特許第6160358号(P6160358)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6160358
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】NMR測定システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/36 20060101AFI20170703BHJP
   G01R 33/32 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   G01N24/04 530F
   G01N24/04 510Z
   G01N24/04 510F
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-168968(P2013-168968)
(22)【出願日】2013年8月15日
(65)【公開番号】特開2015-36668(P2015-36668A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀野 豊
(72)【発明者】
【氏名】根本 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】西萩 尚記
【審査官】 比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−132852(JP,A)
【文献】 特許第3034299(JP,B2)
【文献】 特開2003−185725(JP,A)
【文献】 特開2009−232532(JP,A)
【文献】 特開平06−082401(JP,A)
【文献】 特表2011−513765(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/230956(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 24/00−24/14
G01R 33/20−33/64
A61B 5/055
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場発生装置の空洞部内に挿入される挿入部と前記挿入部に連結された部分であって前記空洞部外に配置される基部とからなるNMR測定用プローブを備えるNMR測定システムにおいて、
前記挿入部に設けられ、調整用の可変コンデンサを有するNMR検出回路と、
前記挿入部と前記基部とに跨がって設けられ、前記可変コンデンサに対して連結された内部シャフトと、
前記NMR測定用プローブの外部に設けられ、オートチューニング時において前記内部シャフトを駆動するための駆動力を生成する駆動部と、
前記駆動力を伝達する外部シャフトと、
前記基部に設けられ、前記内部シャフトに対して機械的に連結された回転部材であって前記外部シャフトが着脱可能に接続される外部接続ポートと、
前記基部に設けられ、前記内部シャフトの回転位置を実測値として検出する回転検出器と、
前記実測値に基づいて前記駆動部と前記内部シャフトとの間の駆動力伝達経路上で生じた異常を判定する判定手段と、
前記基部に設けられ、前記異常が判定された場合に当該異常を報知する報知手段と、
を含むことを特徴とするNMR測定システム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記駆動部はオートチューニングのための指示値に基づいて前記駆動力を生成し、
前記判定手段は前記指示値と前記実測値との比較により前記異常を判定する、
ことを特徴とするNMR測定システム。
【請求項3】
請求項2記載のシステムにおいて、
前記判定手段は、前記指示値と前記実測値との差が許容範囲を超える場合に前記異常を判定する、
ことを特徴とするNMR測定システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシステムにおいて
記判定手段は、前記異常として、前記外部接続ポートへの前記外部シャフトの接続エラーを判定する、
ことを特徴とするNMR測定システム。
【請求項5】
請求項記載のシステムにおいて、
前記報知手段は、前記異常を表示する表示器を有する、
ことを特徴とするNMR測定システム。
【請求項6】
磁場発生装置の空洞部内に挿入される挿入部と前記挿入部に連結された部分であって前記空洞部外に配置される基部とからなるNMR測定用プローブを備えるNMR測定システムにおいて、
前記挿入部に設けられ、調整用の複数の可変コンデンサを有するNMR検出回路と、
前記挿入部と前記基部とに跨がって設けられ、前記複数の可変コンデンサに対して連結された複数の内部シャフトと、
前記NMR測定用プローブの外部に設けられ、オートチューニング時に複数の内部シャフトを個別的に駆動するための駆動力を生成する駆動部と、
前記基部に設けられ、前記複数の内部シャフトの複数の回転位置を複数の実測値として検出する複数の回転検出器と、
前記複数の実測値に基づいて前記駆動部と前記複数の内部シャフトとの間の複数の駆動力伝達経路について異常を個別的に判定する判定手段と、
前記基部に設けられ、前記異常が判定された場合に当該異常を報知する報知手段と、
を含むことを特徴とするNMR測定システム。
【請求項7】
請求項6記載のシステムにおいて、
前記駆動部は、オートチューニングのための複数の指示値に基づいて前記複数の内部シャフトを個別的に駆動するための駆動力を生成し、
前記判定手段は、前記複数の指示値と前記複数の実測値との比較により前記異常を個別的に判定する、
ことを特徴とするNMR測定システム。
【請求項8】
請求項6記載のシステムにおいて、
前記判定手段は、前記異常が生じた異常経路及び前記異常の種別を判定する、
ことを特徴とするNMR測定システム。
【請求項9】
請求項8記載のNMR測定システムにおいて、
前記判定手段は、前記異常の種別として、誤接続、スリップ及び空回りを判定する、
ことを特徴とするNMR測定システム。
【請求項10】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記実測値が前記可変コンデンサの機械的限界に基づく値に到達した場合に前記駆動部の動作を停止させる制御手段を含む、
ことを特徴とするNMR測定システム。
【請求項11】
磁場発生装置の空洞部内に挿入される部分であって調整用の複数の可変コンデンサを有するNMR検出回路を備える挿入部と、前記挿入部に連結された部分であって前記空洞部外に配置される基部と、を含み、
前記挿入部と前記基部とに跨がって前記複数の可変コンデンサを操作するための複数の内部シャフトが設けられ、
前記複数の内部シャフトにはオートチューニング時に外部駆動源から駆動力が伝達され、
前記基部には前記オートチューニング時に前記外部駆動源の動作を制御するために前記複数の内部シャフトの複数の回転位置を複数の実測値として検出する複数の回転検出器が設けられ、
前記基部には、前記複数の実測値に基づいて前記外部駆動源と前記複数の内部シャフトとの間の複数の駆動力伝達経路について異常が判定された場合に当該異常を報知する報知手段が設けられた、
ことを特徴とするNMR測定用プローブ。
【請求項12】
請求項11記載のプローブにおいて、
前記報知手段は、前記異常を表示する表示器を有する、
ことを特徴とするNMR測定用プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)測定システムに関し、特に、オートチューニング機能を備えたNMR測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
NMR測定システムは、試料中の観測核からのNMR信号つまり核磁気共鳴信号を観測するシステムである。NMR測定システムは、例えば、送信部及び受信部を含む分光計、NMR検出回路を備えたNMRプローブ、分光計とNMRプローブとの間に設けられた中継装置、システムコントローラ等によって構成される。NMRプローブ内のNMR検出回路は、NMR検出用の送受信コイルの他、同調用(チューニング用)の可変コンデンサ、整合用(マッチング用)の可変コンデンサ、等を有する。
【0003】
試料測定に先立って、NMR信号検出回路の調整つまり広義のチューニングが実施され、その場合には、NMRプローブに対して送信信号を送った場合に生じる反射波のレベル(リターンロスレベル)が最小になるように、同調用の可変コンデンサ及び整合用の可変コンデンサの各容量が最適化される。そのような作業を行うために、例えば中継装置には、リターンロスレベルを検出する回路やそのレベルを表示する表示器が設けられる(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
NMR検出回路のチューニング方式として、マニュアル方式とオート方式(オートチューニング方式)とがある。前者はリターンロスレベルを観察しながら手作業でチューニングを行う方式であり、後者はリターンロスレベルが最小になるチューニング条件を自動的に探索、設定する方式である。
【0005】
特許文献2に開示されているように、後者のオートチューニングにおいては、例えば、外部ユニットとして構成されたオートチューニングユニットがNMRプローブに対して連結される。具体的には、NMRプローブには、同調用可変コンデンサ及び整合用可変コンデンサを外部から操作するために複数の内部シャフト及びそれらの端部をなす複数の接続口が設けられており、それらに対して複数の外部シャフト(フレキシブルシャフト)の作用端(先端)が接続される。複数のフレキシブルシャフトの後端にはそれぞれパルスモータ等の駆動源が接続されている。それらの駆動源を利用して、例えば、互いに異なる複数の容量値セットが順次、試行的に設定され、その状況下で個別的にリターンロスレベルが検出される。各容量値セットは同調用容量値(同調用ダイヤル値)及び整合用容量値(整合用ダイヤル値)からなるものである。以上のようにして得られた複数のリターンロスレベルに基づいて所定の関数演算を実行することにより最適容量値セットが算定される。そして、その最適容量セットが同調用可変コンデンサ及び整合用可変コンデンサに設定される。その上で、実際にNMR測定が実行される。なお、可変コンデンサとしては、例えば10回転程度の動作範囲を有する多回転型可変コンデンサが利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4037626号明細書
【特許文献2】特開2003−185725号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
オートチューニングを行う場合において、駆動源から可変コンデンサまでの経路上に、特に駆動源と内部シャフトとの間の経路上に、何らかの不備があると、当然ながら、正しくチューニングを行うことができなくなる。そのような不備として、例えば、外部シャフトの外れ、外部シャフトの空回り、外部シャフトと内部シャフトとの間の回転ずれ(スリップ)、外部シャフトの誤接続、等があげられる。オートチューニングを正確にかつ迅速に行うにはそのような不備をユーザーにおいて早期に認識して必要な対処を行う必要がある。しかしながら、従来のシステムは上記の不備を的確に認識できるように構成されていない。
【0008】
なお、NMRプローブ内にオートチューニング用の駆動源が設けられる場合においても、内部シャフトの回転位置を実現するための駆動源への指示値と内部シャフトの実際の回転位置とがずれることもあるから、そのような不備がユーザーにおいて速やかに認識される必要がある。
【0009】
本発明は、オートチューニングを行えるNMR測定システムにおいて、オートチューニングの信頼性を高めることにある。あるいは、外部操作部材の接続不全をユーザーにおいて認知できるようにすることにある。あるいは、高機能性をもったNMR測定用プローブを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係るNMR測定システムは、調整用の可変コンデンサを有するNMR検出回路と、前記可変コンデンサに対して連結された内部シャフトと、オートチューニング時において前記内部シャフトを駆動するための駆動力を生成する駆動部と、前記内部シャフトの回転位置を実測値として検出する回転検出器と、前記実測値に基づいて前記駆動部と前記内部シャフトとの間の駆動力伝達経路上で生じた異常を判定する判定手段と、を含むことを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、オートチューニング時においてNMR検出回路内の可変コンデンサ(例えば、同調用コンデンサ、整合用コンデンサ)の容量が内部シャフトを介して操作される。すなわち、内部シャフトの駆動により可変コンデンサの容量可変が行われる。内部シャフトに対しては、駆動部で生成された駆動力(回転力)が伝達される。そのような内部シャフトの回転位置(回転数、回転角度等)が回転検出器によって実測値として実際に検出される。判定手段はその実測値に基づいて駆動力伝達系路上における異常つまりエラーを判定する。このように上記構成によれば内部シャフトの回転位置が実際に検出されるから、その検出結果に基づいて駆動力伝達上の異常を速やかにかつ確実に判定することが可能である。望ましくは、異常が判定されると、それがユーザーに報知される。異常判定に応じて、異常を解決するための措置が自動的に実行されてもよい。
【0012】
上記構成において、駆動部は、外部ユニット内に設けられるのが望ましい。その場合、駆動部と内部シャフトとの間が駆動力伝達部材としての外部シャフトによって連結される。外部シャフトをNMR測定用プローブに着脱する構成においては特にシャフト接続不良が生じやすいので、その場合に上記構成を採用すれば、オートチューニングの信頼性を高められる。駆動部をNMR測定用プローブ内に配置することも可能である。その場合においても、上記構成によれば、駆動力の伝達経路上に生じた異常を検出できるから、オートチューニング不良が生じることを未然に回避できる。
【0013】
回転検出器を可変コンデンサの回転軸に直接的に連結することも可能であるが、そのような構成によると、NMR測定用プローブのヘッド内に回転検出器を設ける必要が生じるから、ヘッドの小型化が困難となり、あるいは、そのような回転検出器がNMR測定に悪影響を与えてしまうおそれが生じる。そこで、回転検出器をNMR測定用プローブの基部内に配置するのが望ましい。回転検出器としては、ポテンショメータ、光学的検出器その他を利用することが可能である。外部シャフトと内部シャフトとの間にギア機構が設けられる場合、そのギア機構に回転検出器を組み込むのが望ましい。そのような構成によれば、外部シャフト、内部シャフト及び回転検出器の相互間において所望の回転比を容易に実現できる。この構成では、内部シャフトの回転が間接的に検出される。
【0014】
実測値は、内部シャフトの実際の回転位置を表すものであるから、その実測値に基づいて各種の異常判定を行える。例えば、駆動部への指示値(計算値あるいは制御値)に対する実測値のずれの有無又はその程度に基づいて、駆動力伝達上のスリップ、駆動力伝達経路の不成立や切断等を判定することが可能である。また複数の接続口に対して複数の外部シャフトが接続される構成では誤接続を判定することも可能である。実測値それ自体やその変化から異常を判定することも可能である。例えば駆動力を与えても実測値が変化しない場合には外部シャフトの接続忘れや外れ等のエラーを判定できる。なお、実測値に基づいて駆動部や内部シャフトを含む伝達経路全体の良否が判定されてもよい。
【0015】
判定手段は、NMR測定用プローブ内部又は外部に配置される。システム全体を統括するシステム制御部に判定手段を設けることも可能である。異常が判定された場合に、NMR測定用プローブの付近にいる操作者(ユーザー)にその事実を速やかに報知するためにNMR測定用プローブに異常を報知する手段を設けるのが望ましい。そのような手段として表示器、発光器、スピーカ等があげられる。操作者による異常対処のために、表示器の画面上に、異常経路(異常チャンネル)、異常種別を表示するのが望ましい。異常種別に応じた対処方法(ガイダンス)が表示されてもよい。
【0016】
望ましくは、前記駆動部はオートチューニングのための指示値に基づいて前記駆動力を生成し、前記判定手段は前記指示値と前記実測値との比較により前記異常を判定する。この構成によれば、計算値あるいは理論値としての指示値に対する実測値の相違を求めることができるから、その相違の有無や程度から異常を判定することができる。一方方向への回転時のずれ量と他方方向への回転時のずれ量を比較してもよい。それを補正値として制御に役立てることも可能である。指示値と実測値との比較結果をそのままフィードバック制御に役立ててもよい。望ましくは、内部シャフトに対して外部シャフトを接続した時点でその時の回転位置が初期値として読み取られ、その初期値を基準として指示値が計算される。駆動部としてパルスモータが利用される場合、指示値は、例えば、パルスモータへ供給するパルス数に相当する。パルス数の基礎となった制御値が実測値と比較されてもよいし、パルス数を回転位置に換算した値が実測値と比較されてもよい。
【0017】
望ましくは、前記判定手段は、前記指示値と前記実測値との差が許容範囲を超える場合に前記異常を判定する。許容範囲をユーザーによってあるいは状況に応じて自動的に可変設定できるように構成してもよい。一方方向へ回転する場合と他方方向へ回転する場合とで許容範囲を切り換えてもよい。
【0018】
望ましくは、前記NMR検出回路、前記内部シャフト、及び、前記回転検出器を有するNMR測定用プローブと、前記駆動部、及び、前記駆動力を伝達する外部シャフトを有する外部ユニットと、を含み、前記NMR測定用プローブは、更に、前記内部シャフトに対して機械的に連結された回転部材であって前記外部シャフトが着脱可能に接続される外部接続ポートを有し、前記判定手段は、前記異常として、前記外部接続ポートへの前記外部シャフトの接続エラーを判定する。外部接続ポートに対して外部シャフトを着脱する構成においては、特に、その接続箇所において駆動力伝達上の異常が生じやすいので、そのような構成において上記異常判定を行えば異常が生じた場合にそれを速やかに認識して必要な対処を行うことが可能であり、ひいてはオートチューニングの信頼性を高められる。
【0019】
(2)本発明に係る他のNMR測定システムは、調整用の複数の可変コンデンサを有するNMR検出回路と、前記複数の可変コンデンサに対して連結された複数の内部シャフトと、オートチューニング時に複数の内部シャフトを個別的に駆動するための駆動力を生成する駆動部と、前記複数の内部シャフトの複数の回転位置を複数の実測値として検出する複数の回転検出器と、前記複数の実測値に基づいて前記駆動部と前記複数の内部シャフトとの間の複数の駆動力伝達経路について異常を個別的に判定する判定手段と、を含むことを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、NMR検出回路内の複数の可変コンデンサに対してそれらを操作するための複数の内部シャフトが連結されており、複数の内部シャフトの回転位置が複数の回転検出器によって複数の実測値として個別的に検出される。これにより、複数の駆動力伝達経路を構成する個々の経路について伝達異常を判定することが可能である。この構成によれば、異常が生じている経路を識別できるから、異常経路を特定する情報をユーザーに提供することも可能である。
【0021】
望ましくは、前記駆動部は、オートチューニングのための複数の指示値に基づいて前記複数の内部シャフトを個別的に駆動するための駆動力を生成し、前記判定手段は、前記複数の指示値と前記複数の実測値との比較により前記異常を個別的に判定する。望ましくは、前記判定手段は、前記異常が生じた異常経路及び前記異常の種別を判定する。望ましくは、前記判定手段は、前記異常の種別として、誤接続、スリップ及び空回りを判定する。複数の接続口が存在し、それらが同じ仕様を有している場合には、外部シャフトの誤接続の可能性がある。つまり、ある接続口に対して、それに対応する外部シャフトではなく、別の外部シャフトが誤って接続されてしまう可能性がある。上記構成によれば、個々の接続口ごとに駆動力伝達時における実測値の変化の有無を確認できるから、誤接続を簡単に特定することが可能である。誤接続が判定された場合に、それを報知してもよいし、駆動源と内部シャフトとの対応関係が正しくなるように制御条件を変更してもよい。
【0022】
(3)本発明に係るNMR測定用プローブは、磁場発生装置の空洞部内に挿入される部分であって調整用の複数の可変コンデンサを有するNMR検出回路を備える挿入部と、前記挿入部に連結された部分であって前記空洞部外に配置される基部と、を含み、前記挿入部と前記基部とに跨がって前記複数の可変コンデンサを操作するための複数の内部シャフトが設けられ、前記複数の内部シャフトにはオートチューニング時に内部駆動源又は外部駆動源から駆動力が伝達され、前記基部には前記オートチューニング時に前記内部駆動源又は外部駆動源の動作を制御するために前記複数の内部シャフトの複数の回転位置を複数の実測値として検出する複数の回転検出器が設けられた、ことを特徴とする。
【0023】
上記構成によれば、NMR測定用プローブ内に複数の回転検出器が設けられているので、各内部シャフトの回転位置を実測値として個別的に検出して、それに基づいて異常判定や動作制御を行える。各回転検出器はNMR測定用プローブにおける挿入部ではなく基部に設けられているから、挿入部を小型化でき、また複数の回転検出器を送受信コイルから離して複数の回転検出器による磁場への影響を小さくできる。実測値は、オートチューニング時において内部駆動源又は外部駆動源の動作を制御する際に利用される。例えば、駆動力の伝達上の異常が判定された場合に内部駆動源又は外部駆動源の動作を停止させる制御が実行される。内部駆動源はNMR測定用プローブ内、例えばその基部内に設けられる駆動源であり、外部駆動源はNMR測定用プローブ外に設けられる駆動源である。個々の内部シャフトごとに駆動源を設けるのが望ましいが、駆動源を共用することも可能である。駆動力伝達上の異常の判定はNMR測定用プローブの内部又は外部に設けられた回路において行われる。
【0024】
望ましくは、前記基部は、前記駆動力の伝達において異常が生じた場合にその異常を表示する表示器を有する。そのような表示器として、文字等を表示する表示器の他、発光器があげられる。基部は一般に露出しているので、そこに表示器を設ければ、操作者をして表示内容を容易に視認できる。見易さを向上するために、基部の側面(垂直面)に表示器を設けるのが望ましい。但し無線通信等によって携帯型表示器その他に異常が表示されるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、オートチューニングを行えるNMR測定システムにおいて、オートチューニングの信頼性を向上できる。あるいは、外部操作部材の接続不全をユーザーにおいて認知できる。あるいは、高機能性をもったNMR測定用プローブを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係るNMR測定システムの好適な実施形態を示すブロック図である。
図2図1に示したNMR測定システム中、特にオートチューニングに関する構成を示すブロック図である。
図3】NMRプローブの基部を示す斜視図である。
図4】NMRプローブに設けられた表示器の表示例を示す図である。
図5】NMRプローブの基部の内部構成例を示す図である。
図6】ギア部の構成例を示す図である。
図7】オートチューニングにおける動作例を示すフローチャートである。
図8図7に示したS26及びS34の工程での動作例を示すフローチャートである。
図9図7に示したS18の工程での動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1には、本発明に係るNMR測定システムの好適な実施形態がブロック図として示されている。このNMR測定システムは、サンプル中の観測核により生じたNMR(核磁気共鳴)信号を測定するシステムである。
【0028】
図1において、NMR測定システム10は、本実施形態において、分光計12、中継装置14、NMRプローブ16、システム制御部19等を有している。本実施形態においては、更に、NMR測定システム10がオートチューニングユニット18を有している。
【0029】
分光計12はコンソールを構成するものであり、具体的には、分光計12は、送信部20及び受信部22を有している。送信部20は、チューニングモード及びNMR測定モードにおいて送信信号を生成し、その送信信号を中継装置14を介してNMRプローブ内のNMR検出部32に出力する。送信部20は、信号発生器、パワーアンプ等を有している。受信部22は、NMR検出部32から出力された受信信号(NMR検出信号)を中継装置14を介して受け取り、その受信信号に対して所定の処理を行う回路である。受信部22により処理された信号は、図示されていないFFT回路等にわたされる。これにより、受信情報に基づいてスペクトラムが生成される。本実施形態においては、NMR検出部32の調整すなわちチューニングにあたって、マニュアルチューニングとオートチューニングとを選択することが可能である。後者のオートチューニングにおいてはオートチューニングユニット18が利用される。
【0030】
中継装置14は、本実施形態において、ヘッドアンプシャーシとして構成されており、中継装置14は、送信部20からの送信信号をNMRプローブ16へ中継する機能と、NMRプローブ16からの受信信号を受信部22へ中継する機能と、を有している。中継装置14は、図示されていない方向性結合器(送受分離回路)を有しており、送信部20からの送信信号が方向性結合器を介してNMRプローブ16へ出力されている。またNMRプローブ16からの受信信号が方向性結合器において取り出され、その取り出された受信信号が受信部22へ出力されている。方向性結合器は本実施形態において受信信号を増幅するプリアンプを備えている。中継装置14は、NMRプローブ16において反射して戻ってきた反射波のレベル(リターンロスレベル)を検出する回路及びそれを表示する表示器等を備えている。本実施形態において、中継装置14には、NMRプローブ16に対する外部ユニットとしてのオートチューニングユニット18が連結されている。これについては後に詳述する。
【0031】
NMRプローブ16は、大別して、挿入部24及び基部26により構成されている。磁場発生装置28は静磁場を発生する装置であり、その中央部に形成された垂直方向に伸びる空洞部としてのボア28A内には挿入部26が差し込まれる。挿入部24におけるプローブヘッド30内にはNMR検出部32が設けられている。NMR検出部32はNMR信号を検出するための送受信コイル、同調用コンデンサ、整合用コンデンサ等の電子部品を備えている。
【0032】
本実施形態においては、後に図2を用いて示すように、2つの送受信コイル(高周波用送受信コイル、低周波用送受信コイル)が設けられており、これらに対応して後述する2つのNMR検出回路が設けられている。
【0033】
図1に示されているように、挿入部24と基部26とにわたって、つまりそれらに跨がるように、複数の内部シャフト38が設けられている。本実施形態においては、例えば5本の内部シャフトが配置されている。ただし、図1においてはその内の1本だけが示されている。容量可変用の各内部シャフト38の先端が個々の可変コンデンサの回転軸に連結されている。各内部シャフト38を回転させることにより、各可変コンデンサにおける容量を可変することが可能である。本実施形態においては、後に説明するように、4つの内部シャフトを用いて4つの可変コンデンサの容量を可変設定することが可能である。低周波帯域については5つのバンドが設定されており、それぞれのバンド毎に同調用コンデンサ及び整合用コンデンサが設けられている。バンド切替のために1本の内部シャフトが配置されている。
【0034】
基部26は、磁場発生装置28のボア28Aからその下側に露出した部分であり、その内部には複数の機械ユニット40及び電子ユニット46が設けられている。それぞれの機械ユニット40は、本実施形態において、ギア部と、回転検出器をなすポテンショメータと、を備えている。符号42は、内部シャフト38への接続口を示しており、その接続口42に対して外部シャフト(フレキシブルシャフト)の先端を着脱自在に接続することが可能である。外部シャフト44は駆動力伝達部材であり、外部シャフト44を媒介として外部において内部シャフト38を回転操作することが可能である。その場合における回転比が機械ユニット40内のギア部によって定められる。本実施形態においては、上記のように、5本の内部シャフトが設けられており、オートチューニング時においては、それらが有する5つの接続口に対して5本の外部シャフトが接続される。5つの接続口は、マニュアルチューニング時において、それぞれつまみとして機能する。すなわち、マニュアルチューニングにおいては、つまみとしての5つの接続口がユーザーにより回転操作される。
【0035】
電子ユニット46は、後に詳述するように、マイコン、表示器、メモリ、A/D変換部等を有するものである。電子ユニット46に対して、複数のポテンショメータから出力された出力信号が与えられている。それらの信号に基づき、電子ユニット46において、5つの内部シャフトについてのそれぞれの回転位置を実測値として認識することが可能である。なお、符号34は送受信ケーブルが接続されるポートを示しており、そのポート34とNMR検出部32との間には信号線36が配設されている。本実施形態においては、実際には、2つの送受信コイルが設けられており、それらに対応する2つのポートが設けられている。これについては後に図2を用いて説明する。
【0036】
オートチューニングユニット18は、マイコン、複数のモータ等を有している。オートチューニングユニット18は、NMRプローブ16内の電子ユニット46の制御も行っている。オートチューニングユニット18は、電子ユニット46から必要な情報を取得し、その情報に基づいてオートチューニング制御を実行している。上述したように、本実施形態では、5つの外部シャフトが設けられており、それぞれの外部シャフトの尾端すなわち後端にはモータが接続されている。オートチューニングユニット18内のマイコンによって各モータの動作が制御されている。具体的には、指示値に相当するパルス数をもったパルス信号が各モータに与えられ、これにより外部シャフトの回転位置が規定されている。
【0037】
電子ユニット46に対してはオートチューニングユニット18から電力が供給されている。ただし、NMRプローブ16内に独自の電源を設けるようにしてもよい。なお、NMR測定モード(実測定モード)においてはハイパワーをもった送信信号が生成され、一方、チューニングモードにおいては微弱パワーをもった送信信号が生成される。
【0038】
図2には、図1に示したシステム構成の内、特にオートチューニングに関する構成が図示されている。より具体的には、図2には、中継装置14及びNMRプローブ16の詳細が示されている。
【0039】
図2において、高周波送信を行うための第1系統が符号48で示されており、低周波送信を行うための第2系統が符号50で示されている。それら2つの系統に対応して、中継装置14内には、2つの検出回路106,108が設けられている。各検出回路106,108は反射波成分を取り出すための回路であり、それらの検出回路106,108からの検出信号が変換回路110に入力されている。変換回路110は、検出信号からリターンロスレベルを表すレベル信号を生成する回路であり、変換回路110は本実施形態においてA/D変換器を有している。高周波送信及び低周波送信は少なくともチューニング過程において非同時的に実行されるため、それらの送信間で変換回路110が共用されている。レベル信号111は、本実施形態において、表示処理回路112及びオートチューニングユニット18内のマイコン(マイクロコンピュータ)118に出力されている。
【0040】
表示処理回路112は、レベル信号に対して所定の表示処理を行うことにより、表示器114において反射波レベルを表示するための表示信号を生成する。この場合において、符号116で示すようにユーザーにより反射波表示ゲインを切替設定することが可能である。表示器114は例えば液晶表示器により構成されており、そこには反射波レベルが例えば多セグメント表示(棒グラフ)のような形態で表示される。マニュアルチューニングを行う場合、その表示内容を観察しつつ反射波レベルが最小になるように同調用コンデンサ及び整合用コンデンサの各容量が手作業により最適化される。ちなみに、本実施形態においては、NMRプローブ16が有する表示器102においても、反射波レベルが表示されており、マニュアルチューニングにあたっては、その表示器102に表示された反射波レベルに基づいて各コンデンサの容量を設定することが可能である。オートチューニングにおいてもその表示器102の表示内容によって反射波レベルを確認することが可能である。
【0041】
オートチューニングユニット18は、本実施形態において、中継装置14に外付で付加されたユニットである。中継装置14の内部にオートチューニングユニットが組み込まれてもよい。あるいは、オートチューニングユニット18が有する諸機能がNMRプローブ16内に組み込まれてもよい。
【0042】
オートチューニングユニット18は、既に説明したように、オートチューニングモードにおいて、自動的な調整を行うためのものである。本実施形態においては、CPU及び動作プログラムにより構成されるマイコン118が設けられている。また、オートチューニングユニット18内には、本実施形態において、5つのモータ120,122,124,126が設けられており、それらによって5つの外部シャフト84,86,88,90,92が駆動されている。図2においては、その内で、コンデンサ容量操作用の4つのモータ120,122,124,126及び4つの外部シャフト84,86,88,90が図示されている。バンド切替用のモータ及び外部シャフトについては図示省略されている。モータ120,122,124,126は、本実施形態において、パルスモータにより構成されており、マイコン118からのパルス信号が図示されていないインターフェイスを介して各モータ120,122,124,126へ出力されている。個々のパルス信号の生成にあたって、マイコン118は、演算上求められた回転位置(ダイアル値)を示す指示値に対応するパルス数を有するパルス信号を生成している。マイコン118は、図1に示したシステム制御部により制御されており、そのためのコントロール信号が符号127で示されている。
【0043】
本実施形態において、マイコン118は、入力されたレベル信号111又はそれを示す情報をNMRプローブ16へ伝送する機能を有している。また、マイコン118は個々の内部シャフト毎に、指示値と実績値とを比較し、これにより駆動力伝達上の異常を判定する機能を有している。更に、マイコン118は、各コンデンサについて定められた上限値及び下限値に指示値又は実測値が到達した場合に、当該コンデンサに対応するモータを強制的に停止させる制御も実行している。
【0044】
なお、マイコン118が表示処理回路112が有する機能を有していてもよい。また反射波レベル信号111をマイコン118を経由せずにNMRプローブ16へ伝送するようにしてもよい。本実施形態においては、システム制御部からのコントロール信号127がマイコン118を介してマイコン94へ送られているが、システム制御部からマイコン94に対して直接的にコントロール信号が与えられてもよい。図2においては、マイコン118とマイコン94との間の通信ラインが符号130で示されている。マイコン118等の動作内容については後に図7乃至図9を用いて詳述する。
【0045】
上述したように、NMRプローブ16は挿入部24と基部26とを有している。挿入部24はNMR検出部32を備えている。NMR検出部32は、本実施形態において、高周波用検出回路及び低周波用検出回路の2つの検出回路を有している。高周波用検出回路は送受信コイルの他、同調用コンデンサ52及び整合用コンデンサ54を有している。低周波送信に関し、本実施形態においては、5つのバンドが定義されており、バンド毎に同調用コンデンサ56及び整合用コンデンサ58が設けられている。バンドの選択によってコンデンサペアが選択される。各コンデンサは容量を可変可能な可変コンデンサであり、本実施形態においては多回転型のコンデンサが利用されている。整理すると、本実施形態において、NMR検出部32は、高周波用のコンデンサペアと、低周波用の5つのコンデンサペアとを有する。高周波用のコンデンサペアは、同調用コンデンサ52及び整合用コンデンサ54からなり、各バンドの低周波用のコンデンサペアは同調用コンデンサ56及び整合用コンデンサ58からなる。
【0046】
挿入部24と基部26とに跨がって、本実施形態において、5つの内部シャフトが設けられている。図2においては、その内で4つの内部シャフト60,62,64,66が図示されている。図示されていない内部シャフトはバンド切替用である。内部シャフト60,62,64,66は、それぞれ回転力を対応コンデンサに伝達し、これによって対応コンデンサの容量の可変を行うものである。
【0047】
基部26内には上述したように複数の機械ユニット40が設けられている。本実施形態において、5つの機械ユニット40が設けられており、各機械ユニット40はそれぞれギア部及びポテンショメータを有する。図2においては、5つのギア部の内で4つのギア部68,70,72,74が図示されている。また、4つのポテンショメータの内で4つの
ポテンショメータ92が図示されている。なお、図2においてはそれらを代表して1つのポテンショメータ92だけが図示されている。
【0048】
基部26における下面板83を貫通するように5つの軸部材が設けられ、それぞれの軸部材には接続口が設けられている。図2においては、5つの軸部材の内で4つの軸部材が図示されており、また5つの接続口の内で4つの接続口76,78,80,82が図示されている。接続口76,78,80,82には対応する外部シャフト84,86,88,90が着脱自在に連結される。よって、いずれかの外部シャフトを回転させると、その回転力が、特定の軸部材及び特定のギア部を介して特定の内部シャフトに伝達され、それが回転運動することになる。その回転運動によりコンデンサ軸が回転運動し、これにより容量が可変される。その場合において、内部シャフトの回転位置がポテンショメータ92により検出され、その検出信号98がマイコン94に送られる。
【0049】
なお、各ギア部68,70,72,74は所望の回転比を実現するためのものである。より、詳しくは、各ギア部68,70,72,74において、接続口(外部シャフト)の回転数iに対する内部シャフトの回転数jが規定されており、また、接続口(外部シャフト)の回転数iに対するポテンショメータの回転数kが規定されている。i対j対kの比率はギア部の構成次第で任意に設定することが可能である。コンデンサの回転数、ポテンショメータの回転数、調整精度等の観点から、ギア比が定められる。ギア部の構成例について後に図6を用いて説明する。
【0050】
次に、基部26内に設けられた電子ユニット46について説明する。基部26内にはCPU及び動作プログラムにより構成されるマイコン(マイクロコンピュータ)94が設けられている。このマイコン94にはA/D変換部96が接続されており、またメモリ100及び表示器102が接続されている。A/D変換部96は、5つのポテンショメータ92からの検出信号につき、アナログ信号からデジタル信号に変換するモジュールである。それらの検出信号がマイコン94において認識される。したがって、マイコン94は、それぞれの内部シャフトの回転位置を実測値としてリアルタイムに監視することが可能である。メモリ100は例えば不揮発性メモリにより構成され、そのメモリ100上にはオートチューニング時において必要となる複数の固有パラメータが格納されている。例えば、そのような固有パラメータとして、個々の可変コンデンサの上限及び下限に相当するダイヤル値、各ギア部における減速ギア比、オートチューニングにおけるモータ回転スピード、等の情報が格納されている。可変コンデンサごとに、メモリ100上に記憶された回転リミット値と、実測値(換算値を含む)とを随時比較し、実測値がリミットに到達した場合に、シャフトの回転駆動を強制的に停止させるように構成するのが望ましい。その場合、リミット値の直前に比較用の判定値を定めてもよい。そのような停止制御は、マイコン94又はマイコン118において実行される。この構成によれば可変コンデンサの保護を図れる。
【0051】
表示器102は、本実施形態において液晶表示器により構成され、その表示器102の表示画面上には反射波レベルがグラフにより表示され、また個々のコンデンサについてのダイアル値すなわち容量設定値が数値として表示される。ダイアル値は本実施形態において実測値に相当するものである。いずれかの回転力伝達経路上において異常が判定された場合に、その旨及び異常経路が表示器102に表示されるのが望ましい。また、異常種別、異常程度等が表示器102に表示されるのが望ましい。そのような異常が、例えばLED等の発光素子の点灯によって表示されてもよい。異常表示に代えて正常表示が行われてもよい。
【0052】
なお、符号104はDIPスイッチを示しており、そのスイッチ104によりプローブIDコードが登録されている。マイコン94は必要に応じてそのスイッチ104の値を読み出して、その情報を外部へ出力する。マイコン94を経由することなく、プローブIDコードが読み出し可能なように構成してもよい。
【0053】
本実施形態においては、オートチューニングユニット18側のマイコン118において異常判定等の制御が実行されているが、その機能がマイコン94において実現されてもよい。例えば、基部26内にそれぞれの内部シャフトを駆動する駆動源を配置する場合、すなわち外部シャフトを用いないでオートチューニングを行う場合、基部26内のマイコン94においてオートチューニング制御及び異常判定を行うのが望ましい。本実施形態においては、異常が判定された場合、その情報がユーザーに対して報知される他、異常が生じた経路上のモータの駆動が強制的に停止されている。異常の報知に加えて、異常を解消するための対処方法を表したメッセージを表示器102等に表示するようにしてもよい。
【0054】
次に図3乃至図6を用いてNMRプローブにおける基部の構成について説明する。図3には、NMRプローブ16の基部26が斜視図として概略的に示されている。基部26はボックス状のケースを有し、そのケースにおける特定の側面26Aに表示器132が設けられている。基部26における底面26Bには本実施形態において5つの接続口76,78,80,82,84が設けられており、それぞれの接続口76,78,80,82,84には外部シャフト85,86の先端部が接続される。図においては2つの外部シャフト85,86だけが図示されている。ちなみに接続口76,78,80,82,84を手でつまんで回転させることによりマニュアルチューニングを行うことも可能である。接続口に対して外部シャフトが完全に連結した状態においては、外部シャフトを介して送られて来る回転力が内部シャフトへ確実に伝達される。
【0055】
図4には、表示器の表示画面132Aの表示例が示されている。表示画面132A内にはレベルメータとしてのレベルインジケータ134が含まれる。これは、複数のセグメントから構成され、反射波のレベルをセグメント数により表すものである。表示画面132Aは、更に、本実施形態において4つのダイアル値表示136,138,140,142を有している。ここでそれらのダイアル値は実測値に相当するものである。ダイアル値表示136,138は低周波についての同調用及び整合用コンデンサのダイアル値を示すものである。ダイアル値表示140,142は、選択された低周波バンドに対応する同調用及び整合用コンデンサのダイアル値を示すものである。本実施形態において、各ダイアル値は0〜7500の範囲において変化する。もちろん、それらの数値は例示に過ぎない。ちなみに、NMRプローブにおいても反射波レベルの表示ゲインをユーザーにより可変設定できるように構成するのが望ましい。
【0056】
図5には、NMRプローブ16の基部26を下方から見た様子が示されている。図5は基部26の内部構造の一例を示すものである。基部26内には5つのギア部68,70,72,74,76がリング状の配列をもって設けられている。基部26には表示器132が設けられ、その背面側には表示処理用の基板が設けられている。更に基部26内には制御基板144が設けられ、その制御基板144上には上述したマイコン等が搭載されている。
【0057】
図6には、5つのギア部を代表してギア部68の構成例が示されている。ギア部68は複数の歯車により構成され、それには遊星ギア等が含まれる。ギア部68は、接続口76と内部シャフト60との間に設けられている。接続口76に対しては外部シャフト84が着脱可能に接続される。内部シャフト60の基端部に設けられた歯車にはポテンショメータ92の軸に連結された歯車が噛み合っている。ポテンショメータ92は、直接的には内部シャフト60の回転位置を検出するものであり、間接的には可変コンデンサの回転位置あるいは容量を検出するものである。本実施形態においては、内部シャフト60の回転位置がポテンショメータ92の出力信号の電圧として検出されている。ポテンショメータ92に代えて、他の回転検出器を設けることも可能である。例えばロータリーエンコーダ等を設けるようにしてもよい。図6に示されるように、外部シャフト84の接続口の中心軸と内部シャフト60の中心軸とがずれている。具体的には図5に示した内部構造における複数のギア部の円環状配列における径方向にずれている。これにより5つの接続口の相互間隔を広げて各部材の設置スペースを確保できる。
【0058】
次に、図7乃至図9を用いてオートチューニング及び異常判定での動作例を説明する。
【0059】
図7には、オートチューニングユニット18及びNMRプローブ16の動作例がフローチャートとして示されている。図7に示す各工程は、特に図2に示したマイコン118及びマイコン94の制御動作を示すものである。
【0060】
S10においては、操作者すなわちユーザーによって、NMRプローブ16に対し、オートチューニングユニット18が有する複数の外部シャフトが接続され、また、オートチューニングユニット18とNMRプローブ16との間が電気的に接続される。S12においては、ユーザーの所定操作によりオートチューニングが開始される。S14においては、オートチューニングユニット18からのリクエストに基づき、NMRプローブ16からオートチューニングユニット18へ情報が伝送される。その情報には、各コンデンサの現在値すなわち実測値、各コンデンサの上限及び下限を示すダイアル値、各ギア部における減速ギア比、各モータの回転スピード、等が含まれる。S16においては、オートチューニングユニット18内において初期設定が行われる。具体的には、取得された現在値(実測値)が認識され、それが初期値として設定される。そのような初期値を基準として指示値が生成されることになる。S18においては、必要に応じて、接続テストが実行される。それは自己診断に相当するものであり、その具体的な内容については後に図9を用いて説明する。
【0061】
S20においては、NMR信号検出部における第1検出回路についての自動調整が実行される。この場合においては、従来同様の自動チューニングアルゴリズムにしたがって調整が実行される。その調整過程において、S22及びS24で示すように、オートチューニングユニット18からNMRプローブ16に対して反射波レベル情報が送られ、これによってNMRプローブ16において反射波レベルが表示される。そのような伝送は間欠的に繰り返し行われている。S26においては、それぞれの駆動力伝送路毎に伝送エラーすなわち異常の有無が監視される。これについては後に図8を用いて詳述するが、S26においては、基本的に、駆動力伝達経路毎に指示値と実測値とが比較され、それらの差が所定の許容範囲を超えた場合に、異常が判定されている。異常が判定された場合、それがユーザーに報知され、また当該回転力伝達系におけるモータの動作が強制的に止められる。ユーザーへの報知にあたって、異常の有無の他、異常種別、異常が生じた場所、異常の程度等の各情報が併せて提供されてもよい。
【0062】
S20の工程が終了すると、S28において、NMR検出部が有する第2検出回路の自動調整が実行される。第2検出回路の自動調整は、基本的に第1検出回路の自動調整と同じ内容である。すなわち、S28は、工程S30,S32を有し、更に伝達エラーの監視を行うS34を有している。2つの検出回路についての自動調整が完了した時点で、S36においてオートチューニングの終了が判定される。そして、S38では、NMRプローブ16においてマイコンが待機モードすなわちスタンバイモードに移行する。そして、S40において実際にNMR測定が実行される。
【0063】
図8には、図7に示した伝送エラーの監視工程S26,S34の動作例が示されている。S100においては、パラメータKに1が代入される。S102においては、K番目の指示値とK番目の実測値とが比較される。S104においては、それらの差が許容範囲内であるか否かが判断される。その差が許容範囲内であればS108が実行され、許容範囲外であればS106が実行される。S106においては、エラーが判定され、それが表示器に表示される。その場合において、エラーが生じた経路を特定する情報を表示するのが望ましい。図8に示す動作例では、S106の工程後にS108が実行されているが、もちろん、S106が実行された時点で動作が一時停止するように構成してもよい。
【0064】
S108においては、パラメータKが最大値に到達したか否かが判断され、到達していなければ、S110においてKが1つインクリメントされた上で、S102以降の各工程が繰返し実行される。S112においては、本処理をこのまま続行させるか否かが判断され、続行させる場合には、S100以降の各工程が繰返し実行される。
【0065】
以上のとおり、オートチューニングを実行している過程においては、すなわち個々のコンデンサの容量を可変設定している状況下では、コンデンサ毎に計算上求められた指示値と実際に検出された実測値とが比較された上で、両者の差が所定以上に大きくなった場合にはエラーが判定されている。これにより、例えば外部シャフトの外れや不完全接続等をユーザーにおいて認識することが可能である。また、間接的に、モータ異常、ギア部不具合、ポテンショメータ不具合、等を認識することも可能である。よって、上記構成によれば、そのような不具合を知らないままオートチューニングが実行され、オートチューニング結果が不良になってしまうといった問題を未然に回避することができ、これによりオートチューニングの信頼性を高めることが可能である。また、異常が発覚した場合に速やかに対処することが可能である。
【0066】
図9には、図7に示した接続テストS18の具体的な動作例が示されている。S200においては、パラメータKに対して1が代入される。S202においては、K番目の指示値を試行的に可変しながら全ての実測値が監視される。S204においては、K番目の実測値が変化したか等が判断される。S204において、いずれの実測値についても変化がないと判断された場合、S206において空回りが判定される。すなわち外部シャフト未接続あるいは外部シャフトの外れが判定される。一方、S204において、K番目の実測値以外の実測値が変化したと判断された場合、S208において誤接続が判定される。すなわち、ある接続口に対して正規の外部シャフトではなく別の外部シャフトを接続されてしまったことを認識できる。
【0067】
S204において、K番目の実測値が変化したと判断された場合、引き続いてS210において、K番目の指示値とK番目の実測値との間の差が変化しているか否かが判断される。それが変化している場合には、S212においてスリップが判定される。すなわち、例えばギア部の故障等により入力回転量に対して出力回転量がズレていることが判定されることになる。S214においては、Kが最大値に到達したか否かが判断され、到達していなければS216においてKが1つインクリメントされた上で、S202以降の各工程が繰り返し実行される。そして、最終的に、S218において、以上のような判定の結果を含む自己診断結果が画面上に表示される。この場合においては、NMRプローブが有する表示器と共にメインコンソールが有する表示器にその診断結果が表示されるのが望ましい。そのような診断結果は、異常の有無の他、異常の種別を含むものであり、また異常箇所を特定する情報を含むものである。
【0068】
なお、上記機能を利用して、内部シャフトを一方方向に回転させた場合における指示値と実測値との差と、内部シャフトを他方方向に回転させた場合における指示値と実測値との差とを比較し、これによってギア部において生じるバックラッシュの程度を評価するようにしてもよい。
【0069】
以上説明した本実施形態に係る構成によれば、NMRプローブ内に内部シャフト毎にポテンショメータを設け、それによって内部シャフトの回転位置を実測値として検出するようにしたので、その実測値に基づいて伝達異常の判定等の各種の制御を行うことが可能である。よって、オートチューニングにおける信頼性を向上することができ、また何らかの異常が発生した場合にその異常に対して速やかに対処することが可能である。本実施形態においては、異常の有無の他、異常が生じた場所を特定でき、また異常の種別を識別することも可能である。上記実施形態においては、オートチューニングユニットがNMRプローブの外部に設けられていたが、オートチューニング機能をNMRプローブ内に設けるようにしてもよい。しかしながら、外部にオートチューニングユニットを設け、複数のフレキシブルシャフトをNMRプローブに対して着脱自在に接続する場合においては、特に接続不全やシャフト外れといった固有の問題が生じ易いので、そのような構成を採用する場合に上記の異常判定機能を設けるのが望ましい。
【符号の説明】
【0070】
10 NMR測定システム、12 分光計、14 中継装置、16 NMRプローブ、18 オートチューニングユニット、32 NMR検出部、52,54,56,58 可変コンデンサ、60,62,64,66 内部シャフト、68,70,72,74 ギア部、76,78,80,82 接続口、84,86,88,90 外部シャフト、120,122,124,126 モータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9