特許第6160263号(P6160263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6160263
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】ロキソプロフェン含有医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4535 20060101AFI20170703BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20170703BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20170703BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20170703BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20170703BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20170703BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20170703BHJP
   A61P 11/14 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   A61K31/4535
   A61K31/192
   A61K9/14
   A61K9/20
   A61K9/48
   A61P29/00
   A61P25/04
   A61P11/14
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-115177(P2013-115177)
(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公開番号】特開2014-12660(P2014-12660A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2016年5月23日
(31)【優先権主張番号】特願2012-129723(P2012-129723)
(32)【優先日】2012年6月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】土屋 裕里
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恭子
(72)【発明者】
【氏名】湊 孝文
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 大樹
【審査官】 渡部 正博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−225529(JP,A)
【文献】 特開2010−235599(JP,A)
【文献】 特開2010−215611(JP,A)
【文献】 特表2004−521104(JP,A)
【文献】 特表2010−533168(JP,A)
【文献】 特開2007−051094(JP,A)
【文献】 特表2010−509367(JP,A)
【文献】 特表2005−504064(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/085027(WO,A1)
【文献】 特開2007−091648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/80
A61K 9/00−9/72
A61P 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロキソプロフェン又はその塩と、チペピジン又はその塩とを実質的に互いに接触しないように含有する医薬組成物。
【請求項2】
ロキソプロフェン又はその塩と、チペピジン又はその塩とを実質的に互いに接触しないように含有する医薬組成物であって、実質的に互いに接触しないように含有する形態が以下の(a)〜(g)のいずれかである、前記医薬組成物。
(a)ロキソプロフェン又はその塩、及びチペピジン又はその塩をそれぞれ別々の造粒物に配合した顆粒剤、又はこれを被覆した製剤
(b)ロキソプロフェン又はその塩、及びチペピジン又はその塩の一方のみを造粒物に配合した顆粒剤、又はこれを被覆した製剤
(c)水を吸収して膨潤する膨潤剤、ロキソプロフェン又はその塩、及びチペピジン又はその塩を含む、押し出し造粒顆粒剤、又はこれを被覆した製剤
(d)前記(a)、(b)または(c)を含む錠剤、又はこれを被覆した製剤
(e)ロキソプロフェン又はその塩、及びチペピジン又はその塩をそれぞれ別々の層に配置した多層錠、又はこれを被覆した製剤
(f)ロキソプロフェン又はその塩、及びチペピジン又はその塩のいずれか一方を内核錠とし、他方を外核に配置した有核錠、又はこれを被覆した製剤
(g)核となる造粒物に、ロキソプロフェン又はその塩もしくはチペピジン又はその塩のいずれか一方が被覆され、さらに他方が積層被覆された顆粒剤、又はこれを被覆した製剤、又はこれを含む錠剤
【請求項3】
ロキソプロフェン又はその塩が、ロキソプロフェンナトリウム水和物である請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
医薬組成物中のロキソプロフェンナトリウム水和物の配合量が、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で、5.0〜25質量%である請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
チペピジン又はその塩が、チペピジンヒベンズ酸塩である請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
医薬組成物中のチペピジンヒベンズ酸塩の配合量が、2.0〜10質量%である請求項記載の医薬組成物。
【請求項7】
固形製剤である請求項1〜のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
剤形が、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、又は錠剤である請求項1〜のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
(A)ロキソプロフェン又はその塩を含有する固形組成物と、(B)チペピジン又はその塩を含有する固形組成物とを含有し、これらの固形組成物を構成する成分によって、成分(A)と成分(B)とが互いに接触しないように配置されている医薬組成物(但し、前記(A)中に含有する成分がロキソプロフェン又はその塩のみであり、かつ前記(B)中に含有する成分がチペピジン又はその塩のみである場合は除く)。
【請求項10】
ロキソプロフェン又はその塩と、チペピジン又はその塩とを実質的に互いに接触しないように含有させることを特徴とする、ロキソプロフェン又はその塩及び/又はチペピジン又はその塩を安定化する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロキソプロフェン又はその塩及びチペピジン又はその塩を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ロキソプロフェンは、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAID)の一種であり、関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、歯痛、急性上気道炎や、手術後・外傷後・抜歯後等の消炎・鎮痛・解熱に有効なものとして知られている(非特許文献1)。
ロキソプロフェンは、その優れた薬理作用から、様々な薬物と配合された検討が既になされている。例えば、ケトチフェンフマル酸塩との配合による解熱作用の増強(特許文献1)や、チキジウム臭化物の配合による胃障害の軽減(特許文献2)、プソイドエフェドリン塩酸塩との配合によるくしゃみ防止(特許文献3)などが挙げられる。
一方、チペピジンは、咳中枢の抑制による鎮咳作用を示すことや去痰作用を示すこと等が知られている。チペピジンはこれらの作用に基づき、かぜ薬や鎮咳去痰薬に用いられる薬物である(非特許文献2)。
ロキソプロフェンは、いくつかの化合物と相互作用を生じ、この相互作用により、固化や変色、湿潤等が生じ、外観に影響を与えることが知られている(特許文献4〜11)。
【0003】
しかしながら、ロキソプロフェン又はその塩とチペピジン又はその塩との間に、これらの薬物の含量低下に直接影響を与えるような相互作用が生じるか否かについては、知られていない。
また、医薬組成物中における、ロキソプロフェン又はその塩とチペピジン又はその塩との間に、保存安定性等に影響を与えるような相互作用が生じるか否かについても、知られておらず、当然のことながら、その解決手段については全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004―83579号公報
【特許文献2】特開2000―26313号公報
【特許文献3】特開2004−2362号公報
【特許文献4】特開2011−173860号公報
【特許文献5】特願2011−006407号公報
【特許文献6】特開2011−116750号公報
【特許文献7】特開2011−116751号公報
【特許文献8】特開2011−173861号公報
【特許文献9】特開2011−132214号公報
【特許文献10】特開2010−235599号公報
【特許文献11】WO2011/093498
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】第十六改正日本薬局方解説書 株式会社廣川書店 第C−5359−5364頁
【非特許文献2】OTCハンドブック 2008−09 株式会社学術情報流通センター 第290頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かぜ薬に汎用される抗ヒスタミン剤、中枢興奮剤、去痰剤などと、解熱鎮痛剤としてロキソプロフェン又はその塩及び鎮咳剤としてチペピジン又はその塩とを含有する医薬組成物を開発するため、それらの保存安定性について検討したところ、ロキソプロフェン又はその塩、及び/又は、チペピジン又はその塩の含量が経時的に低下し、特に錠剤にした場合に、含量の低下率が大きくなるという驚くべき知見を得た。
【0007】
従って、本発明の課題は、ロキソプロフェン又はその塩とチペピジン又はその塩とを含有する安定化された医薬組成物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するためにロキソプロフェン又はその塩及びチペピジン又はその塩を配合した医薬組成物の安定化を図るべく、安定化手段を種々試み検討を行ったところ、ロキソプロフェン又はその塩とチペピジン又はその塩とが実質的に接触しないように医薬組成物中に含有せしめることにより、上記相互作用を抑制することができ、ロキソプロフェン又はその塩及び/又はチペピジン又はその塩の安定性を保つことができることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は
[1]ロキソプロフェン又はその塩と、チペピジンまたはその塩とを実質的に互いに接触しないように含有する医薬組成物、
[2]ロキソプロフェン又はその塩が、ロキソプロフェンナトリウム水和物である[1]記載の医薬組成物、
[3]医薬組成物中のロキソプロフェンナトリウム水和物の配合量が、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で、5.0〜25質量%である[2]に記載の医薬組成物、
[4]チペピジンまたはその塩が、チペピジンヒベンズ酸塩である[1]〜[3]のいずれかに記載の医薬組成物、
[5]医薬組成物中のチペピジンヒベンズ酸塩の配合量が、2.0〜10質量%である[4]記載の医薬組成物、
[6]固形製剤である[1]〜[5]のいずれかに記載の医薬組成物、
[7]剤形が、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤又は錠剤である[1]〜[6]のいずれかに記載の医薬組成物、
[8](A)ロキソプロフェン又はその塩を含有する固形組成物と、(B)チペピジンまたはその塩を含有する固形組成物とを含有し、これらの固形組成物を構成する成分によって、成分(A)と成分(B)とが互いに接触しないように配置されている医薬組成物(但し、前記(A)中に含有する成分がロキソプロフェン又はその塩のみであり、かつ前記(B)中に含有する成分がチペピジンまたはその塩のみである場合は除く)、
[9]ロキソプロフェン又はその塩と、チペピジン又はその塩とを実質的に互いに接触しないように含有させることを特徴とする、ロキソプロフェン又はその塩及び/又はチペピジン又はその塩を安定化する方法、
である。
【0010】
本発明の医薬組成物中における保存安定性の効果は、ロキソプロフェン又はその塩とチペピジン又はその塩とが直接接触しないという理由、またこれら成分の分解物などにより影響を受けることがないために生じると推定される。このような知見は今までに報告された例はない。
【0011】
本発明は、ロキソプロフェン又はその塩とチペピジン又はその塩とが直接接触しない限り、ロキソプロフェン又はその塩とチペピジン又はその塩を安定化できる。特に、(A)成分と(B)成分の少なくとも一方を造粒物とすることで、両者の直接的な接触を効果的に防ぐことができる。すなわち、ロキソプロフェン又はその塩と、チペピジン又はその塩の少なくとも一方を造粒して製造することで、両成分を安定化する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、ロキソプロフェン又はその塩、及び/又は、チペピジン又はその塩の経時的分解が顕著に抑制され、製品価値の高い医薬組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の医薬組成物中におけるロキソプロフェン又はその塩には、ロキソプロフェンのみならず、ロキソプロフェンの薬学上許容される塩、さらには水やアルコール等との溶媒和物が含まれる。これらは公知の化合物であり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明において、ロキソプロフェン又はその塩としては、ロキソプロフェンナトリウム水和物(化学名:Monosodium 2-[4-[(2-oxocyclopentyl)methyl]phenyl]propanoate dihydrate)が好ましい。
本発明の医薬組成物におけるロキソプロフェン又はその塩の含有量は、その薬効を示す量であれば特に限定されるものではないが、医薬組成物全質量に対して、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で1.0〜97質量%、好ましくは5.0〜90質量%、特に好ましくは5.0〜80質量%、最も好ましいのは5.0〜25質量%である。
【0014】
本発明の医薬組成物に含まれるチペピジン又はその塩には、チペピジンそのもののほか、チペピジンの薬学上許容される塩が含まれる。当該チペピジン又はその塩の好適な具体例としては、チペピジン、チペピジンクエン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩等が挙げられる。これらは公知の化合物であり、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。本発明において、チペピジン又はその塩としては、チペピジンヒベンズ酸塩がより好ましい。
本発明の医薬組成物におけるチペピジン又はその塩の含有量は、その薬効を示す量であれば特に限定されるものではないが、医薬組成物全質量に対してチペピジンを0.1〜40質量%、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは1.0〜10質量%、更に好ましくは2.0〜10.0質量%である。
【0015】
本発明の医薬組成物に含まれるロキソプロフェン又はその塩、及びチペピジン又はその塩の含有比は、ロキソプロフェン又はその塩を、ロキソプロフェンナトリウム無水物換算で1質量部に対し、チペピジン又はその塩を、0.003〜30質量部含有するものが好ましく、0.04〜7質量部含有するものがより好ましく、特に0.08〜2質量部が、含量安定性の面で好ましい。
【0016】
また、本発明において、「実質的に互いに接触しないように含有する」とは、医薬組成物中、ロキソプロフェン又はその塩と、チペピジンまたはその塩が相互作用を発現しない程度に接触しないよう含有することを意味するが、ロキソプロフェン又はその塩とチペピジンまたはその塩が接触しないように含有することが好ましい。
【0017】
また本発明の医薬組成物の剤形は、特に限定されるべきものではないが、固形製剤が好ましい。例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、錠剤(フィルムコーティング錠、糖衣錠、積層錠を含む)、カプセル剤、ドライシロップ剤、トローチ剤等の経口製剤や外用剤などの非経口製剤が挙げられるが、経口製剤が好ましく、特に含量低下率の高い錠剤で実施する意義が高い。
【0018】
上記固形製剤としては、(A)ロキソプロフェン又はその塩を含有する固形組成物と、(B)チペピジンまたはその塩を含有する固形組成物とを含有し、これらの固形組成物を構成する成分によって、成分(A)と成分(B)とが互いに接触しないように配置されているものが挙げられる(但し、前記(A)中に含有する成分がロキソプロフェン又はその塩のみであり、かつ前記(B)中に含有する成分がチペピジンまたはその塩のみである場合は除く)。これらの固形組成物は、散剤、顆粒剤のような造粒物、錠剤等が挙げられる。
【0019】
上記固形製剤の具体的形態として、以下の形態が挙げられる。
1.ロキソプロフェン又はその塩、及びチペピジン又はその塩をそれぞれ別々に造粒し、これらを配合して得た散剤、顆粒剤等及びこれを被覆した製剤
2.ロキソプロフェン又はその塩、及びチペピジン又はその塩のいずれか一方を造粒し、これに他方の造粒していないロキソプロフェン又はその塩もしくはチペピジン又はその塩に配合して得た散剤、顆粒剤等、及びこれを被覆した製剤
3.水を吸収して膨潤する物質である膨潤剤に、水又は含水アルコールを添加しロキソプロフェン又はその塩及びチペピジン又はその塩を練合し、造粒後、乾燥して水又は含水アルコールを除去して得た散剤、顆粒剤等及びこれを被覆した製剤
4.1、2または3の製剤を含む錠剤、及びこれを被覆した製剤
5.多層錠、及びこれを被覆した製剤
6.有核錠、及びこれを被覆した製剤
7.積層被覆した散剤、顆粒剤、及びこれを被覆した製剤
【0020】
上記1、2における顆粒等を製造する場合は、例えば撹拌造粒、流動層造粒、押し出し造粒、転動流動造粒、乾式造粒などの方法により、適宜他の薬効成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤を適当量配合し製造すればよい。これらは一般的な製剤機器を用いて製剤化することができる。具体的には、例えばロキソプロフェン又はその塩及びチペピジン又はその塩をそれぞれ別々に混合・粉砕し造粒を行った後、ロキソプロフェン又はその塩、及びチペピジン又はその塩を混合して製造する。また、ロキソプロフェン又はその塩のみを造粒する場合は、ロキソプロフェン又はその塩を混合・粉砕し、造粒を行った後、チペピジンまたはその塩を添加して製造する。また、チペピジンまたはその塩のみ造粒する場合は、チペピジンまたはその塩を混合・粉砕し、造粒を行った後、ロキソプロフェン又はその塩を添加して製造する。上記のように造粒して得たロキソプロフェン又はその塩またはチペピジン又はその塩を含む造粒物は被覆しても良い。また得られた散剤、顆粒剤等をそのままカプセルに充填してもよい。
【0021】
上記3の製剤を製造する場合は、例えばロキソプロフェン又はその塩及びチペピジン又はその塩に膨潤剤(例えば低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポピドン、結晶セルロース・カルメロースナトリウム等)及び必要に応じて添加する成分を加え、撹拌型混合機で混合後、膨潤剤の2〜5質量倍量の水又は30質量%以下のアルコール水溶液で練合し膨潤状態とする。次いで、この練合物を押し出し造粒機にて造粒後、水又は含水アルコールを箱型乾燥機又は流動層造粒乾燥機で乾燥して顆粒を製造する。また、必要に応じて押し出し造粒後、篩を用いて目的の粒度の顆粒とすることもでき、更にマルメライザーで球形化処理を施し球形の顆粒としてもよい。本製剤は、造粒後、乾燥して水又は含水アルコールを除去し膨潤剤が収縮する過程で、ロキソプロフェン又はその塩とチペピジン又はその塩を膨潤剤が隔離することで得られる。また得られた散剤、顆粒剤等を被覆してもよい。
【0022】
上記4の製剤は、1、2、または3の方法で得た散剤または顆粒剤に適宜有効成分や賦形剤などの慣用の製剤添加剤を配合し、混合物を打錠すれば錠剤を得ることができ、これにフィルムコートや糖衣などの被覆を施してもよい。
【0023】
上記5、6の製剤は、ロキソプロフェン又はその塩とチペピジン又はその塩とが実質的に互いに接触しないように製した錠剤である。多層錠としては、ロキソプロフェン又はその塩を含む層とチペピジン又はその塩を含む層が互いに異なる層に配置させたものが好ましく、市販の積層錠剤機等により製することができる。また、これにフィルムコートや糖衣などの被覆を施してもよい。有核錠は、ロキソプロフェン又はその塩もしくはチペピジン又はその塩の一方を内核錠とし、他方を外核に配置すればよい。この場合、ロキソプロフェン又はその塩もしくはチペピジン又はその塩のいずれか一方を含む錠剤に他方を被覆した製剤としてもよい。
【0024】
上記7の顆粒剤等を製造する場合は、何らかの核となる造粒物に、ロキソプロフェン又はその塩もしくはチペピジン又はその塩のいずれかを被覆し、さらに他方を被覆して得られる。得られた顆粒剤等をさらにフィルムコートや糖衣などで被覆してもよい。また、このようにして得た顆粒剤等を打錠してもいいし、そのままカプセルに充填してもよい。
【0025】
本発明の医薬組成物には、必要に応じて他の有効成分、賦形剤、結合剤、崩壊剤、フィルムコーティング剤、滑沢剤、抗酸化剤、香料、および着色剤等の慣用の製剤添加剤を適当量配合しても良い。
【実施例】
【0026】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。
【0027】
<実施例1>
ロキソプロフェンナトリウム水和物180g、マンニトール252g、馬鈴薯デンプン594g、ヒドロキシプロピルセルロース36g、軽質無水ケイ酸18g、グリチルリチン酸ジカリウム30g及びリボフラビン0.4gを秤量し均一に混合した後、得られた混合粉末を湿式攪拌造粒法により造粒し、造粒物Aを得た。チペピジンヒベンズ酸塩75g、dl−メチルエフェドリン塩酸塩60g、クロルフェニラミンマレイン酸塩7.5g、アンブロキソール塩酸塩45g、無水カフェイン75g、結晶セルロース237g、マンニトール504g、ヒドロキシプロピルセルロース54g、軽質無水ケイ酸9g及びリボフラビン0.4gを秤量し均一に混合した後、得られた混合粉末を湿式撹拌造粒法により造粒し、造粒物Bを得た。得られた2種の造粒物と香料5.25g及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウム2.1gを混合、分包し、1包重量700mgの散剤を得た。
【0028】
<実施例2>
ロキソプロフェンナトリウム水和物204.3g、リボフラビン6g、マンニトール385g、馬鈴薯デンプン633g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース99g、軽質無水ケイ酸42g及びグリチルリチン酸ジカリウム42gを秤量し均一に混合した後、得られた混合粉末を湿式撹拌造粒法により造粒し、造粒物Aを得た。チペピジンヒベンズ酸塩75g、dl−メチルエフェドリン塩酸塩60g、クロルフェニラミンマレイン酸塩7.5g、アンブロキソール塩酸塩45g、無水カフェイン75g、リボフラビン6g、結晶セルロース159g、マンニトール772g、ヒドロキシプロピルセルロース134g及び軽質無水ケイ酸15.3gを秤量し均一に混合した後、得られた混合粉末を湿式攪拌造粒法により造粒し、造粒物Bを得た。得られた2種の造粒物を混合、分包し、1包重量891mgの散剤を得た。
【0029】
<実施例3>
ロキソプロフェンナトリウム水和物180g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース30g、結晶セルロース111g、ヒドロキシプロピルセルロース36g、軽質無水ケイ酸6g、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム3g及びリボフラビン0.4gを秤量し均一に混合した後、得られた混合粉末を湿式撹拌造粒法により造粒し、造粒物Aを得た。チペピジンヒベンズ酸塩75g、dl−メチルエフェドリン塩酸塩60g、クロルフェニラミンマレイン酸塩7.5g、アンブロキソール塩酸塩45g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース30g、結晶セルロース170g、ヒドロキシプロピルセルロース27g、軽質無水ケイ酸6g、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム3g、リン酸水素カルシウム90g及びリボフラビン0.4gを秤量し均一に混合した後、得られた混合粉末を湿式撹拌造粒法により造粒し、造粒物Bを得た。得られた2種の造粒物と無水カフェイン75g、クロスカルメロースナトリウム27g、ステアリン酸マグネシウム6g、硬化油9g及び香料0.8gを混合した後、打錠して1錠重量330mgの錠剤を得た。
【0030】
<実施例4>
ロキソプロフェンナトリウム水和物204.3g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース17g、結晶セルロース108g、軽質無水ケイ酸6g及び黄色三二酸化鉄2.1gを秤量し均一に混合した後、得られた混合粉末を湿式流動層造粒法によりヒドロキシプロピルセルロース4g水溶液を用いて造粒し、造粒物Aを得た。得られた造粒物Aにチペピジンヒベンズ酸塩75g、dl−メチルエフェドリン塩酸塩60g、クロルフェニラミンマレイン酸塩7.5g、アンブロキソール塩酸塩45g、無水カフェイン75g、リン酸水素カルシウム240g、ケイ酸カルシウム60g、クロスカルメロースナトリウム45g、黄色三二酸化鉄5.67g及びステアリン酸マグネシウム33gを混合した後、打錠して1錠重量327mgの錠剤を得た。
【0031】
<実施例5>
ロキソプロフェンナトリウム水和物204.3g、結晶セルロース210g、馬鈴薯デンプン420g及び軽質無水ケイ酸42gを秤量し均一に混合した後、得られた混合粉末に造粒溶媒として精製水を添加し乳鉢にて造粒し、造粒物Aを得た。チペピジンヒベンズ酸塩75g、ブロムヘキシン塩酸塩12g、結晶セルロース540g、馬鈴薯デンプン1080g及び軽質無水ケイ酸42gを秤量し均一に混合した後、得られた混合粉末に造粒溶媒として精製水を添加し乳鉢にて造粒し、造粒物Bを得た。造粒物Aを132mg、造粒物Bを265mg秤取し、別々の層に充填し1錠重量397mgの二層錠を得た。
【0032】
<実施例6>
ロキソプロフェンナトリウム水和物204.3g、結晶セルロース210g、馬鈴薯デンプン420g及び軽質無水ケイ酸42gを秤量し均一に混合した後、得られた混合粉末に造粒溶媒として精製水を添加し乳鉢にて造粒し、造粒物Aを得た。チペピジンヒベンズ酸塩75g、結晶セルロース330g、馬鈴薯デンプン660g及び軽質無水ケイ酸39gを秤量し均一に混合した後、得られた混合粉末に造粒溶媒として精製水を添加し乳鉢にて造粒し、造粒物Bを得た。得られた2種の造粒物を混合、分包し、1包重量600mgの散剤を得た。
【0033】
<比較例1>
ロキソプロフェンナトリウム水和物180g、チペピジンヒベンズ酸塩75g、dl−メチルエフェドリン塩酸塩60g、クロルフェニラミンマレイン酸塩7.5g、アンブロキソール塩酸塩45g、無水カフェイン75g、結晶セルロース388g、マンニトール882g、馬鈴薯デンプン270g、ヒドロキシプロピルセルロース108g、軽質無水ケイ酸27g、グリチルリチン酸ジカリウム30g及びリボフラビン0.8gを秤量し均一に混合した後、得られた混合粉末を湿式撹拌造粒法により造粒し、造粒物を得た。得られた造粒物と香料5.25g及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウム2.1gを混合、分包し、1包重量700mgの散剤を得た。
【0034】
<比較例2>
ロキソプロフェンナトリウム水和物204.3g、チペピジンヒベンズ酸塩75g、リボフラビン6g、マンニトール348g、馬鈴薯デンプン603g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース93g、軽質無水ケイ酸39g及びグリチルリチン酸ジカリウム39gを秤量し均一に混合した後、得られた混合粉末を湿式攪拌造粒法により造粒し、造粒物を得た。dl−メチルエフェドリン塩酸塩60g、クロルフェニラミンマレイン酸塩7.5g、アンブロキソール塩酸塩45g、無水カフェイン75g、リボフラビン6g、結晶セルロース172g、マンニトール834g、ヒドロキシプロピルセルロース134g及び軽質無水ケイ酸16.2gを秤量し均一に混合した後、得られた混合粉末を湿式撹拌造粒法により造粒し、造粒物Bを得た。得られた2種の造粒物を混合、分包し、1包重量891mgの散剤を得た。
【0035】
<比較例3>
ロキソプロフェンナトリウム水和物180g、チペピジンヒベンズ酸塩75g、dl−メチルエフェドリン塩酸塩60g、クロルフェニラミンマレイン酸塩7.5g、アンブロキソール塩酸塩45g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース60g、結晶セルロース238g、ヒドロキシプロピルセルロース51g、軽質無水ケイ酸12g、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム6g及びリボフラビン0.8gを秤量し均一に混合した後、得られた混合粉末を湿式撹拌造粒法により造粒し、造粒物を得た。得られた造粒物と無水カフェイン75g、クロスカルメロースナトリウム27g、ステアリン酸マグネシウム6g、硬化油9g及び香料0.8gを混合した後、打錠して1錠重量282mgの錠剤を得た。
【0036】
<比較例4>
ロキソプロフェンナトリウム水和物204.3g、チペピジンヒベンズ酸塩75g、dl−メチルエフェドリン塩酸塩60g、クロルフェニラミンマレイン酸塩7.5g、アンブロキソール塩酸塩45g、無水カフェイン75g、リン酸水素カルシウム240g、結晶セルロース92.5g、軽質無水ケイ酸27g、クロスカルメロースナトリウム45g、黄色三二酸化鉄5.67g及びステアリン酸マグネシウム31.5gを秤量し混合した後、打錠して1錠重量300mgの錠剤を得た。
【0037】
<比較例5>
ロキソプロフェンナトリウム水和物204.3g、チペピジンヒベンズ酸塩75g、ブロムヘキシン塩酸塩12g、結晶セルロース540g、馬鈴薯デンプン1080g、軽質無水ケイ酸42gを秤量し混合した後、打錠して1錠重量325mgの錠剤を得た。
【0038】
<試験例1>
実施例1及び比較例1で製造した製剤を瓶に充填、密栓し、40℃で3箇月保存後、ロキソプロフェンナトリウム水和物及びチペピジンヒベンズ酸塩の安定性をHPLC法により評価し結果を表1に示した。
【0039】
<試験例2>
実施例2及び比較例2で製造した製剤を瓶に充填、密栓し、50℃で1箇月保存後、ロキソプロフェンナトリウム水和物及びチペピジンヒベンズ酸塩の安定性をHPLC法により評価し結果を表2に示した。
【0040】
<試験例3>
実施例3及び比較例3で製造した製剤を瓶に充填、密栓し、40℃で3箇月保存後、チペピジンヒベンズ酸塩の安定性をHPLC法により評価し結果を表3に示した。
【0041】
<試験例4>
実施例4及び比較例4で製造した製剤を瓶に充填、密栓し、50℃で1箇月及び2箇月保存後、チペピジンヒベンズ酸塩の安定性をHPLC法により評価し結果を表4に示した。
【0042】
<試験例5>
実施例5、実施例6及び比較例5で製造した錠剤を瓶に充填、密栓し、65℃1週保存後、ロキソプロフェンナトリウム水和物及びチペピジンヒベンズ酸塩の安定性をHPLC法により評価し結果を表5、6に示した。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
【表6】
【0049】
表1〜6から明らかなように、ロキソプロフェンナトリウム水和物とチペピジンヒベンズ酸塩の混合物を保存すると、ロキソプロフェンナトリウム水和物及び/又はチペピジンヒベンズ酸塩は含量が低下した。一方、ロキソプロフェンナトリウム水和物とチペピジンヒベンズ酸塩を互いに接触しないように製した製剤とすると、ロキソプロフェンナトリウム水和物とチペピジンヒベンズ酸塩の含量低下を抑制し、安定性の高い医薬組成物が得られることを見出した。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、ロキソプロフェン又はその塩とチペピジン又はその塩とを含有する、保存安定性の優れた医薬組成物を提供することができる。