(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ダイシングする工程は、前記モールド樹脂及び前記集合基板を第1の方向に切断することにより前記第1の方向に延在する第1のスリットを形成する工程と、前記モールド樹脂及び前記集合基板を前記第1の方向と交差する第2の方向に切断することにより前記第2の方向に延在する第2のスリットを形成する工程とを含み、
前記無電解メッキを施す工程は、前記第1及び第2のスリットが交差する部分に前記メッキ液を噴射することにより行うことを特徴とする請求項1に記載の電子部品モジュールの製造方法。
前記モールド樹脂にはガラスフィラーが含まれており、前記粗面化する工程は、前記モールド樹脂の表面に露出する前記ガラスフィラーを除去する工程を含むことを特徴とする請求項3に記載の電子部品モジュールの製造方法。
前記粗面化する工程は、前記ガラスフィラーを除去する前に、前記モールド樹脂の前記表面を研削する工程をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の電子部品モジュールの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電子部品モジュールを製造する場合、集合基板を用いて電子部品モジュールを多数個取りすることが一般的である。集合基板の個片化はダイシングによって行われるが、集合基板の上面がモールド樹脂で覆われている場合、ダイシングによってモールド樹脂に形成されるスリット(溝)は、高いアスペクト比となる。このため、この状態で集合基板をメッキ液に浸漬すると、スリット内に気泡が残留しやすく、この気泡によってスリットの内壁におけるメッキ成長が阻害されてしまうという問題があった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、アスペクト比の高いスリットの内壁に正しく電磁波シールドを形成することが可能な電子部品モジュールの製造方法を提供することである。
【0008】
また、上述した問題は、電子部品モジュールの製造に限らず、アスペクト比が高いスリットを有する被処理物に無電解メッキを施す場合において共通に生じる問題である。
【0009】
したがって、本発明の他の目的は、アスペクト比の高いスリットの内壁に正しくメッキ膜を形成することが可能な無電解メッキ方法及び無電解メッキ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による電子部品モジュールの製造方法は、集合基板の主面に電子部品を搭載する工程と、前記電子部品を覆うよう前記集合基板の前記主面にモールド樹脂を形成する工程と、前記集合基板の裏面にマスキングテープを貼り付けた状態で、前記モールド樹脂及び前記集合基板を前記主面側からダイシングすることにより、複数の電子部品モジュールに分割する工程と、前記複数の電子部品モジュールの裏面に前記マスキングテープが貼り付けられたたまま状態で、前記電子部品モジュールの上面及び前記ダイシングによって露出した前記複数の電子部品モジュールの側面に無電解メッキを施す工程と、を備え、前記無電解メッキを施す工程は、前記複数の電子部品モジュールをメッキ液に浸漬した状態で、前記複数の電子部品モジュールの前記側面を内壁とするスリットに前記メッキ液を噴射することにより行うことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、スリットにメッキ液を噴射しながら無電解メッキを行っていることから、スリット内に残留する気泡が水流によって排出される。これにより、スリット内に気泡が存在しない状態となることから、スリットの内壁にも正しくメッキ膜を形成することが可能となる。したがって、側面がムラなく電磁波シールドで覆われた電子部品モジュールを製造することが可能となる。
【0012】
本発明において、前記ダイシングする工程は、前記モールド樹脂及び前記集合基板を第1の方向に切断することにより前記第1の方向に延在する第1のスリットを形成する工程と、前記モールド樹脂及び前記集合基板を前記第1の方向と交差する第2の方向に切断することにより前記第2の方向に延在する第2のスリットを形成する工程とを含み、前記無電解メッキを施す工程は、前記第1及び第2のスリットが交差する部分に前記メッキ液を噴射することにより行うことが好ましい。これによれば、スリットの交差部分から四方に水流が生じることから、効率よく気泡の排出を行うことができる。
【0013】
本発明においては、前記ダイシングを行う前に前記モールド樹脂の表面を粗面化する工程をさらに備えることが好ましい。これによれば、モールド樹脂の表面を粗面化した後に無電解メッキを施していることから、モールド樹脂とメッキ膜との密着性を高めることが可能となる。
【0014】
この場合、前記モールド樹脂にはガラスフィラーが含まれており、前記粗面化する工程は、前記モールド樹脂の表面に露出する前記ガラスフィラーを除去する工程を含むことが好ましい。これによれば、ガラスフィラーの除去によって形成された微細なキャビティがいわゆるアンカー効果をもたらすため、より密着性を高めることが可能となる。
【0015】
またこの場合、前記粗面化する工程は、前記ガラスフィラーを除去する前に、前記モールド樹脂の前記表面を研削する工程をさらに含むことが好ましい。これによれば、モールド樹脂の表面がガラスフィラーの存在しないワックス層で覆われている場合であっても、これが除去されるため、多数のガラスフィラーを露出させることが可能となる。
【0016】
また、本発明による無電解メッキ方法は、主面及び前記主面に形成されたスリットを有する被処理物をメッキ液に浸漬する工程と、前記被処理物を前記メッキ液に浸漬した状態で、前記スリット内に前記メッキ液を噴射する工程と、を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、スリットにメッキ液を噴射しながら無電解メッキを行っていることから、スリット内に残留する気泡が水流によって排出される。これにより、スリット内に気泡が存在しない状態となることから、スリットの内壁にも正しくメッキ膜を形成することが可能となる。
【0018】
本発明において、前記スリットは、第1の方向に延在する第1のスリットと、前記第1の方向と交差する第2の方向に延在する第2のスリットとを含み、前記メッキ液を噴射する工程は、前記第1及び第2のスリットが交差する部分に前記メッキ液を噴射することにより行うことが好ましい。これによれば、スリットの交差部分から四方に水流が生じることから、効率よく気泡の排出を行うことができる。
【0019】
また、本発明による無電解メッキ装置は、メッキ液を貯留するトレイと、主面及び前記主面に形成されたスリットを有する被処理物を、前記トレイに貯留されたメッキ液に浸漬した状態で固定する固定治具と、前記固定治具によって固定された前記被処理物の前記スリット内に、前記メッキ液を噴射するノズルと、を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、スリットにメッキ液を噴射しながら無電解メッキを行うことができることから、スリット内に残留する気泡が水流によって排出される。これにより、スリット内に気泡が存在しない状態となることから、スリットの内壁にも正しくメッキ膜を形成することが可能となる。
【0021】
本発明においては、前記トレイから排出される前記メッキ液を貯留するプールと、前記プール内の前記メッキ液を汲み上げ、前記ノズルを介して前記トレイに供給する循環機構と、をさらに備えることが好ましい。これによれば、トレイ内に貯留する少量のメッキ液によって無電解メッキが行われることから、大型のタンクに多数の被処理物を浸漬する従来の無電解メッキ装置に比べて、メッキ液の使用量を削減することができるとともに、メッキ液の管理も容易となる。
【0022】
この場合、前記トレイには前記メッキ液を排出する排出機構が設けられ、前記循環機構による前記メッキ液の供給が停止されると、前記排出機構による前記メッキ液の排出により、前記トレイ内における前記メッキ液の水位は前記被処理物を浸漬可能な水位未満となることが好ましい。これによれば、ロード時及びアンロード時に被処理物がメッキ液に浸漬していない状態となることから、ロード時及びアンロード時の作業が容易となる。
【0023】
またこの場合、前記排出機構は前記トレイの底部に設けられた穴であり、前記トレイは前記プールの上部に配置されていることが好ましい。これによれば、非常に簡単な構造で上記の効果を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
このように、本発明によれば、アスペクト比の高いスリットの内壁に正しく無電解メッキを施すことができることから、電子部品モジュールなどの被処理物の表面に均一なメッキ層を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の好ましい実施形態による電子部品モジュール10の構造を説明するための断面図である。
【
図2】電子部品モジュール10の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図3】電子部品モジュール10の一製造工程(集合基板20aの準備)を示す断面図である。
【
図4】電子部品モジュール10の一製造工程(電子部品31〜33の実装)を示す断面図である。
【
図5】電子部品モジュール10の一製造工程(モールド樹脂40の形成)を示す断面図である。
【
図6】電子部品モジュール10の一製造工程(ラッピング)を示す断面図である。
【
図7】電子部品モジュール10の一製造工程(マスキングテープ60への貼り付け)を示す断面図である。
【
図8】電子部品モジュール10の一製造工程(ダイシング)を示す断面図である。
【
図9】電子部品モジュール10の一製造工程(ガラスフィラー45の除去)を示す断面図である。
【
図10】電子部品モジュール10の一製造工程(電磁波シールド50の形成)を示す断面図である。
【
図11】
図5の符号Aで示すモールド樹脂40の表層近傍を拡大して示す断面図であり、(a)はモールド成形した直後の状態、(b)はラッピング後の状態、(c)はガラスフィラー45を除去した後の状態をそれぞれ示している。
【
図12】本発明の好ましい実施形態による無電解メッキ装置100の外観を示す略斜視図である。
【
図13】固定治具140の構造を説明するための略平面図である。
【
図14】シャワーヘッド150の構造を説明するための図であり、(a)は略側面図、(b)は内部構造を示す略平面図である。
【
図15】バルブ機構134の機能を説明するための図であり、(a)はバルブ機構134を閉じた場合におけるメッキ液Mの循環経路を示し、(b)はバルブ機構134を開いた場合におけるメッキ液Mの循環経路を示している。
【
図16】被処理物をシャワーヘッド150の処理室152にロードする工程を示す略斜視図である。
【
図17】被処理物がシャワーヘッド150の処理室152にロードされた状態を示す略斜視図である。
【
図18】シャワーヘッド150の処理室152にメッキ液Mを供給している状態を示す略斜視図である。
【
図19】シャワーヘッド150の処理室152にロードされた被処理物とノズル158との位置関係を説明するための略平面図である。
【
図20】ノズル158から噴射されるメッキ液Mの水流を説明するための図であり、(a)は断面方向における拡大図、(b)は平面方向における拡大図である。
【
図21】被処理物をシャワーヘッド150の処理室152からアンロードする工程を示す略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明の好ましい実施形態による電子部品モジュール10の構造を説明するための断面図である。
【0028】
図1に示すように、本実施形態による電子部品モジュール10は、モジュール基板20と、モジュール基板20の主面21に搭載された複数の電子部品31〜33と、これら電子部品31〜33を覆うようモジュール基板20の主面21に形成されたモールド樹脂40と、モールド樹脂40の表面及びモジュール基板20の側面23に形成された電磁波シールド50とを備える。
【0029】
モジュール基板20は、ガラスエポキシやアルミナなどの絶縁材料からなる単層又は多層の回路基板であり、その主面21には電子部品31〜33と接続するためのランドパターン24が形成され、その裏面22には外部端子25が形成されている。ランドパターン24と外部端子25は、モジュール基板20を貫通して設けられた図示しないスルーホール導体を介して接続されている。これにより、各電子部品31〜33は外部端子25に電気的に接続される。電子部品31〜33の種類については特に限定されず、半導体ICなどの集積回路、トランジスタなどのディスクリート半導体デバイス、キャパシタやコイルなどの受動素子などを用いることができる。また、モジュール基板20に実装する電子部品の数についても特に限定されるものではない。
【0030】
モールド樹脂40は、モジュール基板20の主面21と平行な第1の表面(上面)41と、モジュール基板20の主面21に対してほぼ垂直な第2の表面(側面)42を有している。第2の側面42は、主面21に対して完全な垂直面である必要はなく、若干の傾斜を有していても構わない。第2の側面42が若干の傾斜を有している場合、電子部品モジュール10の側面形状は、モジュール基板20側を長辺、モールド樹脂40の第1の表面41側を短辺としたやや台形状となる。これら第1及び第2の表面41,42はいずれも粗面化処理されており、多数のキャビティ43を有している。このキャビティ43は、モールド樹脂40に含まれるガラスフィラーを除去することによって形成されたものである。詳細については後述するが、モールド樹脂40は、熱硬化性エポキシ系樹脂などからなる絶縁樹脂にガラスフィラーが含浸されてなり、第1及び第2の表面41,42に露出するガラスフィラーを除去することによって、多数のキャビティ43を形成することができる。
【0031】
電磁波シールド50は、モールド樹脂40の第1及び第2の表面41,42、並びに、モジュール基板20の側面23を覆うように形成されている。電磁波シールド50は、無電解メッキにより形成された金属膜であり、特に限定されるものではないが、Ni(ニッケル)とCu(銅)の積層膜であることが好ましい。
【0032】
図1に示すように、モールド樹脂40の表面41,42を覆う電磁波シールド50は、キャビティ43の内部にも形成されている。これにより、電磁波シールド50を構成する金属膜がキャビティ43に食い込むため、いわゆるアンカー効果によってモールド樹脂40に対する密着性が高められる。さらに、後述するように、モールド工程の直後においては、モールド樹脂40の第1の表面41にはワックス層が存在しており、これが電磁波シールド50との密着性を大幅に低下させる原因となるが、本実施形態においては第1の表面41側に存在していたワックス層が除去されている。このため、ワックス層による密着性の低下も防止されている。
【0033】
このように、本実施形態による電子部品モジュール10は、モールド樹脂40の表面41,42に電磁波シールド50が直接形成されていることから、シールドケースなどを用いた場合と比べて低背化を実現することが可能となる。しかも、モールド樹脂40の表面41,42が粗面化されていることから、モールド樹脂40と電磁波シールド50との密着性が高く、電磁波シールド50の剥がれが生じにくい。さらに、電磁波シールド50はモジュール基板20の側面23を覆っていることから、モールド樹脂40の表面のみを覆う場合に比べ、より高いシールド効果を得ることが可能となる。
【0034】
次に、本実施形態による電子部品モジュール10の製造方法について説明する。
【0035】
図2は電子部品モジュール10の製造方法を説明するためのフローチャートであり、
図3〜
図10は各工程における断面図である。
【0036】
まず、
図3に示すように、集合基板20aを用意し、その主面21a及び裏面22aにそれぞれランドパターン24及び外部端子25を形成する。集合基板20aは、複数のモジュール基板20を多数個取りするための大面積の基板である。なお、外部端子25の形成についてはこの段階で行う必要はなく、以降の任意の工程で形成することができる。次に、
図4に示すように、所定のランドパターン24と電気的に接続されるよう、複数の電子部品31〜33を集合基板20a上に実装する(ステップS1)。電子部品31〜33の実装は、ランドパターン24にハンダを供給した後、マウンタを用いて電子部品31〜33を配置し、その後一括リフローすることによって行うことができる。
【0037】
次に、
図5に示すように、電子部品31〜33が覆われるよう、集合基板20aの主面21aにモールド樹脂40を形成する(ステップS2)。モールド樹脂40の形成は、熱硬化性エポキシ系樹脂などからなる絶縁樹脂にガラスフィラーやワックスなどが含浸されてなるタブレットを金型に供給することによって行うことができる。ガラスフィラーはシリカ(SiO
2)を主成分とし、主に熱膨張係数を調整するために添加される。また、ワックスは、金型からの剥離性を高めるために添加される。
【0038】
図11は、
図5の符号Aで示すモールド樹脂40の表層近傍を拡大して示す断面図であり、(a)はモールド成形した直後の状態を示している。
図11(a)に示すようにモールド成形した直後においては、モールド樹脂40の表面40aはワックス層44で覆われているため、このまま無電解メッキを施した場合、電磁波シールド50との密着性が低くなってしまう。また、モールド樹脂40の表層近傍には、ガラスフィラー45がほとんど存在しない低密度層46が形成されているため、モールド成形した直後においては、表面40aに露出するガラスフィラー45は非常にわずかである。
【0039】
次に、
図6に示すように、モールド樹脂40の表面40aをラッピング(研削)する(ステップS3)。これにより、
図11(b)に示すように、ワックス層44及び低密度層46が除去され、モールド樹脂40の表面41からは多数のガラスフィラー45が露出した状態となる。また、ラッピングによりモールド樹脂40の表面41はある程度粗面化されるため、電磁波シールド50との密着性が改善された状態となる。
【0040】
次に、
図7に示すように、集合基板20aの裏面22a側にマスキングテープ60を貼り付けた後(ステップS4)、
図8に示すように、モールド樹脂40及び集合基板20aを垂直方向からダイシングすることによって、個片化された複数の電子部品モジュール10に分離する(ステップS5)。ダイシング時においては、集合基板20aを個々のモジュール基板20に完全に分離するフルカットを行うことが好ましい。これは、集合基板20aを途中までしか切断しないハーフカットでは、カットされていない部分に以降の工程で電磁波シールド50が形成されず、シールド効果が低くなるからである。また、ダイシングによって、モールド樹脂40の側面である第2の表面42はある程度粗面化されるとともに、多数のガラスフィラー45が露出した状態となる(
図8にはガラスフィラー45は図示されていない)。また、ダイシング条件によっては、第2の側面42が完全には垂直面とはならず、若干の傾斜面となることがある。この場合、隣接する2つの側面42によって形成されるスリットは、上方に向かうほど開口幅が広いテーパー状となる。
【0041】
次に、モールド樹脂40の表面41,42に露出しているガラスフィラー45を除去する(ステップS6)。これにより、モールド樹脂40の表面41,42には、
図9及び
図11(c)に示すように、ガラスフィラー45が除去されることにより多数のキャビティ43が形成される。かかるキャビティ43は、モールド樹脂40の表面41,42をよりいっそう粗面化させる。ガラスフィラー45を除去する方法としては、例えばフッ酸を用いてガラスフィラー45を溶解させることにより行うことができる。
【0042】
次に、
図10に示すように、マスキングテープ60上に複数の電子部品モジュール10が保持された状態で無電解メッキを施すことにより、金属膜からなる電磁波シールド50を形成する(ステップS7)。これにより、モールド樹脂40の表面41,42及びモジュール基板20の側面23が電磁波シールド50で覆われた状態となる。ここで、モールド樹脂40の表面41,42は、ラッピング又はダイシングによって粗面化されており、さらに、ガラスフィラー45の除去によって多数のキャビティ43が形成されていることから、通常のモールド樹脂の表面と比べて非常に高い粗面度を有している。このため、無電解メッキによって形成された電磁波シールド50は、モールド樹脂40の表面41,42に対して高い密着性を示すことになる。特に、キャビティ43の内部に入り込んだ金属膜は、いわゆるアンカー効果をもたらすため、非常に高い密着性を得ることが可能となる。
【0043】
そして、マスキングテープ60を除去すれば、
図1に示した電子部品モジュール10を得ることができる(ステップS8)。
【0044】
このように、本実施形態においては、モールド樹脂40の上面である第1の表面41については、ワックス層44の除去、ラッピングによる粗面化及び低密度層46の除去、並びに、ガラスフィラー45の除去が行われ、モールド樹脂40の側面である第2の表面42についてはダイシングによる粗面化、並びに、ガラスフィラー45の除去が行われることから、無電解メッキによって形成される電磁波シールド50に対して高い密着性を確保することが可能となる。これにより、その後の工程で電磁波シールド50が剥離することが無くなるため、製品の信頼性を高めることが可能となる。
【0045】
次に、ステップS7の無電解メッキ方法についてより詳細に説明する。
【0046】
図9に示すように、無電解メッキを施す前の電子部品モジュール10は、マスキングテープ60に貼り付けられたままの状態である。このため、隣接する電子部品モジュール10間の距離は、ダンシングによる切り代分だけであり、隣接する電子部品モジュール10間はスリット(溝)にて分離された状態となる。しかも、このスリットはモールド樹脂40及びモジュール基板20を貫通しているため、アスペクト比が非常に高い。このため、この状態で無電解メッキを行うと、メッキ液に浸漬してもスリット内に気泡が残留してしまい、この部分におけるメッキ成長が阻害される。このような問題を解決すべく、本実施形態ではスリット内に残留する気泡を排出可能な無電解メッキ装置を用いて電磁波シールド50の形成を行う。
【0047】
図12は、本実施形態による無電解メッキ装置100の外観を示す略斜視図である。
【0048】
図12に示すように、本実施形態による無電解メッキ装置100は、メッキ液を貯留するトレイ110と、トレイ110の下方に配置されたプール120と、プール120内のメッキ液Mを汲み上げてトレイ110に供給する循環機構130とを備えている。トレイ110の内部には、被処理物である複数の電子部品モジュール10を固定する固定治具140と、固定治具140によって固定された複数の電子部品モジュール10にメッキ液Mを供給するシャワーヘッド150が設けられている。固定治具140及びシャワーヘッド150の詳細については後述する。
【0049】
トレイ110の底部には、メッキ液Mの排出機構である穴112が設けられている。これにより、循環機構130によってトレイ110に供給されるメッキ液Mは、穴112から排出され、プール120へと落下する。循環機構130は、プール120内のメッキ液Mを汲み上げるポンプ132と、汲み上げたメッキ液Mをトレイ110に供給するか、或いは、ポンプ132に戻すかを切り替えるバルブ機構134を備えている。
【0050】
図13は、固定治具140の構造を説明するための略平面図である。
【0051】
図13に示すように、固定治具140は略平板状の部材であり、その主面142には複数の突起部144及び貫通孔146が形成されている。
図13において破線で示す搭載領域Bは、1個の集合基板に対応する複数の電子部品モジュール10が搭載される領域である。以下、1個の集合基板に対応する複数の電子部品モジュール10を単に「被処理物」と呼ぶことがある。
図13に示す例では、8個の被処理物を一括して処理できることになる。ここで、突起部144は搭載領域Bの周囲に配置されており、これにより被処理物を水平方向(X方向及びY方向)に位置決めする位置決め部として機能する。被処理物の垂直方向(Z方向)における位置決めは、固定治具140の主面142によって行われる。また、貫通孔146は、メッキ液Mの排出を促進するために設けられている。
【0052】
図14はシャワーヘッド150の構造を説明するための図であり、(a)は略側面図、(b)は内部構造を示す略平面図である。
【0053】
図14(a)に示すように、シャワーヘッド150は、固定治具140を処理室152に挿入するための挿入口154と、循環機構130から供給されるメッキ液Mを受ける配管156と、配管156から供給されるメッキ液Mを処理室152内に噴射する複数のノズル158とを備えている。
図14(b)に示すように、ノズル158は処理室152の上部にマトリクス状に多数設けられており、これにより、固定治具140に固定された被処理物が処理室152内に挿入されると、被処理物には多数のノズル158によってメッキ液Mが噴射されることになる。尚、処理室152の側面152xは、固定治具140の側面140xと当接することによって、処理室152に挿入された固定治具140のX方向における位置決め部として機能する。また、処理室152の側面152yは、固定治具140の側面140yと当接することによって、処理室152に挿入された固定治具140のY方向における位置決め部として機能する。固定治具140の垂直方向(Z方向)における位置決めは、固定治具140の底面と処理室152の底面が当接することによって行われる。
【0054】
図15はバルブ機構134の機能を説明するための図であり、(a)はバルブ機構134を閉じた場合におけるメッキ液Mの循環経路を示し、(b)はバルブ機構134を開いた場合におけるメッキ液Mの循環経路を示している。
【0055】
図15(a)に示すように、バルブ機構134は、ポンプ132の吸引経路132iと排出経路132oをバイパスするバイパス経路132bに設けられており、これが閉じられると、ポンプ132によって汲み上げられたメッキ液Mは、トレイ110に供給される。これに対し、バルブ機構134が開かれると、ポンプ132によって汲み上げられたメッキ液Mは、トレイ110に供給されることなく、バイパス経路132bを介して吸引経路132iに戻される。バルブ機構134の開閉動作はオペレータが手動で行っても構わないが、後述するセンサ及びタイマを用いて自動的に行うことが好ましい。
【0056】
次に、以上の構造を有する無電解メッキ装置100を用いた無電解メッキ方法について説明する。
【0057】
まず、バルブ機構134が開かれた状態で、
図16に示すように被処理物が搭載された固定治具140をシャワーヘッド150の処理室152に挿入(ロード)する。バルブ機構134が開かれた状態では、トレイ110からメッキ液Mが排出されていることから、ロード作業をメッキ液中で行う必要が無い。このため、ロード作業を簡単且つ安全に行うことが可能である。そして、
図17に示すように、固定治具140が完全にロードされると、図示しないセンサがこれを検知し、バルブ機構134が閉じられる。これにより、ポンプ132によって汲み上げられたメッキ液Mは、シャワーヘッド150の処理室152に供給される。
【0058】
ここで、ポンプ132によるメッキ液Mの供給レートは、排出機構である穴112からの排出レートよりも大きく設定されている。このため、バルブ機構134が閉じられると、
図18に示すようにトレイ110の内部においてはメッキ液Mの水位が上昇し、被処理物はメッキ液Mに浸漬された状態となる。尚、メッキ液Mの水位上昇によってトレイ110の内部がメッキ液Mによって完全に満たされると、その後はトレイ110からメッキ液Mが溢れ出すが、トレイ110はプール120内に収容されていることから、溢れ出たメッキ液Mは、穴112から排出されるメッキ液Mと同様、プール120に戻される。
【0059】
図19は、シャワーヘッド150の処理室152にロードされた被処理物とノズル158との位置関係を説明するための略平面図である。
【0060】
図19に示すように、本実施形態における被処理物は、
図9に示したダイシング後の電子部品モジュール10である。ダイシングは、集合基板に対してX方向及びY方向に行われるため、ダイシング後における電子部品モジュール10は、
図19に示すようにマトリクス状となる。つまり、X方向に延在する複数のスリット70xと、Y方向に延在する複数のスリット70yによって各電子部品モジュール10が分離された状態となる。そして、処理室152に被処理物である電子部品モジュール10をロードすると、シャワーヘッド150のノズル158がスリット70x,70yの交差部分XCの上部に位置する。かかる位置決めは、突起部144を用いた被処理物の固定治具140への位置決めと、側面140x,140y及び側面152x,152yを用いた固定治具140の処理室152への位置決めによって正しく実現される。
【0061】
図20はノズル158から噴射されるメッキ液Mの水流を説明するための図であり、(a)は断面方向における拡大図、(b)は平面方向における拡大図である。
【0062】
図20(a)に示すように、シャワーヘッド150のノズル158がスリット70x,70yの交差部分XCに位置決めされた状態でメッキ液Mを噴射すると、噴射されたメッキ液Mはスリット70x,70yの内部に進入し、スリット70x,70y内の水圧が高まる。その結果、
図20(b)に示すように、スリット70x,70yの交差部分XCからメッキ液Mの水流が四方に生じる。これにより、スリット70x,70yに内壁に残留している気泡80がメッキ液Mの水流によって排出され、スリット70x,70y内を気泡のない状態とすることができる。また、スリット70x,70yが上方に向かうほど開口幅が広いテーパー状である場合、噴射されたメッキ液Mはスリット70x,70yの内部に容易に進入するとともに、スリット70x,70yに内壁に残留している気泡80がメッキ液Mの水流によって容易に排出される。
【0063】
この状態を一定時間保持することによって、所望の厚みを持った電磁波シールド50が無電解メッキによって形成されると、バルブ機構134を開き、シャワーヘッド150へのメッキ液Mの供給を停止する。これにより、トレイ110内のメッキ液Mは穴112から排出され、その水位は被処理物を浸漬可能な水位未満に低下する。つまり、水位は
図17に示した状態に戻る。尚、バルブ機構134を開くタイミングは図示しないタイマを用いて制御し、タイマが一定時間を計時した後、バルブ機構134を自動的に開くことが好ましい。
【0064】
そして、トレイ110内におけるメッキ液Mの水位が十分に下がったら、
図21に示すように、シャワーヘッド150の処理室152から固定治具140を取り出す(アンロード)。ここでも、トレイ110からメッキ液Mが排出されていることから、アンロード作業を簡単且つ安全に行うことが可能である。
【0065】
以上の手順により、無電解メッキによる電磁波シールド50の形成が完了する。このように、本実施形態による無電解メッキ装置100は、スリット70x,70yの交差部分XCにメッキ液Mを噴射するノズル158を備えていることから、アスペクト比の高いスリット70x,70yの内壁に気泡80が残留している場合であっても、これを速やかに排出することができる。これにより、ムラのない均一な電磁波シールド50を形成することが可能となる。
【0066】
しかも、本実施形態による無電解メッキ装置100は、プール120の上方に設けられたトレイ110の内部で無電解メッキを行うことから、大型のタンクに多数の被処理物を浸漬する従来の無電解メッキ装置に比べて、メッキ液の使用量を削減することができるとともに、メッキ液の管理も容易となる。
【0067】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0068】
例えば、上記実施形態では、集合基板をダイシングした後の電子部品モジュール10に対して無電解メッキを施す場合を例に説明したが、本発明による無電解メッキ装置及び無電解メッキ方法の適用対象がこれに限定されるものではなく、他の被処理物に無電解メッキを施す場合にも本発明の適用が可能である。