特許第6160331号(P6160331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6160331-腐食検査用ピグ 図000002
  • 特許6160331-腐食検査用ピグ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6160331
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】腐食検査用ピグ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/83 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
   G01N27/83
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-154517(P2013-154517)
(22)【出願日】2013年7月25日
(65)【公開番号】特開2015-25704(P2015-25704A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2015年8月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】小林 基
(72)【発明者】
【氏名】荒木 修
(72)【発明者】
【氏名】中野 稔陽
(72)【発明者】
【氏名】原山 昌巳
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05532587(US,A)
【文献】 特開2000−227421(JP,A)
【文献】 特開2001−349846(JP,A)
【文献】 特開2004−279248(JP,A)
【文献】 特開昭63−058158(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0220640(US,A1)
【文献】 特開平10−90230(JP,A)
【文献】 特開昭50−17694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72−27/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源を搭載する電源用ピグと、
前記電源からの電力により駆動し、パイプの内壁から外壁までの腐食を検査する第1センサを有する第1センサ用ピグと、
前記電源からの電力により駆動し、前記パイプの内壁のみの腐食を検査する第2センサを有する第2センサ用ピグと、
少なくとも前記第1センサおよび前記第2センサの駆動制御を行う制御部と、前記第1センサおよび前記第2センサによる検査結果を保存する保存部とを有する制御装置と、
を備え、
前記電源用ピグが先頭に配置され、
前記制御装置は、制御用ピグに搭載され、該制御用ピグは、前記第1センサ用ピグと前記第2センサ用ピグとの間に配置されていることを特徴とする腐食検査用ピグ。
【請求項2】
請求項1に記載の腐食検査用ピグにおいて、
前記先頭から、前記電源用ピグ、前記第1センサ用ピグ、前記制御用ピグ、前記第2センサ用ピグの順で配置されている腐食検査用ピグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食検査用ピグに関し、特に、パイプライン内を流れる流体の圧力で移動する腐食検査用ピグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パイプライン内を移動することで、パイプの腐食を検査する腐食検査用ピグが提案されている。腐食検査用ピグには、パイプライン内を流体が流れていない状態でパイプライン内を移動するもの(特許文献1,2参照)と、パイプライン内を流体が流れている状態でパイプライン内を移動するもの(流体移動型の腐食検査用ピグ)がある。
【0003】
流体移動型の腐食検査用ピグでは、パイプライン内を流れる流体の圧力で移動することとなる。従って、このような腐食検査用ピグでは、パイプラインを検査するセンサ、センサを制御する制御部、検査結果を保存する保存部、これらに電力を供給する電源などを搭載してパイプライン内を移動することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−270210号公報
【特許文献2】特開2011−27592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、パイプラインは、流れる流体の圧力によって、パイプの仕様が異なってくる。例えば、日本国内の都市ガスパイプラインでは、高圧(例えば、1.0MPa以上)のガスに使用する高圧パイプと、中圧(例えば0.3MPa以上1.0MPa以下)のガスに使用する中圧パイプとでは、高圧パイプと比較して中圧パイプのパイプ径は小さくなる傾向がある。
【0006】
ここで、腐食検査用ピグは、パイプライン内からパイプの腐食を検査するものであるため、パイプの内壁近傍にセンサを配置することとなる。つまり、腐食検査用ピグの外径は、パイプ内径に近似したものとなる。これまで、流体移動型の腐食検査用ピグは高圧パイプに適用されることが多かったが、中圧パイプのようにパイプ内径が制限されたパイプに用いる時には、各機能の実装上、困難を伴っていた。
【0007】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、パイプ内径が制限されたパイプによって構成されたパイプラインにおいても、パイプライン内の腐食を検査することができる腐食検査用ピグを提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る腐食検査用ピグでは、
(1)電源を搭載する電源用ピグと、電源からの電力により駆動し、パイプの内壁から外壁までの腐食を検査する第1センサを有する第1センサ用ピグと、電源からの電力により駆動し、パイプの内壁の腐食を検査する第2センサと、少なくとも第1センサおよび第2センサの駆動制御を行う制御部と、第1センサおよび第2センサによる検査結果を保存する保存部とを有する制御装置と、を備え、第2センサまたは制御装置は、電源用ピグあるいは第1センサ用ピグと異なるピグがある場合は前記異なるピグのいずれか少なくとも一方に搭載され、電源用ピグが先頭に配置されていることを特徴とする。
【0009】
(2)また、上記(1)の腐食検査用ピグにおいて、第2センサは、第2センサ用ピグに搭載され、制御装置は、制御用ピグに搭載されていることが好ましい。
【0010】
(3)また、上記(2)の腐食検査用ピグにおいて、制御用ピグは、第1センサ用ピグと第2センサ用ピグとの間に配置されていることが好ましい。
【0011】
(4)また、上記(3)の腐食検査用ピグにおいて、先頭から、電源用ピグ、第1センサ用ピグ、制御用ピグ、第2センサ用ピグの順で配置されていることが好ましい。
【0012】
(5)また、上記(1)の腐食検査用ピグにおいて、第2センサおよび制御装置は、電源用ピグに搭載されていることが好ましい。
【0013】
(6)また、上記(1)の腐食検査用ピグにおいて、制御装置は、制御用ピグに搭載され、第2センサは、電源用ピグまたは制御用ピグに搭載されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る腐食検査用ピグは、流体移動型の腐食検査用ピグを構成する機器を各ピグに分散して搭載させ、各ピグを一列に連結することで、外径を小さくでき、パイプ内径が制限されたパイプによって構成されたパイプラインにおいても、パイプライン内の腐食を検査することができるという効果を奏する。また、パイプライン内を移動中に最も衝撃をうける先頭のピグに流体移動型の腐食検査用ピグを構成する機器のうち、衝撃に強い機器を搭載するので、パイプライン内を移動することで受ける衝撃による悪影響を最小限とすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態に係る腐食検査用ピグを示す図である。
図2図2は、実施形態に係る腐食検査用ピグの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0017】
図1は、実施形態に係る腐食検査用ピグを示す図である。同図に示すように、本実施形態に係る腐食検査用ピグ1−1は、パイプライン100内を流体Rが流れている状態でパイプライン100内を移動するものであり、電源用ピグ2と、第1センサ用ピグ3と、第2センサ用ピグ4と、制御用ピグ5と、連結部6と、距離センサ7とを含んで構成されている。各ピグ2〜5は、それぞれケーブル8により電気的に接続されている。
【0018】
電源用ピグ2は、電源22を搭載するものである。電源用ピグ2は、本体部21と、電源22と、カップ23,24と、ローラ群25を含んで構成されている。
【0019】
本体部21は、金属製材料などで円筒状に形成されており、軸方向における両端部が図示しない閉塞部材で閉塞されている。なお、閉塞部材の少なくとも一方は、本体部21に対して着脱自在に設けられている。
【0020】
電源22は、第1センサ用ピグ3と、第2センサ用ピグ4と、制御用ピグ5と、距離センサ7に電力を供給するものである。電源22は、本体部21の内部に密閉された状態で収容されており、取り出し可能である。電源22は、例えば、耐衝撃構造を採用した一次電池、二次電池が好ましい。
【0021】
カップ23,24は、パイプライン100内を流れる流体Rにより、腐食検査用ピグ1−1に流体Rが流れる方向の推力を与えるものである。カップ23,24は、本体部21に対して、カップ23が先頭側に、カップ24が後尾側に、軸方向に離間した状態でそれぞれ取り付けられている。カップ23,24は、弾性を有する樹脂などの材料で椀状(ボウル状)に形成されている。ここで、カップ23,24の外径は、電源用ピグ2の最大外径であり、腐食検査用ピグ1−1が使用されるパイプ101の内径に応じて設定される。カップ23,24の外径は、例えば、パイプ101の内径と、パイプライン100内を流れる流体Rの圧力(以下、単に「流体圧力」と称する)とに基づいて、電源用ピグ2がパイプライン100内を移動できる程度に設定される。また、カップ23,24の許容される弾性変形が行われた際の外径は、パイプ101の内径に応じて設定された設定最小内径以下となるように設定されている。ここで、設定最小内径は、パイプライン100の方向の変化(例えば、途中に設けられたエルボ、エルボ返しなど)や、パイプライン100内の突起物(例えば、プラグなど)や、パイプ101の内径の変化(例えば、肉厚変化など)などに基づいて決定される。設定最小内径は、本実施形態では、例えば、パイプ101の内径の90%とする。
【0022】
ローラ群25は、パイプライン100の方向の変化や、パイプライン100内の突起物や、パイプ101の内径の変化があっても、腐食検査用ピグ1−1をパイプライン100内で円滑に流体Rが流れる方向に移動させるためのものである。ローラ群25は、回転自在に支持された複数のローラが周方向に配置されており、本体部21のカップ23よりも先頭側に取り付けられている。ローラ群25の外径は、設定最小内径よりも小さく設定されている。
【0023】
ここで、電源用ピグ2は、腐食検査用ピグ1−1のうち、最も流体Rが流れる方向側、すなわち先頭に配置されている。つまり、第1センサ用ピグ3、第2センサ用ピグ4および制御用ピグ5よりも、先にパイプライン100内を通過する。
【0024】
第1センサ用ピグ3は、第1センサ33によりパイプ101の内壁から外壁までの腐食を検査するものである。第1センサ用ピグ3は、電源用ピグ2の後尾側に隣り合って配置され、第1ローラ群31と、第2ローラ群32と、第1センサ33とを含んで構成されている。
【0025】
第1ローラ群31、第2ローラ群32は、第1センサ用ピグ3をパイプライン100内で流体Rの流れる方向に円滑に移動させるとともに、第1センサ用ピグ3をパイプライン100内の中心軸近傍に保持させるものである。各ローラ群31,32は、回転自在に支持された複数のローラが周方向に配置されており、第1ローラ群31が先頭側に、第2ローラ群32が後尾側に、第1センサ33を挟んで配置されている。各ローラ群31,32は、第1センサ用ピグ3の径方向内方に移動自在に弾性支持されており、外力が作用していない状態における外径は第1センサ用ピグ3がパイプライン100内を移動できる程度に設定され、許容される弾性変形が行われた際の外径は設定最小以下となるように設定されている。
【0026】
第1センサ33は、電源22からの電力により駆動し、パイプ101の内壁から外壁までの腐食を検査するものである。第1センサ33には、電源用ピグ2の電源22からケーブル8を介して電力が供給され駆動する。第1センサ33は、パイプ101の内壁から外壁までを磁化して、磁束を発生させるとともに漏洩磁束を計測し、漏洩磁束の強度からパイプ101の内壁から外壁までに発生する腐食を検査する。ここで、漏洩磁束による腐食の検査方法とは、磁石によりパイプ101を構成する鋼材を磁化させ閉じた磁路を形成し、パイプ101の表面(内壁あるいは外壁)に形成された腐食部から漏れる磁束を測定する方法である。パイプ101が健全であれば、磁路の断面積には変動がない。予め、健全なパイプ101の内部(内壁から外壁までの部分)の磁束密度が飽和密度になるような強さで磁化すれば、パイプ101の表面から外に磁束が漏洩することはない。しかし、腐食などによりパイプ101が薄肉化すると、磁路の断面積が減少するので、パイプ101の内部(内壁から外壁までの部分)に存在できる磁束(=飽和磁束密度×断面積)が小さくなり、磁路に入りきれなくなった磁束がパイプ101の表面から外部に漏洩する。
【0027】
第1センサ33は、センサ群33aと、磁化器33b,33cとを含んで構成されている。センサ群33aは、コイル、ホール素子などで構成される複数の磁気センサが周方向に配置されており、磁化器33b,33cとの間に配置されている。ここで、センサ群33aは、パイプ101の軸に平行、直角あるいはパイプ101の円周の接線方向の少なくとも1以上の方向の磁束成分を測定できるように設定されている。センサ群33aは、電源22からの電力により駆動し、検査結果、すなわち出力がケーブル8を介して隣り合う後尾側の制御用ピグ5に送信される。磁化器33b、33cは、それぞれ円周上に複数配置された磁石である。磁化器33b、33cは、外表面に図示しないブラシが形成されており、ブラシが変形することによりパイプ101の内壁に常時接触するように構成されている、磁化器33b、33cは、外周面の極性が異なるように、1つの磁気回路を形成する。
【0028】
第2センサ用ピグ4は、第2センサ43によりパイプ101の内壁の腐食を検査するものである。第2センサ用ピグ4は、制御用ピグ5の後尾側に隣り合って配置され、第1ローラ群41と、第2ローラ群42と、第2センサ43とを含んで構成されている。
【0029】
第1ローラ群41、第2ローラ群42は、第2センサ用ピグ4をパイプライン100内で流体Rの流れる方向に円滑に移動させるとともに、第2センサ用ピグ4をパイプライン100内の中心軸近傍に保持させるものである。各ローラ群41,42は、回転自在に支持された複数のローラが周方向に配置されており、第1ローラ群41が先頭側に、第2ローラ群42が後尾側に、第2センサ43を挟んで配置されている。各ローラ群41,42は、第2センサ用ピグ4の径方向内方に移動自在に弾性支持されており、外力が作用していない状態における外径は第2センサ用ピグ4がパイプライン100内を移動できる程度に設定され、許容される弾性変形が行われた際の外径は設定最小内径以下となるように設定されている。
【0030】
第2センサ43は、電源22からの電力により駆動し、パイプ101の内壁の腐食を検査するものである。第2センサ43には、電源用ピグ2の電源22からケーブル8を介して電力が供給され駆動する。第2センサ43は、第1センサ33と同様に漏洩磁束を計測し、漏洩磁束の強度からパイプ101の内壁に発生する腐食を検査する。第2センサ43は、センサ群43aと、磁化器43bとを含んで構成されている。センサ群43aは、コイル、ホール素子などで構成される複数の磁気センサが周方向に配置されており、磁化器43bの近傍に配置されている。ここで、センサ群43aは、パイプ101の軸に平行、直角あるいはパイプ101の円周の接線方向の少なくとも1以上の方向の磁束成分を測定できるように設定されている。センサ群43aは、電源22からの電力により駆動し、検査結果、すなわち出力がケーブル8を介して隣り合う先頭側の制御用ピグ5に送信される。磁化器43bは、センサ群43aの各センサにそれぞれ対応して円周上に複数配置された磁石である。ここで、磁化器43bの磁力は、磁化器33b,33cの磁力より小さく設定されている。これにより、センサ群33aがパイプ101の内壁から外壁までの腐食を検査する一方、センサ群43aがパイプ101の内壁の腐食を検査することとなる。
【0031】
制御用ピグ5は、腐食検査用ピグ1−1の動作を制御するものであり、第1センサ用ピグ3の後尾側に隣り合って配置され、本体部51と、第1ローラ群52と、第2ローラ群53と、制御装置を構成する制御部54および保存部55とを含んで構成されている。つまり、制御用ピグ5は、第1センサ用ピグ3と第2センサ用ピグ4との間に配置されている。
【0032】
本体部51は、金属製材料などで円筒状に形成されており、軸方向における両端部が図示しない閉塞部材で閉塞されている。なお、閉塞部材の少なくとも一方は、本体部51に対して着脱自在に設けられている。
【0033】
第1ローラ群52、第2ローラ群53は、制御用ピグ5をパイプライン100内で流体Rの流れる方向に円滑に移動させるとともに、制御用ピグ5をパイプライン100内の中心軸近傍に保持させるものである。各ローラ群52,53は、回転自在に支持された複数のローラが周方向に配置されており、第1ローラ群52が先頭側に、第2ローラ群53が後尾側に配置されている。各ローラ群52,53は、制御用ピグ5の径方向内方に移動自在に弾性支持されており、外力が作用していない状態における外径は制御用ピグ5がパイプライン100内を移動できる程度に設定され、許容される弾性変形が行われた際の外径は設定最小内径以下となるように設定されている。
【0034】
制御部54は、制御装置を構成するものであり、少なくとも、第1センサ33および第2センサ43を駆動制御するものであり、本体部51の内部に密閉された状態で収容されており、取り出し可能である。制御部54は、電源22、第1センサ33、第2センサ43、保存部55および距離センサ7などと電気的に接続されており、電源22から供給される電力により、第1センサ33、第2センサ43、および距離センサ7などを駆動制御する。
【0035】
保存部55は、制御装置を構成するものであり、第1センサ33および第2センサ43による検査結果をデータとして保存するものであり、本体部51の内部に密閉された状態で収容されており、取り出し可能である。保存部55は、制御部54からの指令に基づいて、距離センサ7の出力である検査開始地点からの距離と、第1センサ33による検査結果である出力値と、第2センサ43による検査結果である出力値とを関連つけて保存する。
【0036】
連結部6は、各ピグ2〜5の間にそれぞれ配置され、隣り合うピグ2〜5を相対移動可能に連結するものである。連結部6は、連結本体部61と、継手部62,63と有して構成されている。連結本体部61は、両端部に継手部62,63が設けられている。継手部62,63は、連結本体部61と各ピグ2〜5とを相対回転可能に連結するものであり、本実施形態では、少なくとも2軸以上の回転軸を有している。従って、パイプライン100の方向の変化に応じて、隣り合うピグ2〜5が連結部6により相対移動するので、腐食検査用ピグ1−1がパイプライン100の方向の変化に追従して変化することができる。
【0037】
距離センサ7は、腐食検査用ピグ1−1がパイプライン100内を移動した距離を検出するものである。距離センサ7は、一例として、最後尾に設けられており、本実施形態では、第2センサ用ピグ4の後尾側に2つ取り付けられている。距離センサ7は、例えば、図示しない支持部が弾性変形することでパイプ101の内壁に常時接触するように構成されている。
【0038】
このように、腐食検査用ピグ1−1は、各ピグ2〜5が先頭から電源用ピグ2、第1センサ用ピグ3、制御用ピグ5、第2センサ用ピグ4の順で配置されている。このような配置において、腐食検査用ピグ1−1は、検査対象であるパイプライン100内を移動する。具体的には、腐食検査用ピグ1−1は、パイプライン100の任意の箇所に設けられた検査開始地点である図示しないランチャから、検査終了地点である図示しないレシーバまでを移動する。腐食検査用ピグ1−1のランチャからレシーバに向かっての移動は、パイプライン100内を流れる流体Rを電源用ピグ2のカップ23,24により受け止めることで行われる。ここで、腐食検査用ピグ1−1は、通常パイプライン100内を流れる流体Rによって移動してもよいし、通常流れている流体Rを止めて他の流体、例えばパイプライン100に図示しないコンプレッサを接続し、パイプライン100内を流れるコンプレッサにより圧縮されたエアによって移動してもよい。
【0039】
腐食検査用ピグ1−1がパイプライン100内を移動中の間は、制御部54により第1センサ33、第2センサ43、および距離センサ7などが駆動制御され、これらからの出力が保存部55にデータとして保存され続ける。つまり、保存部55には、パイプライン100内の任意の位置におけるパイプ101の内壁から外壁までの状態およびパイプ101の内壁の状態が保存される。ここで、パイプ101の内壁の腐食は、第1センサ33および第2センサ43の検査結果にあらわれる。一方、パイプ101の外壁の腐食は、第1センサ33の検査結果にはあらわれるが、第2センサ43の検査結果としてはあらわれない。従って、腐食検査用ピグ1−1によれば、パイプ101の内壁あるいは外壁のいずれに腐食が発生したのかを検査することができる。
【0040】
以上のように、腐食検査用ピグ1−1は、腐食検査用ピグ1−1を構成する機器、特に、電源22と、第1センサ33と、第2センサ43と、制御部54および保存部55とを異なるピグ2〜5に分散して搭載し、各ピグ2〜5を一列に連結してパイプライン100の軸方向に長く構成した。従って、腐食検査用ピグ1−1の容積は、パイプライン100内の軸方向に拡大されるので、腐食検査用ピグ1−1を構成する機器を搭載するために、容積を径方向に拡大することを抑制することができる。これにより、パイプ内径が制限されたパイプによって構成されたパイプラインにおいても、パイプライン内の腐食を検査することができる。
【0041】
また、腐食検査用ピグ1−1では、各ピグ2〜5のうち、可動部品や精密な部品などの故障の原因となる部品ではなく、耐衝撃構造を採用した電源22を搭載した電源用ピグ2が先頭に配置されている。従って、パイプライン100の方向の変化や、パイプライン100内の突起物や、パイプ101の内径の変化によって、腐食検査用ピグ1−1の先頭がパイプ101の内壁や突起物と接触する場合もありえる最も衝撃をうける先頭が電源用ピグ2であるため、他のピグ3〜5を先頭とした場合と比較して、腐食検査用ピグ1−1の損傷や故障を抑制することができる。これにより、パイプライン100内を長距離移動する場合においても、衝撃による悪影響を最小限とすることで、腐食の検査を確実に行うことができる。
【0042】
また、制御用ピグ5は、第1センサ用ピグ3と第2センサ用ピグ4との間に配置されているので、第1センサ33および第2センサ43からの出力がともに最も短い距離で制御部54および保存部55に入力される。従って、制御用ピグ5と第1センサ用ピグ3との間、あるいは制御用ピグ5と第2センサ用ピグ4との間に、他のピグが配置されている場合と比較して、第1センサ33および第2センサ43から制御部54および保存部55に出力が送信されるまでにノイズがのることを抑制することができる。また、第1センサ用ピグ3と第2センサ用ピグ4との間に制御用ピグ5が配置されているので、第1センサ33および第2センサ43が発生する磁場によって互いが影響を受けることが抑制される。これらから、第1センサ33および第2センサ43のそれぞれの検査精度の向上を図ることができる。また、第1センサ用ピグ3と第2センサ用ピグ4との間に制御用ピグ5が配置されているので、第1センサ用ピグ3および第2センサ用ピグ4と、制御用ピグ5とを電気的に接続するケーブル8の引き回しが容易となる。
【0043】
なお、本実施形態における制御用ピグ5は、第1センサ用ピグ3と第2センサ用ピグ4との間に配置されていればよい。図2は、実施形態に係る腐食検査用ピグの変形例を示す図である。同図に示すように、腐食検査用ピグ1−2は、各ピグ2〜5が先頭から電源用ピグ2、第2センサ用ピグ4、制御用ピグ5、第1センサ用ピグ3の順で配置されていてもよい。
【0044】
また、上記実施形態における腐食検査用ピグ1−1,1−2は、4両編成としたがこれに限定されるものではない。例えば、電源用ピグ2に、第2センサ43を搭載して、先頭から電源用ピグ2、制御用ピグ5、第1センサ用ピグ3の第2センサ用ピグ4を除いた3両編成としてもよい。例えば、制御用ピグ5に、第2センサ43を搭載して、先頭から電源用ピグ2、制御用ピグ5、第1センサ用ピグ3の第2センサ用ピグ4を除いた3両編成としてもよい。また、例えば、電源用ピグ2に、第2センサ43および制御部54および保存部55を搭載して、先頭から電源用ピグ2、第1センサ用ピグ3の第2センサ用ピグ4および制御用ピグ5を除いた2両編成としてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、磁化器33b,33c、磁化器43bを磁石としているが、永久磁石としても電磁石としてもよい。電磁石の場合、磁化器33b、33c、磁化器43bは、電源22から電力が供給されることで磁化する。本実施形態では、特に、電源用ピグ2が第1センサ用ピグ3と隣り合って配置されているので、腐食検査用ピグ1−1の中で、最も電力が要求される磁化器33b,33cと電源22とを最短距離で電気的に接続することができる。従って、電源22から磁化器33b,33cへの電力供給のロスを抑制することができる。
【符号の説明】
【0046】
1−1,1−2 腐食検査用ピグ
2 電源用ピグ
22 電源
3 第1センサ用ピグ
33 第1センサ
4 第2センサ用ピグ
43 第2センサ
5 制御用ピグ
54 制御部(制御装置)
55 保存部(制御装置)
6 連結部
7 距離センサ
図1
図2