276-2または9276-5に従って測定される。さらに、粒子は、10nmから10μm、例えば、1μm未満、さらには250nm未満の体積基準粒径を有し得る。体積基準粒径は、少なくとも10nmであり得る。
【0080】
様々な種類の添加剤をインク配合物に組み入れることが可能であり、それが、ある特定の状況において有益であり得るであろうことは、当業者に理解されるであろう。そのような添加剤としては、例えば、ポリマーバインダー、熱式プリンター性能を促進する穏やかな還元剤、着色剤、例えば、染料または顔料、光安定化剤、例えば、UV吸収剤およびヒンダードアミン光安定化剤(HALS)、酸化防止剤および他の公知の安定化剤、pH緩衝剤、酸および塩基捕捉剤、ブロッキング防止材料、例えば、タルクまたは選ばれたシリカ、レーザー画像形成の任意の熱分解物対して吸着性または反応性を示す材料、界面活性剤、接着促進剤、分散助剤、インク流動性/レオロジー調整剤、湿潤剤、遅い乾燥の溶媒、速い乾燥の溶媒、殺生物剤などが挙げられる。
【0081】
インク配合物は、さらなる添加剤も含んでいてもよい。典型的には、インク配合物は、バインダーを含むであろう。バインダーは、水性コーティングもしくはインク配合物での使用にとって好適な様々な水溶性もしくはアミン安定化水性エマルションポリマーの1種または複数種であり得る。一例として、アクリルポリマーを使用することができる。さらに、インク配合物は、顔料、例えば、水分散性無機もしくは有機添加剤、例えば炭酸カルシウムなどを含んでいてもよい。インク配合物は、界面活性剤または潤滑剤、例えば、ステアリン酸亜鉛などならびに架橋剤、例えば、ZnOを含む、様々な添加剤のうちの1種または複数種を含んでいてもよく、これらを添加することで、画像スミアリングを低減することができる。さらに、インク配合物は、消泡剤、例えば、鉱油ベースの消泡剤を含んでいてもよい。インク配合物は、分散剤および/またはフィルム形成調整剤も含んでいてもよい。さらに、インク配合物は、光安定化剤、例えば、UV吸収剤およびヒンダードアミン、インク流動性/レオロジー調整剤、乾燥速度調整剤、例えば、遅い溶媒、例えばジエチレングリコール、および可塑剤、ならびに/あるいは接着促進剤、例えば、チタン酸化合物を含んでいてもよい。
【0082】
とりわけ、架橋剤、例えばZnOの添加は、後続のオーバーラミネート処理に対して、インク配合物のマーキング性を維持することができることが示されているので、好ましい。したがって、ある実施形態によれば、インク配合物は、ZnOを含む。好ましくは、インク配合物は、30〜40重量%のZnOを含む水溶液を、2.5重量%から10重量%の間、例えば約5重量%含む。
【0083】
ある実施形態によれば、インク配合物は、水性であり、すなわち、インク配合物は、水を含む。一例として、組成物は、5から95重量%、例えば、10から50重量%の水性溶媒を含み得る。水性溶媒は、少なくとも10重量%の水、好ましくは少なくとも50重量%、例えば、少なくとも75重量%または少なくとも95重量%、の水を含み得る。
【0084】
水性配合物は、揮発性溶媒を含む配合物よりも健康への有害性が少ないという利点を有する。水性インク配合物は、水混和性有機溶媒、例えば、C1〜4-アルカノール、C2〜4-ポリオール、C3〜6-ケトン、C4〜6-エーテル、C2〜3-ニトリル、ニトロメタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドン、およびスルホランをさらに含んでいてもよく、この場合、C1〜4-アルカノールおよびC2〜4-ポリオールは、C1〜4-アルコキシ基で置換されていてもよい。
【0085】
C1〜4-アルカノールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールもしくはブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、およびtert-ブタノールが挙げられる。それらのC1〜4-アルコキシ誘導体の例は、2-エトキシエタノールおよび1-メトキシ-2-プロパノールである。C2〜4-ポリオールの例は、グリコールおよびグリセロールである。C3〜6-ケトンの例は、アセトンおよびメチルエチルケトンである。C4〜6-エーテルの例は、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエチル、およびテトラヒドロフランである。C2〜3-ニトリルの例は、アセトニトリルである。好ましくは、水混和性有機溶媒は、C1〜4-アルカノール、C2〜4-ポリオール、C3〜6-ケトン、ジメチルホルムアミド、およびジメチルアセトアミドからなる群より選択され、この場合、C1〜4-アルカノールおよびC2〜4-ポリオールは、C1〜4-アルコキシ基で置換されていてもよい。
【0086】
基材を覆うポリマーは、典型的には、透明でクリアなポリマーである。典型的には、ポリマーは、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン(例えば、低密度ポリエチレン(LDPE))またはポリプロピレンである。熱可塑性ポリマー層の厚さは、10から60μm、例えば、12から50μmまたは15から40μmであり得る。一例として、熱可塑性ポリマー層は、溶融押出によって基材に適用することができる。ポリオレフィンの場合、そのような溶融押出でのポリマー溶融の温度は、200℃から340℃の間、例えば、280℃から330℃の間であり得る。溶融押出においてより低い温度を使用することは、TAGの活性化による退色を低減するために好ましくあり得るが、好ましくは、基材への熱可塑性ポリマー層の良好な接着を提供するために十分に高くあり得るべきである。したがって、本発明において開示されるTAG/ロイコ染料は、基材への熱可塑性ポリマー層の良好な接着を提供するために、大幅な退色を生じることなく、約300℃においてそれらを熱可塑性ポリマー層で覆うことができるので、そのようなTAG/ロイコ染料の使用は有利である。
【0087】
基材における、ポリマーで覆われた範囲は、インク配合物でコーティングされた表面を、予め作成されているポリマーフィルムでラミネートすることによっても達成され得る。
【0088】
インク配合物は、ポリマー中にコンパウンド化して、ポリマーと共に共押出してもよいが、基材上にポリマーを溶融押出し、続いてインク配合物でコーティングするのが好ましい。ポリマーが、インク配合物上に溶融押出されても、インク配合物は、いずれにせよ、ポリマーが固化すると、少なくともある程度は熱可塑性ポリマー層内に取り込まれる。
【0089】
インク配合物は、フレキソ印刷によって基材上にコーティングしてもよい。様々な量のインク配合物を適用することができる。コーティングの重量は、マーキング性、ならびに熱可塑性ポリマー層の剥離抵抗性などの基材の他のパラメータに影響を及ぼすであろう。ある実施形態によれば、0.5から20g/m2、例えば、1.0から10g/m2または2から5g/m2の乾燥コーティング重量が採用され得る。
【0090】
一実施形態において、インク配合物は、基材の片面上のみにコーティングされる。一実施形態において、インク配合物を含む面は、それが液体食品のための包装材料の一部である場合、液体食品と接触することが意図されない外面上であるであろう。
【0091】
基材は、様々な種類のものであってよい。ある実施形態によれば、基材は、紙、厚紙、段ボール紙、板紙、プラスチックフィルム、硬質プラスチック成形品(plastic part)、織物、木、金属、ガラス、または革であり得る。さらに、基材は、紙、厚紙、板紙、プラスチックフィルム、および/または金属フィルムの層を含むラミネートであってもよい。さらに、インク配合物が、紙、厚紙、または板紙上にコーティングされる場合、紙、厚紙、または板紙は、クレーコーティングされていてもよい。
【0092】
具体例として、基材は、梱包材料の一部、例えば、液体食品用包装材料であり得る。ある実施形態によれば、そのような梱包材料は、製品、例えば液体食品と接触することが意図されるポリオレフィンの最内層(任意により、多層フィルムであってもよい)を含む。基材と最内層との間には、バリア材料が配置される。基材の熱可塑性ポリマー層は、液体食品用包装材料の最外層であり、そのため、製品と接触することは意図されない。バリア材料は、ガスバリア、例えば酸素バリアなど;水蒸気バリア;光バリア、または臭気バリアであり得る。バリア材料の例は、アルミニウムホイルまたは金属蒸着層を有するフィルムである。他のバリア材料は、エチレンビニルアルコールコポリマー(EvOH)およびポリアミド(PA)である。任意により、接着を促進するための接着層が使用される。基材は、紙、厚紙、段ボール紙、板紙、プラスチックフィルム、例えば、多層フィルム、硬質プラスチック成形品、織物、木、金属、ガラス、または革から選択される。任意により、基材とバリア材料との間に、接合層が配置される。基材は、通常、印刷物を有しており、外側の熱可塑性ポリマー層、例えばLDPEで覆われている。
【0093】
最内層は、LDPE、LLDPE、mLLDPE、およびVLDPE、あるいはそれらのブレンドから選択される低密度ポリエチレンであり得る。最内層は、加熱封止することが可能である。接着層および接合層は、お互いに独立して、エチレンアクリル酸コポリマー(EAA)、エチレンメタクリル酸コポリマー、またはLDPEであり得る。
【0094】
さらなる実施形態は、本明細書の上記において説明したそのような食品包装材料を含む液体食品包装に関する。液体食品包装は、包装材料が充填装置に供給されるロール供給システムによって得ることができる。図1は、ロール供給充填装置を図式的に示しており、装置では、包装材料が、殺菌され、管状に折られ(61)、長手方向に封止される(63)。長手方向に封止された管は、製品(64)で満たされた後、横方向に封止される(65)。封止工程は、誘導封止または超音波封止によって実施され得る。封止された包装は、その後、切断され、最終的に包装(66)へと折られる。あるいは、包装材料は、充填装置において使用される前に、予め切断しておいてもよい。予め切断されている包装材料は、通常、ブランクと呼ばれ、例えば、切妻上部タイプの包装の製造において使用されている。
【0095】
液体食品による液体食品包装の充填工程および包装の封止工程に関連して、インク配合物の活性化により、基材上に情報を印刷することができる。包装材料の殺菌は、慣習的に、過酸化水素によって、および/または放射線、例えば、UVまたはEB放射線によって実施される。インク配合物は、熱可塑性ポリマー層によって覆われるので、充填装置での工程の際に保護され、ポリマー層で保護されていなければ、充填装置において、例えば退色などによりインクが損なわれ得る。
【0096】
ある実施形態によれば、インク配合物は、任意によりクレーコーティングされていてもよい紙の最外面を有する基材上にコーティングされる。
【0097】
別の実施形態によれば、インク配合物は、プラスチックの最外面を有する基材、例えば、硬質プラスチック成形品の一部を形成する基材上にコーティングされ、その場合、基材は、プラスチックフィルムであるか、または基材は、最外層がプラスチック層であるラミネートである。
【0098】
さらなる実施形態は、本明細書において開示されるような基材を得るための方法に関する。そのような方法において、基材は、インク配合物でコーティングされる。それに続いて、コーティングされた基材は、インク配合物が基材と熱可塑性ポリマー層との間および/または熱可塑性ポリマー層内に位置されるように、熱可塑性ポリマー層で覆われる。コーティングの態様ならびに被覆工程は、本明細書の上記において提供されている。
【0099】
式(I)によるホウ素もしくはケイ素を含む有機金属化合物のアミン塩およびアミン中和されたポリアルキルナフタレンポリスルホン酸誘導体は、好ましい熱活性化酸発生剤であるが、他の熱活性化酸発生剤(TAG)も、マーキング可能な基材を得るために用いることができる。そのような代替のTAGが用いられる実施形態では、TAGおよび造塩発色性ロイコ染料を含むインク配合物の成分は、好ましくは、少なくとも0.7のODBを有するマーキングが、780から2500nmの範囲の動作波長を有するレーザーを基材に照射することによって達成され得るように選択されるべきである。さらに、TAGおよび造塩発色性ロイコ染料を含むインク配合物の成分は、基材を退色させることなくインク配合物が熱可塑性ポリマー層で覆うことができるように、インク配合物が基材と熱可塑性ポリマー層との間および/または熱可塑性ポリマー層内に位置されるように、選択されるべきである。1976 CIE(L*、a*、b*)空間を使用する場合、熱可塑性ポリマー層による被覆の後の色差、すなわちΔEは、式:
【0100】
【数2】
【0101】
で表すことができ、この場合、L*1、a*1、およびb*1は、1976 CIE(L*、a*、b*)空間による、熱可塑性ポリマー層で覆われる前の基材の色を意味し、L*2、a*2、およびb*2は、1976 CIE(L*、a*、b*)空間による、熱可塑性ポリマー層で覆われた後の基材の色を意味する。ある実施形態は、包装材料での使用にとって好適なマーキング可能な基材を得るための方法に関する。そのような方法において、基材は、熱活性化酸発生剤(TAG)および造塩発色性ロイコ染料を含むインク配合物でコーティングされる。その後、基材は、インク配合物が基材と熱可塑性ポリマー層との間および/または熱可塑性ポリマー層内に位置されるように、熱可塑性ポリマー層で被覆される。熱活性化酸発生剤(TAG)および造塩発色性ロイコ染料は、熱可塑性ポリマー層で前記インク配合物を被覆する工程の結果として得られる、1976 CIE(L*、a*、b*)空間による色差、すなわち、
【0102】
【数3】
【0103】
が、10未満、例えば、4未満、さらには2未満となるように選択される。さらに、熱活性化酸発生剤(TAG)および造塩発色性ロイコ染料、ならびにインク配合物の他の成分は、780から2500nmの範囲の動作波長を有するレーザーを基材に照射することによって少なくとも0.7のODBを有するマーキングが達成され得るように選択される。
【0104】
さらなる実施形態は、本明細書において開示される方法によって得ることができる基材であって、780から2500nmの範囲の動作波長を有するレーザーを基材に照射することによって少なくとも0.7のODBを有するマーキングを得るためにマーキングされ得る基材に関する。
【0105】
さらなる実施形態は、本明細書において開示されるような基材にマーキングする方法に関する。そのような方法では、マーキングを形成するために、熱可塑性ポリマー層で覆われたコーティング済みの基材の、マーキングが意図される部分が照射される。
【0106】
ある実施形態によれば、コーティングの一部のみが照射され、それにより、決められたパターンのマーキングを得ることができる。典型的には、必ずしも必要ではないが、そのような実施形態では、基材の少なくとも一部は、平坦なコーティングを備える。そのような平坦なコーティングへの照射では、マーキングは、コーティングに照射された場所に現れるであろう。平坦なコーティングの一部のみに照射することにより、決められたパターンのマーキングを得ることができる。喩えて言うと、これは、コーティングでのレーザービームによる書き込みまたはエッチングのように見ることができる。
【0107】
別の実施形態によれば、インク配合物は、決められたパターンにコーティングされる。そのようにコーティングされた基材へのマーキングでは、マーキングを形成するために、コーティング全体、または決まったパターンの少なくとも一部に照射される。喩えて言うと、これは、マーキングを得るために、コーティングされたパターンを発現させているように見ることができる。
【0108】
基材のマーキングにおいて、典型的には、暗色を有するマーキングとして表れるマーキングが対比的で明確に視認されるために、インク配合物でコーティングされる基材の色は、典型的には淡い色である。暗色の基材の場合、淡い色の顔料が、インク配合物中に含められ得る。基材は透明であってもよい。透明な基材の例としては、プラスチックフィルムおよびガラス基材が挙げられる。さらに、基材は、透明性が低くてもよく、さらに、実質的に不透明であってもよい。透明性の低い基材または実質的に不透明な基材の典型的な例は、紙の基材、または紙を含む基材、例えば包装ラミネートである。マーキングは、典型的には暗色を有するので、マーキングがバックグラウンドに対して対比的であり、その結果として明確に視認されるために、基材の明度(L*)は、好ましくは高くあるべきである。黒みがかった、暗茶色の、または暗灰色のマーキングは、対比的な白または淡灰色の基材、例えば、未着色またはクレーコーティングされた紙基材の上では、明確に視認されるであろう。
【0109】
急速で正確なマーキングを可能にするために、基材は、典型的には、レーザーを照射される。レーザーに加え、ダイオード、ファイバー結合ダイオードアレイシステム、またはダイオードアレイシステムも、マーキングを形成するために使用することができる。一例として、コヒーレント光および非コヒーレント光の両方を放射することができるダイオードアレイシステムは、高速連続画像形成または「オンザフライ」画像形成での使用にとって、特に好適である。
【0110】
他の波長、例えば、約10μmの波長も使用することができるが、照射源、例えば、レーザーまたはダイオードアレイシステムが、700から2500nmの範囲の動作波長を有することが好ましい。700から2500nmの動作波長を有するレーザーの例は、Nd:YAGレーザーおよびNIRファイバーレーザーである。
【0111】
基材が液体食品包装の一部である一実施形態により、基材は、液体食品で液体食品包装を満たす工程に関連してマーキングされる。
【0112】
別の実施形態は、マーキングされた基材に関する。そのようなマーキングされた基材は、まさに説明されるようにして得ることができる。
【0113】
さらに詳述することなく、当業者は、先述の説明を用いて、本発明の範囲を完全に利用することができると考えられる。したがって、本明細書において説明される好ましい特定の実施形態は、単なる例示として解釈されるべきであり、決していかなる場合も、説明の残りの部分の制限と解釈されるべきではない。さらに、本発明について、上記において特定の実施形態を参照しながら説明してきたが、それは、本明細書で説明される特定の形態に限定されることを意図するものではない。むしろ、本発明は、添付の請求項によってのみ限定され、上記の特定の実施形態以外の他の実施形態、例えば、上記において説明されたものとは異なる実施形態も、これらの添付の請求項の範囲内において同様に可能である。
【0114】
請求項において、用語「含む/含むこと(「comprises/comprising」)」は、他の要素または工程の存在を排除しない。さらに、個々の特徴は、異なる請求項にも包含され得、これらは、可能であれば、有利には、組み合わせることができ、ならびに異なる請求項への包含は、特徴の組み合わせが実現可能および/または有利ではないということを意味するものではない。
【0115】
さらに、単数指示は、複数指示を排除するものではない。用語「1つの(「a」、「an」)」、「第一」、「第二」などは、複数の存在を排除するものではない。
【0116】
実験
【実施例】
【0117】
以下の実施例は、単なる例であり、決して、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。むしろ、本発明は、添付の請求項によってのみ限定される。
【0118】
インク配合物
Silversonミキサーを使用して、以下に示す成分を予備混合することによって、以下に示すとおりの様々なインク配合物を調製した。次いで、予備混合した成分を、Eiger-Torreanceビーズミルを使用して、Hegmann粉ゲージを使用して測定した場合にサブ5ミクロンの粒径が得られるまで、細砕した。次いで、様々なインク配合物のマーキング特性を評価した。
【0119】
配合物1から8および10において用いたTAGは、それぞれ、WO 2006/108745に記載されているとおりに得た(実施例3および実施例5を参照のこと;トリ-n-ブチルアンモニウムボロジサリチレートの調製では、トリペンチルアミンをトリブチルアミンに置き換えたことを除いて、実施例7の手順を用いた)。用いたナノ粉末のr-ITOは、50未満の明度(L*)および90:10のIn:Sn重量比を有した。
【0120】
様々なインク配合物中の他の成分は、以下に示す商業的供給元から得た。
・Joncryl LMV7085(例えばBASF製) - スチレン-アクリル樹脂溶液バインダー
・Dispelair CF49(例えばBlackburn Chemicals製) - 鉱油消泡剤
・Dispex A40(例えばBASF製) - アクリルポリマーのアンモニウム塩の水溶液 - 分散剤
・BYK-348(例えばBYK製) - シリコーン界面活性剤
・DEG - ジエチレングリコール - 遅延剤
・ETAC(例えばYamada製) - 造塩発色性ロイコ染料発色剤
・ベンジル酸/ホウ酸/トリブチルアミン((トリ-n-ブチルアンモニウムボロジベンジレート) - TAG
・r-ITOナノ粉末(NIR吸収剤)
・Joncryl 8052(例えばBASF製) - フィルム形成アクリルエマルションバインダー
・酸化亜鉛水溶液(30〜40重量%;BASF製) - 架橋剤
・Joncryl 90(例えばBASF製) - スチレン-アクリルコポリマーエマルションバインダー
・Joncryl 1180(例えばBASF製) - スチレン-アクリルコポリマーエマルションバインダー
・Elvacite 2669(例えばLucite International製) - 水溶性アクリルコポリマーバインダー
・Agitan 350(例えばMunzing製) - 非油、非シロキサン消泡剤
【0121】
比較配合物1
Joncryl LMV7085 28重量%
水 21重量%
Dispex A40 0.5重量%
r-ITO 1wt%
ETAC(造塩発色性ロイコ染料) 16.5重量%
ベンジルpーヒドロキシベンゾエート(TAG) 33重量%
【0122】
比較配合物2
ETACがWincon 2に置き換えられることを除いて、比較配合物1と同じ組成
【0123】
配合物1
Joncryl LMV7085 15重量%
水 15重量%
Dispelair CF49 0.5重量%
Dispex A40 0.2重量%
BYK-348 0.4重量%
DEG 0.4重量%
ETAC(造塩発色性ロイコ染料) 17重量%
トリ-n-ブチルアンモニウムボロジベンジレート(TAG) 34重量%
r-ITO 2.5重量%
Joncryl 8052 10重量%
酸化亜鉛水溶液(30〜40重量%) 5重量%
【0124】
配合物2
Joncryl LMV7085 26重量%
水 17重量%
Dispelair CF49 0.5重量%
Dispex A40 0.2重量%
DEG 0.8重量%
ETAC(造塩発色性ロイコ染料) 20重量%
トリ-n-ブチルアンモニウムボロジベンジレート(TAG) 28重量%
r-ITO 2.5重量%
酸化亜鉛水溶液(30〜40重量%) 5重量%
【0125】
配合物3
Joncryl LMV7085 27重量%
水 10重量%
Dispelair CF49 0.5重量%
Dispex A40 0.2重量%
DEG 0.8重量%
ETAC(造塩発色性ロイコ染料) 15重量%
トリ-n-ブチルアンモニウムボロジベンジレート1(TAG) 39重量%
r-ITO 2.5重量%
酸化亜鉛水溶液(30〜40重量%) 5重量%
130%の水を含む
【0126】
配合物4
Joncryl LMV7085 31.8重量%
水 20重量%
Dispelair CF49 0.5重量%
Dispex A40 0.2重量%
ETAC(造塩発色性ロイコ染料) 15重量%
トリ-アリルアンモニウムボロフェニルジベンジレート(TAG) 30重量%
r-ITO 2.5重量%
【0127】
配合物5
Joncryl LMV7085 31.8重量%
水 20重量%
Dispelair CF49 0.5重量%
Dispex A40 0.2重量%
ETAC(造塩発色性ロイコ染料) 15重量%
トリ-n-ブチルアンモニウムボロジベンジレート(TAG) 30重量%
r-ITO 2.5重量%
【0128】
配合物6
Joncryl LMV7085 20重量%
水 16.8重量%
Dispelair CF49 0.5重量%
Dispex A40 0.2重量%
ETAC(造塩発色性ロイコ染料) 15重量%
トリ-n-ブチルアンモニウムボロジベンジレート(TAG) 30重量%
r-ITO 2.5重量%
Joncryl 90 10重量%
酸化亜鉛水溶液(30〜40重量%) 5重量%
【0129】
配合物7
Joncryl LMV7085 19重量%
水 16.8重量%
Dispelair CF49 0.5重量%
Dispex A40 0.2重量%
ジエチレングリコール 1重量%
ETAC(造塩発色性ロイコ染料) 15重量%
トリ-n-ブチルアンモニウムボロジサリチレート(TAG) 30重量%
r-ITO 2.5重量%
Joncryl 1180 10重量%
酸化亜鉛水溶液(30〜40重量%) 5重量%
【0130】
配合物8
JoncryL LMV7085 27.5重量%
水 18重量%
Dispelair CF49 0.5重量%
Dispex A40 0.2重量%
DEG 0.8重量%
ETAC(造塩発色性ロイコ染料) 20重量%
トリ-n-ブチルアンモニウムボロジベンジレート(TAG) 28重量%
r-ITO 2.5重量%
酸化亜鉛水溶液(30〜40重量%) 2.5重量%
【0131】
配合物9
Nacure 1551(TAG) 30重量%
Elvacite 2669 6重量%
25%のアンモニア溶液 4重量%
Agitan 350 0.5重量%
プロパン-2-オール 5重量%
水 37重量%
ETAC(造塩発色性ロイコ染料) 15重量%
r-ITO 2.5重量%
1ジノニルナフタレンジスルホン酸誘導体
【0132】
配合物10
Joncryl LMV7085 20.0重量%
水 16.8重量%
Dispex A40 0.2重量%
Dispelair CF49 0.5重量%
r-ITO 2.5重量%
Wincon2 15.0重量%
トリ-n-ブチルアンモニウムボロジベンジレート(TAG) 30.0重量%
Joncryl 90 10.0重量%
酸化亜鉛水溶液(30〜40重量%) 5.0重量%
【0133】
様々なインク配合物を、それぞれセル体積が7.75、10、および18cm3/m2と増加する3つの異なるAnilox携帯式フレキソプルーファの形態において、フレキソ印刷技術を用いて、それぞれクレーコーティングされた板紙に適用した。ガルボミラーをベースとする画像形成ヘッドに取り付けられ、PCに連結された、5W、1550nmのファイバーレーザーを使用して、コーティングされた基材のレーザー画像形成性能、すなわち、マーキング性を特定した。0から5J/cm2(100%の速度)のフルエンス範囲を用いて、画像形成を実施した。得られた最大ODBを、表1(Table1)から表3(Table3)に示す。
【0134】
さらに、コーティングされた基材を、325℃および500m/分のラミネート処理速度において、LDPE(12g/cm2)でオーバーラミネートした。
【0135】
コーティングされた基材と、コーティングが適用される未コーティングの未処理(白色)基材との間の、1976 CIE(L*、a*、b*)空間による色差、すなわち、
【0136】
【数4】
【0137】
を、GretagMacbeth製のSpectroEye分光光度計/濃度計(照明タイプ:D65;標準観測角:2°)を使用して測定した。より低いΔEの値は、元の未コーティングの基材により近く、したがって、コーティングされた基材は、より白く見える。様々なインク配合物によって得られる色差を、表1(Table1)から表3(Table3)に示す。
【0138】
さらに、ガルボミラーをベースとする画像形成ヘッドに取り付けられ、PCに連結された、5W、1550nmのファイバーレーザーを使用して画像形成することにより、オーバーラミネートされた基材のマーキング性を特定した。0から5J/cm2(100%の速度)のフルエンス範囲を用いて、画像形成を実施した。オーバーラミネートされた基材によって得られる最大ODB(光学濃度黒)を、表1(Table1)から表3(Table3)に示すが、この場合、
BHB=ベンジルp-ヒドロキシベンゾエート
BABoTBA=ベンジル酸/ホウ酸/トリブチルアミン
BASiPhTAA=ベンジル酸/フェニルシラン/トリアリルアミン
SABoTBA=サリチル酸/ホウ酸/トリブチルアミン
ETAC=2'-アニリノ-6'-[エチル(p-トリル)アミノ]-3'-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9'-[9H]キサンテン]-3-オン
Wincon2=6'-(ジブチルアミノ)-3'-メチル-2'-(フェニルアミノ)-3H-スピロ[イソベンゾフラン-1,9'-キサンテン]-3-オン
である。
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
【表3】
【0142】
BHBを含むインク配合物は、良好なマーキング性を有する基材を提供する、すなわち、高いODB値を有するマーキングを得ることができるであろうが、そのようなインク配合物でコーティングされた基材は、インク配合物が加熱によって活性化されるので、ラミネート処理の際に退色する傾向がある(表1(Table1)から表3(Table3)のΔEを参照のこと)。
【0143】
表1(Table1)から表3(Table3)に示されるように、当技術分野において典型的に使用されるTAGであるBHBを、ホウ素もしくはケイ素を含む有機金属化合物のアミン塩またはアミン中和されたポリアルキルナフタレンポリスルホン酸誘導体で置き換えることにより、ラミネート処理の際に退色を受けにくい基材が得られる(表1(Table1)から表3(Table3)のΔEを参照のこと)。さらに、そのような基材は、いずれにしても、その後に良好なマーキング性を示した。したがって、ホウ素もしくはケイ素を含む有機金属化合物のアミン塩またはアミン中和されたポリアルキルナフタレンポリスルホン酸誘導体と造塩発色性ロイコ染料とを含むインク配合物でコーティングされた基材は、ポリマーによるオーバーラミネートに、ならびにそれに続くマーキング、例えば画像形成、に良く適している。
【0144】
さらに、オーバーラミネート処理の後に得ることができる最大ODBが、ZnOが存在する場合にはあまり低下しないことから、ZnOの存在が、オーバーラミネート処理の後に、改良されたマーキング性を有する基材を提供することは、表1(Table1)から表3(Table3)より明かである。
【0145】
画像形成後に、ラミネートされた基材にピペットによって赤インクを塗布しても、板紙中への赤インクのいかなる浸透も視認されなかった。浸透の可能性を、PIAS II装置を使用してさらに評価した。いずれの基材においても、浸透は認められず、これは、最外の保護ポリマー層を破壊することなく、基材にマーキングできることを裏付けている。
【0146】
ラミネートされた基材も、ASTM F1929-98(2004)「染色浸透による多孔質医療包装のシール漏れ検出のための標準試験方法」によって評価することができる。
【符号の説明】
【0147】
61 管状に折られる
62
62’
63 長手方向に封止される
64 製品
65 横方向に封止される
66 包装
図1