特許第6160337号(P6160337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6160337
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】車両用シートスライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/08 20060101AFI20170703BHJP
【FI】
   B60N2/08
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-157988(P2013-157988)
(22)【出願日】2013年7月30日
(65)【公開番号】特開2015-27841(P2015-27841A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2016年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸史
(72)【発明者】
【氏名】後藤 直希
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−225262(JP,A)
【文献】 実開昭61−139833(JP,U)
【文献】 特開昭63−137051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/08
B60N 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方にシートを支持するアッパレールと、
延伸方向に沿って相対移動可能に前記アッパレールを支持するロアレールと、
前記アッパレールに支持されて前記ロアレールに係合することにより前記アッパレールの相対移動を規制可能なロックレバーと、
前記シートのスライド位置を調整すべく操作される操作ハンドルと、を備え、
前記ロアレール及び前記アッパレールには、それぞれ、前記延伸方向の複数位置において前記ロックレバーに係脱可能、且つその係合により前記延伸方向における前記ロックレバーの相対位置を固定可能な係合部が設けられるものであって、
前記操作ハンドルに対する操作入力に基づき、前記ロアレールに設けられた第1係合部と該ロアレールに係合する前記ロックレバーとの相対位置を変更することにより、前記ロアレールに係合する前記ロックレバーに対する前記アッパレールの移動位置を調整可能な第1位置調整機構と、
前記操作ハンドルに対する操作入力に基づき、前記アッパレールに設けられた第2係合部と該アッパレールに支持された前記ロックレバーとの相対位置を変更することにより、前記アッパレールに支持された前記ロックレバーに対する前記アッパレールの移動位置を調整可能な第2位置調整機構と、が構成され、
前記第1係合部及び前記第2係合部は、それぞれ、前記ロックレバーが回動することにより該ロックレバーに設けられた挿入部が挿入される複数の溝部を有するものであって、
前記第2係合部側の各第2溝部の形成ピッチは、前記第1係合部側の各第1溝部の形成ピッチよりも小さく設定され、
前記操作ハンドルの操作量を調整することにより、前記ロックレバーが前記第1係合部及び前記第2係合部に係合する状態と、前記ロックレバーが前記第1係合部には係合し、且つ前記第2係合部には係合しない状態とを切り替え可能に構成される車両用シートスライド装置。
【請求項2】
請求項に記載の車両用シートスライド装置において、
前記第2溝部は、前記ロックレバーが回動することにより該ロックレバーに設けられた前記挿入部が前記第1溝部に挿入された後に該第2溝部に挿入されるように、該第2溝部の開口位置が前記第1溝部の開口位置よりも前記挿入部の挿入側に位置しており、
前記ロックレバーが前記第1係合部及び前記第2係合部に係合する状態のときに、記第2溝部に対する前記挿入部の挿入深さが、前記第1溝部に対する前記挿入部の挿入深さよりも浅くなっていること、
を特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項3】
請求項に記載の車両用シートスライド装置において、
前記各第1溝部の形成ピッチは、前記各第2溝部の形成ピッチの2以上の整数倍であること、
を特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項4】
請求項〜請求項の何れか一項に記載の車両用シートスライド装置において、
前記アッパレールは、対向配置された一対の側壁部を有し、
前記ロックレバーは、前記両側壁部間に支持されるとともに、前記側壁部に形成されたロック挿通孔に挿通されることにより前記操作ハンドルに対する操作入力に基づき前記ロアレールに設けられた前記第1係合部に対して係脱可能なロック係合部を有するものであって、前記挿入部は、該ロック係合部に設けられており、
前記側壁部には、前記操作入力に基づき前記ロック係合部が係脱可能な前記第2係合部が形成されること、を特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項5】
上方にシートを支持するアッパレールと、
延伸方向に沿って相対移動可能に前記アッパレールを支持するロアレールと、
前記アッパレールに支持されて前記ロアレールに係合することにより前記アッパレールの相対移動を規制可能なロックレバーと、
前記シートのスライド位置を調整すべく操作される操作ハンドルと、を備え、
前記ロアレール及び前記アッパレールには、それぞれ、前記延伸方向の複数位置において前記ロックレバーに係脱可能、且つその係合により前記延伸方向における前記ロックレバーの相対位置を固定可能な係合部が設けられるものであって、
前記操作ハンドルに対する操作入力に基づき、前記ロアレールに設けられた第1係合部と該ロアレールに係合する前記ロックレバーとの相対位置を変更することにより、前記ロアレールに係合する前記ロックレバーに対する前記アッパレールの移動位置を調整可能な第1位置調整機構と、
前記操作ハンドルに対する操作入力に基づき、前記アッパレールに設けられた第2係合部と該アッパレールに支持された前記ロックレバーとの相対位置を変更することにより、前記アッパレールに支持された前記ロックレバーに対する前記アッパレールの移動位置を調整可能な第2位置調整機構と、が構成され、
前記第1係合部は、前記ロックレバーが回動することにより該ロックレバーに設けられた挿入部が挿入される複数の第1溝部を有するものであって、前記第2係合部は、前記ロックレバーが回動することにより該ロックレバーに設けられたロックレバー係合部が係合される複数の係合歯を有するものであり、
前記第2係合部側の各係合歯の形成ピッチは、前記第1係合部側の各第1溝部の形成ピッチよりも小さく設定され、
前記操作ハンドルの操作量を調整することにより、前記ロックレバーが前記第1係合部及び前記第2係合部に係合する状態と、前記ロックレバーが前記第1係合部には係合し、且つ前記第2係合部には係合しない状態とを切り替え可能に構成される車両用シートスライド装置。
【請求項6】
請求項に記載の車両用シートスライド装置において、
前記アッパレールは、対向配置された一対の側壁部を有し、
前記ロックレバーは、前記両側壁部に設けられた支持孔に挿通される支持軸を有して前記両側壁部間に支持されるとともに、
前記支持孔は、前記支持軸の径方向移動を許容する孔形状を有するものであって、
前記支持軸が前記ロックレバー係合部であって、
前記支持孔には、前記操作ハンドルに対する操作入力に基づき前記支持軸が係脱可能な前記係合歯が形成されること、を特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用シートスライド装置において、
前記ロックレバーは、前記操作入力に基づき前記支持軸周りに回動することにより前記ロアレールに設けられた前記第1係合部に対して係脱可能なロック係合部を有するものであって、前記挿入部は、該ロック係合部に設けられており、
前記ロックレバーを付勢して該ロックレバーを回動させることにより前記ロック係合部が前記第1係合部に係合する状態を保持可能なロック用付勢部材と、
前記ロックレバーを付勢して前記支持軸を前記第2係合部に押し当てることにより前記支持軸が前記第2係合部に係合する状態を保持可能な支持用付勢部材と、を備え、
前記第2位置調整機構は、前記操作入力に基づく前記ロックレバーの回動により前記支持用付勢部材の付勢力に抗して前記ロック係合部が前記第1係合部から脱離する前に、前記支持用付勢部材の付勢力に抗して前記支持軸が前記第2係合部から脱離するように構成されること、を特徴とする車両用シートスライド装置。
【請求項8】
請求項7に記載の車両用シートスライド装置において、
前記支持用付勢部材の付勢力が、前記ロック用付勢部材の付勢力よりも弱く設定されること、を特徴とする車両用シートスライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートスライド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用のシートスライド装置は、上方にシートを支持するアッパレールと、その延伸方向に沿ってアッパレールを相対移動可能に支持するロアレールとを備えている。そして、多くの場合、このようなシートスライド装置には、そのロアレールに対するアッパレールの相対移動を規制可能なロック機構が設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のシートスライド装置は、アッパレールの延伸方向に交差する回動軸周りに回動可能なロックレバーを備えている。また、ロアレールには、その延伸方向の複数位置において当該ロックレバーが係合可能な係合部が設けられている。そして、ロック機構は、ロックレバーを回動させてロアレール側の係合部に係合させることにより、そのアッパレールの相対移動を規制することが可能となっている。
【0004】
このように、従来、シートスライド装置のロック機構は、多くの場合、アッパレールに支持されたロックレバーをロアレールの係合部に係脱させることにより、そのアッパレールの相対移動を許容し、及びその移動位置を固定する構成になっている。そして、これを利用してアッパレールの移動位置を変更することにより、そのシートのスライド位置を調整することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−100077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、車両用のシートスライド装置においては、そのロック機構に対し、車両衝突時の衝撃荷重に耐え得るような高いロック強度が要求される。そして、そのロック強度は、ロックレバー及びロアレールの係合部を構成する爪部や溝部の形状、並びにこれらの係合要素を形成する間隔(形成ピッチ)等によって決定される。このため、そのロックレバーが係合可能な位置を増やすことが難しく、その結果、シートスライド位置の調整自由度が制限されるという問題があり、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、簡素な構成にて、高い信頼性を確保しつつ、調整自由度の高い車両用シートスライド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する車両用シートスライド装置は、上方にシートを支持するアッパレールと、延伸方向に沿って相対移動可能に前記アッパレールを支持するロアレールと、前記アッパレールに支持されて前記ロアレールに係合することにより前記アッパレールの相対移動を規制可能なロックレバーと、前記シートのスライド位置を調整すべく操作される操作ハンドルと、を備え、前記ロアレール及び前記アッパレールには、それぞれ、前記延伸方向の複数位置において前記ロックレバーに係脱可能、且つその係合により前記延伸方向における前記ロックレバーの相対位置を固定可能な係合部が設けられるものであって、前記操作ハンドルに対する操作入力に基づき、前記ロアレールに設けられた第1係合部と該ロアレールに係合する前記ロックレバーとの相対位置を変更することにより、前記ロアレールに係合する前記ロックレバーに対する前記アッパレールの移動位置を調整可能な第1位置調整機構と、前記操作ハンドルに対する操作入力に基づき、前記アッパレールに設けられた第2係合部と該アッパレールに支持された前記ロックレバーとの相対位置を変更することにより、前記アッパレールに支持された前記ロックレバーに対する前記アッパレールの移動位置を調整可能な第2位置調整機構と、が構成され、前記第1係合部及び前記第2係合部は、それぞれ、前記ロックレバーが回動することにより該ロックレバーに設けられた挿入部が挿入される複数の溝部を有するものであって、前記第2係合部側の各第2溝部の形成ピッチは、前記第1係合部側の各第1溝部の形成ピッチよりも小さく設定され、前記操作ハンドルの操作量を調整することにより、前記ロックレバーが前記第1係合部及び前記第2係合部に係合する状態と、前記ロックレバーが前記第1係合部には係合し、且つ前記第2係合部には係合しない状態とを切り替え可能に構成される
【0009】
上記構成によれば、簡素な構成にて、アッパレールの移動位置を調整可能な二つの位置調整機構を形成することができる。そして、これら二つの位置調整機構を併用することで、高い信頼性を確保しつつ、その調整自由度を高めることができる。
【0011】
上記構成によれば、一の操作ハンドルを用いて操作可能、且つそれぞれ確実にアッパレールの移動位置を調整可能な第1位置調整機構及び第2位置調整機構が形成される。その結果、容易に、そのシートスライド位置の微調整を行うことができる。
【0012】
上記課題を解決する車両用シートスライド装置は、前記第2溝部は、前記ロックレバーが回動することにより該ロックレバーに設けられた前記挿入部が前記第1溝部に挿入された後に該第2溝部に挿入されるように、該第2溝部の開口位置が前記第1溝部の開口位置よりも前記挿入部の挿入側に位置しており、前記ロックレバーが前記第1係合部及び前記第2係合部に係合する状態のときに、記第2溝部に対する前記挿入部の挿入深さが、前記第1溝部に対する前記挿入部の挿入深さよりも浅くなっていることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、操作ハンドルの操作量に基づいて、ロアレール及びアッパレールに対するロックレバーの係合状態を切り替えることができる。そして、これにより、簡素な構成にて、一の操作ハンドルに対する操作入力に基づき動作する第1位置調整機構及び第2位置調整機構を形成することができる。
【0014】
即ち、操作ハンドルの操作量を調整することにより、ロックレバーを回動させて第1係合部及び第2係合部の双方に係合させる操作、又はこれら第1係合部及び第2係合部の双方から脱離させる操作の途中において、ロックレバーが第1係合部には係合し、第2係合部に対しては係合しない状態を作り出すことができる。そして、これによりアッパレールの移動範囲を限定することで、容易に、そのシートスライド位置の微調整を行うことができる。
【0015】
上記課題を解決する車両用シートスライド装置は、前記各第1溝部の形成ピッチは、前記各第2溝部の形成ピッチの2以上の整数倍であることが好ましい。
上記構成によれば、第1係合部側の各第1溝部(を構成する凸状部分)に干渉することなく、円滑に、そのロックレバーの挿入部を第2係合部側の各第2溝部に挿入し、及び当該各第2溝部から抜脱することできる。
【0016】
上記課題を解決する車両用シートスライド装置は、前記アッパレールは、対向配置された一対の側壁部を有し、前記ロックレバーは、前記両側壁部間に支持されるとともに、前記側壁部に形成されたロック挿通孔に挿通されることにより前記操作ハンドルに対する操作入力に基づき前記ロアレールに設けられた前記第1係合部に対して係脱可能なロック係合部を有するものであって、前記挿入部は、該ロック係合部に設けられており、前記側壁部には、前記操作入力に基づき前記ロック係合部が係脱可能な前記第2係合部が形成されることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、簡素な構成にて、一の操作ハンドルに対する操作入力に基づき動作する第1位置調整機構及び第2位置調整機構を形成することができる。更に、そのロックレバーの相対位置変更をロック挿通孔内で行うことにより、例えば、衝突荷重等の外力を要因としてロック係合部が第2係合部から脱離した場合であっても、その相対移動方向に位置するロック挿通孔の内壁がロック係合部を係止可能なストッパとして機能する。そして、これにより、高い信頼性を確保することができる。また、このようにフェールセーフが図られることで、第2係合部については、そのロック係合部が係合可能な位置を増やして更に調整自由度を高めることが可能になる。そして、これにより、より細やかにシートのスライド位置を調整することができる。
【0018】
上記課題を解決する車両用シートスライド装置は、上方にシートを支持するアッパレールと、延伸方向に沿って相対移動可能に前記アッパレールを支持するロアレールと、前記アッパレールに支持されて前記ロアレールに係合することにより前記アッパレールの相対移動を規制可能なロックレバーと、前記シートのスライド位置を調整すべく操作される操作ハンドルと、を備え、前記ロアレール及び前記アッパレールには、それぞれ、前記延伸方向の複数位置において前記ロックレバーに係脱可能、且つその係合により前記延伸方向における前記ロックレバーの相対位置を固定可能な係合部が設けられるものであって、前記操作ハンドルに対する操作入力に基づき、前記ロアレールに設けられた第1係合部と該ロアレールに係合する前記ロックレバーとの相対位置を変更することにより、前記ロアレールに係合する前記ロックレバーに対する前記アッパレールの移動位置を調整可能な第1位置調整機構と、前記操作ハンドルに対する操作入力に基づき、前記アッパレールに設けられた第2係合部と該アッパレールに支持された前記ロックレバーとの相対位置を変更することにより、前記アッパレールに支持された前記ロックレバーに対する前記アッパレールの移動位置を調整可能な第2位置調整機構と、が構成され、前記第1係合部は、前記ロックレバーが回動することにより該ロックレバーに設けられた挿入部が挿入される複数の第1溝部を有するものであって、前記第2係合部は、前記ロックレバーが回動することにより該ロックレバーに設けられたロックレバー係合部が係合される複数の係合歯を有するものであり、前記第2係合部側の各係合歯の形成ピッチは、前記第1係合部側の各第1溝部の形成ピッチよりも小さく設定され、前記操作ハンドルの操作量を調整することにより、前記ロックレバーが前記第1係合部及び前記第2係合部に係合する状態と、前記ロックレバーが前記第1係合部には係合し、且つ前記第2係合部には係合しない状態とを切り替え可能に構成される。
上記構成によれば、簡素な構成にて、アッパレールの移動位置を調整可能な二つの位置調整機構を形成することができる。そして、これら二つの位置調整機構を併用することで、高い信頼性を確保しつつ、その調整自由度を高めることができる。
また、一の操作ハンドルを用いて操作可能、且つそれぞれ確実にアッパレールの移動位置を調整可能な第1位置調整機構及び第2位置調整機構が形成される。その結果、容易に、そのシートスライド位置の微調整を行うことができる。
上記課題を解決する車両用シートスライド装置は、前記アッパレールは、対向配置された一対の側壁部を有し、前記ロックレバーは、前記両側壁部に設けられた支持孔に挿通される支持軸を有して前記両側壁部間に支持されるとともに、前記支持孔は、前記支持軸の径方向移動を許容する孔形状を有するものであって、前記支持軸が前記ロックレバー係合部であって、前記支持孔には、前記操作ハンドルに対する操作入力に基づき前記支持軸が係脱可能な前記係合歯が形成されることが好ましい。
【0019】
上記構成によれば、簡素な構成にて、一の操作ハンドルに対する操作入力に基づき動作する第1位置調整機構及び第2位置調整機構を形成することができる。更に、そのロックレバーの相対位置変更を支持孔内で行うことにより、例えば、衝突荷重等の外力を要因としてロックレバーの支持軸が第2係合部から脱離した場合であっても、その相対移動方向に位置する支持孔の内壁が支持軸を係止可能なストッパとして機能する。そして、これにより、高い信頼性を確保することができる。また、このようにフェールセーフが図られることで、第2係合部については、その支持軸が係合可能な位置を増やして更に調整自由度を高めることが可能になる。そして、これにより、より細やかにシートのスライド位置を調整することができる。
【0020】
上記課題を解決する車両用シートスライド装置は、前記ロックレバーは、前記操作入力に基づき前記支持軸周りに回動することにより前記ロアレールに設けられた前記第1係合部に対して係脱可能なロック係合部を有するものであって、前記挿入部は、該ロック係合部に設けられており、前記ロックレバーを付勢して該ロックレバーを回動させることにより前記ロック係合部が前記第1係合部に係合する状態を保持可能なロック用付勢部材と、前記ロックレバーを付勢して前記支持軸を前記第2係合部に押し当てることにより前記支持軸が前記第2係合部に係合する状態を保持可能な支持用付勢部材と、を備え、前記第2位置調整機構は、前記操作入力に基づく前記ロックレバーの回動により前記支持用付勢部材の付勢力に抗して前記ロック係合部が前記第1係合部から脱離する前に、前記支持用付勢部材の付勢力に抗して前記支持軸が前記第2係合部から脱離するように構成されることが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、その操作ハンドルの操作量に基づいて、ロアレール及びアッパレールに対するロックレバーの係合状態を切り替えることができる。即ち、操作ハンドルの操作量を調整することにより、ロックレバーが第1係合部には係合し、第2係合部に対しては係合しない状態を作り出すことができる。そして、これによりアッパレールの移動範囲を限定することで、容易に、そのシートスライド位置の微調整を行うことができる。
【0022】
上記課題を解決する車両用シートスライド装置は、前記支持用付勢部材の付勢力が、前記ロック用付勢部材の付勢力よりも弱く設定されることが好ましい。
上記構成によれば、ロック係合部が第1係合部から脱離する前に、その支持軸を第2係合部から脱離させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、簡素な構成にて、高い信頼性を確保しつつ、その調整自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】車両のシート及びシートスライド装置の概略構成を示す側面図。
図2】シートスライド装置の斜視図。
図3】(a)はシートスライド装置の平面図、(b)は第1の実施形態におけるシートスライド装置の断面図(III−III断面)。
図4】第1の実施形態におけるシートスライド装置の分解斜視図。
図5】第1の実施形態におけるシートスライド装置の断面図(図3(b)におけるV−V断面、ロック状態)。
図6】第1の実施形態におけるシートスライド装置の断面図(図3(b)におけるVI−VI断面、ロック状態)。
図7】第1の実施形態におけるロアレールの断面図(図6におけるVII−VII断面、ロック状態及びアンロック状態)。
図8】第1の実施形態におけるアッパレールの断面図(図6におけるVIII−VIII断面、ロック状態及びアンロック状態)。
図9】第1の実施形態におけるシートスライド装置の断面図(図6におけるIX−IX断面、ロック状態及びアンロック状態)。
図10】第1の実施形態におけるロアレールの断面図(図6におけるVII−VII断面、ハーフロック状態)。
図11】第1の実施形態におけるアッパレールの断面図(図6におけるVIII−VIII断面、ハーフロック状態)。
図12】第1の実施形態におけるシートスライド装置の断面図(図6におけるIX−IX断面、ハーフロック状態)。
図13】第1の実施形態におけるシートスライド装置の作用説明図。
図14】第1の実施形態におけるシートスライド装置の作用説明図(図6におけるVIII−VIII断面、後方微調整時)。
図15】第1の実施形態におけるシートスライド装置の作用説明図(図6におけるVIII−VIII断面、前方微調整時)。
図16】第2の実施形態におけるシートスライド装置の分解斜視図。
図17】(a)は、第2の実施形態におけるシートスライド装置がロック状態にある場合の断面図(図3(a)におけるIII−III断面)、(b)は、第2の実施形態におけるシートスライド装置がアンロック状態にある場合の断面図(図3(a)におけるIII−III断面)。
図18】第2の実施形態におけるシートスライド装置の断面図(図17(a)におけるXVIII−XVIII断面、ロック状態)。
図19】第2の実施形態におけるアッパレールの断面図(図18におけるXIX−XIX断面、ロック状態)。
図20】第2の実施形態におけるシートスライド装置の断面図(図17(b)におけるXX−XX断面、ハーフロック状態及びアンロック状態)。
図21】第2の実施形態におけるアッパレールの断面図(図20におけるXXI−XXI断面、ハーフロック状態及びアンロック状態)。
図22】(a)(b)は、第2の実施形態におけるシートスライド装置の作用説明図(図18におけるXIX−XIX断面、後方微調整時)。
図23】(a)(b)は、第2の実施形態におけるシートスライド装置の作用説明図(図18におけるXIX−XIX断面、前方微調整時)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下、車両用シートスライド装置に関する第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車両用のシート1は、シートクッション2と、このシートクッション2の後端部に対して傾動自在に設けられたシートバック3と、このシートバック3の上端に設けられたヘッドレスト4とを備えている。
【0026】
また、図1及び図2に示すように、車両の床部Fには、車両の前後方向に延びる一対のロアレール5が設けられるとともに、これら各ロアレール5には、当該各ロアレール5上を相対移動するアッパレール6が装着されている。そして、シート1(のシートクッション2)は、これら各アッパレール6上に支持されている。
【0027】
即ち、本実施形態では、これらのロアレール5及びアッパレール6によってシートスライド装置10が形成されている。そして、車両の乗員は、このシートスライド装置10の機能を利用することにより、そのロアレール5及びアッパレール6が延設された車両前後方向(図1中、左右方向)におけるシート1の位置調整を行うことができるようになっている。
【0028】
詳述すると、図3(a)(b)、及び図4図6に示すように、ロアレール5は、車両の床部F(図1参照)との固定部となる平板状の底壁部11を備えている。また、底壁部11の幅方向(図5中、左右方向)両端には、それぞれ外壁部12が立設されるとともに、これら各外壁部12の上端(図5中、上側の端部)には、それぞれ幅方向内側に向かって延びるフランジ状の上壁部13が形成されている。そして、これら各上壁部13の先端には、それぞれ下側に向かって折り返された内壁部14が形成されている。
【0029】
一方、アッパレール6は、幅方向に対向する一対の側壁部15を備えている。また、アッパレール6は、これらの両側壁部15間を接続する板状の上壁部16を備えている。そして、本実施形態のアッパレール6は、これらの両側壁部15及び上壁部16が形成する断面略コ字状のアッパレール本体18が、ロアレール5側の両内壁部14間に配置されるように、同ロアレール5に装着されている。
【0030】
また、図5及び図6に示すように、本実施形態のアッパレール6は、各側壁部15の下端から幅方向外側に向かってフランジ状に折り返された折返部23を備えている。そして、その折返部23が、ロアレール5を構成する外壁部12、上壁部13及び内壁部14に囲まれた空間内に配置されることにより、そのロアレール5に対する上方向及び幅方向の相対移動が規制されるようになっている。
【0031】
尚、本実施形態では、上記のように幅方向に対向するロアレール5の外壁部12とアッパレール6の折返部23との間には、ボール状の転動体24が介在される。そして、本実施形態では、これらの転動体24がロアレール5の外壁部12及びアッパレール6の折返部23に摺接して転動することにより、そのロアレール5に対するアッパレール6の円滑な相対移動が確保されている。
【0032】
また、図3(b)、図4図6に示すように、本実施形態のシートスライド装置10は、アッパレール6に支持されることによりロアレール5に対して係合可能なロックレバー30を備えている。そして、本実施形態では、このロックレバー30とロアレール5との係合関係に基づいて、当該ロアレール5に対するアッパレール6の相対移動を規制可能なロック機構31が形成されている。
【0033】
詳述すると、図3(b)、図4及び図5に示すように、本実施形態のアッパレール6には、当該アッパレール6の延伸方向に交差する支持軸32が設けられている。具体的には、アッパレール本体18を構成する両側壁部15には、それぞれ、当該各側壁部15を貫通する支持孔33が設けられている。そして、支持軸32は、これらの各支持孔33に挿通されることにより、両側壁部15に対して略直交する態様で当該各側壁部15間に掛け渡されている。
【0034】
一方、ロックレバー30は、アッパレール6の延伸方向に延びる一対の側板部34と、これらの各側板部34の上端を接続する上板部35と、を有している。また、各側板部34には、それぞれ、互いに対向する挿通孔36が形成されている。そして、本実施形態のロックレバー30は、その両挿通孔36に対し、上記アッパレール6の両側壁部15間に掛け渡された支持軸32が挿通されることにより、その支持軸32が形成する回動軸L周りに回動することが可能となっている。
【0035】
また、図3(b)、図4及び図6に示すように、ロックレバー30の先端30aには、略平板状のロック係合部37が設けられている。更に、アッパレール6の各側壁部15には、それぞれ、そのロックレバー30の先端30aに対応する位置に、上記ロック係合部37が挿通されるロック挿通孔38が形成されている。そして、本実施形態のロックレバー30は、上記ロック係合部37を介してアッパレール6の幅方向外側に突出するロック係合部37が、その回動によってロアレール5に係脱する構成となっている。
【0036】
さらに詳述すると、本実施形態のロアレール5には、その延伸方向の複数位置において上記ロックレバー30のロック係合部37が係合可能な係合部(第1係合部41)が形成されている。
【0037】
具体的には、アッパレール本体18の幅方向外側に位置するロアレール5の両内壁部14には、それぞれ、下方に向かって突出する複数の係合爪40が形成されている。尚、本実施形態では、これら各係合爪40は、略均等間隔で櫛歯状に形成されている。また、アッパレール6の各側壁部15に形成されたロック挿通孔38は、当該ロック挿通孔38に挿通されたロック係合部37の上下動を許容する孔形状を有している。そして、ロック係合部37には、そのロックレバー30の回動に基づいて、上記ロアレール5に形成された各係合爪40が挿入され、及び抜脱される複数の貫通孔42が形成されている。
【0038】
換言すると、図7に示すように、ロアレール5側の第1係合部41は、下向き(同図中、下側)、即ちロックレバー30の回動に伴い当該ロックレバー30の先端30aが移動する方向に開口する複数の溝部(第1溝部43)を有している。また、図4図6及び図7に示すように、本実施形態のロック係合部37は、その各貫通孔42を形成することにより残された棒状部分が、ロックレバー30の回動に伴い上記のように各係合爪40間に形成された各第1溝部43内に挿入される挿入部44となっている。そして、本実施形態では、これらロック係合部37と第1係合部41との係合関係に基づいて、そのロアレール5に係合するロックレバー30の相対位置が固定されるようになっている。
【0039】
即ち、本実施形態のロックレバー30は、その先端30aが上方移動する方向に回動することによりロアレール5の第1係合部41に対して係合する。そして、ロックレバー30は、その先端30aが下方移動する方向に回動することによりロアレール5の第1係合部41から脱離するように構成されている。
【0040】
また、図1図4に示すように、本実施形態のシートスライド装置10は、シート1のスライド位置を調整すべく操作される操作ハンドル45を備えている。そして、上記ロックレバー30は、この操作ハンドル45に対する操作入力に基づいて回動するように構成されている。
【0041】
詳述すると、図3(b)及び図4に示すように、本実施形態のロック機構31は、ロックレバー30を付勢して、その先端30aに設けられたロック係合部37が上記ロアレール5の第1係合部41に対して係合する状態を保持可能なロック用付勢部材としてのバネ部材46を備えている。
【0042】
本実施形態では、このバネ部材46は、二つ折りされた線材をさらに折り曲げ加工することにより形成されている。また、バネ部材46は、その折曲端部46aと両開放端部46bとの間に、略円弧状に折り曲げられた掛止部46cを有している。更に、本実施形態のロックレバー30は、その支持軸32の上方に、上板部35が設けられていない開口部47を有している。そして、バネ部材46は、その折曲端部46aが上記開口部47を介してロックレバー30の外部に突出する態様で、当該ロックレバー30の両側板部34間に配置されている。
【0043】
具体的には、本実施形態のバネ部材46は、ロックレバー30の支持軸32に対し、その掛止部46cが上方側から掛止される。そして、バネ部材46は、これにより、その折曲端部46aがアッパレールの上壁部16に対して下側から当接し、その両開放端部46bがロックレバー30の先端30a(ロック係合部37)に対して下側から当接するように構成されている。
【0044】
即ち、本実施形態のバネ部材46は、ロックレバー30を付勢して、図3(b)中、反時計回りに回動させることにより、その先端30aに設けられたロック係合部37をロアレール5の第1係合部41に係合させるように構成されている。そして、ロックレバー30は、これにより、上記操作ハンドル45が操作されていない通常時には、そのロック係合部37が上記ロアレール5の第1係合部41に係合する状態で保持されるようになっている。
【0045】
一方、図1図4に示すように、本実施形態の操作ハンドル45は、アッパレール6の延伸方向に対し、略直交する方向に延びる長尺棒状の操作部45aを有している。そして、その操作部45aの両端には、それぞれ、各アッパレール6の前方側から当該各アッパレール本体18内に挿入される挿入部45bが形成されている。尚、本実施形態の操作ハンドル45は、パイプ材を折り曲げ加工することにより形成されている。
【0046】
また、図3(b)及び図4に示すように、本実施形態のロックレバー30は、その後端30b近傍が幅狭部48となっている。そして、上記操作ハンドル45は、その管状をなす両挿入部45b内に上記ロックレバー30の幅狭部48が挿入される態様で当該ロックレバー30の後端30bに連結されている。
【0047】
更に、本実施形態のロック機構31は、このように操作ハンドル45とロックレバー30とが連結された状態を保持するためのバネ部材49を備えている。本実施形態では、このバネ部材49もまた、二つ折りされた線材をさらに折り曲げ加工することにより形成されている。具体的には、このバネ部材49は、その折曲端部49a及びこの折曲端部49aからロックレバー30の延伸方向に沿って伸びる延伸部49bが幅広に拡開されている。そして、その折曲端部49aが、上記操作ハンドル45の挿入部45bに対して下方側から当接する態様で、当該挿入部45bに外嵌されるようになっている。
【0048】
また、バネ部材49は、その開放端部49cがロックレバー30の上板部35に対して下側から当接する態様で当該ロックレバー30に取着されている。そして、本実施形態では、このバネ部材49の弾性力に基づいて、その操作ハンドル45とロックレバー30との連結状態が保持されるようになっている。
【0049】
即ち、本実施形態の操作ハンドル45は、操作部45aが上方に引き上げられるように操作されることにより、そのアッパレール6内に挿入された両挿入部45bが上方に移動するようになっている。また、このとき、両挿入部45bがロックレバー30の後端30bを上方に持ち上げることで、当該ロックレバー30は、その先端30aが下方側に移動する方向(図3(b)中、時計回り方向)に回動する。そして、本実施形態のロック機構31は、これにより、そのロックレバー30側のロック係合部37とロアレール5側の第1係合部41との係合が解除されるようになっている。
【0050】
このように、本実施形態のロック機構31は、そのアッパレール6に支持されたロックレバー30をロアレール5に設けられた第1係合部41に対して係脱させることにより、ロアレール5と当該ロアレール5に係合するロックレバー30との相対位置を変更することが可能となっている。そして、本実施形態では、これにより、そのアッパレール6の移動位置を調整可能、即ちシート1のスライド位置を調整可能な第1位置調整機構51が形成されている。
【0051】
ここで、図3(b)及び図4に示すように、本実施形態では、上記アッパレール6に設けられた支持軸32が挿通されるロックレバー30の各挿通孔36は、当該ロックレバー30の延伸方向に延びる長孔形状を有している。そして、本実施形態のアッパレール6は、これにより、その支持軸32が各挿通孔36内を移動可能な範囲で、ロックレバー30に対する相対移動が許容されている。
【0052】
また、図4及び図8に示すように、本実施形態では、アッパレール6の両側壁部15には、当該アッパレール6の延伸方向における複数位置においてロックレバー30に係合可能な係合部(第2係合部52)が形成されている。即ち、アッパレール6は、その両側壁部15に設けられた第2係合部52に対してロックレバー30が係合することにより、その延伸方向におけるロックレバー30との相対位置が固定される。そして、本実施形態では、これにより、そのアッパレール6の移動位置を調整可能な第2位置調整機構62が形成されるようになっている。
【0053】
詳述すると、本実施形態では、上記のようにアッパレール6の各側壁部15に形成されたロック挿通孔38は、当該ロック挿通孔38内におけるアッパレール6の延伸方向に沿ったロック係合部37の相対位置変更、即ちアッパレール6とロックレバー30との相対位置変更を許容可能な孔形状を有している。また、ロック挿通孔38の上辺部(図8中、上側の辺部)には、ロアレール5側の各係合爪40と同様、それぞれ、下方に向かって突出する複数の係合爪65が形成されている。そして、上記のようにロック係合部37を厚み方向に貫通する貫通孔42は、そのロックレバー30の回動に基づいて、ロアレール5に形成された各係合爪40及びアッパレール6に形成された各係合爪65の双方が同時に挿通されるような長孔形状を有している。
【0054】
即ち、図7図9に示すように、アッパレール6側の第2係合部52を構成する各係合爪65もまた、その隣り合う各係合爪65との間に、ロックレバー30の回動に伴い当該ロックレバー30の先端30aが移動する方向(各図中、下側)に開口する複数の溝部(第2溝部66)を形成する。そして、これらの第2溝部66もまた、上記第1係合部41側の第1溝部43と同様、ロックレバー30の回動に基づいて、その溝内にロック係合部37の各挿入部44が挿入されるようになっている。
【0055】
ここで、図7及び図8に示すように、本実施形態では、アッパレール6側の第2溝部66に対する各挿入部44の挿入深さD2は、ロアレール5側の第1溝部43に対する各挿入部44の挿入深さD1よりも浅く設定されている。
【0056】
即ち、図10図12に示すように、本実施形態のロック機構31は、ロアレール5側の各第1溝部43内にロック係合部37の各挿入部44が挿入された状態を維持しつつ、当該各挿入部44をアッパレール6側の第2溝部66から抜脱することが可能となっている。そして、本実施形態では、これにより、そのロアレール5とロックレバー30との相対位置が固定された状態でアッパレール6とロックレバー30との相対位置を変更することで、容易に、そのロアレール5上におけるアッパレール6の移動位置を微調整することが可能となっている。
【0057】
さらに詳述すると、図13に示すように、本実施形態のロック機構31は、操作ハンドル45の操作量に基づいて、そのロアレール5及びアッパレール6に対するロックレバー30の係合状態を切り替えることが可能となっている。
【0058】
具体的には、本実施形態のロック機構31は、操作ハンドル45(の操作部45a)が操作されていない状態においては、そのロックレバー30(のロック係合部37)が、ロアレール5側の第1係合部41及びアッパレール6側の第2係合部52の双方に対して係合する状態となっている(図7図9参照、各図中、実線に示される状態)。また、この非操作時における初期位置P0から第1位置P1を超える位置まで操作ハンドル45が引き上げられることによって、ロック機構31は、そのロックレバー30が、ロアレール5側の第1係合部41には係合し、アッパレール6側の第2係合部52には係合しない状態となる(図10図12参照)。そして、第2位置P2を超えて操作ハンドル45が更に引き上げられることによって、ロック機構31は、そのロックレバー30が、ロアレール5側の第1係合部41及びアッパレール6側の第2係合部52の双方に対して非係合となるように構成されている(図7図9参照、各図中、二点鎖線に示される状態)。
【0059】
また、図13図15に示すように、本実施形態の第2位置調整機構62は、そのアッパレール6側の第2係合部52に形成された各第2溝部66の間隔(形成ピッチ)に基づいて、中央部を基準として前後方向に一段ずつ、アッパレール6Bとロックレバー30Bとの相対位置を調整することが可能となっている。具体的には、図7及び図8に示すように、本実施形態では、ロアレール5側の第1係合部41に形成された第1溝部43の形成ピッチX1は、第2溝部66の形成ピッチX2の整数倍(2倍)となっている。そして、本実施形態では、これにより、第1係合部41を構成する各係合爪40に干渉することなく、円滑に、そのロック係合部37に設定された挿入部44を第2係合部52に形成された第2溝部66に対して係脱させることが可能となっている。
【0060】
次に、上記のように構成された本実施形態のシートスライド装置10の作用について説明する。
本実施形態のシートスライド装置10は、操作ハンドル45を第2位置P2(図13参照)を超えて引き上げることにより、そのロック機構31を構成するロックレバー30が、ロアレール5側の第1係合部41及びアッパレール6側の第2係合部52の双方に対して非係合となる。尚、この第2位置P2は、操作ハンドル45の最大引き上げ角度に対応する第3位置P3の近傍に設定されている。そして、本実施形態では、これにより、そのロアレール5に対するアッパレール6の相対移動が許容されたアンロック状態に移行するようになっている。
【0061】
即ち、このアンロック状態においては、そのシート1のスライド位置を自由に変更することができる。また、本実施形態のロック機構31は、その引き上げた操作ハンドル45を戻すことにより(図13参照)、再び、ロックレバー30がロアレール5側の第1係合部41及びアッパレール6側の第2係合部52の双方に対して係合する状態となる。そして、本実施形態では、これにより、そのロアレール5に対するアッパレール6の相対移動が規制されたロック状態に移行するようになっている。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように操作ハンドル45を引き上げる過程、又はその引き上げた操作ハンドル45を初期位置P0に戻す過程において、当該操作ハンドル45を第1位置P1と第2位置P2との間に保つことにより、そのロックレバー30が、ロアレール5には係合し、アッパレール6には係合しない状態となる(図10図12参照)。即ち、本実施形態のロック機構31は、これにより、ロアレール5とロックレバー30との相対位置を固定しつつ、アッパレール6とロックレバー30との相対位置を変更可能なハーフロック状態に移行する。そして、本実施形態のシートスライド装置10は、このハーフロック状態を利用することにより、そのアッパレール6に支持されたシート1のスライド位置を微調整することが可能となっている。
【0063】
以上、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)シートスライド装置10は、上方にシート1を支持するアッパレール6と、その延伸方向に沿って相対移動可能にアッパレール6を支持するロアレール5を備える。また、シートスライド装置10は、アッパレール6に支持されてロアレール5に係合することによりアッパレール6の相対移動を規制可能なロックレバー30を備える。そして、シートスライド装置10は、ロアレール5に係合するロックレバー30の相対位置を変更することによりアッパレール6の移動位置を調整可能な第1位置調整機構51と、アッパレール6に支持されたロックレバー30の相対位置を変更することによりアッパレール6の移動位置を調整可能な第2位置調整機構62とを備える。
【0064】
上記構成によれば、簡素な構成にて、アッパレール6の移動位置を調整可能な二つの位置調整機構(51,62)を形成することができる。そして、これら二つの位置調整機構を併用することで、高い信頼性を確保しつつ、その調整自由度を高めることができる。
【0065】
(2)シートスライド装置10は、シート1のスライド位置を調整すべく操作される操作ハンドル45を備える。また、ロアレール5及びアッパレール6には、それぞれ、そのアッパレール6の延伸方向における複数位置でロックレバー30に係合可能、且つその係合によりロックレバー30の相対位置を固定可能な係合部(41,52)が設けられる。更に、第1位置調整機構51は、操作ハンドル45に対する操作入力に基づいてロックレバー30をロアレール5に設けられた第1係合部41に係脱させることにより、ロアレール5に係合するロックレバー30の相対位置を変更可能に構成される。そして、第2位置調整機構62は、操作ハンドル45に対する操作入力に基づいてロックレバー30をアッパレール6に設けられた第2係合部52に対して係脱させることにより、アッパレール6に支持されたロックレバー30の相対位置を変更可能に構成される。
【0066】
上記構成によれば、一の操作ハンドル45を用いて操作可能、且つそれぞれ確実にアッパレール6の移動位置を調整可能な第1位置調整機構51及び第2位置調整機構62が形成される。その結果、容易に、そのシートスライド位置の微調整を行うことができる。
【0067】
(3)アッパレール6には、当該アッパレール6の延伸方向に交差する支持軸32が設けられる。また、ロックレバー30は、操作ハンドル45に対する操作入力に基づいて、その支持軸32が形成する回動軸L周りに回動可能に支持される。更に、ロアレール5に形成された第1係合部41及びアッパレール6に形成された第2係合部52は、それぞれ、ロックレバー30が回動することにより該ロックレバー30に設けられた挿入部44が挿入される複数の溝部(43,66)を有する。そして、その第2係合部52側の各第2溝部66に対する挿入部44の挿入深さD2は、第1係合部41側の第1溝部43に対する挿入部44の挿入深さD1よりも浅く設定される。
【0068】
上記構成によれば、操作ハンドル45の操作量に基づいて、ロアレール5及びアッパレール6に対するロックレバー30の係合状態を切り替えることができる。即ち、操作ハンドル45の操作量を調整することにより、ロックレバー30を回動させて第1係合部41及び第2係合部52の双方に係合させる操作、又はこれら第1係合部41及び第2係合部52の双方から脱離させる操作の途中において、ロックレバー30が第1係合部41には係合し、第2係合部52には係合しない状態を作り出すことができる。そして、これによりアッパレール6の移動範囲を限定することで、容易に、そのシートスライド位置の微調整を行うことができる。更に、両係合溝(43,66)内にロックレバー30の挿入部44が挿入される構成とすることで、高いロック強度を確保することができる。そして、これにより、その信頼性の向上を図ることができる。
【0069】
(4)ロアレール5側の第1係合部41に形成された各第1溝部43の形成ピッチX1は、アッパレール6側の第2係合部52に形成された第2溝部66の形成ピッチX2の整数倍(2倍)となっている。
【0070】
上記構成によれば、第1係合部41側の各第1溝部43(を構成する各係合爪40)に干渉することなく、円滑に、そのロックレバー30の挿入部44を第2係合部52側の各第2溝部66に挿入し、及び当該各第2溝部66から抜脱することできる。
【0071】
(5)アッパレール6は、対向配置された一対の側壁部15を有する。また、側壁部15には、上記挿入部44を有してロックレバー30に設けられたロック係合部37が挿通されるロック挿通孔38が形成される。そして、第2係合部52は、このロック挿通孔38に形成される。
【0072】
上記構成によれば、簡素な構成にて、一の操作ハンドル45に対する操作入力に基づき動作する第1位置調整機構51及び第2位置調整機構62を形成することができる。更に、そのロックレバー30の相対位置変更をロック挿通孔38内で行うことにより、例えば、衝突荷重等の外力を要因としてロック係合部37が第2係合部52から脱離した場合であっても、その相対移動方向に位置するロック挿通孔38の内壁がロック係合部37を係止可能なストッパとして機能する。そして、これにより、高い信頼性を確保することができる。また、このようにフェールセーフが図られることで、第2係合部52については、そのロック係合部37が係合可能な位置を増して調整自由度を高めることが可能になる。そして、これより、より細やかにシート1のスライド位置を調整することができる。
【0073】
[第2の実施形態]
以下、車両用シートスライド装置に関する第2の実施形態を図面に従って説明する。尚、説明の便宜上、上記第1の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、その説明を省略することとする。
【0074】
図16図18に示すように、本実施形態のロックレバー30Bは、当該ロックレバー30Bを幅方向に貫通する支持軸71を有している。また、アッパレール6Bの両側壁部15Bには、それぞれ、互いに対向する支持孔72が形成されている。即ち、ロックレバー30Bは、その支持軸71が各支持孔72に挿通されることにより、アッパレール6Bの両側壁部15B間に支持されている。そして、ロックレバー30Bは、これにより、その支持軸71が形成する回動軸L周りに回動することが可能となっている。
【0075】
尚、本実施形態では、ロックレバー30Bの両側板部34Bには、それぞれ、互いに対向する貫通孔73が形成されている。そして、上記支持軸71は、これら各貫通孔73に挿通されることにより、両側板部34Bに対して相対回動不能に固定されるようになっている。
【0076】
また、図19に示すように、アッパレール6Bの両側壁部15Bに形成された各支持孔72は、当該アッパレール6Bの延伸方向(同図中、左右方向)に延びる長孔形状を有している。即ち、本実施形態のアッパレール6Bは、これら各挿通孔36の長孔形状に基づいて、当該各挿通孔36内を上記支持軸71が移動可能な範囲内で、そのロックレバー30Bとの相対位置を変更することが可能となっている。そして、本実施形態では、これら各支持孔72内に、そのアッパレール6Bの延伸方向における複数位置において当該各支持孔72に挿通されたロックレバー30Bの支持軸71が係合可能な係合部(第2係合部52B)が設けられている。
【0077】
詳述すると、本実施形態では、各支持孔72は、その上下方向の内径が、当該各支持孔72内において支持軸71が上下動可能な大きさに設定されている。即ち、各支持孔72は、アッパレール6Bの延伸方向(同図中、左右方向)のみならず、その上下方向も含め、支持軸71の径方向移動を許容する孔形状を有している。また、各支持孔72の下辺部には、その長手方向に沿って複数の係合歯74が形成されている。そして、支持軸71には、当該支持軸の上下動に基づいて、上記支持孔72側の各係合歯74に係脱可能な係合歯75が形成されている。
【0078】
即ち、本実施形態では、その支持孔72の下辺部に形成された各係合歯74によって第2係合部52Bが構成されている。尚、本実施形態のロック挿通孔38Bには、上記第1の実施形態におけるロック挿通孔38のような係合爪65は設けられていない(図4及び図16参照)。そして、ロックレバー30Bは、この第2係合部52Bに対して支持軸71の各係合歯74が係合することにより、そのアッパレール6Bとの相対位置が固定されるようになっている。
【0079】
さらに詳述すると、図16図18に示すように、本実施形態のロック機構31Bは、ロックレバー30Bを付勢して、その支持軸71をアッパレール6側の第2係合部52Bに押し当てることにより当該第2係合部52Bに対して支持軸71が係合する状態を保持可能な支持用付勢部材としてのバネ部材77を備えている。
【0080】
具体的には、このバネ部材77は、二つ折りされた線材をさらに折り曲げ加工することにより略V字状に形成されている。また、バネ部材77は、その長さ方向両端に位置する折曲端部77a及び開放端77bが支持軸71の上方に設けられた開口部47を介してロックレバー30の外部に突出する態様で、当該ロックレバー30Bの両側板部34B間に配置されている(図17中、上側)。更に、バネ部材77は、そのV字状に凸となる中間部分に、ロックレバー30Bの支持軸71に対して上側から当接する当接部77cを有している。そして、本実施形態のバネ部材77は、そのロックレバー30の外部に突出する折曲端部77a及び開放端77bが、アッパレール6Bの上壁部16に対して下側から当接することにより、その当接部77cに当接する支持軸71を下側、即ち当該支持軸71を第2係合部52Bに押し当てる方向に付勢することが可能となっている。
【0081】
尚、本実施形態では、バネ部材77の折曲端部77a及び開放端77bは、幅方向に拡開する環形状を有している。そして、当接部77cは、その略V字をなすバネ部材77の折曲方向内側(図17中、上側)に向かって凸となる湾曲形状を有している。
【0082】
また、本実施形態のシートスライド装置10Bは、上記第1の実施形態におけるバネ部材46と同様、ロックレバー30Bを付勢して回動させることにより、当該ロックレバー30B(のロック係合部37)をロアレール5側の第1係合部41に係合させるロック用付勢部材としてのバネ部材78を備えている。
【0083】
具体的には、このバネ部材78もまた、上記第1の実施形態におけるバネ部材46と同様、二つ折りされた線材をさらに折り曲げ加工することにより形成されている。また、バネ部材78は、その折曲端部78aと両開放端部78bとの間に、コイル状に巻回された巻回部78cを有している。更に、本実施形態のアッパレール6Bには、そのロックレバー30Bの先端30aよりも後方(図17中、右側)側に、両側壁部15B間に掛け渡されるように配置された支持軸79が設けられている。そして、バネ部材78は、この支持軸79に支持されることにより、そのアッパレール6Bの延伸方向、ロックレバー30Bよりも後方側に配置されている。
【0084】
即ち、バネ部材78は、その巻回部78c内に支持軸79が挿通された状態でアッパレール6Bに支持される。また、バネ部材78は、その開放端部78bがアッパレールの上壁部16に対して下側から当接し、その折曲端部78aがロックレバー30の先端30a(のロック係合部37)に対して下側から当接するように構成されている。そして、本実施形態では、これにより、そのロック用付勢部材としてのバネ部材78が、上記支持用付勢部材としてのバネ部材77に干渉することなく、ロックレバー30を付勢して、その先端30aに設けられたロック係合部37をロアレール5の第1係合部41に対して押し当てることが可能となっている。
【0085】
また、支持用付勢部材を構成するバネ部材77の付勢力は、そのロック用付勢部材を構成するバネ部材78の付勢力よりも弱く設定されている。そして、本実施形態では、これにより、そのシート1のスライド位置を調整すべく操作される操作ハンドル45の操作量に基づいて、ロアレール5及びアッパレール6に対するロックレバー30の係合状態を切り替えることが可能となっている。
【0086】
即ち、図17(a)(b)、図20及び図21に示すように、上記第1の実施形態と同様、ロックレバー30Bは、操作ハンドル45(の操作部45a)が引き上げられることにより(図13参照)、その後端30bが持ち上げられる態様で、図17中、時計回り方向に回動する。そして、先端30aがバネ部材78の付勢力に抗して下方側に移動することにより、その先端30aに設けられたロック係合部37とロアレール5側の第1係合部41との係合が解除される。
【0087】
このとき、ロックレバー30Bは、上記二つのバネ部材77,78間に設定された付勢力の違いに基づいて、上記ロック係合部37がロアレール5側の第1係合部41から脱離する前に、その回動軸Lを構成する支持軸71がアッパレール6側の第2係合部52Bから脱離する。つまり、ロックレバー30Bは、バネ部材77の付勢力に抗して支持軸71が上方に持ち上げられるように移動する。そして、本実施形態では、これにより、そのロックレバー30Bのロック係合部37がロアレール5側の第1係合部41に係合する状態、即ちロアレール5とロックレバー30Bとの相対位置が固定された状態で、アッパレール6Bとロックレバー30との相対位置を変更することが可能な第2位置調整機構62Bが形成されている。
【0088】
尚、本実施形態のロック機構31Bもまた、上記第1の実施形態におけるロック機構31と同様、操作ハンドル45が第2位置P2を超えて引き上げられた場合に、そのロックレバー30Bが第1係合部41及び第2係合部52Bの双方から脱離したアンロック状態となるように構成されている(図13参照)。そして、操作ハンドル45が第1位置P1〜第2位置P2にある場合には、そのロックレバー30Bが第1係合部41には係合し、第2係合部52Bに対しては係合しないハーフロック状態となるように構成されている。
【0089】
また、図22(a)(b)及び図23(a)(b)に示すように、本実施形態の第2係合部52Bは、そのアッパレール6Bの延伸方向(各図中、左右方向)において、それぞれ、中央部を基準として前後に二段階(移動量δ1,δ2)で、アッパレール6Bとロックレバー30Bとの相対位置を変更できるように構成されている。尚、この二段階の移動量δ1,δ2は、均等間隔で形成された各係合歯74の形成ピッチによるものである。そして、本実施形態では、これにより、容易、且つより細やかに、そのシート1のスライド位置を調整することが可能となっている。
【0090】
以上、本実施形態のシートスライド装置10Bにおいてもまた、上記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。即ち、簡素な構成にて、アッパレール6Bの移動位置を調整可能な二つの位置調整機構(51,62B)を形成することができる。そして、これら二つの位置調整機構を併用することで、より高い調整自由度を確保することができる。
【0091】
また、操作ハンドル45の操作量に基づいて、ロアレール5及びアッパレール6Bに対するロックレバー30Bの係合状態を切り替えることができる。即ち、その操作量を調整することにより、ロックレバー30Bが第1係合部41には係合し、第2係合部52Bに対しては係合しない状態を作り出すことができる。そして、これにより、より容易に、そのシートスライド位置の微調整を行うことができる。
【0092】
更に、そのロックレバー30Bの相対位置変更を支持孔72内で行うことにより、例えば、衝突荷重等の外力を要因としてロックレバー30Bの支持軸71が第2係合部52Bから脱離した場合であっても、その相対移動方向に位置する支持孔72の内壁が支持軸71を係止可能なストッパとして機能する。そして、これにより、高い信頼性を確保することができる。また、このようにフェールセーフが図られることで、第2係合部52Bについては、その支持軸71が係合可能な位置を増やして更に調整自由度を高めることが可能になる。そして、これにより、より細やかにシート1のスライド位置を調整することができる。
【0093】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、ロックレバー(30,30B)は、アッパレール(6,6B)の両側壁部(15,15B)に略直交する回動軸L(支持軸32,71)周りに回動可能に支持される。そして、その先端30aに設けられたロック係合部37が上方移動する方向に回動することにより、ロアレール5側の第1係合部41に係合することとした。しかし、これに限らず、回動軸Lは、必ずしも「両側壁部に直交」しなくともよい。アッパレールの延伸方向に交差するものであればよい。そして、そのロック係合部37が下方移動することによりロアレール5側の第1係合部41に係合し、ロック係合部37が上方移動することによりその係合が解除される構成に適用してもよい。
【0094】
・上記第1の実施形態では、ロック係合部37が挿通されるロック挿通孔38に第2係合部52が形成され、上記第2の実施形態では、支持軸71が挿通される支持孔72に第2係合部52Bが形成されることとした。しかし、これに限らず、これらロック挿通孔38及び支持孔72以外の箇所に、そのアッパレール(6,6B)側の第2係合部(52,52B)を形成する構成であってもよい。
【0095】
・また、上記各実施形態では、第2位置調整機構62は、第1係合部41に対してロックレバー(30,30B)が係合する状態において、当該ロックレバーをアッパレール(6,6B)に設けられた第2係合部(52,52B)に対して係脱させることが可能であることとした。しかし、これに限らず、そのロックレバー側に、アッパレールの延伸方向における複数位置において当該アッパレールに係合可能な係合部が形成される構成であってもよい。
【0096】
例えば、上記第1の実施形態におけるロック機構31のように、アッパレール6側に支持軸32が設けられ、ロックレバー30側には、その支持軸32が挿通される挿通孔が設けられた構成において、当該挿通孔は、第2の実施形態における支持孔72と同様に、その挿通孔内における支持軸32の径方向移動を許容可能な形状を有するものとする。そして、このロックレバー30側の挿通孔に、そのアッパレール6の延伸方向における複数位置で支持軸32に係合可能な係合部を形成する構成としてもよい。このような構成としても、簡素な構成にて、その係合部を用いた第2位置調整機構62を形成することができる。
【0097】
・上記各実施形態では、一の操作ハンドル45に対する操作入力に基づいて、そのロックレバー(30,30B)が、ロアレール5側の第1係合部41及びアッパレール(6,6B)側の第2係合部(52,52B)に対して係脱することとした。しかし、これに限らず、その第1位置調整機構51及び第2位置調整機構62が独立の操作部材を用いて操作される構成であってもよい。また、そのロアレール側の係合部及びアッパレール側の係合部に対するロックレバーの係脱が、必ずしも当該ロックレバーの回動によるものでなくともよい。そして、アッパレール(6,6B)側の第2係合部(52,52B)に対してロックレバー(30,30B)が係合する状態において、当該ロックレバーをロアレール5側の第1係合部41に対して係脱させるような第1位置調整機構51を有する構成についてもまた、これを排除しない。
【0098】
・アッパレール(6,6B)側の各係合部(52,52B)の構成については、任意に変更してもよい。例えば、上記第1の実施形態では、第2係合部52は、ロック挿通孔38の上辺部に設けられた複数の係合爪65により構成される。そして、ロックレバー30は、その挿入部44が、各係合爪65間に形成される溝部(第2溝部66)内に挿入されることにより、その第2係合部52に対して係合することとした。しかし、これに限らず、そのロック挿通孔38に、上記第2の実施形態における支持孔72に設けられた係合歯74と同様の係合歯を形成し、これを第2係合部とする等の構成であってもよい。
【0099】
また、上記第2の実施形態のように、支持軸71が挿通される支持孔72に第2係合部52Bが形成される構成において、その支持孔72に、上記第1の実施形態におけるロック挿通孔38に設けられた係合爪65と同様の係合爪を形成する。そして、これを第2係合部とすることにより、その係合爪間に形成される溝部内に支持軸71が挿入される構成としてもよい。
【0100】
そして、ロアレール5側の第1係合部41の構成についてもまた、任意に変更してもよい。
・ロックレバー(30,30B)や操作ハンドル45の形状は、任意に変更してもよい。
【0101】
・上記第1の実施形態では、第2位置調整機構62は、そのアッパレール6側の第2係合部52に形成された各第2溝部66の形成ピッチX2に基づいて、中央部を基準として前後方向に一段ずつ、アッパレール6Bとロックレバー30Bとの相対位置を調整可能に構成される。そして、上記第2の実施形態では、第2位置調整機構62Bは、中央部を基準として前後方向に二段階で、アッパレール6Bとロックレバー30Bとの相対位置を調整可能に構成されることとした。しかし、これに限らず、第2位置調整機構による調整量、及び調整段数は、任意に変更してもよい。
【0102】
・また、上記第1の実施形態では、各第1溝部43の形成ピッチX1は、アッパレール6側の第2係合部52に形成された第2溝部66の形成ピッチX2の整数倍(2倍)であることとした。しかし、その形成ピッチ間の倍率は任意に変更してもよい。例えば、3倍以上であってもよい。また、必ずしも整数倍でなくともよい。そして、均等間隔でないものについても、これを排除しない。
【0103】
・上記第2の実施形態では、支持用付勢部材を構成するバネ部材77の付勢力をロック用付勢部材を構成するバネ部材78の付勢力よりも弱くすることにより、ロック係合部37がロアレール5側の第1係合部41から脱離する前に、その回動軸Lを構成する支持軸71がアッパレール6側の第2係合部52Bから脱離させることとした。しかし、これに限らず、その他の構成により、ロック係合部37が第1係合部41から脱離する前に、支持軸71が第2係合部52Bから脱離するようにしてもよい。
【0104】
・上記各実施形態では、ロアレール5は、車両前後方向に延設されることとしたが、シートスライド装置(10,10B)の配置については、例えば、そのロアレール5が車幅方向に延設されるように設置される等、任意に変更してもよい。
【符号の説明】
【0105】
1…シート、5…ロアレール、6,6B…アッパレール、10,10B…シートスライド装置、15,15B…側壁部、30,30B…ロックレバー、31,31B…ロック機構、32…支持軸、34,34B…側板部、37…ロック係合部、38…ロック挿通孔、40…係合爪、41…第1係合部、42…貫通孔、43…第1溝部、44…挿入部、45…操作ハンドル、46…バネ部材(ロック用付勢部材)、51…第1位置調整機構、52,52B…第2係合部、62,62B…第2位置調整機構、65…係合爪、66…第2溝部、71…支持軸、72…支持孔、74…係合歯、75…係合歯、77…バネ部材(支持用付勢部材)、78…バネ部材(ロック用付勢部材)、L…回動軸、X1,X2…形成ピッチ、D1,D2…挿入深さ、P0…初期位置、P1…第1位置、P2…第2位置、P3…第3位置、δ1,δ2…移動量。
図1
図2
図3
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図5
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