(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記要件(A−1)〜(A−4)を満足するプロピレン系樹脂(A)100重量部と、プロピレン系樹脂(A)100重量部に対して下記要件(B−1)〜(B−2)を満足する樹脂(B)0.4〜3.5重量部とを含有するポリオレフィン系樹脂組成物であって、下記要件(C−1)〜(C−2)を満足することを特徴とするポリオレフィン系樹脂組成物。
要件(A−1)
プロピレン系樹脂(A)が、メタロセン触媒を用いて重合された、エチレン含量が0.1〜7重量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体である。
要件(A−2)
プロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が1〜100g/10分である。
要件(A−3)
プロピレン系樹脂(A)の全光線透過率が、試験片厚み2mmにおいて80〜90%である。
要件(A−4)
プロピレン系樹脂(A)の霞度が、試験片厚み2mmにおいて30〜95%である。
要件(B−1)
樹脂(B)の全光線透過率が、試験片厚み2mmにおいて85%以上である。
要件(B−2)
樹脂(B)の霞度が、試験片厚み2mmにおいて2%以下である。
要件(C−1)
プロピレン系樹脂(A)と樹脂(B)とが非相溶である。
要件(C−2)
プロピレン系樹脂(A)と樹脂(B)との屈折率の差が0.04以上である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、特定のプロピレン系樹脂(A)に特定の樹脂(B)を、特定の量含有すポリオレフィン系樹脂組成物およびその成形体に関する。
以下、本願発明において用いられる各成分、得られるポリオレフィン系樹脂組成物およびその成形体について、詳細に説明する。
【0013】
1.プロピレン系樹脂(A)
本発明に用いられるプロピレン系樹脂(A)は次の要件(A−1)〜(A−4)を満足する。
要件(A−1): プロピレン系樹脂(A)が、メタロセン触媒を用いて重合された、エチレン含量が0.1〜7重量%のプロピレン−エチレンランダム共重合体である。
要件(A−2): プロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が1〜100g/10分である。
要件(A−3): プロピレン系樹脂(A)の全光線透過率が、試験片厚み2mmにおいて80〜90%である。
要件(A−4): プロピレン系樹脂(A)の霞度が、試験片厚み2mmにおいて30〜95%である。
【0014】
1.1.プロピレン系樹脂(A)
本発明に用いられる、メタロセン触媒により重合されたプロピレン系樹脂(A)について、以下詳述する。
【0015】
(1)各要件
(A−1)エチレン含量等について
本発明に用いられるプロピレン系樹脂(A)は、メタロセン触媒を用いて重合されている。即ち、メタロセン触媒により重合されたため分子量分布および組成分布が狭く、光線透過率が高いという特徴を有する。
また、本発明において、メタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン−エチレンランダム共重合体が、本発明の効果を得る上で最も効果的であり、本発明に於いて使用される。また、プロピレン系樹脂(A)は、2種以上を併用することもできる。
【0016】
本発明に用いられるプロピレン系樹脂(A)のエチレン含量は0.1〜7重量%であり、好ましくは0.5〜4重量%、より好ましくは0.7〜3.5重量%、さらに好ましくは0.8〜3,4重量%である。エチレン含量をこの様な範囲とすることにより、良好な光線透過性と実用に耐えうる剛性を得ることができる。即ち、プロピレン系樹脂(A)のエチレン含量が0.1重量%未満であると光線透過率が低下するおそれがあり、7重量%以上であると成形品の剛性が著しく低下し、実用に適さない場合がある。エチレン含量は、後述する重合条件(エチレンガス添加量等)によって調整することが出来る。また、エチレン含量の測定方法については後述する。
【0017】
(A−2)メルトフローレート(MFR)について
本発明に用いられるプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重)は、1〜100g/10分であり、好ましくは3〜80g/10分、より好ましくは4〜50g/10分である。本発明に用いられるプロピレン系樹脂(A)のメルトフローレートを本発明の規定の範囲とすることにより、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物において良好な成形性が可能となる。すなわち、MFRが1g/10分未満であると、本発明の樹脂組成物及びその成形体において、成形性が低下する場合がある。一方、100g/10分を超えると、バリおよびデフォームが発生するおそれがある。MFRは、後述する重合条件、(重合温度、水素添加量等)を調整したり、分子量降下剤を用いるなどして制御することができる。
なお、本明細書において、MFRは、JIS K7210:1999のA法、条件Mに準拠し、試験温度=230℃、荷重=2.16kgで測定した値である。
【0018】
(A−3)全光線透過率について
本発明に用いられるプロピレン系樹脂(A)の試験片厚み2mmにおける全光線透過率は80〜90%であり、好ましくは82〜89%であり、より好ましくは83〜88%である。本発明に用いられるプロピレン系樹脂(A)の全光線透過率を本発明の規定の範囲とすることにより、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物において良好な光線透過率と高い拡散性を両立することができる。すなわち、全光線透過率が80%未満であると、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物における光線透過率が低下するため十分な効果が得られず、90%を超えると拡散性が低下するおそれがある。
全光線透過率は、後述する重合条件にて、エチレン添加量を変更し、エチレン含量を調整するなどして制御することができる。
なお、本明細書において全光線透過率は、試験片厚み2mmのシート片を用い、JIS K7105に準拠し測定した値である。
【0019】
(A−4)霞度について
本発明に用いられるプロピレン系樹脂(A)の試験片厚み2mmにおける霞度は30〜95%であり、好ましくは50〜90%であり、より好ましくは60〜89%である。本発明に用いられるプロピレン系樹脂(A)の霞度を本発明の規定の範囲とすることにより、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物において良好な光線透過率と高い拡散性を両立することができる。すなわち、霞度が30%未満であると、本発明の樹脂組成物における拡散性が低下するため十分な効果が得られず、95%を超えると光線透過率が低下するおそれがある。
霞度は、後述する重合条件にて、エチレン添加量を変更し、エチレン含量を調整するなどして制御することができる。
なお、本明細書において霞度は、試験片厚み2mmのシート片を用い、JIS K7105に準拠し測定した値である。
【0020】
(2)エチレン含量について
エチレン含量は、プロピレン系樹脂(A)をプロトン完全デカップリング法により測定した
13C−NMRスペクトルを解析することにより求める。代表例として、本発明で用いた方法を以下に説明する。
機種:日本電子(株)製GSX−400(炭素核共鳴周波数400MHz)
溶媒:ODCB/重ベンゼン=4/1(体積比)
濃度:100mg/mL
温度:130℃
パルス角:90°
パルス間隔:15秒
積算回数:5,000回以上
スペクトルの帰属は、例えば以下の文献などを参考に行えばよい。
Macromolecules;17,1950(1984)
上記条件により測定されたスペクトルの帰属は表1の通りである。表中Sααなどの記号は以下の文献の表記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
Carman,Macromolecules;10,536(1977)
【0022】
以下、「P」を共重合体連鎖中のプロピレン単位、「E」をエチレン単位とすると、連鎖中にはPPP、PPE、EPE、PEP、PEE、及びEEEの6種類のトリアッドが存在し得る。Macromolecules,15 1150 (1982)などに記されているように、これらトリアッドの濃度と、スペクトルのピーク強度とは、以下の<1>〜<6>の関係式で結び付けられる。
[PPP]=k×I(T
ββ) <1>
[PPE]=k×I(T
βδ) <2>
[EPE]=k×I(T
δδ) <3>
[PEP]=k×I(S
ββ) <4>
[PEE]=k×I(S
βδ) <5>
[EEE]=k×[I(S
δδ)/2+I(S
γδ)/4} <6>
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば、[PPP]は、全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。
従って、[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1 <7>である。
また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えばI(T
ββ)はT
ββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。
【0023】
上記<1>〜<7>の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含有量が求まる。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100 なお、本発明に係るプロピレンランダム共重合体には、少量のプロピレン異種結合(2,1−結合及び/または1,3−結合)が含まれ、それにより、以下の微小なピークを生じる。
【0025】
正確なエチレン含有量を求めるには、これら異種結合に由来するピークも考慮して計算に含める必要があるが、異種結合由来のピークの完全な分離・同定が困難であり、また異種結合量が少量であることから、本発明におけるエチレン含有量は、実質的に異種結合を含まないチーグラー・ナッタ触媒で製造された共重合体の解析と同じく、<1>〜<7>の関係式を用いて求めることとする。
エチレン含有量のモル%から重量%への換算は以下の式を用いて行う。
エチレン含有量(重量%)=(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100
ここでXは、モル%表示でのエチレン含有量である
【0026】
(3)製造方法
本発明に用いられるプロピレン系樹脂(A)の製造は、メタロセン触媒を用いることを必須とする。
【0027】
(i)メタロセン触媒
メタロセン系触媒としては、本発明に用いられるプロピレン系樹脂(A)を製造できる限りは、特に限定はされるものではないが、本発明の要件を満たすために、例えば、下記に示す様な成分(a)、(b)、および必要に応じて使用する成分(c)からなるメタロセン系触媒を用いることが好ましい。
成分(a):下記の一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物。
成分(b):下記(b−1)〜(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分。
(b−1):有機アルミオキシ化合物が担持された微粒子状担体。
(b−2):成分(a)と反応して成分(a)をカチオンに変換することが可能なイオン性化合物またはルイス酸が担持された微粒子状担体。
(b−3):固体酸微粒子。
(b−4):イオン交換性層状珪酸塩。
成分(c):有機アルミニウム化合物。
【0028】
成分(a)としては、下記一般式(1)で表される遷移金属化合物から選ばれる少なくとも1種のメタロセン遷移金属化合物を使用することができる。
Q(C
5H
4−aR1
a)(C
5H
4−bR2
b)MeXY (1)
【0029】
ここで、Qは2つの共役五員環配位子を架橋する2価の結合性基を表し、例えば、2価の炭化水素基、シリレン基ないしオリゴシリレン基、炭化水素基を置換基として有するシリレン基あるいはオリゴシリレン基、または炭化水素基を置換基として有するゲルミレン基などが例示される。この中でも好ましいものは2価の炭化水素基と炭化水素基を置換基として有するシリレン基である。
XおよびYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、窒素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基またはケイ素含有炭化水素基を示し、このうちで好ましいものとしては、水素、塩素、メチル、イソブチル、フェニル、ジメチルアミド、ジエチルアミド基などを例示することができる。XおよびYは、それぞれ独立に、すなわち同一でも異なっていてもよい。
【0030】
R1とR2は、水素、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、または、リン含有炭化水素基を表す。炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、フェニル基、ナフチル基、ブテニル基、ブタジエニル基などが例示される。また、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、または、リン含有炭化水素基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、トリメチルシリル基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ピラゾリル基、インドリル基、ジメチルフォスフィノ基、ジフェニルフォスフィノ基、ジフェニルホウ素基、ジメトキシホウ素基などを典型的な例として例示できる。これらの中で、炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基であることが特に好ましい。ところで、隣接したR1とR2は、結合して環を形成してもよく、この環上に炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、ケイ素含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基、酸素含有炭化水素基、ホウ素含有炭化水素基、または、リン含有炭化水素基からなる置換基を有していてもよい。
Meは、チタン、ジルコニウム、ハフニウムの中から選ばれる金属原子であり、好ましくはジルコニウム、ハフニウムである。
なお、aおよびbは、置換基の数である。
【0031】
以上において記載した成分(a)の中で、本発明に用いられるプロピレン系樹脂成分(ア)の製造に好ましいものは、炭化水素置換基を有するシリレン基、ゲルミレン基あるいはアルキレン基で架橋された置換シクロペンタジエニル基、置換インデニル基、置換フルオレニル基、置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物であり、特に好ましくは、炭化水素置換基を有するシリレン基、あるいはゲルミレン基で架橋された2,4−位置換インデニル基、2,4−位置換アズレニル基を有する配位子からなる遷移金属化合物である。
【0032】
非限定的な具体例としては、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチルベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−イソプロピル−4−(3、5−ジイソプロピルフェニル)インデニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−プロピル−4−フェナントリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−イソプロピル−4−フェニルアズレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(2−フルオロビフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{2−エチル−4−(4−t−ブチル−3−クロロフェニル)アズレニル}ジルコニウムジクロリドなどがあげられる。これらの具体例の化合物のシリレン基をゲルミレン基に、ジルコニウムをハフニウムに置き換えた化合物も好適な化合物として例示される。なお、触媒成分は本発明の重要要素ではないので、煩雑な列記を避け、代表的な例示に限定しているが、これにより本発明の有効範囲が制限されることが無いのは自明のことである。
【0033】
成分(b)としては、前記した成分(b−1)〜成分(b−4)から選ばれる少なくとも1種の固体成分を使用する。これらの各成分は、公知のものであり、公知技術の中から適宜選択して使用することができる。その具体的な例示や製造方法については、特開2002−284808公報、特開2002−53609号公報、特開2002−69116号公報、特開2003−105015号公報などに詳細な例示がある。
前記成分(b)の中で、特に好ましいものは、成分(b−4)のイオン交換性層状珪酸塩であり、さらに好ましい物は、酸処理、アルカリ処理、塩処理、有機物処理などの化学処理が施されたイオン交換性層状珪酸塩である。
【0034】
必要に応じて成分(c)として用いられる有機アルミニウム化合物の例は、下記一般式(2)
AlRaP3−a (2)
(式中、Rは、炭素数1〜20の炭化水素基、Pは、水素、ハロゲンまたはアルコキシ基、aは、0<a≦3の数を表わす。)で示されるトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウムまたはジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノメトキシドなどのハロゲンもしくはアルコキシ含有アルキルアルミニウムである。またこの他に、メチルアルミノキサンなどのアルミノキサン類なども使用できる。これらのうち特にトリアルキルアルミニウムが好ましい。
【0035】
触媒の形成方法としては、前記の成分(a)と成分(b)及び必要に応じて成分(c)を接触させて触媒とする。なお、その接触方法は触媒を形成することができる方法であれば特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0036】
また、成分(a)と(b)及び(c)の使用量は、任意である。例えば、成分(b)に対する成分(a)の使用量は、成分(b)1gに対して、好ましくは0.1〜1,000μmol、特に好ましくは0.5〜500μmolの範囲である。成分(b)に対する成分(c)の使用量は、成分(b)1gに対し、好ましくは遷移金属の量が0.001〜100μmol、特に好ましくは0.005〜50μmolの範囲である。
さらに、本発明にて使用される触媒は、予めオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付すことが好ましい。
【0037】
(ii)重合プロセス
プロピレン系樹脂組成物(A)の重合形式としては、スラリー法、バルク法、気相法など任意の重合方法が可能である。また、これらの重合形式を組み合わせて行うことも可能である。バルク法と気相法の中間的な条件として、超臨界条件を用いることも可能であるが、実質的には気相法と同等であるため、特に区別することなく気相法に含める。
どのプロセスを用いても特に問題はないが、本発明において、Tmが比較的低い、即ち比較的結晶性の低いプロピレン系樹脂組成物(A)を製造する場合には、反応器への生成物の付着などの問題を避けるために気相法を用いることが好ましい。また、バッチ法と連続法のいずれを用いることも可能であるが、一般的には生産性の観点から連続法を用いることが望ましい。
【0038】
(iii)その他の重合条件
重合温度は、通常用いられている温度範囲であれば、特に問題なく用いることができる。具体的には、0℃〜200℃、より好ましくは40℃〜100℃の範囲を用いることができる。
重合圧力は、選択するプロセスによって最適な圧力には差異が生じるが、通常用いられている圧力範囲であれば、特に問題なく用いることができる。具体的には、大気圧に対する相対圧力で0MPaより大きく200MPaまで、より好ましくは0.1MPa〜50MPaの範囲を用いることができる。この際窒素などの不活性ガスを共存させてもよい。
また、分子量調整剤として水素を用いる場合は、プロピレンに対するモル比で1.0×10
−6以上、1.0×10
−2以下の範囲で用いることができる。好ましくは、1.0×10
−5以上、0.9×10
−2以下である。
【0039】
メタロセン触媒を用いて重合されるプロピレン系樹脂(A)としては、種々の市販品から所望の物性を有するものを選択して使用することもでき、例えば、日本ポリプロ社製ウィンテックシリーズが好適に使用できる。
【0040】
2.樹脂(B)
本発明に用いられる樹脂(B)は次の要件(B−1)および(B−2)を満足する。
要件(B−1):樹脂(B)の全光線透過率が、試験片厚み2mmにおいて85%以上である。
要件(B−2): 樹脂(B)の霞度が、試験片厚み2mmにおいて2%以下である。
【0041】
2.1.樹脂(B)
本発明に用いられる樹脂(B)は、全光線透過率が高くかつ霞度が非常に低いことを特徴とし、メタロセン触媒により重合されたプロピレン系樹脂組成物(A)と組み合わせることにより、光線透過率と拡散性に優れた樹脂組成物およびその成形体を実現する。
本発明において、樹脂(B)として用いられる樹脂としては有機ガラスと呼ばれる透明樹脂があげられ、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等があげられる。特に、ポリスチレンおよびビスフェノールAと炭酸から作られる芳香族ポリカーボネートが機械物性の観点からも好ましい。
樹脂(B)の具体例としては、ポリスチレンとしてはPSジャパン社製HF−77や、ポリカーボネートとしては三菱化学エンジニアリングプラスチック社製ノバレックス7022Aなどを挙げることが出来る。
【0042】
(1)各要件
(B−1)全光線透過率について
本発明に用いられる樹脂(B)の試験片厚み2mmにおける全光線透過率は85%以上であり、好ましくは87%以上であり、より好ましくは89%以上である。上限については特に制限はないが、通常95%以下である。本発明に用いられる樹脂(B)の全光線透過率を本発明の規定の範囲とすることにより、本発明の樹脂組成物において良好な光線透過率と高い拡散性を両立することができる。すなわち、全光線透過率が85%未満であると、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物における光線透過率が低下するおそれがある。なお、本明細書において全光線透過率は、試験片厚み2mmのシート片を用い、JIS K7105に準拠し測定した値である。
【0043】
(B−2)霞度について
本発明に用いられる樹脂(B)の試験片厚み2mmにおける霞度は2%以下であり、好ましくは1.5%以下であり、より好ましくは1%以下である。下限については特に制限はないが、通常0.1%以上である。本発明に用いられる樹脂(B)の霞度を本発明の規定の範囲とすることにより、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物において良好な光線透過率と高い拡散性を両立することができる。すなわち、霞度が2%を超えると光線透過率が低下するおそれがある。なお、本明細書において霞度は、試験片厚み2mmのシート片を用い、JIS K7105に準拠して測定した値である。
【0044】
(2)含有量
本発明における樹脂(B)の含有量は、プロピレン系樹脂(A)100重量部に対して0.4〜3.5重量部、好ましくは0.5〜3.3重量部、より好ましくは0.6〜3重量部、さらに好ましくは0.8〜2重量部となる。樹脂(B)の含有量が本発明の規定の範囲内であることにより、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物およびそれからなる成形体は、全光光線透過率、および拡散性が良好なという本発明の特徴をすべて満足することが可能となる。すなわち、樹脂(B)の含有量が3.5重量部を超えると全光線透過率が低下する傾向となり、0.4重量部未満であると拡散性が低下するおそれがある。
【0045】
3.その他の要件
本発明に用いられるプロピレン系樹脂(A)および樹脂(B)は要件(A−1)〜(A−4)および要件(B−1)、(B−2)に加えて、要件(C−1)および(C−2)を満たす必要がある。
要件(C−1):プロピレン系樹脂(A)と樹脂(B)とが非相溶である。
要件(C−2):プロピレン系樹脂(A)と樹脂(B)との屈折率の差が0.04以上である。
【0046】
(1)各要件
(C−1):相溶について
本発明に用いられるプロピレン系樹脂(A)と樹脂(B)は非相溶である必要がある。相溶した場合には、拡散性が大きく低下するおそれがある。本発明のポリオレフィン系樹脂組成物が非相溶であることは、相分離構造が、プロピレン系樹脂(A)の海相と、樹脂(B)の島相とからなる海−島構造を有することを意味する。
この形態は、例えば以下のようにして観察することができる。ダイヤモンドナイフを装着したウルトラミクロトーム(例えば、ライカ社製UC6)とクライオシステムを用いて、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を−120℃に冷却して切削し、その切削鏡面をイオンエッチングする。ポリマー種によりエッチング速度が異なるために、微細構造に対応した凹凸が形成され相構造の観察が可能になる。このように処理した試料を走査型電子顕微鏡(例えば、日立社製S800)で分散相構造を観察することができる。
【0047】
(C−2)屈折率について
本発明に用いられるプロピレン系樹脂(A)と樹脂(B)の屈折率の差は0.04以上であり、好ましくは0.06以上、さらに好ましくは0.08以上、より好ましくは0.09以上である。又上限は通常0.3、好ましくは0.2である。なお、本願に於ける「屈折率の差」とは、プロピレン系樹脂(A)と樹脂(B)の屈折率の差の絶対値のことをいう。プロピレン系樹脂(A)と樹脂(B)の屈折率の差をこの様な範囲とすることにより、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物において良好な拡散性と全光線透過率を達成することが可能となる。即ち、屈折率の差が0.04未満であると拡散性が大きく低下するおそれがあり、0.3を超えると屈折による光の散乱が強く起こり、全光線透過率が悪化するおそれが有る。
【0048】
なお、種々の樹脂の屈折率については多くの報告が知られており、例えば「成形加工におけるプラスチック材料(1999年、シグマ出版発行)」には、ポリプロピレンの結晶部の屈折率は1.52、非晶部は1.48であることからポリプロピレンの屈折率は1.50、ポリスチレンは1.59、ポリメタクリレートは1.49、ポリカーボネートの結晶部は1.65、非晶部が1.59であることからポリカーボネートの屈折率は1.62と報告されている。
【0049】
4.任意添加成分
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、任意添加成分として、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、変性ポリオレフィン、分子量降下剤、潤剤、酸化防止剤などの各種任意添加成分を含有することができる。
任意添加成分は、2種以上を併用してもよく、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物に直接添加してもよいし、プロピレン系樹脂(A)、樹脂(B)の各成分に予め添加されていてもよく、それぞれの成分においても2種以上併用することもできる。本発明において、任意添加成分の含有割合は特に限定されないが、通常、ポリオレフィン系樹脂組成物100重量部に対して0.01〜0.5重量部程度であり、その目的に応じて適宜選択される。
【0050】
(1)分子量降下剤
分子量降下剤は、成形性(流動性)などの更なる付与、更なる向上に有効である。
分子量降下剤は、例えば、各種の有機過酸化物や、分解(酸化)促進剤と称されるものなどが使用でき、有機過酸化物が好適である。
有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルパーアセテート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3、t−ブチル−ジ−パーアジペート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、メチル−エチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジキュミルパーオキサイド、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルキュミルパーオキサイド、1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス−t−ブチルパーオキシブタン、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−イソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−サイメンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラ−メチルブチルハイドロパーオキサイド及び2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−(ハイドロパーオキシ)ヘキサンのグループから選ばれる1種または2種以上からなるものを挙げることができる。
【0051】
(2)潤剤
潤剤は、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物及びその成形体の成形時の離型性などの付与、向上に有効である。
潤剤としては、例えば、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド等の脂肪酸アミド、ステアリン酸ブチル、シリコーンオイルなどを挙げることができる。
【0052】
(3)酸化防止剤
酸化防止剤は、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物及びその成形体の品質劣化の防止に有効である。
酸化防止剤として、例えば、フェノール系、リン系やイオウ系の酸化防止剤などを挙げることができる。
【0053】
(4)その他
また、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、プロピレン系樹脂(A)以外のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂やポリステル樹脂などの熱可塑性樹脂熱可塑性エラストマー(ゴム成分)などを含有することができる。
これらの任意成分は、種々の製品が多くの会社から市販されており、その目的に応じて、所望の製品を入手し、使用することができる。
【0054】
5.ポリオレフィン系樹脂組成物の製造方法
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、プロピレン系樹脂(A)及び樹脂(B)を、必要に応じ任意添加成分を加え、前記含有量で、従来公知の方法で配合し、溶融混練する混練工程を経ることにより製造することができる。
混合は、通常、タンブラー、Vブレンダー、リボンブレンダーなどの混合機器を用いて行い、溶融混練は、通常、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー、撹拌造粒器などの混練機器を用いて(半)溶融混練し、造粒する。(半)溶融混練・造粒して製造する際には、前記各成分の配合物を同時に混練してもよく、また性能向上をはかるべく各成分を分割して混練する、すなわち、例えば、先ず成分プロピレン系樹脂(A)の一部または全部と、樹脂(B)の一部とを混練し、その後に残りの成分を混練・造粒するといった方法を採用することもできる。
【0055】
6.成形体の製造方法および特性
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、シートとしたときに全光線透過率、霞度、光
拡散性に優れるものである。成形シートとしては射出成形もしくは押出し成形により成形され、光拡散性射出シートや光拡散性押出しシート(以下、纏めて「シート」と記載する場合が有る)とされるのが好ましい。シートは、厚さが2mmのとき、全光線透過率が、56%以上であることが好ましく、57%以上であることがより好ましく、58%以上であることが更に好ましく、60%以上であることが特に好ましい。また、本発明のシートは、厚さが2mmのとき、霞度が、98%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましい。全光線透過率と霞度が、「全光線透過率が60%以上かつ霞度が99%以上」であると、光透過性及び拡散性のバランス優れるものである。
なお、全光線透過率および霞度は、成形シート片を用い、JIS K7105に準拠して測定した値である。
以上のとおり、本発明のポリオレフィン系樹脂組成物及びこれを用いた光拡散性射出シート及び光拡散性押出しシートは、軽量で、ポリオレフィンによりリサイクル可能で、かつ、光透過・拡散性のバランスに優れ、光拡散性シート材料として有用である。
したがって、LED照明カバー、バックライト型液晶パネル、リアプロジェクタースクリーン等に好ましく適用することができる。
【実施例】
【0056】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例で用いた評価法、分析の各法および材料は、以下の通りである。
【0057】
1.評価方法
(1)試験片の調製
下記の要領で試験片を作製した。
・成形機:東芝機械社製EC20型射出成形機。
・金型:曲げ弾性率評価用試験片(80×40×2t(mm))1個取り。
・成形条件:成形温度200℃、金型温度40℃、射出圧力50MPa、射出時間8秒、冷却時間12秒。
【0058】
(2)全光線透過率、霞度:
上記(1)で作成した試験片を用い、JIS K7105に準拠し測定した。
【0059】
(3)拡散度の測定:
変角光度計GC5000L(日本電色工業社製)により、上記(1)で作成した試験片を用いて試料(厚さ:2.0mm)の透過光に対し受光部を1°間隔で自動変角させながら±85°範囲で各角度の透過強度を測定し、下記式によって、拡散度を算出した。尚、拡散度は大きいほど良好な拡散性を意味し、0.29以上であれば良好であり、0.30以上であると特に良好である。
(拡散度)=〔T(40)/T(5)〕
*但し、T:透過光強度 ()の値は角度(ラジアン)
(4)相溶/非相溶
上記(1)で得られた試験片を−120℃に冷却し、ダイヤモンドナイフを装着したウルトラミクロトーム(ライカ社製UC6)とクライオシステムを用いて切削した。その切削面をイオンエッチング処理し、走査型電子顕微鏡(日立社製S800)で観察した。観察面において、樹脂(B)の分散粒子が観察されたものを「非相溶」であると判断した。
(5)屈折率
「成形加工におけるプラスチック材料(1999年、シグマ出版発行)」より、ポリプロピレンの結晶部の屈折率は1.52、非晶部は1.48であることからポリプロピレンの屈折率は1.50、ポリスチレンは1.59、ポリメタクリレートは1.49、ポリカーボネートの結晶部は1.65、非晶部が1.59であることからポリカーボネートの屈折率は1.62とした。
(6)メルトフローレート(MFR)
各サンプルにおいて、JIS K7210:1999のA法、条件Mに準拠し、試験温度=230℃、荷重=2.16kgで測定した。
(7)エチレン含量
プロトン完全デカップリング法により測定した
13C−NMRスペクトルを解析することにより求めた。測定方法の詳細は前述の通りである。
【0060】
」
2.原材料:以下の市販の樹脂を使用した。
(1)プロピレン系樹脂(A)
PP−1:ウィンテックWMG03(日本ポリプロ社製、プロピレン−エチレンランダム共重合体)
PP−2:ウィンテックWMG03UX(日本ポリプロ社製、プロピレン−エチレンランダム共重合体)
PP−3:ウィンテックWFX6(日本ポリプロ社製、プロピレン−エチレンランダム共重合体)
PP−4:ノバテックMA1B(日本ポリプロ社製、プロピレン単独重合体)
PP−5:ノバテックBC03B(日本ポリプロ社製、プロピレン単独重合体)
PP−6:ノバテックMG03B(日本ポリプロ社製、プロピレン−エチレンランダム共重合体)
【0061】
」
【表3】
【0062】
(2)樹脂(B)
B−1:ポリスチレン(PS):PSジャパン社製、HF−77
B−2:ポリメタクリレート(PMMA):三菱レイヨン社製、アクリペットMD
B−3:ポリカーボネート(PC):三菱化学エンジニアリングプラスチック社製、ノバレックス7022A
B−4:エチレンブテンゴム:三井化学社製、タフマーA4050S
【0063】
【表4】
【0064】
3.[実施例1〜5及び比較例1〜9]
(1)樹脂組成物の製造
前記成分(A)、(B)を、下記の添加剤とともに表5に示す割合で配合し、下記の条件で混練、造粒し、樹脂ペレットを製造した。
この際、前記成分(A)、(B)からなる組成物全体100重量部当たり、BASF社製IRGANOX1010を0.1重量部、BASF社製IRGAFOS168を0.05重量部、配合した。
混練装置:テクノベル社製「KZW−15−MG」型2軸押出機。
混練条件:温度=200℃、スクリュー回転数=400rpm、吐出量=3kg/Hr。
【0065】
(2)樹脂組成物の成形
得られた樹脂ペレットを用いて、前記条件で射出成形し、樹脂組成物の各種試験片とした。
【0066】
(3)評価
前記の各種試験片を用いて、性能評価を行った。結果を表5に示す。なお、「屈折率の差」とは、プロピレン系樹脂(A)と樹脂(B)の屈折率の差の絶対値のことを示している。
【0067】
【表5】
【0068】
4.評価
表5に示す結果から本発明の樹脂組成物およびその成形体の発明要件を満たしている実施例1〜5においては、全光線透過率、霞度、拡散度が良好である。実施例2では全光線透過率が高いが拡散度も高くそのバランスに優れている。一方、実施例3では全光線透過率はわずかに実施例2よりは低いが、拡散度は実施例2より高くなっておりそのバランスに優れている。
一方、上記発明の特定事項を満たさない比較例においては、比較例1〜9に示す組成を持った樹脂組成物およびその成形体は、これらのバランスが不良で、実施例1〜5のものに対して見劣りしている。
例えば、比較例1および3では全光線透過率は高いが40度における拡散光が観測されないために拡散度が0となっている。これは、屈折率の違う樹脂(B)が含まれないもしくは含まれていても少量のため、光の拡散が十分に起こらなかったためである。比較例2においては拡散度は高いが、全光線透過率が大きく劣っている。これは、樹脂(B)の配合量が多く拡散が強く起こったために、光の透過率が低下したためと考えられる。比較例4においては全光線透過率は高いが拡散度は非常に劣っている。これは、プロピレン系樹脂(A)および樹脂(B)の屈折率の差がなく拡散が起こらなかったためである。比較例5では拡散度が劣る結果となっている。これは、プロピレン系樹脂(A)の霞度が低く拡散が劣るために、樹脂(B)と組み合わせても拡散度に劣る結果となっている。比較例6および7では全光線透過率が劣る結果となっている。これは、プロピレン系樹脂(A)のエチレン含量が低くまたチーグラー触媒を用いて重合されており全光線透過率が低いことに起因する。比較例8では拡散度に劣る結果となっている。これは、樹脂(B)において全光線透過率が低く霞度も高いことから拡散への寄与がほとんどないためである。比較例9では全光線透過率と拡散度がわずかに実施例1〜5に劣る結果となっている。プロピレン系樹脂組成物(A)がチーグラー触媒で重合されていることから、メタロセン触媒に比べて規則性および分子量分布が広いことから全光線透過率および霞度のバランスが劣っていることによると考えられる。