(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6160440
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】遊星歯車装置
(51)【国際特許分類】
F16H 1/28 20060101AFI20170703BHJP
F16H 55/18 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
F16H1/28
F16H55/18
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-221040(P2013-221040)
(22)【出願日】2013年10月24日
(65)【公開番号】特開2015-81670(P2015-81670A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】石原 康人
【審査官】
岩本 薫
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−129434(JP,A)
【文献】
特表2010−530946(JP,A)
【文献】
特開2008−286299(JP,A)
【文献】
特開2004−232834(JP,A)
【文献】
実開昭62−177959(JP,U)
【文献】
特開2006−077826(JP,A)
【文献】
特開2004−197822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/28
F16H 55/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンギヤと、
前記サンギヤの外周側に設けられ、内周に内歯が形成されたリングギヤと、
前記サンギヤ及び前記内歯と噛合する複数のプラネタリギヤと、
複数の前記プラネタリギヤを回転可能に支持するキャリアと、を有し、
前記複数のプラネタリギヤは、
それぞれ同軸に対向して配置された第一プラネタリギヤと第二プラネタリギヤと、
前記第一プラネタリギヤ及び前記第二プラネタリギヤがある方向に回転した場合に、前記第一プラネタリギヤがトルクを伝達し、前記第二プラネタリギヤが前記内歯と当接するように、前記第一プラネタリギヤ及び前記第二プラネタリギヤのうち1組以上の前記第一プラネタリギヤと前記第二プラネタリギヤを付勢する第一付勢部材と、
前記第一プラネタリギヤ及び前記第二プラネタリギヤが前記ある方向に回転した場合に、前記第二プラネタリギヤがトルクを伝達し、前記第一プラネタリギヤが前記内歯と当接するように、前記第一付勢部材によって付勢されている以外の前記第一プラネタリギヤと前記第二プラネタリギヤを付勢する第二付勢部材と、から構成されたシザースギヤである遊星歯車装置。
【請求項2】
前記第一付勢部材、及び前記第二付勢部材の数は同数である請求項1に記載の遊星歯車装置。
【請求項3】
前記第一付勢部材と前記第二付勢部材は、交互に設けられている請求項2に記載の遊星歯車装置。
【請求項4】
前記リングギヤは、前記内歯の位相がずらされた状態で、同軸に設けられた第一リングギヤ及び第二リングギヤとから構成され、
前記第一プラネタリギヤは前記第一リングギヤの前記内歯と噛合し、
前記第二プラネタリギヤは前記第二リングギヤの前記内歯と噛合する請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の遊星歯車装置。
【請求項5】
前記第一プラネタリギヤと前記第二プラネタリギヤの歯幅は同一である請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の遊星歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯打音を抑制することができる遊星歯車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から特許文献1に示されるように、バックラッシュによる歯打音の発生を抑制するために、2枚のプラネタリギヤを重ねて設け、当該2枚のプラネタリギヤを巻回バネで回転方向に付勢させて、プラネタリギヤをシザースギヤとした遊星歯車装置が提案されている。このような遊星歯車装置では、一方のプラネタリギヤによってトルクの伝達が行われている。そして、他方のプラネタリギヤがリングギヤの内歯と当接することにより、2枚のプラネタリギヤが隙間無くリングギヤに当接し、2枚のプラネタリギヤのバックラッシュを防止して、プラネタリギヤの回転に伴う歯打音の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−129434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示される遊星歯車装置では、一方のプラネタリギヤのみがトルク伝達をして、他方のプラネタリギヤはトルクを伝達しておらず、トルク伝達をしている一方のプラネタリギヤと当接するリングギヤの内歯のみにトルクが伝達される。つまり、内歯の歯幅の半分にしかトルク伝達されない。また、内歯はリングギヤの内側に形成されているので、内歯を形成するための切削が難しく、内歯を切削してからリングギヤの焼き入れを行う必要があり、焼き入れに伴う内歯の変形を考慮すると、焼き入れにより内歯の表面硬度を高くすることが難しい。このように、内歯の歯幅の半分しかトルク伝達されないこと、及び内歯の表面硬度を高くすることが困難であることから、リングギヤの内歯が偏摩耗してしまうおそれがあるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、歯打音の発生を抑制するとともに、リングギヤの偏摩耗を抑制することができる遊星歯車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1)本発明に係る遊星歯車装置は、サンギヤと、前記サンギヤの外周側に設けられ、内周に内歯が形成されたリングギヤと、前記サンギヤ及び前記内歯と噛合する複数のプラネタリギヤと、複数の前記プラネタリギヤを回転可能に支持するキャリアと、を有し、前記複数のプラネタリギヤは、それぞれ同軸に対向して配置された第一プラネタリギヤと第二プラネタリギヤと、前記第一プラネタリギヤ及び前記第二プラネタリギヤがある方向に回転した場合に、前記第一プラネタリギヤがトルクを伝達し、前記第二プラネタリギヤが前記内歯と当接するように、前記第一プラネタリギヤ及び前記第二プラネタリギヤのうち1組以上の前記第一プラネタリギヤと前記第二プラネタリギヤを付勢する第一付勢部材と、前記第一プラネタリギヤ及び前記第二プラネタリギヤが前記ある方向に回転した場合に、前記第二プラネタリギヤがトルクを伝達し、前記第一プラネタリギヤが前記内歯と当接するように、前記第一付勢部材によって付勢されている以外の前記第一プラネタリギヤと前記第二プラネタリギヤを付勢する第二付勢部材と、から構成されたシザースギヤである。
【0007】
このように、第一付勢部材によって付勢されている一組の第一プラネタリギヤと第二プラネタリギヤと、第二付勢部材によって付勢されている一組の第一プラネタリギヤと第二プラネタリギヤでは、トルクを伝達している側のプラネタリギヤが異なる。このため、第一プラネタリギヤと第二プラネタリギヤのうち一方のプラネタリギヤのみによってリングギヤにトルクが伝達されることが無く、リングギヤの偏摩耗が抑制される。
【0008】
また、第一付勢部材及び第二付勢部材によって、第一プラネタリギヤと第二プラネタリギヤの歯がリングギヤの内歯に当接するので、リングギヤとプラネタリギヤとの間にバックラッシュが発生することなく、歯打音の発生が抑制される。
【0009】
(請求項2)前記第一付勢部材、及び前記第二付勢部材の数は同数であることが好ましい。これにより、リングギヤにトルクを伝達している第一プラネタリギヤと第二プラネタリギヤの数が同数となり、リングギヤの偏摩耗が更に抑制される。
【0010】
(請求項3)前記第一付勢部材と前記第二付勢部材は、交互に設けられていることが好ましい。これにより、第一付勢部材と第二付勢部材が不均衡に設けられることに起因して、第一プラネタリギヤ及び第二プラネタリギヤと噛合しているサンギヤがある特定の方向に傾いてしまうことが防止され、サンギヤが傾いてしまうことに起因する歯打音の発生が抑制される。
【0011】
(請求項4)前記リングギヤは、前記内歯の位相がずらされた状態で、同軸に設けられた第一リングギヤ及び第二リングギヤとから構成され、前記第一プラネタリギヤは前記第一リングギヤの前記内歯と噛合し、前記第二プラネタリギヤは前記第二リングギヤの前記内歯と噛合することが好ましい。
【0012】
これにより、第一リングギヤと第二リングギヤのそれぞれの内歯の位相差によって、これら内歯に噛合する第一プラネタリギヤと第二プラネタリギヤにも位相差が生じる。このため、第一プラネタリギヤと第二プラネタリギヤを、隙間無くサンギヤに当接させることができる。これにより、第一プラネタリギヤ及び第二プラネタリギヤとサンギヤとのバッシュクラッシュの発生を防止することにより、より一層歯打音の発生が抑制される。また、遊星歯車装置の回転方向を切り替えた際の位置決め精度がより向上する。
【0013】
(請求項5)前記第一プラネタリギヤと前記第二プラネタリギヤの歯幅は同一であることが好ましい。これにより、第一プラネタリギヤと第二プラネタリギヤのそれぞれと噛合するリングギヤの噛合面に作用する応力が等しくなり、リングギヤの偏摩耗をより抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態の遊星歯車装置を模式的に表した模式図である。
【
図3】第一プラネタリギヤ、第二プラネタリギヤ、及びスプリングを表した斜視図である。
【
図4A】開きバネで付勢されているプラネタリギヤの歯がリングギヤの内歯に当接している状態を示した説明図である。
【
図4B】閉じバネで付勢されているプラネタリギヤの歯がリングギヤの内歯に当接している状態を示した説明図である。
【
図5A】開きバネで付勢されているプラネタリギヤの歯の斜視図である。
【
図5B】閉じバネで付勢されているプラネタリギヤの歯の斜視図である。
【
図6A】第一リングギヤ、第一プラネタリギヤ、サンギヤの断面図である。
【
図6B】第二リングギヤ、第二プラネタリギヤ、サンギヤの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(遊星歯車装置の構造)
図1及び
図2に示すように、本実施形態の遊星歯車装置100は、主に、ハウジング1、サンギヤ2、複数の第一プラネタリギヤ11、複数の第二プラネタリギヤ12、開きバネ13、閉じバネ14、第一キャリア21、第二キャリア22、第一リングギヤ31、第二リングギヤ32とから構成されている。なお、図において、一点鎖線は、各ギヤのピッチ円を表している。なお、後で詳細に説明するが、複数の第一プラネタリギヤ11、複数の第二プラネタリギヤ12、開きバネ13、及び閉じバネ14とから、シザースギヤが構成されている。
【0016】
第一リングギヤ31及び第二リングギヤ32は、それぞれ内周側に内歯31a、32aが形成されている。第一リングギヤ31及び第二リングギヤ32は、それぞれの内歯31a、32aの位相がずらされた状態で、互いに対向した状態で、ハウジング1に同軸に取り付けられている。
図1に示すように、リングギヤ31、32は、サンギヤ2の外周側に設けられている。
【0017】
第一キャリア21は、第一ベアリング81によってハウジング1の内周側に回転可能に取り付けられている。第二キャリア22は、第一キャリア21と対向して、第二ベアリング82によってハウジング1の内周側に回転可能に取り付けられている。なお、第一キャリア21又は第二キャリア22は、図示しない出力部材に接続されている。
【0018】
サンギヤ2には、シャフト71が連結されている。シャフト71は、第一キャリア21に取り付けられた第三ベアリング83及び第二キャリア22に取り付けられた第四ベアリング84によって、第一キャリア21及び第二キャリア22に回転可能に支持されている。このような構成によって、サンギヤ2がハウジング1に回転可能に取り付けられている。本実施形態では、シャフト71は、モータ等の動力源に連結されている。
【0019】
本実施形態では、第一プラネタリギヤ11と第二プラネタリギヤ12の歯幅寸法は、同一となっている。また、本実施形態では、第一プラネタリギヤ11と第二プラネタリギヤ12の数は、4つであり、偶数である。複数の第一プラネタリギヤ11と複数の第二プラネタリギヤ12は、互いに対向した状態で、サンギヤ2の外周側に同軸に設けられている。
図3に示すように、第一プラネタリギヤ11及び第二プラネタリギヤ12の中心に、軸穴11a、12aが貫通形成されている。これら軸穴11a、12aに、プラネタリギヤ軸23で保持されたニードルベアリング65、66が挿通している。プラネタリギヤ軸23は第一キャリア21及び第二キャリア22に固定されている。このような構成によって、第一プラネタリギヤ11及び第二プラネタリギヤ12が、第一キャリア21及び第二キャリア22に回転可能に支持されている。
【0020】
第一プラネタリギヤ11は、サンギヤ2及び第一リングギヤ31の内歯31aと噛合している。第二プラネタリギヤ12は、サンギヤ2及び第二リングギヤ32の内歯32aと噛合している。
図2に示すように、第一プラネタリギヤ11の第二プラネタリギヤ12との対向面には、スプリング収納部11bが凹陥形成されている。
図2や
図3に示すように、第二プラネタリギヤ12の第一プラネタリギヤ11との対向面には、スプリング収納部12bが凹陥形成されている。
【0021】
図2や
図3に示すように、スプリング収納部11b、12bには、挿入穴11c、12cが形成されている。
図3に示すように、本実施形態では、開きバネ13や閉じバネ14は、巻回バネである。開きバネ13や閉じバネ14の両端には、バネの形成方向と直交する方向に延出する挿入部13a、14a、13b、14bが形成されている。
【0022】
本実施形態では、開きバネ13と閉じバネ14の数は、それぞれ2つであり、同数である。開きバネ13は、圧縮された状態で、挿入部13a、13bがそれぞれ第一プラネタリギヤ11の挿入穴11cと第二プラネタリギヤ12の挿入穴12cに挿入されて、スプリング収納部11b、12b内に収納されている。閉じバネ14は、開かれた状態で、挿入部14a、14bがそれぞれ第一プラネタリギヤ11の挿入穴11cと第二プラネタリギヤ12の挿入穴12cに挿入されて、スプリング収納部11b、12b内に収納されている。開きバネ13は、全ての第一プラネタリギヤ11と第二プラネタリギヤ12のうち、2組(1組以上)の第一プラネタリギヤ11と第二プラネタリギヤ12を開く方向に付勢している。閉じバネ14は、開きバネ13によって付勢されている以外の第一プラネタリギヤ11と第二プラネタリギヤ12を、開く方向と反対側の閉じる方向に付勢している。本実施形態では、
図1に示すように、開きバネ13と閉じバネ14は、プラネタリギヤ11、12の配置方向に関して(周方向に)交互に設けられている。
【0023】
(本実施形態の効果)
以上の説明から明らかなように、複数の第一プラネタリギヤ11、複数の第二プラネタリギヤ12、開きバネ13、及び閉じバネ14とから、シザースギヤが構成されている。つまり、
図4Aに示すように、開きバネ13(第二付勢部材)は、第一プラネタリギヤ11と第二プラネタリギヤ12を開く方向に付勢する。これにより、第一プラネタリギヤ11と第二プラネタリギヤ12の歯11d、12dが、内歯31a、32aを開けるように、内歯31a、32aに当接する。また、
図4Bに示すように、閉じバネ14(第一付勢部材)は、第一プラネタリギヤ11と第二プラネタリギヤ12を閉じる方向に付勢する。これにより、第一プラネタリギヤ11と第二プラネタリギヤ12の歯11d、12dが、いずれかの内歯31a、32aを挟んで、いずれかの内歯31a、32aに当接する。このため、第一プラネタリギヤ11と第二プラネタリギヤ12の歯11d、12dが、第一リングギヤ31と第二リングギヤ32の内歯31a、32aに隙間無く当接しているので、リングギヤ31、32とプラネタリギヤ11、12との間にバックラッシュが発生することなく、歯打音の発生が抑制される。また、リングギヤ31、32とプラネタリギヤ11、12との間にバックラッシュが発生しないので、サンギヤ2の回転方向を切り替えた際において、ハンチングの発生が防止され、キャリア21、22の位置決め精度が向上する。
【0024】
図5Aに示すように、プラネタリギヤ11、12がある回転方向に回転した場合には、開きバネ13によって付勢されている一組のプラネタリギヤ11、12のうち、第二プラネタリギヤ12は、第二リングギヤ32の内歯32aに当接してトルクを伝達するギヤとなり、第一プラネタリギヤ11は、トルクを伝達しないが第一リングギヤ31の内歯31aと当接する。
【0025】
一方で、
図5Bに示すように、プラネタリギヤ11、12がある回転方向に回転した場合には、閉じバネ14によって付勢されている一組のプラネタリギヤ11、12のうち、第一プラネタリギヤ11は、第一リングギヤ31の内歯31aに当接してトルクを伝達するギヤとなり、第二プラネタリギヤ12は、トルクを伝達しないが第二リングギヤ32の内歯32aと当接する。
【0026】
このように、開きバネ13によって付勢されている一組の第一プラネタリギヤ11と第二プラネタリギヤ12と、閉じバネ14によって付勢されている一組の第一プラネタリギヤ11と第二プラネタリギヤ12では、トルクを伝達している側のプラネタリギヤ11、12が異なり、第一プラネタリギヤ11と第二プラネタリギヤ12のいずれかのみによってリングギヤ31、32にトルクが伝達されることが無く、第一プラネタリギヤ11と第二プラネタリギヤ12の両方によってリングギヤ31、32にトルクが伝達される。このため、第一プラネタリギヤ11と第二プラネタリギヤ12の一方のみが、これと噛合する第一リングギヤ31及び第二リングギヤ32のいずれか一方の内歯31a、32aのみと噛合することが無いので、第一リングギヤ31や第二リングギヤ32の偏摩耗が抑制される。
【0027】
なお、プラネタリギヤ11、12が、
図5に示す回転方向と逆方向に回転した場合には、開きバネ13によって、第一プラネタリギヤ11がトルクを伝達するギヤとなり、第二プラネタリギヤ12は、トルクを伝達しないが、第二リングギヤ32の内歯32aと当接する。そして、閉じバネ14によって、第二プラネタリギヤ12がトルクを伝達するギヤとなり、第一プラネタリギヤ11は、トルクを伝達しないが、第一リングギヤ31の内歯31aと当接する。
【0028】
また、開きバネ13、及び閉じバネ14の数は同数である。これにより、リングギヤ31、32にトルクと伝達している第一プラネタリギヤ11と第二プラネタリギヤ12の数が同数となり、リングギヤ31、32の偏摩耗が更に抑制される。
【0029】
図1に示すように、開きバネ13と閉じバネ14は、プラネタリギヤ11、12の配置方向に関して交互に設けられている。これにより、開きバネ13や閉じバネ14の付勢力によりプラネタリギヤ11、12がこれらの回転軸に対して傾く力がバランスして相殺される。このため、開きバネ13と閉じバネ14の付勢力によるプラネタリギヤ11、12の回転軸に対する傾きが防止され、サンギヤ2の回転軸に対する傾きが防止され、サンギヤ2の傾きに起因する歯打音の発生が抑制される。
【0030】
第一リングギヤ31と第二リングギヤ32は、それぞれの内歯31a、32aの位相がずらされた状態で重ね合わされて設けられている。これにより、
図6に示すように、内歯31a、32a位相差によって、これら内歯31a、32aに噛合するプラネタリギヤ11、12にも位相差が生じる。これにより、
図6に示すように、第一プラネタリギヤ11と第二プラネタリギヤ12の歯11d、12dを、隙間無くサンギヤ2の歯2aに当接させることができる。これにより、第一プラネタリギヤ11及び第二プラネタリギヤ12とサンギヤ2とのバッシュクラッシュの発生を防止することにより、より一層歯打音の発生を抑制することができる。また、第一プラネタリギヤ11及び第二プラネタリギヤ12とサンギヤ2とのバッシュクラッシュの発生を防止することができるので、サンギヤ2の回転方向を切り替えた際のキャリア21、22の位置決め精度をより向上させることができる。
【0031】
また、第一プラネタリギヤ11と第二プラネタリギヤ12の歯幅は同一である。これにより、第一プラネタリギヤと第二プラネタリギヤのそれぞれと噛合するリングギヤ31、32の噛合面(トルク伝達面)に作用する応力が等しくなり、リングギヤ31、32の偏摩耗をより抑制することができる。
【0032】
(別の実施形態)
以上説明した実施形態では、リングギヤは、第一リングギヤ31と第二リングギヤ32とから構成されている。しかし、単一のリングギヤが第一プラネタリギヤ11及び第二プラネタリギヤ12と噛合する実施形態であっても差し支え無い。
【0033】
以上説明した実施形態では、第一プラネタリギヤ11と第二プラネタリギヤ12は4つ設けられ、偶数である。しかし、第一プラネタリギヤ11と第二プラネタリギヤ12の数はこれに限定されず、2以上であれば差し支え無く、また奇数であっても差し支え無い。
【0034】
以上説明した実施形態では、サンギヤ2からトルクが入力され、キャリア21、22からトルクが出力される。しかし、トルクの入出力はこれに限定されず、例えば、キャリア21、22からトルクが入力され、サンギヤ2やリングギヤ31、32からトルクが出力される実施形態、リングギヤ31、32からトルクが入力され、キャリア21、22やサンギヤ2からトルクが出力される実施形態であっても差し支え無い。
【0035】
第一プラネタリギヤ11と第二プラネタリギヤ12を開く方向又は閉じる方向に付勢する部材は、
図3に示す開きバネ13や閉じバネ14に限定されず、例えばゴム等の弾性体であっても差し支え無い。
【符号の説明】
【0036】
2…サンギヤ、11…第一プラネタリギヤ(シザースギヤ)、12…第二プラネタリギヤ(シザースギヤ)、13…開きバネ(第二付勢部材)、14…閉じバネ(第一付勢部材)、21…第一キャリア(キャリア)、22…第二キャリア(キャリア)、31…第一リングギヤ、32…第二リングギヤ