特許第6160293号(P6160293)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6160293
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】スクライビングホイールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/24 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
   B28D1/24
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-131891(P2013-131891)
(22)【出願日】2013年6月24日
(65)【公開番号】特開2014-121864(P2014-121864A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2016年5月9日
(31)【優先権主張番号】特願2012-254012(P2012-254012)
(32)【優先日】2012年11月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084364
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 宜喜
(72)【発明者】
【氏名】福西 利夫
(72)【発明者】
【氏名】北市 充
(72)【発明者】
【氏名】留井 直子
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−126754(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3049369(JP,U)
【文献】 特開平09−300139(JP,A)
【文献】 特開平03−138105(JP,A)
【文献】 特開平07−223101(JP,A)
【文献】 米国特許第5855974(US,A)
【文献】 国際公開第2003/051784(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/24
B28D 5/00
C03B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板の中心位置にピンが挿入される貫通孔を有し、円周部に沿って刃先を有するスクライビングホイールの製造方法であって、
炭化タングステン粒子を主成分とし、コバルトを結合材として含む超硬合金を用いた円板の中心位置に貫通孔を形成し、
前記円板の円周部に刃先部分を形成してスクライビングホイール基材を形成し、
前記スクライビングホイール基材の貫通孔の開口にシール材を塗布して脱コバルト処理を施し、
前記スクライビングホイール基材の刃先部分に化学気相成長法によってダイヤモンド膜を形成するスクライビングホイールの製造方法。
【請求項2】
円板の中心位置にピンが挿入される貫通孔を有し、円周部に沿って刃先を有するスクライビングホイールの製造方法であって、
炭化タングステン粒子を主成分とし、コバルトを結合材として含む超硬合金を用いた円板の中心位置に貫通孔を形成し、
前記円板の円周部に刃先部分を形成してスクライビングホイール基材を形成し、
前記スクライビングホイール基材に脱コバルト処理を施し、
前記貫通孔の内壁の脱コバルト層を研削して脱コバルト層を除去し、
前記スクライビングホイール基材の刃先部分に化学気相成長法によってダイヤモンド膜を形成するスクライビングホイールの製造方法。
【請求項3】
前記脱コバルト層の除去工程は、
前記スクライビングホイール基材の貫通孔に表面に砥粒が固着されたピンを挿入してダミースクライブを行うことによって脱コバルト層を除去するものである請求項2記載のスクライビングホイールの製造方法。
【請求項4】
前記脱コバルト層の除去工程は、
前記スクライビングホイール基材の貫通孔に砥粒を含む流体を流通させることによって脱コバルト層を除去するものである請求項2記載のスクライビングホイールの製造方法。
【請求項5】
前記脱コバルト層の除去工程は、
前記スクライビングホイール基材の貫通孔にホーニング加工を行うことによって脱コバルト層を除去するものである請求項2記載のスクライビングホイールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脆性材料基板に圧接・転動させてスクライブするためのスクライビングホイールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のスクライビングホイールは、特許文献1等に示されるように、超硬合金製又は多結晶焼結ダイヤモンド(以下、PCDという)製の円板を基材としている。PCD円板はダイヤモンド粒子をコバルトなどと共に焼結させたものである。スクライビングホイールは基材となる円板の両側より円周のエッジを互いに斜めに削り込み、円周面にV字形の刃先を形成することにより構成される。このようにして形成されたスクライビングホイールをスクライブ装置のスクライブヘッド等に回転自在に軸着して脆性材料基板に所定の荷重で押し付け、脆性材料基板の面に沿って移動させることでスクライブすることができる。
【0003】
また、特許文献2には、超硬合金の切削工具の表面にダイヤモンド膜を被膜する前に、超硬合金の表面部分にコバルトの含有量を低下させた脱コバルト層を設けることによって超硬合金とダイヤモンド膜との密着性を向上させるようにした切削工具が提案されている。同様に、特許文献3には刃先にダイヤモンド膜を形成したスクライビングホイールが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2003/51784号公報
【特許文献2】特開平07−223101号公報
【特許文献3】特開2011−012675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
超硬合金の表面にダイヤモンド膜を形成すれば切削工具の耐久性は高くなるが、超硬合金に含まれるコバルトがダイヤモンド膜の密着性を低下させており、膜の剥離が生じていた。しかるに前述した特許文献2では、表面のコバルトの含有量を少なくするために、切削工具をHNO3等の酸性液に浸漬して工具の基材の表面に脱コバルト層を形成し、膜の密着性を高めていた。スクライビングホイールにおいても、特許文献1に示されるスクライビングホイール基材にダイヤモンド膜を被覆するため、超硬合金を素材に用いれば、ダイヤモンド膜の密着性が低下してしまう。一方特許文献3のようにスクライビングホイール基材にこのような脱コバルト層を形成しようとした場合には、スクライビングホイールの中心の貫通孔の内壁にも脱コバルト処理がなされてしまう。このような脱コバルト処理が施され刃先部分にダイヤモンド被膜が形成されたスクライビングホイールを用いて脆性材料基板をスクライブすると、貫通孔の内壁表面からコバルトが除去されているため、炭化タングステン粒子が脱落しやすくなる。このため、貫通孔に摩耗粉が発生してこれがピンに付着し回転抵抗が高くなるという問題点が新たに判明した。又コバルトが脱落した面が粗面となったり、機械的な強度が低下してしまったりするという問題点がある。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、スクライビングホイールの基材の脱コバルト処理に伴う問題点を解決することができるスクライビングホイールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明のスクライビングホイールの製造方法は、円板の中心位置にピンが挿入される貫通孔を有し、円周部に沿って刃先を有するスクライビングホイールの製造方法であって、炭化タングステン粒子を主成分とし、コバルトを結合材として含む超硬合金を用いた円板の中心位置に貫通孔を形成し、前記円板の円周部に刃先部分を形成してスクライビングホイール基材を形成し、前記スクライビングホイール基材の貫通孔の開口にシール材を塗布して脱コバルト処理を施し、前記スクライビングホイール基材の刃先部分に化学気相成長法によってダイヤモンド膜を形成するものである。
【0009】
この課題を解決するために、本発明のスクライビングホイールの製造方法は、円板の中心位置にピンが挿入される貫通孔を有し、円周部に沿って刃先を有するスクライビングホイールの製造方法であって、炭化タングステン粒子を主成分とし、コバルトを結合材として含む超硬合金を用いた円板の中心位置に貫通孔を形成し、前記円板の外周部に刃先部分を形成してスクライビングホイール基材を形成し、前記スクライビングホイール基材に脱コバルト処理を施し、前記貫通孔の内壁の脱コバルト層を研削して脱コバルト層を除去し、前記スクライビングホイール基材の刃先部分に化学気相成長法によってダイヤモンド膜を形成するものである。
【0010】
ここで前記脱コバルト層の除去工程は、前記スクライビングホイール基材の貫通孔に表面に砥粒が固着されたピンを挿入してダミースクライブを行うことによって脱コバルト層を除去するものとしてもよい。
【0011】
ここで前記脱コバルト層の除去工程は、前記スクライビングホイール基材の貫通孔に砥粒を含む流体を流通させることによって脱コバルト層を除去するものとしてもよい。
【0012】
ここで前記脱コバルト層の除去工程は、前記スクライビングホイール基材の貫通孔にホーニング加工を行うことによって脱コバルト層を除去するものとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
このような特徴を有する本発明によれば、スクライビングホイール基材として所定の範囲の粒径の炭化タングステン粒子にコバルトを結合材とする超硬合金を用いて、その表面に脱コバルト処理を施してダイヤモンド膜を成膜し研磨してスクライビングホイールとしている。このためダイヤモンド膜の密着性を向上させることができ、スクライビングホイールの耐摩耗性が向上し、長寿命化することができる。又スクライビングホイール基材の内径部分では脱コバルト処理された層がないため、摩耗粉がピンに付着して回転抵抗が大きくなったり、機械的な強度が低下することがないという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A図1Aは本発明の第1,第2の実施の形態によるスクライビングホイールの正面図である。
図1B図1Bは第1,第2の実施の形態によるスクライビングホイールの側面図である。
図2A図2Aはスクライビングホイール基材の貫通孔の両端にシール材を塗布した状態を示す図である。
図2B図2Bは複数のスクライビングホイール基材の貫通孔にピンを通して両端にシール材を塗布した状態を示す図である。
図3A図3Aは第1,第2の実施の形態による刃先の稜線部分の拡大断面図である。
図3B図3Bは第1,第2の実施の形態による研磨後の稜線部分の拡大断面図である。
図4図4はスクライビングホイール基材及び脱コバルト処理前後と第1,第2の実施の形態の貫通孔内のコバルトの重量パーセントの一例を示す図である。
図5図5図4に示す各ホイールについて100mのスクライブを施したときのスクライブ抵抗の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1Aは本発明の第1,第2の実施の形態によるスクライビングホイールの正面図、図1Bはその側面図である。スクライビングホイールを製造する際には、スクライビングホイール基材となる円板の材料に超硬合金を用いる。この超硬合金は、炭化タングステン(WC)粒子を主成分とし、これにコバルト(Co)を結合材として用いて焼結して形成したものである。この超硬合金製の円板11の中央に、まず図1Aに示すように軸穴となる貫通孔12を形成する。
【0016】
次にこの貫通孔12にモータ等の回転軸を連通し、円板11の中心軸12aを中心として回転させつつ、円板11の全円周を両側より研磨して図1Bに示すように斜面と稜線とを有する垂直断面略V字形の刃先を形成する。こうして形成したV字形の斜面を研磨面13としたスクライビングホイール基材14を構成する。
【0017】
ここでスクライビングホイール基材14の超硬合金については、主成分である炭化タングステン(WC)粒子の平均粒径は0.5μm以上、好ましくは0.7μm以上であり、又2.0μm以下、好ましくは1.2μm以下の微粒子を用いた超硬合金を選択する。超硬合金の材料である炭化タングステン粒子の粒子径が小さすぎれば、超硬合金を形成するために焼結した際に炭化タングステン粒子同士の結合力が弱いために、超硬合金の強度が低下する。このため、超硬合金上に形成されたダイヤモンド膜が超硬合金の表層と共に剥離しやすくなって、膜の寿命が低下する。又タングステン粒子の粒子径が大きすぎれば、炭化タングステン粒子の間隙が大きくなるため、コバルトが除去されることにより超硬合金表層において強度が低下し、同様にダイヤモンド膜が剥離しやすくなる。
【0018】
また超硬合金の結合材であるコバルトの重量比は、例えば3%以上、好ましくは4%以上とし、又8%以下、好ましくは6%以下とする。コバルトの含有量が多すぎれば、コバルトが除去されることにより超硬合金表層において強度が大きく低下し、ダイヤモンド膜が剥離し易くなる。又コバルトの含有量が少なすぎれば、コバルトが除去された後にタングステン粒子の間隙が少なくなるため、ダイヤモンド膜を形成する際に核となるダイヤモンド粒子を十分に付着させることが難しく、均一に膜を形成し難くなる。
【0019】
次に脱コバルト処理とダイヤモンド膜の形成について説明する。まずスクライビングホイール基材14の刃先の研磨面13をあらかじめ粗面にする。研磨面13を粗面とすることにより、核となるダイヤモンド粒子が付着しやすくなる。
【0020】
さてスクライビングホイール基材の刃先表層にコバルトが存在すると、ダイヤモンド膜を形成する際に、ダイヤモンドがグラファイト化して膜を形成しにくくなる。一方、コバルトが除去されるとタングステン粒子の間隙が微小な凹凸となるため、核となるダイヤモンド粒子が付着しやすくなる。そこで研磨面13の少なくともダイヤモンド膜が形成される部分の表層のコバルトを除去する脱コバルト処理を行う。このとき図2Aに示すようにスクライビングホイール基材14の貫通孔12の開口部分の両側にシール材15を塗布し、貫通孔12の内部には酸性液が浸透しないようにあらかじめ前処理を行う。又図2Bに示すように複数のスクライビングホイール基材14の側壁を合わせて接触させ、その内部にピン16を貫通させて固定した後、その両端のスクライビングホイール基材14の壁面にのみシール材15を塗布しておいてもよい。ここでシール材15は高い耐酸性を有する一方、溶剤を用いて容易に除去できる樹脂、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ニトロセルロース等の樹脂を用いる。そしてスクライビングホイール基材14をHNO3等の水溶液から成る酸溶液中に浸漬し、脱コバルト層をスクライビングホイール基材の表面に形成する。このとき形成される脱コバルト層の厚さは酸溶液中に浸漬する時間が長いほど厚くなるが、平均厚さを例えば1〜15μmとし、好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは1〜7μmの厚さとする。この場合スクライビングホイール基材14を酸溶液に浸しても、貫通孔12の内部には液が入り込まないため、貫通孔内面では脱コバルト処理が行われない。なお、脱コバルト処理は少なくともダイヤモンド膜を形成する刃先部分にのみ行われればよく、貫通孔の周囲など、ダイヤモンド膜を形成しない部分にシール処理を行ってもよい。
【0021】
こうして脱コバルト処理を行った後、スクライビングホイール基材14を樹脂を溶融する溶剤中に浸し、シール材15を除去する。
【0022】
次に図3Aの刃先の稜線部分の拡大断面図を示すようにサブミクロン以下の粒径の核となるダイヤモンドを研磨面13に形成した後、化学気相成長法(CVD法)によってダイヤモンド薄膜を成長させる。このようにしてスクライビングホイールのV字形の斜面部分に化学気相成長法によって、膜厚が例えば20〜30μmのダイヤモンド膜17を形成する。この後、少なくとも先端部分が鋭くなるように研磨する。研磨は機械研磨など各種研磨方法を実行する。例えば、研磨材を用いて機械研磨により実行してもよい。図3Bはこの研磨した後の状態を示す部分拡大断面図である。このように研磨の際には元のダイヤモンド膜17よりも例えば5°程度鈍角になるようにしてもよい。そして研磨した後の稜線から成る円が含まれる面を貫通孔12に対し垂直となるようにする。ここで研磨する領域は稜線を中央に含む帯状の部分のみであってもよい。図3Bの幅wの領域はこの先端部分の研磨領域を示しており、例えば幅wは10〜20μmとする。
【0023】
このように研磨することによって従来のスクライビングホイールに比べ、脆性材料基板に接する部分の全てがダイヤモンドとなり、稜線の粗さを細かくすることができる。スクライビングホイール基材14の表面のコバルトを除去することで核となるダイヤモンド粒子が付着しやすくなることにより、ダイヤモンド膜が剥離し難くなる。そのため、スクライビングホイールの耐摩耗性を向上させることができる。従ってこのスクライビングホイールを用いて脆性材料基板をスクライブし、分断すると、脆性材料基板の切断面の端面精度が向上し、これに伴い端面強度も向上させることができるという効果が得られる。そのため本発明のスクライビングホイールはセラミックス基板のような硬質の脆性材料基板をスクライブするのに好適である。
【0024】
次に本発明の第2の実施の形態によるスクライビングホイールの製造方法について説明する。前述した第1の実施の形態ではスクライビングホイール基材全体を酸性液に浸すときに液が貫通孔に入り込まないようにしているが、この実施の形態ではスクライビングホイール基材14全体を酸性液に浸した後、貫通孔12の内面を研磨することによって内壁の表面の脱コバルト層を除くようにしたものである。研磨する層の厚さはコバルトが除去された部分の深さによるが、例えば表面から1〜15μmの厚さであり、好ましくは1〜10μm、さらに好ましくは1〜7μmの厚さである。脱コバルト層の除去以外の工程は第1の実施の形態と同様である。この研磨には例えば以下の方法があるが、貫通孔内面の脱コバルト層を除去することができる方法であれば、以下の方法に限られるものではない。
【0025】
第1の方法は砥粒を表面に固着させたピンを用いてダミースクライブを行う方法である。ピンの表面に砥粒を固着させる方法には、例えばダイヤモンド粒子を分散させたニッケルメッキ溶液で表面を電気メッキすることにより砥粒であるダイヤモンド粒子を表面に固着させる方法(電着)がある。以下、電着により砥粒を表面に固着させたピンを電着ピンともいう。この電着ピンをスクライビングホイール10の貫通孔12に貫通させて所定の距離ダミースクライブを行う。こうすることによって貫通孔12の内壁に例えば内壁の表面から内側に向けて5μm程度の研磨を行い、貫通孔12内の表層の脱コバルト層を除く処理を行うことができる。この処理後の表層の表面粗さ(算術平均粗さRa)を0.35μm以下、好ましくは0.30μm以下とする。これは算術平均粗さRaが0.35μmより大きい場合には通常のピンを挿入してスクライブしたとき回転抵抗が高くなるからである。
【0026】
第2の方法はワイヤラップなど遊離砥粒を用いて研磨する方法である。スクライビングホイール10の貫通孔12に研磨材を含む流体(スラリー)を流し込み、ワイヤー等を摺動させることによって内壁を研磨し、脱コバルト層を除去することができる。
【0027】
第3の方法は固定砥粒を用いたホーニング加工によるものである。貫通孔内壁を研磨するためのホーニング加工を行って内壁の表面の脱コバルト層を除くものである。このようにしてもスクライビングホイール10の貫通孔12の内壁から脱コバルト層を除くことができる。
【0028】
次に図4は第1,第2の実施の形態によるスクライビングホイール基材の脱コバルト処理を施す前後の表面部分のスクライビングホイール基材のコバルトの重量パーセントを示している。又表面にシール材を施した後に脱コバルト処理を行った第1の実施の形態の場合、及び脱コバルト層を貫通孔の内部を電着ピンを用いて研磨して除去した第2の実施の形態の場合の貫通孔内のコバルトの重量パーセントについても図4に示している。この測定結果によれば、スクライビングホイール基材14そのままでは例えば約4%のコバルト量があり、脱コバルト処理を行うことによって1%未満となる。図4においては脱コバルト処理をした後のコバルト量の測定値が1つしか示されていないが、コバルト量が少なく、検出できない試料があったためである。又貫通孔内に酸性液が入らないようにシールを施したときの貫通孔内のコバルト量は2%前後となり、又貫通孔内を研磨した場合にはコバルト量は3.5%前後となる。
【0029】
図5はこれらのスクライビングホイール基材を用いてダイヤモンド膜を付着し、構成されたスクライビングホイールを用いて500gのスクライブ荷重でスクライブしたときの0m(スクライブ開始時)のスクライブ抵抗値と100mスクライブした後のスクライブ抵抗値の変化を示すグラフである。スクライビングホイールの貫通孔内にも脱コバルト処理が行われた場合には、図5の直線Bに示すようにスクライブ距離が100mとなればスクライブ抵抗が大幅に増加している。しかしスクライビングホイールに脱コバルト処理を施さなかった場合(直線A)や、貫通孔内に脱コバルトのシールを行った場合(直線C)、又は研磨した場合(直線D)にはそれほどスクライブ抵抗が変化していない。このため本発明によれば、摩耗粉がピンに付着して回転抵抗が大きくなったり、機械的な強度が低下することがないスクライビングホイールを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によるスクライビングホイールは耐摩耗性が高く、端面強度の高い脆性材料基板を切り出せるスクライビングホイールを提供することができ、スクライブ装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0031】
10 スクライビングホイール
11 円板
12 貫通孔
13 研磨面
14 スクライビングホイール基材
15 シール材
16 ピン
17 ダイヤモンド膜
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5