(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、患者の健康状態を診断する臨床検査において、イムノクロマト法を利用した臨床検査が多く採用されている。イムノクロマト法は(1)特別な測定機械を必要とせず、目視で判定できる、(2)検査にかかる時間が数分程度と極めて短時間で済む、(3)検査のための操作が簡単であり、特別な技術を必要としない、等の優れた特徴を有している。これらの特徴により、イムノクロマト法は、医療現場において主にインフルエンザ等のウイルス検査や細菌感染検査に用いられており、検査診断後の迅速な治療の開始や的確な処置を可能としている。
【0003】
イムノクロマト法によるウイルス検査や細菌感染検査は、主に患者の鼻腔、咽頭又は結膜等を綿棒やスワブ等の検体採取具で拭って採取された検体について行われる。採取された検体は、抽出液に浸漬することにより分散又は溶解され、イムノクロマトグラフィー測定用の展開液として調整される。
図11に示すように、この検体が分散された抽出液5´は、イムノクロマトグラフィーのテストストリップ31´が組み込まれたハウジング32´の表面に設けられた添加穴33´より、所定量滴下することにより、テストストリップ31´に導入される。その際、感染力の強いウイルスや細菌等が検体に含まれている場合には、検体抽出液及び使用済みの検体採取具が取扱者に接触することによる感染や、検体抽出液の外部環境への飛散又は漏出、検体採取具の外部環境への接触等による微生物汚染のおそれがある。そのため、検査中だけでなく、検査後の検体採取具や検体抽出液等の廃棄に至るまで、感染及び微生物汚染の防止対策を行う必要がある。
【0004】
そこで、本出願人は、取扱者への接触及び外部環境への漏出等を防ぐことができる検査用キットを提案している(特許文献1及び特許文献2)。
【0005】
特許文献1で提案された検査用キットは、検体採取治具と、検体抽出液が内部に収容された容器本体と、検体採取治具を容器本体に収容したまま容器本体の開口部を封止する検体採取治具収容機能付き封止蓋とを主に備えている。それゆえ、この検査用キットは、検体採取治具によって採取した検体を検体抽出液に移行させた後、容器本体と検体採取治具収容機能付き封止蓋により形成される空間に、検体抽出液と使用済みの検体採取治具を密封することができる。
【0006】
また、特許文献2で提案された検査用キットは、長手方向の一端に検体採取部を備え、長手方向の他端にキャップ部を備え、その間に軸部を備えた検体採取具と、調整液が内部に収容され、検体採取具の検体採取部と軸部とを収容できる検体調整容器とを主に備えている。この検査用キットは、検体採取具のキャップ部を把持して検体を採取し、検体を調整液に移行させた後、検体採取具の検体採取部及び軸部を検体調整容器内に収容し、把持しているキャップ部でそのまま検体調整容器の開口部を封止することにより、検体調整液と使用済みの検体採取具を検体調整容器内に密封することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び2に記載されたいずれの検査キットにおいても、検体の調整(抽出)に関しては密閉的に行われ、クローズドシステムが実現できている。しかしながら、
図11に示すように、調整した抽出液5´をテストストリップ31´等の検査手段3´に適用する際には、抽出液5´を密閉された抽出容器2´から「滴下」しなければならないため、非密閉(オープン)状態となっており、さらなるクローズドシステム化が求められていた。
【0009】
また、調整した抽出液をテストストリップ等の検査手段に適用する際には、テストストリップが収容されたハウジングの表面に設けられた添加穴より、抽出液を、例えば「3滴」や「5滴」など、所定数カウントしながら滴下しなくてはならないため、手間がかかっていた。また、通常、ハウジングの表面に設けられた添加穴は縦横数ミリ程度と小さいため、抽出液の滴下がうまくいかず、別の場所にこぼれてしまったり、確実に所定量を滴下することが難しいことがあった。
【0010】
本発明の目的は上述した点に鑑み案出されたもので、検体抽出液等の検体試料をテストストリップ等の検査手段に滴下せずに、他の方法により添加導入することができる検査用装置を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、ウイルスや細菌等が含まれている可能性のある検体試料が、取扱者に接触したり、外部環境に露出することのないように閉鎖的に安全に検査を行うことができ、操作自体も簡単な検査用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の検査用装置は、添加された抽出液をイムノクロマト法又は核酸クロマト法を利用して検査する検査手段と、抽出液が内部に収容される抽出容器とを備えている。検査手段は、抽出液を添加するための添加穴が設けられたハウジングと、ハウジングの内部に収容され、抽出液を展開可能なテストストリップと、テストストリップに一端が当接するように添加穴に埋設された、毛管作用を有する抽出液誘導体とを有しており、抽出容器は、検査手段の添加穴と密封的に連通可能に構成され、抽出容器と検査手段の添加穴との連通により、抽出液誘導体に吸収された抽出液が、毛管作用によって抽出液誘導体内を移動し、テストストリップに当接した抽出液誘導体の一端を介してテストストリップに添加されるように構成されている。
【0013】
本発明の検査用装置は、少なくとも検査手段と抽出容器を備えている。このうち、検査手段は、添加穴が設けられたハウジングと、抽出液を展開可能なテストストリップとを有し、テストストリップはハウジングの内部に収容されている。このハウジングに設けられた添加穴には、毛管作用を有する抽出液誘導体が埋設され、この抽出液誘導体の一端はハウジング内でテストストリップに当接するように配置されている。また、抽出容器は検査手段の添加穴と密封的に連通するように構成されている。したがって、抽出容器と検査手段の添加穴とが密封的に連通することにより、抽出容器の内部に収容されていた抽出液が添加穴に埋設されている抽出液誘導体を介してテストストリップに添加される。すなわち、添加穴に流入した抽出液は、毛管作用を有する抽出液誘導体に吸収されたのち、毛管作用により抽出液誘導体内をテストストリップ方向に移動し、テストストリップに当接した一端を介してテストストリップに添加される。それゆえ、抽出液を滴下することなく、テストストリップに簡単かつ確実に抽出液を添加することができる。
【0014】
抽出容器は、胴部と、胴部の軸方向の一端が封止された底部と、胴部の軸方向の他端に設けられた開口部とを有しており、検査手段は抽出容器の底部に貫通孔を形成するための貫通孔形成手段を備えており、貫通孔形成手段によって形成された貫通孔を介して、抽出容器と検査手段の添加穴とが密封的に連通するように構成されていることも好ましい。抽出容器と検査手段の添加穴との連通は、抽出容器の底部を検査手段に備えられた貫通孔形成手段で破り、貫通させることにより行われる。その際、抽出容器と検査手段の添加穴とは密封的に連通し、抽出液が抽出容器の底部から添加穴に埋設された抽出液誘導体に吸収される。これにより、抽出液を検査手段に添加したい時に容易に抽出容器と検査手段とを直接的に連通させることができる。また、抽出容器と検査手段とが密封的に連通されるため、検体及び検体が付着した器具等に取扱者が接触することなく、安全に検査を行い、使用済みの検査用装置を処分することができる。
【0015】
貫通孔形成手段は、添加穴の周縁部に設けられた凸状爪部であることも好ましい。抽出容器と検査手段との連通にあたり、抽出容器の底部を検査手段に備えられた貫通孔形成手段で破って貫通させるところ、貫通孔形成手段は添加穴の周縁部に設けられた凸状爪部であり、この凸状爪部が抽出容器の底部を破り、貫通孔を形成する。その際、抽出容器の底部と検査手段の添加穴とが密封的に連通し、抽出液が抽出容器から検査手段の添加穴に移動し、添加穴に埋設された抽出液誘導体に吸収される。このように抽出容器の底部に添加穴の周縁部に設けられた凸状爪部を嵌めこむことにより、底部に貫通孔を形成して抽出容器と検査手段とを連通させることができるため、簡単に検査用装置を使用することができる。
【0016】
また、貫通孔形成手段は、抽出液誘導体の他端を尖らせて形成された尖端部であることも好ましい。抽出容器と検査手段との連通にあたり、抽出容器の底部を検査手段に備えられた貫通孔形成手段で破って貫通させるところ、貫通孔形成手段は抽出液誘導体の他端を尖らせて形成された尖端部であり、この尖端部が抽出容器の底部を破り、貫通孔を形成する。その際、抽出容器の底部と検査手段の添加穴とが密封的に連通し、抽出液が抽出容器から検査手段の添加穴に移動し、添加穴に埋設された抽出液誘導体に吸収される。抽出液誘導体は、抽出液を吸収してテストストリップに抽出液を導く機能と、抽出容器に貫通孔を形成し、抽出容器と検査手段とを連通させる機能とを有する。このように貫通孔形成手段を簡易な構成とすることができるため、検査手段の構造を簡易にすることができる。
【0017】
抽出容器の底部には、その内壁又は外壁に配設された底部側係合手段を少なくとも1つ備えており、添加穴近傍の外壁又は内壁には、底部側係合手段と係合する添加穴側係合手段を備えていることが好ましい。本発明の検査用装置は、抽出容器の内部に収容された抽出液を検査手段に備えられた抽出液誘導体を介してテストストリップに添加できるように構成されている。この添加の際、抽出容器の底部近傍の内壁又は外壁は、検査手段の添加穴近傍の外壁又は内壁と係合するため、抽出容器の底部と検査手段の添加穴とが確実に固定された状態となる。それゆえ、取扱者が手で抽出容器や検査手段を固定する必要がなく、抽出容器から抽出液誘導体を介した抽出液の吸収及び移動状態が確実に維持され、容易かつ確実に抽出液を検査手段のテストストリップに移動させることが可能となる。また、ハウジングの添加穴が抽出容器の底部により閉鎖されるため、検体及び検体が付着した器具等に取扱者が接触することなく、安全に検査を行い、使用済みの検査用装置を処分することができる。具体的には、検体が採取される診察室や病棟での検査が効率よく、簡単により安全に行えるのは勿論、学校や自宅等でも検査を行うことができ、OTC検査用装置としても使用され得る。また、閉鎖的に検査を行うことができるため、特に、核酸クロマト法を利用した検査を行うにあたり、外部環境からのコンタミネーションが効果的に防止できる。
【0018】
抽出液誘導体は、検査手段の添加穴の内部に備えられた抽出液誘導体支持手段で支持固定されていることも好ましい。これにより、添加穴からの抽出液誘導体の抜けを防止することができる。また、検査手段の添加穴に埋設された抽出液誘導体が、一端がテストストリップに当接した状態を維持すると共に、抽出容器から移動した抽出液を好適に迅速にテストストリップに移動させることができるよう固定される。これにより、抽出容器と検査手段とが連通した際に、容易かつ確実に抽出液をテストストリップに移動させることが可能となる。
【0019】
抽出容器は、流体透過性の小さい非可撓性材料で形成されていることも好ましい。従来の検査用装置では、
図11に示すように、抽出液が収容された抽出容器2´の胴部を押圧して抽出液5´を滴下するために、抽出容器2´は軟質の可撓性樹脂で形成されていた。しかし、軟質の可撓性樹脂は密度が低いことから、抽出容器に収容されている抽出液の水分が水蒸気となって抽出容器の壁を通過し、保存期間中に水分が減少したり乾固してしまうという問題が生じていた。しかし、本発明においては、抽出容器を押圧して抽出液を検査手段に滴下する必要はなく、抽出液は検査手段の添加穴に埋設された抽出液誘導体の毛管作用によって検査手段のテストストリップに添加される。それゆえ、抽出容器は押圧可能なように可撓性材料で形成する必要がない。よって、抽出容器を流体透過性の小さい非可撓性材料で形成することができ、抽出液が抽出容器外に透過して抽出液が減少することを防ぐことができる。それにより、検査用装置をガスバリア性の高いパッケージに封入せずともそのままの状態で長期間保存することが可能となる。
【0020】
抽出液誘導体は、繊維束構造体又は焼結多孔体であることも好ましい。抽出液を検査手段のテストストリップに誘導し、テストストリップに移動させる抽出液誘導体として、好適な材料が選択される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、以下のような優れた効果を有する検査用装置を提供することができる。
(1)テストストリップに抽出液誘導体を介して抽出液を添加することができる。抽出液を滴下することなく、テストストリップに簡単かつ確実に抽出液を導入することができる。
(2)抽出容器内の抽出液を検査手段に添加したい時に抽出容器とハウジングの添加穴とを容易に連通させて検査を行うことができる。
(3)閉鎖的に抽出液を検査手段に添加することができるため、検体及び検体が付着した器具等に取扱者が接触することなく、安全に検査を行い、使用済みの検査用装置を安全に処分することができる。また、外部環境からのコンタミネーションも効果的に防止することができる。
(4)抽出液を検査手段に滴下する必要がないため、抽出容器を流体透過性の小さい非可撓性又は剛性材料で形成することができ、抽出液が抽出容器外に透過して抽出液が減少することを防ぐことができる。それにより、検査用装置を長期間保存することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、
図1〜
図5を参照し、本発明の第一の実施形態について説明する。
【0024】
図1に示すように、本発明の第一の実施形態に係る検査用装置1は、抽出容器2と検査手段3と検体採取具4とを備えている。本実施形態に係る検査用装置1は、一例としてインフルエンザウイルスの検査に用いるイムノクロマト法を利用したラテラルフロータイプの検査用装置を示しているが、本発明の検査用装置には、核酸クロマト法を利用した検査用装置も含まれる。検査対象としては、一例として、インフルエンザウイルス、RSウイルス、A群β溶連菌、アデノウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス又は肺炎マイコプラズマ等の微生物、微生物・植物・非ヒト動物由来の蛋白質、微生物・植物・非ヒト動物由来の核酸、ヘモグロビンやトランスフェリン等のヒト由来の蛋白質、ヒト由来の核酸、腫瘍マーカー類、ホルモン類、ビタミン類、生理活性アミン類、プロスタグランジン類、抗生物質、アレルゲン及び農薬等が挙げられる。この検査用装置1を使用して検査を行うことにより、
図2に示すように抽出液5を滴下することなく、閉鎖的に、抽出液5を簡単かつ確実に検査手段3のテストストリップ31に添加導入することができる。
【0025】
まず、
図1〜
図3に基づき、抽出容器2について説明する。本実施形態の抽出容器2は、検体を分散又は溶解させるための抽出液5が内部に収容された筒状の容器であり、胴部21と胴部21の軸方向の一端側が封止された底部22と、他端側が開口した開口部23を有している。この開口部23には、収容されている抽出液5が外部に流出したり、異物が混入するのを防ぐための蓋体24が予め設けられている。この蓋体24は、検体採取具4を挿入するために取り外し可能に構成されており、抽出容器2の開口部23を封止できるものである。具体的には、蓋体24として、開口部23の端面に接着剤やヒートシール、超音波溶着等で樹脂製フィルムを張り付けて開口部23を覆うフィルムシール蓋や、ねじ式の蓋、押し込み栓等が使用される。この蓋体24を取り外すことにより抽出容器2の密封状態がいったん解除されて、検体採取後の検体採取具4の検体採取部41及び軸部42を容器内部に挿入することができる。また、抽出容器2の開口部23近傍の内壁21aには、後述する検体採取具4のキャップ封止部44aと係合して開口部23を封止する凸状の開口部側封止部23aを備えている。なお、核酸クロマト法を利用した検査においては、検体採取具4は使用されず、検体としてPCR産物等の核酸溶液が抽出液5に添加され、キャップ等で開口部23が封止される。
【0026】
他方、抽出容器2の底部22には、底部側の端部22dから所定距離離れた開口部23側の位置に封止部22aが備えられている。この封止部22aは、後述する検査手段3の添加穴33の周縁部に設けられた凸状爪部33cによって貫通孔を容易に形成することが可能なように、凸状爪部33cが当接する部分、本実施形態では封止部22aの周縁部のみを薄く形成した円周状の破断部22eを有している。底部22の封止部22aと端部22dとの間には、検査手段3の添加穴33近傍を収容するための収容領域22bを有する。本実施形態においては、収容領域22bは、添加穴33の周方向に外方に略垂直に突出した添加穴壁33aごと添加穴33を密封的に収容する。収容領域22bの内壁21aには、検査手段3の添加穴壁33aの外壁と係合する底部側係合部22cが備えられている。本実施形態では、底部側係合部22cとして、底部22の内壁に周方向に沿って連続する凸部が設けられている。この底部側係合部22cは、検査手段3の添加穴壁33aと係合できる構造であればいかなる構造であってもよい。具体的には、例えば、底部22の内壁21a又は外壁21bにおいて、周方向に沿って環状に連続する単数又は複数の凸部、凹部、凸状の溝、凹状の溝若しくはリブ、周方向にらせん状に連続する単数又は複数の凸部、凹部、凸状の溝、凹状の溝若しくはリブ、又はこれらの任意の組み合わせからなる構造が挙げられる。
【0027】
抽出容器2は、流体透過性の小さい非可撓性又は剛性材料で形成されていることが好ましく、具体的には、特に限定されないが、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリプロピレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂又はガラス等が好適に用いられ、ポリプロピレン樹脂又は非架橋型のオレフィン系熱可塑性エラストマーが特に好ましい。なお、ガラスで抽出容器2を形成する場合には、本実施形態のように、使用時に底部22の封止部22aに貫通孔を形成させる形態については、封止部22aに貫通孔を形成可能なように、封止部22aのみアルミニウム等の金属薄膜や樹脂等で形成することが好ましい。本実施形態の抽出容器2は非可撓性材料として非架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマーを用いて、一体成形により形成されている。本発明の検査用装置では、抽出容器2を押圧して抽出液5を検査手段3に滴下する必要はなく、抽出液5は後述する検査手段3に備えられた抽出液誘導体34の毛管作用によって検査手段3のテストストリップ31に添加される。それゆえ、抽出容器2を押圧可能な可撓性材料で形成する必要がなく、抽出容器2を流体透過性の小さい非可撓性又は剛性材料で形成することができ、抽出液5が抽出容器2外に透過して抽出液5が減少することを防ぐことができる。それにより、検査用装置1をガスバリア性の高いパッケージに封入せずともそのままの状態で長期間保存することが可能となる。なお、抽出容器2は可撓性を備えた樹脂材料で形成されていてもよい。さらに、抽出容器2は、検査手段3の凸状爪部33cが抽出容器2の封止部22aを突き破り、抽出容器2と検査手段3とが連通された状態となっているか否かを目視で確認することができるように、透明又は半透明の素材で形成することも好ましい。
【0028】
次に
図1、
図2及び
図4に基づき、検査手段3について説明する。本実施形態の検査手段3は、抽出液5が展開されて検査結果が表示されるテストストリップ31と、テストストリップ31を収容するハウジング32とから概略構成されている。ハウジング32の表面には、抽出液5を添加するための略円形の添加穴33が設けられており、さらに検査結果を表示させるための判定窓35が設けられている。添加穴33は、穴の周方向に外方に略垂直に突出して形成された筒状の添加穴壁33aを有しており、抽出容器2と検査手段3とが連通した際に抽出容器2の底部22側と係合して連通した抽出容器2を支持固定すると共に、添加される抽出液5の漏れを防ぐことができるように形成されている。本実施形態においては、抽出容器2の底部22の収容領域22bは添加穴壁33aごと添加穴33を収容可能なように構成されており、収容領域22bの内壁に備えられた凸状の底部側係合部22cは、添加穴壁33aの外壁を押圧して係合し、両者の連結状態を維持すると共に、抽出容器2の底部22と検査手段3の添加穴33との間の空間を密封し、抽出液5の漏れを好適に防ぐことができる。本実施形態においては、さらに密封性を高めるために、抽出容器2と検査手段3とが連通した際に、抽出容器2の底部22の端部22dが検査手段3のハウジング32の表面に当接するよう、底部22の封止部22aから端部22dまでの長さや添加穴壁33aの壁の高さが設計されている。
【0029】
また、上述した添加穴33の周縁部、すなわち、添加穴壁33aの上端部には、凸状爪部33cが配設されている。抽出容器2の底部22の収容領域22bに検査手段3の添加穴33近傍を嵌入することにより、抽出容器2の封止部22aの破断部22eを凸状爪部33cが押圧して貫通孔25が形成され、抽出容器2と検査手段3とが連通する。なお、貫通孔25をより確実に形成させるために、凸状爪部33cは、先端側の肉薄部分と基端側(添加穴壁33a側)の肉厚部分とを備え、先端側の肉薄部分と、基端側の肉厚部分との間に段差が形成されていることも好ましい。このような構成とした場合、凸状爪部33cの段差が抽出容器2の封止部22aに当接しその破断部22e等に変形を生じさせることから、この凸状爪部33cで形成された貫通孔25の近傍に隙間が形成されやすくなり、この隙間により迅速に抽出液5が検査手段3の添加穴33に移動する。
【0030】
この添加穴33には抽出液誘導体34が埋設されており、本実施形態においては、添加穴壁33aの内部の空間に棒状の抽出液誘導体34が埋設されている。抽出液誘導体34は、本実施形態においては略円柱状に形成されているが、楕円柱状、多角柱状等さまざまな形状に形成することが可能である。また、軸断面の形状は一定でなくてもよい。抽出液誘導体34の一端はテストストリップ31に当接するように配置された当接部34aを構成しており、この当接部34aを介して抽出液誘導体34に吸収された抽出液5がテストストリップ31に展開される。この抽出液誘導体34は、添加穴33の添加穴壁33aの内部に設けられた抽出液誘導体支持部33bで係止され、抽出液誘導体34の添加穴33からの脱落を防ぐと共に、抽出液誘導体34の一端(当接部34a)がテストストリップ31に当接した状態を保つように構成されている。
図4(b)に示すように、本実施形態では、抽出液誘導体支持部33bは、添加穴壁33aの内壁に周方向に沿って略等間隔に4箇所備えられた凸部状に形成され、抽出液誘導体支持部33bの部分は添加穴33の内径が少し狭くなっている。
【0031】
本実施形態では、抽出液誘導体34は細長の円柱形に形成されており、添加穴33に流入する抽出液5は抽出液誘導体34に吸収され、抽出液誘導体34の当接部34aを介してテストストリップ31に移動するように構成されている。抽出液5は抽出液誘導体34の毛管作用を利用してテストストリップ31に添加されるため、テストストリップ31における抽出液5の展開状況に応じて、抽出液誘導体34がその内部に吸収し保持している抽出液5がテストストリップ31に添加される。そのため、従来の滴下による添加では、一定量以上の抽出液が一時にテストストリップに添加されて、抽出液がテストストリップに吸収されず、抽出液が漏れ出したりすることがあったが、本発明の抽出液誘導体34を介した添加によれば、このような漏出を防ぐことができる。抽出液誘導体34の形状は特に限定されず、埋設される添加穴33の形状に合わせて適宜調整することが可能である。また、後述するように、端部の形状を変更することも可能である。
【0032】
本実施形態において、抽出液誘導体34の当接部34a側の端部の形状については、この当接部34aを介して抽出液5が検査手段3のテストストリップ31に移動することから、抽出液5の移動効率を高めるために接触面積の大きい略平坦な形状に形成されている。しかし、抽出液5を検査手段3に移動させることができれば、いかなる形状であってもよい。また、もう一方の端部の形状については、本実施形態ではどのような形状も選択することができる。
【0033】
抽出液誘導体34としては、毛管作用を有するものであればよく、例えば、繊維束構造体、焼結多孔体、紙、スポンジ、不織布、織布等を用いることができる。本発明においては、毛管作用に優れる観点から、繊維束構造体又は焼結多孔体が好適に用いられる。繊維束構造体とは、合成樹脂繊維、パルプ繊維、ガラス繊維等のスライバー又はフィラメントを熱や他の樹脂等で集束結合させて成形した構造体であり、繊維束を構成する各繊維の一端から他端側に液体を移動させる毛管作用を有している。合成樹脂繊維としては、ポリアミド、アクリル、レーヨン、アセテート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン又はポリプロピレン等からなる繊維が好適に選択される。本実施形態の抽出液誘導体34としては、主にポリエステル繊維からなる繊維束がポリウレタン樹脂によって結合されて形成された繊維束構造体が選択されている。繊維束構造体の繊維太さは、その毛管作用の観点から、1〜10デニールが好ましく、1〜7デニールがより好ましく、2〜5デニールが特に好ましい。また、繊維束構造体の気孔率は、その毛管作用や後述する吸収性、濾過性能の観点から、35〜80%が好ましく、40〜70%がより好ましく、45〜65%が特に好ましい。他方、焼結多孔体とは、樹脂や金属等の粒子、セラミック粉末又は金属繊維を三次元に絡み合わせた状態で焼結させて成形した多孔体であり、三次元の網目構造を介して液体を移動させる毛管作用を有している。粒子原料としては、樹脂が好ましく、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等が好適に選択される。焼結多孔体の孔径は、その毛管作用の観点から、10〜200μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。なお、繊維束構造体や焼結多孔体等の抽出液誘導体34は、親水性及び吸収性を高めるため、界面活性剤等で処理されていてもよい。上述した繊維束構造体や焼結多孔体等の抽出液誘導体34は、毛管作用を有するほか、高い吸収性を有する。それゆえ、抽出容器2から流入した抽出液5をすばやく吸収し、毛管作用により検査手段3のテストストリップ31に迅速に導くことができる。また、繊維束構造体等の抽出液誘導体34は液体の保持性も高いことから、抽出液誘導体34を介して、テストストリップ31が吸収可能な量の抽出液5が添加された後には、抽出液誘導体34の当接部34aから抽出液5がさらにテストストリップ31に添加されることはないため、テストストリップ31からの抽出液5の漏れは生じず、安全に検査を行うことができる。さらに、繊維束構造体や焼結多孔体等の抽出液誘導体34は、その構造上、濾過性能も有しており、抽出液5に含まれる、採取された検体由来の粘性の高い分泌物や細胞片等の不要な物質を除去する作用も有している。それゆえ、抽出液5を別途準備した濾過器具等を用いて濾過処理する必要がないため、検査用装置の構成を簡易な構成とすることができる。
【0034】
また、テストストリップ31は、本実施形態においては、イムノクロマト法を利用したラテラルフロータイプのテストストリップとして構成されており、添加された抽出液5を吸収するサンプルパッド31aと、標識抗体等を含有するコンジュゲートパッド31bと、補足抗体等を含有し検査結果が表示されるメンブレン31cと、余剰の抽出液を吸収する吸収パッド31dとを有している。また、検査手段3を、核酸クロマト法を利用した検査手段3とする場合には、テストストリップ31として核酸クロマト用のものを選択すればよい。核酸クロマト法を利用したテストストリップ31は、一例として、添加された抽出液5を吸収するサンプルパッド31aと、ラテックス粒子等の標識物質等を含有するコンジュゲートパッド31bと、補足プローブ等を含有し検査結果が表示されるメンブレン31cと、余剰の抽出液を吸収する吸収パッド31dとから構成される。添加穴33から抽出液誘導体34を介して導入された抽出液5は、まずサンプルパッド31aに毛管作用にて導入され、その後、毛管作用によりコンジュゲートパッド31b、メンブレン31c及び吸収パッド31dに展開される。メンブレン31c上に表示された検査結果は判定窓35を通じて確認することができる。テストストリップ31は、上述の構成のものに限定されず、フロースルータイプのテストストリップや他の構成を適宜組み合わせたものも広く含まれる。さらに、テストストリップ31は、テストストリップ31を構成する素材の仕様等を調整することにより、抽出液5を一定量のみ吸収可能に設計しておくことも可能である。抽出液誘導体34は、その毛管作用により、一定量の抽出液5を吸収してしまったテストストリップ31に対しては、それ以上の抽出液5の添加は行わないため、常に一定量の抽出液5が抽出液誘導体34を介してテストストリップ31に添加されるように構成することができる。
【0035】
なお、検査手段3に添加された抽出液5との接触を避け、さらに検査用装置1を閉鎖的にするために、ハウジング32の判定窓35部分を透明の樹脂フィルムでシールしたり、ハウジングの添加穴33を除く部分を透明の樹脂フィルムでシュリンク加工等することも可能である。また、テストストリップ31のうち、少なくとも判定窓35から露出する部分を樹脂フィルムでラミネート加工しておくことも可能である。
【0036】
次に、
図1及び
図2に基づき、検査対象である検体を採取するための検体採取具4について説明する。
図1に示すように、本実施形態における検体採取具4は、軸部42と、軸部42の長手方向の一端に一体的に設けられた検体採取部41と、その長手方向の他端に一体的に設けられたキャップ部44とから主に構成されており、患者の鼻孔や口等から挿入して、鼻やのどの奥をその先端部に設けられた検体採取部41で拭って検体を採取できるように構成されている。このうち、キャップ部44は、抽出容器2の開口部23近傍の内壁に備えられた開口部側封止部23aと係合して開口部23を封止可能なキャップ封止部44aを備えている。これにより、
図2に示すように、抽出容器2の内部に検体を採取した検体採取具4の検体採取部41及び軸部42を折り曲げて収容し、そのままキャップ部44で開口部23を封止して抽出容器2を密封することが可能である。なお、検体採取具4はキャップ部44を備えずに検体採取部41と軸部42のみから構成されることも可能である。また、検査対象によっては、抽出容器2に折り曲げずにそのまま収容できるように、軸部42の長さを短く形成してもよい。
【0037】
図1に示すように、本実施形態においては、検体採取具4の軸部42は、可撓部42aと基部42bとから構成されている。可撓部42aは、所定の位置から検体採取部41までの細径の部分であり、応力を加えることにより変形する可撓性を有している。基部42bは、可撓部42aとの境界部からキャップ部44までの太径の部分であり、可撓部42aよりも高い剛性を有している。そのため、
図2に示すように、検体採取具4の検体採取部41及び軸部42を抽出容器2に収容する際に、軸部42の可撓部42aに力を加えることにより、可撓部42aを折り曲げたり、湾曲させて変形させ、収容された状態での軸部42の長さを短くすることができる。軸部42の基部42bの所定位置には、この基部42bを軸方向と垂直の方向に容易に切断し、分割するための切り欠き43が設けられている。切り欠き43が設けられた位置で基部42bを折り曲げることにより、基部42bが容易に切断され、その軸方向に関して分割するため、抽出容器2に収容された状態の軸部42の長さをさらに短くすることができる。
【0038】
軸部42を構成する材料としては特に限定されないが、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン又はポリエステル等の樹脂や紙等が好適に用いられる。また、軸部42に可撓部42aを備える本実施形態では、応力を加えることにより変形する可撓性を有する材料が選択される。また、検体採取部41としては、検体を付着させることができるものであればよく、綿球、綿球を備えた綿棒、スポンジ又はブラシ等が適宜選択される。特に、検体採取機能に優れることから、合成繊維をフロック加工して綿球を形成した綿棒が好適に用いられる。このような検体採取具4で採取する検体としては、特に限定されないが、ヒト又は非ヒト動物の鼻腔や咽頭のぬぐい液、鼻汁、喀痰、尿、血液、血漿、血清、糞便、直腸ぬぐい液、結膜ぬぐい液、唾液、涙液、羊水、生体組織ぬぐい液、髄液及び膿液のほか、食品ぬぐい液、食品抽出液、飲料、水道水、排水、環境水、土壌及び植物抽出液等が挙げられる。なお、検体採取具4は、核酸クロマト法を利用した検査には使用されない。
【0039】
次に、
図1、
図2及び
図5に基づいて、本実施形態に係る検査用装置1の使用方法について説明する。なお、
図5においては、検体採取具4は省略されている。
【0040】
まず、
図1に示す検体採取具4を用いて検体を採取する(図示せず)。検体を採取する際には、キャップ部44を持って検体採取部41及び軸部42を操作することができる。検体は、患者の鼻孔、咽頭、結膜、尿道、子宮、膣、糞便、尿又は喀痰等を検体採取部41で拭うことにより採取される。採取された検体は検体採取部41に付着し、保持される。
【0041】
次に、抽出容器2の開口部23から検体採取後の検体採取具4を、キャップ部44を持った状態で、抽出容器2の開口部23から検体採取部41を先端にして挿入し、検体採取部41と軸部42とを容器内部に収容させる。この際、
図2に示すように、軸部42の可撓部42aを湾曲させてループ状に変形させ、軸部42の切り欠き43が施された位置を開口部23の端縁に押し当て折り曲げること等により、この位置で軸部42を切断して分割する。これにより、抽出容器2の容器内部に検体採取具4の軸部42等の長さを実質的に短くして収容することができる。収容したのち、そのまま、キャップ部44のキャップ封止部44aで抽出容器2の開口部23を封止して密封する。
【0042】
次に、
図5(a)に示すように、検査手段3の添加穴33を添加穴壁33aごと収容領域22bに収容するため、抽出容器2の底部22を検査手段3の添加穴33近傍に近づける。
【0043】
次に、
図5(b)に示すように、抽出容器2の収容領域22bを検査手段3の添加穴33にかぶせるようにして押し込み、取付けする。この段階では、抽出容器2と検査手段3とは連通しておらず、仮嵌めされたような状態であり、検査手段3の添加穴33の上端に備えられた凸状爪部33cは抽出容器2の封止部22aに当接していないため、貫通孔は形成されていない。
【0044】
次に、
図5(c)に示すように、抽出容器2から検査手段3の方向にさらに力を加えると、検査手段3の添加穴33の上端に設けられている凸状爪部33cが、抽出容器2の封止部22aの破断部22eを押圧して突き破り、封止部22aに貫通孔25を形成する。これにより、抽出容器2と検査手段3とが連通し、抽出容器2に収容されていた抽出液5が貫通孔25を通じて検査手段の添加穴33に流入する。また、抽出容器2の端部22dが検査手段3のハウジング32の表面に当接すると共に、抽出容器2の底部側係合部22cが添加穴壁33aの外壁を押圧し、抽出容器2と検査手段3とが係合する。これにより、抽出容器2と検査手段3とが密封的に連通するため、添加穴33に流入する抽出液5の外部環境への漏れを防ぐことができる。検査手段3の添加穴33に流入した抽出液5は、添加穴33の内部空間に埋設されている抽出液誘導体34に吸収され、毛管作用により抽出液誘導体34の当接部34a側に移動する。抽出液誘導体34の一端は検査手段3のテストストリップ31のサンプルパッド31aに当接しているため、抽出液5はこの抽出液誘導体34の当接部34aを通じてサンプルパッド31aに移動する。このように、抽出液5を滴下することなく、テストストリップ31に簡単かつ確実に抽出液5を閉鎖的に導入することができる。
【0045】
抽出液5を検査手段3に導入した後には、本実施形態においては、通常のラテラルフロー法による検査が行われる。検査結果はハウジング32の判定窓35より確認可能である。そして、使用済みの検査用装置1は、
図2に示す閉鎖状態のまま廃棄処理することが可能である。これにより、検体を含む抽出液5が外部に漏出しない状態で、検査用装置1を廃棄処理することができる。このように、本発明の検査用装置によれば、ウイルスや感染力の高い細菌などが含まれる可能性のある検体について検査を行う際に、検体を効率よく取り扱い、処理することが可能になる。
【0046】
次に
図6〜
図8を参照し、本発明の第二の実施形態について説明する。
【0047】
本発明の第二の実施形態に係る検査用装置10は、第一の実施形態に係る検査用装置1とは抽出容器20の底部122、検査手段30の添加穴133及び抽出液誘導体134の構成が一部異なっているほかは、第一の実施形態と略同様の構成を備えている。なお、本実施形態において、第一の実施形態と同じ構成については、同じ参照符号を使用して説明する。
【0048】
図6に基づき、本実施形態の抽出容器20について説明する。
図6(a)に示すように、抽出容器2の底部122は、底部側の端部122dから所定距離離れた開口部側の位置に封止部122aが備えられている。
図6(b)に示すように、この封止部122aには、本実施形態の検査手段30に備えられた貫通孔形成手段である尖端部134bによって貫通孔125を容易に形成することが可能なようにその部分のみを薄く形成した筋状の破断部122fが設けられている。本実施形態においては、破断部122fは、円の中央で結合する3本の直線の筋状に形成されているが、この態様に限定されない。底部122の封止部122aと端部122dとの間には、検査手段30の添加穴133近傍を収容するための収容領域122bを有する。本実施形態においては、収容領域122bは、添加穴133の内部に埋設された抽出液誘導体134と抽出液誘導体支持部133bとを密封的に収容する。また、本実施形態では、収容領域122bの外壁には、検査手段30の添加穴壁133aの内壁と係合する底部側係合部122cが備えられており、底部側係合部122cとして、底部122の外壁に周方向に沿って連続する凹凸部が設けられている。この底部側係合部122cは、検査手段30の添加穴壁133aと係合できる構造であればいかなる構造であってもよい。具体的には、例えば、底部122の内壁121a又は外壁121bにおいて、周方向に沿って環状に連続する単数又は複数の凸部、凹部、凸状の溝、凹状の溝若しくはリブ、周方向にらせん状に連続する単数又は複数の凸部、凹部、凸状の溝、凹状の溝若しくはリブ、又はこれらの任意の組み合わせからなる構造が挙げられる。
【0049】
図7に基づき、本実施形態の検査手段30について説明する。本実施形態において、検査手段30のハウジング132の表面には、抽出液5を添加するための略円形の添加穴133が設けられている。本実施形態では、前述した第一の実施形態と異なり、添加穴133が設けられたハウジング132の表面は略平坦に構成され、ハウジング132の厚み(高さ)を大きく設計することによって、ハウジング132の内部に添加穴壁133aやその他の係合部等を有する構造となっている。それゆえ、添加穴133の周方向には下向き(テストストリップ131が収容されている方向)に略垂直に貫入して形成された筒状の添加穴壁133aが設けられている。この添加穴壁133aは抽出容器20の底部122を支持固定すると共に、抽出液5の漏れを防ぐことができるように形成されている。添加穴壁133aの内壁には抽出容器20の底部122を添加穴133に挿入して係合させた際に、その係合状態を安定的に保つための添加穴側係合部133dが備えられている。具体的には、添加穴壁133aの内壁には、周方向に凸凹状の添加穴側係合部133dが連続して備えられている。この添加穴側係合部133dは、抽出容器20の底部122の底部側係合部122cと係合して、両者を確実に固定し連結する。この添加穴側係合部133dは、抽出容器20の底部側係合部122cと係合できる構造であればいかなる構造であってもよく、例えば、添加穴133aの内壁に周方向に沿って環状に連続する単数又は複数の凸部、凹部、凸状の溝、凹状の溝若しくはリブ、周方向にらせん状に連続する単数又は複数の凸部、凹部、凸状の溝、凹状の溝若しくはリブ、又はこれらの任意の組み合わせからなる構造が挙げられる。
【0050】
図7に示すように、本実施形態においては、添加穴133の内部の空間に棒状の繊維束構造体からなる抽出液誘導体134が埋設されている。抽出液誘導体134は、本実施形態においては略円柱状に形成されており、抽出液誘導体134の一端はテストストリップ131に当接配置されて当接部134aを構成しており、この当接部134aを介して抽出液誘導体134に吸収された抽出液5がテストストリップ131に展開される。この抽出液誘導体134は、筒状の添加穴壁133aの内側に略同軸に配置され、下端部で添加穴壁133aと連続して形成されている筒状の壁面からなる抽出液誘導体支持部133bで係止されている。これにより、添加穴133から抽出液誘導体134が脱落することを防ぐと共に、抽出液誘導体134の一端(当接部134a)がテストストリップ131に当接した状態を保つように構成されている。
【0051】
抽出液誘導体134の端部の形状は、当接部134a側の端部については、この当接部134aを介して抽出液5が検査手段30のテストストリップ131に移動することから、抽出液5の移動効率を高めるために接触面積の大きい略平坦な形状に形成されている。しかし、抽出液5を検査手段30に移動させることができれば、いかなる形状であってもよい。他方、抽出液誘導体134のもう一方の端部は、本実施形態においては、抽出容器20の封止部122aを突き破り、貫通孔125を形成することができるよう、先端を尖らせた尖端部134bとして形成されている。尖端部134bの形状としては、特に限定されないが、錘体状やテーパー状に形成されることができる。
図8の動作説明図に示すように、抽出容器20の底部122を検査手段30の添加穴133に嵌入させた際に、抽出液誘導体134の尖端部134bが抽出容器20の封止部122aに当接して封止部122aを突き破り、抽出容器20と検査手段30とが連通される。
【0052】
抽出液誘導体134の長さL134は、使用時に検査手段30のテストストリップ131に抽出液誘導体134の一端(当接部134a)が当接しつつ、尖端部134bが抽出容器20の底部122の封止部122aに接触して突き破ることができる程度の長さであればよく、抽出容器20の底部122の端部122dから封止部122aまでの長さよりも長く形成されていることが好ましい。本実施形態においては、抽出容器20の底部122の端部122dから封止部122aまでの長さは約7mm、抽出液誘導体134の長さL134は約13mmで形成されている。また、抽出液誘導体134の直径は3.5mmで形成されている。
【0053】
また、検査手段30のハウジング132は、添加穴133に埋設された抽出液誘導体134の尖端部134bが抽出容器20の封止部122aを突き破り、抽出容器20と検査手段30とが連通された状態となっているか否かを目視で確認することができるように、透明又は半透明の樹脂で形成されていることも好ましい。特に限定されないが、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル又はポリスチレン等の合成樹脂が好適に用いられる。
【0054】
抽出容器20及び検査手段30の構成についてのその他の説明は、上述した第一の実施形態の場合と同様であり、その機能や作用効果も同様である。また、検査用装置10を構成する検体採取具4の構成についても、上述した第一の実施形態の場合と同様であり、その機能や作用効果も同様である。
【0055】
次に、
図8に基づいて、本実施形態に係る検査用装置10の使用方法について説明する。なお、
図8においては、検体採取具4は省略されている。
【0056】
検査用装置10を使用するにあたっては、検体採取具4で検体を採取し、検体を抽出容器20内部の抽出液5に懸濁させたのち、
図8(a)に示すように、検査手段30の添加穴133に埋設された繊維束構造体からなる抽出液誘導体134を収容領域122bに収容するため、抽出容器20の底部122を検査手段30の添加穴133に近づける。
【0057】
次に、
図8(b)に示すように、抽出容器20の収容領域122bを検査手段30に備えられた抽出液誘導体134にかぶせるようにして押し込み、取付けする。この段階では、抽出容器20と検査手段30とは連通しておらず、仮嵌めされたような状態である。
【0058】
次に、
図8(c)に示すように、抽出容器20から検査手段30の方向にさらに力を加えると、抽出液誘導体134の尖端部134bが抽出容器20の封止部122aに到達し、この尖端部134bが封止部122aの筋状の破断部122fを破って貫通孔125を形成する。抽出液誘導体134を構成する繊維束構造体は、封止部122aを突破ることのできる程度の一定の硬さを備えており、容易に貫通孔125を形成させることができる。これにより、抽出容器20と検査手段30とが連通し、抽出容器20に収容されていた抽出液5が貫通孔125又は貫通孔125から突出している抽出液誘導体134を通じて検査手段30の添加穴133に流入する。また、抽出容器20の端部122dは、添加穴壁133aと抽出液誘導体支持部133bとを連結する壁面に当接すると共に、抽出容器20の底部側係合部122cと検査手段30の添加穴側係合部133dとが係合する。これにより、抽出容器20と検査手段30とが密封的に連通するため、検査手段30に流入する抽出液5の外部環境への漏れを防ぐことができる。検査用装置10の使用方法に関するその他の説明は、上述した使用方法の場合と同様であり、その機能や作用効果も同様である。
【0059】
次に、
図9及び
図10を参照し、本発明の第三の実施形態について説明する。
【0060】
本発明の第三の実施形態に係る検査用装置100は、抽出容器200については、底部222の底部側係合部222cの構成が一部異なっているほかは、第二の実施形態に係る抽出容器20と略同様の構成を備えている。また、検査手段300については、添加穴233及び抽出液誘導体234の構成が一部異なっているほかは、第一の実施形態と略同様の構成を備えている。なお、本実施形態において、第一の実施形態と同じ構成については、同じ参照符号を使用して説明する。
【0061】
図9(a)に基づき、本実施形態の抽出容器200について説明する。
図9(a)に示すように、抽出容器200の底部222には、第二の実施形態の抽出容器20と同様の封止部222a及び破断部222f、収容領域222b及び端部222dを備えている。本実施形態においても収容領域222bの外壁には、検査手段300と係合するための底部側係合部222cが備えられているが、本実施形態では、底部側係合部222cとして、底部222の外壁に周方向に沿ってらせん状に連続する凸凹状の溝が設けられている。この底部側係合部222cは、検査手段300の添加穴壁233aの内壁に設けられた、らせん状の溝からなる添加穴側係合部233dと螺合可能なように形成されている。
【0062】
次に
図9(b)に基づき、本実施形態の検査手段300について説明する。
図9(b)に示すように、検査手段300には、そのハウジング232に添加穴233が設けられており、その添加穴233の周方向には外方に略垂直に突出して形成された添加穴壁233aが形成されている。添加穴233の内壁には、上述した抽出容器200の底部側係合部222cと螺合可能な添加穴側係合部233dが備えられている。これにより、抽出容器200と検査手段300とを螺合による係合により密封的に連通させることができ、検査時における抽出液5の漏れを防ぐことができる。
【0063】
本実施形態においては、添加穴233に埋設された抽出液誘導体234は、第二の実施形態と同様に尖端部234bを備えており、この尖端部234bで抽出容器200の封止部222aを突破ることができるように構成されている。また、本実施形態においては、抽出液誘導体234は細長の略円筒形状に形成されているが、第1及び第2の実施形態のものとは異なり、当接部234a側が大径に形成されている。これにより、抽出液誘導体234に吸収された抽出液5をより迅速にテストストリップ231に添加することができる。また、添加穴233の内部には、抽出液誘導体234を支持固定するための抽出液誘導体支持部233bが添加穴壁234aの内壁に周方向に連続して突出した凸部として形成されており、添加穴234の内径が狭くなるように形成されている。この抽出液誘導体支持部233bは、抽出液誘導体234の当接部234a側の大径部分とそれより上側の小径部分の境界部分を周方向から支持固定し、これにより、抽出液誘導体234が添加穴233から抜け落ちることを防ぐと共に、抽出液誘導体234の当接部234aがテストストリップ231に当接した状態を保つように構成されている。
【0064】
次に、
図10に基づいて、本実施形態に係る検査用装置100の使用方法について説明する。なお、
図10においては、検体採取具4は省略されている。
【0065】
検査用装置100を使用するにあたっては、検体採取具4で検体を採取し、検体を抽出容器200内部の抽出液5に懸濁させたのち、
図10(a)に示すように、検査手段300の添加穴233に埋設された抽出液誘導体234を抽出容器200の収容領域222bに収容するために、抽出容器200の底部222を検査手段300の添加穴233に近づける。
【0066】
次に、
図10(b)に示すように、抽出容器200の収容領域222bを検査手段300に備えられた抽出液誘導体234にかぶせるように抽出容器200の胴部221を回転させて、抽出容器200の底部側係合部222cと検査手段300の添加穴側係合部233dとを螺合させ、取付けする。この段階では、抽出容器200と検査手段300とは仮嵌めされたような状態であり、検査手段300の添加穴233に埋設された抽出液誘導体234の尖端部234bは抽出容器200の封止部222aに当接しておらず、貫通孔は形成されていない。
【0067】
次に、
図8(c)に示すように、さらに抽出容器200の胴部221を回転させて抽出容器200の底部側係合部222cと検査手段300の添加穴側係合部233dとを螺合させると、抽出液誘導体234の尖端部234bが抽出容器200の封止部222aに到達し、この尖端部234bが封止部222aの破断部222fを破って貫通孔225を形成する。これにより、抽出容器200と検査手段300とが連通し、抽出容器200に収容されていた抽出液5が貫通孔225又は貫通孔225から突出している抽出液誘導体234を通じて検査手段300の添加穴233に流入する。また、抽出容器200の端部222dが添加穴233内部の添加穴側係合部233dの上側の面に当接すると共に、抽出容器200の底部側係合部222cと検査手段300の添加穴側係合部233dとは螺合により係合しているため、抽出容器200と検査手段300とが密封的に連通し、検査手段300に流入する抽出液5の外部環境への漏れを防ぐことができる。検査用装置100の使用方法に関するその他の説明は、上述した使用方法の場合と同様であり、その機能や作用効果も同様である。
【0068】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態も技術的範囲に含むものである。