(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記偏在係数演算部は、前記基準値を前記夫々の荷重センサの検出値の平均値とし、当該平均値に対する前記検出値の標準偏差の割合である前記偏在係数を演算する請求項1に記載の寝具上状態判定装置。
前記夫々の荷重センサのうち、第1荷重センサの検出値と、前記寝具の外周に沿って前記第1荷重センサに隣接する第2荷重センサの検出値とに基づいて前記寝具上の動物の移動方向を決定する移動方向演算部を備え、
前記姿勢状態判定部は、前記適正状態と判定する場合であっても、前記移動方向が所定の条件を満足するとき、前記不良状態と判定する請求項1から3のいずれか一項に記載の寝具上状態判定装置。
前記姿勢状態判定部は、前記偏在係数が前記所定値より大きく設定した閾値を超えた場合、前記寝具上の端部に動物が移動した端座位状態と判定する請求項1から4のいずれか一項に記載の寝具上状態判定装置。
前記寝返り判定部の前記寝具上の動物の寝返りがあると判定しない場合が所定時間続いたとき、前記寝具上の動物の床ズレがあると判定する請求項7に記載の寝具上状態判定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、寝具上の人の姿勢は、寝具の長手方向に対して斜めに移動したり、略直角に回転したりするなど、様々に変化することがある。このとき、例えば、人の重心位置が寝具上の中央付近に存在していても人の頭部が寝具上からはみ出している場合、従来においては、人の重心位置から寝具上の人の存在領域を認識するので、人の姿勢が不良状態ではないと判定されてしまう。すなわち、頭部が寝具上側部に設置された柵に挟まれたり、寝具上から転倒するおそれがあるにも関わらず、人の姿勢状態が適正であると誤判定してしまうといった課題があった。
【0006】
そこで本発明は、寝具上に存在する動物の姿勢状態を正確に判定できる寝具上状態判定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る寝具上状態判定装置の特徴構成は、寝具を支える複数の支持部の少なくとも二つに配設され、荷重を検出する荷重センサと、夫々の前記荷重センサの基準値に対する検出値の偏差に基づいて、前記寝具上の動物の姿勢状態の偏り程度を示す偏在係数を演算する偏在係数演算部と、前記偏在係数が所定値より大きい場合、前記寝具上の動物の姿勢が不適正である不良状態と判定し、前記偏在係数が前記所定値以下の場合、前記寝具上の動物の姿勢が適正である適正状態と判定する姿勢状態判定部とを備えた点にある。
【0008】
本構成によると、夫々の荷重センサの基準値に対する荷重センサの検出値の偏差に基づいて偏在係数を演算し、この偏在係数を用いて動物の姿勢状態を判定する。このため、動物の重心位置が寝具上の中央付近にある場合でも、例えば、動物の姿勢が、寝具の長手方向に対して斜めであるとき、夫々の荷重センサの検出値は基準値に対してばらつきが生じる。よって、偏在係数はある大きさを持つこととなるので、偏在係数が所定値より大きければ動物の姿勢が不良状態であると判定することができる。さらに、重心位置が寝具上の端部に有る場合などにおいても、偏在係数はある大きさを持つこととなるので、動物の姿勢状態を正確に判定することができる。
【0009】
このように、本構成によれば、動物の重心位置がずれている場合だけでなく、動物の重心位置が寝具上の中央付近にあるときでも動物の体の一部が寝具上からはみ出している場合などにおいて、動物の姿勢が不適正である不良状態と判定することができる。したがって、寝具上に存在する動物の姿勢状態を正確に判定することができる。
【0010】
また、荷重センサを少なくとも二つ配設すれば、荷重センサの配設方向に沿った動物の移動に伴い偏在係数は変動する。よって、例えば、動物が寝返りなどにより、よく移動する方向である寝具の短手方向に沿って荷重センサを配設すればよく、要求されるスペックに応じて効率的に装置を構成することができる。
【0011】
本発明に係る寝具上状態判定装置の特徴構成は、前記偏在係数演算部は、前記基準値を前記夫々の荷重センサの検出値の平均値とし、当該平均値に対する前記検出値の標準偏差の割合である前記偏在係数を演算する点にある。
【0012】
本構成によると、ある時刻Tにおける偏在係数Zは、例えば、荷重センサが四つの場合の検出値をD1〜D4とすると、Z=標準偏差(D1〜D4)/平均値(D1〜D4)で表される。すなわち、判定時点における荷重センサの検出値D1〜D4さえ計測すれば動物の姿勢状態を判定することができるので、装置の処理量や記憶量を無駄に大きくすることがない。
【0013】
また、寝具上の動物の体重が大きい場合は、分母である平均値が大きくなると共に分子である標準偏差も大きくなる。このため、姿勢状態判定部によって偏在係数と比較する所定値は、動物の体格によってそれほど変動することがない。つまり、寝具上の動物の体格が異なるたびに所定値を変更しなくても、動物の姿勢状態を正確に判定することができるので、効率的である。
【0014】
この寝具上状態判定装置において、前記荷重センサは、四つの前記支持部の全てに配設されていることが好ましい。
【0015】
本構成のように四つの支持部の全てに荷重センサを配設することで、寝具上面視において、前後左右方向に沿った動物の移動に伴う偏在係数の変動を捉えることができる。このため、寝具上に存在する動物の姿勢状態を全方位に亘って判定することが可能となり、判定精度が向上する。
【0016】
本発明の寝具上状態判定装置にあっては、前記夫々の荷重センサのうち、第1荷重センサの検出値と、前記寝具の外周に沿って前記第1荷重センサに隣接する第2荷重センサの検出値とに基づいて前記寝具上の動物の移動方向を決定する移動方向演算部を備え、前記姿勢状態判定部は、前記適正状態と判定する場合であっても、前記移動方向が所定の条件を満足するとき、前記不良状態と判定すると好適である。
【0017】
例えば、動物が寝具の長手方向に対して略直角に回転した状態で、且つ、動物の重心位置が寝具上の中央付近に存在する場合、偏差係数が所定値以下である適正状態と判定するおそれがある。しかしながら、前記略直角に回転した状態は、寝具上から転倒するおそれがあるので不良状態と判定すべきである。
【0018】
ところで、動物が第1荷重センサ及び第2荷重センサの配設方向と直交する方向に手を移動させた場合、夫々の荷重センサの検出値は、共に増加する、又は、共に減少するといった規則性のある変動が生じる。本構成における移動方向演算部は、この変動を検出して移動方向を決定することができる。よって、姿勢状態判定部では、動物の移動方向が所定の条件を満足すれば、動物が前記略直角に回転した不良状態であると判定することが可能となる。つまり、本構成のように移動方向演算部を備えることで、動物の姿勢状態をより正確に検出することができる。
【0019】
また、寝具上状態判定装置にあっては、前記姿勢状態判定部は、前記偏在係数が前記所定値より大きく設定した閾値を超えた場合、前記寝具上の端部に動物が移動した端座位状態と判定することが好ましい。
【0020】
動物が寝具上の端部に座っている状態(端座位状態)は、動物の就寝とは異なる形態である。この端座位状態は、夫々の荷重センサの検出値のばらつきが大きいので、偏在係数がより大きな値となる。よって、本構成のように端座位状態を判定できれば、動物の姿勢状態をより正確に判定することができる。
【0021】
ところで、寝具を使用する動物の体重が異なれば、夫々の荷重センサの基準値も異なる。そこで、寝具上状態判定装置にあっては、前記姿勢状態判定部が前記適正状態と判定する場合、前記寝具上の動物の体重を測定すると好適である。
【0022】
本構成によれば、動物の姿勢状態が寝具上の中央付近にいる適正状態のときに体重を測定するので、足が床面に付いた状態などの異常値を除外することが可能となり、夫々の荷重センサの基準値を正確に測定できる。すなわち、この正確な基準値に基づいて偏在係数を演算するので、装置の判定精度を高めることができる。
【0023】
前記偏在係数の値は、動物の手足の移動に比べ、動物の寝返りによる移動の方が大きく変動する。そこで、本発明の寝具上状態判定装置にあっては、前記夫々の荷重センサの検出値を順次記憶する記憶部を備え、現時点の検出値に基づく前記偏在係数が、前記記憶部に記憶されている所定時間前の検出値に基づく前記偏在係数に対して、予め定められた判定閾値を超えて増減した場合、前記寝具上の動物の寝返りがあると判定する寝返り判定部を備えていると好適である。
【0024】
寝返りが頻繁に繰り返される場合、装置の故障又は動物の容態に不具合のある可能性が高い。本構成によれば、動物の寝返りがあったことを都度判定できるので、装置の信頼性が高まる。
【0025】
さらに、前記寝返り判定部の前記寝具上の動物の寝返りがあると判定しない場合が所定時間続いたとき、前記寝具上の動物の床ズレがあると判定すると好適である。
【0026】
動物が長時間に亘って寝返りしない場合、動物は床ズレするおそれがある。本構成によれば、寝返り判定部における判定が長時間肯定されない場合に動物の床ズレと判定するので、床ズレを未然に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明に係る寝具上状態判定装置Xの実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、寝具上状態判定装置Xを用いて、ベッドYに就寝した動物の姿勢状態をナースステーションに報知するケースを一例として説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0029】
(全体構成)
図1及び
図2に示すように、四つの脚部1を有したベッドフレーム2(支持部の一例)と、このベッドフレーム2に載せ付けられるマットレス3とを備えたベッドY(寝具の一例)が構成されている。四つの脚部1には、マットレス3の上の動物の体重を含む荷重を検出する荷重センサS1〜S4が備えられ、この荷重センサS1〜S4の検出値D1〜D4に基づいてベッドYの上の動物の姿勢状態を判定する寝具上状態判定装置Xがキャビネット5に設置されている。
【0030】
この寝具上状態判定装置Xは、病院や介護施設等において、ベッドYの上の動物の姿勢状態を判定して、この判定情報を通信回線によりナースステーション等の管理室に送信する報知部19を備えている。管理室では寝具上状態判定装置Xから送信される情報をモニター等に表示することにより、動物の姿勢状態の把握が可能となる。なお、報知部19は、通信回線により第三者に知らせるものに限定されず、例えば、キャビネット5にスピーカを設けて音声で動物に知らせる方法など、どのような形態であっても良い。
【0031】
四つの荷重センサS1〜S4は、ピエゾ素子や磁歪式ロードセル等を用いた同じ性能のものが使用され、脚部1に作用する荷重に対応した電圧信号を出力する。この電圧信号を増幅後、A/D変換を施し、デジタル信号化した検出値D1〜D4が生成される。なお、本実施形態では、第1荷重センサS1の電圧信号をデジタル化したデータを第1検出値D1とし、同様に第2荷重センサS2は第2検出値D2、第3荷重センサS3は第3検出値D3、第4荷重センサS4は第4検出値D4に対応するものとして説明する。
【0032】
[第1実施形態]
(装置構成)
本発明における第1実施形態では、
図3に示すように、演算部は、偏在係数演算部11を備え、判定部は姿勢状態判定部15を備えている。荷重センサS1〜S4の検出値D1〜D4は、偏在係数演算部11によって演算処理される。次いで、演算処理された値を用いて、姿勢状態判定部15によって動物の姿勢状態を判定し、この判定情報が報知部19に送信される。このとき、検出値D1〜D4と演算部によって演算処理された値とは記憶部20に記憶される。
【0033】
荷重センサS1〜S4の電圧信号のデジタル処理と記憶部20と報知部19とはハードウェアで構成され、演算部と判定部とはソフトウェアから構成される。なお、演算部及び判定部の一部が論理ゲート等のハードウェアで構成されるものでも良く、すべてがハードウェアで構成されても良い。
【0034】
偏在係数演算部11は、式(1)で算出される時刻Tにおける検出値D1(T)〜D4(T)の平均値M(T)を基準値として、平均値M(T)に対する、検出値D1(T)〜D4(T)の標準偏差の割合である偏在係数Z(T)を、式(2)により演算する。
【数1】
【数2】
【0035】
具体例を用いて説明すると、
図1及び
図2に示すように、動物の重心位置WがベッドYの上の略中央にあり、且つ、前後左右均等に仰臥位で就寝している場合、検出値D1〜D4は同等の値となるので、偏在係数Zは略零となる。一方、
図5に示すように、動物の重心位置WがベッドYの上の略中央にあり、且つ、斜めに仰臥位で就寝している場合、第1検出値D1及び第3検出値D3が、第2検出値D2及び第4検出値D4に比べ大きな値となる。このため、偏在係数Zは、検出値D1〜D4のばらつきに応じてある値として演算される。
【0036】
また、偏在係数演算部11は、動物の重心位置WがベッドYの上の略中央にあり、且つ、前後左右均等に仰臥位で就寝している理想状態において、予め計測した荷重センサS1〜S4の初期値R1〜R4を基準値として用いても良い。この場合、この基準値に対する、時刻Tにおける検出値D1(T)〜D4(T)の偏差に基づく偏在係数Z(T)は、式(3)により演算される。なお、初期値R1〜R4は、必ずしも理想状態で計測する必要はなく、ベッドYの上の動物の姿勢が、ある程度適正な状態で計測しても良い。
【数3】
【0037】
例えば、荷重センサS1〜S4が
図1に示すようにベッドYの四方均等に配置されておらず、図示しないが、第1荷重センサS1が頭部下のベッドフレーム2にあり、第2荷重センサS2を省略した形態(荷重センサは三つ)を想定する。この場合、式(2)における検出値D1、D3、D4の標準偏差は動物の就寝当初からある値をもっており、動物の移動によってこの標準偏差は当初の値より減少してしまうことがある。しかしながら、初期値R1、R3、R4を基準値とした場合は、個々の荷重センサS1、S3、S4の偏差を捉えることになるので、偏在係数Zが必ず増加する。よって、例えば、複数の荷重センサをベッドフレーム2に散在して配設するような場合は、式(3)を用いて偏在係数Zを演算するのが好ましい。
【0038】
なお、偏在係数Zの演算にあたって、荷重センサS1〜S4の基準値に対する検出値D1〜D4の偏差に基づくものであれば、どのような演算式であっても良い。例えば、式(2)及び式(3)において分母の平均値M(T)を省略しても良いし、検出値D1〜D4の偏差の2乗を加算するのではなく、この偏差の絶対値を加算しても良い。
【0039】
(判定方法)
次に、寝具上状態判定装置Xの判定方法について、
図1、
図4及び
図5を用いて説明する。
図4に示すように、偏在係数演算部11による偏在係数Zの演算を実行する(#41)。次に、偏在係数Zと、実験データに基づき設定される所定値A1とを比較する(#42)。例えば、
図5に示すように、偏在係数Zが所定値A1より大きい場合(#42Yes判定)、動物の姿勢が不適正である不良状態と判定する(#43)。一方、
図1に示すように、偏在係数Zが所定値A1以下の場合(#42No判定)、動物の姿勢が適正である適正状態と判定する(#44)。時刻Tから所定時間(例えば10秒)経過後、再度同様の処理が実行され、動物が離床するまで繰り返される。
【0040】
なお、動物の姿勢が不良状態とは、例えば、
図5に示すように動物の頭部が柵4に挟まれるおそれがある状態や、図示しないが、マットレス3の端部に動物が位置しておりベッドYの上から転倒のおそれがある状態などのことである。
【0041】
このように、動物の重心位置WがベッドYの上の略中央であるとしても、第1荷重センサS1の方向に動物の頭部が移動しているといった不良状態を正確に判定することができる。さらに、本実施形態では、四つの脚部1の全てに荷重センサS1〜S4を備えることで、ベッドYの上面視における前後左右方向に沿った動物の移動に伴う偏在係数Zの変動を捉えることができる。つまり、ベッドYの上に就寝する動物の姿勢状態を全方位に亘って判定できるので、判定精度が高まる。
【0042】
[第2実施形態]
(装置構成)
全体構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。以降、寝具上状態判定装置Xについて、第1実施形態と異なる構成についてのみ、
図3、
図6及び
図7を用いて説明する。
【0043】
本発明における第2実施形態では、
図3に示すように、演算部は、偏在係数演算部11と移動方向演算部12とを備え、判定部は、姿勢状態判定部15を備えている。荷重センサS1〜S4の検出値D1〜D4は、偏在係数演算部11によって演算処理され、移動方向演算部12によって動物の移動方向を演算する。次いで、演算処理された値を用いて、姿勢状態判定部15が動物の姿勢状態を判定し、この判定情報が報知部19に送信される。このとき、検出値D1〜D4と演算部によって演算処理された値とは記憶部20に記憶される。
【0044】
(判定方法)
図6に示すように、偏在係数演算部11による偏在係数Zの演算を実行する(#61)。次に、偏在係数Zと、動物の体重などの特性に基づき設定される所定値A1とを比較する(#62)。偏在係数Zが所定値A1より大きい場合(#62Yes判定)、動物の姿勢が不適正である不良状態と判定する(#63)。
【0045】
一方、偏在係数Zが所定値A1以下の場合(#62No判定)、動物の姿勢が適正であるとして適正状態(#65)のフローに移行する。
【0046】
このとき、
図7に示すように、動物の重心位置WがベッドYの上の略中央にあり、且つ、横に側臥位で就寝している場合、検出値D1〜D4は略同値となるので、偏在係数Zは小さな値となる。したがって、偏在係数Zが所定値A1以下の場合(#62No判定)に該当し、動物の姿勢が適正である適正状態(#65)と判定される。しかしながら、動物が頭や足をベッドYの短手方向に伸長すればベッドYの上から転倒するおそれのある不良状態となっている。
【0047】
そこで、移動方向演算部12によって動物の移動方向を演算し、この移動方向が所定の条件を満足するか否かを判定する(#64)。例えば、
図7に示すような動物の姿勢状態において、第4荷重センサS4から第1荷重センサS1の方向に動物が手足を少し移動した場合、第1検出値D1及び第2検出値D2が共に増加するか、又は共に減少することとなる。一方、動物がベッドYの長手方向に沿って就寝しているときに、第2荷重センサS2から第1荷重センサS1の方向に手足を少し移動した場合は、第1検出値D1及び第4検出値D4が共に増加するか、又は共に減少する。つまり、第1検出値D1及び第2検出値D2の規則性のある変動を捉えて動物の移動方向を決定すれば、動物が
図7に示すような不良状態で就寝していると判定することができる。
【0048】
このため、本実施形態では、適正状態(#65)に移行した場合でも、第1検出値D1と第2検出値D2とが共にある値で増加又は減少したという所定の条件を満足するときは、動物の姿勢が不良状態(#64Yes判定)と判定する(#63)。逆に、移動方向が所定の条件を満足しない場合(#64No判定)、そのまま適正状態(#65)と判定する。なお、第1荷重センサS1から第4荷重センサS4の方向に動物が手足を移動した場合も検知できるよう、第3検出値D3及び第4検出値D4を用いて移動方向を判定することが好ましい。
【0049】
時刻Tから所定時間(例えば10秒)経過後、再度同様の処理が実行され、動物が離床するまで、演算及び判定が繰り返される。
【0050】
[第3実施形態]
(装置構成)
全体構成は、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。以降、寝具上状態判定装置Xについて、第1実施形態と異なる構成についてのみ、
図3及び
図8を用いて説明する。
【0051】
本発明における第3実施形態では、
図3に示すように、演算部は、偏在係数演算部11と、移動方向演算部12と、体重計測部13と、不動時間演算部14とを備え、判定部は、端座位判定部16を有する姿勢状態判定部15と、寝返り判定部17と、床ズレ判定部18とを備えている。荷重センサS1〜S4の検出値D1〜D4は、偏在係数演算部11によって演算処理され、移動方向演算部12によって動物の移動方向を演算する。次いで、演算処理された値を用いて、姿勢状態判定部15が動物の姿勢状態を判定し、この判定情報が報知部19に送信される。
【0052】
姿勢状態判定部15によって判定した後、適正状態の場合、体重計測部13は動物の体重を計測し、不良状態の場合、端座位判定部16は動物がベッドYの端部に座った状態(端座位状態)であるか否かを判定する。次いで、不動時間演算部14によって、偏在係数Zの増減を演算し、寝返り判定部17と床ズレ判定部18とによる判定を実行する。また、検出値D1〜D4と演算部によって演算処理された値とは記憶部20に記憶される。
【0053】
(判定方法)
図8に示すように、偏在係数演算部11による偏在係数Zの演算を実行する(#81)。次に、偏在係数Zと、動物の体重などの特性に基づき設定される所定値A1とを比較する(#82)。偏在係数Zが所定値A1より大きい場合(#82Yes判定)、動物の姿勢が不適正である不良状態と判定する(#83)。一方、偏在係数Zが所定値A1以下の場合(#82No判定)、移動方向演算部12によって動物の移動方向を演算し、この移動方向が所定の条件を満足するか否かを判定する(#84)。移動方向が所定の条件を満足する場合(#84Yes判定)、動物の姿勢が不良状態と判定し(#83)、移動方向が所定の条件を満足しない場合(#84No判定)、適正状態と判定する(#85)。
【0054】
ところで、動物の姿勢が不良状態であると判定(#83)した場合でも、端座位状態は、通常の就寝とは異なる形態である。このため、不良状態とは別に端座位状態として判定することが好ましい。動物の姿勢が端座位状態のときは、検出値D1〜D4のばらつきが大きくなり、偏在係数Zがより大きな値となる。よって、本実施形態では、端座位判定部16によって、偏在係数Zが所定値A1より大きく設定した閾値A2を超えるか否かを判定する(#86)。偏在係数Zが閾値A2より大きい場合(#86Yes判定)は、端座位状態と判定し(#87)、偏在係数Zが閾値A2以下の場合(#86No判定)は、不良状態判定を維持する。
【0055】
動物の姿勢が適正状態であると判定した場合(#85)、体重計測部13は、検出値D1〜D4に基づき動物の体重を計測する(#88)。予め荷重センサS1〜S4の上部にあるベッドフレーム2、マットレス3、柵4及び布団6の検出値を測定しておき、検出値D1〜D4の合計値から差し引くことによって動物の体重を計測する。
【0056】
ところで、ベッドYを使用する動物は常に一定であるとは限らず、偏在係数Zの基準値(平均値M、初期値R1〜R4)は、動物の体重によって変動する。本実施形態では、動物の姿勢状態がベッドYの上の略中央にいる適正状態のときに体重を測定するので、足が床面に付いた状態などの異常値を除外することが可能となり、偏在係数Zの基準値を適正に設定することができる。なお、布団6などの落下によって検出値D1〜D4が変動するケースを想定すると、動物が就寝した初期に体重を計測することが好ましい。なお、所定値A1、閾値A2、又は後述する判定閾値Bについて動物の体格に応じた実験データを蓄積しておき、体重計測部13の計測結果に基づき適宜変更しても良い。
【0057】
続いて、寝返り判定部17及び床ズレ判定部18について説明する。動物の姿勢が適正状態、不良状態又は端座位状態と判定した後、不動時間演算部14によって、現時点の偏在係数Zと、記憶部20に記憶されている所定時間T1前(例えば10秒)の偏在係数Zとの差の絶対値を演算する。絶対値|Z(T)−Z(T−T1)|の値が、判定閾値Bを超えた場合(#89YES判定)、寝返り判定部17において、ベッドYの上の動物の寝返りがあったと判定する(#90)。このとき、不動回数Iをリセットする(#91)。なお、この寝返り判定部17は、就寝後、少なくとも所定時間T1経過後に開始される。
【0058】
絶対値|Z(T)−Z(T−T1)|の値が、判定閾値B以下の場合(#89No判定)、不動回数I=I+1として更新する(#92)。この不動回数Iは、所定時間T1に比例するものであり、不動回数Iに所定時間T1を掛けることによって、寝返りのない状態の経過時間を算出できる。よって、本実施形態における床ズレ判定部18は、寝返りのない状態が所定の経過時間(例えば2時間)続いたとき、すなわち、所定時間T1=10秒とすると、不動回数I>C(72回)の場合(#93YES判定)、動物の床ズレがあると判定する(#94)。
【0059】
時刻Tから所定時間T1経過後、再度同様の処理が実行され、動物が離床するまで、演算及び判定が繰り返される。なお、本実施形態において、不動時間演算部14と寝返り判定部17と床ズレ判定部18とのいずれか又は全部を省略しても良く、体重計測部13と端座位判定部16とはいずれか一方のみを実行しても良い。
【0060】
[その他の実施形態]
(1)上述した実施形態では、
図1に示すように四つの荷重センサS1〜S4を四つの脚部1に配設したが、いずれか二つの荷重センサを二つの脚部1に配設しても良い。このとき、二つの荷重センサの配設方向に沿った動物の移動によってのみ偏在係数Zは変動するので、動物の移動特性に応じて荷重センサの配設位置及び数量を決定すれば良い。また、三つの荷重センサを三つの脚部1に配設すれば、ベッドYの上面視における前後左右方向の動物の移動によって偏在係数Zは変動するので、三つ以上の荷重センサを設けることが好ましい。
(2)上述した実施形態では、四つの荷重センサS1〜S4の検出値D1〜D4は、ベッドフレーム2やマットレス3などの重量も含めたが、これらの重量分の検出値を予め計測しておき、検出値D1〜D4から減算処理しても良い。
(3)第3実施形態において、体重計測部13において動物の体重を測定した後、所定値A1、閾値A2、又は判定閾値Bを設定する場合、実験データにより動物の体重ごとのテーブルを作成して呼び出す構成にしても良い。これにより、動物の体格に応じた判定値を簡易に更新できる。