特許第6160152号(P6160152)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6160152
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】ドライブ回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 17/687 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
   H03K17/687 A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-59279(P2013-59279)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-187443(P2014-187443A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】小倉 正嗣
【審査官】 白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−106217(JP,A)
【文献】 特開昭59−103567(JP,A)
【文献】 特開平02−050518(JP,A)
【文献】 特開2010−288416(JP,A)
【文献】 特開平03−183209(JP,A)
【文献】 特開2008−017650(JP,A)
【文献】 特開2009−225648(JP,A)
【文献】 特開2003−134836(JP,A)
【文献】 特開2011−188178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/687
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICの出力に基づいて負荷を駆動するドライブ回路であって、入力バッファを構成する一対の入力段トランジスタと、該トランジスタ間の出力ノードからの出力に基づいて動作する出力段スイッチとを備え、前記ICの出力を受けて前記入力段トランジスタが動作し次いで前記出力段スイッチが動作して前記負荷を駆動するものであり、
前記入力段トランジスタの動作速度を第1コンデンサの充放電態様に基づいて変更可能とするその第1コンデンサが前段の抵抗を介して前記入力段トランジスタの制御端子に接続され、その制御端子と前記ICの出力端子とが直接接続されると共に、
前記出力段スイッチの出力端子と逆方向には前記入力段トランジスタ間の出力ノードとの間にダイオードを接続し、負荷電流の検出に用いる前記出力段スイッチの出力端子間電圧を含む所定電圧まで第2コンデンサを充電させる充電電流を前記入力段トランジスタ間の出力ノードから得るべく該出力ノードと前記第2コンデンサとが接続されており、
前記入力段トランジスタ間の出力ノードは、第2の抵抗を介して前記出力段スイッチの制御端子に接続されているとともに、第4の抵抗を介して前記ダイオードと接続されており、該出力ノードに接続されている前記第4の抵抗と前記第2の抵抗とは並列になっていることを特徴とするドライブ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICの出力に基づいて負荷を駆動するドライブ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトカプラ搭載のIC等からの出力に基づいて負荷を駆動するドライブ回路としては、多段のトランジスタにて構成したものが様々提案されている(例えば特許文献1の第6図等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4968487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなドライブ回路は、ICの出力に対して個々のトランジスタの応答性が高くなるような回路構成とし、負荷駆動に対する応答性をより向上させるが検討課題の一つとなっている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、応答性の向上を図ることができるドライブ回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するドライブ回路は、ICの出力に基づいて負荷を駆動するドライブ回路であって、入力バッファを構成する一対の入力段トランジスタと、該トランジスタ間の出力ノードからの出力に基づいて動作する出力段スイッチとを備え、前記ICの出力を受けて前記入力段トランジスタが動作し次いで前記出力段スイッチが動作して前記負荷を駆動するものであり、前記入力段トランジスタの動作速度を第1コンデンサの充放電態様に基づいて変更可能とするその第1コンデンサが前段の抵抗を介して前記入力段トランジスタの制御端子に接続され、その制御端子と前記ICの出力端子とが直接接続されると共に、前記出力段スイッチの出力端子と逆方向には前記入力段トランジスタ間の出力ノードとの間にダイオードを接続し、負荷電流の検出に用いる前記出力段スイッチの出力端子間電圧を含む所定電圧まで第2コンデンサを充電させる充電電流を前記入力段トランジスタ間の出力ノードから得るべく該出力ノードと前記第2コンデンサとが接続されており、前記入力段トランジスタ間の出力ノードは、第2の抵抗を介して前記出力段スイッチの制御端子に接続されているとともに、第4の抵抗を介して前記ダイオードと接続されており、該出力ノードに接続されている前記第4の抵抗と前記第2の抵抗とは並列になっている
【0007】
この構成によれば、ICの出力端子からの出力電流が第1コンデンサの充電以外で分岐経路や抵抗も無く入力段トランジスタの制御端子に直接的に作用することから、入力段トランジスタの制御端子に供給する制御電流が速やかに変化する。また、入力段トランジスタ間の出力ノードからの出力電流の一部は第2コンデンサの充電電流として分岐するが、その出力電流が十分に大きいために分岐の影響は小さく、出力段スイッチの制御端子に供給する制御電流の変化も速やかである。これらにより、入力段トランジスタ及び出力段スイッチの動作速度が敏速となり、負荷駆動に対する応答性が向上する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のドライブ回路によれば、応答性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態におけるドライブ回路の回路図である。
図2】実施形態の動作を説明するための各所の波形図である。
図3】比較例におけるドライブ回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ドライブ回路の一実施形態について説明する。
図1に示すように、ドライブ回路10は、フォトカプラ21や保護回路22等を搭載するハイブリッドIC20に対して用いるドライバ回路であり、該IC20からの出力(出力信号Sa)に基づいて負荷を駆動する。
【0011】
ドライブ回路10は、入力バッファとして電源線間に直列接続された一対の入力段トランジスタQ1,Q2を備え、プルアップ側の入力段トランジスタQ1にはNPNバイポーラトランジスタが、プルダウン側の入力段トランジスタQ2にはPNPバイポーラトランジスタがそれぞれ用いられている。入力段トランジスタQ1のコレクタ端子はプラス側電源線VCCに、入力段トランジスタQ2のコレクタ端子はマイナス側電源線VEEにそれぞれ接続され、トランジスタQ1,Q2の各エミッタ端子は互いに接続されている。入力段トランジスタQ1,Q2のベース端子(制御端子)は、フォトカプラ搭載のIC20の出力端子T1と接続、本実施形態では抵抗等の他の素子を介さず直接接続されている。また、入力段トランジスタQ1,Q2のベース端子(IC20の出力端子T1)とトランジスタQ2のコレクタ端子(マイナス側電源線VEE)との間には、ベース端子側から順に抵抗R1とコンデンサC1とが直列接続されている。
【0012】
入力段トランジスタQ1,Q2のエミッタ端子間のノードN1は、抵抗R2を介して出力段スイッチQ3のゲート端子(制御端子)と接続されている。出力段スイッチQ3は、本実施形態ではMOSFETが用いられるが、IGBT等であってもよい。出力段スイッチQ3のゲート端子とソース端子との間には、抵抗R3が接続されている。
【0013】
また、出力段スイッチQ3のドレイン端子と、入力段トランジスタQ1,Q2のエミッタ端子間のノードN1との間には、出力段スイッチQ3が駆動する負荷電流Ioが過電流か否かを検出するための過電流検出回路11が備えられている。
【0014】
過電流検出回路11は、抵抗R4,R5及び複数のダイオード列Daがこの順で直列接続され、抵抗R4の一端が入力段トランジスタQ1,Q2のエミッタ端子間のノードN1に、最終のダイオード列Daのカソード端子が出力段スイッチQ3のドレイン端子にそれぞれ接続されている。また、抵抗R4,R5間のノードN2とグランド線GNDとの間には、コンデンサC2が接続されている。
【0015】
また、ノードN2は、IC20の検出端子T2と接続されている。IC20内には保護回路22が備えられ、該保護回路22を構成するコンパレータ23の非反転入力端子はその検出端子T2と接続されている。コンパレータ23の反転入力端子には、基準電圧Vrefが入力されている。コンパレータ23は、コンデンサC2の充電電圧(ノードN2の電圧)を検出電圧Vaとして入力し、該検出電圧Vaと基準電圧Vrefとの比較に基づいて負荷電流Ioが過電流かを判定する。そして、コンパレータ23による過電流判定に基づいて、IC20内の保護回路22の動作が通常動作と保護動作のいずれかに切り替えられる。
【0016】
次に、本実施形態のドライブ回路10の動作(作用)を説明する。
IC20は、外部からH・Lレベルの制御信号を受けると、IC20内のフォトカプラ21を介して出力端子T1から出力信号Saを入力段トランジスタQ1,Q2のベース端子に出力する。
【0017】
IC20の出力端子T1からの出力信号SaがHレベルになると、入力段トランジスタQ1がオン、入力段トランジスタQ2がオフし、ノードN1の電圧はHレベルとなる。すると、ノードN1の電圧をゲート端子に受ける出力段スイッチQ3はオンし、これにより負荷電流Ioが流れ出す。一方、IC20の出力端子T1からの出力信号SaがLレベルになると、入力段トランジスタQ1がオフ、入力段トランジスタQ2がオンし、ノードN1の電圧はLレベルとなる。すると、ノードN1の電圧をゲート端子に受ける出力段スイッチQ3はオフし、これにより負荷電流Ioは流れない。
【0018】
ここで、図3は、比較例におけるドライブ回路10xを示す。このドライブ回路10xでは、コンデンサC1の前段に挿入する抵抗R1がIC20の出力端子T1と入力段トランジスタQ1,Q2のベース端子との間に配置されている。また、過電流検出回路11を構成する抵抗R4の一端の接続先がIC20の出力端子T1に変更されている。つまり、IC20の出力端子T1からの出力信号SaがHレベルで、入力段トランジスタQ1をオン(入力段トランジスタQ2はオフ)、次いで出力段スイッチQ3をオンさせる場合、IC20の出力端子T1から出力される出力電流Iaに着目すると、該出力電流Iaの一部は分岐して検出回路11のコンデンサC2の充電電流Ixとして消失し、残りの電流が抵抗R1を介し更にコンデンサC1の充電後に初めて入力段トランジスタQ1のベース電流Ibとなる構成となっている。
【0019】
そのため、図3及び図2の一点鎖線で示すように、論理ゲート等を搭載するIC20は出力電流Iaの駆動能力が低いこともあり、入力段トランジスタQ1のベース電流Ibの立ち上がりが緩やかとなり、該トランジスタQ1の出力電流Ic、即ち出力段スイッチQ3のゲート端子に向かうゲート電流Igの立ち上がりも緩やかとなる。結果、出力段スイッチQ3のゲート・ソース間電圧Vgsの立ち上がりも緩やかとなって、該スイッチQ3のオンへの切り替わりが緩慢な動作となる。
【0020】
これに対して本実施形態では、同じくIC20の出力端子T1からの出力信号SaがHレベルで、入力段トランジスタQ1をオン(入力段トランジスタQ2はオフ)、次いで出力段スイッチQ3をオンさせる場合、IC20の出力端子T1から出力される出力電流Iaが分岐経路や抵抗も無く入力段トランジスタQ1のベース端子に直接的に作用する構成となっている。
【0021】
そのため、図1及び図2の実線で示すように、入力段トランジスタQ1のベース電流Ibの立ち上がりが速やかとなり、該トランジスタQ1の出力電流Ic、即ち出力段スイッチQ3のゲート端子に向かうゲート電流Igの立ち上がりも速やかとなる。ここで、入力段トランジスタQ1(ノードN1)の出力電流Icの一部は分岐して検出回路11のコンデンサC2の充電電流Ixとして消失するのが懸念されるが、出力電流IcはIC20の出力電流Iaと比べて十分に大きく分岐の充電電流Ixが十分に小さくなることから、出力段スイッチQ3のゲート電流Igへの影響は小さい。結果、出力段スイッチQ3のゲート・ソース間電圧Vgsの立ち上がりも速やかであり、該スイッチQ3のオンへの切り替わりが敏速な動作となる。
【0022】
因みに、本実施形態で用いるIC20は、ドライブ回路10との組み合わせにおいて、入力段トランジスタQ1がオフ、入力段トランジスタQ2がオンし、出力段スイッチQ3がオフする場合、負荷電流Ioが許容範囲である場合には出力段スイッチQ3は速やかにオフするが、過電流が生じた場合には緩やかにオフする所謂ソフトターンオフ機能を備えている。
【0023】
過電流検出回路11のコンデンサC2の充電電圧(ノードN1の電圧)は、ダイオード列Daの順方向電圧V1と出力段スイッチQ3のソース・ドレイン間電圧V2との加算電圧値であり、出力段スイッチQ3が駆動する負荷電流Ioの大きさに応じてコンデンサC2の充電電圧、即ち検出電圧Vaが変化する。IC20内の保護回路22を構成するコンパレータ23はその検出電圧Vaと基準電圧Vrefとを比較し、負荷電流Ioの電流値が許容範囲内では検出電圧Vaが基準電圧Vrefを下回り、コンパレータ23の出力はLレベルとなっている。一方、負荷電流Ioが過電流になると、コンデンサC2の充電電圧が上昇して検出電圧Vaが高くなり、コンパレータ23の基準電圧Vrefを上回る。そして、コンパレータ23の出力は、過電流異常を示すHレベルに切り替わる。コンパレータ23の出力がHレベルになると、IC20内の保護回路22は通常動作から保護動作に切り替わる。
【0024】
ここで、入力段トランジスタQ1をオフ、入力段トランジスタQ2をオンさせる際には、入力段トランジスタQ1側のオン時に充電されたコンデンサC1の充電電荷のIC20の出力端子T1に向けての放電が行われる。IC20内においては、そのコンデンサC1の放電を行うために出力端子T1に接続され互いに並列をなす第1放電経路24と第2放電経路25が用意されている。第2放電経路25の放電能力は、第1放電経路24の放電能力に比べて例えば50倍小さく構成されている。
【0025】
そして、負荷電流Ioの電流値が許容範囲内でコンパレータ23の出力がLレベルの時には、通常動作として第1放電経路24が選択され、コンデンサC1の放電が速やかに行われる。つまり、速やかに入力段トランジスタQ1がオフ、入力段トランジスタQ2がオンし、次いで出力段スイッチQ3が速やかにオフする。
【0026】
これに対し、負荷電流Ioの電流値が過電流となってコンパレータ23の出力がHレベルになると、保護動作に切り替わるべく第2放電経路25が選択され、コンデンサC1の放電が緩やかに行われる。従って、入力段トランジスタQ1のオフ、入力段トランジスタQ2のオンも緩やかとなり、出力段スイッチQ3も緩やかにオフするソフトターンオフ動作となり、負荷回路の過電流保護が図られるようになっている。
【0027】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)IC20の出力がHレベルで出力段スイッチQ3をオンさせる場合、IC20の出力端子T1からの出力電流IaがコンデンサC1の充電以外で分岐経路や抵抗も無く入力段トランジスタQ1のベース端子に直接的に作用することから、入力段トランジスタQ1のベース電流Ibが速やかに変化する。また、入力段トランジスタQ1,Q2間のノードN1からの出力電流Icの一部はコンデンサC2の充電電流Ixとして分岐するが、その出力電流Icが十分に大きいために分岐の影響は小さく、出力段スイッチQ3のゲート端子に供給するゲート電流Igの変化も速やかである。これらにより、入力段トランジスタQ1及び出力段スイッチQ3の動作速度が敏速となり、負荷駆動に対する応答性を向上させることができる。
【0028】
尚、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・ドライブ回路10の回路構成は一例であり、素子の種類や数、接続態様等はこの限りではなく、適宜変更してもよい。
【0029】
・フォトカプラ21を搭載したIC20のドライブ回路10に適用したが、その他の構成のICのドライブ回路に適用してもよい。
【符号の説明】
【0030】
10…ドライブ回路、20…IC、Q1,Q2…入力段トランジスタ、Q3…出力段スイッチ、C1…コンデンサ(第1コンデンサ)、C2…コンデンサ(第2コンデンサ)、Da…ダイオード列(ダイオード)、R1…抵抗、T1…出力端子、N1…ノード(出力ノード)、Io…負荷電流、Ix…充電電流、Ib…ベース電流(制御電流)、Ig…ゲート電流(制御電流)、V2…ソース・ドレイン間電圧(出力端子間電圧)、Va…検出電圧(所定電圧)。
図1
図2
図3