【実施例】
【0036】
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測定した。
【0037】
A.紡糸糸切れ
1t当たりの紡糸中の糸切れ回数を数え、以下の基準でもって判定した。
0〜1回/t:生産性良好、1〜5回/t:生産性やや劣る、5回/t以上:生産性が劣る。
【0038】
B.節糸捕捉率
(1)整経機にドラム状パッケージを500個仕掛ける。
(2)整経機に設置した張力計の出口側に、下記式で算出した目標糸直径の1.1倍の隙間を持った
図4に示すスラブキャッチャーを設置する。
目標糸直径(μ
m)=11.1×[繊度(dtex)×9/10]
1/2
尚、スラブキャッチャーは、糸接し長が1〜2mmのセラミックス製のバーガイド20(YM−99C製)を所望する隙間の厚みを有したSUS製のシム板21を挟みボルト(図示せず)で締め付けたものを用いた。
(3)400m/minの速度で整経を実施する。
(4)整経中、スラブキャッチャーに引っ掛かり捕捉された節糸の個数を数える。
(5)節糸捕捉率を下記式より算出する。
節糸捕捉率(ヶ/t)=節糸補足個数(ヶ)/評価糸量(t)
(6)節糸捕捉率の結果から、以下の基準でもって判定した。
0〜0.8ヶ/t:節品位良好、0.9〜2.0ヶ/t:節品位やや劣る、2.1ヶ/t以上:節品位が劣る。
【0039】
C.糸斑
ウースター糸斑測定装置(ZELLWGER社製 USTER TESTER I)を用い、200mの糸速で糸斑をノーマルで測定し、糸長1000m当たりのチャートで平均値に対し4倍以上のひげ状の変動の個数を数え、以下の基準でもって判定した。
0ヶ:節が無くひげ状の変動がない、1〜2ヶ:節がやや有りひげ状の変動がある、3ヶ以上:節が多く有りひげ状の変動がある。
【0040】
D.繊度
JIS L1013((化学繊維フィラメント糸試験方法、2010年)の8.3項 A法に準じた。試料を枠周1.125mの検尺機にて27デシテックス以下の品種は400回巻、28デシテックス以上の品種は200回巻カセを作成し、熱風乾燥機にて乾燥後(105±2℃×60分)天秤にてカセ重量を量りポリアミドの公定水分率(4.5%)を乗じた値から繊度を算出した。
【0041】
E.強度、伸度
オリエンテック(株)社製テンシロン(TENSILON)UCT−100でJIS L1013(化学繊維フィラメント糸試験方法、2010年)に示される定速伸長条件で測定した。強力は、引張強さ−伸び曲線における最大強力を示した点、伸度は最大強力の伸びから求めた。また、強度は、最大強力を総繊度で割り返した値を強度とした。測定は10回行い、平均値を強力および伸度とした。なお、つかみ間隔50cm、引張速度50cm/minである。
【0042】
F.分散性
分散性は、溶融紡糸パック中での、分散性をより見やすくするためにカーボンブラック混率3重量%の98%硫酸相対粘度が2.8のナイロン6チップを用い、260℃で溶融し、溶融紡糸パックを通過させた押し出しポリマーを採取する。この押し出しポリマーを、250℃で溶融し、厚さ0.1mmのフィルム化したサンプル作成する。このフィルムサンプルを、デジタルマイクロスコープ(KEYENCE VH−5500、100倍)で観察し、ポリマー中のカーボンブラックの最大粒径を測定し、以下の基準でもって判定した。
2.0μm以下:分散性良好、2.0μm超え:分散性悪い。
【0043】
[実施例1]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、パックケース内に口金孔径(D)φ0.5mm、孔長(L)1.25mmの吐出孔を円周状に2孔配列した丸孔の紡糸口金8、耐圧板7、金属線フィルター6、
図3に示す略多角形状の断面を有し長さ1.0〜3.0mm、換算直径30〜60μm、アスペクト比10〜100のバラツキを有するステンレス短繊維からなる焼結フィルター(厚み2mm、濾過精度40μ
m)9、砂濾材5の順に溶融紡糸パックを組み立てた。焼結フィルター9へのポリマー通過量が1.6g/m
3・分となるよう吐出量を調整し、溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
【0044】
図2に示す装置を用い、98%硫酸相対粘度が2.8のナイロン66チップを292℃で溶融し、単吐出孔当たりのポリマー吐出量を6.1g/分、焼結フィルターへのポリマー通過量が1.6g/m
3となるよう吐出量を調整し、上記と同様の構成の溶融紡糸パック11に供し、紡糸口金12より紡出糸条Yを吐出し、口金下流側面に設けた加熱手段(図示せず)により加熱された加熱気体流路(図示せず)から、口金へ水蒸気を130℃、口金面積1cm
2あたり150ミリグラム/分の量で供給した後、一方方向から吹き付ける風のユニフロー形式のチムニー13により糸条を冷却し、2フィラメントの糸条を1糸条ずつに分けて、給油ガイド14で給油(油剤付着量0.6%)を行った後、第1、2ゴデーローラー15、16に330m/分で引き取り、一旦巻き取ることなく、4.8倍にて延伸し、170℃に加熱し、鏡面処理された第3ゴデーローラー17と、170℃に加熱し、梨地処理された第4ゴデーローラー18間で熱処理を行い、1500m/分でドラム状パッケージとして巻取り装置19に巻き取ることにより、44デシテックスのナイロン66モノフィラメント(2糸条)を得た。
【0045】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0046】
[実施例2]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、口金孔径(D)φ0.5mm、孔長(L)1.25mmの吐出孔を円周状に4孔配列した丸孔の紡糸口金8、ポリマー通過量を3.0g/m
3とした以外は実施例1と同様に溶融紡糸パックを組み立て、溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
【0047】
上記と同様の構成の溶融紡糸パックを用い、単吐出孔当たりのポリマー吐出量を5.5g/分、ポリマー通過量が3.0g/m
3・分、第1、2ゴデーローラー15、16に420m/分で引き取り、4.5倍にて延伸し、1800m/分でドラム状パッケージとして巻き取る以外は実施例1と同様に製糸し、33デシテックスのナイロン66モノフィラメント(4糸条)を得た。
【0048】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0049】
[実施例3]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、
図3に示す略多角形状の断面を有し長さ1.0〜3.0mm、換算直径30〜60μm、アスペクト比10〜100のバラツキを有するステンレス短繊維の焼結フィルター(厚み3mm、濾過精度40μ
m)9、単吐出孔当たりのポリマー吐出量を6.1g/分、ポリマー通過量を1.1g/m
3・分とした以外は実施例1と同様に溶融紡糸パックを組み立て、溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
【0050】
上記と同様の構成の溶融紡糸パックを用いた以外は、実施例1と同様に製糸し、44デシテックスのナイロン66モノフィラメント糸(2糸条)を得た。
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0051】
[実施例4]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、パックケース内に口金孔径(D)φ0.5mm、孔長(L)1.25mmの吐出孔を円周状に4孔配列した丸孔の紡糸口金8、
図3に示す略多角形状の断面を有し長さ1.0〜3.0mm、換算直径30〜60μm、アスペクト比10〜100のバラツキを有するステンレス短繊維の焼結フィルター(厚み1mm、濾過精度40μ
m)9、単吐出孔当たりのポリマー吐出量を2.3g/分、ポリマー通過量を2.5g/m
3・分とした以外は実施例1と同様に溶融紡糸パックを組み立て、溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
【0052】
上記と同様の構成の溶融紡糸パックを用い、ポリマー通過量が2.5g/m
3・分、第1、2ゴデーローラー15、16に840m/分で引き取り、3.7倍にて延伸し、3000m/分でドラム状パッケージとして巻き取る以外は実施例1と同様に製糸し、8デシテックスのナイロン66モノフィラメント(4糸条)を得た。
【0053】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0054】
[実施例5]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、口金孔径(D)φ0.5mm、孔長(L)1.25mmの吐出孔を円周状に4孔配列した丸孔の紡糸口金8、単吐出孔当たりのポリマー吐出量を3.9g/分、ポリマー通過量を2.1g/m
3・分とした以外は実施例1と同様に溶融紡糸パックを組み立て、溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
【0055】
上記と同様の構成の溶融紡糸パックを用い、ポリマー通過量が2.1g/m
3・分、第1、2ゴデーローラー15、16に630m/分で引き取り、4.2倍にて延伸し、2500m/分でドラム状パッケージとして巻き取る以外は実施例1と同様に製糸し、17デシテックスのナイロン66モノフィラメント(4糸条)を得た。
【0056】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0057】
[実施例6]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、
図3に示す略多角形状の断面を有し長さ1.0〜3.0mm、換算直径30〜60μm、アスペクト比10〜100のバラツキを有するステンレス短繊維の焼結フィルター(厚み2mm、濾過精度60μ
m)9、単吐出孔当たりのポリマー吐出量を6.1g/分、ポリマー通過量を1.1g/m
3・分とした以外は実施例1と同様に溶融紡糸パックを組み立て、溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
【0058】
上記と同様の構成の溶融紡糸パックを用いた以外は、実施例1と同様に製糸し、44デシテックスのナイロン66モノフィラメント糸(2糸条)を得た。
【0059】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0060】
[実施例7]
実施例1と同様の構成の溶融紡糸パックを用い、98%硫酸相対粘度が2.8のナイロン6チップを265℃で溶融した以外は実施例1と同様に製糸し、44デシテックスのナイロン6モノフィラメント(2糸条)を得た。
【0061】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0062】
[実施例8]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、パックケース内に口金孔径(D)φ0.5mm、孔長(L)0.6mmの吐出孔を円周状に2孔配列した丸孔の紡糸口金8とした以外は実施例1と同様に溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
【0063】
上記と同様の構成の溶融紡糸パックを用い、実施例1と同様に製糸し、44デシテックスのナイロン66モノフィラメント(2糸条)を得た。
【0064】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0065】
[比較例1]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、口金孔径(D)φ0.5mm、孔長(L)1.25mmの吐出孔を円周状に2孔配列した丸孔の紡糸口金8、耐圧板7、金属線フィルター6、砂濾材5の順に、溶融紡糸パックを組み立て、略多角形状の断面を有する金属短繊維からなる焼結フィルター9を使用しない溶融紡糸パックを準備した。単吐出孔当たりのポリマー吐出量が6.1g/分となる様に、吐出量を調整し実施例1と同様に溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
【0066】
上記と同様の構成の溶融紡糸パックを用い、実施例1と同様に製糸し、44デシテックスのナイロン66モノフィラメント(2糸条)を得た。
【0067】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0068】
[比較例2]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、
図3に示す略多角形状の断面を有し長さ1.0〜3.0mm、換算直径30〜60μm、アスペクト比10〜100のバラツキを有するステンレス短繊維の焼結フィルター(厚み1mm、濾過精度40μ
m)9、ポリマー通過量を3.3g/m
3・分とした以外は実施例1と同様に溶融紡糸パックを組み立て、溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
上記と同様の構成の溶融紡糸パックを用いた以外は、実施例1と同様に製糸し、44デシテックスのナイロン66モノフィラメント(2糸条)を得た。
【0069】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0070】
[比較例3]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、
図3に示す略多角形状の断面を有し長さ1.0〜3.0mm、換算直径30〜60μm、アスペクト比10〜100のバラツキを有するステンレス短繊維の焼結フィルター(厚み1mm、濾過精度60μ
m)9、ポリマー通過量を3.3g/m
3・分とした以外は実施例1と同様に溶融紡糸パックを組み立て、溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
【0071】
上記と同様の構成の溶融紡糸パックを用いた以外は、実施例1と同様に製糸し、44デシテックスのナイロン66モノフィラメント(2糸条)を得た。
【0072】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0073】
[比較例4]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、
図3に示す略多角形状の断面を有し長さ1.0〜3.0mm、換算直径30〜60μm、アスペクト比10〜100のバラツキを有するステンレス短繊維の焼結フィルター(厚み1mm、濾過精度40μ
m)9、ポリマー通過量を5.9g/m
3・分とした以外は実施例2と同様に溶融紡糸パックを組み立て、溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
【0074】
上記と同様の構成の溶融紡糸パックを用いた以外は、実施例2と同様に製糸し、33デシテックスのナイロン66モノフィラメント(4糸条)を得た。
【0075】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0076】
[比較例5]
図1に示す構成の溶融紡糸パックにおいて、
図3に示す略多角形状の断面を有し長さ1.0〜3.0mm、換算直径30〜60μm、アスペクト比10〜100のバラツキを有するステンレス短繊維の焼結フィルター(厚み5mm、濾過精度40μ
m)9、ポリマー通過量を0.7g/m
3・分とした以外は実施例1と同様に溶融紡糸パックを組み立て、溶融紡糸パックの分散性について評価した。その結果を表1に示す。
【0077】
上記と同様の構成の溶融紡糸パックを用いた以外は、実施例1と同様に製糸し、44デシテックスのナイロン66モノフィラメント(2糸条)を得た。
【0078】
得られたナイロン66モノフィラメントについて、紡糸糸切れ、糸斑、繊度、強度、伸度について評価した。続いて、得られたドラム状パッケージ(1kg)を整経機に仕掛け、節糸捕捉率について評価した。その結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1の結果から明らかなように、本発明の製造方法から得られるナイロン66モノフィラメント(実施例1〜6、8)およびナイロン6モノフィラメント(実施例7)は、従来の製造方法で得られるナイロン66モノフィラメントと比較して、溶融紡糸パックの分散性が向上し、紡糸糸切れが少なく、紡糸での節糸捕捉率が低く、糸斑が良好で、生産性及び品質に優れるものであった。また、好ましい態様においては、紡糸における節糸捕捉率がさらに低く、節低減に極めて顕著な効果を奏するものであると言える。