特許第6160042号(P6160042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6160042
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】位置特定システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20170703BHJP
   G10L 15/10 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   G01S5/02 Z
   G10L15/10 500Z
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-187992(P2012-187992)
(22)【出願日】2012年8月28日
(65)【公開番号】特開2014-44172(P2014-44172A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100113310
【弁理士】
【氏名又は名称】水戸 洋介
(72)【発明者】
【氏名】米山 博人
(72)【発明者】
【氏名】下谷 啓
(72)【発明者】
【氏名】西野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】原田 陽雄
(72)【発明者】
【氏名】藤居 徹
(72)【発明者】
【氏名】飯田 靖
【審査官】 中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−066171(JP,A)
【文献】 特開2002−132886(JP,A)
【文献】 特開2012−155374(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/105436(WO,A1)
【文献】 特開2007−300572(JP,A)
【文献】 特開2007−085826(JP,A)
【文献】 特開2001−183455(JP,A)
【文献】 特開昭62−226083(JP,A)
【文献】 特開2009−210516(JP,A)
【文献】 特開2005−99018(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0201488(US,A1)
【文献】 原田陽雄、外6名,“VoiStrap:IDカードネックストラップ型の音声センシングデバイスを用いたヒューマンコミュニケーション可視化システム”,第74回(平成24年)全国大会講演論文集(3),一般社団法人情報処理学会,2012年 3月 6日,p.(3-13)-(3-14)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00− 5/14
G10L13/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体とともに移動する端末装置と、
複数設けられるとともに設置箇所が互いに異なるように設けられ、データ通信可能領域内に位置する前記端末装置から送信された送信情報を受信する受信装置と、
複数設けられた前記受信装置に含まれる一部の受信装置に対応して設けられ、当該一部の受信装置の各々の前記データ通信可能領域内に複数設置されるとともに設置位置が互いに異なるように設けられ、当該設置位置の特定に用いる特定用情報を前記端末装置に対して各々発信する発信装置と、
前記端末装置および前記一部の受信装置を介して送信されてきた前記特定用情報に基づき当該端末装置の位置を把握するとともに、前記データ通信可能領域内に前記発信装置が設置されていない前記受信装置から情報が送信されてきた場合には、当該受信装置の位置に基づき当該端末装置の位置を把握する把握手段と、
を備える位置特定システム。
【請求項2】
前記端末装置は、歩行を行う対象者に装着され、当該対象者とともに移動し、且つ、当該対象者の発話に関する発話情報を取得し、
一の前記端末装置から送信され前記受信装置にて受信された発話情報と、他の端末装置から送信され当該受信装置にて受信された発話情報とに基づき、当該一の端末装置が装着された対象者と当該他の端末装置が装着された対象者とが会話を行っているか否かを判定する判定手段を更に備え、
前記判定手段は、前記把握手段により把握された前記端末装置の位置も用いて、前記会話を行っているか否かの前記判定を行うことを特徴とする請求項1記載の位置特定システム。
【請求項3】
前記発信装置は、複数設けられるとともに、行方向および列方向に向かって並び格子状に配置されていることを特徴とする請求項1記載の位置特定システム。
【請求項4】
前記発信装置の各々は、当該発信装置と他の発信装置との識別に用いられる識別情報を、前記特定用情報として前記端末装置に対して発信し、
前記移動体の位置の特定は、前記識別情報に関連付けられて記憶された位置情報であって前記発信装置とは別の装置に記憶された当該位置情報に基づき行われることを特徴とする請求項1記載の位置特定システム。
【請求項5】
移動体とともに移動する端末装置から送信された送信情報を受信する受信装置であって、複数設けられるとともに設置箇所が互いに異なるように設けられ、データ通信可能領域内に位置する当該端末装置から送信された送信情報を受信する受信装置と、
複数設けられた前記受信装置に含まれる一部の受信装置に対応して設けられ、当該一部の受信装置の各々の前記データ通信可能領域内に複数設置されるとともに設置位置が互いに異なるように設けられ、当該設置位置の特定に用いる特定用情報を前記端末装置に対して各々発信する発信装置と、
前記端末装置および前記一部の受信装置を介して送信されてきた前記特定用情報に基づき当該端末装置の位置を把握するとともに、前記データ通信可能領域内に前記発信装置が設置されていない前記受信装置から情報が送信されてきた場合には、当該受信装置の位置に基づき当該端末装置の位置を把握する把握手段と、
を備える位置特定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置特定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、受信したタグIDのうち、固定タグを示すタグ情報に対応するタグIDをタグ管理データベースから特定し、特定したタグIDに対応する位置情報を位置情報データベースから読み出し、読み出した位置情報に基づいて、建設現場において移動体が位置しうる領域を特定する位置特定システムが開示されている。
特許文献2には、複数の無線送信手段から送信された無線信号を受信し、複数の無線信号の受信強度値と、それぞれの送信元の識別情報とを検出する受信強度検出手段を備える端末の位置を推定する位置推定システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−271347号公報
【特許文献2】特開2011−203000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、移動体の位置をより正確に特定することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、移動体とともに移動する端末装置と、複数設けられるとともに設置箇所が互いに異なるように設けられ、データ通信可能領域内に位置する前記端末装置から送信された送信情報を受信する受信装置と、複数設けられた前記受信装置に含まれる一部の受信装置に対応して設けられ、当該一部の受信装置の各々の前記データ通信可能領域内に複数設置されるとともに設置位置が互いに異なるように設けられ、当該設置位置の特定に用いる特定用情報を前記端末装置に対して各々発信する発信装置と、前記端末装置および前記一部の受信装置を介して送信されてきた前記特定用情報に基づき当該端末装置の位置を把握するとともに、前記データ通信可能領域内に前記発信装置が設置されていない前記受信装置から情報が送信されてきた場合には、当該受信装置の位置に基づき当該端末装置の位置を把握する把握手段と、を備える位置特定システムである。
請求項2に記載の発明は、前記端末装置は、歩行を行う対象者に装着され、当該対象者とともに移動し、且つ、当該対象者の発話に関する発話情報を取得し、一の前記端末装置から送信され前記受信装置にて受信された発話情報と、他の端末装置から送信され当該受信装置にて受信された発話情報とに基づき、当該一の端末装置が装着された対象者と当該他の端末装置が装着された対象者とが会話を行っているか否かを判定する判定手段を更に備え、前記判定手段は、前記把握手段により把握された前記端末装置の位置も用いて、前記会話を行っているか否かの前記判定を行うことを特徴とする請求項1記載の位置特定システムである。
請求項3に記載の発明は、前記発信装置は、複数設けられるとともに、行方向および列方向に向かって並び格子状に配置されていることを特徴とする請求項1記載の位置特定システムである。
請求項4に記載の発明は、前記発信装置の各々は、当該発信装置と他の発信装置との識別に用いられる識別情報を、前記特定用情報として前記端末装置に対して発信し、前記移動体の位置の特定は、前記識別情報に関連付けられて記憶された位置情報であって前記発信装置とは別の装置に記憶された当該位置情報に基づき行われることを特徴とする請求項1記載の位置特定システムである。
請求項に記載の発明は、移動体とともに移動する端末装置から送信された送信情報を受信する受信装置であって、複数設けられるとともに設置箇所が互いに異なるように設けられ、データ通信可能領域内に位置する当該端末装置から送信された送信情報を受信する受信装置と、複数設けられた前記受信装置に含まれる一部の受信装置に対応して設けられ、当該一部の受信装置の各々の前記データ通信可能領域内に複数設置されるとともに設置位置が互いに異なるように設けられ、当該設置位置の特定に用いる特定用情報を前記端末装置に対して各々発信する発信装置と、前記端末装置および前記一部の受信装置を介して送信されてきた前記特定用情報に基づき当該端末装置の位置を把握するとともに、前記データ通信可能領域内に前記発信装置が設置されていない前記受信装置から情報が送信されてきた場合には、当該受信装置の位置に基づき当該端末装置の位置を把握する把握手段と、を備える位置特定システムである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、受信装置と発信装置とが同一領域内で同一数設けられている場合に比べ、受信装置の数を増やさなくても移動体の位置特定の精度を確保することができる。
請求項2の発明によれば、端末装置からの情報によって、当該端末装置を装着した対象者と他の端末装置を装着した対象者とが会話を行っているか否かが分かる。
請求項3の発明によれば、発信装置が不規則に配置されている場合に比べ、移動体の位置を知るための計算が容易になる。
請求項4の発明によれば、発信装置の移動が行われる度に必要となる発信装置への位置情報の格納を省略することができるようになる。
請求項の発明によれば、受信装置と発信装置とが同一領域内で同一数設けられている場合に比べ、受信装置の数を増やさなくても移動体の位置特定の精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の位置特定システムの構成例を示す図である。
図2】端末装置の構成例を示す図である。
図3】装着者および他者の口(発声部位)と、マイクロフォンとの位置の関係を示す図である。
図4】マイクロフォンと音源との間の距離と音圧(入力音量)との関係を示す図である。
図5】装着者自身の発話音声と他者の発話音声との識別方法を示す図である。
図6】発話者の識別が行われる際の端末装置の基本動作を示すフローチャートである。
図7】本実施形態の端末装置をそれぞれ装着した複数の装着者が会話している状況を示す図である。
図8図7の会話状況における各端末装置の発話情報の例を示す図である。
図9】本適用例におけるホスト装置の機能構成例を示す図である。
図10】従来の方式による位置の把握方法を示した図である。
図11】本実施形態における、端末装置の位置の特定方法を説明するための図である。
図12】位置検出用モジュールの他の配置態様を示した図である。
図13】位置検出用モジュールおよびデータ受信機の配置態様等の具体例を示した図である。
図14】比較例における構成例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<システム構成例>
図1は、本実施形態の位置特定システムの構成例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の位置特定システムは、端末装置10と、ホスト装置20と、複数のデータ受信機21とを備えて構成される。端末装置10とデータ受信機21とは、無線通信回線を介して接続されている。無線通信回線としては、Wi−Fi(登録商標)(Wireless Fidelity)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、UWB(Ultra Wideband)等の既存の方式による回線を用いてよい。また、ホスト装置20とデータ受信機21とは有線LAN(Local Area Network)によって接続されている。
【0009】
なお、図示の例では、端末装置10が1台のみ記載されているが、詳しくは後述するように、端末装置10は、使用者各人が装着して使用するものであり、実際には使用者数分の端末装置10が用意される。以下、端末装置10を装着した使用者を装着者と呼ぶ。また、本実施形態のデータ受信機21は、複数設けられているとともに、設置箇所が互いに異なるように設けられている。
【0010】
端末装置10は、少なくとも、2つのマイクロフォン(第1マイクロフォン111、第2マイクロフォン112)と、増幅器(第1増幅器131、第2増幅器132)とを備える。また、端末装置10は、収録音声を解析する音声解析部15を備えている。また、端末装置10は、端末装置10の位置に関する情報である位置情報を取得する位置情報取得部19を備えている。本実施形態では、このように位置情報取得部19が設けられることによって、歩行などによって移動する装着者の位置が特定されるようになる。
【0011】
さらに、端末装置10は時計部18を備えている。ここで、時計部18は、例えばリアルタイムクロック等の時計IC(Integrated Circuit)を用いて構成することができ、時間の経過を計時し、現在の年、月、日等のカレンダー情報及び時刻情報(以下、「カレンダー情報及び時刻情報」を「日付情報」と称する)を生成する。そして、時計部18は、生成したこの日付情報をデータ送信部16へ出力する。
【0012】
また、端末装置10は、音声解析部15による解析結果、時計部18にて生成された日付情報、および、位置情報取得部19により取得された位置情報をホスト装置20に送信するためのデータ送信部16を備えている。また、端末装置10は、電源部17を備えている。
【0013】
第1マイクロフォン111および第2マイクロフォン112は、装着者の口(発声部位)からの音波伝搬経路の距離(以下、単に「距離」と記す)が異なる位置に配置される。
ここで、第1マイクロフォン111は、装着者の口(発声部位)から遠い位置(例えば、35cm程度)に配置されている。また、第2マイクロフォン112は、装着者の口(発声部位)に近い位置(例えば、10cm程度)に配置されている。なお、第1マイクロフォン111、第2マイクロフォン112として用いられるマイクロフォンの種類としては、ダイナミック型、コンデンサ型等、既存の種々のものが挙げられる。特に無指向性のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)型マイクロフォンを用いることが好ましい。
【0014】
第1増幅器131および第2増幅器132は、第1マイクロフォン111および第2マイクロフォン112が取得音声に応じて出力する電気信号(音声信号)を増幅する。第1増幅器131および第2増幅器132として用いられる増幅器としては、例えば、既存のオペアンプが挙げられる。
【0015】
音声解析部15は、第1増幅器131および第2増幅器132から出力された音声信号を解析する。そして、第1マイクロフォン111および第2マイクロフォン112で取得された音声が、端末装置10を装着した装着者自身が発話した音声か、他者の発話による音声かを識別する。すなわち、音声解析部15は、第1マイクロフォン111および第2マイクロフォン112で取得された音声に基づき、音声の発話者を識別する識別部として機能する。発話者識別のための具体的な処理の内容については後述する。
【0016】
データ送信部16は、音声解析部15による解析結果を含む取得データ、端末装置10のID、位置情報取得部19により取得された位置情報、時計部18にて生成された日付情報を、上記データ受信機21を介してホスト装置20へ送信する。ホスト装置20へ送信する情報としては、ホスト装置20において行われる処理の内容に応じて、上記の解析結果等の他、例えば、取得音声の音圧等の情報を含めて良い。なお、端末装置10に音声解析部15による解析結果を蓄積するようにし、一定期間の保存データを一括送信しても良い。また、有線回線で送信しても良い。
【0017】
電源部17は、上記の第1マイクロフォン111、第2マイクロフォン112、第1増幅器131、第2増幅器132、音声解析部15、データ送信部16、時計部18、位置情報取得部19に電力を供給する。電源としては、例えば乾電池や充電池等の既存の電源が用いられる。また、電源部17は、必要に応じて、電圧変換回路および充電制御回路等の周知の回路を含む。
【0018】
ホスト装置20は、データ受信機21にて受信されたデータを蓄積するデータ蓄積部22と、蓄積したデータを解析するデータ解析部23と、解析結果を出力する出力部24とを備える。このホスト装置20は、例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置により実現される。また、上記のように本実施形態では複数台の端末装置10が使用され、ホスト装置20は、その複数台の端末装置10の各々からデータを受信する。
【0019】
受信装置の一例としてのデータ受信機21は、上記の無線通信回線に対応しており、各端末装置10から送信されたデータ(送信情報)を受信してデータ蓄積部22へ送る。データ蓄積部22は、例えばパーソナルコンピュータの磁気ディスク装置等の記憶装置により実現され、データ受信機21から取得した受信データを発話者別に蓄積する。ここで、発話者の識別は、端末装置10から送信される端末IDと、予めホスト装置20に登録されている発話者名と端末IDの照合により行う。また、端末装置10から端末IDの代わりに、装着者名を送信するようにしておいても良い。
【0020】
データ解析部23は、例えばパーソナルコンピュータのプログラム制御されたCPUにより実現され、データ蓄積部22に蓄積されたデータを解析する。具体的な解析内容および解析手法は、本実施形態のシステムの利用目的や利用態様に応じて種々の内容および手法を取り得る。例えば、端末装置10の装着者どうしの対話頻度や各装着者の対話相手の傾向を分析したり、対話における個々の発話の長さや音圧の情報から対話者の関係を類推したりすることが行われる。また、データ解析部23では、位置情報取得部19により取得された位置情報が用いられ、端末装置10の装着者の位置が把握される。
【0021】
出力部24は、データ解析部23による解析結果を出力したり、解析結果に基づく出力を行ったりする。出力手段は、システムの利用目的や利用態様、解析結果の内容や形式等に応じて、ディスプレイ表示、プリンタによる印刷出力、音声出力等、種々の手段を取り得る。
【0022】
<端末装置の構成例>
図2は、端末装置10の構成例を示す図である。
上記のように、端末装置10は、各使用者に装着されて使用される。ここで、この端末装置10には、使用者が装着可能とするため、使用者により支持される被支持部として機能する提げ紐40が設けられている。また、本実施形態の端末装置10は、図2に示すように、装置本体30が設けられている。ここで、図示の構成において、使用者は、提げ紐40に首を通し、装置本体30を首から提げて装着する。
【0023】
装置本体30は、樹脂等で形成された薄い直方体のケース31に、少なくとも第1増幅器131、第2増幅器132、音声解析部15、データ送信部16、電源部17、時計部18、および、位置情報取得部19を実現する回路等と、電源部17の電源(電池)とを収納して構成される。ケース31には、装着者の氏名や所属等のID情報を表示したIDカード等を挿入するポケットを設けても良い。また、ケース31自体の表面にそのようなID情報等を印刷したり、ID情報等を記載したシールを貼り付けたりしても良い。
【0024】
提げ紐40には、第1マイクロフォン111および第2マイクロフォン112が設けられる(以下、第1マイクロフォン111および第2マイクロフォン112の各々を区別しない場合には、マイクロフォン111、112と記載)。ここで、マイクロフォン111、112は、提げ紐40の内部を通るケーブル(電線等)により、第1増幅器131、第2増幅器132に接続されている。
【0025】
提げ紐40の材質としては、革、合成皮革、木綿その他の天然繊維や樹脂等による合成繊維、金属等、既存の種々の材質を用いてよい。また、シリコン樹脂やフッ素樹脂等を用いたコーティング処理が施されていてもよい。また、提げ紐40は、筒状の構造を有し、マイクロフォン111、112は、提げ紐40の内部に収納されている。
【0026】
ここで、マイクロフォン111、112を提げ紐40の内部に設けた場合、マイクロフォン111、112の損傷や汚れを防ぎ、対話者がマイクロフォン111、112の存在を意識することが抑制される。なお、装着者の口(発声部位)から遠い位置に配置される第1マイクロフォン111は、ケース31に内蔵して装置本体30に設けても良い。本実施形態では、第1マイクロフォン111が提げ紐40に設けられる場合を例として説明する。
【0027】
また、第1マイクロフォン111は、提げ紐40の装置本体30に接続される端部(例えば、接続部位から10cm以内の位置)に設けられている。これにより、装着者が提げ紐40を首に掛けて装置本体30を下げた状態で、第1マイクロフォン111は、装着者の口(発声部位)から約30cmから40cm程度離れた位置に配置される。なお、第1マイクロフォン111が装置本体30に設けられた場合も、装着者の口(発声部位)から第1マイクロフォン111までの距離は同程度である。
【0028】
第2マイクロフォン112は、提げ紐40の装置本体30に接続される端部から離れた位置(例えば、接続部位から20cm〜30cm程度の位置)に設けられている。これにより、装着者が提げ紐40を首に掛けて装置本体30を下げた状態で、第2マイクロフォン112は、装着者の首元(例えば鎖骨に当たる位置)に位置し、装着者の口(発声部位)から約10cmから20cm程度離れた位置に配置される。
【0029】
さらに具体的に説明すると、本実施形態では、環状に形成された提げ紐40が装着者の首に掛けられるとともにこの提げ紐40が装置本体30により下方に引っ張られる結果、提げ紐40には、装置本体30との接続部を始点とし装着者の右肩側を経由して装着者の首の背後に向かう第1の部位41と、装置本体30との接続部を始点とし装着者の左肩側を経由して装着者の首の背後に向かう第2の部位42とが設けられた構成となっている。
【0030】
そして本実施形態では、この第1の部位41に対し、第1マイクロフォン111および第2マイクロフォン112が取り付けられている。なお、第1の部位41および第2の部位42のうちの一方の部位に第1マイクロフォン111を設け、第1の部位41および第2の部位42のうちの他方の部位に第2マイクロフォン112を設けてもよい。
【0031】
ここで、マイクロフォン111、112は、提げ紐40に設ける構成に限らず、種々の方法で装着者に装着して良い。例えば、第1マイクロフォン111、第2マイクロフォン112の各々を、個別にピン等を用いて衣服に固定するように構成しても良い。また、第1マイクロフォン111、第2マイクロフォン112の位置関係が所望の位置で固定されるようにデザインされた専用の装着具を用意して装着しても良い。
【0032】
また、装置本体30は、図2に示したように、提げ紐40に接続されて装着者の首から提げられる構成に限らず、携帯することが容易な装置として構成されていればよい。例えば、本実施形態のような提げ紐ではなく、クリップやベルトにより衣服や体に装着するように構成しても良いし、単にポケット等に納めて携帯するような構成としてもよい。また、携帯電話その他の既存の携帯型電子情報端末にて、マイクロフォン111、112からの音声信号を受け付けて増幅し、解析する機能を実現させても良い。
【0033】
さらにまた、マイクロフォン111、112と装置本体30(あるいは音声解析部15)とを有線で接続するのではなく、無線通信により接続しても良い。また、第1増幅器131、第2増幅器132、音声解析部15、データ送信部16、電源部17、時計部18、および、位置情報取得部19は、上記の構成例では単一のケース31に収納されることとしたが、複数の個体に分けて構成しても良い。例えば、電源部17をケース31に収納せず、外部電源に接続して使用する構成としてもよい。
【0034】
<収録音声の非言語情報に基づく発話者(自他)の識別>
次に、本実施形態における発話者の識別方法について説明する。
本実施形態は、収録音声の発話者に関して自他の別を識別する。また、本実施形態では、収録音声の情報のうち、形態素解析や辞書情報を用いて得られる言語情報ではなく、音圧(マイクロフォン111、112への入力音量)等の非言語情報に基づいて発話者を識別する。言い換えれば、言語情報により特定される発話内容ではなく、非言語情報により特定される発話状況から音声の発話者を識別する。
【0035】
図1および図2を参照して説明したように、本実施形態において、端末装置10の第1マイクロフォン111は装着者の口(発声部位)から遠い位置に配置され、第2マイクロフォン112は装着者の口(発声部位)に近い位置に配置される。すなわち、装着者の口(発声部位)を音源とすると、第1マイクロフォン111と音源との間の距離の方が、第2マイクロフォン112と音源との間の距離よりも大きく異なる。
【0036】
具体的には、第1マイクロフォン111と音源との間の距離は、第2マイクロフォン112と音源との間の距離の1.5〜4倍程度である。ここで、マイクロフォン111、112における収録音声の音圧は、マイクロフォン111、112と音源との間の距離が大きくなるにしたがって減衰(距離減衰)する。したがって、装着者の発話音声に関して、第1マイクロフォン111における収録音声の音圧と第2マイクロフォン112における収録音声の音圧とは大きく異なる。
【0037】
一方、装着者以外の者(他者)の口(発声部位)を音源とした場合を考えると、その他者が装着者から離れているため、第1マイクロフォン111と音源との間の距離と、第2マイクロフォン112と音源との間の距離は、大きく変わらない。装着者に対する他者の位置によっては、両距離の差は生じ得るが、装着者の口(発声部位)を音源とした場合のように、第1マイクロフォン111と音源との間の距離が第2マイクロフォン112と音源との間の距離の数倍となることはない。したがって、他者の発話音声に関して、第1マイクロフォン111における収録音声の音圧と第2マイクロフォン112における収録音声の音圧とは、装着者の発話音声の場合のように大きく異なることはない。
【0038】
図3は、装着者および他者の口(発声部位)と、マイクロフォン111、112との位置の関係を示す図である。
図3に示す関係において、装着者の口(発声部位)である音源aと第1マイクロフォン111との間の距離をLa1、音源aと第2マイクロフォン112との間の距離をLa2とする。また、他者の口(発声部位)である音源bと第1マイクロフォン111との間の距離をLb1、音源bと第2マイクロフォン112との間の距離をLb2とする。この場合、次の関係が成り立つ。
La1>La2(La1≒1.5×La2〜4×La2)
Lb1≒Lb2
【0039】
図4は、マイクロフォン111、112と音源との間の距離と音圧(入力音量)との関係を示す図である。
上述したように、音圧は、マイクロフォン111、112と音源との間の距離に応じて距離減衰する。図4において、距離La1の場合の音圧Ga1と距離La2の場合の音圧Ga2とを比較すると、音圧Ga2は、音圧Ga1の4倍程度となっている。一方、距離Lb1と距離Lb2とが近似するため、距離Lb1の場合の音圧Gb1と距離Lb2の場合の音圧Gb2とは、ほぼ等しい。
【0040】
そこで、本実施形態では、この音圧比の差を用いて、収録音声における装着者自身の発話音声と他者の発話音声とを識別する。なお、図4に示した例では、距離Lb1、Lb2を60cmとしたが、ここでは音圧Gb1と音圧Gb2とがほぼ等しくなることに意味があり、距離Lb1、Lb2は図示の値に限定されない。
【0041】
図5は、装着者自身の発話音声と他者の発話音声との識別方法を示す図である。
図4を参照して説明したように、装着者自身の発話音声に関して、第2マイクロフォン112の音圧Ga2は、第1マイクロフォン111の音圧Ga1の数倍(例えば4倍程度)である。また、他者の発話音声に関して、第2マイクロフォン112の音圧Gb2は、第1マイクロフォン111の音圧Gb1とほぼ等しい(1倍程度)。
【0042】
そこで、本実施形態では、第2マイクロフォン112の音圧と第1マイクロフォン111の音圧との比に閾値を設定する。そして、音圧比が閾値よりも大きい音声は装着者自身の発話音声と判断し、音圧比が閾値よりも小さい音声は他者の発話音声と判断する。図5に示す例では、閾値を2とし、音圧比Ga2/Ga1は閾値2を超えるので装着者自身の発話音声と判断され、音圧比Gb2/Gb1は閾値2よりも小さいので他者の発話音声と判断されている。
【0043】
ところで、マイクロフォン111、112により収録される音声には、発話音声の他に、環境音等のいわゆる雑音(ノイズ)が含まれる。この雑音の音源とマイクロフォン111、112との間の距離の関係は、他者の発話音声の場合と類似する。すなわち、図4図5に示した例によれば、雑音の音源cと第1マイクロフォン111との間の距離をLc1とし、雑音の音源cと第2マイクロフォン112との間の距離をLc2とすると、距離Lc1と距離Lc2とは近似する。そして、マイクロフォン111、112の収録音声における音圧比Gc2/Gc1は、閾値2よりも小さくなる。しかし、このような雑音は、バンドパスフィルタやゲインフィルタ等を用いた既存の技術によるフィルタリング処理を行うことにより発話音声から分離され、除去される。
【0044】
<端末装置の動作例>
図6は、発話者の識別が行われる際の端末装置10の基本動作を示すフローチャートである。
図6に示すように、端末装置10のマイクロフォン111、112が音声を取得すると、各マイクロフォン111、112から取得音声に応じた電気信号(音声信号)が第1増幅器131および第2増幅器132へ送られる(ステップ601)。第1増幅器131および第2増幅器132は、マイクロフォン111、112からの音声信号を取得すると、信号を増幅して音声解析部15へ送る(ステップ602)。
【0045】
音声解析部15は、第1増幅器131および第2増幅器132で増幅された信号を受信するとともに、受信したこの信号に対してフィルタリング処理を行い、信号から環境音等の雑音(ノイズ)の成分を除去する(ステップ603)。次に、音声解析部15は、雑音成分が除かれた信号に対し、一定の時間単位(例えば、数十分の一秒〜数百分の一秒)毎に、各マイクロフォン111、112の収録音声における平均音圧を求める(ステップ604)。
【0046】
その後、ステップ604で求めた各マイクロフォン111、112における平均音圧の利得が有る場合(ステップ605でYes)、音声解析部15は、発話音声が有る(発話が行われた)と判断し、次に、第1マイクロフォン111における平均音圧と第2マイクロフォン112における平均音圧との比(音圧比)を求める(ステップ606)。そして、ステップ606で求めた音圧比が閾値よりも大きい場合(ステップ607でYes)、音声解析部15は、発話音声は装着者自身の発話による音声であると判断し(ステップ608)、装着者による発話を検出する。また、ステップ606で求めた音圧比が閾値よりも小さい場合(ステップ607でNo)、音声解析部15は、発話音声は他者の発話による音声であると判断する(ステップ609)。
【0047】
一方、ステップ604で求めた各マイクロフォン111、112における平均音圧の利得が無い場合(ステップ605でNo)、音声解析部15は、発話音声が無い(発話が行われていない)と判断する(ステップ610)。なお、ステップ605の判断は、ステップ603のフィルタリング処理で除去しきれなかった雑音が信号に残っている場合を考慮し、平均音圧の利得の値が予め定められた値以上の場合に、利得があると判断しても良い。
【0048】
この後、情報送信部として機能するデータ送信部16が、ステップ604〜ステップ610の処理で得られた情報を解析結果としてホスト装置20へ送信する(ステップ611)。具体的には、データ送信部16は、装着者による発話の有無、装着者が発話を行った際の装着者発話日時、装着者以外の者(他者)による発話の有無、装着者以外の者(他者)が発話を行った際の他者発話日時などの情報をホスト装置20へ送信する。
【0049】
なお、上記装着者発話日時および上記他者発話日時は、時計部18からの日付情報、マイクロフォン111、112からの出力、ステップ608〜610の判断結果に基づき、音声解析部15にて把握される。なお、これらの情報以外に、発話者毎(装着者自身または他者)の発話時間の長さや平均音圧の利得の値、その他の付加情報を解析結果と共にホスト装置20へ送信するようにしてもよい。
【0050】
なお、本実施形態では、第1マイクロフォン111の音圧と第2マイクロフォン112の音圧とを比較することにより、発話音声が装着者自身の発話による音声か他者の発話による音声かを判断した。しかし、本実施形態による発話者の識別は、マイクロフォン111、112により取得された音声信号そのものから抽出される非言語情報に基づいて行うものであれば良く、音圧の比較には限定されない。
【0051】
例えば、第1マイクロフォン111における音声取得時刻(音声信号の出力時刻)と第2マイクロフォン112における音声取得時刻とを比較してもよい。この場合、装着者自身の発話音声は、装着者の口(発声部位)から第1マイクロフォン111までの距離と、装着者の口(発声部位)から第2マイクロフォン112までの距離との差が大きいため、音声取得時刻にある程度の差(時間差)が生じる。
【0052】
一方、他者の発話音声は、口(発声部位)から第1マイクロフォン111までの距離と、口(発声部位)から第2マイクロフォン112までの距離との差が小さいため、装着者の発話音声の場合よりも音声取得時刻の時間差が小さい。そこで、音声取得時刻の時間差に対して閾値を設定し、音声取得時刻の時間差が閾値よりも大きい場合には装着者自身の発話と判断し、音声取得時刻の時間差が閾値よりも小さい場合には他者の発話と判断するようにしてもよい。
【0053】
<システムの適用例とホスト装置の機能>
本実施形態のシステムでは、複数の端末装置10により上記のようにして得られた発話に関する情報(以下、発話情報)がホスト装置20に集められる。ホスト装置20は、複数の端末装置10から得られた情報を用いて、システムの利用目的や利用態様等に応じて種々の解析を行う。以下、複数の装着者のコミュニケーションに関する情報を取得するシステムとして本実施形態を用いる例を説明する。
【0054】
図7は、本実施形態の端末装置10をそれぞれ装着した複数の装着者が会話している状況を示す図である。図8は、図7の会話状況における各端末装置10A、10Bの発話情報の例を示す図である。
図7に示すように、端末装置10をそれぞれ装着した二人の装着者A、装着者Bが会話している場合を考える。このとき、装着者Aの端末装置10Aにおいて装着者の発話として認識される音声は、装着者Bの端末装置10Bでは他者の発話として認識される。反対に、端末装置10Bにおいて装着者の発話として認識される音声は、端末装置10Aでは他者の発話として認識される。
【0055】
端末装置10Aおよび端末装置10Bからは、それぞれ独立に、発話情報がホスト装置20に送られる。このとき、端末装置10Aから取得した発話情報と、端末装置10Bから取得した発話情報とは、図8に示すように、発話者(装着者と他者)の識別結果は反対になるが、発話時間の長さや発話者が切り替わったタイミング等の発話状況を示す情報は近似する。
【0056】
そこで、本適用例のホスト装置20は、端末装置10Aから取得した情報と端末装置10Bから取得した情報とを比較することにより、これらの情報が同じ発話状況を示していると判断し、装着者Aと装着者Bとが会話していることを認識する(装着者Aと装着者Bとが会話していると判定する)。ここで、発話状況を示す情報としては、少なくとも、上述した発話者ごとの個々の発話における発話時間の長さ、個々の発話の開始時刻と終了時刻、発話者が切り替わった時刻(タイミング)等のように、発話に関する時間情報が用いられる。なお、特定の会話に係る発話状況を判断するために、これらの発話に関する時間情報の一部のみを用いても良いし、他の情報を付加的に用いても良い。
【0057】
図9は、本適用例におけるホスト装置20の機能構成例を示す図である。
本適用例において、ホスト装置20は、端末装置10から取得した発話情報のうち、会話を行っている装着者の端末装置10からの発話情報(以下、会話情報)を検出する会話情報検出部201と、検出された会話情報を解析する会話情報解析部202とを備える。この会話情報検出部201および会話情報解析部202は、データ解析部23の機能として実現される。また、ホスト装置20は、位置情報取得部19(図1参照)により取得された位置情報に基づき、装着者(端末装置10)の位置を把握する位置把握部203を備えている。ここで、位置把握部203も、データ解析部23の機能として実現される。
【0058】
ホスト装置20には、データ受信機21を介し、端末装置10A、端末装置10B以外の端末装置10からも発話情報が送られる。ここで、データ受信機21により受信された各端末装置10からの発話情報は、データ蓄積部22に蓄積される。そして、データ解析部23の会話情報検出部201が、データ蓄積部22に蓄積された各端末装置10の発話情報を読み出し、特定の会話に係る発話情報である会話情報を検出する。
【0059】
上記の図8に示したように、端末装置10Aの発話情報と端末装置10Bの発話情報は、他の端末装置10の発話情報とは異なる特徴的な対応関係が抽出される。会話情報検出部201は、データ蓄積部22に蓄積されている各端末装置10から取得した発話情報を比較し、複数の端末装置10から取得した発話情報の中から、上記のような対応関係を有する発話情報を検出し、同一の会話に係る会話情報として識別する。
【0060】
付言すると、会話情報検出部201は、データ蓄積部22に蓄積されている各端末装置10から取得した発話情報を比較し、複数の端末装置10から取得した発話情報の中から、図8にて示したような対応関係を有する発話情報を検出した場合、一方の端末装置10を装着した装着者と他方の端末装置10を装着した装着者との間で会話があったと判定する。さらに、説明すると、ホスト装置20には、複数の端末装置10から発話情報が随時送られているので、会話情報検出部201は、例えば、一定時間分の発話情報を順次区切りながら上記の処理を行い、特定の会話に係る会話情報が含まれているか否かを判断する。
【0061】
また、上記の例では、端末装置10をそれぞれ装着した二人の装着者が会話している例を示したが、会話に参加する人数は二人に限定されない。三人以上の装着者が会話している場合、各装着者が装着している端末装置10において、自装置の装着者の発話音声が装着者自身の発話音声として認識され、他者(二人以上)の発話音声と区別される。しかし、発話時間や発話者が切り替わったタイミング等の発話状況を示す情報は、各端末装置10における取得情報どうしの間で近似する。そこで、会話情報検出部201は、上記の二人の会話の場合と同様に、同一の会話に参加している装着者の端末装置10から取得した発話情報を検出し、会話に参加していない装着者の端末装置10から取得した発話情報と区別する。
【0062】
次に、会話情報解析部202は、会話情報検出部201により検出された会話情報を解析して、その会話の特徴を抽出する。本実施形態では、具体例として、対話度、傾聴度、会話活性度の3種類の評価基準により会話の特徴を抽出する。ここで、対話度とは、会話参加者の発言頻度のバランスを表すものとする。傾聴度とは、個々の会話参加者における他者の発言を聴く度合いを表すものとする。会話活性度とは、会話全体における発言の密度を表すものとする。
【0063】
対話度は、会話が行われている間における発話者の交代回数と、発話者が交代するまでの時間(一人の発話者が連続して発話している時間)のばらつきによって特定される。これは、一定時間の会話情報において、話者が切り替わった回数および切り替わったときの時刻から得られる。そして、発話者の交代回数が多く、各発話者の連続発話時間のばらつきが小さいほど、対話度の値(レベル)が大きいものとする。この評価基準は、同一の会話に係る全ての会話情報(各端末装置10の発話情報)において共通する。
【0064】
傾聴度は、会話情報における会話参加者ごとの自身の発話時間と他者の発話時間との比率によって特定される。例えば、下式の場合、値が大きいほど傾聴度の値(レベル)が大きいものとする。
傾聴度=(他者の発話時間)÷(装着者自身の発話時間)
この評価基準は、同一の会話に係る会話情報であっても、各会話参加者の端末装置10から取得した発話情報ごとに異なるものとなる。
【0065】
会話活性度は、いわゆる会話の盛り上がりを表す指標であり、会話情報全体に対する無言時間(会話参加者の誰も発言していない時間)の比率によって特定される。無言時間の総和が短いほど、会話において会話参加者のいずれかが発言していることを意味し、会話活性度の値(レベル)が大きいものとする。この評価基準は、同一の会話に係る全ての会話情報(各端末装置10の発話情報)において共通する。
【0066】
以上のようにして、会話情報解析部202による会話情報の解析により、その会話情報に係る会話の特徴が抽出される。また、上記の解析により、その会話における各参加者の参加の仕方が特定される。なお、上記の評価基準は、会話の特徴を表す情報の一例に過ぎず、他の評価項目を採用したり、項目毎に重み付けを加えたりすることにより、本実施形態のシステムの利用目的や利用態様に応じた評価基準を設定してよい。
【0067】
上記のような解析を、データ蓄積部22に蓄積された発話情報の中から会話情報検出部201により検出された種々の会話情報に対して行うことにより、端末装置10の装着者のグループ全体におけるコミュニケーションの傾向を分析することができる。具体的には、例えば、会話参加者の数、会話が行われた時間、対話度、活性度などの値と会話の発生頻度との相関関係を調べることで、装着者のグループにおいてどのような態様の会話が行われる傾向があるかが判断される。
【0068】
また、特定の装着者の複数の会話情報に対して上記のような解析を行うことにより、装着者個人のコミュニケーションの傾向を分析することができる。特定の装着者による会話への参加の仕方は、会話の相手や会話参加者の数といった条件に応じて、一定の傾向を持つ場合がある。そこで、特定の装着者における複数の会話情報を調べることにより、例えば、特定の相手との会話では対話レベルが大きい、会話参加者の数が多くなると傾聴度が大きくなる等のような特徴が検出されることが期待される。
【0069】
なお、上記の発話情報の識別処理および会話情報解析処理は、本実施形態によるシステムの適用例を示すに過ぎず、本実施形態によるシステムの利用目的や利用態様、ホスト装置20の機能等を限定するものではない。本実施形態の端末装置10により取得した発話情報に対して種々の解析や調査を実行するための処理機能が、ホスト装置20の機能として実現され得る。
【0070】
<装着者の位置の把握>
本実施形態では、上記のとおり、位置情報取得部19により取得された位置情報に基づき、端末装置10を装着した装着者の位置が把握される。
ここで、まず、従来の方式による位置の把握方法を説明する。従来の方式では、例えば、端末装置10からの送信情報を受信したデータ受信機21を特定することで、装着者(端末装置10)の位置を把握する。
【0071】
具体的に説明すると、図10(従来の方式による位置の把握方法を示した図)の(A)に示すように、データ受信機21を複数設けるとともに、データ受信機21によるデータ受信が可能なエリア(以下、「データ受信可能エリア」と称する)が重ならないように、データ受信機21の各々を離して配置する。そして、端末装置10からのデータを受信したデータ受信機21を特定することで、端末装置10の位置を把握する。
【0072】
ところで、図10(A)に示す方式の場合、データ受信機21によるデータ受信可能エリアが広いために、端末装置10の詳細な位置を把握することが難しくなる。また、図10(A)に示す方式の場合、データ受信機21がLANによってホスト装置20に接続されることも多く、この場合、データ受信機21の位置を柔軟に設定することが難しくなる。そして、この場合、位置の把握精度があまり求められていない箇所に、データ受信機21が設置されることが起こりうる。
【0073】
また、図10(B)に示す方式によっても端末装置10の位置を把握することができる。具体的には、同図に示すように、データ受信機21を複数(図10(B)に示す例では3つ)設けるとともに、データ受信機21によるデータ受信可能エリアが互いに重なるようにデータ受信機21の各々を配置する。
【0074】
そして、この方式では、データ受信機21の各々にて受信された信号の強度に基づき、端末装置10の位置を特定する。ところで、データ受信機21の各々にて受信される信号の強度はばらつくことも多く、図10(B)に示す方式では、端末装置10の正確な位置の特定が行いにくい。また、図10(B)に示す方式の場合、配置密度を高めた状態でデータ受信機21を設置する必要が生じ、データ受信機21の数を増やす必要が生じる。
【0075】
次に、本実施形態における端末装置10の位置の特定方法について説明する。なお、以下の説明では、端末装置10を装着した装着者の位置を特定する場合を一例に説明するが、端末装置10の装着対象は人に限らず、人以外の他の移動体に対し取り付け、この移動体の位置を特定するようにしてもよい。
【0076】
図11は、本実施形態における、端末装置10の位置の特定方法を説明するための図である。本実施形態では、同図(A)に示すように、データ受信機21によるデータ受信可能エリア内に(端末装置10から送信された送信情報がデータ受信機21に到達可能な領域内に)、複数の位置検出用モジュール29が配置されている。
【0077】
ここで、発信装置の一例としての位置検出用モジュール29の各々は、その設置位置が互いに異なるように設けられている。また、本実施形態では、位置検出用モジュール29が、行方向および列方向に向かって並び格子状に配置されている。また、本実施形態では、各位置検出用モジュール29から発信される電波の到達範囲が互いに重ならないように、各位置検出用モジュール29が配置されている。さらに、本実施形態では、各位置検出用モジュール29から発信される電波の到達範囲の方が、データ受信機21によるデータ可能受信エリアよりも小さくなっている。
【0078】
ここで、本実施形態における位置検出用モジュール29は、ZigBeeモジュールにより構成される。
【0079】
また、上記では説明を省略したが、本実施形態では、上記にて説明した位置情報取得部19(図1参照)を、電波の発信および電波の受信を行うアンテナ(不図示)と、このアンテナにて受信した信号を復調する復調回路(不図示)とを含んだ状態で構成している。
【0080】
ここで、端末装置10の位置の検出は、図11(A)、(B)に示すように、まず、端末装置10の位置情報取得部19から電波が発信されることで開始される。そして、端末装置10の位置情報取得部19から電波が発信されると、この端末装置10の最も近い箇所に位置する位置検出用モジュール29(端末装置10から発信された電波の到達領域内に位置する位置検出用モジュール29)にて電波が受信される。
【0081】
その後、端末装置10からの電波を受信した位置検出用モジュール29から、位置検出用モジュール29の設置位置についての位置情報を含んだ電波(位置検出用モジュール29の設置位置の特定に用いる情報(特定用情報)を含んだ電波)が発信され、次いで、受信部として機能する位置情報取得部19によりこの電波が受信される。これにより、端末装置10が、自身が位置する箇所の位置情報を取得するようになる。その後、この位置情報、および、時計部18にて生成された日付情報が、データ送信部16(図1参照)によって、データ受信機21に送信される。
【0082】
その後、位置情報および日付情報が、データ受信機21からホスト装置20へ送信される。次いで、ホスト装置20のデータ蓄積部22に、位置情報および時間情報が格納される。その後、位置把握部203(図9参照)によって、データ蓄積部22に蓄積された位置情報および時間情報が解析され、位置把握部203によって、端末装置10(端末装置10を装着した装着者)の位置が把握される。なお、位置把握部203では、特定の時間における端末装置10の位置のみならず、一定の経過時間内における端末装置10の移動軌跡なども把握されるようになる。
【0083】
なお、上記では、ZigBeeを用いて位置検出用モジュール29を構成した場合を一例に説明したが、位置検出用モジュール29には、ZigBee以外を用いることができ、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などにより構成され位置情報を記憶したメモリと、メモリに記録されたこの位置情報をWi−Fi(登録商標)(Wireless Fidelity)、Bluetooth(登録商標)、UWB(Ultra Wideband)等の既存の方式を利用して送信する送信部とから構成するようにしてもよい。また、上記では、端末装置10からの要求に応じて位置検出用モジュール29から位置情報を発信する構成としたが、位置検出用モジュール29から、常時、位置情報を含んだ電波を発信させておいてもよい。
【0084】
また、上記では、位置検出用モジュール29に、位置検出用モジュール29の設置位置に関する位置情報を予め格納しておき、位置検出用モジュール29から位置情報を発信する場合を説明した。ところでこのような態様に限らず、位置検出用モジュール29からは、ID番号など、位置検出用モジュール29の各々に個別に付与され位置検出用モジュール29を他の位置検出用モジュール29と識別するための識別情報を発信するようにしてもよい。
【0085】
そして、位置検出用モジュール29とは別の装置であるホスト装置20に、この識別情報と位置検出用モジュール29の設置位置についての位置情報と互いに関連付けて記憶させておき、ホスト装置20にて、端末装置10の位置を把握するようにしてもよい。この場合、位置検出用モジュール29の移動が行われる度に必要となる位置検出用モジュール29への位置情報の格納が、省略されるようになる。
【0086】
また、本実施形態では、上記のとおり、端末装置10Aから取得した情報と端末装置10Bから取得した情報との比較によって、端末装置10Aを装着した装着者Aと端末装置10Bを装着した装着者Bとが会話しているか否かの判定が、判定手段として機能する会話情報検出部201によって行われる。この際に、端末装置10の位置情報を加味することで、装着者Aと装着者Bとが会話しているか否かの判定精度を高められるようになる。
【0087】
具体的に説明すると、例えば、発話者ごとの個々の発話における発話時間の長さ、個々の発話の開始時刻と終了時刻、発話者が切り替わった時刻(タイミング)等が、端末装置10Aから取得した情報と端末装置10Bから取得した情報との間において近似している場合であっても、端末装置10Aと端末装置10Bとが全く異なる場合に位置しているときには、装着者Aと装着者Bとの間で会話がなされていないと判定することができるようになる。このような処理を行うことで、装着者Aと装着者Bとが会話しているか否かの判定精度が高まるようになる。
【0088】
図12は、位置検出用モジュール29の他の配置態様を示した図である。
同図に示す例では、データ受信機21が二つ設けられた構成となっている。そして、一方のデータ受信機21(図中、左のデータ受信機21)によるデータ受信可能エリア(第1の領域)には、複数の位置検出用モジュール29が配置されるとともに、これらの位置検出用モジュール29は格子状に配置されている。
【0089】
その一方で、他方のデータ受信機21(図中、右側のデータ受信機21)によるデータ受信可能エリア(第2の領域)には、位置検出用モジュール29が一つも設けられていない。付言すると、図中右方のデータ受信機21によるデータ受信可能エリアでは、位置検出用モジュール29の設置数が零となっている。
【0090】
ここで、この構成例では、上記一方のデータ受信機21(図中、左方のデータ受信機21)によるデータ可能受信エリア内に端末装置10が位置しているときには、より正確に端末装置10の位置が把握されるようになる。その一方で、他方のデータ受信機21(図中、右方のデータ受信機21)によるデータ受信可能エリア内に端末装置10が位置しているときには、位置の把握精度が劣るようになる。
【0091】
ここで、端末装置10の位置の検出に際しては、より正確に位置の把握を行いたい場所(例えば、人が多数おり装着者を見つけにくい場所(例えば、居室))と、大まかな位置が分かればよい場所(例えば、人があまりおらず装着者を見つけやすい場所(例えば、廊下)が存在する。このような場合に、この大まかな位置が分かればよいエリアに対して、多数の位置検出用モジュール29を設置するとコストが増加してしまう。このため、図12に示す態様では、大まかな位置が分かればよいエリアにおける位置の検出については、データ受信機21のみを利用するようにしている。
【0092】
なお、位置検出用モジュール29には、位置検出用モジュール29が設置されている絶対的な位置(絶対位置)を記憶させておいてもよいし、データ受信機21に対する位置検出用モジュール29の位置(相対位置)を記憶させておいてもよい。
【0093】
なお、位置検出用モジュール29に相対位置が記憶されている場合は、位置検出用モジュール29のこの相対位置と、この位置検出用モジュール29がデータ受信可能エリア内に位置するデータ受信機21の絶対位置とに基づき、端末装置10の位置が把握される。なお、上記絶対位置や相対位置については、位置検出用モジュール29に記録させておいてもよいし、上記にて説明したとおり、ホスト装置20に、位置検出用モジュール29の識別情報に関連付けた状態で記録させておいてもよい。
【0094】
<実施例>
ここで、実施例を用い更に説明する。
図13は、位置検出用モジュール29およびデータ受信機21の配置態様等の具体例を示した図である。
同図(A)に示すように、本実施例では、データ受信機21から20m離れた箇所に、4つの位置検出用モジュール29を格子状に配置している。そして、この実施例では、端末装置10を装着した装着者が、領域13Aをスタート地点として、領域13B、領域13C、領域13Dの順に移動(歩行)を行った。付言すると、時計回り方向に沿って周回移動を行った。この場合、同図(B)に示すように、端末装置10にて受信される信号が、端末装置10(装着者)が異なる領域に入る度に異なるようになり、端末装置10を装着した装着者の位置が明確に分かるようになる。
【0095】
<比較例>
次に、比較例を説明する。
図14は、比較例における構成例を示した図である。
この比較例においては、同図(A)に示すように、データ受信機21から20m離れた箇所に、4つのデータ受信機21をさらに設けている。なお、この4つのデータ受信機21は、図13(A)における4つの位置検出用モジュール29と同様、格子状に配置されている。
【0096】
そして、この比較例でも、端末装置10を装着した装着者が、時計回り方向に沿って周回移動を行った。具体的には、領域13Aをスタート地点として、領域13B、領域13C、領域13Dの順に移動(歩行)を行った。この場合、同図(B)に示すように、端末装置10が位置している領域に関わらず4つの成分の信号がほぼ同じ信号強度で検出されるようになった。かかる場合、端末装置10がどこに位置しているかの特定が難しくなる。
【符号の説明】
【0097】
10…端末装置、16…データ送信部、19…位置情報取得部、21…データ受信機、29…位置検出用モジュール、40…提げ紐
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14