(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、筐体部と蓄熱物質との接合面の接触性が十分でないと、両者の接合面での熱損失が大きくなるため、加熱対象である排気触媒を効果的に加熱することができないという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、加熱対象を効果的に加熱することができる排気浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エンジンからの排ガスを浄化する排気浄化装置において、エンジンと接続される排気通路に設けられる加熱対象と、反応媒体と化学反応して熱を発生させる蓄熱材を含み、蓄熱材で発生した熱により加熱対象を加熱する反応器と、反応器と接続され、反応媒体を貯蔵する貯蔵器とを備え、加熱対象と蓄熱材との間には、介在部が加熱対象及び蓄熱材と接するように配置されており、介在部と蓄熱材との接触部分は凹凸状をなしていることを特徴とするものである。
【0007】
このような本発明の排気浄化装置においては、貯蔵器に貯蔵された反応媒体と反応器に含まれる蓄熱材とが化学反応して熱が発生し、その熱が介在部を介して加熱対象に伝わることで、加熱対象が加熱される。このとき、介在部と蓄熱材との接触部分を凹凸状とすることにより、介在部と蓄熱材との接触面積が大きくなる。このため、介在部と蓄熱材との間における熱抵抗が小さくなり、蓄熱材から介在部への熱伝導性が向上する。これにより、加熱対象を効果的に加熱することができる。
【0008】
好ましくは、加熱対象は、排気通路の一部を形成する排気管の内部に配置されており、介在部は、排気管である。この場合には、排気管と蓄熱材との接触部分が凹凸状をなすこととなるため、蓄熱材から排気管への熱伝導性が向上する。
【0009】
また、反応器は、蓄熱材を収容するケースを有し、介在部は、ケースであっても良い。この場合には、ケースと蓄熱材との接触部分が凹凸状をなすこととなるため、蓄熱材からケースへの熱伝導性が向上する。
【0010】
また、好ましくは、反応器内における蓄熱材に対して介在部の反対側には、弾性を有する断熱材が配置されている。このような構成では、弾性を有する断熱材によって蓄熱材が介在部に対して押し付けられることになるため、蓄熱材と介在部との接触度が高くなる。従って、蓄熱材から介在部への熱伝導性が更に向上するため、加熱対象をより効果的に加熱することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加熱対象を効果的に加熱することができる。これにより、例えば加熱対象が排気触媒である場合に、排気触媒による排気浄化作用を促進させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る排気浄化装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明に係る排気浄化装置の一実施形態を示す概略構成図である。同図において、本実施形態の排気浄化装置1は、車両のディーゼルエンジン2(以下、単にエンジン2という)の排気系に設けられ、エンジン2から排出される排ガス中に含まれる有害物質(環境汚染物質)を浄化する装置である。
【0015】
排気浄化装置1は、エンジン2と接続された排気通路3の途中に上流側から下流側に向けて順に設けられた酸化触媒(DOC)4、ディーゼル排気微粒子除去フィルタ(DPF)5、選択還元触媒(SCR)6及び酸化触媒(ASC)7を備えている。
【0016】
酸化触媒4は、排ガス中に含まれるHCやCO等を酸化して浄化する触媒である。DPF5は、排ガス中に含まれるPMを捕集して取り除くフィルタである。SCR6は、添加弁8より添加された尿素水から加水分解して生成されたNH
3(アンモニア)によって、排ガス中に含まれるNOxを還元して浄化する触媒である。酸化触媒7は、SCR6をすり抜けて下流側に流れたNH
3を酸化する触媒である。
【0017】
酸化触媒4は、
図2及び
図3に示すように、排気通路3の一部を形成する円筒状の排気管9の内側に配置されている。酸化触媒4は、触媒物質を担持するハニカム基材10からなっている。ハニカム基材10は、熱伝導率の高いSiC(炭化ケイ素)で形成されているのが望ましい。ハニカム基材10に担持される触媒物質としては、白金やパラジウム等の貴金属が用いられる。
【0018】
このような酸化触媒4等の触媒には、環境汚染物質の浄化能力を発揮させる温度領域(活性温度)が存在する。従って、酸化触媒4の温度を活性温度にするために、酸化触媒4を加熱する必要がある。
【0019】
そこで、排気浄化装置1は、エネルギーレスで酸化触媒4を加熱する化学蓄熱ユニット11を備えている。化学蓄熱ユニット11は、通常は排ガスの熱(排熱)を蓄えておき、必要なときに蓄えた熱を使用するというものである。
【0020】
化学蓄熱ユニット11は、
図1及び
図2に示すように、酸化触媒4の周囲に排気管9を挟んで配置されたリング状の反応器12と、この反応器12と媒体供給通路13を介して接続され、反応媒体としてのNH
3を吸着して貯蔵する貯蔵器14とを有している。貯蔵器14には、NH
3を物理吸着する活性炭が内蔵されている。媒体供給通路13には、開閉弁15が設けられている。
【0021】
反応器12は、
図3及び
図4に示すように、金属(例えばSUS)で形成されたリング状のケース16を有している。なお、
図3では、媒体供給通路13は省略している。ケース16内には、NH
3と化学反応して熱を発生させる蓄熱材17が収容されている。蓄熱材17は、排気管9に接触するようにリング状に設けられている。蓄熱材17は、例えばMgCl
2、CaCl
2、NiCl
2、ZnCl
2、SrCl
2等で形成されている。
【0022】
ケース16内における蓄熱材17の外側(蓄熱材17に対して排気管9の反対側)には、弾性を有する断熱材18がケース16に接触するようにリング状に配置されている。弾性を有する断熱材18としては、例えばアルミナやシリカのマットが用いられる。
【0023】
蓄熱材17と断熱材18との間には、NH
3の流路を形成する金属繊維19が介在されている。金属繊維19としては、例えばSUS繊維等が挙げられる。媒体供給通路13の一端部は、断熱材18を貫通して金属繊維19と接続されている。
【0024】
排気管9と蓄熱材17との接触部分は凹凸状をなしている。具体的には、排気管9の外周面には、複数の断面矩形状(柱状)の突起部9aが酸化触媒4の長手方向(排気方向)及び円周方向に沿って突設されている。各突起部9aは、例えばブラスト、溶射、エッチング及び金型プレス等によってエンボス加工またはデボス加工を施すことにより形成される。そして、各突起部9a間に蓄熱材17が入り込んだ状態となっている。これにより、排気管9と蓄熱材17との接触部分が凹凸状に粗面化されることとなる。
【0025】
このとき、弾性を有する断熱材18によって蓄熱材17が排気管9に押し付けられるため、蓄熱材17は排気管9と隙間無く密接するようになる。なお、排気管9は、酸化触媒4及び蓄熱材17と接触する介在部を構成している。
【0026】
以上のように構成された排気浄化装置1において、エンジン2からの排ガスの温度が低いときは、貯蔵器14に貯蔵されたNH
3が媒体供給通路13を介して反応器12の蓄熱材17に供給され、蓄熱材17(例えばMgCl
2)とNH
3とが化学反応して化学吸着(配位結合)し、蓄熱材17から熱が発生する。つまり、下記の反応式における左辺から右辺への反応(発熱反応)が起こる。そして、蓄熱材17で発生した熱が排気管9を介して酸化触媒4に伝熱され、その熱によって酸化触媒4が汚染物質の浄化に適した活性温度まで加熱される。
MgCl
2+
xNH
3 ⇔ Mg(NH
3)
xCl
2+熱
【0027】
一方、エンジン2からの排ガスの温度が高くなると、排ガスの熱が蓄熱材17に与えられることでMgCl
2とNH
3とが分離する。つまり、上記の反応式における右辺から左辺への反応(再生反応)が起こる。そして、MgCl
2から分離したNH
3は、媒体供給通路13を介して貯蔵器14に戻って回収される。
【0028】
ここで、排気管9と蓄熱材17との接触部分は凹凸状をなしているため、排気管9と蓄熱材17との接触面積が大きくなり、両者の熱伝導面が増大する。このため、上記の発熱反応においては、蓄熱材17から排気管9へ熱が伝わりやすくなる。また、弾性を有する断熱材18によって蓄熱材17が排気管9に押し付けられるため、蓄熱材17と排気管9との接触度が高くなり、蓄熱材17から排気管9へ熱が更に伝わりやすくなる。従って、蓄熱材17で発生した熱が速やかに酸化触媒4に伝達されるようになるため、発熱反応を迅速に行うことができる。
【0029】
以上のように本実施形態によれば、上述したように排気管9と蓄熱材17との接触面積が大きくなることから、排気管9と蓄熱材17との間の熱抵抗(熱損失)が低下するため、蓄熱材17から排気管9への熱伝導性が向上する。これにより、排気通路3に設けられた酸化触媒4を効果的に加熱することができる。その結果、酸化触媒4による有害物質の浄化作用を促進させることが可能となる。
【0030】
図5は、本発明に係る排気浄化装置の他の実施形態として、化学蓄熱ユニットの反応器を排気管及び酸化触媒と共に示す側断面図である。
【0031】
同図において、本実施形態の排気浄化装置1は、上記の反応器12に代えて、反応器30を備えている。反応器30は、酸化触媒4の周囲に直接配置されている。反応器30は、上記の蓄熱材17、断熱材18及び金属繊維19を収容するケース31を有している。ケース31は、蓄熱材17と接触する内側壁部(介在部)32と、断熱材18と接触する外側壁部33と、内側壁部32と外側壁部33とを繋ぐ側壁部34とを有している。側壁部34には、上記の排気管9が連結されている。
【0032】
内側壁部32と蓄熱材17との接触部分は凹凸状をなしている。具体的には、内側壁部32の周面には、複数の断面矩形状(柱状)の突起部32aが酸化触媒4の長手方向及び円周方向に沿って突設されている。各突起部32aは、上述した実施形態における突起部9aと同じ方法で形成されている。
【0033】
本実施形態においては、ケース31の内側壁部32と蓄熱材17との接触面積が大きくなるため、内側壁部32と蓄熱材17との間の熱抵抗が低下し、蓄熱材17から内側壁部32への熱伝導性が向上する。これにより、上記実施形態と同様に、酸化触媒4を効果的に加熱することができる。
【0034】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものでは無い。例えば、上記実施形態では、複数の柱状の突起部9aが排気管9の外周面に酸化触媒4の長手方向及び円周方向に沿って突設されているが、突起部9aの形状としては特に柱状には限られず、例えば
図6に示すように、複数のリング状の突起部9bを排気管9の外周面に酸化触媒4の長手方向に沿って突設させる構成であっても良い。また、特に図示はしないが、酸化触媒4の長手方向に延びる複数の突起部を排気管9の外周面に酸化触媒4の円周方向に沿って突設させる構成であっても良い。何れの構成においても、排気管9と蓄熱材17との接触部分が凹凸状になっていない場合に比べて、排気管9と蓄熱材17との接触面積が大きくなるため、酸化触媒4を効果的に加熱することが可能となる。
【0035】
また、上記実施形態では、排気管9の外周面に断面矩形状の突起部9aが突設されているが、突起部9aの形状としては特に断面矩形状には限られない。例えば、
図7(a)、(b)に示すように突起部9aの形状を断面三角形状としても良いし、
図7(c)に示すように突起部9aの形状を断面半円形状としても良いし、
図7(d)に示すように突起部9aの形状を断面台形状としても良い。
【0036】
さらに、上記実施形態では、排気管9の外周面に複数の突起部9aを設けることで、排気管9と蓄熱材17との接触部分を凹凸状となるようにしたが、排気管9と蓄熱材17との接触部分を凹凸状とする構造としては、特にそれには限られず、連結体としても良い。例えば
図8に示すように、格子状の連結体構造物20を排気管9の外周面に固定しても良い。連結体構造物20は、蓄熱材17側に開口している。そして、連結体構造物20の開口に蓄熱材17が入り込んだ状態となる。これにより、排気管9と蓄熱材17との接触部分が凹凸状をなすこととなるため、上記と同様に排気管9と蓄熱材17との接触面積が大きくなる。なお、連結体構造物20を形成する格子の形状としては、六角形や四角形であれば良い。連結体構造物20を構成する個々の枠体20aは、溶接及びロウ付け等により接合される。
【0037】
また、排気管9と蓄熱材17との接触部分を凹凸状とする構造としては、それ以外にも、例えば排気管9の外周面に複数の円形の凹部を形成しても良い。
【0038】
なお、以上の変形例については、ケース31の内側壁部32と蓄熱材17との接触部分に形成された凹凸状の構造にも適用可能である。
【0039】
また、上記実施形態では、酸化触媒4の外周に反応器12;30を配置する構成としたが、反応器の配置箇所としては、特にそれに限られず、酸化触媒4の中であっても良い。その場合には、反応器は筒状のケース内に蓄熱材のみを収容し、ケースと蓄熱材との接触部分を凹凸状とする。
【0040】
さらに、上記実施形態では、反応媒体であるNH
3とMgCl
2、CaCl
2等の蓄熱材17とを化学反応させて熱を発生させるようにしたが、反応媒体としては、特にNH
3には限られず、例えばH
2Oとしても良い。この場合には、H
2Oと化学反応させる蓄熱材としては、CaO、MnO、CuO、Al
2O
3等を使用する。
【0041】
さらに、上記実施形態は、ディーゼルエンジン2の排気系に設けられた酸化触媒4を加熱するものであるが、本発明は、ディーゼルエンジン2の排気系に設けられた他の排気触媒や部材を加熱するもの、或いはガソリンエンジンの排気系に設けられた何れかの排気触媒や部材を加熱するものにも適用可能である。