(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記揺動摩擦板が、前記支持板部の外側面又は内側面と、前記押圧部の内側面又は前記変位ブラケットの外側面との間部分に、それぞれ挟持された第一、第二両揺動摩擦板であって、前記ステアリングホイールを上端位置又は下端位置から中央位置まで移動させる場合の前記第一、第二両揺動摩擦板の揺動方向が互いに反対方向であり、同じく中央位置から下端位置又は上端位置まで移動させる場合の前記第一、第二両揺動摩擦板の揺動方向が互いに反対方向である、請求項1に記載したステアリングホイールの位置調節装置。
【背景技術】
【0002】
自動車用の操舵装置は、
図14に示す様に構成して、ステアリングホイール1の回転をステアリングギヤユニット2の入力軸3に伝達し、この入力軸3の回転に伴って左右1対のタイロッド4、4を押し引きして、前車輪に舵角を付与する様にしている。前記ステアリングホイール1は、ステアリングシャフト5の後端部に支持固定しており、このステアリングシャフト5は、円筒状のステアリングコラム6を軸方向に挿通した状態で、このステアリングコラム6に回転自在に支持している。又、前記ステアリングシャフト5の前端部は、自在継手7を介して中間シャフト8の後端部に接続し、この中間シャフト8の前端部を、別の自在継手9を介して、前記入力軸3に接続している。尚、本明細書及び特許請求の範囲全体で、前後方向、左右方向(幅方向)、及び上下方向は、特に断らない限り、車両の前後方向、左右方向(幅方向)、及び上下方向を言う。
【0003】
上述の様な操舵装置で、運転者の体格や運転姿勢に応じ、前記ステアリングホイール1の上下位置を調節する為のチルト機構や、前後位置を調節する為のテレスコピック機構が、従来から広く知られている。このうちのチルト機構を構成する為に、前記ステアリングコラム6の前端部を車体10に対して、左右方向に設置した枢軸11を中心とする揺動変位を可能に支持している。又、前記ステアリングコラム6の後端寄り部分に固定した変位ブラケット12を、前記車体10に支持した支持ブラケット13に対して、上下方向及び前後方向の変位を可能に支持している。このうち、前後方向の変位を可能とするテレスコピック機構を構成する為に、前記ステアリングコラム6を、アウタコラム14とインナコラム15とをテレスコープ状に伸縮自在に組み合わせた構造とし、前記ステアリングシャフト5を、アウタシャフト16とインナシャフト17とを、スプライン係合等により、トルク伝達可能に、且つ、伸縮可能に組み合わせた構造としている。尚、図示の例は、電動モータ18を補助動力源として前記ステアリングホイール1を操作する為に要する力の低減を図る、電動式パワーステアリング装置も組み込んでいる。
【0004】
チルト機構やテレスコピック機構で、電動式のものを除く手動式の構造の場合には、調節レバーの操作に基づいて、前記ステアリングホイール1の位置を調節可能な状態としたり、調節後の位置に固定できる様にしている。この様な手動式のチルト機構やテレスコピック機構の構造に就いては、従来から各種構造のものが広く知られており、且つ、実施されている。例えば、
図14に示した構造の場合には、前記アウタコラム14に固設した変位ブラケット12に、前後位置調節方向であるこのアウタコラム14の軸方向に長い、前後方向長孔19を形成している。又、前記支持ブラケット13は、前記変位ブラケット12を左右両側から挟む、1対の支持板部20を備えており、これら両支持板部20の互いに整合する部分に、それぞれ上下方向に長い、上下方向長孔21を形成している。これら両上下方向長孔21は、一般的には、前記枢軸11を中心とする部分円弧状である。そして、これら両上下方向長孔21と前記前後方向長孔19とに、調節ロッド22を挿通している。この調節ロッド22には、前記両支持板部20を左右方向両側から挟む状態で1対の押圧部を設けており、調節レバーの操作に基づいて作動する拡縮装置により、前記両押圧部同士の間隔を拡縮可能としている。
【0005】
前記ステアリングホイール1の上下位置又は前後位置を調節する際には、前記調節レバーを所定方向(一般的には下方)に揺動させる事により、前記両押圧部同士の間隔を拡げる。これにより、前記両支持板部20の内側面と前記変位ブラケット12の両外側面との間に作用している摩擦力を小さくする。そして、この状態で、前記調節ロッド22が、前記両上下方向長孔21及び前記前後方向長孔19内で変位できる範囲で、前記ステアリングホイール1の位置を調節する。調節後は、前記調節レバーを前記所定方向とは逆方向(一般的には上方)に揺動させる事により、前記両押圧部同士の間隔を縮める。これにより、前記摩擦力を大きくして、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持する。
【0006】
又、上述したステアリング装置は、衝突事故の際に、運転者の身体が前記ステアリングホイール1にぶつかる、二次衝突が発生した場合に、運転者に加わる衝撃荷重を緩和すべく、このステアリングホイール1が前方に変位する事を許容する機能を備える。この為に、具体的には、前記支持ブラケット13を前記車体10に対し、二次衝突時の衝撃により前方への離脱を可能に支持する構造を採用している。この様な構造を備えたステアリング装置の場合、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持する力、即ち、前記支持ブラケット13に対する前記アウタコラム14の保持力が弱いと、二次衝突の発生時に、このアウタコラム14が前記支持ブラケット13に対し不用意に移動する可能性がある。そして、移動した場合には、この支持ブラケット13に対する衝撃の加わり方が変化する為、この支持ブラケット13を前記車体10から離脱させる事に基づく衝撃吸収機構の設計が難しくなる可能性がある。
【0007】
一方、前記調節レバーの操作量や操作力を大きくする事なく、前記支持ブラケット13に対する前記アウタコラム14の保持力を大きくする為には、この保持力を確保する為の摩擦面の数を増やす事が好ましい。この様な事情に鑑みて、特許文献1には、ステアリングコラムに支持した摩擦板と、支持ブラケットに支持した摩擦板とを、左右方向に重ね合わせる事により、前記摩擦面の数を増やす構造が記載されている。ところが、この特許文献1に記載された構造の場合には、前記各摩擦板を、前記ステアリングコラム又は前記支持ブラケットに対し、左右方向の変位のみを可能に支持する構成を採用している。この為、前記摩擦面の数を増やす為に必要となる摩擦板の枚数が多くなる。従って、前記摩擦面を増やす事に伴って生じる、左右方向寸法、部品点数及び重量の増大量が、それぞれ大きくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の様な事情に鑑み、小さく、しかも少ない摩擦板により、ステアリングホイールを調節後の位置に保持する力を大きくできて、小型・軽量化及び設計の自由度の向上を図り易いステアリングホイールの位置調節装置の構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のステアリングホイールの位置調節装置は、ステアリングコラムと、変位ブラケットと、コラム側貫通孔と、支持ブラケットと、上下方向長孔と、調節ロッドと、1対の押圧部と、調節レバーとを備える。
このうちのステアリングコラムは、後端部にステアリングホイールを支持固定したステアリングシャフトを回転自在に支持しており、筒状である。
又、前記変位ブラケットは、前記ステアリングコラムの一部に固設している。
又、前記コラム側貫通孔は、前記変位ブラケットに、この変位ブラケットを幅方向に貫通する状態で設けている。
又、前記支持ブラケットは、前記変位ブラケットを幅方向両側から挟持する左右1対の支持板部を備え、車体に支持される。
又、前記上下方向長孔は、前記両支持板部の互いに整合する部分に設けたもので、上下方向に長い。
又、前記調節ロッドは、前記コラム側貫通孔及び前記上下方向長孔を幅方向に挿通する状態で設けている。
又、前記両押圧部は、前記調節ロッドの両端部で、前記両支持板部の外側面から突出した部分に設けている。
更に、前記調節レバーは、前記調節ロッドの一端部に設けたもので、この調節ロッドを中心として回転する(調節ロッドと共に回転する場合も含む)事により、前記両押圧部同士の間隔を拡縮する。
【0011】
特に、本発明のステアリングホイールの位置調節装置の場合、前記支持板部の外側面又は内側面と、前記押圧部の内側面又は前記変位ブラケットの外側面との間部分のうちの少なくとも1箇所の間部分に、揺動摩擦板を挟持している。
この揺動摩擦板の基端部を、前記支持板部の内側面又は外側面のうちで、前記上下方向長孔の上下方向に関する中央位置を通り、この中央位置に於けるこの上下方向長孔の長さ方向又は接線方向に直交する方向の仮想直線上に位置する部分に設けられ、前記調節ロッドと平行な揺動支持軸に枢支する。又、前記揺動摩擦板の先半部に、この揺動摩擦板の揺動方向片端部から他端部に向かうに従って、前記揺動支持軸との間の距離が長くなる方向に形成されたガイド長孔を設ける。そして、前記調節ロッドをこのガイド長孔に、このガイド長孔に沿った変位のみを可能に係合する。そして、前記ステアリングホイール
を上端位置又は下端位置から中央位置まで移動させる場合の前記揺動摩擦板の揺動方向と、
同じく中央位置から下端位置又は上端位置まで移動させる場合のこの揺動摩擦板の揺動方向とを互いに反対方向とする。
【0012】
上述の様な本発明のステアリングホイールの位置調節装置を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、前記揺動摩擦板を、前記支持板部の外側面又は内側面と、前記押圧部の内側面又は前記変位ブラケットの外側面との間部分に、それぞれ挟持された第一、第二両揺動摩擦板とする。そして、前記ステアリングホイール
を上端位置又は下端位置から中央位置まで移動させる場合の前記第一、第二両揺動摩擦板の揺動方向を互いに反対方向と
し、同じく中央位置から下端位置又は上端位置まで移動させる場合の前記第一、第二両揺動摩擦板の揺動方向が互いに反対方向とする。
【0013】
上述の様な本発明を実施する場合に好ましくは、請求項
3に記載した発明の様に、前記揺動摩擦板を、鋼板若しくはステンレス鋼板、又は、アルミニウム系合金板製とする。
又、好ましくは請求項
4に記載した発明の様に、前記揺動摩擦板の外側面に、対向する面との間の摩擦係数を大きくする為の表面処理を施す事により、表面処理層を設ける。
【発明の効果】
【0014】
上述の様に構成する本発明のステアリングホイールの位置調節装置によれば、小さく、しかも少数の揺動摩擦板によっても、ステアリングホイールを調節後の位置に保持する力を大きくできて、小型・軽量化及び設計の自由度の向上を図り易くできる。
即ち、本発明の場合、ステアリングホイールを調節後の位置に保持すべく、1対の押圧部同士の間隔を縮めた状態では、揺動摩擦板が、支持板部の外側面又は内側面と、この押圧部の内側面又は変位ブラケットの外側面との間で強く挟持された状態となる。この状態から前記ステアリングホイールの上下位置を動かそうとすると、前記揺動摩擦板の両側面と、前記支持板部の外側面又は内側面、及び、前記押圧部の内側面又は変位ブラケットの外側面とが強く擦れ合う事となる。要するに、前記ステアリングホイールを所望の位置に保持した状態から、このステアリングホイールの上下位置を動かそうとした場合、前記揺動摩擦板の両側面である摩擦面を滑らせつつ、この揺動摩擦板を揺動させる必要がある。この為、前記ステアリングホイールを調節後の位置に保持する力を強くできる。又、本発明の場合、この様なステアリングホイールを調節後の位置に保持する力を強くできる構造を、前述した特許文献1に記載の構造の様に、複数枚の摩擦板を重ね合わせる事なく、少ない揺動摩擦板で実現できる。従って、前記ステアリングホイールの位置調節装置の左右方向寸法、部品点数及び重量が増大するのを抑えて、このステアリングホイールの位置調節装置の小型・軽量化を図れる。
【0015】
更に、本発明の場合、前記ステアリングホイール
を上端位置又は下端位置から中央位置まで移動させる場合の前記揺動摩擦板の揺動方向と、
同じく中央位置から下端位置又は上端位置まで移動させる場合のこの揺動摩擦板の揺動方向とを互いに反対方向としている。この為、この揺動摩擦板が揺動する大きさ(揺動角度)を、この
揺動摩擦板の揺動方向が、前記ステアリングホイールの位置調節できる全範囲で同じとした場合と比較して、小さく抑える事ができ、設計の自由度を確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施の形態の第1例]
図1〜3は
、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例のステアリングホイールの位置調節装置は、ステアリングコラム6aと、変位ブラケット12aと、コラム側貫通孔である前後方向長孔19aと、ステアリングシャフト5aと、支持ブラケット13aと、左右1対の上下方向長孔21a、21aと、調節ロッド22aと、1対の押圧部24a、24bと、調節レバー23と、揺動支持軸25と、揺動摩擦板26とを備える。
このうちのステアリングコラム6aは、前側に配置されたインナコラム15aの後端部と後側に配置されたアウタコラム14aの前端部とを軸方向の変位を可能に嵌合して成るテレスコピックステアリングコラムで、全体を円筒状としている。又、前記変位ブラケット12aは、アルミニウム系合金等の軽合金をダイキャスト成形する事により、前記アウタコラム14aと一体に構成している。前記変位ブラケット12aは、幅方向中央部に形成したスリット27により、全幅を弾性的に拡縮可能としている。前記前後方向長孔19aは、前記変位ブラケット12aの一部で、前記スリット27を挟んで互いに整合する位置に、この変位ブラケット12aを幅方向に貫通する状態で設けている。
【0018】
又、前記ステアリングシャフト5aは、後側に配置したアウタシャフト16aの前端部と前側に配置したインナシャフト17aの後端部とを、スプライン係合等により、トルクの伝達を可能に、且つ、伸縮可能に組み合わせて成る。この様なステアリングシャフト5aは、前記アウタシャフト16aの中間部後端寄り部分を前記アウタコラム14aの後端部に、前記インナシャフト17aの中間部前端寄り部分を前記インナコラム15aの前端部に、それぞれ単列深溝型の玉軸受の如く、ラジアル荷重及びスラスト荷重を支障可能な転がり軸受により、回転自在に支持している。従って、前記ステアリングシャフト5aは、前記ステアリングコラム6aの伸縮と共に伸縮する。尚、前記アウタシャフト16aの後端部で前記アウタコラム14aの後端開口よりも後方に突出した部分には、ステアリングホイール1(
図14参照)を支持固定する。
【0019】
又、前記支持ブラケット13aは、鋼板等、必要とする強度及び剛性を確保できる金属板を曲げ形成して成るもので、車体に支持する為の取付板部28と、この取付板部28の下面から垂下された、互いに平行な1対の支持板部20a、20bとを備える。これら両支持板部20a、20bの内側面同士の間隔は、前記変位ブラケット12aの幅寸法に、ほぼ一致する。又、前記両上下方向長孔21a、21aは、前記両支持板部20a、20bの互いに整合する部分に形成しており、前記ステアリングコラム6aの前端部を揺動変位可能に支持した枢軸11aを中心とする部分円弧状である。但し、前記両上下方向長孔21a、21aは、後方に向かう程上方に向かう方向に傾斜する直線状とする事もできる。何れにしても、この様な構成を有する前記支持ブラケット13aは、車体に対して、二次衝突時に加わる衝撃荷重により前方への脱落を可能に、但し、通常時には前記ステアリングコラム6aを充分な剛性を確保できる状態で支持する。
【0020】
又、前記調節ロッド22aは、前記前後方向長孔19a及び前記両上下方向長孔21a、21aを幅方向に挿通する状態で設けている。そして、この様な前記調節ロッド22aの両端部で、前記両支持板部20a、20bの外側面から突出した部分に、前記両押圧部24a、24bを設け、前記調節レバー23により、これら両押圧部24a、24b同士の間隔を拡縮可能としている。この調節レバー23によりこれら両押圧部24a、24b同士の間隔を拡縮する為の構造は特に問わない。例えば1対のカム部材のカム面同士の係合により軸方向寸法を拡縮可能としたカム装置や、調節ロッド22aの先端部に設けた雄ねじ部にナットを螺合する構造を採用する事ができる。何れの構造を採用した場合でも、前記調節レバー23は前記調節ロッド22aの一端部に設け、この調節ロッド22aを中心として回転する事により、前記両押圧部24a、24b同士の間隔を拡縮する。
【0021】
又、前記揺動支持軸25は、前記ステアリングホイール1の上下位置を調節する際に、前記調節ロッド22aに対し相対変位する部分である、前記両支持板部20a、20bのうちの一方(
図2の左方)の支持板部20aの外側面(
図2の左側面)に、前記調節ロッド22aと平行に設けている。前記揺動支持軸25の設置位置は、前記一方の支持板部20aの外側面のうち、この一方の支持板部20aに設けた上下方向長孔21aの上下方向に関する中央位置を通り、この中央位置に於けるこの上下方向長孔21aの接線方向(この上下方向長孔21aを直線状とした場合、この上下方向長孔21aの長さ方向)に直交する方向の仮想直線α(
図1参照)上で、この上下方向長孔21aよりも後方としている。但し、前記揺動支持軸25aの設置位置は、前記仮想直線α上であれば、前記上下方向長孔21aよりも前方とする事もできる。何れにしても、この様な構造により、前記調節ロッド22a及び前記揺動支持軸25aの中心軸同士の間の距離L(
図1参照)を、この調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a内で移動可能な範囲のうちの中央部に位置する場合{
図3の(B)に示す状態の場合}に、最小値L
MIN{
図3の(B)参照}となる様にしている。これと同時に、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a内の上端部に位置する場合{
図3の(A)に示す状態}の、この調節ロッド22a及び前記揺動支持軸25aの中心軸同士の間の距離L
Tと、同じく下端部に位置する場合{同図の(C)に示す状態}の、これら調節ロッド22a及び揺動支持軸25aの中心軸同士の間の距離L
Lとを互いに同じにしている(L
T=L
L>L
MIN)。即ち、本例の場合、前記ステアリングホイール1の上下位置の調節に伴い、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a(、及び後述するガイド長孔29)に沿って変位する過程で、前記調節ロッド22aと前記揺動支持軸25との間の距離Lが変化する方向(伸長する方向か短縮する方向か)が、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a内で移動可能な範囲のうちの中央部を境に互いに反対方向となっている。
【0022】
又、前記揺動摩擦板26は、鋼板、ステンレス鋼板或いはアルミニウム系合金等の、必要とする強度及び剛性を確保でき、且つ、相手面である、前記一方の支持板部20aの外側面、及び、前記両押圧部24a、24bのうちの一方(
図2の左方)の押圧部24aの内側面(
図2の右側面)との当接部の摩擦係数を大きくできる金属板により形成された、略扇形の平板部材である。前記揺動摩擦板26は、前記一方の支持板部20aの外側面と前記一方の押圧部24aの内側面との間に挟持すると共に、先半部(幅広部)に設けたガイド長孔29に前記調節ロッド22aを挿通している。このガイド長孔29は、特許請求の範囲に記載した揺動方向片端部である下端部(
図1、3の時計方向後側の端部)から、同じく他端部である上端部(同図の時計方向前側の端部)まで、少しずつでも、前記揺動支持軸25との間の距離が長くなる方向に、滑らかな曲線となる様に形成している。具体的には、前記ガイド長孔29を、前記調節ロッド22aが前記上下方向長孔21a内の中央部に位置する状態{
図3の(B)に示す状態}で、前記仮想直線αよりも下方で、且つ、前記揺動支持軸25よりも後方に位置する点を中心とする部分円弧状としている。そして、この部分円弧のうちでこの調節ロッド22aが係合している部分の接線と、前記揺動支持軸25の中心軸を中心とし、これら調節ロッド22aと揺動支持軸25との間の距離Lを半径とする仮想円弧の接線(前記揺動摩擦板26の揺動方向)との成す角度θが、この調節ロッド22aの上下方向位置に拘わらず、一定となる様にしている。尚、この様な角度θは、10度〜35度とする事が好ましい。そして、前記調節ロッド22aが、前記上下方向長孔21a内で移動可能な範囲のうちの中央部に位置する場合に、この調節ロッド22aと前記ガイド長孔29の下端部とが、同じく前記上下方向長孔21a内の端部(上端部及び下端部)に位置する場合に、前記調節ロッド22aと前記ガイド長孔29の上端部とが、それぞれ係合する様に、前記揺動摩擦板26の基端部(扇の要に相当する部分)を前記揺動支持軸25に、この揺動支持軸25を中心とする揺動変位を可能に支持している。又、前記揺動摩擦板26の両側面には、前記一方の支持板部20aの外側面及び前記一方の押圧部24aの内側面との間の摩擦係数を大きくする為の表面処理を施している。この様な表面処理として、例えば粗面加工(ショットブラスト、ローレット加工等)を施して前記両側面の表面粗さを大きくしたり、或は、これら両側面に摩擦剤を被覆する事ができる。この摩擦剤は、これら両側面の摩擦係数を大きくするものであれば、特に限定されない。この様な摩擦剤としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム等の高分子材料や、粘着性接着剤、セラミックコーティング等が望ましい。
【0023】
本例の場合、前記ステアリングホイール1の上下位置又は前後位置を調節する際には、前記調節レバー23を所定方向に揺動させる事により、前記両押圧部24a、24b同士の間隔を拡げる。この結果、前記変位ブラケット12aのスリット27の存在に基づき、前記アウタコラム14aの前端部の内径が弾性的に拡がって、このアウタコラム14aの前端部内周面と前記インナコラム15aの後端部外周面との嵌合部の面圧が、低下乃至は喪失する。同時に、前記揺動摩擦板26の両側面と、前記一方の支持板部20aの外側面及び前記一方の押圧部24aの内側面との当接部の面圧、並びに、前記両支持板部20a、20bのうちの他方の支持板部20bの外側面と、前記両押圧部24a、24bのうちの他方の押圧部24bの内側面との当接部の面圧、及び、前記両支持板部20a、20bの内側面と、前記変位ブラケット12aの両側面との当接部の面圧が、それぞれ低下乃至は喪失する。この状態で、前記調節ロッド22aが、前記前後方向長孔19a及び前記両上下方向長孔21a、21a内で変位できる範囲で、前記ステアリングホイール1の位置を調節する。
【0024】
上述の様な本例に於いて、このステアリングホイール1の上下位置を調節すべく、このステアリングホイール1(ステアリングコラム6a)を上下方向に変位させた場合の、前記揺動摩擦板26の動きに就いて次に説明する。
図3の(A)は、前記ステアリングホイールを調節可能な上端位置まで移動させた状態を示している。この状態では、前記調節ロッド22aと、前記上下方向長孔21aの上端部及び前記ガイド長孔29の上端部とが係合している。この状態から前記ステアリングホイール1を下方に変位させ、前記調節ロッド22aを下降させると、この調節ロッド22a及び前記揺動支持軸25の中心軸同士の間の距離Lが短くなる為、
図3の(A)→(B)に示す様に、前記揺動摩擦板26が前記揺動支持軸25を中心として、
図3の時計方向に揺動する。そして、前記ステアリングホイール1を上下方向に関する中央位置とした状態では、前記
図3の(B)に示す様に、前記調節ロッド22aは、前記上下方向長孔21aの中央部及び前記ガイド長孔29の下端部と係合している。この為、前記
図3の(B)に示した状態から、更に前記ステアリングホイール1を下方に変位させて下端位置まで移動させ、前記調節ロッド22aを前記上下方向長孔21aの下端部に移動させると、この調節ロッド22a及び前記揺動支持軸25の中心軸同士の間の距離Lが長くなる為、
図3の(B)→(C)に示す様に、前記揺動摩擦板26が前記揺動支持軸25を中心として、
図3の反時計方向に揺動する。これに対し、前記ステアリングホイール1を、下端位置から上端位置まで上方に変位させる場合には、上述した下方に変位させる場合とは逆に、
図3の(C)→(B)→(A)の順に、前記揺動摩擦板26が揺動する。
【0025】
上述の様に構成する本例のステアリングホイールの位置調節装置によれば、前記揺動摩擦板として特に大きなものを使用しなくても、ステアリングホイール1(
図14参照)を調節後の位置に保持する力を大きくできて、小型・軽量化及び設計の自由度の向上を図り易い。即ち、本例の場合、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持すべく、1対の押圧部24a、24b同士の間隔を縮めた状態では、揺動摩擦板26が、1対の支持板部20a、20bのうちの一方の支持板部20aの外側面と、前記両押圧部24a、24bのうちの一方の押圧部24aの内側面との間で強く挟持された状態となる。この状態から前記ステアリングホイール1の上下位置を動かそうとすると、前記揺動摩擦板26の両側面と、前記一方の支持板部20aの外側面及び前記一方の押圧部24aの内側面とが強く擦れ合う事となる。要するに、前記ステアリングホイール1を所望の位置に保持した状態から、このステアリングホイール1を動かそうとした場合、前記揺動摩擦板26の両側面である摩擦面を滑らせつつ、この揺動摩擦板26を揺動させる必要がある。この為、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持する力を強くできる。この結果、二次衝突時に、このステアリングホイール1に加わる前方に向いた衝撃荷重に基づき、調節ロッド22aが前記両支持板部20a、20bに設けた上下方向長孔21a、21aに沿って上方に変位する事により、前記ステアリングホイール1が舞い上がるのを防止できて、運転者の身体の保護充実を図れる。
又、本例の場合、ガイド長孔29を、前記揺動摩擦板26の揺動方向片端部(下端部)から他端部(上端部)に向かうに従って、揺動支持軸25との間の距離Lが長くなる方向に形成している。この為、前記ステアリングホイール1の上下方向変位に伴い、前記調節ロッド22aを前記ガイド長孔29に沿って変位させ、この調節ロッド22aと前記揺動支持軸25との間の距離Lを変化させる事で、前記揺動摩擦板26を揺動変位させるのに要する力を、このガイド長孔29を、前記調節ロッド22aと前記揺動支持軸25とを結ぶ直線方向に形成した場合と比較して大きくできる。この面からも、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持する力を強くする事ができる。
【0026】
又、本例の場合には、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持する力を強くできる構造を、前述した特許文献1に記載の構造の様に、複数枚の摩擦板を重ね合わせる事なく、一枚の揺動摩擦板26のみで実現できる。従って、前記ステアリングホイール1の位置調節装置の左右方向寸法、部品点数及び重量が、前記特許文献1に記載の構造の様に増大するのを抑える事ができ、前記ステアリングホイールの位置調節装置の小型・軽量化を図れる。
【0027】
更に、本例の場合、前記ステアリングホイール1を上端位置から中央位置まで移動させる場合の前記揺動摩擦板26の揺動方向(
図3の時計方向)と、同じく中央位置から下端位置まで移動させる場合のこの揺動摩擦板26の揺動方向(
図3の反時計方向)とを互いに反対方向としている。この為、この揺動摩擦板26が揺動する大きさ(揺動角度)を、前記ステアリングホイール1の位置調節できる全範囲で前記揺動摩擦板26の揺動方向を同じとした場合と比較し小さく抑えられる。従って、この揺動摩擦板26の前記一方の支持板部20aの下端縁からの突出量を抑えたり、この揺動摩擦板26の表面積を大きくする事ができて、設計の自由度を確保できる。
【0028】
尚、本例のステアリングホイールの位置調節装置は、テレスコピック機構を省略した、単なるチルトステアリング装置で実施する事もできる。この場合には、コラム側貫通孔を(前後方向長孔19aに代え、)単なる円孔とする。又、スリット27を省略し、インナコラム15aの後端部とアウタコラム16aの前端部とを、二次衝突時に加わる衝撃荷重により、このアウタコラム16aの前方への変位を可能に嵌合する。
【0029】
[実施の形態の第2例]
図4は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合、ステアリングホイール1(
図14参照)を上下方向に関する中央位置とした状態で、調節ロッド22aと、ガイド長孔29aの上端部(
図4の時計方向側の端部)とが係合する様に、揺動摩擦板26aを支持している。本例の場合、この様動摩擦板26aの揺動方向を、上述した実施の形態の第1例に係る揺動摩擦板26の揺動方向と反対方向にしている。
【0030】
即ち、
図4の(A)に示す様に、前記ステアリングホイール1を調節可能な上端位置まで移動させた状態では、前記調節ロッド22aと、前記上下方向長孔21aの上端部及び前記ガイド長孔29aの下端部(
図4の反時計方向側の端部)とが係合している。従って、この状態から前記ステアリングホイール1を下方に変位させ、前記調節ロッド22aを下降させると、この調節ロッド22a及び揺動支持軸25の中心軸同士の間の距離Lが短くなる。この為、
図4の(A)→(B)に示す様に、前記揺動摩擦板26aが前記揺動支持軸25を中心として、
図4の反時計方向に揺動する。前記
図4の(B)に示す状態では、前記調節ロッド22aは、前記上下方向長孔21aの中央部及び前記ガイド長孔29aの上端部と係合している。そして、前記ステアリングホイール1を上下方向に関する中央位置とした状態では、前記
図4の(B)に示す様に、更に前記ステアリングホイール1を下方に変位させて下端位置まで移動させると、この調節ロッド22a及び前記揺動支持軸25の中心軸同士の間の距離Lが長くなり、
図4の(B)→(C)に示す様に、前記揺動摩擦板26aが前記揺動支持軸25を中心として、
図4の時計方向に揺動する。これに対し、前記ステアリングホイール1を下端位置から上端位置まで上方に変位させる場合には、上述した下方に変位させる場合とは逆に、
図4の(C)→(B)→(A)の順に、前記揺動摩擦板26aが揺動変位する。
その他の部分の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。
【0031】
[実施の形態の第3例]
図5は、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合、揺動支持軸25aを左右1対の支持板部20a、20bのうちの一方(
図5の左方)の支持板部20aの内側面(
図5の右側面)に、調節ロッド22aと平行に設けている。この様な揺動支持軸25aの設置位置は、前記一方の支持板部20aの内側面のうち、この一方の支持板部20aに設けた上下方向長孔21a(
図1参照)の上下方向に関する中央位置を通り、この中央位置に於けるこの上下方向長孔21aの接線方向に直交する方向の仮想直線上で、この上下方向長孔21aよりも後方としている。但し、前記揺動支持軸25aの設置位置は、前記仮想直線上であれば、前記上下方向長孔21aよりも前方とする事もできる。揺動摩擦板26は、基端部である後寄り部分を、前記揺動摩擦軸25aを中心とする揺動変位を可能に支持している。そして、前記揺動摩擦板26は、前記一方の支持板部20aの内側面と、ステアリングコラム6aに設けた変位ブラケット12aの片側面(
図5の左側面)との間に挟持すると共に、先半部に設けたガイド長孔29(
図1、3参照)に調節ロッド22aを挿通している。
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。
【0032】
[実施の形態の第4例]
図6〜8
は、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合、左右1対の支持板部20a、20bのうちの一方(
図7の左方)の支持板部20aの外側面と、1対の押圧部24a、24bのうちの一方(
図7の左方)の押圧部24aの内側面との間に第一の揺動摩擦板30を、前記両支持板部20a、20bのうちの他方(
図7の右方)の支持板部20bの外側面と、前記両押圧部24a、24bのうちの他方(
図7の右方)の押圧部24bの内側面との間に第二の揺動摩擦板31を、それぞれ挟持している。そして、ステアリングホイール1(
図14参照)を上下方向に関する中央位置とした状態で、調節ロッド22aと、前記第一の揺動摩擦板30に形成した第一のガイド長孔32の上端部(
図8の時計方向側の端部)とが係合する様に、この第一の揺動摩擦板30を前記一方の支持板部20aに設けた第一の揺動支持軸33に支持している。同様に、前記ステアリングホイール1を上下方向中央位置とした状態で、前記調節ロッド22aと、前記第二の揺動摩擦板31に形成した第二のガイド長孔34の下端部(
図8の反時計方向側の端部)とが係合する様に、この第二の揺動摩擦板31を前記他方の支持板部20bに設けた第二の揺動支持軸35に支持している。
【0033】
本例の場合、
図8の(A)に示す様に、前記ステアリングホイール1を調節可能な上端位置まで移動させた状態では、前記調節ロッド22aと、上下方向長孔21aの上端部、並びに、前記第一のガイド長孔32の下端部及び前記第二のガイド長孔34の上端部とが係合している。従って、この状態から前記ステアリングホイール1を下方に変位させ、前記調節ロッド22aを下降させると、
図8の(A)→(B)に示す様に、前記第一の揺動摩擦板30が前記第一の揺動支持軸33を中心として、
図8の反時計方向に、前記第二の揺動摩擦板31が前記第二の揺動支持軸35を中心として、同じく時計方向に、それぞれ揺動する。前記
図8の(B)に示す状態では、前記調節ロッド22aは、前記上下方向長孔21aの上下方向中央部、並びに、前記第一のガイド長孔32の上端部及び前記第二のガイド長孔34の下端部とが係合している。この為、前記
図8の(B)に示した状態から、更に前記ステアリングホイール1を下方に変位させて下端位置まで移動させると、
図8の(B)→(C)に示す様に、前記第一の揺動摩擦板30が前記第一の揺動支持軸33を中心として、
図8の時計方向に、前記第二の揺動摩擦板31が前記第二の揺動支持軸35を中心として、同じく反時計方向に、それぞれ揺動する。これに対し、前記ステアリングホイール1を下端位置から上端位置まで上方に変位させる場合には、上述した下方に変位させる場合とは逆に、
図8の(C)→(B)→(A)の順に、前記第一、第二の揺動摩擦板30、31が、それぞれ揺動変位する。即ち、前記ステアリングホイール1の上下位置調節に伴い、前記第一の揺動摩擦板30は、前述した実施の形態の第2例に係る揺動摩擦板26aの様に、前記第二の揺動摩擦板31は、前述した実施の形態の第1例に係る揺動摩擦板26の様に、それぞれ揺動する。
【0034】
上述の様な本例のステアリングホイールの位置調節装置の場合、前記ステアリングホイール1を調節後の位置に保持する力を、前述した実施の形態の第1例又は第2例の場合と比較して、より強くする事ができる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例及び第2例と同様であるから、重複する説明は省略する。
【0035】
[実施の形態の第5〜7例]
図9は、本発明の実施の形態の第5〜7例を示している。
図9の(A)に示した実施の形態の第5例の場合、第一の揺動摩擦板30を、左右1対の支持板部20a、20bのうちの一方の支持板部20aの内側面と、変位ブラケット12aの片側面との間に、第二の揺動摩擦板31を、前記両支持板部20a、20bのうちの他方の支持板部20bの内側面と、前記変位ブラケット12aの他側面との間に、それぞれ挟持している。又、
図9の(B)に示した実施の形態の第6例の場合、第一、第二の揺動摩擦板30、31同士を互いに重ね合わせた状態で、一方の支持板部20aの外側面と、1対の押圧部24a、24bのうちの一方の押圧部24aの内側面との間に挟持している。更に、
図9の(C)に示した実施の形態の第7例の場合、第一、第二の揺動摩擦板30、31同士を互いに重ね合わせた状態で、一方の支持板部20aの内側面と、変位ブラケット12aの片側面との間に挟持している。
その他の部分の構成及び作用は、上述した実施の形態の第4例と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。
【0036】
[実施の形態の第8例]
図10〜12
は、本発明の実施の形態の第8例を示している。本例の場合、前述した実施の形態の第1例の場合と同様に、左右1対の支持板部20a、20bのうちの一方の支持板部20aの外側面と、1対の押圧部24a、24bのうちの一方の押圧部24aの内側面との間に、チルト用揺動摩擦板36を挟持している。この様なチルト用揺動摩擦板36は、前記実施の形態の第1例に係る揺動摩擦板26と同様に、ステアリングホイール1(
図14参照)の上下方向変位に伴い、チルト用揺動支持軸37を中心に揺動変位する。即ち、前記ステアリングホイール1を上端位置から下端位置まで下方に変位させる場合には、前述した
図3の(A)→(B)→(C)の順に、同じく後端位置から上端位置まで上方に変位させる場合には、前記
図3の(C)→(B)→(A)の順に、それぞれ前記チルト用揺動摩擦板36(揺動摩擦板26)が揺動する。
【0037】
更に本例の場合には、前記一方の支持板部20aの内側面と、変位ブラケット12aの片側面との間に、前記ステアリングホイール1の前後方向変位に伴い揺動変位する、テレスコ用揺動摩擦板38を挟持している。この為に、テレスコ用揺動支持軸39を、前記ステアリングホイール1の前後方向変位の際に、調節ロッド22aに対し相対変位する部分である、前記変位ブラケット12aの片側面に、この調節ロッド22aと平行に設けている。このテレスコ用揺動支持軸39の設置位置は、前記変位ブラケット12aの片側面のうち、この変位ブラケット12aに設けた前後方向長孔19aの前後方向に関する中央位置を通り、ステアリングコラム6aの軸方向(この前後方向長孔19aの長さ方向)に直交する方向の仮想直線β{
図12の(B)参照}上で、前記前後方向長孔19aよりも上方としている。但し、前記テレスコ用揺動支持軸39の設置位置は、前記仮想直線β上であれば、前記前後方向長孔19aよりも下方とする事もできる。何れにしても、この様な構造により、前記テレスコ用揺動支持軸39の中心軸と、前記ステアリングホイール1を前端位置とした場合に於ける前記調節ロッド22aの中心軸との間の距離L
Fと、同じく後端位置とした場合に於けるこの調節ロッド22aの中心軸との間の距離L
Bとを、互いに同じにしている(L
F=L
B)。
【0038】
又、前記テレスコ用揺動摩擦板38は、前記チルト用揺動摩擦板36(揺動摩擦板26)と同様に、鋼板、ステンレス鋼板等の、必要とする強度及び剛性を確保でき、且つ、相手面である、前記一方の支持板部20aの内側面、及び前記変位ブラケット12aの片側面との当接部の摩擦係数を大きくできる金属板により形成された、略扇形の平板部材である。前記テレスコ用揺動摩擦板38は、基端部である上端寄り部分を、前記テレスコ用揺動支持軸39を中心とする揺動変位を可能に支持している。そして、前記テレスコ用揺動摩擦板38は、前記一方の支持板部20aの内側面と前記変位ブラケット12aの片側面との間に挟持すると共に、下半部に設けたテレスコ用ガイド長孔40に前記調節ロッド22aを挿通している。このテレスコ用ガイド長孔40は、前端部から後端部まで、少しずつでも、前記テレスコ用揺動支持軸39との間の距離が長くなる方向に、滑らかな曲線となる様に形成している。具体的には、前記テレスコ用ガイド長孔40を、前記調節ロッド22aが前記前後方向長孔19a内の中央部に位置する状態{
図12の(B)に示す状態}で、前記仮想直線βよりも後方で、且つ、前記テレスコ用揺動支持軸39よりも上方に位置する点を中心とする部分円弧状としている。そして、この部分円弧のうちでこの調節ロッド22aが係合している部分の接線と、前記テレスコ用揺動支持軸39の中心軸を中心とし、これら調節ロッド22aとテレスコ用揺動支持軸39との間の距離を半径とする仮想円弧の接線(前記テレスコ用揺動摩擦板38の揺動方向)との成す角度φが、この調節ロッド22aの前後方向位置に拘わらず、一定となる様にしている。尚、この様な角度φは、10度〜35度とする事が好ましい。そして、前記ステアリングホイール1の前後方向位置を調節可能な範囲の中央位置とした時に、前記調節ロッド22aと前記テレスコ用ガイド長孔40の前端部とが係合し、同じく後端位置及び前端位置とした時に、前記調節ロッド22aとこのテレスコ用ガイド長孔40の後端部とが係合する様にしている。即ち、本例の場合、前記ステアリングホイール1の前後方向の位置調節に伴い、前記調節ロッド22aが前記テレスコ用ガイド長孔40に沿って変位する過程で、この調節ロッド22aと前記テレスコ用揺動支持軸39との間の距離が変化する方向(伸長する方向か短縮する方向か)が、前記ステアリングホイール1の位置調節可能な範囲の前後方向中央位置を境に互いに反対方向となっている。
【0039】
上述の様な本例に於いて、前記ステアリングホイール1の前後位置を調節すべく、このステアリングホイール1の前後方向に変位させた場合の、前記テレスコ用揺動摩擦板38の動きに就いて次に説明する。
図12の(A)は、前記ステアリングホイール1を調節可能な前端位置まで移動させた状態を示している。この状態では、前記調節ロッド22aと、前記前後方向長孔19aの後端部及び前記テレスコ用ガイド長孔40の後端部とが係合している。従って、この状態から前記ステアリングホイール1を後方に変位させる事により、前記調節ロッド22aを前記前後方向長孔19a内で前方に変位させると、この調節ロッド22a及び前記テレスコ用揺動支持軸39との中心軸同士の間の距離が短くなる為、
図12の(A)→(B)に示す様に、前記テレスコ用揺動摩擦板38が前記テレスコ用揺動支持軸39を中心として、
図12の反時計方向に揺動する。前記
図12の(B)に示す中立位置状態では、前記調節ロッド22は、前記前後方向長孔19aの前後方向中央部及び前記テレスコ用ガイド長孔40の前端部と係合している。この為、前記
図12の(B)に示した状態から、更に前記ステアリングホイール1を後方に変位させて後端位置まで移動させると、前記調節ロッド22a及び前記テレスコ用揺動支持軸39との中心軸同士の間の距離が長くなり、
図12の(B)→(C)に示す様に、前記テレスコ用揺動摩擦板38が前記テレスコ用揺動支持軸39を中心として、
図12の時計方向に揺動する。これに対し、前記ステアリングホイール1を、後端位置から前端位置まで前方に変位させる場合には、上述した前方に変位させる場合とは逆に、
図12の(C)→(B)→(A)の順に、前記テレスコ用揺動摩擦板38が揺動する。
【0040】
上述の様な本例のステアリングホイールの位置調節装置によれば、前記ステアリングホイール1の上下方向に加え、前後方向に就いても、調節後の位置に保持する力を大きくできる。
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する説明は省略する。
【0041】
[実施の形態の第9例]
図13は、本発明の実施の形態の第9例を示している。本例の場合、1対のチルト用揺動摩擦板36a、36bを、左右1対の支持板部20a、20bの外側面と、1対の押圧部24a、24bの内側面との間に、それぞれ挟持している。前記両チルト用揺動摩擦板36a、36bは、揺動方向が互いに同じものとしても良いし、互いに反対方向に揺動する、前述した実施の形態の第3例に示す様な、第一、第二の揺動摩擦板30、31としても良い。又、1対のテレスコ用揺動摩擦板38a、38bを、前記両支持板部20a、20bの内側面と、変位ブラケット12aの両側面との間に、それぞれ挟持している。前記両テレスコ用揺動摩擦板38a、38bに就いても、揺動方向が互いに同じものを使用しても良いし、互いに反対方向に揺動するものを使用する事もできる。
その他の部分の構成及び作用は、上述した実施の形態の第8例と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。