特許第6160145号(P6160145)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

特許6160145断熱カップとそれに用いるシートの製造方法
<>
  • 特許6160145-断熱カップとそれに用いるシートの製造方法 図000002
  • 特許6160145-断熱カップとそれに用いるシートの製造方法 図000003
  • 特許6160145-断熱カップとそれに用いるシートの製造方法 図000004
  • 特許6160145-断熱カップとそれに用いるシートの製造方法 図000005
  • 特許6160145-断熱カップとそれに用いるシートの製造方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6160145
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】断熱カップとそれに用いるシートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/28 20060101AFI20170703BHJP
   B31F 1/28 20060101ALI20170703BHJP
   B31F 1/24 20060101ALI20170703BHJP
   B65D 3/22 20060101ALI20170703BHJP
   B65D 30/08 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   B32B3/28 Z
   B31F1/28
   B31F1/24 A
   B65D3/22 C
   B65D30/08
   B32B3/28 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-54825(P2013-54825)
(22)【出願日】2013年3月18日
(65)【公開番号】特開2014-180766(P2014-180766A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2016年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川田 裕之
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−264949(JP,A)
【文献】 実公昭52−052821(JP,Y1)
【文献】 実開昭49−087479(JP,U)
【文献】 特開昭50−014494(JP,A)
【文献】 特表2004−505817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 3/28
B31F 1/24
B31F 1/28
B65D 3/22
B65D 30/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波型になっている中芯材の片面または両面にライナー材を接着したシートであって、前記中芯材、及び、前記ライナー材がプラスチックからなり、前記中芯材の波型を2箇所以上つぶして前記ライナー材に密着させて密着部を設け、該2つの密着部の間に密封された密封空間を設けたシートが、カップの胴部の外面に装着されていることを特徴とする断熱カップ。
【請求項2】
請求項1に記載の断熱カップに用いるシートの製造方法であって、
断面歯車型の2つの成形用ロールの間にプラスチックからなる中芯材を通して、該中芯材を波型に成形し、該中芯材が一方の成形用ロールに抱かれた状態で、圧着ロールにより、接着層を設けたプラスチックからなる前記ライナー材が圧着され
前記接着層が、グラビア塗工装置によって接着剤を塗布し乾燥させて設けられているか、または、T型ダイスより押し出された溶融樹脂からなることを特徴とするシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱カップとそれに用いるシートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
緩衝効果や断熱効果の期待から、ダンボールが多く使用されている。一般的なダンボールは、紙を波型に成型した中芯材とその中芯材に貼合された紙のライナー材から出来ている。また、吸湿を防止するため、あるいは、水分の蒸散を防止するために、防湿ダンボールが使用されるようになってきた。
【0003】
例えば、熱可塑性合成樹脂層、防湿アルミ層、紙層、及び、該紙層表面の熱可塑性合成樹脂層からなるライナー材と、紙層とその両外面に熱可塑性合成樹脂層からなる中芯材を用いて、ライナー材と中芯材とを中芯材の波状頂部のみで接着固定した防湿ダンボールの製造方法がある(特許文献1)。
【0004】
しかし、この防湿ダンボールの場合、紙層が設けられているので、面での防湿性はあるが、端面に紙層が露出しているため、水が端面に付いた場合、紙層で剥がれてしまう恐れがあった。
【0005】
公知文献を以下に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−164634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたもので、水に強く、断熱性や保温性を有する、あるいは、緩衝効果を有するシートを用いた断熱カップと、そのシートの製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
削除。
【0009】
削除。
【0010】
削除。
【0011】
本発明の請求項に係る発明は、波型になっている中芯材の片面または両面にライナー材を接着したシートであって、前記中芯材、及び、前記ライナー材がプラスチックからなり、
前記中芯材の波型を2箇所以上つぶして前記ライナー材に密着させて密着部を設け、該2つの密着部の間に密封された密封空間を設けたシートが、カップの胴部の外面に装着されていることを特徴とする断熱カップである。
【0012】
本発明の請求項に係る発明は、請求項1に記載の断熱カップに用いるシートの製造方法であって、
断面歯車型の2つの成形用ロールの間にプラスチックからなる中芯材を通して、該中芯材を波型に成形し、該中芯材が一方の成形用ロールに抱かれた状態で、圧着ロールにより、接着層を設けたプラスチックからなる前記ライナー材が圧着され
前記接着層が、グラビア塗工装置によって接着剤を塗布し乾燥させて設けられているか、または、T型ダイスより押し出された溶融樹脂からなることを特徴とするシートの製造方法である。
【0013】
削除。
【0014】
削除。
【発明の効果】
【0015】
本発明の断熱カップは、水に強く、断熱性や保温性を有する、あるいは、緩衝効果を有
する。そして、この断熱カップに用いるシートは、本発明のシートの製造方法により、連続して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の断熱カップに用いるシートの一参考例を模式的に断面で示した説明図である。(A)中芯材の片面にライナー材を接着したシート、(B)中芯材の両面にライナー材を接着したシート。
図2】本発明の断熱カップに用いるシートの例を模式的に斜視で示した説明図である。
図3】本発明の断熱カップに用いるシートの一参考例を用いた袋の説明図である。(A)正面図、(B)平面図。
図4】本発明の断熱カップに用いるシートの一参考例を用いた断熱カップの説明図である。
図5】本発明のシートの製造方法の一例を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態につき説明する。
図1は、本発明の断熱カップに用いるシートの一参考例を模式的に断面で示した説明図で、(A)は、中芯材の片面にライナー材を接着したシート、(B)は、中芯材の両面にライナー材を接着したシートである。図2は、本発明の断熱カップに用いるシートの例を模式的に斜視で示した説明図である。
【0018】
本発明の断熱カップに用いるシートの一参考例は、図1(A)の断面図に示すように、波型になっている中芯材1の片面にライナー材2に接着層3を設けて接着したシート100である。あるいは、図1(B)の断面図に示すように、波型になっている中芯材1の両面にライナー材2、4に接着層3、3を設けて接着したシート200である。
【0019】
また、図2のように、シート200の中芯材1の波型を2箇所以上つぶしてライナー材2、4に密着させて密着部5を設け、2つの密着部5の間に密封された密封空間6を設けたシート300とすることができる。このようにすると、密封空間6の中の空気などの気体が逃げないので、断熱性や保温性の効果が向上する。また、緩衝効果も向上し、収納された内容物を衝撃から守ることが出来る。
【0020】
また、図示しないが、シート100でも同様に、中芯材1の波型を2箇所以上つぶしてライナー材2に密着させて密着部5を設け、該2つの密着部5の間に密封された密封空間6を設けることができる。
【0021】
中芯材1とライナー材2、4は、プラスチックからなっている。プラスチックとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどが使用される。これらは単層でも用いられてもよいし、また、これらを組み合わせた多層としてもよい。これらは延伸フィルムでも未延伸フィルムでもよくまた、押出し樹脂層でもよい。
【0022】
また、中芯材1あるいはライナー材2、4を多層構成にして、アルミ箔などの金属箔を中間層に設けても良い。更には、フィルムに蒸着層を設けていても良い。蒸着層としては、アルミニウムなどの金属蒸着層としてもよいし、酸化アルミニウムや酸化ケイ素などの無機化合物蒸着層としてもよい。
【0023】
接着層3は、中芯材1とライナー材2、4を接着するための層であって、接着剤層でもよいし、T型ダイスなどで押し出された溶融樹脂により設けられた樹脂層であってもよい。接着剤層に用いる接着剤は、ドライラミネーションで用いられるウレタン系の接着剤や、水性接着剤、ホットメルト接着剤でもよいが、特にウレタン系の接着剤が好ましく用いることが出来る。
【0024】
このような材質になっているので、従来用いられていた紙を使用したダンボールと異なり、本例のシート100、200、300は、紙を積層していないので、水に濡れても層が剥がれてしまうことがなく水に強い。そして、断熱性や保温性、あるいは、緩衝効果を有する。
【0025】
以下、袋について説明する。
図3は、本発明の断熱カップに用いる一シートの一参考例を用いた袋の説明図で、(A)正面図、(B)平面図ある。
【0026】
本例のシート100、200、300を用いて、袋400を作ることが出来る。例えば図3のように、本例のシート200を袋の表フィルムと裏フィルムにして、周縁部をシールして、袋に製袋することが出来る。図では、袋の側部と底部がシールされ、底部がシールされることによって、中芯材1の波型をつぶしてライナー材2、4に密着させて密着部5が設けられている。そして、充填後に天部をシールすることによって、密着部5が設けられ、天部と底部の密着部5の間に密封空間6を設けることが出来る。
【0027】
この場合、袋の内側になるライナーの内容物側の表面は、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂の未延伸フィルムや押出しラミネーションによる樹脂であることが好ましい。特に低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、あるいは、ポリプロピレンの未延伸フィルムや、押出しラミネーションによる樹脂層とする事が望ましい。
【0028】
また、中芯材1の表面と、接着層3あるいはライナー材2、4の内側表面層も互いにヒートシール可能な熱可塑性樹脂どうしであることが望ましい。このようにすることによって、袋400をヒートシールするときに、中芯材1の波型をつぶしてライナー材2、4にシール密着させて密着部5が設けることが出来る。
【0029】
図3の袋では、シート200を表フィルムと裏フィルムに用いたが、一方のフィルムのみをシート200にしてもよい。また、同様にして、中芯材1の片面にライナー材2を接着したシート100を用いて、袋を作ることも出来る。この場合、シート100のライナー材2を袋の内側になるようにして、周縁部をシールして、袋とすることが出来る。更には、あらかじめ密着部5を設けて、密封空間6を設けたシート300を用いて、同様にして、袋を作ることも出来る。
【0030】
以下、断熱カップについて説明する。
図4は、本発明の断熱カップに用いるシートの一参考例を用いた断熱カップの説明図である。
【0031】
本例の断熱カップ500は、紙カップ10の胴部の外面にシート200が装着されている。断熱カップ500に用いる紙カップ10は、胴部材と底部材からなり、筒状にした胴部材の下端に、周縁部を下方に折り曲げ、周縁折り曲げ部を設けた底部材を挿入して、胴部材の下端部分を内側に折返し、周縁折り曲げ部に重ね合わせ、全体を融着させて、脚部11を形成し、胴部材の上端部にトップカール部12を設けた紙カップ10である。
【0032】
この紙カップ10の胴部材が形成している胴部に、シート200を筒状にし装着している。シート200の装着は、シート200の両端部分を重ね合わせシールして筒状にし、紙カップ10の下端より被せるようにしてもよいし、紙カップ10の胴部に平らなシート200を巻いて、シールして筒状にしてもよい。
【0033】
断熱カップ500では、中芯材1の両面にライナー材2、4を接着したシート200を用いたが、シート100やシート300を用いた断熱カップとしてもよい。また、紙カップ10を用いたが、インジェクション成形で成形したポリスチレンやポリプロピレン、あるいはポリエステルなどのプラスチック製のカップを用いてもよい。
【0034】
このように、カップの胴部にシート100、200、300を装着することによって、カップの中に熱いものが入っていても、断熱性があるので、手で持っても熱く感じることがない。このような断熱カップはコーヒーなどのホット飲料や、ラーメン、うどんなどの容器として好ましく使用することが出来る。
【0035】
以下、本発明のシートの製造方法について説明する。
図5は、本発明のシートの製造方法の一例を説明する概略図である。
【0036】
中芯材1は、給紙部より巻き出され、図5のように、ガイドロールを通って、断面歯車型の2つの成形用ロール21、22により、波型に成形される。成形用ロール21、22は、加温されて温度調節されている。最初に中芯材1に接触する成形用ロール21は、中芯材1のプラスチックの少なくとも1層を軟化させるように温度調整されていることが望ましい。
【0037】
成形用ロール21、22で波型に成形された中芯材1は、成形用ロール22に抱かれた状態で、圧着ロール23で接着層3(図5では記載を省略)が設けられたライナー2と圧着され、中芯材1とライナー2が接着層3を介して接着される。ここまでの工程で、中芯材1の片面にライナー材2を接着したシート100が製造される。
【0038】
中芯材1の両面にライナー材2、4を接着したシート200を製造する場合は、更に、2本の圧着ロール24、25の間を通して、接着層3(図5では記載を省略)が設けられたライナー4を、中芯材1のライナー材2の反対側に接着すればよい。
【0039】
また、中芯材1の波型をつぶしてライナー材2、4に密着させて密着部5と密封空間6を設けてシート300を製造するには、走行するシート100やシート200を間歇的に上下より挟んで圧着させればよい。このときも、加熱して行うことが好ましい。
【0040】
接着層3は、接着剤層でもよいし、T型ダイスなどで押し出された溶融樹脂により設けられた樹脂層であってもよい。接着剤層とする場合は、ドライラミネーションで用いられる2液硬化型ウレタン系の接着剤や、水性接着剤、ホットメルト接着剤などを使用することが出来る。
【0041】
特に、ドライラミネーションで用いられる接着剤を、ライナー材2やライナー材4にグラビアコーターやダイコーターで塗布して、乾燥させて、接着層3を設け、圧着ロール23や、圧着ロール24、25で中芯材1に圧着して、接着させることが好ましい。
【0042】
接着層3を樹脂層とする場合は、熱可塑性樹脂を溶融してT型ダイスより押し出し、ライナー材2やライナー材4に接着層3を設け、溶融した状態で中芯材1に、圧着ロール23や、圧着ロール24、25で圧着させて接着させればよい。このとき用いる熱可塑性樹脂と中芯材1の表面とは互いに溶融接着する樹脂を選定する。
【0043】
尚、熱可塑性樹脂を溶融してT型ダイスより押し出し、冷却後、更に、接着剤を塗布乾燥させ、接着層3をライナー材2やライナー材4に設け、圧着ロール23や、圧着ロール24、25で圧着させて接着させることも出来る。
【0044】
以上の方法により、シート100、200、300を連続して、製造することが出来る。このようにして製造されたシート100、200、300は、水に強く、断熱性や保温性を有する、あるいは、緩衝効果を有するので、前述の袋や、断熱カップに使用する以外にも、例えば、梱包などに使用される緩衝材として、ダクトなどの断熱、保温材として使用することが出来る。また、断熱性や保温性あるいは緩衝効果が要求される包装において用いることが出来る。
【0045】
また、本発明の断熱カップに用いるシートは、柔軟性を持たせることが出来るので、従来のフィルム加工で用いられるスリッターや、製袋機での加工が可能であり、余分な加工機を用意する必要がない。そして、ライナー2、4がプラスチックであるので、グラビア印刷により美粧性が得られる。
【0046】
中芯材1やライナー2、4に、バリア性のある層を設けることによって、バリア性を持たすことも出来る。更に、中芯材を増やして多段のシートとすることも出来、断熱性や保温性あるいは緩衝効果を向上させることも可能である。
【符号の説明】
【0047】
100、200、300・・・シート
400・・・袋
500・・・断熱カップ
1・・・中芯材
2、4・・・ライナー材
3・・・接着層
5・・・密着部
6・・・密封空間
10・・・紙カップ
11・・・脚部
12・・・トップカール部
21、22・・・成形用ロール
23、24、25・・・圧着ロール
図1
図2
図3
図4
図5