(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6159968
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】硬表面洗浄剤及び配管閉塞防止剤
(51)【国際特許分類】
C11D 1/94 20060101AFI20170703BHJP
C11D 1/75 20060101ALI20170703BHJP
C11D 1/90 20060101ALI20170703BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
C11D1/94
C11D1/75
C11D1/90
B08B3/08 Z
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-125025(P2013-125025)
(22)【出願日】2013年5月29日
(65)【公開番号】特開2014-231589(P2014-231589A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000197975
【氏名又は名称】石原ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095153
【弁理士】
【氏名又は名称】水口 崇敏
(72)【発明者】
【氏名】高島 大樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 昭夫
【審査官】
古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−212600(JP,A)
【文献】
特開2005−133020(JP,A)
【文献】
特表2013−515093(JP,A)
【文献】
特開2000−336392(JP,A)
【文献】
特開2005−255708(JP,A)
【文献】
特開2006−193734(JP,A)
【文献】
特開2012−126884(JP,A)
【文献】
特開2007−308556(JP,A)
【文献】
米国特許第05376310(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0102668(US,A1)
【文献】
米国特許第04847004(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/94
B08B 3/08
C11D 1/75
C11D 1/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミンオキシド型非イオン界面活性剤、ベタイン型両性イオン界面活性剤及び水からなる洗車剤。
【請求項2】
アミンオキシド型非イオン界面活性剤がアルキルアミドアルキルアミンオキシドであることを特徴とする請求項1記載の洗車剤。
【請求項3】
ベタイン型両性イオン界面活性剤がアルキルアミドベタインであることを特徴とする請求項1または2記載の洗車剤。
【請求項4】
アミンオキシド型非イオン界面活性剤とベタイン型両性イオン界面活性剤との配合割合が10:1〜10:10であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の洗車剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両車体(窓ガラスを含む)(以下、車体ともいう)を洗浄するための
洗車剤であり、ワックス剤や撥水剤等の各種コーティング剤と混合した場合においても配管閉塞トラブル等の不具合を生じさせないものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、車体等の硬表面の洗浄剤としては、陰イオン界面活性剤を主成分としたクリーナーやフォーム剤からなるシャンプー類等が用いられてきており、さらに、車体表面に撥水性等を付与するために、陽イオン界面活性剤を含むワックス剤やアミノシリコーンを含む撥水剤がよく用いられてきている。このようなシャンプー類等の硬表面洗浄剤の単独使用や、それと上記ワックス剤や撥水剤との併用については、例えば、車体に洗車機を通して施用する洗車処理等が一般的である(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、シャンプー類と、ワックス剤や撥水剤等の撥水性硬表面コーティング剤とは、それらが混合されると、界面活性剤や配合物の電荷の違いなどから、析出や分層等の不具合が生じるのを免れなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−348597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような事情の下、ワックス剤や撥水剤等の撥水性硬表面コーティング剤と混合した場合においても、析出や分層等の不具合が生じず、従来の洗浄剤と同等レベルの性能を有する
洗車剤を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、電荷の影響がない特定の非イオン界面活性剤に着目し、これを組成成分とすることで、上記撥水性硬表面コーティング剤との混合においても安定性を保て、析出や分層等の不具合が生じないことを見出し、さらに、特定の両性イオン界面活性剤を併用することで、安定性を保ちながら、従来からの陰イオン界面活性剤主体の洗浄剤と同程度の性能レベルを維持しうることを見出し、これらの知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
(1)アミンオキシド型非イオン界面活性剤、ベタイン型両性イオン界面活性剤
及び水からなる洗車剤。
(2)アミンオキシド型非イオン界面活性剤がアルキルアミドアルキルアミンオキシドであることを特徴とする前記(1)記載の
洗車剤。
(3)ベタイン型両性イオン界面活性剤がアルキルアミドベタインであることを特徴とする前記(1)または(2)記載の
洗車剤。
(4)アミンオキシド型非イオン界面活性剤とベタイン型両性イオン界面活性剤との配合割合が10:1〜10:10であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の
洗車剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の
洗車剤は、従来の陰イオン界面活性剤主体の洗浄剤と遜色のない洗浄性能を示し、また、ワックス剤や撥水剤等の撥水性硬表面コーティング剤と混合した場合においても、析出や分層等の不具合が生じないという利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に用いられる有効成分のアミンオキシド型非イオン界面活性剤としては、三級置換アミンオキシドが好ましく、中でも置換基の一つが炭素数8以上、好ましくは8〜20である、直鎖または分岐鎖のアルキル又はアルケニル基や高級脂肪酸アミド基であり、その他が低級アルキル、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であるもの、例えば、オクチルジメチルアミンオキシド、デシルジメチルアミンオキシド、ラウリルジメチルアミンオキシド、イソラウリルジメチルアミンオキシド、ヤシアルキルジメチルアミンオキシド、アルキル(C10,14)ジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシドのようなアルキルアミンオキシドや、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、イソラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、パルミチン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、ステアリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、ミリスチン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシドのようなアルキルアミドアルキルアミンオキシド等が挙げられ、中でもさらにアルキルアミドアルキルアミンオキシド、特にアルキルアミドプロピルアミンオキシドが好ましい。
【0009】
本発明に用いられる有効成分のベタイン型両性イオン界面活性剤としては、カルボベタイン型両性イオン界面活性剤が好ましく、中でも置換基の一つが炭素数8以上、好ましくは8〜20である、直鎖または分岐鎖のアルキル又はアルケニル基や高級脂肪酸アミド基であり、その他が低級アルキル、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であるもの、例えば、オクチルジメチルベタイン、デシルジメチルベタイン、ラウリルジメチルベタイン、イソラウリルジメチルベタイン、ヤシアルキルジメチルベタイン、アルキル(C10,14)ジメチルベタイン、ミリスチルジメチルベタインのようなアルキルベタインや、ラウリン酸アミドプロピルジメチルベタイン、イソラウリン酸アミドプロピルジメチルベタイン、パルミチン酸アミドプロピルジメチルベタイン、ステアリン酸アミドプロピルジメチルベタイン、ミリスチン酸アミドプロピルジメチルベタインのようなアルキルアミドアルキルベタイン等が挙げられ、中でもさらにアルキルアミドアルキルベタイン、特にアルキルアミドプロピルベタインが好ましい。
【0010】
上記各剤中における上記アミンオキシド型非イオン界面活性剤とベタイン型両性イオン界面活性剤との配合割合は、通常10:0.05〜10:10、好ましくは10:1〜10:10の範囲で選ばれる。この範囲を逸脱すると洗浄力に乏しくなったり、また安定性に劣ったりするようになる。
【0011】
本発明の
洗車剤は、有効成分の種類にもよるが、有効成分濃度が1〜50重量%程度に調製されたもの、中でもバランス量の水を有するものが好ましく、これを用いて、洗車機等を介して車体に施用して洗浄や、ワックスかけをするなどの洗車処理に際しては、実用的には、上記好適濃度の10〜3000倍になるまで水で希釈するのがよい。
【0012】
また、本発明の
洗車剤には、必要に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で、有機溶剤、紫外線吸収剤、染料、防錆剤、防腐剤などの任意の添加成分を配合することができる。
【実施例】
【0013】
次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0014】
諸例における各剤の性能は、以下の試験方法及び判定基準により求めた。
【0015】
(1)(起泡性)
各剤を500倍に希釈し、ロスマイルス法にて泡の高さ(mm)を測定し、その値を以下の判定基準により評価した。
○:150mm超
△:125mm超〜150mm
×:125mm以下
【0016】
(2)(発泡性・すすぎ性)
1000倍に希釈した洗浄剤1000mlを、圧縮空気を使用する発泡機を通して発泡させ、車のボンネットに処理した際の泡の状態および、その泡を洗い流した際のすすぎの様子を目視にて確認し、以下の判定基準により評価した
(発泡性)
○:泡量が多く、ボンネットにたっぷり残る。
△:泡量はやや少なく、ボンネットから流れ落ちる。
×:泡がすぐに消え、ほとんど残らない。
(すすぎ性)
○:泡がつぶれやすく簡単に洗い流せる。
△:若干泡が残るが洗い流せる。
×:泡残りが多く洗い流すのに時間がかかる。
【0017】
(3)(洗浄性)
10倍に希釈した洗浄剤に、ロウ・パラフィン・植物油等で作製し青色に染色した人工汚染油を処理したテストピースを浸漬し、10分間攪拌する試験において、試験前後のテストピース表面を色差計により測定し、比較例1の洗浄力を100としたときの以下の判定基準により判定した。
○:150超
△:100超〜150
×:100以下
【0018】
(4)(混合安定性)
陽イオン界面活性剤を含有するワックス類およびアミノ変性シリコーンを含有する撥水剤、シリコーン乳化物からなる艶出し剤と洗浄剤とを混合させた際の液状態を、混合直後の状態および、50℃まで加温し1ヶ月間保管した状態で目視により確認し、以下の判定基準により評価した。
○:分層・沈殿等なく安定。
△:僅かに変色が見られるが分層・沈殿等なし。
×:分層・沈殿等が発生。
【0019】
実施例1〜4
以下の表1に示すとおり、アミンオキシドとベタインを併用してなる洗浄剤を調製し、これらを洗車剤とした。各洗車剤の性能を求めた結果を表3に示す。
【0020】
比較例1〜3
以下の表2に示すとおり、陰イオン界面活性剤(アルカンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン)、非イオン界面活性剤(ポリオキシエチレンイソデシルエーテル)を用いてなる、比較のための洗浄剤を調製した。それらの性能を求めた結果を表3に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
これより、アミンオキシドとベタインとを配合することで、上記実施例の本発明の各剤の方が比較例のそれより、いずれも総合的に優れた性能を示すことが分かる。また、他薬剤との混合安定性にも優れ、例えば配管内で沈殿等の発生による詰まりなどの問題を抑えることができる。
よって、本発明を利用することで、配管の統合など設備の簡素化、配管洗浄などのメンテナンスの労力を低減することができる。