特許第6160250号(P6160250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6160250
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】ポリアミドモノフィラメントの製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/60 20060101AFI20170703BHJP
   D01D 1/10 20060101ALI20170703BHJP
   D01D 5/08 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   D01F6/60 311K
   D01F6/60 301E
   D01D1/10 104
   D01D5/08 A
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-112807(P2013-112807)
(22)【出願日】2013年5月29日
(65)【公開番号】特開2014-231651(P2014-231651A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤田 森彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 尋和
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 優樹
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−256197(JP,A)
【文献】 特開2009−108438(JP,A)
【文献】 特開2010−222112(JP,A)
【文献】 特開2006−265758(JP,A)
【文献】 特開2008−208513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00−13/02
D01F 1/00−6/96
9/00−9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融したポリアミドを溶融紡糸パックから押し出して紡糸するポリアミドモノフィラメントの製造方法であって、前記溶融紡糸パックとして、溶融紡糸パックケースの内部に、少なくとも(a)口金、(b)耐圧板、(c)金属線フィルター、および(d)砂濾材層または整流板を配置し、前記(c)金属線フィルターと(d)砂濾材層または整流板との間に(e)濾過精度が30〜70μmである略多角形状の断面を有する金属短繊維からなる焼結フィルターを設けた溶融紡糸パックを用い、前記金属短繊維からなる焼結フィルターへのポリマー通過量を0.8〜3.1g/cm・分とすることを特徴とするポリアミドモノフィラメントの製造方法。
【請求項2】
前記金属短繊維からなる焼結フィルターの厚みが1〜3mmであることを特徴とする請求項1記載のポリアミドモノフィラメントの製造方法。
【請求項3】
前記口金の吐出孔の孔長(L)と孔直径(D)の比(L/D)が2.0〜3.5であることを特徴とする請求項1または載のポリアミドモノフィラメントの製造方法。
【請求項4】
繊度8〜67dtex、節糸捕捉率が0.8ヶ/t以下であることを特徴とするポリアミドモノフィラメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリアミドモノフィラメントの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、糸長手方向の繊度斑が小さく、品位に優れた紗織物を与えることが出来るポリアミドモノフィラメントを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スクリーン紗と呼ばれるモノフィラメントを製織した紗織物は、近年、急成長を続けるエレクトロニクス分野において、プリント回路基板のスクリーン印刷用メッシュクロスをはじめ、自動車、家電などに利用される成形フィルター用途などに使用されている。モノフィラメントを製織した紗織物の具体的な用途としては、例えば、スクリーン印刷の用途では、Tシャツやのぼり旗、看板、自動販売機プレート、車のパネル、屋外・屋内サイン、ボールペン、各種カード類、ネームプレート、スクラッチ、点字、CD・DVD、プリント基板、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイなどが挙げられる。また、フィルター用途では、洗濯水中のゴミ再付着を防止するリントフィルター、エアコンの中に装着されている室内のホコリ・塵を除去するフィルター、掃除機の中に装着されているホコリ・塵・ゴミを除去する成形フィルター、医療分野では気泡などを除去する輸血キットや人工透析回路用フィルター、自動車分野では燃料ポンプ、燃料噴射装置といった燃料の流路や、ABS、ブレーキ、トランスミッション、パワーステアリングなどが挙げられ、さらには横滑り防止装置や燃費向上・出力アップのための最新機構であるVVTといった油圧回路においても、電磁弁へのゴミや異物の混入を防止し、ろ過して清浄化するという大切な役割を果たしている。
【0003】
なかでも、近年急成長を続けるエレクトロニクス分野や自動車分野では、より鮮明な印字性能や高いフィルター性能の高性能化が進んでいる。それに伴い紗織物は、軽量化・薄地化が進んでおり、紗織物の品位に対する要求レベルが上がってきていることから、繊度斑、節、ヨコヒケや糸削れ等のない品質の均一なモノフィラメントが要求されてきている。
【0004】
これまで、モノフィラメントの品質改善技術としては、溶融紡糸するポリアミド樹脂チップの乾燥時の水分率を0.11〜0.15重量%、樹脂チップ粘度と糸粘度との差を0.03以下のポリアミド樹脂チップを用いる技術(例えば、特許文献1参照)が提案されている。また、紡糸パック構成中の金属線フィルターと濾過材との間に、略多角形状の断面を有する金属短繊維の焼結フィルターを用いる技術(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−108438号公報
【特許文献2】特開2005−256197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの従来方法によれば、モノフィラメント長手方向の繊度斑についてはある程度の改善が認められるものの、近年急成長を続けるエレクトロニクス分野や自動車分野における紗織物の品位、すなわち品質の均一なモノフィラメントの要求に対しては未だ不十分であり、特に節と呼ばれるモノフィラメント長手方向の繊度斑の問題が、依然として残されていた。
【0007】
そこで、本発明者らの検討によれば節の要因についてはポリマーのゲル状物が糸中に混入し、この部分が十分に延伸されないためであり、節の改善のためには、このゲル状物を分散させる事が必要であることが分かった。ゲル状物を分散させるためには、溶融紡糸パックを構成する金属線フィルターや濾過材層または整流板の濾過精度を上げなければならないが、濾過精度を向上させるとパック内圧の上昇を招くこととなる。パック内圧が高くなり過ぎてしまうと、口金等のパック破損に繋がり生産への適用は困難であった。また、このゲル状物が起因となる紡糸糸切れの問題も残されていた。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決しようとするものであり、節の生成が抑制され、糸長手方向の繊度斑が小さく、優れた紗織物の品位が得られるポリアミドモノフィラメントおよび生産性良く得られる製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を達成するため、本発明は以下の構成を採用する。
(1)溶融したポリアミドを溶融紡糸パックから押し出して紡糸するポリアミドモノフィラメントの製造方法であって、前記溶融紡糸パックとして、溶融紡糸パックケースの内部に、少なくとも(a)口金、(b)耐圧板、(c)金属線フィルター、および(d)砂濾材層または整流板を配置し、前記(c)金属線フィルターと(d)砂濾材層または整流板との間に(e)濾過精度が30〜70μmである略多角形状の断面を有する金属短繊維からなる焼結フィルターを設けた溶融紡糸パックを用い、前記金属短繊維からなる焼結フィルターへのポリマー通過量を0.8〜3.1g/cm・分とすることを特徴とするポリアミドモノフィラメントの製造方法。
(2)前記金属短繊維からなる焼結フィルターの厚みが1〜3mmであることを特徴とする(1)記載のポリアミドモノフィラメントの製造方法。
(3)前記口金の吐出孔の孔長(L)と孔直径(D)の比(L/D)が2.0〜3.5であることを特徴とする(1)または(2)載のポリアミドモノフィラメントの製造方法。
)繊度8〜67dtex、節糸捕捉率が0.8ヶ/t以下であることを特徴とするポリアミドモノフィラメント
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、節の生成が抑制され、糸長手方向の繊度斑が小さく、優れた紗織物の品位が得られるポリアミドモノフィラメントおよび生産性良く得られることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の溶融紡糸パック構成の一例を示す縦断面図である。
図2】本発明のポリアミドモノフィラメントの製造方法の一例を示す工程概略図である。
図3】本発明で用いられる略多角形状の金属短繊維の好ましい一例を示す断面図である。
図4】本発明の実施例で用いたスラブキャッチャーの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
本発明でいうポリアミドとは、いわゆる炭化水素基が主鎖にアミド結合を介して連結された高分子量体であって、好ましくは、染色性、洗濯堅牢度、機械特性に優れる点から、主としてポリカプロアミド、もしくはポリヘキサメチレンアジパミドからなるポリアミドが好ましく使用される。ここでいう主としてとは、ポリカプロアミドではポリカプロアミドを構成するε−カプロラクタム単位を主として含み、ポリヘキサメチレンアジパミドではポリヘキサメチレンアジパミドを構成するヘキサメチレンジアンモニウムアジペート単位を主として含むポリアミドであり、これら単位はそれぞれ80モル%以上含有することが好ましく、さらに好ましくは90モル%以上である。その他の成分としては、特に制限されないが、例えば、ポリドデカノアミド、ポリヘキサメチレンアゼラミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカノアミド、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリヘキサメチレンテレフタラミド、ポリヘキサメチレンイソフタラミド等を構成するモノマーである、アミノカルボン酸、ジカルボン酸、ジアミンなどの単位が挙げられる。
【0014】
本発明でいうポリアミドの重合度は、ポリアミド樹脂(チップ)、あるいはその加工品(糸)の要求特性またはそれらを安定して得るために、適当な範囲より適宜選択して良いが、好ましくは98%硫酸相対粘度で2.0〜3.3の範囲であり、さらに好ましくは2.4〜3.3の範囲が好ましい。かかる範囲とすることで、紗織物で要求される強度を有するポリアミドモノフィラメントを良好な製糸性にて得ることが可能となる。ここでいう98%硫酸相対粘度は、以下のようにして測定される値である。
(a)試料を秤量し、98重量%濃硫酸に試料濃度(C)が1g/100mlとなるように溶解する。
(b)(a)項の溶液をオストワルド粘度計にて25℃での落下秒数(T1)を測定する。
(c)試料を溶解していない98重量%濃硫酸の25℃での落下秒数(T2)を(b)項と同様に測定する。
(d)試料の98%硫酸相対粘度(ηr)を下式により算出する。測定温度は25℃とする。
(ηr)=(T1/T2)+{1.891×(1.000−C)}
【0015】
本発明のポリアミドモノフィラメントの製造方法において、紡糸に供するポリアミド樹脂チップは乾燥等により水分率を0.11〜0.15%に調整することが好ましい。かかる範囲とすることにより、ポリアミドモノフィラメントに発生していた節を容易に低減することができる。ここでいう水分率は、ポリアミド樹脂チップ試料を微量水分計(松井製作所製アクアハンターAQ−30微量水分測定機)に投入し、230℃、30分の条件にて水分を気化させ水分値を読みとって測定される値である。
【0016】
また、本発明でいう節とは、ポリアミドモノフィラメント長手方向の瘤状の繊度斑であり、一般的な繊度斑と異なり、目標糸直径の1.1倍の内径を有するガイドを通過しないポリアミドモノフィラメントの直径が正常部に対し概ね1.2倍以上の太い繊度斑のことをいう。
【0017】
本発明のポリアミドモノフィラメントの製造方法において、その基本的な製造プロセスは公知の技術等通常の技術でよい。溶融紡糸による製造方法について、紡糸−延伸工程を連続して行う方法(直接紡糸延伸法)、未延伸糸を一旦巻き取った後に延伸する方法(2工程法)、あるいは紡糸速度を4000m/min以上のように高速として実質的に延伸工程を省略する方法(高速紡糸法)等、いずれの方法においても製造可能であるが、生産性の面からは、直接紡糸延伸法が好ましい。
【0018】
次に、本発明のポリアミドモノフィラメントの製造方法の一例について、図2の工程概略図にしたがって説明する。図2は、本発明のポリアミドモノフィラメントの製造方法の一例を示す工程概略図である。
【0019】
まず押出機(図示せず)内で溶融したポリアミド樹脂チップを、溶融紡糸パック11に供し、吐出孔を円周状に2孔配列した丸孔の紡糸口金12より紡出糸条Yを吐出する。なお前記吐出孔数は必要に応じて変更可能である。次に、一方向から吹き付ける風のユニフロー形式のチムニー13により糸条Yを冷却し、2フィラメントの糸条を1糸条ずつに分けて、給油ガイド14で給油を行った後、第1ゴデーローラー15と、第2ゴデーローラー16とで一旦巻き取ることなく延伸し、さらに第3ゴデーローラー17と第4ゴデーローラー18間で熱処理を行い、ドラム状パッケージとして巻取り装置19に巻き取る。ポリアミド樹脂チップを溶融し吐出するに際しての溶融紡糸温度は、ポリアミド樹脂の融点を超える温度、すなわち融点プラス40〜90℃で溶融することが好ましい。融点プラス40℃未満の場合は、ポリアミド溶融ポリマーの溶融斑、溶融ポリマー粘度バラツキが発生し溶融紡糸パック内での異常滞留の原因となる。また、融点プラス90℃を超える場合は、熱変性したゲル化ポリマーが発生しやすくなり、ポリマーが完全に溶融されずに口金孔からゲル状物が混入した糸条が吐出され、糸粘度の斑や強度低下の原因となる。
【0020】
本発明のポリアミドモノフィラメント製造方法において使用する溶融紡糸パックは、少なくとも(a)口金、(b)耐圧板、(c)金属線フィルター、および(d)砂濾材層または整流板を配置した溶融紡糸パックであり、(c)金属線フィルターと(d)砂濾材層または整流板との間に(e)略多角形状の断面を有する金属短繊維を積層し焼結した焼結フィルター(以下、焼結フィルターと略す)を設けることが必要である。略多角形状を有する金属短繊維を用いることによって金属短繊維相互の絡み合いが発生し濾過性や分散性が向上するためである。略多角形状としては、図3に示すように、鋭角な断面形状を有する形状であることが好ましい。略多角形状の金属短繊維を積層して焼結することで形成される空隙部により熱変性したゲル化ポリマーを細かく分散させることができ、さらに鋭角な断面形状とすることにより熱変性したゲル化ポリマーをいっそう細かく細分化することができる。この略多角形状を有する金属単繊維は、びびり振動切削法によって作ることができる。更に金属短繊維のアスペクト比を10〜100とすることによって金属短繊維相互の絡みつきがより強固となる。アスペクト比は、(金属短繊維の長さ)/(金属短繊維の直径)で算出される値である。具体例としてはステンレス繊維で長さ1.0〜3.0mm、換算直径30〜60μmのものが挙げられる。
【0021】
図1は、本発明の溶融紡糸用パックの一例を示す縦断面図であり、溶融紡糸パックはパックケースである溶融ポリマー導入用の上部パックブロック1と中間パックブロック2と紡糸用の下部パックブロック3とからなる構成となっている。上部パックブロック1には、溶融ポリマーをパック内に導入するポリマー導入孔4が設けられている。中間パックブロック2は中空筒状に形成され、その中空部に砂濾材と呼ばれるサンドまたはメタルパウダーなどの粉流体からなる砂濾材5が設けられている。下部パックブロック3は、中空筒状の下部に突出段部3aを設け、この突出段部3a上に複数のポリマー吐出孔8aを有する紡糸口金8と複数のポリマー通過孔7aを有する耐圧板7を装着した構成となっている。この耐圧板7は、紡糸口金8上にシール用のパッキン10を介して配設されている。耐圧板7の上には金属線フィルター6が積層されている。金属線フィルター6は耐圧板7上に直接載置されている。
【0022】
さらにこの金属線フィルター6と前記した砂濾材5との間には図3に示すような略多角形状の断面を有する金属短繊維を焼結した焼結フィルター9が設けられている。砂濾材5は中間パックブロック2の中空部内に充填された状態で焼結フィルター9の上に積層されるように充填配置されている。
【0023】
上述のように紡糸口金8、耐圧板7、金属線フィルター6、焼結フィルター9、砂濾材5等を収容した3段の上部パックブロック1、中間パックブロック2、下部パックブロック3はボルト(図示せず)により一体的に締付けられて溶融紡糸パックとして組立てられる。また、溶融紡糸パック構成において、砂濾材5を整流板に変更しても本発明の効果は変わらない。
【0024】
本発明のポリアミドモノフィラメントの製造方法において、ポリアミドモノフィラメントに発生する節の原因の主要因として、ポリアミド溶融ポリマーの粘度バラツキにより熱変性したゲル化ポリマーが発生し、ポリマーが完全に溶融されずに口金孔からゲル状物が糸中に混入した状態で糸条が吐出され、この部分が十分に延伸されないためであると考えられる。節の改善のためには、このゲル状物を分散させる事が必要である。ゲル状物を分散させるためには、溶融紡糸パックを構成する(c)金属線フィルターや(d)砂濾材層または整流板の濾過精度を上げなければならないが、濾過精度を向上させるとパック内圧の上昇を招くこととなる。パック内圧が高くなり過ぎてしまうと、口金等のパック破損に繋がり生産への適用は困難であった。また、(e)焼結フィルターを使用してもポリマー通過量が適切に制御されていないと、(e)焼結フィルター内でポリアミド溶融ポリマーの異常滞留粘度により熱変性したゲル化ポリマーが発生し、節発生が生じてしまう。
【0025】
そのため、溶融紡糸パックを構成する焼結フィルターへのポリマー通過量が0.8〜3.1g/cm・分であることが必要である。ポリマー通過量は、溶融紡糸パック内を通過するポリマー通過量を焼結フィルターの体積当たりに換算した量である。かかる範囲のポリマー通過量に制御することにより、濾過精度を向上させつつパック内圧の上昇を抑え、ゲル状物を分断し細かくすることによって、節発生を抑制できるのである。ポリマー通過量が3.1g/cm・分を超える場合、焼結フィルターによるポリマーのゲル状物の分散が不十分となり節が増加することになる。また、ポリマー通過量が0.8g/cm・分未満の場合、焼結フィルター内でのポリマーの滞留が発生しポリマーのゲル状物が増加するため節が増加することになる。さらに好ましくは、1.2〜2.5である。
【0026】
上記焼結フィルターのポリマー通過量を適正な範囲に制御し、節発生をよりいっそう抑制する観点から焼結フィルターの厚さは1〜3mmであることが好ましい。厚さ3mmを超えると濾層全体の長さが長くなりゲル状物の発生が多くなる。そのため焼結フィルターの厚み分を砂濾材層または整流板による濾層厚さを小さくすることで代償すると砂濾材層または整流板によるポリマーのゲル状物の分散が不十分となり節が増加する傾向になる。また、厚さ1mm未満の場合は、焼結フィルターによるポリマーのゲル状物の分散が不十分となり節が増加することになる。また、焼結フィルターの厚みについて、複数枚の焼結フィルターを重ね合わせ1〜3mmの厚さとしても、本発明の効果は変わらない。かかる範囲の焼結フィルターの厚みとすることで、ポリマー通過量が0.8〜3.1g/cm・分の範囲にコントロールしやすくなるのである。パック内圧は通常使用範囲である100〜250kg/cmの範囲であれば本発明の効果は変わらない。
【0027】
また、焼結フィルターの濾過精度は30〜70μであることが好ましい。濾過精度が30μ未満の場合、焼結フィルターでの目詰まりが発生し、ポリマーのゲル状物の分散が不十分となりやすい。また、濾過精度が70μ以上の場合も、濾過が不十分となりやすく、ポリマーのゲル状物の分散が不十分となりやすい。好ましくは30〜60μmである。なお、濾過精度30μとは30μ以上の異物を98%以上除去する性能を有するということである。また、濾過精度70μとは70μ以上の異物を98%以上除去する性能を有するということである。
【0028】
ポリアミドモノフィラメントの製造方法において、ポリアミドモノフィラメントに発生する節の原因のその他の要因として、口金吐出孔から吐出される糸条の脈動によることが考えられる。節の改善のためには、口金吐出孔からの糸条の脈動、すなわち、口金吐出孔から吐出されるポリマー量が不安定である状態を制御するため、口金吐出孔の孔長(L)と孔直径(D)の比(以下L/Dと称す)を2.0〜3.5、特に2.5〜3.0とすることが好ましい。かかる範囲とすることで口金背面圧の上昇がない口金孔からの糸条の脈動の発生を抑えることが可能となる。
【0029】
本発明のポリアミドモノフィラメントの製造方法において、口金吐出孔から吐出させた糸条の冷却は、冷却風温度9〜11℃において、糸温度40℃以下になるまで冷却することが好ましい。ポリアミドモノフィラメントの冷却においては、糸直径が太い程冷却が遅くなるため、糸温度40℃以下とするために、冷却ゾーンは任意に調整してもよい。尚、糸温度は、給油装置前で測定した値である。
【0030】
本発明のポリアミドモノフィラメントの製造方法において、糸条給油方法は、糸条を十分に冷却された位置において、紡糸油剤を給油ローラー、給油ガイドに代表される通常の給油装置により給油することが出来る。このとき、ポリアミドモノフィラメントへの油剤付着量が糸重量に対して0.4〜1.5重量%となるように給油することが好ましい。また、糸温度40℃以下で給油することが好ましい。
【0031】
延伸方法は、引取りローラー(第1、2ゴデローラー)で引き取った後、加熱された延伸ローラー(第3、4ゴデローラー)に巻き付けて第1ゴデロール15と第3ゴデロール17との間で延伸し、熱処理を行う。このとき、延伸倍率は、2.5〜5.5倍とすることが製糸性の点から好ましい。かかる範囲とすることで、延伸斑による繊度斑のないポリアミドモノフィラメントをドラム状パッケージで巻き締まりなく巻き取ることが可能となる。さらに好ましくは3.5〜5.0である。
【0032】
熱処理温度は、150〜200℃とすることが好ましい。150℃未満の場合は、沸騰水収縮率が大きくなり、紗織物とした時の寸法安定性が悪くなる傾向になる。200℃を越える場合は、加熱された延伸ローラーの汚れにより製糸性が悪化する傾向になる。
【0033】
巻き取り方法は、特に規定しないが公知の巻き取り機で1500〜4500m/分で巻き取ることが好ましい。かかる範囲とすることで、強伸度低下のないポリアミドモノフィラメントを巻取り機の共振の発生が無い安定した巻取りが可能となる。また、糸条の巻き姿は、チーズ状パッケージとすることが好ましく、巻き量は、0.5〜1.5kgであることが好ましい。
【0034】
本発明のポリアミドモノフィラメントは繊度が8〜67dtexである場合に特に有効である。かかる範囲のポリアミドモノフィラメントの製造において、効果が顕著に現れる。67dtexを超えると、糸条繊度、糸直径が太く、糸条が十分に冷却されないため、巻取りが困難となる傾向がある。また、8dtex未満の場合、糸条繊度が細く、巻取張力が高くなり、パッケージの膨れや巻締まりが多発するため、巻取りが困難となる傾向にある。かかる範囲とすることで使用耐久性を満たす引き裂き強力を有したポリアミドモノフィラメントを十分に冷却した状態で安定し巻き取ることが可能となる。さらに好ましくは8〜44dtexである。
【0035】
本発明のポリアミドモノフィラメントは強度が4.0cN/dtex以上であることが好ましい。4.0cN/dtex未満の場合、紗織物とした場合の引裂強力が低く使用耐久性が悪くなる。さらに好ましくは、4.0〜7.0cN/dtexである。また、伸度が30〜60%であることが好ましい。さらに好ましくは、30〜50%である。かかる範囲とすることで、使用耐久性を満たすポリアミドモノフィラメントを糸切れが少ない安定した状態にて巻き取ることが可能となる。
【実施例】
【0036】
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測定した。
【0037】
A.紡糸糸切れ
1t当たりの紡糸中の糸切れ回数を数え、以下の基準でもって判定した。
0〜1回/t:生産性良好、1〜5回/t:生産性やや劣る、5回/t以上:生産性が劣る。
【0038】
B.節糸捕捉率
(1)整経機にドラム状パッケージを500個仕掛ける。
(2)整経機に設置した張力計の出口側に、下記式で算出した目標糸直径の1.1倍の隙間を持った図4に示すスラブキャッチャーを設置する。
目標糸直径(μ)=11.1×[繊度(dtex)×9/10]1/2
尚、スラブキャッチャーは、糸接し長が1〜2mmのセラミックス製のバーガイド20(YM−99C製)を所望する隙間の厚みを有したSUS製のシム板21を挟みボルト(図示せず)で締め付けたものを用いた。
(3)400m/minの速度で整経を実施する。
(4)整経中、スラブキャッチャーに引っ掛かり捕捉された節糸の個数を数える。
(5)節糸捕捉率を下記式より算出する。
節糸捕捉率(ヶ/t)=節糸補足個数(ヶ)/評価糸量(t)
(6)節糸捕捉率の結果から、以下の基準でもって判定した。
0〜0.8ヶ/t:節品位良好、0.9〜2.0ヶ/t:節品位やや劣る、2.1ヶ/t以上:節品位が劣る。
【0039】
C.糸斑
ウースター糸斑測定装置(ZELLWGER社製 USTER TESTER I)を用い、200mの糸速で糸斑をノーマルで測定し、糸長1000m当たりのチャートで平均値に対し4倍以上のひげ状の変動の個数を数え、以下の基準でもって判定した。
0ヶ:節が無くひげ状の変動がない、1〜2ヶ:節がやや有りひげ状の変動がある、3ヶ以上:節が多く有りひげ状の変動がある。
【0040】
D.繊度
JIS L1013((化学繊維フィラメント糸試験方法、2010年)の8.3項 A法に準じた。試料を枠周1.125mの検尺機にて27デシテックス以下の品種は400回巻、28デシテックス以上の品種は200回巻カセを作成し、熱風乾燥機にて乾燥後(105±2℃×60分)天秤にてカセ重量を量りポリアミドの公定水分率(4.5%)を乗じた値から繊度を算出した。
【0041】
E.強度、伸度
オリエンテック(株)社製テンシロン(TENSILON)UCT−100でJIS L1013(化学繊維フィラメント糸試験方法、2010年)に示される定速伸長条件で測定した。強力は、引張強さ−伸び曲線における最大強力を示した点、伸度は最大強力の伸びから求めた。また、強度は、最大強力を総繊度で割り返した値を強度とした。測定は10回行い、平均値を強力および伸度とした。なお、つかみ間隔50cm、引張速度50cm/minである。
【0042】
F.分散性
分散性は、溶融紡糸パック中での、分散性をより見やすくするためにカーボンブラック混率3重量%の98%硫酸相対粘度が2.8のナイロン6チップを用い、260℃で溶融し、溶融紡糸パックを通過させた押し出しポリマーを採取する。この押し出しポリマーを、250℃で溶融し、厚さ0.1mmのフィルム化したサンプル作成する。このフィルムサンプルを、デジタルマイクロスコープ(KEYENCE VH−5500、100倍)で観察し、ポリマー中のカーボンブラックの最大粒径を測定し、以下の基準でもって判定した。
2.0μm以下:分散性良好、2.0μm超え:分散性悪い。
【0043】
[実施例1]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、パックケース内に口金孔径(D)φ0.5mm、孔長(L)1.25mmの吐出孔を円周状に2孔配列した丸孔の紡糸口金8、耐圧板7、金属線フィルター6、図3に示す略多角形状の断面を有し長さ1.0〜3.0mm、換算直径30〜60μm、アスペクト比10〜100のバラツキを有するステンレス短繊維からなる焼結フィルター(厚み2mm、濾過精度40μ)9、砂濾材5の順に溶融紡糸パックを組み立てた。焼結フィルター9へのポリマー通過量が1.6g/m・分となるよう吐出量を調整し、溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
【0044】
図2に示す装置を用い、98%硫酸相対粘度が2.8のナイロン66チップを292℃で溶融し、単吐出孔当たりのポリマー吐出量を6.1g/分、焼結フィルターへのポリマー通過量が1.6g/mとなるよう吐出量を調整し、上記と同様の構成の溶融紡糸パック11に供し、紡糸口金12より紡出糸条Yを吐出し、口金下流側面に設けた加熱手段(図示せず)により加熱された加熱気体流路(図示せず)から、口金へ水蒸気を130℃、口金面積1cmあたり150ミリグラム/分の量で供給した後、一方方向から吹き付ける風のユニフロー形式のチムニー13により糸条を冷却し、2フィラメントの糸条を1糸条ずつに分けて、給油ガイド14で給油(油剤付着量0.6%)を行った後、第1、2ゴデーローラー15、16に330m/分で引き取り、一旦巻き取ることなく、4.8倍にて延伸し、170℃に加熱し、鏡面処理された第3ゴデーローラー17と、170℃に加熱し、梨地処理された第4ゴデーローラー18間で熱処理を行い、1500m/分でドラム状パッケージとして巻取り装置19に巻き取ることにより、44デシテックスのナイロン66モノフィラメント(2糸条)を得た。
【0045】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0046】
[実施例2]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、口金孔径(D)φ0.5mm、孔長(L)1.25mmの吐出孔を円周状に4孔配列した丸孔の紡糸口金8、ポリマー通過量を3.0g/mとした以外は実施例1と同様に溶融紡糸パックを組み立て、溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
【0047】
上記と同様の構成の溶融紡糸パックを用い、単吐出孔当たりのポリマー吐出量を5.5g/分、ポリマー通過量が3.0g/m・分、第1、2ゴデーローラー15、16に420m/分で引き取り、4.5倍にて延伸し、1800m/分でドラム状パッケージとして巻き取る以外は実施例1と同様に製糸し、33デシテックスのナイロン66モノフィラメント(4糸条)を得た。
【0048】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0049】
[実施例3]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、図3に示す略多角形状の断面を有し長さ1.0〜3.0mm、換算直径30〜60μm、アスペクト比10〜100のバラツキを有するステンレス短繊維の焼結フィルター(厚み3mm、濾過精度40μ)9、単吐出孔当たりのポリマー吐出量を6.1g/分、ポリマー通過量を1.1g/m・分とした以外は実施例1と同様に溶融紡糸パックを組み立て、溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
【0050】
上記と同様の構成の溶融紡糸パックを用いた以外は、実施例1と同様に製糸し、44デシテックスのナイロン66モノフィラメント糸(2糸条)を得た。
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0051】
[実施例4]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、パックケース内に口金孔径(D)φ0.5mm、孔長(L)1.25mmの吐出孔を円周状に4孔配列した丸孔の紡糸口金8、図3に示す略多角形状の断面を有し長さ1.0〜3.0mm、換算直径30〜60μm、アスペクト比10〜100のバラツキを有するステンレス短繊維の焼結フィルター(厚み1mm、濾過精度40μ)9、単吐出孔当たりのポリマー吐出量を2.3g/分、ポリマー通過量を2.5g/m・分とした以外は実施例1と同様に溶融紡糸パックを組み立て、溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
【0052】
上記と同様の構成の溶融紡糸パックを用い、ポリマー通過量が2.5g/m・分、第1、2ゴデーローラー15、16に840m/分で引き取り、3.7倍にて延伸し、3000m/分でドラム状パッケージとして巻き取る以外は実施例1と同様に製糸し、8デシテックスのナイロン66モノフィラメント(4糸条)を得た。
【0053】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0054】
[実施例5]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、口金孔径(D)φ0.5mm、孔長(L)1.25mmの吐出孔を円周状に4孔配列した丸孔の紡糸口金8、単吐出孔当たりのポリマー吐出量を3.9g/分、ポリマー通過量を2.1g/m・分とした以外は実施例1と同様に溶融紡糸パックを組み立て、溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
【0055】
上記と同様の構成の溶融紡糸パックを用い、ポリマー通過量が2.1g/m・分、第1、2ゴデーローラー15、16に630m/分で引き取り、4.2倍にて延伸し、2500m/分でドラム状パッケージとして巻き取る以外は実施例1と同様に製糸し、17デシテックスのナイロン66モノフィラメント(4糸条)を得た。
【0056】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0057】
[実施例6]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、図3に示す略多角形状の断面を有し長さ1.0〜3.0mm、換算直径30〜60μm、アスペクト比10〜100のバラツキを有するステンレス短繊維の焼結フィルター(厚み2mm、濾過精度60μ)9、単吐出孔当たりのポリマー吐出量を6.1g/分、ポリマー通過量を1.1g/m・分とした以外は実施例1と同様に溶融紡糸パックを組み立て、溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
【0058】
上記と同様の構成の溶融紡糸パックを用いた以外は、実施例1と同様に製糸し、44デシテックスのナイロン66モノフィラメント糸(2糸条)を得た。
【0059】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0060】
[実施例7]
実施例1と同様の構成の溶融紡糸パックを用い、98%硫酸相対粘度が2.8のナイロン6チップを265℃で溶融した以外は実施例1と同様に製糸し、44デシテックスのナイロン6モノフィラメント(2糸条)を得た。
【0061】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0062】
[実施例8]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、パックケース内に口金孔径(D)φ0.5mm、孔長(L)0.6mmの吐出孔を円周状に2孔配列した丸孔の紡糸口金8とした以外は実施例1と同様に溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
【0063】
上記と同様の構成の溶融紡糸パックを用い、実施例1と同様に製糸し、44デシテックスのナイロン66モノフィラメント(2糸条)を得た。
【0064】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0065】
[比較例1]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、口金孔径(D)φ0.5mm、孔長(L)1.25mmの吐出孔を円周状に2孔配列した丸孔の紡糸口金8、耐圧板7、金属線フィルター6、砂濾材5の順に、溶融紡糸パックを組み立て、略多角形状の断面を有する金属短繊維からなる焼結フィルター9を使用しない溶融紡糸パックを準備した。単吐出孔当たりのポリマー吐出量が6.1g/分となる様に、吐出量を調整し実施例1と同様に溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
【0066】
上記と同様の構成の溶融紡糸パックを用い、実施例1と同様に製糸し、44デシテックスのナイロン66モノフィラメント(2糸条)を得た。
【0067】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0068】
[比較例2]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、図3に示す略多角形状の断面を有し長さ1.0〜3.0mm、換算直径30〜60μm、アスペクト比10〜100のバラツキを有するステンレス短繊維の焼結フィルター(厚み1mm、濾過精度40μ)9、ポリマー通過量を3.3g/m・分とした以外は実施例1と同様に溶融紡糸パックを組み立て、溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
上記と同様の構成の溶融紡糸パックを用いた以外は、実施例1と同様に製糸し、44デシテックスのナイロン66モノフィラメント(2糸条)を得た。
【0069】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0070】
[比較例3]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、図3に示す略多角形状の断面を有し長さ1.0〜3.0mm、換算直径30〜60μm、アスペクト比10〜100のバラツキを有するステンレス短繊維の焼結フィルター(厚み1mm、濾過精度60μ)9、ポリマー通過量を3.3g/m・分とした以外は実施例1と同様に溶融紡糸パックを組み立て、溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
【0071】
上記と同様の構成の溶融紡糸パックを用いた以外は、実施例1と同様に製糸し、44デシテックスのナイロン66モノフィラメント(2糸条)を得た。
【0072】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0073】
[比較例4]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、図3に示す略多角形状の断面を有し長さ1.0〜3.0mm、換算直径30〜60μm、アスペクト比10〜100のバラツキを有するステンレス短繊維の焼結フィルター(厚み1mm、濾過精度40μ)9、ポリマー通過量を5.9g/m・分とした以外は実施例2と同様に溶融紡糸パックを組み立て、溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
【0074】
上記と同様の構成の溶融紡糸パックを用いた以外は、実施例2と同様に製糸し、33デシテックスのナイロン66モノフィラメント(4糸条)を得た。
【0075】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0076】
[比較例5]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、図3に示す略多角形状の断面を有し長さ1.0〜3.0mm、換算直径30〜60μm、アスペクト比10〜100のバラツキを有するステンレス短繊維の焼結フィルター(厚み5mm、濾過精度40μ)9、ポリマー通過量を0.7g/m・分とした以外は実施例1と同様に溶融紡糸パックを組み立て、溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
【0077】
上記と同様の構成の溶融紡糸パックを用いた以外は、実施例1と同様に製糸し、44デシテックスのナイロン66モノフィラメント(2糸条)を得た。
【0078】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1の結果から明らかなように、本発明の製造方法から得られるナイロン66モノフィラメント(実施例1〜6、8)およびナイロン6モノフィラメント(実施例7)は、従来の製造方法で得られるナイロン66モノフィラメントと比較して、溶融紡糸パックの分散性が向上し、紡糸糸切れが少なく、紡糸での節糸捕捉率が低く、糸斑が良好で、生産性及び品質に優れるものであった。また、好ましい態様においては、紡糸における節糸捕捉率がさらに低く、節低減に極めて顕著な効果を奏するものであると言える。
【符号の説明】
【0081】
1 : 上部パックブロック
2 : 中間パックブロック
3 : 下部パックブロック
3a: 突出段部
4 : ポリマー導入孔
5 : 砂濾材
6 : 金属線フィルター
7 : 耐圧板
7a: ポリマー通過孔
8 : 紡糸口金
8a: ポリマー吐出孔
9 :焼結フィルター
10: パッキン
11:溶融紡糸パック
12:紡糸口金
13:ユニフロー形式のチムニー
14:給油ガイド
15:第1ゴデーローラー
16:第2ゴデーローラー
17:第3ゴデーローラー
18:第4ゴデーローラー
19:巻取り装置
20:バーガイド
21:シム板
図1
図2
図3
図4