(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6160209
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】レジストパターン形成プロセス最適化装置、レジストパターン形成プロセス最適化方法およびレジストパターン形成プロセス最適化プログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20170703BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
H01L21/30 541Z
G03F7/20 504
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-93438(P2013-93438)
(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公開番号】特開2014-216518(P2014-216518A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】合田 歩美
【審査官】
今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−012426(JP,A)
【文献】
特開2012−209519(JP,A)
【文献】
特開2001−319848(JP,A)
【文献】
特開2011−071336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
G03F 7/20−7/24、9/00−9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたレジスト膜にパターンを形成するリソグラフィ工程におけるプロセスの最適条件を取得するレジストパターン形成プロセス最適化装置であって、
前記パターンのデザイン情報と、前記基板の材料、レジスト膜厚、レジスト特性および現像特性を含む材料情報と、前記リソグラフィ工程における露光条件、ベーク条件および現像条件を含む条件情報と、が入力される入力部と、
前記露光条件と、前記基板の材料と、前記レジスト膜厚とに基づいて、前記基板に成膜した前記レジスト上の一点に荷電粒子を入射したときに得られる前記レジスト内の蓄積エネルギー分布関数を、前記レジストを深さ方向で分割した各層ごとに取得し、各層における前記蓄積エネルギー分布関数を補間する際に用いるガウス関数の係数を取得するガウス関数係数取得部と、
前記デザイン情報と、前記露光条件と、各層の前記ガウス関数係数とに基づいて、前記パターン上の前記蓄積エネルギー分布を取得する蓄積エネルギー分布取得部と、
前記レジスト特性と、前記現像特性と、前記ベーク条件と、前記現像条件と、前記パターン上の前記蓄積エネルギー分布とを用いて、ベークおよび現像後のレジスト形状を予測するレジスト形状予測部と、
前記レジスト形状予測部によって予測された前記レジスト形状が所望のレジスト形状か否かを判断する判断部と、
前記判断部によって前記レジスト形状が所望のレジスト形状ではないと判断された場合、前記露光条件の再設定を行い、前記蓄積エネルギー分布取得部に前記再設定値を入力する露光条件再設定部と、
前記判断部によって前記レジスト形状が所望のレジスト形状ではないと判断された場合、前記ベーク条件および前記現像条件の再設定を行い、前記レジスト形状予測部に前記再設定値を入力するベーク現像条件再設定部と、
前記判断部によって前記レジスト形状が所望のレジスト形状であると判断された場合、当該レジスト形状が予測された際に設定されている前記露光条件、前記ベーク条件および前記現像条件を前記デザイン情報と共に出力する出力部と、
を備え、
前記ガウス関数係数取得部は、前記蓄積エネルギー分布を前記レジストの深さ方向に分割し、各層の番号をi、前記ガウス関数の番号をj、前記ガウス関数の係数をηij、前記ガウス関数の標準偏差をσij、径方向をr、前記蓄積エネルギー値をEi(r)、前記蓄積エネルギー値のrが0から∞まで変化するときの積分値をEiとしたとき、下記式(1)および式(2)を同時または交互に関数適合を行い、収束した解を最適値とすることにより前記各層における前記ガウス関数の係数を算出することを特徴とするレジストパターン形成プロセス最適化装置。
【数1】
【数2】
【請求項2】
基板上に形成されたレジスト膜にパターンを形成するリソグラフィ工程におけるプロセスの最適条件を取得するレジストパターン形成プロセス最適化方法であって、
前記パターンのデザイン情報と、前記基板の材料、レジスト膜厚、レジスト特性および現像特性を含む材料情報と、前記リソグラフィ工程における露光条件、ベーク条件および現像条件を含む条件情報と、が入力される入力ステップと、
前記露光条件と、前記基板の材料と、前記レジスト膜厚とに基づいて、前記基板に成膜した前記レジスト上の一点に荷電粒子を入射したときに得られる前記レジスト内の蓄積エネルギー分布関数を、前記レジストを深さ方向で分割した各層ごとに取得し、各層における前記蓄積エネルギー分布関数を補間する際に用いるガウス関数の係数を取得するガウス関数係数取得ステップと、
前記デザイン情報と、前記露光条件と、前記各層の前記ガウス関数係数とに基づいて、前記パターン上の蓄積エネルギー分布を取得する蓄積エネルギー分布取得ステップと、
前記レジスト特性と、前記現像特性と、前記ベーク条件と、前記現像条件と、前記パターン上の前記蓄積エネルギー分布とを用いて、ベークおよび現像後のレジスト形状を予測するレジスト形状予測ステップと、
前記レジスト形状予測ステップで予測された前記レジスト形状が所望のレジスト形状か否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップで前記レジスト形状が所望のレジスト形状ではないと判断された場合、前記露光条件を再設定する露光条件再設定ステップと、
再設定された前記露光条件を用いて前記パターン上の蓄積エネルギー分布を再度取得する蓄積エネルギー分布再取得ステップと、
前記判断ステップで前記レジスト形状が所望のレジスト形状ではないと判断された場合、前記ベーク条件および前記現像条件を再設定するベーク現像条件再設定ステップと、
再設定された前記ベーク条件および前記現像条件を用いて、前記ベークおよび前記現像後のレジスト形状を再予測するレジスト形状再予測ステップと、
前記判断ステップで前記レジスト形状が所望のレジスト形状であると判断された場合、当該レジスト形状が予測された際に設定されている前記露光条件、前記ベーク条件および前記現像条件を前記デザイン情報と共に出力する出力ステップと、
を含み、
前記ガウス関数係数取得ステップでは、前記蓄積エネルギー分布を前記レジストの深さ方向に分割し、各層の番号をi、前記ガウス関数の番号をj、前記ガウス関数の係数をηij、前記ガウス関数の標準偏差をσij、径方向をr、前記蓄積エネルギー値をEi(r)、前記蓄積エネルギー値のrが0から∞まで変化するときの積分値をEiとしたとき、下記式(1)および下記式(2)を同時または交互に関数適合を行い、収束した解を最適値とすることにより前記各層における前記ガウス関数の係数を算出することを特徴とするレジストパターン形成プロセス最適化方法。
【数3】
【数4】
【請求項3】
基板上に形成されたレジスト膜にパターンを形成するリソグラフィ工程におけるプロセスの最適条件を取得するレジストパターン形成プロセス最適化プログラムであって、
前記パターンのデザイン情報と、前記基板の材料、レジスト膜厚、レジスト特性および現像特性を含む材料情報と、前記リソグラフィ工程における露光条件、ベーク条件および現像条件を含む条件情報と、が入力される入力ステップと、
前記露光条件と、前記基板の材料と、前記レジスト膜厚とに基づいて、前記基板に成膜した前記レジスト上の一点に荷電粒子を入射したときに得られる前記レジスト内の蓄積エネルギー分布関数を、前記レジストを深さ方向で分割した各層ごとに取得し、各層における前記蓄積エネルギー分布関数を補間する際に用いるガウス関数の係数を取得するガウス関数係数取得ステップと、
前記デザイン情報と、前記露光条件と、前記各層の前記ガウス関数係数とに基づいて、前記パターン上の蓄積エネルギー分布を取得する蓄積エネルギー分布取得ステップと、
前記レジスト特性と、前記現像特性と、前記ベーク条件と、前記現像条件と、前記パターン上の蓄積エネルギー分布とを用いて、ベークおよび現像後のレジスト形状を予測するレジスト形状予測ステップと、
前記レジスト形状予測ステップで予測された前記レジスト形状が所望のレジスト形状か否かを判断する判断ステップと、
前記判断ステップで前記レジスト形状が所望のレジスト形状ではないと判断された場合、前記露光条件を再設定する露光条件再設定ステップと、
再設定された前記露光条件を用いて前記パターン上の蓄積エネルギー分布を再度取得する蓄積エネルギー分布再取得ステップと、
前記判断ステップで前記レジスト形状が所望のレジスト形状ではないと判断された場合、前記ベーク条件および前記現像条件を再設定するベーク現像条件再設定ステップと、
再設定された前記ベーク条件および前記現像条件を用いて、前記ベークおよび前記現像後のレジスト形状を再予測するレジスト形状再予測ステップと、
前記判断ステップで前記レジスト形状が所望のレジスト形状であると判断された場合、当該レジスト形状が予測された際に設定されている前記露光条件、前記ベーク条件および前記現像条件を前記デザイン情報と共に出力する出力ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記ガウス関数係数取得ステップでは、前記蓄積エネルギー分布を前記レジストの深さ方向に分割し、各層の番号をi、前記ガウス関数の番号をj、前記ガウス関数の係数をηij、前記ガウス関数の標準偏差をσij、径方向をr、前記蓄積エネルギー値をEi(r)、前記蓄積エネルギー値のrが0から∞まで変化するときの積分値をEiとしたとき、下記式(1)および式(2)を同時または交互に関数適合を行い、収束した解を最適値とすることにより前記各層における前記ガウス関数の係数を算出することを特徴とするレジストパターン形成プロセス最適化プログラム。
【数5】
【数6】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子リソグラフィでレジストパターンを作製する際に、あらかじめシミュレーションによりパターン形状を予測し、その予測結果を基に最適な露光条件、ベーク条件、現像条件を取得するための、レジストパターン形成プロセス最適化装置、レジストパターン形成プロセス最適化方法およびレジストパターン形成プロセス最適化プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体用フォトマスクや、ナノインプリントのモールドでは、高解像度且つ高精度なパターン作製が求められるため、荷電粒子を使ったリソグラフィ方法が用いられる。近年は、更なる高解像度化が求められている。
【0003】
基板上に形成されたレジスト膜にマスクパターンを描画して、現像し、レジストパターンを形成する荷電粒子リソグラフィでは、描画・ベークによって化学反応を起こす。ポジ型レジストの場合は反応部が現像液に溶解し、ネガ型レジストの場合は未反応部が現像液に溶解することでレジストパターンを得る。現像液に溶解したレジストの再付着などを防ぐため、現像後にリンス液にてリンスを行うこともある。
【0004】
現像後に乾燥させる際、パターン間、もしくはパターンの側面に溜まった現像液またはリンス液が蒸散しつつ表面張力の力でパターンを引っ張る。この力によって、微細パターンは、パターンの根本から折れたり、基板から剥がれて倒れてしまう場合があり、パターン解像性の妨げになっていることが知られている。
【0005】
上記の表面張力によるパターン倒れを防ぐためには、現像後のパターン断面形状が垂直に近いか、少なくともくびれが小さい必要がある。パターンの根本が大きくくびれていると、表面張力で引っ張られたとき、くびれの部分に大きく力が加わり、折れやすくなる。よって、解像度向上のためには、現像後のレジストパターン形状の調節が重要な要素となっている。パターン断面形状は、荷電粒子の露光量や、化学反応量などのレジスト特性、現像条件などに依存する。
【0006】
それら全ての工程に対して条件を振った実験を行い、条件の最適化を行うことは非常に困難であり、時間や費用が掛かる。そのため、予めシミュレーションによる形状予測を行い、その計算結果を使って条件の最適化を行う方法が知られている。
【0007】
シミュレーションによるパターン形状予測は、大きく分けて次の3段階で計算する。即ち、荷電粒子の散乱、レジストの化学反応、現像液による溶解である。荷電粒子の散乱では、レジスト内に入射された荷電粒子の弾性散乱と非弾性散乱を計算する。非弾性散乱によって、荷電粒子はレジストを構成する物質と相互作用し、レジストにはエネルギーが蓄積される。次に、化学反応の段階では、蓄積エネルギーの値に比例する化学反応量を計算する。蓄積エネルギーの高い部分は反応量が多く、蓄積エネルギーの低い部分では反応量は少ない。
【0008】
次に、現像段階では、化学反応量に応じた溶解速度を適用し、現像後のパターン形状を計算する。ポジ型レジストの場合、化学反応量が多い部分は速く容解し、ネガ型レジストの場合はその逆で、化学反応量が多い部分は溶解が遅くなる。化学反応量に対する溶解速度の分布関数を作製し、前記化学反応の段階で計算した化学反応量の分布に適用することで、現像によるレジスト形状の時間発展を計算することができる。上記の計算により、露光量、化学反応量、現像条件に依存したレジスト形状を予測することができる。
【0009】
前記の荷電粒子の散乱の段階では、弾性散乱と非弾性散乱を、モンテカルロ法を用いて計算する方法が広く知られている。モンテカルロ法では、荷電粒子の弾性散乱や非弾性散乱を、確率的に計算する。パターンの描画を計算する場合、照射する荷電粒子の数粒子を1つの塊として、モンテカルロ法で計算する方法があるが、この場合、数万〜数十万回の膨大な計算量が必要になる。
【0010】
計算速度を速め、且つ荷電粒子の散乱による蓄積エネルギー分布を統計的に表すために、最初にレジスト上の一点に荷電粒子を入射したときの蓄積エネルギー分布をモンテカルロ法を使って求め、次に前記蓄積エネルギー分布を深さ方向に規格化し、入射した点を中心とした径方向のエネルギーの高さの分布関数(EID関数)をガウス関数などで補間する方法が知られている。描画パターン上の蓄積エネルギー分布を計算する場合は、補間したガウス関数を使い、描画パターン領域についてガウス関数を積分する。上記の手順で、EID関数をガウス関数補間して描画パターン領域について積分を行うことで、計算時間を短縮化することができる。
【0011】
レジストパターン形状の断面を計算する場合、描画パターンの蓄積エネルギー分布を計算するためには、荷電粒子を1点に入射したときの蓄積エネルギー分布を、径方向だけでなく、レジストの深さ方向にも補間する必要がある。レジストに入射した荷電粒子は、弾性散乱して広がりつつレジストを通過するので、レジスト表面付近と基板境界付近では分布が異なる。レジスト表面付近では高いエネルギーの鋭い分布形状が現れ、基板境界付近では比較的エネルギーが低くゆるやかな分布形状が現れる。EID関数を深さ方向にも補間する場合、
図2に示すように、前記荷電粒子を1点に入射したときのレジスト内蓄積エネルギー分布を深さ方向に分割し、それぞれの層のEID関数をガウス関数で補間する方法が考えられている。描画パターンの蓄積エネルギー分布は、それぞれの層についてガウス関数を積分することで得られる(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許3564298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記の深さ方向に蓄積エネルギー分布を分割し、各層のEID関数をガウス関数で補間し、描画パターンの蓄積エネルギー分布を補間関数の積分で求める方法は、各層におけるEID関数の違いを考慮しているため、パターン形状の予測結果にはレジストの厚さや基板材料の違いが反映される。また、モンテカルロ法を使うのはEID関数を求めるときの1回で済むため、計算時間も短縮できる。
【0014】
しかし、この方法では、各層に対して別々にガウス関数補間するだけなので、層の上下のつながりが失われる。つまり、層の連続性は無視されている。そのため、前記各層の補間関数を基に描画パターンの蓄積エネルギー分布を計算すると、得られる蓄積エネルギー値は深さ方向に対して滑らかに変化するとは限らず、バラツキが大きくなってしまう。更に、前記描画パターンの蓄積エネルギー分布を基に、レジスト形状を計算すると、モンテカルロ法を使って得られた蓄積エネルギー分布を反映せず、パターン断面形状を精度良く評価することができない。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するものであり、シミュレーションによってパターン形状を予測し、その結果から、最適な露光条件、ベーク条件、現像条件を取得するために必要な、描画パターンの蓄積エネルギー分布を速く、正確に求めることができる、レジストパターン形成プロセス最適化装置、レジストパターン形成プロセス最適化方法およびレジストパターン形成プロセス最適化プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
高精度で高解像度の微細パターンが要求される中で、荷電粒子の露光条件、ベーク条件、現像条件などのプロセス条件の最適化を、低コストで短時間に行うことが求められている。上記プロセスの最適条件は、あらかじめシミュレーションでレジスト形状を予測し、その予測結果を基に取得するが、前記シミュレーションにおいても、より速く、正確にレジスト形状予測を行う必要がある。
【0017】
本発明は、半導体や半導体用フォトマスク、ナノインプリント用モールド、光学関連素子、バイオチップなど、荷電粒子リソグラフィを使って、高解像度且つ高精度にパターンを形成するために、荷電粒子の露光量、化学反応量などレジスト特性、現像条件などの最適化を行う場合に用いられるものであり、上記最適化のためにあらかじめシミュレーションを使ってパターン形状予測をする際に、パターン形状を速く、正確に算出するためのものである。
【0018】
上記課題に鑑み、本発明に係るレジストパターン形成プロセス最適化装置は、基板上に形成されたレジスト膜にパターンを形成するリソグラフィ工程におけるプロセスの最適条件を取得するレジストパターン形成プロセス最適化装置であって、前記パターンのデザイン情報と、前記基板の材料、レジスト膜厚、レジスト特性および現像特性を含む材料情報と、前記リソグラフィ工程における露光条件、ベーク条件および現像条件を含む条件情報と、が入力される入力部と、前記露光条件と、前記基板の材料と、前記レジスト膜厚とに基づいて、前記基板に成膜した前記レジスト上の一点に荷電粒子を入射したときに得られる前記レジスト内の蓄積エネルギー分布関数を、前記レジストを深さ方向で分割した各層ごとに取得し、各層における前記蓄積エネルギー分布関数を補間する際に用いるガウス関数の係数を取得するガウス関数係数取得部と、前記デザイン情報と、前記露光条件と、各層の前記ガウス関数係数とに基づいて、前記パターン上の前記蓄積エネルギー分布を取得する蓄積エネルギー分布取得部と、前記レジスト特性と、前記現像特性と、前記ベーク条件と、前記現像条件と、前記パターン上の前記蓄積エネルギー分布とを用いて、ベークおよび現像後のレジスト形状を予測するレジスト形状予測部と、前記レジスト形状予測部によって予測された前記レジスト形状が所望のレジスト形状か否かを判断する判断部と、前記判断部によって前記レジスト形状が所望のレジスト形状ではないと判断された場合、前記露光条件の再設定を行い、前記蓄積エネルギー分布取得部に前記再設定値を入力する露光条件再設定部と、前記判断部によって前記レジスト形状が所望のレジスト形状ではないと判断された場合、前記ベーク条件および前記現像条件の再設定を行い、前記レジスト形状予測部に前記再設定値を入力するベーク現像条件再設定部と、前記判断部によって前記レジスト形状が所望のレジスト形状であると判断された場合、当該レジスト形状が予測された際に設定されている前記露光条件、前記ベーク条件および前記現像条件を前記デザイン情報と共に出力する出力部と、
を備え、前記ガウス関数係数取得部は、前記蓄積エネルギー分布を前記レジストの深さ方向に分割し、各層の番号をi、前記ガウス関数の番号をj、前記ガウス関数の係数をηij、前記ガウス関数の標準偏差をσij、径方向をr、前記蓄積エネルギー値をEi(r)、前記蓄積エネルギー値のrが0から∞まで変化するときの積分値をEiとしたとき、下記式(1)および式(2)を同時または交互に関数適合を行い、収束した解を最適値とすることにより前記各層における前記ガウス関数の係数を算出することを特徴とする。
【0019】
【数1】
【0020】
【数2】
【0021】
また、本発明にかかるレジストパターン形成プロセス最適化方法は、基板上に形成されたレジスト膜にパターンを形成するリソグラフィ工程におけるプロセスの最適条件を取得するレジストパターン形成プロセス最適化方法であって、前記パターンのデザイン情報と、前記基板の材料、レジスト膜厚、レジスト特性および現像特性を含む材料情報と、前記リソグラフィ工程における露光条件、ベーク条件および現像条件を含む条件情報と、が入力される入力ステップと、前記露光条件と、前記基板の材料と、前記レジスト膜厚とに基づいて、前記基板に成膜した前記レジスト上の一点に荷電粒子を入射したときに得られる前記レジスト内の蓄積エネルギー分布関数を、前記レジストを深さ方向で分割した各層ごとに取得し、各層における前記蓄積エネルギー分布関数を補間する際に用いるガウス関数の係数を取得するガウス関数係数取得ステップと、前記デザイン情報と、前記露光条件と、前記各層の前記ガウス関数係数とに基づいて、前記パターン上の蓄積エネルギー分布を取得する蓄積エネルギー分布取得ステップと、前記レジスト特性と、前記現像特性と、前記ベーク条件と、前記現像条件と、前記パターン上の前記蓄積エネルギー分布とを用いて、ベークおよび現像後のレジスト形状を予測するレジスト形状予測ステップと、前記レジスト形状予測ステップで予測された前記レジスト形状が所望のレジスト形状か否かを判断する判断ステップと、前記判断ステップで前記レジスト形状が所望のレジスト形状ではないと判断された場合、前記露光条件を再設定する露光条件再設定ステップと、再設定された前記露光条件を用いて前記パターン上の蓄積エネルギー分布を再度取得する蓄積エネルギー分布再取得ステップと、前記判断ステップで前記レジスト形状が所望のレジスト形状ではないと判断された場合、前記ベーク条件および前記現像条件を再設定するベーク現像条件再設定ステップと、再設定された前記ベーク条件および前記現像条件を用いて、前記ベークおよび前記現像後のレジスト形状を再予測するレジスト形状再予測ステップと、前記判断ステップで前記レジスト形状が所望のレジスト形状であると判断された場合、当該レジスト形状が予測された際に設定されている前記露光条件、前記ベーク条件および前記現像条件を前記デザイン情報と共に出力する出力ステップと、
を含み、前記ガウス関数係数取得ステップでは、前記蓄積エネルギー分布を前記レジストの深さ方向に分割し、各層の番号をi、前記ガウス関数の番号をj、前記ガウス関数の係数をηij、前記ガウス関数の標準偏差をσij、径方向をr、前記蓄積エネルギー値をEi(r)、前記蓄積エネルギー値のrが0から∞まで変化するときの積分値をEiとしたとき、下記式(1)および式(2)を同時または交互に関数適合を行い、収束した解を最適値とすることにより前記各層における前記ガウス関数の係数を算出することを特徴とする。
【0022】
【数3】
【0023】
【数4】
【0024】
また、本発明にかかるレジストパターン形成プロセス最適化プログラムは、基板上に形成されたレジスト膜にパターンを形成するリソグラフィ工程におけるプロセスの最適条件を取得するレジストパターン形成プロセス最適化プログラムであって、前記パターンのデザイン情報と、前記基板の材料、レジスト膜厚、レジスト特性および現像特性を含む材料情報と、前記リソグラフィ工程における露光条件、ベーク条件および現像条件を含む条件情報と、が入力される入力ステップと、前記露光条件と、前記基板の材料と、前記レジスト膜厚とに基づいて、前記基板に成膜した前記レジスト上の一点に荷電粒子を入射したときに得られる前記レジスト内の蓄積エネルギー分布関数を、前記レジストを深さ方向で分割した各層ごとに取得し、各層における前記蓄積エネルギー分布関数を補間する際に用いるガウス関数の係数を取得するガウス関数係数取得ステップと、前記デザイン情報と、前記露光条件と、前記各層の前記ガウス関数係数とに基づいて、前記パターン上の蓄積エネルギー分布を取得する蓄積エネルギー分布取得ステップと、前記レジスト特性と、前記現像特性と、前記ベーク条件と、前記現像条件と、前記パターン上の蓄積エネルギー分布とを用いて、ベークおよび現像後のレジスト形状を予測するレジスト形状予測ステップと、前記レジスト形状予測ステップで予測された前記レジスト形状が所望のレジスト形状か否かを判断する判断ステップと、前記判断ステップで前記レジスト形状が所望のレジスト形状ではないと判断された場合、前記露光条件を再設定する露光条件再設定ステップと、再設定された前記露光条件を用いて前記パターン上の蓄積エネルギー分布を再度取得する蓄積エネルギー分布再取得ステップと、前記判断ステップで前記レジスト形状が所望のレジスト形状ではないと判断された場合、前記ベーク条件および前記現像条件を再設定するベーク現像条件再設定ステップと、再設定された前記ベーク条件および前記現像条件を用いて、前記ベークおよび前記現像後のレジスト形状を再予測するレジスト形状再予測ステップと、前記判断ステップで前記レジスト形状が所望のレジスト形状であると判断された場合、当該レジスト形状が予測された際に設定されている前記露光条件、前記ベーク条件および前記現像条件を前記デザイン情報と共に出力する出力ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記ガウス関数係数取得ステップでは、前記蓄積エネルギー分布を前記レジストの深さ方向に分割し、各層の番号をi、前記ガウス関数の番号をj、前記ガウス関数の係数をηij、前記ガウス関数の標準偏差をσij、径方向をr、前記蓄積エネルギー値をEi(r)、前記蓄積エネルギー値のrが0から∞まで変化するときの積分値をEiとしたとき、下記式(1)および式(2)を同時または交互に関数適合を行い、収束した解を最適値とすることにより前記各層における前記ガウス関数の係数を算出することを特徴とする。
【0025】
【数5】
【0026】
【数6】
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、シミュレーションによってパターン形状を予測し、その結果から、最適な露光条件、ベーク条件、現像条件を取得するために必要な、描画パターンの蓄積エネルギー分布を速く、正確に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態を示すものであり、レジストパターン形成プロセス最適化装置の構成の一例を示すブロック図。
【
図2】本発明の実施形態を示すものであり、モンテカルロ法により求めたレジスト内の蓄積エネルギー分布の一例を示す説明図。
【
図3】本発明の実施形態を示すものであり、レジスト膜厚と基板構造の一例を示す説明図。
【
図4】本発明の実施形態を示すものであり、蓄積エネルギーの径方向の広がり(EID関数)を示すグラフ。
【
図5】本発明の実施形態を示すものであり、レジスト深さ方向に対する蓄積エネルギーの積分値を示すグラフ。
【
図6】本発明の実施形態を示すものであり、レジスト断面形状を示す説明図であり、(a)は本発明によるガウス関数補間方法を適用した場合、(b)は従来法によるガウス関数補間方法を適用した場合を示す。
【
図7】本発明の実施形態を示すものであり、露光量を最適化した後のレジスト断面形状を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明の一実施形態によるレジストパターン形成プロセス最適化装置100について
図1を参照し説明する。
図1は、本実施形態によるレジストパターン形成プロセス最適化装置100の構成を示す概略ブロック図である。
図1に示す通り、レジストパターン形成プロセス最適化装置100は、入力部(入力手段)101と、記憶部(記憶装置)102と、蓄積エネルギー分布からガウス関数の係数を取得するガウス関数係数取得部103と、描画パターン上の蓄積エネルギー分布を取得する蓄積エネルギー分布取得部104と、化学反応、現像によって形成されるレジスト形状を予測するレジスト形状予測部105と、予測したレジスト形状が所望のレジスト形状か判断する判断部106と、露光条件を再設定する露光条件再設定部107と、ベークおよび現像条件を再設定するベーク・現像条件再設定部108と、出力部109とを備える。
【0030】
当該レジストパターン形成プロセス最適化装置100はコンピュータの構成を備えており、基板上に形成されたレジスト膜にパターンを描画して現像する荷電粒子リソグラフィに関する、前記シミュレーションによってレジスト形状を正確に予測することで、前記露光量や化学反応量、現像の条件を最適化するためのレジストパターン形成プロセス最適化プログラムとの協調により、上記の各部が構成される。なお、レジストパターン形成プロセス最適化装置100を専用のLSIなどのハードウェアのみからなる構成としてもよい。
【0031】
入力部101は、レジストパターン形成プロセス最適化装置100によって利用される情報の入力を受け付け、記憶部102に記憶させる。この入力部101には、描画するパターンデザインなどの情報が入力される。当該入力部101は、レジストパターン形成プロセス最適化装置100の外部からの送信データを受信する送受信インタフェース、外部記憶装置からデータが入力される入力インタフェース、ディスプレイ、キーボード、マウス、タブレットなどを用いたマンマシンインタフェースなどの、入力装置を用いて構成することができる。
【0032】
入力部101には、描画パターンデザインのデザイン情報の他に、パターン形状予測の計算に必要な基板材料、レジスト膜厚、レジスト特性、現像特性を含む材料情報と、露光条件(荷電粒子の条件)、ベーク条件および現像条件を含む条件情報が入力される。なお、これらの詳細については後述する。
記憶部102は、入力部101から入力された情報を記憶する。この記憶部102は、入力部101から入力されるデザイン情報、基板材料、レジスト膜厚、レジスト特性、現像特性、露光条件、ベーク条件および現像条件の情報を記憶する。当該記憶部102は、RAM、フラッシュメモリ記憶装置、磁気ディスク記憶装置、光ディスク記憶装置などの記憶装置を用いて構成することができる。
【0033】
ガウス関数係数取得部103は、露光条件と、基板の材料と、レジスト膜厚とに基づいて、基板に成膜したレジスト上の一点に荷電粒子を入射したときに得られるレジスト内の蓄積エネルギー分布関数を、レジストを深さ方向で分割した各層ごとに取得し、各層における蓄積エネルギー分布関数を補間する際に用いるガウス関数の係数を取得する。
【0034】
ガウス関数係数取得部103では、記憶部102に記憶された基板材料とレジストの膜厚、露光条件の情報に基づき、レジスト上の1点に荷電粒子を入射することを仮定し、弾性散乱と非弾性散乱を計算することで、レジスト内の蓄積エネルギー分布を算出する。このとき、計算範囲は荷電粒子の弾性散乱による広がりを考慮し、十分広い領域を計算する。上記蓄積エネルギー分布は、レジスト深さ方向に分割し、各層における蓄積エネルギー分布を膜厚で規格化する。荷電粒子の入射点を中心とした径方向rに対する蓄積エネルギーの分布関数(EID関数)をガウス関数で補間する。EID関数のガウス関数補間は下記式(1)に従う。また、各層の連続性を考慮するため、下記式(2)も考慮する。下記式(2)のEiは、モンテカルロ法で算出した蓄積エネルギー分布の、径方向rへの積分値を表す。十分広い領域を計算することで、Eiはrが0から∞まで変化するときの定積分に近似できる。下記式(1)と下記式(2)を同時または交互に関数適合を行い、収束した解を最適値とする。前記関数適合を行うと、ガウス関数の係数ηijと標準偏差σijが得られる。取得したガウス関数の係数ηijと標準偏差σijは、描画パターンの蓄積エネルギー分布取得部104に出力される。なお、下記式(1)および式(2)において、各層の番号をi、ガウス関数の番号をj、ガウス関数の係数をη
ij、標準偏差をσ
ij、径方向をr、蓄積エネルギー値をEi(r)、蓄積エネルギー値の
rが0から∞まで変化するときの積分値をEiとする。
【0037】
蓄積エネルギー分布取得部104は、描画パターンのデザイン情報と、各層のガウス関数係数とに基づいて、パターン上の蓄積エネルギー分布を取得する。
蓄積エネルギー分布取得部104は、ガウス関数係数取得部103で取得したガウス関数の係数ηijと標準偏差σijの情報と、記憶部102に記憶されている、描画パターンのデザイン情報と露光条件の情報を取得する。そして、ガウス関数の係数ηijと標準偏差σijを使って描画パターンデザイン上の蓄積エネルギー分布を計算する。具体的には、補間したガウス関数の係数ηijを、記憶部102から取得した露光条件に従って調節し、描画パターンデザインの描画部の領域で定積分を行う。
各層で別々に前記定積分を行っても、ガウス関数の係数ηijと標準偏差σijには層の連続性の情報が含まれるため、得られるパターンデザインの蓄積エネルギー分布は、レジスト水平方向だけでなく深さ方向にもモンテカルロによる計算結果を反映する。
取得した描画パターンデザインの蓄積エネルギー分布は、レジスト形状予測部105に出力される。
【0038】
レジスト形状予測部105は、レジスト特性と、現像特性と、ベーク条件と、現像条件と、パターン上の蓄積エネルギー分布とを用いて、ベークおよび現像後のレジスト形状を予測する。
レジスト形状予測部105は、蓄積エネルギー分布取得部104から蓄積エネルギー分布の情報と、記憶部102に記憶されたレジスト特性、現像特性、ベーク条件および現像条件の情報を取得する。レジスト形状予測部105は、取得した蓄積エネルギー分布に対し、ベーク時間や温度、酸、添加物の拡散や消滅、蒸散を考慮し、化学反応後の生成物の濃度分布を計算する。前記の蓄積エネルギーやその他の条件に対する化学反応量は記憶部102から取得したレジスト特性に含まれる。前記生成物の濃度分布を使って、現像後のレジスト形状を計算する。具体的には、記憶部102から取得した現像特性を、前記生成物の濃度分布に適用し、溶解速度の分布に変換し、現像時間に対するレジスト形状の時間発展を計算する。記憶部102から取得した現像時間に達した場合、算出したレジスト形状と、露光条件と、ベーク条件と、現像条件を、判断部106に出力する。
【0039】
なお、レジスト形状予測部105では、蓄積エネルギー分布に対して必ずしも化学反応後の生成物の濃度分布や現像速度分布を計算する必要はなく、例えば蓄積エネルギー分布から直接現像速度分布に変換しても良いし、また、閾値法を使って蓄積エネルギー分布において任意のエネルギー値以上、または以下でレジストは現像すると仮定し、直接現像後の形状を計算しても良い。
【0040】
判断部106は、レジスト形状予測部105によって予測されたレジスト形状が所望のレジスト形状か否かを判断する。
判断部106では、レジスト形状予測部105から、レジスト形状を取得し、所望のレジスト形状に対して許容範囲であれば、記憶部102から取得したパターンデザインの情報と共に、露光条件と、ベーク条件と、現像条件を出力部109に出力する。許容範囲外であれば、露光条件再設定部107、もしくはベーク・現像条件再設定部108でプロセス条件の再設定を行い、それぞれ蓄積エネルギー分布取得部104、もしくはレジスト形状予測部105に出力し、それぞれ再計算を行い、計算結果として得られたレジスト形状を、再度判断部106に出力する。これを所望のレジスト形状に近づくまで繰り返す。
【0041】
露光条件再設定部107は、判断部106によってレジスト形状が所望のレジスト形状ではないと判断された場合、露光条件の再設定を行い、蓄積エネルギー分布取得部104に再設定値を入力する。
また、ベーク・現像条件再設定部108は、判断部106によってレジスト形状が所望のレジスト形状ではないと判断された場合、ベーク条件および現像条件の再設定を行い、レジスト形状予測部105に再設定値を入力する。
所望のレジスト形状に近づけば、露光条件、ベーク条件、現像条件の情報を、記憶部102から取得したパターンデザインの情報と共に出力部109に出力する。
【0042】
出力部109は、判断部106によってレジスト形状が所望のレジスト形状であると判断された場合、当該レジスト形状が予測された際に設定されている露光条件、ベーク条件および現像条件をデザイン情報と共に出力する。
出力部109は、判断部106から出力された露光条件と、ベーク条件と、現像条件を取得し、出力する。出力部109は、外部のコンピュータやメモリ等と接続された出力インタフェースなどの出力装置を用いて構成することができる。
【0043】
出力部109から出力された前記露光条件と、ベーク条件と、現像条件を用いて荷電粒子リソグラフィを行うことで、所望のレジストパターン形状を作成することができる。
【0044】
なお、上述のレジストパターン形成プロセス最適化装置100の動作の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータシステムが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでいう「コンピュータシステム」とは、CPU及び各種メモリやOS、周辺機器等のハードウェアを含むものである。また、「コンピュータシステム」は、WWW(インターネット)環境システムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
【実施例1】
【0045】
以下に、実施例を示す。
本実施例では、化学増幅型ポジレジストを用いるが、本発明は化学増幅型ではないレジストや、ネガ型レジストにも適応できる。
最初に、入力部101に描画パターンデザインを入力する。入力されたパターンデザインは、記憶部102に記憶される。今回の実施例には50nmのLine&Space(ライン・アンド・スペース)パターンを用いる。また、入力部101に、基板材料とレジスト膜厚、レジスト特性、現像特性、荷電粒子の条件(露光量)、ベーク条件、現像条件を入力する。
図3は基板構造とレジスト膜厚を示す。
図3において基板2は石英(Qz)であり、レジスト1の膜厚は100nmである。
【0046】
次に、ガウス関数係数取得部103では、記憶部102から取得した露光条件と基板材料、レジスト膜厚に基づき、レジスト上の1点に荷電粒子を入射したときのエネルギー分布を取得する。このとき、入射された荷電粒子が非弾性散乱によってレジストに蓄積されるエネルギーは、Betheの阻止能を用いてもよいし、内殻電子励起、価電子励起、自由電子励起、プラズモン励起などから計算しても良いが、本実施例では、前記の励起を計算する。計算範囲は、荷電粒子の弾性散乱による散乱を考慮し十分広い領域を計算する。本実施例では半径25μm、深さ50μmの範囲を計算する。また荷電粒子として50keVの電子線を仮定する。
図3の構造に対し、電子線を1C(クーロン)入射したときのレジスト蓄積エネルギー分布を
図2に示す。入射点から近ければ蓄積エネルギー値が高く、遠くなるほど蓄積エネルギーが低くなるのが解る。
図2の蓄積エネルギー分布をレジスト深さ方向に分割する。分割した層の蓄積エネルギー分布をガウス関数で補間する。ガウス関数は15個とすると、荷電粒子の入射点から径方向rに対する蓄積エネルギーの分布(EID関数)は下記式(3)で与えられる。
【0047】
【数9】
【0048】
また、同時に径方向rで積分した積分値Eiでも近似を行う。具体的には、モンテカルロ法で求めた蓄積エネルギー分布を、深さ方向に分割し、各層で径方向に足し合わせたエネルギーをEiとする。モンテカルロ法で十分広い領域を計算すれば、足し合わせたエネルギー値Eiは上記式(3)に示したガウス関数の0から∞の定積分に近似できる。よって、Eiは下記式(4)で表すことができる。
【0049】
【数10】
【0050】
上記式(3)と式(4)を同時に満たす、ガウス関数の係数ηijと標準偏差σijを求める。ここでは、近似方法としてGRG2(Generalized Reduced Gradient)を用いるが、他の方法を用いてもよい。また、蓄積エネルギー値の桁が大きいので、自然対数を取った値で関数適合を行う。
【0051】
上記式(3)を用いて、前記モンテカルロ法にて求めたEID関数との比較を
図4に示す。
図4は、深さ方向に分割したうちの1層のEID関数を表す。
図4から、EID関数と、本発明による複数ガウス関数の近似と、従来法による複数ガウス関数の近似が重なっていて、ほとんど差が無いことがわかる。次に、深さ方向zの蓄積エネルギー分布の比較を
図5に示す。
図5から、従来法による近似ではモンテカルロ法による蓄積エネルギー値Eiを再現していないことがわかる。一方、本発明による近似では、Eiに近い値であることがわかる。
上記の近似を各層おいて行い、求めたガウス関数の係数ηijと標準偏差σijを蓄積エネルギー分布取得部104に出力する。
【0052】
蓄積エネルギー分布取得部104は、上記記憶部102に記憶されている描画パターンデザインの情報と、露光条件と、上記のガウス関数の係数ηijと標準偏差σijから、描画パターンデザイン上の蓄積エネルギー分布を取得する。
描画パターンデザイン上の蓄積エネルギー分布は、EID関数を補間したガウス関数を、パターンデザインの領域において積分することで求める。
本実施例では、50nmのLine&Spaceについてシミュレーションを行う。
上記領域積分により求めたパターンデザインの蓄積エネルギー分布を、レジスト形状予測部105に出力する。
【0053】
レジスト形状予測部105は、上記記憶部102に記憶されているレジスト特性、現像特性、ベーク条件、現像条件、および蓄積エネルギー分布取得部104で取得されたガウス関数の係数から、現像後のレジスト形状を取得する。ベークによるレジスト内の化学反応量は、レジスト特性とベーク条件によって決定される。化学増幅型ポジレジストの場合、酸の拡散、消滅、クエンチャーの拡散当を考慮し、反応生成物の濃度を計算する。一般的に、露光量が大きく、ベーク温度が高く、ベーク時間が長ければ、化学反応量は増加し、反応生成物の濃度が高くなる。上記の化学反応を考慮し、蓄積エネルギー分布から反応生成物の濃度分布を作成する。
次に、上記反応生成物の濃度分布を使って、現像後のレジスト形状を予測する。化学増幅型ポジレジストの場合、現像速度は生成物濃度に比例する。濃度が高ければ速く現像し、低ければ遅い。現像速度と化学反応量の関係を表す式として、Mackの現像モデル式を用いる。記憶部に記憶されている現像特性と現像条件の情報と、前記生成物濃度分布から、現像後のレジスト形状を計算する。現像条件として現像時間が150秒の場合、レジスト形状は、
図6で表される。
図6の(a)は本発明によるガウス関数補間を用い、(b)は従来法による結果である。
上記のシミュレーションによって求めたレジスト形状を、所望のレジスト形状か判断する判断部106に出力する。
【0054】
判断部106は、上記レジスト形状と所望のレジスト形状の条件を照らし合わせ、所望の条件か判断する。
図6より、Spaceの寸法は、(a)39.7nm、(b)34.3nmである。従来法と本発明によるガウス関数補間方法では、最終的に得られるレジスト形状が異なり、寸法にも影響が出ることがわかる。
以下、実施例では本発明によるガウス関数補間方法のみ扱う。
所望のレジスト形状か判断する条件として、Space部分の寸法は50nm±3nmとすると、取得したレジスト形状のSpace寸法は小さいので、露光量、ベーク時間、ベーク温度、現像時間のいずれかが十分でなく、判断部106ではNoが選択される。
Noである場合、露光条件か、もしくはベーク条件、現像条件の再設定を行うが、本実施例では露光量条件について再設定を行う。
判断部106は、取得したレジスト形状と、露光条件を、露光条件再設定部107に出力する。
【0055】
露光条件再設定部107は、上記のレジスト形状と露光条件の情報から、露光条件の再設定を行う。レジスト形状のSpace部分は、所望の寸法より小さい値だったので、取得した露光条件より大きい露光量を再設定する。ここでは、最初の露光量の1.1倍の露光量を再設定値として、蓄積エネルギー分布取得部104に出力する。
【0056】
蓄積エネルギー分布取得部104は、上記の露光量の再設定値を基に、描画パターンデザインの蓄積エネルギー分布の再計算を行う。そして、取得した蓄積エネルギー分布を、レジスト形状予測部105に出力する。
【0057】
レジスト形状予測部105は、上記の蓄積エネルギー分布の情報を基に、前記の手順と同様の計算を行い、現像後のレジスト形状を予測する。結果は
図7に示す。レジスト形状予測部105は、予測したレジスト形状を、判断部106に出力する。
【0058】
判断部106は、上記のレジスト形状の情報を基に、所望のレジスト形状か判断する。前記レジスト形状のSpace部分の寸法は50.5nmで、所望のレジスト形状の範囲内である。よって、判断部106ではYesとなり、パターンデザインの情報と、露光条件、ベーク条件、現像条件を出力部109に出力する。
【0059】
出力部109から出力された露光条件、ベーク条件、現像条件を元に、荷電粒子リソグラフィを行う。実施例では、露光条件のみについて最適条件を得られる例を示したが、露光条件、ベーク条件、現像条件を少しずつ変えたバッチを組み、所望のレジスト形状の条件となるプロセス・ウィンドウを作成してもよい。
また、所望のレジスト形状か判断する基準として側壁角度を設けても良い。
上記式(1)と式(2)を同時に近似する方法を用いることで、従来法より正確に、速くプロセス条件の最適化を行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、例えば半導体や半導体用フォトマスクの一部、ナノインプリント用モールド、光学関連素子、バイオチップなど、荷電粒子リソグラフィを使って微細なパターンを作成するためのプロセス最適化に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
100……レジストパターン形成プロセス最適化装置、101……入力部、102……記憶部、103……ガウス関数係数取得部、104……蓄積エネルギー分布取得部、105……レジスト形状予測部、106……判断部、107……露光条件再設定部、108……ベーク・現像条件再設定部、109……出力部。