特許第6160208号(P6160208)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6160208
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】ガスバリア性包装材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20170703BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   B32B27/30 A
   B65D65/40 D
【請求項の数】3
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-92890(P2013-92890)
(22)【出願日】2013年4月25日
(65)【公開番号】特開2014-213530(P2014-213530A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】大森 望
(72)【発明者】
【氏名】河口 克己
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5012895(JP,B2)
【文献】 特許第4373797(JP,B2)
【文献】 特開2007−313758(JP,A)
【文献】 特開2002−067237(JP,A)
【文献】 特開2006−341522(JP,A)
【文献】 特開2000−000931(JP,A)
【文献】 有機化合物のスペクトルによる同定法,2000年 4月25日,第6版第2刷,P135-141
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/30
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、少なくとも第1の接着層、第1のバリア層、第1の保護層、第2のバリア層及び第2の保護層が、この順序に積層されたガスバリア性包装材料であって、前記第2のバリア層を分離し、透過法によってバリア層の赤外線吸収スペクトルと測定した際の、1490〜1659cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(α)と1660〜1750cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(β)との比(α/β)が1未満であり、前記第2のバリア層がポリカルボン酸系重合体を含み、前記第2の保護層が酸化亜鉛を含むことを特徴とするガスバリア性包装材料。
【請求項2】
支持体上に、少なくとも第1の接着層、第1のバリア層、第1の保護層、第2の接着層、第2のバリア層及び第2の保護層が、この順序に積層されたガスバリア性包装材料であって、前記第2のバリア層を分離し、透過法によってバリア層の赤外線吸収スペクトルと測定した際の、1490〜1659cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(α)と1660〜1750cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(β)との比(α/β)が1未満であり、前記第2のバリア層がポリカルボン酸系重合体を含み、前記第2の保護層が酸化亜鉛を含むことを特徴とするガスバリア性包装材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガスバリア性包装材料に、レトルト処理、ボイル処理および調湿処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理を施すことにより得られるガスバリア性包装材料であって、ポリカルボン酸系重合体を含む第2のバリア層を分離し、透過法によってバリア層の赤外線吸収スペクトルと測定した際の、1490〜1659cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(α)と1660〜1750cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(β)との比(α/β)が1以上であることを特徴とするガスバリア性包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品等の包装に用いられる包装材料に対しては、内容物の変質を防止することが求められている。例えば、食品用包装材料に対しては、タンパク質や油脂等の酸化や変質を抑制し、更に風味や鮮度を保持できることが求められ、また、無菌状態での取扱が必要とされる医薬品用包装材料に対しては、内容物の有効成分の変質を抑制し、その効能を保持できることが求められている。このような内容物の変質は、主として、包装材料を透過する酸素や水蒸気あるいは内容物と反応するような他のガスにより引き起こされている。そのため、食品や医薬品等の包装に用いられる包装材料に対しては、酸素や水蒸気などのガスを透過させない性質(ガスバリア性)を備えていることが求められている。
【0003】
このような要求に対し、従来、比較的ガスバリア性が高いとされる重合体(ガスバリア性重合体)で構成されるガスバリア性フィルムやこれを基材フィルムとして用いた積層体が用いられている。
従来、ガスバリア性重合体としてポリ(メタ)アクリル酸やポリビニルアルコールに代表される、分子内に親水性の高い高水素結合性基を含有する重合体が用いられてきた。しかしながら、これら重合体からなる包装材料は、乾燥条件下においては、非常に優れた酸素等のガスバリア性を有する一方で、高湿度条件下においては、その親水性に起因して酸素等のガスバリア性が大きく低下するという問題や、該フィルムは湿度や熱水に対する耐性が劣るという問題があった。
【0004】
これらの問題を解決するために、基材上にポリカルボン酸系重合体層と多価金属化合物含有層とを隣接させて積層し、層間反応により、ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩とすることが知られており(例えば、特許文献1〜2)、このようにして得られるガスバリア性包装材料は、高湿度下でも高い酸素ガスバリア性を有することが開示されている。
また、湿度に依存せず、レトルト処理等を必要としないガスバリア性包装材料が知られている(例えば、特許文献3〜5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4373797号公報
【特許文献2】特許第5012895号公報
【特許文献3】特許第4200972号公報
【特許文献4】特許第4205806号公報
【特許文献5】特開2013−018188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜2に記載されているガスバリア性包装材料では、レトルト処理等による層間反応が必要であり、水蒸気バリア性に劣るといった問題点があった。
また、上記特許文献3〜5に記載されているガスバリア性包装材料では、無機化合物の蒸着膜を含み、酸素バリア性および水蒸気バリア性を有するが、上記蒸着膜が割れ易いことに起因し、屈曲、延伸等の虐待やレトルト処理等の高熱高圧処理が行われた場合、両バリア性が低下し易いといった問題点があった。
【0007】
本発明は上記事情を鑑みてされたものであり、レトルト処理等の工程を経ずとも、優れた酸素バリア性および水蒸気バリア性を有するガスバリア性包装材料を提供することを目的とする。また、耐虐待性に優れ、レトルト処理等の高熱高圧処理に耐え、かつ、レトルト処理等の高温高圧処理の後は、極めて酸素ガスバリア性に優れる、ガスバリア性包装材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、支持体上に、少なくとも第1の接着層、第1のバリア層、第1の保護層、第2のバリア層及び第2の保護層が、この順序に積層されたガスバリア性包装材料であって、前記第2のバリア層を分離し、透過法によってバリア層の赤外線吸収スペクトルと測定した際の、1490〜1659cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(α)と1660〜1750cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(β)との比(α/β)が1未満であり、前記第2のバリア層がポリカルボン酸系重合体を含み、前記第2の保護層が酸化亜鉛を含むことを特徴とするガスバリア性包装材料である。
また、本発明は、支持体上に、少なくとも第1の接着層、第1のバリア層、第1の保護層、第2の接着層、第2のバリア層及び第2の保護層が、この順序に積層されたガスバリア性包装材料であって、前記第2のバリア層を分離し、透過法によってバリア層の赤外線吸収スペクトルと測定した際の、1490〜1659cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(α)と1660〜1750cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(β)との比(α/β)が1未満であり、前記第2のバリア層がポリカルボン酸系重合体を含み、前記第2の保護層が酸化亜鉛を含むことを特徴とするガスバリア性包装材料を提供する。
さらに、本発明は上記のガスバリア性包装材料に、レトルト処理、ボイル処理および調湿処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理を施すことにより得られるガスバリア性包装材料であって、ポリカルボン酸系重合体を含む第2のバリア層を分離し、透過法によってバリア層の赤外線吸収スペクトルと測定した際の、1490〜1659cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(α)と1660〜1750cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(β)との比(α/β)が1以上であることを特徴とするガスバリア性包装材料を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レトルト処理等の工程の経ずとも、優れた酸素バリア性および水蒸気バリア性を有するガスバリア性包装材料を提供することができる。また、耐虐待性に優れ、レトルト処理等の高熱高圧処理に耐え、かつ、レトルト処理等の高温高圧処理の後は、極めて酸素ガスバリア性に優れる、ガスバリア性包装材料を提供することができる。
本発明によれば、酸素等の影響により、劣化を受けやすい、食品、飲料、薬品、医薬品、電子部品等の精密金属部品の包装材料を提供することができる。さらに長期にわたり安定したガスバリア性能が必要で、かつボイル、レトルト殺菌等の高温熱水条件下での処理を必要とする物品の包装材料として好適に使用することができるガスバリア性包装材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のガスバリア性包装材料の好ましい実施形態について説明するが、これらの実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために一例として説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0011】
≪第1実施形態≫
本実施形態のガスバリア性包装材料は、支持体上に、少なくとも第1の接着層、第1のバリア層、第1の保護層、第2のバリア層及び第2の保護層が、この順序に積層されたガスバリア性包装材料であって、前記第2のバリア層を分離し、透過法によってバリア層の赤外線吸収スペクトルと測定した際の、1490〜1659cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(α)と1660〜1750cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(β)との比(α/β)が1未満である。
【0012】
[支持体]
支持体の形態としては特に限定されず、例えば、フィルム、シート、ボトル、カップ、トレー、タンク、チューブ等の形態が挙げられる。本実施形態においては、バリア層等を積層させる観点より、フィルムやシートが好ましい。
支持体の厚さは、その用途などによっても異なるが、例えば5μm〜5cmの厚さが挙げられる。フィルムやシートの用途では、5〜800μmが好ましく、10〜500μmがさらに好ましい。
支持体の厚さが上記範囲内であると、各用途での作業性および生産性に優れている。
また、このような支持体の材質としては、例えば、プラスチックス類、紙類、ゴム類が挙げられる。これらの材質の中でも、支持体とバリア層等の観点からプラスチックス類が好ましい。
【0013】
プラスチックス類の材質としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン系重合体やそれらの共重合体、およびそれらの酸変性物;ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリビニルアルコール等の酢酸ビニル系共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリε−カプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバリレート等のポリエステル系重合体やそれらの共重合体;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン6,66共重合体、ナイロン6,12共重合体、メタキシレンアジパミド・ナイロン6共重合体等のポリアミド系重合体やそれらの共重合体;ポリエチレングリコール、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド等のポリエーテル系重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の塩素系およびフッ素系重合体やそれらの共重合体;ポリメチルアクリレート、ボリエチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル等のアクリル系重合体やそれらの共重合体;ポリイミド系重合体やその共重合体;アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、塗料用に用いるエポキシ樹脂等の樹脂;セルロース、澱粉、プルラン、キチン、キトサン、グルコマンナン、アガロース、ゼラチン等の天然高分子化合物やそれらの混合物が挙げられる。
【0014】
また、このような支持体としては、支持体と第1の接着層の接着性の観点から、表面にコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等の表面活性化処理が施された基材用いてもよい。
【0015】
[第1の接着層]
第1の接着層は、イソシアネート基、アミノ基、又はメルカプト基のいずれか1種を有するケイ素化合物(1)又はケイ素化合物(1)の加水分解物と、ヒドロキシル価が5〜200(KOHmg/g)のアクリルポリオールと、イソシアネート化合物との複合物を含む。
第1の接着層の厚さは、均一に塗膜が形成することができれば特に限定しないが、一般的に0.01〜2μmの範囲であることが好ましく、0.05〜0.5μmの範囲であることがより好ましい。
【0016】
厚さが0.01μm以上の場合、均一な塗膜が得られやすく、密着性の観点で優れている。また厚さが2μm以下の場合は塗膜にフレキシビリティを保持させることができ、外的要因により塗膜に亀裂を生じる恐れがない。
【0017】
<ケイ素化合物(1)>
前記ケイ素化合物(1)の例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤あるいはその加水分解物の1種ないしは2種以上を用いることができる。
【0018】
さらにこれらのシランカップリング剤のうち、ポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基を持つものが特に好ましい。例えばγ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランのようなイソシアネート基を含むもの、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランのようなメルカプト基を含むものや、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−フェニルアミノプロピルトリメトキシシランのようなアミノ基を含むものがある。
【0019】
さらにγ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシランやβ−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のようにエポキシ基を含むものや、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等のようなシランカップリング剤にアルコール等を付加し水酸基等を付加したものでも良く、これら1種ないしは2種以上を用いることができる。
【0020】
これらのシランカップリング剤は、一端に存在する有機官能基がポリオールとイソシアネート化合物からなる複合物中で相互作用を示し、もしくはポリオールの水酸基またはイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基を含むシランカップリング剤を用いることで共有結合をもたせることによりさらに強固なプライマー層を形成し、他端のアルコキシ基またはアルコキシ基の加水分解によって生成したシラノール基が無機酸化物中の金属や、無機酸化物の表面の極性の高い水酸基等と強い相互作用により無機酸化物との高い密着性を発現し、目的の物性を得ることができるものである。よって上記プライマー層としてシランカップリング剤を金属アルコキシドとともに加水分解反応させたものを用いても構わない。また上記シランカップリング剤のアルコキシ基がクロロ基、アセトキシ基等になっていても何ら問題はなく、これらのアルコキシ基、クロロ基、アセトキシ基等が加水分解し、シラノール基を形成するものであればこの複合物に用いることができる。
【0021】
<ポリオール>
ポリオールとは高分子末端に、2つ以上のヒドロキシル基をもつもので、後に加えるイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応させるものである。このポリオールとして、アクリル酸誘導体モノマーを重合させて得られるポリオールもしくは、アクリル酸誘導体モノマーおよびその他のモノマーとを共重合させて得られるポリオールであるアクリルポリオールが好ましい。
【0022】
中でもエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートやヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレートなどのアクリル酸誘導体モノマーを重合させたアクリルポリオールや、前記アクリル酸誘導体とスチレン等のその他のモノマーを加え共重合させたアクリルポリオールが好ましく用いられる。
【0023】
またイソシアネート化合物との反応性、シランカップリング剤との相溶性を考慮すると前記アクリルポリオールのヒドロキシル価が5〜200(KOHmg/g)の間であることが好ましい。アクリルポリオールとシランカップリング剤の配合比は、重量比で1/1から1000/1の範囲であることが好ましく、2/1から100/1の範囲にあることがより好ましい。溶解および希釈溶媒としては、溶解および希釈可能であれば特に限定されるものではなく、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトンなどのケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が単独および任意に配合されたものを用いることができる。しかし、シランカップリング剤を加水分解するために塩酸等の水溶液を用いる場合には、共溶媒としてイソプロピルアルコール等のアルコール類と極性溶媒である酢酸エチルを任意に混合した溶媒を用いることが好ましい。
【0024】
<イソシアネート化合物>
イソシアネート化合物は、アクリルポリオールなどのポリオールと反応してできるウレタン結合によりプラスチック基材や無機酸化物との密着性を高めるために添加されるもので主に架橋剤もしくは硬化剤として作用する。前記機能を発揮するイソシアネート化合物の具体例としては、芳香族系のトリレンジイソシアネート(TDI)やジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、脂肪族系のキシリレンジイソシアネート(XDI)やヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などのモノマー類、これらの重合体、もしくは誘導体の1種、またはこれらの2種以上用いることができる。
【0025】
ここで、アクリルポリオールとイソシアネート化合物の配合比は特に制限されるものではないが、イソシアネート化合物が少なすぎると硬化不良になる場合があり、またそれが多すぎるとブロッキング等が発生し加工上問題がある。そこでアクリルポリオールとイソシアネート化合物との配合比としては、イソシアネート化合物由来のNCO基がアクリルポリオール由来のOH基の50倍以下であることが好ましく、特に好ましいのはNCO基とOH基が当量で配合される場合である。混合方法は、周知の方法が使用可能で特に限定しない。
【0026】
<第1の接着層の塗液A>
第1の接着層は、塗液Aから形成される。塗液Aは、イソシアネート基、アミノ基、又はメルカプト基のいずれか1種を有するケイ素化合物(1)又はケイ素化合物(1)の加水分解物と、ヒドロキシル価が5〜200(KOHmg/g)のアクリルポリオールと、イソシアネート化合物との複合物を含む。塗液Aに用いる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の有機溶媒を挙げることができる。また、このような塗工液の固形分濃度としては、塗工適性の観点から、0.5〜50質量%の範囲であることが好ましい。
【0027】
[第1のバリア層]
第1のバリア層は、厚さ5〜300nmの無機酸化物からなる無機酸化物薄膜層で、前記無機酸化物が酸化アルミニウム、酸化ケイ素あるいはそれらの混合物である。第1のバリア層を形成する方法としては種々あり、通常の真空蒸着法により形成することができるが、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法、化学気相成長法などを用いることもできる。
【0028】
真空蒸着法による真空蒸着装置の加熱手段としては電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式が好ましく、蒸着薄膜の密着性及び蒸着薄膜の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いることも可能である。また、蒸着薄膜の透明性を上げるために蒸着の際、酸素ガスなどを吹き込んだりする反応蒸着を行ってもよい。酸化アルミニウムは、アルミニウム(Al)と酸素(O)の存在比が、Al:O=1:1.5〜1:2.0であることが好ましい。
【0029】
例えば酸化アルミニウム蒸着層は、アルミニウムを蒸発材料にして、酸素、炭酸ガスと不活性ガスなどとの混合ガスの存在下で薄膜形成を行う反応性蒸着、反応性スパッタリング、反応性イオンプレーティングにより形成することができる。この時アルミニウムを酸素と反応させれば、化学量論的にはAlであることから、Al:O=1:1.5であると考えられる。しかし蒸着方法によって、一部アルミニウムのまま存在するものや、または過酸化アルミニウムで存在するものもあり、X線光電子分光分析装置(ESCA)等を用いて蒸着層の元素の存在比を測定すると、一概にAl:O=1:1.5とならない場合もある。一般にAl:O=1:1.5より酸素が少なくアルミニウム量が多いものは、級密な膜を形成するために良好なガスバリア性が得られるが、蒸着膜が黒く着色し、光線透過量が低くなる傾向がある。逆にAl:O=1:1.5より酸素が多くアルミニウム量が低いものは、疎な膜を形成し、ガスバリア性は悪いが光線透過量は高く透明なものが得られる。
酸化ケイ素は、特に耐水性が必要とされる場合に好ましい。
【0030】
[第1の保護層]
第1の保護層は、一般式Si(ORで表されるケイ素化合物(2)および/またはその加水分解物、一般式(RSi(ORで表されるケイ素化合物(3)および/またはその加水分解物のうち1つ、および水酸基を有する水溶性高分子を含有することが好ましい。本発明においては、Si(ORをSiOに、RSi(ORをRSi(OH)に換算した場合、RSi(OH)の固形分が全固形分に対し1〜50重量%とすることが好ましく、SiO/水酸基を有する水性高分子が100/100〜100/30の範囲とすることが好ましい。
第1の保護層の厚さは、均一に塗膜が形成することができれば特に限定しないが、一般的に0.01〜2μmの範囲であることが好ましく、0.05〜1.0μmの範囲であることがより好ましい。
【0031】
<Si(OR
一般式Si(OR中、Rは、炭素数1〜5のアルキル基またはアルコキシ基であり、CH,C,COCH等が好ましい。なかでも、テトラエトキシシランが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるため好ましい。
【0032】
<(RSi(OR
一般式(RSi(ORは、その有機官能基(R)が、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、ウレイド基、及びイソシアネート基等の非水性官能基であることが好ましい。
非水官能基は、官能基が疎水性であるため、耐水性はさらに向上する。一般式(RSi(ORで表される化合物が多量体である場合は、三量体が好ましく、一般式(NCO−RSi(OR(式中、Rは(CH、nは1以上)で表される1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートであることがより好ましい。これは、3−イソシアネートアルキルアルコキシシランの縮合体である。1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートは、3−イソシアネートプロピルアルコキシシランの熱縮合により製造されるものもあり、原料の3−イソシアネートプロピルアルコキシシランが含まれる場合もあるが、いずれを用いてもよい。
本発明においては、1,3,5−トリス(3−トリアルコキシシリルプロピル)イソシアヌレートが特に好ましく、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートが最も好ましい。
【0033】
<第1の保護層の塗液C>
第1の保護層は、塗液Cから形成される。塗液Cは、一般式Si(ORで表されるケイ素化合物(2)および/またはその加水分解物、一般式(RSi(ORで表されるケイ素化合物(3)および/またはその加水分解物のうち1つ、および水酸基を有する水溶性高分子を含有する。塗液Cに用いる溶媒としては、一般式Si(ORで表されるケイ素化合物の加水分解反応を行うための水が、通常必要であることを除いては、特に限定が無く、水、水と有機溶媒との混合溶媒等を用いることができる。本発明においては、ポリカルボン酸系重合体の溶解性の点で水が最も好ましい。
【0034】
また、アルコール等の有機溶媒は塗液Cの塗工性を向上する点で好ましい。有機溶媒としては、炭素数1〜5の低級アルコールおよび炭素数3〜5の低級ケトンからなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒等を用いることが好ましい。有機溶媒としては、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
水としては、精製された水が好ましく、例えば蒸留水、イオン交換水などを用いることができる。また、水と有機溶媒との混合溶媒としては、上述した水や有機溶媒を用いた混合溶媒が好ましく、水と炭素数1〜5の低級アルコールとの混合溶媒がより好ましい。
【0035】
[第2のバリア層]
第2のバリア層には、ポリカルボン酸系重合体が含まれていることが好ましい。ポリカルボン酸系重合体とは、分子内に2個以上のカルボキシル基を有する重合体である。このようなポリカルボン酸系重合体としては、たとえば、エチレン性不飽和カルボン酸の(共)重合体;エチレン性不飽和カルボン酸と他のエチレン性不飽和単量体との共重合体;アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン等の分子内にカルボキシル基を有する酸性多糖類が挙げられる。これらのポリカルボン酸系重合体は1種のものを単独で用いても、2種以上のものを混合して用いてもよい。
第2のバリア層の厚さは、均一に塗膜が形成することができれば特に限定しないが、一般的に0.01〜2μmの範囲であることが好ましく、0.05〜1.0μmの範囲であることがより好ましい。
【0036】
また、このようなエチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。さらに、これらのエチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、たとえば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステル類、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類、アルキルイタコネート類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、アクリルアミド、アクリロニトリルが挙げられる。
【0037】
このようなポリカルボン酸系重合体の中でも、得られるガスバリア性積層体のガスバリア性の観点から、ポリカルボン酸系重合体が、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、およびクロトン酸の中から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位を含む重合体、または該重合体の混合物であることが好ましい。また、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、およびイタコン酸の中から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位を含む重合体、または該重合体の混合物であることが特に好ましい。
該重合体は単独重合体を用いても、共重合体を用いてもよい。該重合体において、前記アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、およびイタコン酸の中から選ばれる少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位が80mol%以上であることが好ましく、90mol%以上であることがより好ましい(ただし全構成単位を100mol%とする)。
上記構成単位以外の構成単位が含まれる場合には、その他の構成単位としては、例えば前述のエチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和単量体などが挙げられる。
【0038】
本発明に用いるポリカルボン酸系重合体は、数平均分子量が2,000〜10,000,000の範囲である。数平均分子量が2,000未満では、得られるガスバリア性積層体は充分な耐水性を達成できず、水分によってガスバリア性や透明性が悪化する場合や、白化の発生が起こる場合がある。他方、数平均分子量が10,000,000を超えると、塗工によって第1の接着層を形成する際に、粘度が高くなり塗工性が損なわれる場合がある。さらに、得られるガスバリア性積層体の耐水性の観点から、このようなポリカルボン酸系重合体の数平均分子量は5,000〜1,000,000の範囲である。なお、上記数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた、ポリスチレン換算の数平均分子量である。
本発明に用いるポリカルボン酸系重合体としては、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0039】
また、本発明に用いるポリカルボン酸系重合体は、ポリカルボン酸系重合体の有するカルボキシル基の一部が、予め塩基性化合物で中和されていてもよい。塩基性化合物としては、多価金属化合物、一価金属化合物、およびアンモニアからなる群から選択される少なくとも1種の塩基性化合物が好ましい。
ポリカルボン酸系重合体の有するカルボキシル基の一部を予め中和することにより、第2のバリア層の耐水性を向上させることができる。これにより水系塗液からなる後述する第2の保護層を積層させた際の第2のバリア層の膨張を防ぐことができる。カルボキシル基の中和度としては、第2のバリア層の前駆塗液の安定性の観点から、30mol%以下であることが好ましく、25mol%以下であることがより好ましい。
【0040】
前記第2のバリア層は、下記一般式(1)で表されるシランカップリング剤、その加水分解物、およびこれらの縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のケイ素化合物(4)を含んでいる。
【0041】
【化1】
[式(1)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、Zはグリシジルオキシ基またはアミノ基を含有する有機基であり、Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。]
【0042】
なお、本発明において、「一般式(1)で表されるシランカップリング剤、その加水分解物、およびこれらの縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のケイ素化合物(4)」を単に「ケイ素化合物(4)」とも記す。また、一般式(1)で表されるシランカップリング剤の加水分解物が縮合したものを、加水分解縮合物とも記す。
【0043】
ケイ素化合物(4)は、一般式(1)で表されるシランカップリング剤自体であってもよく、該化合物が、加水分解した加水分解物でもよく、これらの縮合物であってもよい。ケイ素化合物(4)としては、例えばゾルゲル法を用いて、一般式(1)で表されるシランカップリング剤の加水分解および縮合反応を行ったものを用いることができる。
なお、通常一般式(1)で表されるシランカップリング剤は、加水分解が容易におこり、また、酸、アルカリ存在下では容易に縮合反応がおこるため、一般式(1)で表されるシランカップリング剤のみ、その加水分解物のみ、またはこれらの縮合物のみで存在することは稀である。すなわちケイ素化合物(4)は、通常一般式(1)で表されるシランカップリング剤、その加水分解物、およびこれらの縮合物が混在している。また、加水分解物には、部分加水分解物、完全加水分解物が含まれる。
【0044】
ケイ素化合物(4)としては、少なくとも加水分解縮合物を含むことが好ましい。加水分解縮合物を製造する際の方法としては、一般式(1)で表されるシランカップリング剤を、上述のポリカルボン酸系重合体および水を含む液に直接混合してもよく、シランカップリング剤に水を加えることによって、加水分解およびそれに続く縮合反応を行い、ポリカルボン酸系重合体と混合する前に、加水分解縮合物を得てもよい。
【0045】
一般式(1)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられ、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。シランカップリング剤としては、一種で用いても、二種以上で用いてもよい。
本実施形態の第2のバリア層は前記ケイ素化合物(4)を含むが、本実施形態の第2のバリア層は、ケイ素化合物(4)の使用量が少量でも優れた効果を発揮するため、コストの観点から前記ケイ素化合物(4)を少量含むことが好ましい。
前記ケイ素化合物(4)として、加水分解縮合物を含む場合には、一般式(1)で表されるシランカップリング剤の有するアルコキシ基(OR)の少なくとも一部が、水酸基に置換され加水分解物となり、さらに該加水分解物が縮合することによって、ケイ素原子(Si)が酸素を介して結合した化合物が形成される。この縮合が繰り返されることにより、加水分解縮合物が得る。
【0046】
第2のバリア層に含まれる前記ケイ素化合物(4)の量は、ポリカルボン酸系重合体の重量とケイ素化合物(4)の重量との比(ポリカルボン酸系重合体:ケイ素化合物(4))が99.5:0.5〜80.0:20.0であることが好ましい。ただし、一般式(1)で表されるシランカップリング剤以外のケイ素化合物(4)の重量は、一般式(1)で表されるシランカップリング剤換算の重量である。つまり、ケイ素化合物(4)は、一般式(1)で表されるシランカップリング剤、その加水分解物、およびこれらの縮合物が混在するが、本実施形態においてケイ素化合物(4)の重量は、一般式(1)で表されるシランカップリング剤に換算した値、すなわち一般式(1)で表されるシランカップリング剤の仕込み量である。
【0047】
なお、一般式(1)で表されるシランカップリング剤として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランや、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを用いる場合には、ポリカルボン酸系重合体の重量とケイ素化合物(4)の重量との比が、99.5:0.5〜90:10であることが好ましく、99:1〜95:5であることが特に好ましい。また、一般式(1)で表されるシランカップリング剤として、γ−アミノプロピルトリメトキシシランや、γ−アミノプロピルトリエトキシシランを用いる場合には、ポリカルボン酸系重合体の重量とケイ素化合物(4)の重量との比が、99:1〜80:20であることが好ましく、95:5〜80:20であることが特に好ましい。
【0048】
上記範囲では、バリア性を損なうことなく、第2のバリア層上に、水系塗液からなる第2の保護層を積層させた際の第2のバリア層の膨張を防ぐことができる。
また、本実施形態の第2のバリア層は、上記範囲でケイ素化合物(4)を含有させることができるため、相分離のない均一な層とすることができると考えられる。さらに、ケイ素化合物(4)を含有させることができるため、本実施形態の第2のバリア層は、酸に対する耐性を有すると考えられる。
【0049】
<亜鉛化合物>
本実施形態において、第2のバリア層は亜鉛化合物を含有することができる。
ポリカルボン酸系重合体の有するカルボキシル基の一部を予め亜鉛で中和することにより、第2のバリア層の耐水性を向上させることができる。これにより、後述する水系塗液からなる第2の保護層を積層させた際の第2のバリア層の膨張を防ぐことができる。カルボキシル基の中和度としては、第2のバリア層の塗液Eの安定性の観点から、30mol%以下であることが好ましく、25mol%以下であることがより好ましい。
【0050】
亜鉛化合物としては、例えば亜鉛の単体、酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩(例えば、酢酸塩)、または無機酸塩や、アンモニウム錯体または2〜4級アミン錯体、あるいはそれらの炭酸塩または有機酸塩が挙げられる。
これらの亜鉛化合物の中でも、工業的生産性の観点から、酸化亜鉛、酢酸亜鉛がより好ましく、酸化亜鉛を用いることが特に好ましい。
【0051】
<添加剤>
第2のバリア層には、各種の添加剤が含まれていてもよい。
添加剤としては可塑剤、樹脂、分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、アンチブロッキング剤、膜形成剤、粘着剤、酸素吸収剤等が挙げられる。
例えば可塑剤としては、公知の可塑剤から適宜選択して使用することが可能である。該可塑剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンオキサイド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、エリトリトール、グリセリン、乳酸、脂肪酸、澱粉、フタル酸エステルなどを例示することができる。これらは必要に応じて、混合物で用いてもよい。
【0052】
またこれらの中でも、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、グリセリン、澱粉が、延伸性とガスバリア性の観点から好ましい。
このような可塑剤が含まれる場合には、第2のバリア層の延伸性が向上するため、第2のバリア層の耐虐待性をさらに向上させることができる。
第2のバリア層に添加剤が含まれている場合には、ポリカルボン酸系重合体の重量と添加剤の重量との比(ポリカルボン酸系重合体:添加剤)は通常は70:30〜99.9:0.1の範囲であり、80:20〜98:2であることが好ましい。
【0053】
<第2のバリア層の塗液E>
第2のバリア層は、塗液Eから形成される。塗液Eは、上述のポリカルボン酸系重合体と、一般式(1)で表されるシランカップリング剤、その加水分解物、およびこれらの縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のケイ素化合物(4)とから形成されるコーティング液であり、必要に応じて上述した添加剤を含んでいてもよい。
塗液Eに用いる溶媒としては、特に限定が無く、水、水と有機溶媒との混合溶媒等を用いることができ、ポリカルボン酸系重合体の溶解性の点で水が最も好ましい。アルコール等の有機溶媒は一般式(1)で表されるシランカップリング剤の溶解性、塗液Eの塗工性を向上する点で好ましい。
【0054】
有機溶媒としては、炭素数1〜5の低級アルコールおよび炭素数3〜5の低級ケトンからなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒等を用いることが好ましい。
有機溶媒としては、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。水としては、精製された水が好ましく、例えば蒸留水、イオン交換水などを用いることができる。
また、水と有機溶媒との混合溶媒としては、上述した水や有機溶媒を用いた混合溶媒が好ましく、水と炭素数1〜5の低級アルコールとの混合溶媒がより好ましい。
なお、混合溶媒としては、通常は水が20〜95重量%の量で存在し、該有機溶媒が80〜5重量%の量で存在する(ただし、水と有機溶媒との合計を100重量%とする)。
【0055】
[第2の保護層]
<酸化亜鉛>
第2の保護層は酸化亜鉛を含んでいる。上記酸化亜鉛は、バリア性および密着性の観点より、第2の保護層の重量に対し、40〜90重量%であることが好ましい。また、上記酸化亜鉛粒子の平均粒子径は特に限定されないが、バリア性、コーティング適性の観点から、平均粒子径が5μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることが特に好ましい。
【0056】
<ポリウレタン樹脂>
第2の保護層はポリウレタン樹脂またはポリエステル樹脂を含んでいることが好ましい。上記ポリウレタン樹脂は、特に限定されないが、密着性の観点から、ポリウレタンポリオールからなる樹脂とジイソシアネートからなる硬化剤を反応させた樹脂である事が好ましい。
また、第2の保護層は酸化亜鉛の分散性の観点から、分散剤を含むことが好ましい。分散剤は、酸化亜鉛の重量に対し、2〜20重量%である事が好ましく、分散剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0057】
<ポリエステル樹脂>
上記ポリエステル樹脂は、特に限定されないが、密着性の観点から、ポリエステルポリオールからなる樹脂とジイソシアネートからなる硬化剤を反応させた樹脂である事が好ましい。
また、第2の保護層は酸化亜鉛の分散性の観点から、分散剤としてポリカルボン酸ナトリウムを含む。ポリカルボン酸ナトリウムは、酸化亜鉛の重量に対し、2〜20重量%である事が好ましい。
【0058】
<第2の保護層の塗液F>
第2の保護層は、塗液Fから形成される。塗液Fは、ポリウレタン樹脂またはポリエステル樹脂、酸化亜鉛および分散剤を含んでいる。
塗液Fに用いる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の有機溶媒を挙げることができる。
また、このような塗工液の固形分濃度としては、塗工適性の観点から、1〜50質量%の範囲であることが好ましく、2〜30質量%の範囲であることがより好ましい。
【0059】
本実施形態のガスバリア性包装材料は、第2のバリア層を分離し、透過法により測定される赤外線吸収スペクトルにおける1490〜1659cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(α)と、1660〜1750cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(β)との比(α/β)が1未満である。
該赤外線吸収スペクトルは、例えば以下の方法により測定することができる。
まず、第2のバリア層を分離する。分離方法としては、例えば、第2のバリア層を直接、第2の保護層から剥離する方法が挙げられる。
次に、分離した第2のバリア層について、Perkin−Elmer社製FT−JR1710を用いて、透過法によって赤外線吸収スペクトルを測定する。このようにして得られた赤外線吸収スペクトルにおいて、1490〜1659cm−1の範囲内に出現するピークの中の最大ピーク高さ(α)と、1660〜1750cm−1の範囲内に出現するピークの最大ピーク高さ(β)との比(α/β)を算出する。
【0060】
本実施形態に用いるポリカルボン酸系重合体がイオン架橋を形成すると、1560cm−1付近にカルボキシル基の塩(−COO−)のC=O伸縮振動に由来する吸収極大を示し、1490〜1659cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(α)はイオン架橋がどの程度形成されているかの尺度となる。
一方、イオン架橋を形成する前のカルボキシル基は、1720cm−1付近にカルボキシル基(−COOH)のC=O伸縮振動に由来する吸収極大を示し、1660〜1750cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(β)は、イオン架橋を形成していないカルボキシル基の存在量の尺度となる。
本実施形態の第2のバリア層は、このIRピークの比(α/β)が1未満である。赤外線吸収スペクトルピークの比(α/β)が1未満であれば、第2のバリア層中のポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基の多くは、イオン架橋を形成しておらず、柔軟性がある。この状態では延伸等の虐待が加えられても、第2のバリア層に欠陥が生じることはない。
【0061】
≪第2実施形態≫
本実施形態のガスバリア性包装材料は、支持体上に、少なくとも第1の接着層、第1のバリア層、第1の保護層、第2の接着層、第2のバリア層及び第2の保護層が、この順序に積層されたガスバリア性包装材料であって、前記第2のバリア層を分離し、透過法によってバリア層の赤外線吸収スペクトルと測定した際の、1490〜1659cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(α)と1660〜1750cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(β)との比(α/β)が1未満である。
【0062】
支持体、第1の接着層、第1のバリア層、第1の保護層、第2のバリア層、第2の保護層に関する説明は第1実施形態と同様である。その説明を省略する。
【0063】
[第2の接着層]
第2の接着層における樹脂としてはポリウレタン樹脂やポリエステル樹脂が好ましく、特に、ウレタン樹脂が好ましい。ウレタン樹脂を構成するポリオールとしては、ポリエステル系ポリオールが好ましく、ポリエステル系ポリオールとしては、例えば多価カルボン酸などと、グリコール類とを反応させて得られるポリエステル系ポリオールが挙げられる。
またウレタン樹脂を構成するポリイソシアネートとしては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが挙げられる。
【0064】
第2の接着層の厚みは、密着性と外観の観点から0.01〜1μmであることが好ましく、0.05〜1μmであることがより好ましい。
また、第2の接着層は、カルボジイミド基含有樹脂を含ませることができる。カルボジイミド基含有樹脂を第2の接着層に含むと密着性が向上するため好ましい。
【0065】
<第2の接着層の塗液D>
第2の接着層は、塗液Dから形成される。塗液Dは、ポリウレタン樹脂および/またはポリエステル樹脂を含んでいる。
塗液Dに用いる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の有機溶媒を挙げることができる。
また、このような塗工液の固形分濃度としては、塗工適性の観点から、0.5〜50質量%の範囲であることが好ましい。
【0066】
≪第3実施形態≫
本実施形態のガスバリア性包装材料は、上述した第1実施形態又は第2実施形態のガスバリア性包装材料を、レトルト処理、ボイル処理および調湿処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理を施すことにより得られるガスバリア性包装材料であって、バリア層を分離し、透過法によってバリア層の赤外線吸収スペクトルと測定した際の、1490〜1659cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(α)と1660〜1750cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(β)との比(α/β)が1以上である。
【0067】
[レトルト処理、ボイル処理および調湿処理]
本実施形態のガスバリア性包装材料は、上記ガスバリア性包装材料に、レトルト処理、ボイル処理および調湿処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理を施す。
レトルト処理とは、一般に食品等を保存するために、カビ、酵母、細菌などの微生物を加圧殺菌する方法である。レトルト処理としては、食品を包装したガスバリア性包装材料を、105〜140℃、0.15〜0.3MPaで、10〜120分の条件で加圧殺菌処理する方法が挙げられる。
レトルト装置は、加熱蒸気を利用する蒸気式と加圧過熱水を利用する熱水式等があり、内容物となる食品等の殺菌条件に応じて適宜使い分ける。
【0068】
ボイル処理は、食品等を保存するため湿熱で殺菌する方法である。ボイル処理としては、内容物にもよるが、食品等を包装したガスバリア性包装材料を60〜100℃、大気圧下で、10〜120分の条件で殺菌処理を行う方法が挙げられる。
ボイル処理は、熱水槽を用いて行うことが、一定温度の熱水槽の中に浸漬し、一定時間後に取り出すバッチ式と、熱水槽の中をトンネル式に通して殺菌する連続式がある。
【0069】
調湿処理とは、通常はガスバリア性包装材料を、10〜99℃、大気圧下、相対湿度20〜99%の雰囲気下に置くことである。調湿時間は、温度と湿度によってその最適な範囲が異なり、低温低湿度であるほど長時間の調湿を必要とし、高温高湿度であるほど短時間で処理を終えることができる。例えば、20℃で相対湿度80%の条件下では10時間以上、40℃で相対湿度90%の条件下では3時間以上、60℃で相対湿度90%の条件下では30分以上調湿処理を行えば、充分なガスバリア性を有する積層体とすることができる。また、ガスバリア性包装材料に接着剤を介して他の基材をラミネートした場合は、ラミネートしていない場合に比べて充分なガスバリア性を発現するために必要な調湿時間は長くなる。
【0070】
本実施形態のガスバリア性包装材料は、第2のバリア層を分離し、透過法により測定される赤外線吸収スペクトルにおける1490〜1659cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(α)と、1660〜1750cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(β)との比(α/β)が1以上である。
該赤外線吸収スペクトルは、例えば以下の方法により測定することができる。
まず、第2のバリア層を分離する。分離方法としては、例えば、第2のバリア層を直接、第2の保護層から剥離する方法が挙げられる。
次に、分離した第2のバリア層について、Perkin−Elmer社製FT−JR1710を用いて、透過法によって赤外線吸収スペクトルを測定する。このようにして得られた赤外線吸収スペクトルにおいて、1490〜1659cm−1の範囲内に出現するピークの中の最大ピーク高さ(α)と、1660〜1750cm−1の範囲内に出現するピークの最大ピーク高さ(β)との比(α/β)を算出する。
【0071】
本実施形態に用いるポリカルボン酸系重合体がイオン架橋を形成すると、1560cm−1付近にカルボキシル基の塩(−COO−)のC=O伸縮振動に由来する吸収極大を示し、1490〜1659cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(α)はイオン架橋がどの程度形成されているかの尺度となる。
一方、イオン架橋を形成する前のカルボキシル基は、1720cm−1付近にカルボキシル基(−COOH)のC=O伸縮振動に由来する吸収極大を示し、1660〜1750cm−1の範囲内の最大ピーク高さ(β)は、イオン架橋を形成していないカルボキシル基の存在量の尺度となる。
本実施形態の第2のバリア層は、このIRピークの比(α/β)が1以上である。赤外線吸収スペクトルピークの比(α/β)が1以上であれば、第2のバリア層中のポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基の多くは、多価金属イオンとのイオン架橋を形成していることを示す。イオン架橋が形成されれば、充分な酸素ガスバリア性を得ることができる。
【0072】
本実施形態のガスバリア性包装材料は、レトルト処理等をしない場合には、前記比(α/β)が1未満であるため、柔軟性を有する。またレトルト処理等をした後は、前記比(α/β)が1以上であるため、ポリカルボン酸系重合体(A1)のカルボキシ基の多くが多価金属イオンとのイオン架橋を形成し、十分な酸素バリア性を得ることができる。
【0073】
本実施形態によれば、レトルト処理等の工程の経ずとも、優れた酸素バリア性および水蒸気バリア性を有するガスバリア性包装材料を提供することができる。また、耐虐待性に優れ、レトルト処理等の高熱高圧処理に耐え、かつ、レトルト処理等の高温高圧処理の後は、極めて酸素ガスバリア性に優れる。
その理由としては、支持体上に、第1の接着層、第1のバリア層、第1の保護層が積層されているため、レトルト処理等の工程の経ない場合でも、第1のバリア層に起因する優れた酸素バリア性および水蒸気バリア性を有することができるためと考えられる。
また、第1のバリア層は有機物質に比較して割れやすく、物理的負荷により割れを生じ、酸素バリア性および水蒸気バリア性を低下させることがある。
しかし本実施形態においては、第2のバリア層、第2の保護層が積層されていることにより、レトルト処理前は柔軟性に富んだガスバリア性包装材料とすることができ、屈曲や引張等の物理的負荷を受けても第2のバリア層と第2の保護層の物性を維持でき、優れた耐虐待性を有すると考えられる。
さらに、レトルト処理等の高温高圧処理の後は、第2のバリア層と第2の保護層に起因する酸素バリア性が発現するため、極めて酸素ガスバリア性に優れると推察される。
【0074】
<コーティング>
第1の接着層、第1の保護層、第2の接着層、第2のバリア層および第2の保護層の塗液A、塗液C、塗液D、塗液Eおよび塗液Fの塗工方法としては、特に限定されず、例えばキャスト法、ディッピング法、ロールコーティング法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、リバースコート法、スプレーコート法、キットコート法、ダイコート法、メタリングバーコート法、チャンバードクター併用コート法、カーテンコート法等が挙げられる。また、塗工、乾燥は連続的に行われるが、例えば塗液Cの乾燥と塗液Dの塗工は連続的であっても、巻取り工程や養生工程を経ても良い。
【0075】
<乾燥>
塗液A、塗液C、塗液D、塗液Eおよび塗液Fは、それぞれ、塗工後に、乾燥により溶媒を除去することによって、それぞれ第1の接着層、第1の保護層、第2の接着層、第2のバリア層および第2の保護層を形成する。乾燥の方法としては特に限定は無く、例えば熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法等の方法が挙げられ、該方法は単独または組み合わせて行ってもよい。乾燥温度としては特に限定は無いが、溶媒として上述した水や、水と有機溶媒との混合溶媒を用いる場合には通常は50〜160℃が好ましい。また乾燥の際の圧力は通常は常圧または減圧下で行うことが好ましく、設備の簡便性の観点から常圧で行うことが好ましい。
【0076】
<酸素透過度の範囲>
本実施形態のガスバリア性包装材料は、温度30℃、相対湿度70%における酸素透過度が通常は300cm(STP)/m・day・MPa以下であることが好ましく、200cm(STP)/m・day・MPa以下であることがより好ましく、100cm(STP)/m・day・MPa以下であることが特に好ましく、10cm(STP)/m・day・MPa以下であることが最も好ましい。また、本実施形態のガスバリア性包装材料は、前記のレトルト処理、ボイル処理および調湿処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理を施す以前の時点で、延伸や屈曲等の応力がかかり、虐待が加えられた場合においても、前記のレトルト処理、ボイル処理および調湿処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理を施すことによって、充分なガスバリア性を有する。虐待を加えられた後に前記のレトルト処理、ボイル処理および調湿処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理を施した場合の、温度30℃、相対湿度70%における酸素透過度が通常は300cm(STP)/m・day・MPa以下であることが好ましく、200cm(STP)/m・day・MPa以下であることがより好ましく、100cm(STP)/m・day・MPa以下あることが特に好ましく、30cm(STP)/m・day・MPa以下であることが最も好ましい。
【0077】
<水蒸気透過度の範囲>
本実施形態のガスバリア性包装材料は、温度40℃、相対湿度90%における水蒸気透過度が通常は50g/m−day以下であることが好ましく、20g/m−day以下であることがより好ましく、10g/m−day以下であることが特に好ましく、5g/m−day以下であることが最も好ましい。
【0078】
<応用(ラミネーション)>
本実施形態のガスバリア性包装材料は強度付与、シール性やシール時の易開封性付与、意匠性付与、光遮断性付与等の目的で、ガスバリア性包装材料に、さらに他の基材が積層されていてもよい。また、ガスバリア性包装材料に他の基材を積層した後に、レトルト処理、ボイル処理および調湿処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理を施してもよい。他の基材としては目的に応じて適宜選択されるが、通常はプラスチックフィルム類や紙類が好ましい。また、このようなプラスチックフィルムや紙は、1種のものを単独で用いても、2種以上のものを積層しても、プラスチックフィルムと紙を積層して用いてもよい。基材の形態としては特に限定されず、例えば、フィルム、シート、ボトル、カップ、トレー、タンク、チューブ等の形態が挙げられ、ガスバリア性包装材料を積層させる観点より、フィルムやシートが好ましく、また、カップ成型前のシートや、扁平にしたチューブも好ましい。積層方法としては、接着剤を用いてラミネート法により積層する方法が挙げられる。具体的なラミネート法としては、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、押出しラミネート法が挙げられる。これら他の基材の積層態様は特に限定されないが、製品としての取扱性の観点から、例えば、
ガスバリア性包装材料/ポリオレフィン
ガスバリア性包装材料/ポリオレフィン(チューブ状)/ガスバリア性包装材料
ガスバリア性包装材料/ナイロン/ポリオレフィン
ガスバリア性包装材料/ポリオレフィン/紙/ポリオレフィン
ポリオレフィン/ガスバリア性包装材料/ポリオレフィン
ポリオレフィン/ガスバリア性包装材料/ナイロン/ポリオレフィン
ポリエチレンテレフタレート/ガスバリア性包装材料/ナイロン/ポリオレフィン
等が挙げられる。また、これらを繰り返し積層させることもできる。各積層体は意匠性付与、光遮断性付与、防湿性付与等の観点より、印刷層や金属やケイ素化合物の蒸着層が積層されていても良い。ガスバリア性包装材料における積層面は、バリア性の観点より、最外層に配置されていないことが好ましい。最外層に配置されると、バリア層等が削られ、バリア性が低下する要因となる。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0080】
<評価方法説明>
<ラミネーション>
得られたバリア性包装材料は、接着剤を用い、HIRANO TECSEED製マルチコーターTM−MCにて、Ny(延伸ナイロンフィルム)およびCPP(ポリプロピレンフィルム)と順次貼り合わせ、バリア性包装材料/接着剤/Ny/接着剤/CPPとした。バリア性包装材料における積層面は接着剤と接するように配置した。接着剤は三井化学ポリウレタン製2液硬化型接着剤、タケラックA620(主剤)/タケネートA65(硬化剤)を使用し、Nyはユニチカ製延伸ナイロンフィルム、エンブレムONMB(15μm)、CPPは東レフィルム加工製ポリプロピレンフィルム、トレファンZK93KM(60μm)を使用した。得られたラミネートフィルムは貼り合わせ後、40℃にて3日間養生した。
【0081】
<屈曲による虐待試験>
得られたラミネートフィルムに、テスター産業製ゲルボフレックステスターにて、50回の屈曲を与えた。
<製袋および水充填>
得られたラミネートフィルムまたは、屈曲後のラミネートフィルムのCPPどうしを、インパルスシーラーで貼り合わせることにより100mm×140mmの三方パウチを作製し、水100gを充填した。
<レトルト処理>
得られたパウチはレトルト処理(日阪製作所(株)製貯湯式レトルト釜:RCS−60/10TG、処理温度120℃、処理時間30分、処理槽圧力2kg)を実施し、その後、水蒸気透過度・酸素透過度を測定した。
<酸素ガス透過度の測定>
包装材料の酸素透過度は、Modern Control社製酸素透過試験器OXTRANTM2/20を用いて、温度30℃、相対湿度70%の条件下で測定した。測定方法は、ASTM F1927−98(2004)に準拠し、測定値は、単位cm(STP)/(m−day−MPa)で表記した。ここで(STP)は酸素の体積を規定するための標準条件(0℃、1気圧)を意味する。
<水蒸気透過度の測定>
包装材料の水蒸気透過度は、Modern Control社製のPERMATRAN−W 3/31を用いて、温度40℃、相対湿度90%における透湿度を測定した(ASTM F1249−01)。測定値は、単位g/(m−day)で表記した。
【0082】
塗液A1:以下の手順で調製した。
ポリオール、Si剤、硬化剤および酢酸エチルを下表1の配合で混合し、塗液A1を作製した。
ポリオールは、三菱レイヨン製ダイヤナールLR209(アクリルポリオール)、
Si剤は、信越シリコーン製KBE9007(3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン)、
硬化剤は、三井化学ポリウレタン製タケネートA56(IPDI・XDI)、
酢酸エチルは、東京化成工業製酢酸エチルを用いた。
【0083】
【表1】
【0084】
塗液C1:以下の手順で調製した。
PVA、Si剤(1)、Si剤(2)、塩化水素、メタノールおよび2プロパノールを下表2の配合で混合し、塗液C1を作製した。
PVAは、日本酢ビポバール製JF−05(鹸化度100%PVA)、
Si剤(1)は、東京化成工業製TEOS(TEOS)、
Si剤(2)は、信越シリコーン製X−12−965(トリス−(3− トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート)、
塩化水素(1N)は、東京化成工業製塩化水素、
メタノールは、東京化成工業製メタノール、
2−プロパノールは、東京化成工業製2プロパノールを用いた。
【0085】
【表2】
【0086】
塗液D1:以下の手順で調製した。
ポリウレタン樹脂、ジイソシアネートおよび酢酸エチルを下表3の配合で混合し、塗液D1を作製した。
ポリウレタン樹脂は、三井化学ポリウレタン製タケラックA525(ポリウレタン)、
ジイソシアネートは、三井化学ポリウレタン製タケネートA52(ジイソシアネート)、
酢酸エチルは、東京化成工業製酢酸エチルを用いた。
【0087】
【表3】
【0088】
塗液E1:以下の手順で調製した。
ポリカルボン酸、Si剤、蒸留水および2−プロパノールを下表4の配合で混合し、塗液E1を作製した。
ポリカルボン酸は、東亞合成製アロンA10‐H(ポリアクリル酸)、
Si剤は、信越シリコーン製KBM403(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、
2−プロパノールは、東京化成工業製2−プロパノールを用いた。
【0089】
【表4】
【0090】
塗液E2:以下の手順で調製した。
ポリカルボン酸、酸化亜鉛、Si剤および蒸留水を下表5の配合で混合し、塗液E2を作製した。
ポリカルボン酸は、東亞合成製アロンA10‐H(ポリアクリル酸)、
酸化亜鉛は、東京化成工業製酸化亜鉛を用いた。
Si剤は、信越シリコーン製KBM403(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、
2−プロパノールは、東京化成工業製2−プロパノールを用いた。
【0091】
【表5】
【0092】
塗液F1:以下の手順で調製した。
酸化亜鉛分散液、樹脂、硬化剤および酢酸エチルを下表6の配合で混合し、塗液F1を作製した。
酸化亜鉛分散液は、住友大阪セメント製ZS303EA(酸化亜鉛分散液)、
樹脂は、三井化学ポリウレタン製タケラックA525(ポリウレタン)、
硬化剤は三井化学ポリウレタン製タケネートA52(ジイソシアネート)、
酢酸エチルは、東京化成工業製酢酸エチル(酢酸エチル)を用いた。
【0093】
【表6】
【0094】
塗液F2:以下の手順で調製した。
まず、酸化亜鉛、ポリアクリル酸ナトリウムおよび水を下表7の配合で混合し、塗液F2−Aを作製した。
酸化亜鉛は、堺化学工業製FINEX50(酸化亜鉛超微粒子)、
ポリアクリル酸ナトリウムは、東亞合成製アロンT−50(ポリアクリル酸ナトリウム)、を用い、攪拌にはプライミクス製T.Kフィルミックス(高速攪拌機)を使用した。
【0095】
【表7】
【0096】
得られたF2−A、ポリエステル樹脂、イソシアネート化合物、2−プロパノールおよび水を下表8の配合で混合し、塗液F2を作製した。
ポリエステル樹脂は、ユニチカ製エリーテルKT−8803、
イソシアネート化合物は、Henkel製Liofol Hardener UR5889−21、
2−プロパノールは、東京化成工業製2−プロパノールを用いた。
【0097】
【表8】
【0098】
以下、実施例および比較例を示す。なお、特別の記述がない限り、得られたガスバリア性包装材料は、前述の<評価方法説明>(<ラミネーション>〜<水蒸気透過度の測定>)に従って加工し、評価を行った。
【0099】
[実施例1]
延伸PETフィルムを基材とし、上記塗液A1を乾燥後の厚さが0.2μmになるように、バーコーターを用いて塗布、乾燥させ、支持体/第1の接着層を得た。延伸PETフィルムは、東レ製ポリエチレンテレフタレートフィルム、ルミラーP60(12μm)を使用した。
この支持体/第1の接着層の第1の接着層上に電子線加熱方式による真空蒸着装置により、金属アルミニウムを蒸発させそこに酸素ガスを導入し、酸化アルミニウムを蒸着して厚さ20nmの無機蒸着層を形成させることによって、支持体/第1の接着層/第1のバリア層を得た。
このようにして得られた支持体/第1の接着層/第1のバリア層の第1のバリア層上に上記塗液C1、D1、E1、F1を乾燥後の厚さがそれぞれ0.2、0.2、0.3、0.3μmになるようにバーコートを用いて順次、塗布、乾燥させ、支持体/第1の接着層/第1のバリア層/第1の保護層/第2の接着層/第2のバリア層/第2の保護層を得た。
【0100】
[実施例2]
[実施例1]に記載のC1〜F1の塗布、乾燥をグラビア10色テスト機(富士機械工業製)により行った。
【0101】
[実施例3]
[実施例1]に記載の支持体/第1の接着層/第1のバリア層の第1のバリア層上に上記塗液C1、E1、F1を乾燥後の厚さがそれぞれ0.2、0.3、0.3μmになるようにバーコートを用いて順次、塗布、乾燥させ、支持体/第1の接着層/第1のバリア層/第1の保護層/第2のバリア層/第2の保護層を得た。
【0102】
[実施例4]
[実施例1]に記載の支持体/第1の接着層/第1のバリア層/第1の保護層/第2の接着層の第2の接着層上に上記塗液E2、F2を乾燥後の厚さがそれぞれ0.3、0.3μmになるようにバーコートを用いて順次、塗布、乾燥させ、支持体/第1の接着層/第1のバリア層/第1の保護層/第2の接着層/第2のバリア層/第2の保護層を得た。
【0103】
[実施例5]
[実施例3]に記載の支持体/第1の接着層/第1のバリア層/第1の保護層の第1の保護層上に上記塗液E2、F2を乾燥後の厚さがそれぞれ0.3、0.3μmになるようにバーコートを用いて順次、塗布、乾燥させ、支持体/第1の接着層/第1のバリア層/第1の保護層/第2のバリア層/第2の保護層を得た。
【0104】
[実施例6]
延伸PETフィルムを基材とし、上記塗液A1を乾燥後の厚さが0.2μmになるように、バーコーターを用いて塗布、乾燥させ、支持体/第1の接着層を得た。延伸PETフィルムは、東レ製ポリエチレンテレフタレートフィルム、ルミラーP60(12μm)を使用した。
この支持体/第1の接着層の第1の接着層上に、電子線加熱方式による真空蒸着装置により、酸化ケイ素からなる膜厚30nmの蒸着層を形成させることによって、支持体/第1の接着層/第1のバリア層を得た。
このようにして得られた支持体/第1の接着層/第1のバリア層の第1のバリア層上に上記塗液C1、D1、E1、F1を乾燥後の厚さがそれぞれ0.2、0.2、0.3、0.3μmになるようにバーコートを用いて順次、塗布、乾燥させ、支持体/第1の接着層/第1のバリア層/第1の保護層/第2の接着層/第2のバリア層/第2の保護層を得た。
【0105】
[実施例7]
ラミネート構成を<ラミネーション>に記載のNyおよびCPPに変えて、扁平なチューブを用い、ガスバリア性包装材料/ポリオレフィン(チューブ状)/ガスバリア性包装材料を得た。また、レトルト処理を<レトルト処理>に記載のレトルト処理に変えて、40℃相対湿度90%の条件下で1日の調湿処理を実施した以外は[実施例1]に記載と同様にした。酸素透過度測定および水蒸気透過度測定は、得られたガスバリア性包装材料/ポリオレフィン(チューブ状)/ガスバリア性包装材料を切り開くことにより得られた、ガスバリア性包装材料/ポリオレフィンに対して行った。
【0106】
扁平なチューブは、以下のように成型した。LDPE樹脂を二軸押出機にて吐出させチューブ状に成型した。得られたチューブを水浴にて冷却固化させた後、巻き取ることで扁平なチューブを得た。LDPEは日本ポリケム製ノバテックLD LF420M、二軸押出機は東芝機械製TEM−26SS(スクリュー直径:26mm、L/D=60)を使用した。
【0107】
[比較例1]
延伸PETフィルムを基材とし、上記塗液D1、E1、F1を乾燥後の厚さがそれぞれ0.2、0.3、0.3μmになるようにバーコートを用いて順次、塗布、乾燥させ、支持体/第2の接着層/第2のバリア層/第2の保護層を得た。延伸PETフィルムは、東レ製ポリエチレンテレフタレートフィルム、ルミラーP60(12μm)を使用した。
【0108】
[比較例2]
延伸PETフィルムを基材とし、上記塗液A1を乾燥後の厚さが0.2μmになるように、バーコーターを用いて塗布、乾燥させ、支持体/第1の接着層を得た。延伸PETフィルムは、東レ製ポリエチレンテレフタレートフィルム、ルミラーP60(12μm)を使用した。
この支持体/第1の接着層の第1の接着層上に電子線加熱方式による真空蒸着装置により、金属アルミニウムを蒸発させそこに酸素ガスを導入し、酸化アルミニウムを蒸着して厚さ20nmの無機蒸着層を形成させることによって、支持体/第1の接着層/第1のバリア層を得た。
このようにして得られた支持体/第1の接着層/第1のバリア層の第1のバリア層上に上記塗液C1を乾燥後の厚さが0.2μmになるようにバーコートを用いて、塗布、乾燥させ、支持体/第1の接着層/第1のバリア層/第1の保護層を得た。
【0109】
得られた包装材料のラミネートフィルムのレトルト処理前後、及び屈曲による虐待を行った後における、酸素透過度を表9に示す。および得られた包装材料のラミネートフィルムのレトルト処理前後の水蒸気透過度を表9に示す。
【0110】
【表9】
【0111】
実施例1〜7は、レトルト処理前後、及び屈曲による虐待を行った後にレトルト処理を行った場合において、酸素透過度が非常に低く、バリア性に優れていた。
また、レトルト処理前後で水蒸気透過度も非常に低く、バリア性に優れていた。