(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係るマイクロフォン1の構成の概略を示す断面図である。
図2は、
図1に示すII−II線に沿う、実施の形態1のマイクロフォン1の断面図である。
図1を参照して、マイクロフォン1は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いて製作されるMEMSマイクロフォンであって、プレート基板10と、プレート基板10に実装されている音響センサ(マイクチップ)と、音響センサに積層されている回路素子30とを備えている。
【0019】
プレート基板10は、実施の形態1におけるベース基板であって、平板状に形成されている。プレート基板10は、主表面10aと、主表面10aとは反対側の接続表面10bとを有している。マイクロフォン1を構成する音響センサおよび回路素子30は、プレート基板10の主表面10a側に配置されている。
【0020】
プレート基板10は、主表面10aに露出して形成された導電層12と、接続表面10b上に積層された外部接続端子14とを有している。マイクロフォン1がマザー基板に実装される際、外部接続端子14がマザー基板側の接続端子に電気的に接続されることにより、マイクロフォン1への電力供給および制御信号の通信が行なわれる。
【0021】
プレート基板10は、平板状をした多層配線基板によって形成されており、図示されている導電層12および外部接続端子14のほか、プレート基板10の表面および内部に面方向に延びる図示しない導電層および厚み方向に延びるビア電極が形成されている。導電層12は、プレート基板10の内部に形成されたビア電極を介して、外部接続端子14に電気的に接続されている。ここで面方向とは、平板形状のプレート基板10の主表面10aおよび接続表面10bの延びる方向であって、プレート基板10の厚み方向に直交する方向をいう。
図1において、図中上下方向がプレート基板10の厚み方向であり、図中左右方向が面方向である。
【0022】
なお、プレート基板10は、多層配線基板の他、銅張り積層板、ガラスエポキシ基板、セラミック基板、プラスチック基板、金属基板、カーボンナノチューブの基板、またはこれらの複合基板によって形成されていてもよい。
【0023】
プレート基板10の主表面10aには、音響センサが実装されている。音響センサは、センサ基板20と、ダイアフラム24と、バックプレート25とを主に含んでいる。
【0024】
センサ基板20は、シリコン基板により形成されている。センサ基板20は、平板状に形成されており、第1面20bおよび第2面20aを有している。第1面20bと第2面20aとは、センサ基板20の両主表面を構成している。第1面20bは、センサ基板20の一方の主表面であって、プレート基板10の主表面10aに対向している。第2面20aは、第1面20bとは反対側の、センサ基板20の他方の主表面である。
【0025】
センサ基板20の第1面20bとプレート基板10の主表面10aとの間には、接着層40が配置されている。接着層40は、主表面10aと第1面20bとの間に介在している。センサ基板20の第1面20bは、接着層40を用いて、プレート基板10の主表面10aに接着されている。センサ基板20が接着層40によってプレート基板10の主表面10aに固定されており、これにより、音響センサはプレート基板10の主表面10a上に実装されている。
【0026】
接着層40は、接着テープ、接着フィルム、液体状接着剤、導電性接着剤のいずれかまたは組合せにより形成されてもよい。樹脂などの液体状接着剤を用いて接着層40を形成する場合、液体状接着剤を塗布した後に流動して広がることを考慮して、滴下位置および滴下量を調整するのが望ましい。また接着層40は、プレート基板10の主表面10aとセンサ基板20の第1面20bとの各々に金属膜を形成して接合することで、形成されてもよい。
【0027】
センサ基板20には、その内部に空洞部28が形成されている。空洞部28は、第1面20bから第2面20aにまで到達するように形成されており、センサ基板20をその厚み方向(
図1中上下方向)に貫通している。空洞部28は、中空に形成されている。空洞部28の内周面は、センサ基板20の厚み方向に延びる垂直面として形成されている。空洞部28の内周面は、センサ基板20の厚み方向に対して傾斜するテーパ面として形成されていてもよく、センサ基板20の厚み方向に対する傾斜角度の異なる複数のテーパ面の組合せによって形成されていてもよい。
【0028】
ダイアフラム24は、薄膜状に形成されており、導電性を有する。望ましくは、ダイアフラム24は、不純物を添加したポリ/結晶シリコン薄膜により形成されている。ダイアフラム24は、図示しないアンカーを用いて、センサ基板20の第2面20aに取り付けられている。ダイアフラム24は、空洞部28を第2面20a側から覆うように配置されている。ダイアフラム24は、センサ基板20の第2面20aに支持されている縁部分と、空洞部28を覆っている中央部分とを有している。ダイアフラム24の中央部分は、センサ基板20の第2面20aから僅かに浮いた状態で配置されており、音響振動に感応して膜振動する。ダイアフラム24は、音響センサの可動電極としての機能を有している。
【0029】
バックプレート25は、ダイアフラム24に対向させるようにして、センサ基板20の第2面20a側に配置されており、センサ基板20の第2面20aに直接または何れかの層を介して固定されている。バックプレート25は、絶縁層、望ましくはシリコンナイトライド/不純物添加なしのシリコンからなる固定膜と、導電層、望ましくは不純物を添加したポリ/結晶シリコン薄膜/金属膜からなる固定電極とを有している。固定電極は、ダイアフラム24に対向する側または対向しない側のいずれかの固定膜の表面に設けられている。バックプレート25は、ダイアフラム24を覆う蓋状の形状を有している。
【0030】
バックプレート25とダイアフラム24との間には、エアギャップ26が形成されている。バックプレート25は、ダイアフラム24に対しセンサ基板20から離れる位置において、空洞部28を覆っている。バックプレート25には、エアギャップ26でのダンピング回避のための多数のアコースティックホールが穿孔されている。これらのアコースティックホールは、バックプレートが剛性を確保できる限り開口率を大きくするように形成するのが好ましい。
【0031】
バックプレート25の固定電極は、可動電極であるダイアフラム24と対向して、キャパシタを形成している。音響センサに音波が入射され、音圧によってダイアフラム24が振動すると、ダイアフラム24とバックプレート25の固定電極との間の静電容量が変化する。本実施の形態の音響センサにおいては、ダイアフラム24が感知している音響振動(音圧の変化)がダイアフラム24と固定電極との間の静電容量の変化となり、電気的な信号として出力される。センサ基板20の第2面20aには、少なくとも一対のマイク端子22が設けられている。マイク端子22は、ダイアフラム24と固定電極との間の静電容量の変化に応じた検知信号を出力する。
【0032】
なお、音響センサは、上述した構成に限られるものではなく、可動電極であるダイアフラム24と固定電極とが対向して配置されているのであれば、他の構成を備えていてもよい。たとえば、センサ基板20の厚み方向におけるダイアフラム24とバックプレート25との位置が互いに入れ替えられていてもよい。ダイアフラム24は、バックプレート25から吊り下げられて、バックプレート25によって支持されていてもよい。固定電極がセンサ基板20またはその他の基板に設けられる変形例の場合には、バックプレート25を省略することも可能である。
【0033】
回路素子30は、センサ基板20の第2面20a上に搭載されており、音響センサに積層されている。回路素子30は、たとえば特定用途向け集積回路素子(ASIC)であってもよい。回路素子30は、角張ったC字を伏せた形状を有しており、これにより回路素子30とセンサ基板20の第2面20aとの間に中空の空間38が形成されている。センサ基板20の第2面20aに設けられたダイアフラム24およびバックプレート25は、空間38内に収容されている。
【0034】
回路素子30には、導電層32が形成されている。導電層32は、センサ基板20から離れる側の回路素子30の表面に設けられている。センサ基板20の第2面20a上に配置されたマイク端子22と、回路素子30に形成された導電層32とは、ボンディングワイヤ62によって接続されている。プレート基板10に形成された導電層12と、回路素子30に形成された導電層32とは、ボンディングワイヤ64によって接続されている。音響センサの検知信号は、マイク端子22から出力され、導電層12を経由して回路素子30に入力される。回路素子30において所定の信号処理を施された後、検知信号は、回路素子30から出力され、導電層12を経由して外部接続端子14へ出力される。
【0035】
プレート基板10の主表面10a上に順に積層された音響センサおよび回路素子30は、保護層50によってその全体が覆われて保護されている。保護層50は、絶縁性樹脂により形成されている。ボンディングワイヤ62,64は、保護層50の内部に配置されており、保護層50によって保護されている。プレート基板10と保護層50とは、マイクロフォン1のハウジングを形成している。
【0036】
図1および
図2を参照して、プレート基板10には、プレート基板10を厚み方向に貫通する貫通孔18が形成されている。プレート基板10の主表面10aと、センサ基板20の第1面20bとの間には、接着層40が設けられていない中空領域48が形成されている。プレート基板10およびセンサ基板20の厚み方向(すなわち、
図1における上下方向であって、
図2における紙面に垂直な方向)に見た場合、貫通孔18はセンサ基板20と重なっており、中空領域48もまたセンサ基板20と重なっており、貫通孔18と中空領域48とは互いに重なっている。貫通孔18と中空領域48とは互いに連通している。中空領域48は空洞部28に隣接して形成されており、中空領域48は空洞部28に連通している。貫通孔18は、中空領域48を介して、空洞部28に連通している。
【0037】
貫通孔18と中空領域48とは、音響センサに音響振動を導入するための音響ポートを形成している。音響ポートを経由して、マイクロフォン1の内部に音が導入される。マイクロフォン1は、ダイアフラム24に対して音響ポートに近い側の中空空間であるフロントチャンバと、ダイアフラム24に対して音響ポートから離れる側の中空空間であるバックチャンバとを有している。フロントチャンバとバックチャンバとは、ダイアフラム24を境界としてそれぞれ規定されている。空洞部28は、マイクロフォン1のフロントチャンバとしての機能を有している。空間38は、マイクロフォン1のバックチャンバとしての機能を有している。
【0038】
音響ポートは、プレート基板10に形成された貫通孔18を含んでいる。音響ポートはまた、プレート基板10の主表面10a、センサ基板20の第1面20bおよび接着層40によって取り囲まれた中空領域48を含んでいる。貫通孔18がプレート基板10の厚み方向に沿って延びており、中空領域48がプレート基板10の主表面10aに沿って面方向に延びているために、貫通孔18の延びる方向と中空領域48の延びる方向とは互いに交差している。そのため、貫通孔18および中空領域48によって構成されている音響ポートは、屈曲した形状に形成されている。
【0039】
貫通孔18は、主表面10aに平行なプレート基板10の断面に現れる形状が円形状の、丸穴である。プレート基板10の厚み方向に見て、中空領域48は、貫通孔18よりも大きい面積を有している。貫通孔18がプレート基板10の主表面10aに開口する開口部は、その全体が中空領域48に露出している。センサ基板20をプレート基板10の厚み方向に沿って主表面10aに写した投影は、貫通孔18が主表面10aに開口する開口部の全部に重なる。
【0040】
貫通孔18の延びる方向に沿って貫通孔18を接続表面10b側から見た場合に、貫通孔18の内側の全体にセンサ基板20の第1面20bが視認される。センサ基板20に形成された空洞部28、および空洞部28を覆って配置されているダイアフラム24を、プレート基板10の接続表面10b側から直接見ることができないように、音響ポートは曲がった形状を有している。
【0041】
以上説明した実施の形態1のマイクロフォン1によれば、フロントチャンバとして機能する空洞部28に音響振動を導入するための音響ポートが、曲がった形状に形成されている。そのため、ダイアフラム24は、外部環境に対して露出しない位置に配置されている。このようにすれば、音響ポートを経由して異物または圧縮空気が空洞部28へ侵入してダイアフラム24へ到達することを抑制できるので、ダイアフラム24の破損を軽減できる。異物のダイアフラム24への到達を抑制できるので、異物がダイアフラム24の振動に影響することを抑制できる。したがって、薄膜状のダイアフラム24を外部環境から保護することができる。
【0042】
曲がった形状の音響ポートは、プレート基板10を貫通する貫通孔18と、相対向するプレート基板10の主表面10aおよびセンサ基板20の第1面20bならびに接着層40により囲まれた中空領域48とによって形成されている。これにより、プレート基板10の内部に曲がった形状の貫通孔を形成する必要がなく、プレート基板10の厚みを低減することができる。その結果、マイクロフォン1の高さ方向の寸法を小さくできるので、マイクロフォン1の低背化を実現することができる。プレート基板10の厚み方向に直線的に延びる貫通孔18の加工は容易であるため、プレート基板10内部に曲がった貫通孔を形成する場合と比較して、生産性を大きく向上することができる。
【0043】
マイクロフォン1のフロントチャンバは、センサ基板20に形成された空洞部28によって形成されている。音響ポートを経由して侵入する異物または圧縮空気によるダイアフラム24の破損を抑制できることにより、ダイアフラム24をプレート基板10の主表面10aに近づけて配置することができる。これにより、センサ基板20の厚みを低減でき、センサ基板20の低背化を達成できるので、マイクロフォン1の一層の低背化が実現される。センサ基板20の低背化の結果、フロントチャンバの体積を小さくできるので、特に高周波域におけるマイクロフォン1の周波数特性を向上でき、マイクロフォン1の性能向上を実現することができる。
【0044】
一方、マイクロフォン1のバックチャンバは、センサ基板20と回路素子30との間の空間38により形成されている。回路素子30の形状および寸法は任意に調整でき、C字を伏せた形状の回路素子30の高さ方向の寸法を大きくすれば、空間38の容積を増大でき、バックチャンバの容量を大きくすることができる。
【0045】
その結果、バックチャンバ内の空気が空気ばねとして作用してダイアフラム24の振動を阻害することが抑制され、マイクロフォン1内への音波の導入時にダイアフラム24が自在に振動できるようになる。したがって、シグナルノイズ比(SNR)を向上してマイクロフォン1の感度を向上することができる。加えて、バックチャンバの体積を大きくできることにより、特に低周波域におけるマイクロフォン1の周波数特性を向上でき、マイクロフォン1の性能向上を実現することができる。
【0046】
マイクロフォン1の特性上、音響ポートは、その径が大きい方が有利であり、また長さが小さい方が有利である。本実施の形態の音響ポートは、中空領域48を含んでおり、中空領域48がマイクロフォン1に導入される音の経路の一部となる。中空領域48は、プレート基板10とセンサ基板20との間に接着層40の厚みに相当する空洞ができることで、形成されている。すなわち、中空領域48の径は、接着層40の厚みによって決定されている。したがって、プレート基板10に形成される貫通孔18の径を十分に大きくするとともに、接着層40の厚みを十分に大きくすることで、従来のマイクロフォン1と比較して同等以上の音響性能を十分に確保することができる。たとえば10μm以上の厚みを有している接着層40を形成してもよい。
【0047】
また
図1に示すように、回路素子30は、音響センサに積層されている。この積層構造のために、マイクロフォン1の高さ寸法が大きくなる。そのため、本実施の形態の音響ポートを採用し、プレート基板10およびセンサ基板20の厚みを低減することで、マイクロフォン1を低背化できる効果を一層顕著に得ることができる。すなわち、本実施の形態に係る音響ポートは、音響センサと回路素子とが積層されたマイクロフォン1に、特に好適に適用され得るものである。
【0048】
(実施の形態2)
図3は、実施の形態2に係るマイクロフォン1の構成の概略を示す断面図である。
図4は、
図3に示すIV−IV線に沿う、実施の形態2のマイクロフォン1の断面図である。実施の形態2のマイクロフォン1は、貫通孔18および中空領域48によって形成される音響ポートの形状において、実施の形態1と異なっている。
【0049】
より具体的には、
図4に示す断面図において、平面的に見た貫通孔18および中空領域48が図示されている。
図2に示す実施の形態1の貫通孔18は丸穴の形状を有しているのに対し、実施の形態2の貫通孔18は、スリット状の形状を有している。貫通孔18は、空洞部28の外周に沿って延びる形状を有している。貫通孔18は、センサ基板20の第1面20bにおける空洞部28の周縁に沿って形成されている。
【0050】
中空領域48は、スリット状の貫通孔18に合わせて、主表面10aと第1面20bとの間の空洞部28の周縁に沿う領域に接着層40が設けられないものとして、形成されている。上面から見た空洞部28は矩形状の形状を有しており、貫通孔18および中空領域48は、当該矩形の一辺に沿って形成されている。
【0051】
実施の形態2のマイクロフォン1によれば、
図4に示すように貫通孔18が第1面20bにおける空洞部28の周縁に沿って形成されているために、主表面10aに平行なプレート基板10の断面に現れる貫通孔18の断面積が、実施の形態1と比較して増大している。貫通孔18を大径に形成し、中空領域48も貫通孔18に合わせて大径に形成することにより、音響ポートの径をより大きくすることができる。そのため、より優れた音響特性を有するマイクロフォン1を提供することができる。貫通孔18は、プレート基板10の剛性を確保できる範囲で可能な限り大径になるように、その形状および寸法を規定すればよい。
【0052】
(実施の形態3)
図5は、実施の形態3に係るマイクロフォン1の構成の概略を示す断面図である。
図6は、
図5に示すVI−VI線に沿う、実施の形態3のマイクロフォン1の断面図である。実施の形態3のマイクロフォン1は、貫通孔18および中空領域48によって形成される音響ポートの個数において、実施の形態2と異なっている。
【0053】
より具体的には、
図6に示す断面図において、空洞部28は上面視矩形状の形状を有している。実施の形態2の貫通孔18は矩形の一辺に沿って形成されていたのに対し、実施の形態3の貫通孔18は、矩形の四辺の全てに沿って形成されている。プレート基板10に複数のスリット状の貫通孔18が形成されており、各々の貫通孔18は、第1面20bにおける空洞部28の周縁に沿って形成されている。中空領域48は、実施の形態2と同様に、スリット状の貫通孔18に合わせて、空洞部28の周縁に沿って形成されている。
【0054】
実施の形態3のマイクロフォン1によれば、空洞部28の周縁に沿って延びるスリット状の貫通孔18が4つ形成されているために、主表面10aに平行なプレート基板10の断面に現れる貫通孔18の断面積が、実施の形態2と比較してさらに大きくなっている。貫通孔18を大径に形成し、中空領域48も貫通孔18に合わせて大径に形成することにより、音響ポートの径をより大きくすることができる。そのため、一層優れた音響特性を有するマイクロフォン1を提供することができる。貫通孔18の個数は、プレート基板10の剛性を確保できる範囲で可能な限り多く規定すればよい。
【0055】
(実施の形態4)
図7は、実施の形態4に係るマイクロフォン1の構成の概略を示す断面図である。実施の形態4のマイクロフォン1は、プレート基板10に、プレート基板10の主表面10aが窪んだ凹部19が形成されている点において、実施の形態1と異なっている。
【0056】
凹部19は、貫通孔18に隣接して形成されている。凹部19は、貫通孔18に対し、空洞部28に隣接する側の主表面10aが接続表面10b側に窪んで形成されている。貫通孔18は、中空領域48を介して空洞部28に連通しており、さらに、凹部19を介して空洞部28に連通している。凹部19と中空領域48とは、互いに連通している。凹部19は、貫通孔18および中空領域48と共に、音響センサに音響振動を導入する音響ポートを形成している。貫通孔18の形状は、実施の形態1と同様の丸穴でもよく、実施の形態2と同様のスリット状の穴であってもよい。
【0057】
実施の形態4のマイクロフォン1によれば、プレート基板10の主表面10aが窪んだ凹部19が形成されているために、マイクロフォン1の外部空間と空洞部28とを連通する音響ポートの径が、実施の形態1と比較してより大きくなっている。音響ポートの径を拡大することにより、より優れた音響特性を有するマイクロフォン1を提供することができる。
【0058】
(実施の形態5)
図8は、実施の形態5に係るマイクロフォン1の構成の概略を示す断面図である。実施の形態5のマイクロフォン1は、センサ基板20に、センサ基板20の第1面20bが窪んだ凹部29が形成されている点において、実施の形態1と異なっている。
【0059】
凹部29は、貫通孔18の延長上に形成されている。凹部29は、センサ基板20の第1面20bにおける貫通孔18の投影に相当する部分が第2面20a側に窪み、さらに当該部分に対し空洞部28側の第1面20bが窪んで形成されている。凹部29は、空洞部28に連通している。貫通孔18は、中空領域48を介して空洞部28に連通しており、さらに、凹部29を介して空洞部28に連通している。凹部29と中空領域48とは、互いに連通している。凹部29は、貫通孔18および中空領域48と共に、音響ポートを形成している。貫通孔18の形状は、実施の形態1と同様の丸穴でもよく、実施の形態2と同様のスリット状の穴であってもよい。
【0060】
実施の形態5のマイクロフォン1によれば、センサ基板20の第1面20bが窪んだ凹部29が形成されているために、マイクロフォン1の外部空間と空洞部28とを連通する音響ポートの径が、実施の形態1と比較してより大きくなっている。したがって、実施の形態4と同様に、より優れた音響特性を有するマイクロフォン1を提供することができる。
【0061】
(実施の形態6)
図9は、実施の形態6に係るマイクロフォン1の構成の概略を示す断面図である。実施の形態6のマイクロフォン1は、センサ基板20に形成された凹部29の形状において、実施の形態5と異なっている。
【0062】
図8に示す実施の形態5の凹部29は、その底面がセンサ基板20の第1面20bと略平行に形成されており、
図8に示す断面図において、凹部29は矩形状の断面形状を有している。一方、
図9に示す実施の形態6の凹部29は、センサ基板20の第1面20bに対して傾斜した内壁面を有し、テーパ状に形成されており、
図9に示す断面図において、凹部29は略三角形状の断面形状を有している。
図8に示す断面矩形状の凹部29は、たとえば等方性エッチングを用いて形成することができる。
図9に示す断面三角形状の凹部29は、たとえば異方性エッチングを用いて形成することができる。
【0063】
実施の形態6のマイクロフォン1によれば、実施の形態5と同様に、音響ポートの径が拡大されているので、より優れた音響特性を有するマイクロフォン1を提供することができる。
図9に示す例では、凹部29と空洞部28との間にセンサ基板20が加工されておらず第1面20bが窪んでいない部分が存在するが、接着層40の厚みを十分に確保して中空領域48の径を十分に大きくすれば、マイクロフォン1の良好な音響特性を確保することができる。
【0064】
(実施の形態7)
図10は、実施の形態7に係るマイクロフォン1の構成の概略を示す断面図である。実施の形態7のマイクロフォン1は、上述した実施の形態4のマイクロフォン1と基本的に同様の構成を備えており、プレート基板10にはプレート基板10の主表面10aが窪んだ凹部19が形成されている。しかし、実施の形態7では、凹部19が
図10に示す形状に形成されている点で、実施の形態4とは異なっている。
【0065】
具体的には、実施の形態7では、凹部19は、貫通孔18に対し空洞部28側の主表面
10aが窪み、さらに、貫通孔18に対し空洞部28から離れる側の主表面10aが窪んで形成されている。凹部19の内部の、貫通孔18に対し空洞部28から離れる側の一部には、接着剤硬化物41が収容されている。接着剤硬化物41は、音響センサをプレート基板10に接着するために主表面10aに塗布された液体状接着剤の一部が凹部19の内部に流れ込み、凹部19内で硬化したものである。
【0066】
実施の形態7のマイクロフォン1では、音響センサをプレート基板10の主表面10aに実装するために、液体樹脂などの液体状接着剤が用いられる。センサ基板20は、液体状接着剤によってプレート基板10に接着される。この場合、液体状接着剤のリザーバ(液溜め部)として、凹部19が使用される。貫通孔18に対し空洞部28から離れる側の主表面10aに凹部19を形成することにより、流動性を有している液体状接着剤が凹部19の内部へ流入しても、液体状接着剤は貫通孔18にまで到達することなく硬化する。その結果、マイクロフォン1は、凹部19内に収容された接着剤硬化物41を有している。このようにすれば、液体状接着剤が音響ポートを塞ぐことを防止できるので、マイクロフォン1の所定の音響特性を確保することができる。
【0067】
(実施の形態8)
図11は、実施の形態8に係るマイクロフォン1の構成の概略を示す断面図である。実施の形態8のマイクロフォン1は、上述した実施の形態5のマイクロフォン1と基本的に同様の構成を備えており、センサ基板20にはセンサ基板20の第1面20bが窪んだ凹部29が形成されている。しかし、実施の形態8では、凹部29が
図11に示す形状に形成されている点で、実施の形態5とは異なっている。
【0068】
具体的には、実施の形態8では、凹部29は、第1面20bにおける貫通孔18の投影に相当する部分の第1面20bが窪み、当該投影に対し空洞部28側の第1面20bが窪み、さらに、当該投影に対し空洞部28から離れる側の第1面20bが窪んで形成されている。凹部29の内部の、貫通孔18に対し空洞部28から離れる側の一部には、接着剤硬化物41が収容されている。接着剤硬化物41は、音響センサをプレート基板10に接着するために主表面10aに塗布された液体状接着剤の一部が凹部29の内部に流れ込み、凹部29内で硬化したものである。
【0069】
実施の形態8のマイクロフォン1では、実施の形態7と同様に、センサ基板20は、液体状接着剤によってプレート基板10に接着される。液体状接着剤のリザーバとして、凹部29が使用される。これにより、液体状接着剤が音響ポートを塞ぐことを防止できるので、マイクロフォン1の所定の音響特性を確保することができる。
【0070】
(実施の形態9)
図12は、実施の形態9に係るマイクロフォン1の構成の概略を示す断面図である。実施の形態9のマイクロフォン1は、上述した実施の形態6のマイクロフォン1と基本的に同様の構成を備えており、センサ基板20にはセンサ基板20の第1面20bが窪んだ凹部29が形成されている。しかし、実施の形態9では、凹部29が
図12に示す形状に形成されている点で、実施の形態6とは異なっている。
【0071】
具体的には、実施の形態9では、凹部29は、第1面20bにおける貫通孔18の投影に相当する部分の第1面20bが窪み、さらに、当該投影に対し空洞部28から離れる側の第1面20bが窪んで形成されている。凹部29の内部の、貫通孔18に対し空洞部28から離れる側の一部には、接着剤硬化物41が収容されている。
【0072】
実施の形態9のマイクロフォン1では、実施の形態7と同様に、センサ基板20は、液体状接着剤によってプレート基板10に接着される。液体状接着剤のリザーバとして、凹部29が使用される。これにより、液体状接着剤が音響ポートを塞ぐことを防止できるので、マイクロフォン1の所定の音響特性を確保することができる。
【0073】
(実施の形態10)
図13は、実施の形態10に係るマイクロフォン1の構成の概略を示す断面図である。
図14は、
図13に示すXIV−XIV線に沿う、実施の形態10のマイクロフォン1の断面図である。実施の形態10のマイクロフォン1は、プレート基板10の主表面10a側の形状において、実施の形態1とは異なっている。
【0074】
より具体的には、プレート基板10は、主表面10aから突き出る突起部16を有している。突起部16は、センサ基板20の空洞部28を取り囲むように、複数形成されている。
図14に示す実施の形態では、4箇所の突起部16が形成されている。突起部16の、主表面10aから最も離れる先端部は、平坦に形成されている。複数の突起部16の先端部は、プレート基板10の主表面10aに平行な同一平面上に配置されている。音響センサのセンサ基板20は、突起部16上に搭載されている。センサ基板20の第1面20bは、複数の突起部16の先端面にそれぞれ面接触して、突起部16によって支持されている。
【0075】
プレート基板10の主表面10aと、センサ基板20の第1面20bとは、突起部16の高さの分、互いに間隔を空けて配置されている。主表面10aと第1面20bとの間に介在する接着層40は、突起部16の高さと同じ厚みを有している。
【0076】
なお、液体状接着剤を用いる場合は、センサ基板20の第1面20bは、複数の突起部16の先端面に隣接する接着層を介在して、突起部16によって支持されている。主表面10aと第1面20bとの間に介在する接着層40は、突起部16の高さと突起部16の先端面に残った樹脂の厚みとを合計した厚みを有している。なお、突起部16の先端面に残る樹脂の厚みは、液体状接着剤の粘度、実装時に液体状接着剤に負荷される押圧、および突起部16の形状により決まる。
【0077】
実施の形態10のマイクロフォン1によれば、プレート基板10に主表面10aから突き出る複数の突起部16が設けられ、センサ基板20は突起部16上に搭載されている。センサ基板20をプレート基板10に接着する接着層40は、プレート基板10の主表面10aとセンサ基板20の第1面20bとの間に配置されている。突起部16が主表面10aから突き出る突起高さを調整することにより、接着層40の厚みを自在に変更することが可能になる。プレート基板10の厚み方向における中空領域48の寸法は、接着層40の厚みによって決定される。そのため、突起部16の寸法に従って中空領域48の径を調整することができる。
【0078】
上述した通り、中空領域48は、音響センサに音響振動を導入するための音響ポートを構成しており、音響ポートの径が大きいほどマイクロフォン1の特性上有利である。プレート基板10に突起部16を形成し、接着層40の厚みを突起部16によって決定することで、中空領域48の高さ方向の寸法を十分に大きくすることができ、十分に大きい径の音響ポートを形成することができる。したがって、マイクロフォン1の音響性能を十分に確保することができる。接着層40の全体にわたってその厚みを安定化させ、接着層40の厚みのばらつきを低減できるので、マイクロフォン1の個体毎の音響特性のばらつきを低減することができる。
【0079】
(実施の形態11)
図15は、実施の形態11に係るマイクロフォン1の構成の概略を示す断面図である。
図16は、
図15に示すXVI−XVI線に沿う、実施の形態11のマイクロフォン1の断面図である。実施の形態11のマイクロフォン1は、プレート基板の主表面10aとセンサ基板20の第1面20bとの間に介在する介在部材46をさらに備えている点で、実施の形態1とは異なっている。
【0080】
介在部材46は、プレート基板10の主表面10a上に搭載されており、主表面10aに対して突き出して配置されている。介在部材46は、センサ基板20の空洞部28を取り囲むように、複数設けられている。
図16に示す実施の形態では、4つの介在部材46が配置されている。音響センサのセンサ基板20は、介在部材46上に搭載されている。センサ基板20の第1面20bは、複数の介在部材46にそれぞれ接触して、介在部材46によって支持されている。
【0081】
プレート基板10の主表面10aと、センサ基板20の第1面20bとは、介在部材46の高さ方向の寸法の分、互いに間隔を空けて配置されている。介在部材46は、接着層40を貫通して配置されている。主表面10aと第1面20bとの間に介在する接着層40は、介在部材46の高さと同じ厚みを有している。
【0082】
実施の形態11のマイクロフォン1によれば、プレート基板10の主表面10aとセンサ基板20の第1面20bとの間の接着層40を貫通して、複数の介在部材46が配置されている。センサ基板20は、介在部材46上に搭載されている。プレート基板10の厚み方向における介在部材46の寸法を調整することにより、接着層40の厚みを自在に変更することが可能になる。プレート基板10の厚み方向における中空領域48の寸法は、接着層40の厚みによって決定される。そのため、介在部材46の寸法に従って中空領域48の径を調整することができる。
【0083】
接着層40の厚みを介在部材46によって決定することで、実施の形態10と同様に、中空領域48の高さ方向の寸法を十分に大きくでき、十分に大きい径の音響ポートを形成することができる。したがって、マイクロフォン1の音響性能を十分に確保することができ、さらに、マイクロフォン1の個体毎の音響特性のばらつきを低減することができる。
【0084】
(実施の形態12)
図17は、実施の形態12に係るマイクロフォン1の構成の概略を示す断面図である。
図18は、
図17に示すXVIII−XVIII線に沿う、実施の形態12のマイクロフォンの断面図である。実施の形態12のマイクロフォン1では、プレート基板10が、実施の形態10と同様の突起部16に加えて、主表面10aから突き出る突起部17を有している。突起部16の先端面と突起部17の先端面とは、同一平面上に配置されている。センサ基板20は、突起部16および突起部17に搭載されており、突起部16と突起部17との双方によって支持されている。
【0085】
貫通孔18は、プレート基板10を厚み方向に貫通して形成されており、主表面10aに開口している。突起部17は、
図18に示すように、主表面10aにおける貫通孔18の周縁に沿って主表面10aから突き出るように設けられている。
図18に示す貫通孔18は丸穴形状であり、突起部17は、丸穴の外周に沿って円弧状に延びる部分を有している。貫通孔18は、突起部17によりその外周の一部が囲われている。接着層40は、突起部17によって、貫通孔18から隔てられている。
【0086】
実施の形態12のマイクロフォン1では、音響センサをプレート基板10の主表面10aに実装するために、液体樹脂などの液体状接着剤が用いられる。センサ基板20は、液体状接着剤によってプレート基板10に接着される。液体状接着剤を主表面10aに供給するとき、流動性を有している液体状接着剤が主表面10aに沿って面方向に移動しても、液体状接着剤の流れは突起部17によって堰き止められる。突起部17は、液体状接着剤の流れに対する障壁として機能する。したがって、液体状接着剤が貫通孔18にまで到達して貫通孔18の内部に流入することを防止でき、液体状接着剤が音響ポートを塞ぐことを防止できるので、マイクロフォン1の所定の音響特性を確保することができる。
【0087】
(実施の形態13)
図19は、実施の形態13に係るマイクロフォン1の構成の概略を示す断面図である。これまでの実施の形態においては、平板状のプレート基板10に音響センサが実装されていたが、実施の形態13のマイクロフォン1では、プレート基板10は角張ったC字を横たえた形状に形成されている。このような形状のプレート基板10は、切削形成されてもよく、または平板状をした多層配線基板の周縁部に枠を取り付けて形成されてもよい。音響センサは、C字を横たえた形状のプレート基板10の底面に実装されている。
【0088】
実施の形態13のマイクロフォン1はさらに、蓋基板70を備えている。音響センサと回路素子30との積層構造は、プレート基板10および蓋基板70によって形成されるパッケージの内部空間に収容されている。プレート基板10および蓋基板70は、実施の形態13のマイクロフォン1のハウジングを形成している。ハウジングの内部に、プレート基板10、蓋基板70、音響センサおよび回路素子30によって取り囲まれた、中空の空間78が形成されている。
【0089】
蓋基板70は、実施の形態1で説明したプレート基板10と同様に、平板状をした多層配線基板によって形成されており、音響センサに対向する側の主表面に露出する導電層72と、音響センサに対向しない側の主表面に積層された外部接続端子74とを有している。蓋基板70は、図示されている導電層72および外部接続端子74のほか、蓋基板70の表面および内部に面方向に延びる図示しない導電層および厚み方向に延びるビア電極が形成されている。
【0090】
マイクロフォン1がマザー基板に実装される際、外部接続端子74がマザー基板側の接続端子に電気的に接続されることにより、マイクロフォン1への電力供給および制御信号の通信が行なわれる。そのため、
図19に示すプレート基板10には、実施の形態1と異なり、外部接続端子は設けられていない。プレート基板10の、C字形状の先端部には、導電層12が露出している。この導電層12と、蓋基板70に形成された導電層72とは、相対向する位置に配置されている。導電層12と導電層72とは、導電性部材75を介在させて、電気的に接続されている。導電性部材75は、導電性接着剤、ハンダ、導電性両面粘着テープ、溶接用のろう材のいずれか一つまたは組合せによって形成されている。
【0091】
プレート基板10に形成された導電層12と、回路素子30に形成された導電層32とは、ボンディングワイヤ64によって接続されている。実施の形態1と比較して、ボンディングワイヤ64のワイヤ長が小さくなっており、これにより、ボンディングワイヤ64が切断されにくくなるとともに、ワイヤボンディング作業を容易にすることができる。
【0092】
以上のような構成により、外部接続端子74を有しマザー基板上に実装される蓋基板70と離れた位置に音響ポートが設けられる、トップポート型のマイクロフォン1が実現される。このような実施の形態13のマイクロフォン1においても、実施の形態1と同様に、空洞部28に音響振動を導入する音響ポートは、曲がった形状に形成されている。曲がった形状の音響ポートは、貫通孔18と中空領域48とによって形成されている。これにより、音響ポートを経由して異物または圧縮空気が空洞部28へ侵入してダイアフラム24へ到達することを抑制できるので、ダイアフラム24の破損を軽減できる。加えて、プレート基板10の厚みを低減することができ、マイクロフォン1の高さ方向の寸法を小さくできるので、マイクロフォン1の低背化を実現することができる。
【0093】
図19に示す本実施の形態の構成において、音響センサと回路素子30との間に隙間を設けることにより、空間38と空間78とを連通することも可能である。このようにすれば、マイクロフォン1のバックチャンバの容積をさらに大きくすることができる。なおこの場合、導電性部材75が断続的に存在する部分には、絶縁性の樹脂を充填して、外部から空間38,78を音響的に封止する必要がある。
【0094】
(実施の形態14)
図20は、実施の形態14に係るマイクロフォン1の構成の概略を示す断面図である。これまでの実施の形態においては、音響センサと回路素子30とは互いに積層されて積層構造を形成していたが、実施の形態14のマイクロフォン1では、回路素子30は音響センサに対し積層されておらず、音響センサと回路素子30とがベース基板上に並べられて、双方共にベース基板に実装されている。
【0095】
図20に示すマイクロフォン1は、パッケージ80を備えている。パッケージ80は、実施の形態14のマイクロフォン1のハウジングを形成している。パッケージ80は、中空の箱状の形状を有しており、その内部に中空の空間が形成されている。パッケージ80の内部空間のうち、空洞部28はマイクロフォン1のフロントチャンバとして機能し、ダイアフラム24に対して空洞部28と反対側の空間38は、マイクロフォン1のバックチャンバとして機能する。パッケージ80は、実施の形態1で説明したプレート基板10と同様に、平板状をした多層配線基板によって形成されており、主表面80aと、主表面80aとは反対側の接続表面80bとを有している。音響センサと回路素子30との双方は、主表面80a上に実装されている。パッケージ80は、実施の形態14におけるベース基板としての機能を有している。
【0096】
パッケージ80は、主表面80aに露出して形成された導電層82と、接続表面80b上に積層された外部接続端子84とを有している。パッケージ80は、図示されている導電層82および外部接続端子84のほか、パッケージ80の表面および内部に面方向に延びる図示しない導電層および厚み方向に延びるビア電極が形成されている。回路素子30に形成された導電層32と、パッケージ80に形成された導電層82とは、ボンディングワイヤ64によって接続されている。パッケージ80には、パッケージ80を厚み方向に貫通する貫通孔88が形成されている。貫通孔88は、音響ポートの一部を構成している。
【0097】
以上のような構成を備えている実施の形態14のマイクロフォン1においても、実施の形態1と同様に、空洞部28に音響振動を導入する音響ポートが曲がった形状に形成されている。曲がった形状の音響ポートは、貫通孔88と中空領域48とによって形成されている。これにより、音響ポートを経由して異物または圧縮空気が空洞部28へ侵入してダイアフラム24へ到達することを抑制できるので、ダイアフラム24の破損を軽減できる。加えて、マイクロフォン1の高さ方向の寸法を小さくすることで、バックチャンバの容積を増大することができ、マイクロフォン1の性能向上を実現することができる。
【0098】
(実施の形態15)
図21は、実施の形態15に係るマイクロフォン1の構成の概略を示す断面図である。実施の形態15のマイクロフォン1は、角張ったC字を伏せた形状のカバー部材90を備えている。カバー部材90は、樹脂材料に代表される絶縁性の材料により形成されている。プレート基板10とカバー部材90とは、中空の箱状の形状に組み立てられており、その箱状の内部に中空の空間が形成されている。プレート基板10とカバー部材90によって形成されるパッケージの内部空間に、音響センサと回路素子30とが収容されている。プレート基板10とカバー部材90とは、実施の形態15のマイクロフォン1のハウジングを形成している。
【0099】
カバー部材90は、プレート基板10に対向する側の主表面90aと、主表面90aとは反対側の外表面90bとを有している。音響センサと回路素子30とはいずれも、カバー部材90の主表面90aに実装されている。カバー部材90は、実施の形態15におけるベース部材としての機能を有している。プレート基板10およびカバー部材90によって形成される箱形状の内部空間のうち、空洞部28はマイクロフォン1のフロントチャンバとして機能し、ダイアフラム24に対して空洞部28と反対側の空間38は、マイクロフォン1のバックチャンバとして機能する。
【0100】
カバー部材90の、C字形状の先端部には、導電層92が露出している。この導電層92と、プレート基板10に形成された導電層12とは、相対向する位置に配置されている。導電層12と導電層92とは、導電性部材95を介在させて、電気的に接続されている。導電性部材95は、導電性接着剤、ハンダ、導電性両面粘着テープ、溶接用のろう材のいずれか一つまたは組合せによって形成されている。導電性部材95が断続的に存在する部分には、絶縁性の樹脂を充填して、外部から空間38を音響的に封止する必要がある。回路素子30に形成された導電層32は、プレート基板10に形成された導電層12、およびカバー部材90に形成された導電層92と、ボンディングワイヤ64によって接続されている。カバー部材90には、カバー部材90を厚み方向に貫通する貫通孔98が形成されている。貫通孔98は、音響ポートの一部を構成している。
【0101】
以上のような構成により、外部接続端子14を有しマザー基板上に実装されるプレート基板10と離れた位置に音響ポートが設けられる、トップポート型のマイクロフォン1が実現される。このような実施の形態15のマイクロフォン1においても、実施の形態1と同様に、空洞部28に音響振動を導入する音響ポートが曲がった形状に形成されている。曲がった形状の音響ポートは、貫通孔98と中空領域48とによって形成されている。これにより、音響ポートを経由して異物または圧縮空気が空洞部28へ侵入してダイアフラム24へ到達することを抑制できるので、ダイアフラム24の破損を軽減できる。加えて、マイクロフォン1の高さ方向の寸法を小さくすることで、バックチャンバの容積を増大することができ、マイクロフォン1の性能向上を実現することができる。
【0102】
なお、これまでの実施の形態においては、センサ基板20をベース基板の厚み方向に沿ってベース基板の主表面に写した投影が、ベース基板に形成された貫通孔が当該主表面において開口する開口部の全部に重なる例について説明した。上記センサ基板20の投影が上記開口部の一部に重なる構成としてもよい。貫通孔がセンサ基板20の一部に重なっていれば、上述した空洞部28への異物の侵入を抑制できる効果を、同様に得ることができる。
【0103】
また、これまでの実施の形態においては、音響センサと、回路素子30と、音響センサが実装されている基板との電気的接続のために、ボンディングワイヤ62,64を用いる例について説明した。電気的接続はワイヤボンディングに限られるものではなく、たとえば平板状の回路素子30と音響センサとをフリップチップボンディングを用いて電気的に接続してもよく、回路素子30を貫通するシリコン貫通電極(TSV)を用いて回路素子30と音響センサとを電気的に接続してもよい。
【0104】
また、マイクロフォン1は、電磁ノイズ低減のための導電性の電磁シールドをさらに備えてもよい。電磁シールドは、音響センサに積層されている回路素子30の表面のうち、音響センサに対向する面と反対側の表面に配置されてもよい。または、マイクロフォン1のハウジングの外表面と内表面とのいずれか一方または両方に電磁シールドを配置してもよい。
【0105】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。