(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、電気泳動型等の表示素子(例えば、E-INK社製のe-inkシートを用いた表示方法)が普及してきている。この表示素子は、視認性がよく、かつ、薄型・軽量で、低消費電力であることから携帯機器などへの利用に優れた特徴を有している。このようなことから、例えば、電気泳動型の表示素子は携帯電話のサブディスプレイやICカード、電子書籍などの種々の電子表示装置に用いられてきている。
【0003】
しかしながら、従来の表示素子は、単に表裏面を防湿処理を施した樹脂フィルムで被覆されたものであるため、高温度や高湿度下に晒された場合には水分が侵入して劣化が生じ、表示品質が著しく低下するという問題を持っている。そのため、耐湿性向上のために、過去において様々な技術開発がなされている。(例えば、下記特許文献1参照)
図9、
図10は、特許文献1に示された電気泳動型の表示素子の耐湿性向上の製造方法を示したものである。
図9は製造方法での工程図を示しており、
図10は
図9における E−E断面図を示したものである。なお、図中において、符号は主旨を逸脱しない範囲で修正している。
【0004】
最初に、
図9(a)は、ベースフィルム上に配線電極などを形成したFPC(Flexible
Printed Circuit)70上にE-INK社製のe−inkシート80を設けている。FPC70は幅が狭くなった突出部71を持っており、この突出部71を含めた位置の3か所に丸穴なる位置決め穴72、73、74を持っている。
【0005】
次に、
図9(b)は、FPC70とFPC70上に形成したe−inkシート80とを、表面側から透明で、防湿処理を施した樹脂フィルムであるフロントバリアシート90と、裏面側からリアバリアシート91とでサンドイッチ状(
図10参照)に挟み込んで、e−inkシート80を封止した構造を取っている。
【0006】
次に、
図9(c)は、
図10に示すように、上面防湿シート90と下面防湿シート91とを貼り合わせた後に、3箇所の位置決め穴72、73、74に固定器具の位置決めピン102、103、104に嵌め込んでFPC70を固定器具に固定し、一点鎖線で示した切断線90aの部分を切断する。
【0007】
次に、
図9(d)は、切断後の完成状態になった電気泳動型の表示素子の形状を示したものである。FPC70の外形(鎖線で示した部分)の外側の斜線部分は、上面防湿シート90と下面防湿シート91とが重なり合って接合した部分を示している。また、位置決め穴73と74の間には、e−inkシート80の駆動用のIC115を取付けている。
【0008】
特許文献1によれば、上面防湿シート90に実装されたe−inkシート80は、上面防湿シート90とFPC70との間に封入されており、更に、FPC70の外周域部で接合した上面防湿シート90と下面防湿シート91とによって被覆されて保護されているので、e−inkシート80への水分の侵入は防止されるとしている。
【0009】
また、FPC70の突出部71の部分の切断面は、上面防湿シート90と下面防湿シート91との間に挟まれて外部に露出するが、突出部71の幅を最小限に小さく抑えているので、露出した切断面からの水分の侵入は最小限に抑制できるとしている。そして、耐湿
性の優れた表示素子が得られるとしている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係り、大型基板の平面レイアウトを説明する説明図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る表示素子の製造方法を説明する工程図で、
図2(a)は大型基板の所定の位置に複数個の表示層を形成する工程図で、
図2(b)は表示層の周囲の大型基板に切抜領域を形成する工程図、
図2(c)は表示層の上下を覆う全面に2枚の防湿シートを配設し、切抜領域を通して2枚の防湿シートを互いに接着して接合した工程図、
図2(d)は接合した2枚の防湿シートの部分、及び大型基板の部分を切断してそれぞれ単個の表示素子を形成する工程図を表している。
【
図5】
図2の工程図によって形成された表示素子の平面図と断面図で、
図5(a)は平面図、
図5(b)は
図5(a)のC−C断面図、
図5(c)は
図5(a)のD−D断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る表示素子の製造方法を説明する工程図で、
図6(a)は表示層形成予定の所定の位置の周囲の大型基板に切抜領域を形成する工程図、
図6(b)は大型基板の所定の位置に複数個の表示層を形成する工程図で、
図6(c)は表示層の上下を覆う全面に2枚の防湿シートを配設し、切抜領域を通して2枚の防湿シートを互いに接着して接合した工程図、
図6(d)は接合した2枚の防湿シートの部分、及び大型基板の部分を切断してそれぞれ単個の表示パネルを形成する工程図を表している。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る表示素子の製造方法で、切抜領域の他の形状を説明する平面図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る表示素子の製造方法で、表示層がエレクトロルミネッセンス型表示層の構成を示す要部断面図である。
【
図9】従来の技術として、引用文献1に示された電気泳動型表示素子の耐湿性向上の製造方法を示した工程図で、
図9(a)はFPC上にe−inkシートを形成した工程図、
図9(b)は上面防湿シートと下面防湿シートとを貼り合わせた工程図、
図9(c)は位置決め穴を基準にして切断状態を示す工程図、
図9(d)は切断後の表示パネルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以降、本発明の実施形態について、図を用いながら説明する。
〔第1実施形態の説明〕
最初に、本発明の第1実施形態に係る表示素子の製造方法を
図1〜
図5を用いて説明する。なお、
図1は本発明の第1実施形態に係り、大型基板の平面レイアウトを説明する説明図である。
図2は本発明の第1実施形態に係る表示素子の製造方法を説明する工程図で、
図2(a)は大型基板の所定の位置に複数個の表示層を形成する工程図、
図2(b)は表示層の周囲の大型基板に切抜領域を形成する工程図、
図2(c)は表示層の上下を覆う全面に2枚の防湿シートを配設し、切抜領域を通して2枚の防湿シートを互いに接着して接合した工程図、
図2(d)は接合した2枚の防湿シートの部分、及び大型基板の部分を切断してそれぞれ単個の表示素子を形成する工程図を表している。また、
図3は
図2(a)におけるA−A断面図、
図4は
図2(c)におけるB−B断面図を示している。また、
図5は
図2の工程図によって形成された表示素子の平面図と断面図で、
図5(a)は平面図、
図5(b)は
図5(a)のC−C断面図、
図5(c)は
図5(a)のD−D断面図を示している。
【0019】
最初に、本発明の第1実施形態に係る表示素子の製造方法に用いられる大型基板の平面
形状を
図1を用いて説明する。
図1に示した大型基板10は4個の表示層が形成できる基板を示していて、二点鎖線で示したL1〜L4で囲まれた領域は表示層を形成する表示層形成領域部10aを表している。
【0020】
大型基板10は、FPC基板からなるもので、ポリイミド樹脂などからなるベースフィルム11の表面には、金メッキを施した銅パターンなどによって形成した画素電極パターン16と、先端部には外部との導通接続をとるための電極端子14が設けられており、これら画素電極16と電極端子14は、ベースフィルム11の裏面に、銅パターンなどによって形成した配線電極パターン13と、スルーホールにより接続されている。また同様に、ベースフィルム11の表面には、表示層の共通電極(
図3の22)と接続するため、金メッキを施した銅パターンなどによって形成したCOM電極18と、外部との導通接続をとるためのCOM端子17が設けられており、裏面の配線電極パターン13とスルーホールにより、接続されている。ベースフィルム11の裏面には、配線電極パターン13の保護や防湿のための下面防湿シートや、レジストが塗布されている。ななお、図面を簡略化するため、画素電極16とCOM電極18を合わせて、表示層形成領域部10aとしてある。
【0021】
また、大型基板10には、二点鎖線で囲って示した切抜領域形成部10bが設けられている。後述することではあるが、この切抜領域形成部10bは、表示層形成領域部10aを囲うようにして、配線電極パターン13を設けた側の一辺を除く他の三辺側の周囲に設けている。
【0022】
また、大型基板10には、外周域に複数の位置決め穴15(図中、丸穴で示している)を設けており、この位置決め穴15を基準にして、表示層形成領域部10aの所に表示層を形成し、切抜領域形成部10bの所に切抜領域、などが形成できるようにしている。
【0023】
なお、第1実施形態においては、大型基板10には4個の表示層形成領域部10aを設けているが、表示層形成領域部10aは4個に限られるものではなく、個数は適宜に設定されるのが好ましい。
【0024】
次に、
図2を用いて第1実施形態に係る表示素子の製造方法を説明する。最初に、
図2(a)は大型基板の所定の位置に複数個の表示層を形成する工程を示している。
図2(a)において、大型基板10の表示層形成領域部10aの位置に合わせて、e−inkシートからなる表示層20を貼り付ける。
この表示層20は、
図3に示すように、ITO膜からなる共通電極22を設けたPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムなどからなる透明シート21にマイクロカプセル23を均一に分散し、更に導電性を持つ接着層24をコーティングしてある。なお、共通電極22は大型基板10に設けたCOM電極18に導電性ゴムや導電ペースト(図示せず)を用いて接続されるようになっている。
【0025】
マイクロカプセル23なる電気泳動型の表示層は、例えば、酸化チタンからなる白の粒子とカーボンブラックからなる黒の粒子とをシリコンオイルなどの粘性の高い分散媒で分散してカプセル殻内に封入したしたものからなっている。このマイクロカプセル23なる電気泳動型の表示層20は従来技術で説明されたe−inkシートに該当するものである。
【0026】
このマイクロカプセル23は、画素電極パターン16と共通電極22に電圧が印加され、共通電極22が負極、画素電極パターン16が正極になった場合、正に帯電した白の粒子は共通電極22側に引き寄せられ、負に帯電した黒の粒子は画素電極パターン16側に引き寄せられる。そして、表面側(透明シート21側)から見ると白の粒子の白色が観察
される。
【0027】
これに対して、共通電極22が正極、画素電極パターン16が負極になった場合、正に帯電した白の粒子は画素電極パターン16側に引き寄せられ、負に帯電した黒の粒子は共通電極22側に引き寄せられる。そして、黒の粒子の黒色が観察される。本実施形態においては、以上述べたように、表示層20は電気泳動型の表示層をなしている。
【0028】
第1実施形態においては、表示層20は、大型基板10の外形や、位置決めピン穴15を基準にして、フィルム接着機を用いて接着している。
【0029】
次に、
図2(b)は表示層の周囲の大型基板に切抜領域を形成する工程を示している。
図2(b)において、斜線で示した部分は切抜領域30を表している。この切抜領域30は、
図1で示した大型基板10の切抜領域形成部10bの部位に形成するものである。即ち、第1実施形態においては、この切抜領域30は、搭載されている表示層20の周囲で、配線電極パターン13が設けられている辺側を除いた他の三辺側に設けている。
【0030】
この切抜領域30は、大型基板10の位置決めピン穴15を基準にして切断型やレーザーで切り抜きを行うことによって形成している。
【0031】
次に、
図2(c)は表示層の上下を覆う全面に2枚の防湿シートを配設し、切抜領域を通して2枚の防湿シートを互いに接着して接合した貼着工程を示している。
図2(c)において、表示層20が搭載されて切抜領域30が設けられた大型基板10の表裏面に、即ち、上下面(以降、表裏面を上下面と称して説明する)の上面に上面防湿シート35、下面に下面防湿シート36なる防湿シートを被覆して貼り合わせている。それぞれの防湿シートの内側には、熱可塑性の接着材が塗布されており、ロールラミネータ等で、熱圧着することで、封止する。図中において、鎖線は切抜領域30の外形状を表しているが、上面防湿シート35、及び下面防湿シート36は、図示している如く、表示層20と切抜領域30を完全に覆う大きさで、且つ、配線電極パターン13のかなりの部分が覆われるような大きさのものを使用するのが好ましい。そして、切抜領域30において、上面防湿シート35と下面防湿シート36とが接合している。
【0032】
図4は上下面の防湿シート35、36を貼り合わせた構造を示したものであるが、
図4に示すように、大型基板10が切抜きされた切抜領域30においては、上下面の防湿シート35、36同士が粘着して接合している。
【0033】
なお、上面防湿シート35は、透明なPETフィルムに、酸化アルミニウムや酸化珪素を蒸着法やスパッタリング法を用いて形成した透湿性の非常に低い防湿フィルムを用い、下面防湿シート36は、上面防湿シート35と同じ材料でも良いが、透明である必要性がなく、アルミ箔を貼り付けたPETフィルムやアルミニウムを蒸着法やスパッタリング法で形成したPETフィルムを用いることもできる。
【0034】
次に、
図2(d)は、単個の表示素子45を得るために、大型基板10及び上下の防湿シート35、36を切断する状況を説明するもので、一点鎖線で示した符号40は切断線を表したものである。切断線40は、切抜領域30内での上下の防湿シート35、36同士が粘着接合した部位と、大型基板10の配線電極パターン13と電極端子14、COM端子17が有る外側の部位が切断線40によって切断される部分である。この切断は、4連の切断刃を有する切断型を用いて、大型基板10の位置決めピン穴15を基準にして、一度に切断線40の部分を切断することによって単個の表示素子45を複数形成するものである。
【0035】
図5は単個の表示素子45の形状と構造を示したものである。
図5(a)に示すように、表示素子45は、基板10に搭載された表示層20と、基板10のベースフィルム11、並びにベースフィルム11の裏面に形成された複数の配線電極パターン13、及びベースフィルム11の表面に形成された電極端子14とCOM端子17、上下面に被覆した防湿シート35、36とから構成される。
【0036】
表示素子45の表示層20は、
図5(b)に示されるように、上下面の防湿シート35、36の接合した内部に完全に封入された状態になるので、水分の浸透は抑制されて表示層20の耐湿性は向上する。
また、
図5(c)に示されるように、表示層20は、図中右側の部分は、接合した上下の防湿シート35、36の内部に封入された状態になるので、上下の防湿シート35、36の接合面からの水分の浸透は抑制される。これに対し、図中左側の部分は、表示層20は、被覆した上面防湿シート35と配線電極パター13などが設けられた大型基板10との接合部位から奥まった位置に封入される状態になる。このため、上面防湿シート35と大型基板10の接合した面から水分が浸透する可能性があるが、表示層20が接合端面から離れた位置にあるので、表示層20に到達するには時間がかかる。そのため、表示層20への水分の浸透は抑制され、表示層20の耐湿性は向上する。よって、表示素子45の構成を上記に述べた構成にすることにより、優れた防湿性の効果を得ることができる。
また、上記構成の表示素子45の製造方法は、大型基板10に複数の表示層20を形成し、表示層20の周りに切抜領域30を形成し、そして、上下面に防湿シート35、36を貼り合わせて切抜領域30の所で上下面の防湿シート35、36同士を粘着接合する。そして、上下面の防湿シート35、36同士の粘着接合した部位を一度に切断することによって単個の表示素子を複数個製作する。製造方法が簡単であり、短い工程数で複数の表示素子を一度に製作できるので製造コストは非常に安くなる。
〔第2実施形態の説明〕
次に、第2実施形態に係る表示素子の製造方法を、
図6を用いて説明する。
図6は本発明の第2実施形態に係る表示素子の製造方法を説明する工程図で、
図6(a)は表示層形成領域部の周囲の大型基板に切抜領域を形成する工程図、
図6(b)は大型基板の所定の位置に複数個の表示層を形成する工程図、
図6(c)は表示層の上下を覆う全面に2枚の防湿シートを配設し、切抜領域を通して2枚の防湿シートを互いに接着して接合した工程図、
図6(d)は接合した2枚の防湿シートの部分、及び大型基板の部分を切断してそれぞれ単個の表示素子を形成する工程図を表している。
【0037】
第2実施形態の製造方法で、第1実施形態の製造方法と異なる点は、大型基板に表示層を形成する工程が大型基板に切抜領域を形成する工程より後に行っている点である。つまり、大型基板に切抜領域を設けた後に表示層を形成する工程を有している。
【0038】
具体的には、
図6(a)において、
図1で示した大型基板10の切抜領域形成部10bの所に切抜領域30を形成する。この切抜領域30は、表示層形成領域部10(a)の周囲の一部を残して切り抜くもので、
図2(b)で示した切抜領域30と全く同じ形状をなすものである。なお、切抜領域30を形成する方法は、前述の第1実施形態での方法と同じ方法を取るので、ここでの説明は省略する。
【0039】
次に、
図6(b)において、表示層形成領域部10aの所に表示層20を形成する。表示層20の形成する方法は、前述の第1実施形態での方法と同じ方法を取るので、ここでの説明は省略する。
【0040】
なお、
図6(c)に示された2枚の防湿シートを配設し、切抜領域を通して2枚の防湿シートを互いに接着して接合する工程、並びに、
図6(d)に示された接合した2枚の防湿シートの部分、及び大型基板の部分を切断してそれぞれ単個の表示素子を形成する工程
は、前述の第1実施形態における
図2(c)、
図2(d)に示された工程と同じであるので、その説明は省略する。
【0041】
以上述べたように、第2実施形態の製造方法を取っても、第1実施形態での製造方法と同じ効果を得ることができる。
[第3実施形態の説明]
次に、第3実施形態に係る表示素子の製造方法について、
図7を用いて説明する。なお、
図7は、本発明の第3実施形態に係る表示素子の製造方法で、切抜領域の形状が他の形状をなす平面図を示している。
【0042】
図7に示すように、大型基板10には4つの表示層20を設けている。また、表示層20の周囲に切抜領域30を設けているが、第3実施形態においては、切抜領域30は表示層20の、図中において、右側と左側に分割した状態で設けている。即ち、配線電極パター13が設けられた側の辺に対して、対向する辺の側の一部分に、切抜領域30の無い接続部31を設けていて、この接続部31を挟んで左右に切抜領域30を設けている。
【0043】
切抜領域30をこのように2つに分割すると共に、表示層形成領域部10aと大型基板10との接続した部位をこのように対向した辺上に設けると、第1実施形態の場合に比して、表示層形成領域部10aの動きが安定する。
【0044】
このように、切抜領域30を2つに分割し、表示層形成領域部10aを大型基板10の2か所で保持するような構成を取ることにより、表示層形成領域部10aの動きが規制され、e−inkシートからなる表示層20の貼り付け工程や、上下の防湿シート35、36を貼り付ける工程において、湾曲や折れ曲がりを防止することができ、作業性や歩留まりが向上する。
【0045】
なお、設ける接続部31の幅は容易に切断されない程度の小さい幅にするのが好ましい。なぜなら、接続部31の幅が大きくなると、上下面の防湿シート35、36を貼り付けて、単個に切断した時には、上面防湿シート35と大型基板10との粘着接合部分の幅が大きくなるからである。これは、粘着接合部分の幅が大きくなると、そこからの水分が浸透する可能性が生じ、耐湿性を悪化させる要因となるからである。
【0046】
図7は、大型基板10に表示層20と切抜領域30を設けた平面図であるが、上下面の防湿シート35、36の貼り付け工程や単個への切断工程は前述の第1実施形態での工程と同じであるので、ここでの説明は省略する。
【0047】
なお、第3実施形態においては、接続部31は、配線電極パターン13が設けられた側の辺に対して、対向する辺の側の一部分に一箇所のみ設けたものであるが、一箇所に限定されるものではなく、複数個設けてもよい。
〔第4実施形態の説明〕
次に、第4実施形態に係る表示素子の製造方法について
図8を用いて説明する。
図8は本発明の第4実施形態に係る表示素子の製造方法で、表示層がエレクトロルミネッセンス型表示層の構成を示す要部断面図を示している。
【0048】
第4実施形態に係る表示素子の製造方法においては、表示層をエレクトロルミネッセンス型の表示層(以降、エレクトロルミネッセンス型表示層と呼ぶ)で表示素子を構成している。今まで述べてきた第1実施形態〜第3実施形態においては、マイクロカプセルを用いた電気泳動型表示層で表示層20を構成したので、第4実施形態においては、表示層の構成のみが異なるものである。以降、
図8を用いて表示層の構成について説明することにし、製造方法は第1次実施形態〜第3実施形態の製造方法と同じであるので、製造方法に
係る説明は省略する。
図8において、表示層50は、大型基板10のベースフィルム11上の画素電極12上に設けた誘電体層54と、この誘電体層54上に設けた発光体層53と、この発光体層53上にITO膜からなる共通電極52を設けたPET(ポリエチレンテレフタレート)フィムルなどからなる透明シート51を被覆した構成をなす。なお、共通電極52は大型基板10に設けた配線電極パターン13に接続されるようになっている。
【0049】
ここで、誘電体層54はチタン酸バリウムをシアノレジン化合物などの高誘電樹脂バインダーに分散させたものからなり、スクリーン印刷法などの印刷法によって形成する。また、発光体層53は硫化亜鉛を発光母体として、これに微量の賦活剤(金属やハロゲン元素)をドーピングして得られた発光体粉末をシアノレジン化合物などの高誘電樹脂バインダーに分散させたものからなり、スクリーン印刷法などの印刷法によって形成する。
【0050】
上記の構成をなすエレクトロルミネッセンス型表示層50は、所定の画素電極12と共通電極52に電圧が印加されると、印加された画素電極12と共通電極52とに挟まれた部位の発光体層53が発光し、その発光色でもって表示がなされる。つまり、発光体層53の発光表示をもって表示層50を構成するものである。
【0051】
発光体層53を構成する硫化亜鉛は非常に水分に弱く、硫化亜鉛が水分に侵されると劣化して黒化し、発光しなくなる性質を有する。従って、水分の浸透を抑制する構造が求められる。
【0052】
大型基板10上に形成したエレクトロルミネッセンス型表示層50にあっては、前述の第1実施形態〜第3実施形態と同様に、表示層50の周囲の一部に切抜領域30を形成し、そして、表示層50を形成した大型基板10の上下面に防湿シート35、36を貼り合わせて切抜領域30の所で上下面の防湿シート35、36同士を粘着接合して、表示層50を上下面の防湿シート35、36の内部に完全に封入する構造を取るものである。このような構造を取ることにより、エレクトロルミネッセンス型表示層50には優れた耐湿性が得られると共に、安いコストで製造することができる。