特許第6160507号(P6160507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6160507
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】レンズアレイ及びレンズアレイ製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20170703BHJP
   G02B 3/06 20060101ALI20170703BHJP
   B29D 11/00 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   G02B3/00 A
   G02B3/00 Z
   G02B3/06
   B29D11/00
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-33946(P2014-33946)
(22)【出願日】2014年2月25日
(65)【公開番号】特開2015-158623(P2015-158623A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年5月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115129
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100102716
【弁理士】
【氏名又は名称】在原 元司
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】安田 晋
(72)【発明者】
【氏名】清水 敬司
【審査官】 川俣 洋史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−037219(JP,A)
【文献】 特開2013−178364(JP,A)
【文献】 特開2008−147347(JP,A)
【文献】 特開2007−171314(JP,A)
【文献】 特開平05−335693(JP,A)
【文献】 特開2009−009291(JP,A)
【文献】 特開平04−231803(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0157677(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 3/00
B29D 11/00
G02B 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に電極が形成された基板と、
前記基板及び前記電極の表面に形成された絶縁層と、
前記基板及び前記絶縁層に溝として設けられる隔壁と、
前記隔壁間に、電解液によって形成されたレンズと、
前記電極と前記電解液とに接続された配線
を有しており、
前記溝は、前記絶縁層に、刃を切り込ませること、レーザー光照射、溶剤によるエッチング、型による押し当て、又は、これらの組み合わせによって作成されており、
前記隔壁は、前記溝の両側に絶縁層を盛り上がらせることによって2つの隔壁が作成されている
ことを特徴とするレンズアレイ。
【請求項2】
前記隔壁と接して前記レンズを覆う蓋板をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載のレンズアレイ。
【請求項3】
前記溝に導電性物質を有し、該導電性物質は前記電極を接続する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズアレイ。
【請求項4】
前記隔壁は前記基板に対して格子状に設けられ、
前記導電性物質は格子の頂点部分を含むように設けられて前記電極を接続する
ことを特徴とする請求項3に記載のレンズアレイ。
【請求項5】
樹脂基板の表面に電極を形成する電極形成ステップと、
前記電極が形成された樹脂基板の表面に絶縁層を形成する絶縁形成ステップと、
前記電極を切断する溝によって隔壁を形成する隔壁形成ステップと、
前記隔壁間に、電解液によってレンズを形成するレンズ形成ステップと、
前記電極と前記電解液とを接続するように配線する配線ステップ
を有しており、
前記溝は、前記絶縁層に、刃を切り込ませること、レーザー光照射、溶剤によるエッチング、型による押し当て、又は、これらの組み合わせによって作成されており、
前記隔壁は、前記溝の両側に絶縁層を盛り上がらせることによって2つの隔壁が作成されている
ことを特徴とするレンズアレイ製造方法。
【請求項6】
前記溝に導電処理を施す導電ステップ
を有し、
前記導電性物質は前記溝によって切断された電極を接続する
ことを特徴とする請求項5に記載のレンズアレイ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズアレイ及びレンズアレイ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作製が容易で微細加工が可能であり、加工精度に起因する光軸のバラツキと電圧駆動時の液滴の偏心を抑えることを課題とし、レンズアレイは、導電性の第1の液体と絶縁性の第2の液体(液滴)が互いに混和することなく充填された密閉性のセルの内部に、液滴を収容する角錐状の凹部が二次元的に複数形成されており、凹部が角錐状に形成されることによって、当該凹部に収容される液滴のセンタリング性を高めることができ、液滴の界面によって形成されるレンズ素子の光軸のバラツキを抑えることができ、また、光軸を安定に保持して電圧駆動時の液滴の偏心を防ぐことができ、さらに、当該凹部が円錐状である場合に比べて微細加工が容易であり、凹部の稠密配置が可能となることが開示されている。
【0003】
特許文献2には、透明性の向上を図る上で有利な光学素子を提供することを課題とし、光学素子は、容器と、第1、第2の液体と、第1の電極と、第2の電極と、絶縁膜と、撥水膜と、電圧印加手段とを含んで構成されており、容器の厚さ方向から見て、第1の電極には第1の電極開口部が設けられ、第2の電極には第2の電極開口部が設けられ、絶縁膜には絶縁膜開口部が設けられ、撥水膜には撥水膜開口部が設けられており、電第2の液体部分で形成される透過路の直径もD1乃至Dmaxにわたって増減し、光学素子の入射面から入射した光は、透過路の直径の大小に拘わらず、第1の端面壁を透過したのち、第1の電極開口部、第2の液体部分、撥水膜開口部、絶縁膜開口部、第2の電極開口部、第2の端面壁をこの順番で透過することが開示されている。
【0004】
特許文献3には、表面の所定の位置に、滴をセンタリングする方法として、鐘形のくぼみを形成することよりなり、該くぼみは、滴とくぼみの接触の境界のポイントにおいて、該ポイントならびに対称ポイントの両方で表面に接している円の曲率よりも小さい、又はそれと反対の曲率を備えるよう該位置に形成されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−212943号公報
【特許文献2】特開2009−128791号公報
【特許文献3】特表2002−540464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、焦点距離を制御するレンズアレイにおいて、レンズピッチの変更を抑制することができるレンズアレイ及びレンズアレイ製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
請求項1の発明は、表面に電極が形成された基板と、前記基板及び前記電極の表面に形成された絶縁層と、前記基板及び前記絶縁層に溝として設けられる隔壁と、前記隔壁間に、電解液によって形成されたレンズと、前記電極と前記電解液とに接続された配線を有しており、前記溝は、前記絶縁層に、刃を切り込ませること、レーザー光照射、溶剤によるエッチング、型による押し当て、又は、これらの組み合わせによって作成されており、前記隔壁は、前記溝の両側に絶縁層を盛り上がらせることによって2つの隔壁が作成されていることを特徴とするレンズアレイである。
【0008】
請求項2の発明は、前記隔壁と接して前記レンズを覆う蓋板をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のレンズアレイである。
【0009】
請求項3の発明は、前記溝に導電性物質を有し、該導電性物質は前記電極を接続することを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズアレイである。
【0010】
請求項4の発明は、前記隔壁は前記基板に対して格子状に設けられ、前記導電性物質は格子の頂点部分を含むように設けられて前記電極を接続することを特徴とする請求項3に記載のレンズアレイである。
【0011】
請求項5の発明は、樹脂基板の表面に電極を形成する電極形成ステップと、前記電極が形成された樹脂基板の表面に絶縁層を形成する絶縁形成ステップと、前記電極を切断する溝によって隔壁を形成する隔壁形成ステップと、前記隔壁間に、電解液によってレンズを形成するレンズ形成ステップと、前記電極と前記電解液とを接続するように配線する配線ステップを有しており、前記溝は、前記絶縁層に、刃を切り込ませること、レーザー光照射、溶剤によるエッチング、型による押し当て、又は、これらの組み合わせによって作成されており、前記隔壁は、前記溝の両側に絶縁層を盛り上がらせることによって2つの隔壁が作成されていることを特徴とするレンズアレイ製造方法である。
【0012】
請求項6の発明は、前記溝に導電処理を施す導電ステップを有し、前記導電性物質は前記溝によって切断された電極を接続することを特徴とする請求項5に記載のレンズアレイ製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1のレンズアレイによれば、焦点距離を制御するレンズアレイにおいて、レンズピッチの変更を抑制することができる。
【0014】
請求項2のレンズアレイによれば、基板を傾けた場合にレンズである電解液が流れてしまうことを抑制することができる。
【0015】
請求項3のレンズアレイによれば、本構成を有していない場合に比較して、配線数を減少させることができる。
【0016】
請求項4のレンズアレイによれば、焦点距離を制御する2次元レンズアレイにおいて、レンズピッチの変更を抑制することができる。
【0017】
請求項5のレンズアレイ製造方法によれば、焦点距離を制御するレンズアレイにおいて、レンズピッチの変更を抑制するレンズアレイを製造することができる。
【0018】
請求項6のレンズアレイ製造方法によれば、本構成を有していない場合に比較して、配線数を減少させるレンズアレイを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】レンズアレイの製造方法の例を示す説明図である。
図2】レンズの焦点距離を制御する原理の例を示す説明図である。
図3】レンズの焦点距離の制御によってレンズを変形させる例を示す説明図である。
図4】レンズの焦点距離を制御する例を示す説明図である。
図5】刃によって隔壁を形成する例を示す説明図である。
図6】レンズアレイの製造方法例を示すフローチャートである。
図7】レンズアレイに蓋板を用いた形態例を示す説明図である。
図8】レンズアレイの配線例を示す説明図である。
図9】レンズアレイの配線例を示す説明図である。
図10】2次元レンズアレイの製造方法例を示す説明図である。
図11】2次元レンズアレイの配線例を示す説明図である。
図12】2次元レンズアレイの配線例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本実施の形態を説明する前に、その前提となる技術について説明する。なお、この説明は、本実施の形態の理解を容易にすることを目的とするものである。
レンズアレイとは、正立像を形成する要素レンズ(レンズエレメント)を複数並列的に配列し、像を重ね合わせて全体で1個の連続像を形成する光学系であり、半円柱のレンズを並べたレンチキュラーレンズ等を含む。例えば、3次元画像(3Dともいう)を表現すること、視線を換えることによって複数の画像を表示すること(チェンジングともいう)ができる。配列としては、後述する図1の例のように1次元的に配列したもの(例えば、シリンドリカルレンズアレイ等)、図10の例のように2次元的に配列したもの(例えば、正方形レンズアレイ等の2次元レンズアレイ)等のマイクロレンズアレイが含まれる。
また、レンチキュラーレンズやフライアイレンズのようなレンズアレイを用いた立体(3D)表示技術が知られている。この技術では、レンズアレイを平面(2D)画面(例えば、液晶ディスプレイ等)に重ねて用いられる。通常、レンズアレイの焦点面にディスプレイ面がくることになる。
表示される画像(動画等の映像を含む)の立体感はレンズの焦点距離により影響されるため、表現したい立体感に応じてレンズの焦点距離を制御できることが望ましい。
さらに、通常の2D画像やテキストを表示する場合(3D画像以外の画像を表示する場合)、レンズアレイが存在すると、そのレンズアレイの下にある通常の2D画像やテキストの認識がしづらくなる。
【0021】
これらは、レンズの焦点距離が固定であるために生じる。
レンズの焦点距離を制御する方法として、Electrowetting効果を用いたレンズが知られている(文献:Appl. Phys. Lett, 85, 1128(2004), R. Shamai, et al, Soft Matter, 4, 38(2008))。この技術は、電解液の液滴形状を電場で制御することで、電解液で構成されるレンズの焦点距離(曲率)を制御する技術である。
図2は、レンズの焦点距離を制御する原理の例を示す説明図である。樹脂基板100の表面に絶縁層120が形成されており、絶縁層120上に液滴である電解液160があり、樹脂基板100と電解液160との間に電圧を印可(電場を生成)して、その電解液160の形状を変形させた例を示している。図2(b)の例に示すように、形状が変更した電解液160はレンズ幅が変化する。つまり、レンズピッチが変化することとなる。
【0022】
レンズピッチを変えずにレンズ効果の有無を切り替える(2D/3D表示の切り替え)には、レンズ材料(液体)を凹状の基板面に塗布することが必要である。
特許文献3には、レンズ位置のセンタリング性を向上させるために、基板に円錐状凹部を設けることが記載されている。しかし、円錐状の凹部を精度よく作製することは非常に困難である。それを解決するために、特許文献1では、凹部を角錐状にすることが記載されている。
【0023】
以下、図面に基づき本発明を実現するにあたっての好適な一実施の形態の例を説明する。
本実施の形態のレンズアレイは、表面に電極が形成された基板と、基板及び電極の表面に形成された絶縁層と、基板及び絶縁層に溝として設けられる複数の隔壁と、複数の隔壁間に、電解液によって形成されたレンズと、電極と電解液とに接続された配線によって構成されている。なお、基板として樹脂基板を例示して説明する。また、「基板及び絶縁層に溝として設けられる複数の隔壁」とは、例えば、電極を切断する溝によって形成された複数の隔壁である。このレンズアレイは、Electrowetting効果(電気的濡れ性効果)を用いたものである。Electrowetting効果とは、電極上の膜に置かれた液滴に電圧を加えることにより、液滴の接触角が変化する現象のことであり、図4を用いて詳述する。
【0024】
レンズアレイ、そのレンズアレイの製造方法について、図1図3〜6を用いて説明する。図1は、レンズアレイの製造方法の例を示す説明図である。図3は、レンズの焦点距離の制御によってレンズを変形させる例を示す説明図である。図4は、レンズの焦点距離を制御する例を示す説明図である。図5は、刃によって隔壁を形成する例を示す説明図である。図6は、レンズアレイの製造方法例を示すフローチャートである。このフローチャートにしたがって、各図を用いて説明する。図1等では、シリンドリカルレンズを例にして説明するが、この製造方法はレンズ形状にはよらず適用可能である。例えば、正方形レンズ、円形レンズ等がある。
【0025】
ステップS602では、樹脂基板100を作成する。樹脂基板100は、透明な基板であればよく、後述するように、樹脂基板100の表面に電極110(この電極110は膜状のものであってもよい)、絶縁層120を形成できるものであればよい。また、隔壁を形成する一部となるので、刃等で凹部を形成できるものであればよい。より具体的には、樹脂基板100としては透明性と寸法安定性の高い樹脂が望ましく、例えば、シクロオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、PETG、シクロオレフィン樹脂の例として、ARTON(R)(JSR社製)とゼオネックス(R)(日本ゼオン社製)等がある。
【0026】
ステップS604では、図1(a)の例に示すように、樹脂基板100の表面に電極110を形成する。例えば、蒸着等により金属膜等の電極110を形成すればよい。この電極110がレンズアレイの電極となる。なお、電極110が透明であれば、樹脂基板100の表面全面であってもよい。透明電極の例として、ITO(酸化インジウムスズ)、ZnO(酸化亜鉛)等がある。ただし、一般的にはレンズを形成する領域には形成せず、隔壁を形成する箇所(スクラッチライン130a、スクラッチライン130b)に電極110a、電極110bを形成する。
【0027】
ステップS606では、図1(b)の例に示すように、電極110を含む樹脂基板100に絶縁層120を形成して、レンズ基板190を作成する。本実施の形態における絶縁層120としては、絶縁性のあるものであれば特に制限はないが、透明性が高いものが望ましい。絶縁層120に用いられる樹脂としては、樹脂基板100に用いられるものと同じ樹脂やフッ素樹脂がある。
ステップS604で電極110を形成した樹脂基板100の表面にさらに、絶縁層120を形成する。例えば、スピンコート等の技術を用いればよい。さらに、絶縁層120の表面に撥液処理を施してもよい。以下、この多層基板をレンズ基板190と呼ぶ。
【0028】
ステップS608では、図1(c1)、(c2)の例に示すように、レンズ基板190の表面を刃180でスクラッチして、隔壁を形成する。図1(c2)の例は、隔壁を形成したレンズ基板190の断面図を示すものである。隔壁の形成とは、図5(a)の例に示すように、ステップS606で作成したレンズ基板190に対して、鋭利な刃180でスクラッチして、隔壁(隔壁142a1、隔壁142a2等)を形成する。なお、図5の例では、説明を簡略化するため、電極110を省略している。ここで、「刃によって隔壁を形成」とは、絶縁層120に刃180を切り込ませて、溝(溝140a等)を作り、その刃180の両側に絶縁層120(隔壁の一部として樹脂基板100、電極110を含む)を盛り上がらせることによって隔壁(隔壁142a1、隔壁142a2等)を作成することである。また、刃180による隔壁形成によって電極110を切断することとなる。図1(c1)の例では、電極110aは電極110a1、電極110a2に切断されており、電極110bは電極110b1、電極110b2に切断されている。
「溝」と「隔壁間」について説明する。「溝」とは、後述するレンズを形成する隔壁間とは異なり、1つの組である第1の隔壁と第2の隔壁の間にある溝のことであり、溝にはレンズは形成されず、レンズとレンズの間の領域になる。「隔壁間」とは、2つの組の隔壁があり、前述と同様に1つの組は第1の隔壁と第2の隔壁であり、もう1つの組は第3の隔壁と第4の隔壁である場合、第2の隔壁と第3の隔壁が隣り合う場合、第2の隔壁と第3の隔壁の間のことであり、レンズが形成される領域である。刃によって隔壁を形成した場合、「溝」は1つの刃によって形成されたスクラッチ跡である。「隔壁間」は、2つの刃によって形成された4つの隔壁(2組の隔壁)のうち、中央の2つの隔壁間(一方の組の隔壁と他方の組の隣り合う隔壁との間)のことである。図1(c2)の例で示すと、溝140aは隔壁142a1と隔壁142a2の間にあり、隔壁間150は隔壁142a2と隔壁142b1の間である。
なお、隔壁形成の方法として、刃180の引っ掻き以外に、レーザー光照射、溶剤によるエッチング、型による押し当て、これらの組み合わせでもよい。
【0029】
ステップS610では、図5(b)の例に示すように、滴下装置を用いて隔壁間に電解液160を吐出する。本実施の形態に用いられる電解液160としては、導電性をもつ液体であれば特に制限はない。例えば、塩のようなイオン成分を加えた水(食塩水、硫酸ナトリウム水溶液など)が挙げられる。隔壁間150が凹部となり、レンズを形成する箇所となる。これによって、図2(c)を用いて前述したように、電圧を印可してもレンズピッチの変化を抑制することになる。
ステップS612では、図1(d)の例に示すように、配線処理を施す。電極110a2に電線170aを接続し、電極110b1に電線170bを接続し、電解液160に電線174を接続し、電源170によって電圧を印可する。電解液160によりレンズ形状を形成し、電圧印加によりレンズ形状を制御する。つまり、電圧印可を制御することによってレンズ(電解液160)の曲率を変化させて、図3(a)の例に示すように3Dレンズ用に電解液160を盛り上がらせたり、図3(b)の例に示すように2Dレンズ用(レンズ効果なし)に平面にしたりすることができる。もちろんのことながら、図3(a)の例と図3(b)の例の中間の曲率に変化させることもできる。なお、図1では、1つのレンズの例を示しているが、レンズアレイであるので複数のレンズであることは明らかである。
【0030】
図4に示す例を用いて、Electrowetting効果による曲率(接触角)の制御について説明する。図4(a)の例は電源OFFの状態を示しており、図4(b)の例は電源ONの状態を示している。なお、θ、θは隔壁142a2に対する電解液160の表面の接触角を示している。
【数1】
この(1)式により、接触角θは、静電容量Cや電圧Vが大きくなるにつれて小さくなる。つまり、表面電荷により接触角は減少する(θ>θ)。
【0031】
また、隔壁間にレンズを形成するレンズアレイとして、図7の例に示すようにしてもよい。つまり、レンズアレイの上部に、複数の隔壁と接しており、レンズを覆うように透明な蓋板700を設けてもよい。本実施の形態における蓋板700は、透明性があるガラスや樹脂が用いることができる。レンズアレイが使用される波長に対して透明性が高いことが望ましい。蓋板700の例として、樹脂基板100で用いられる樹脂と同じものが挙げられる。
そして、蓋板700側の電解液160に接続する電極として電極710a2、電極710b1を用いてもよい。電極710a2の位置は隔壁142a2側にあり、電極710b1の位置は隔壁142b1側にある。例えば、電極710a2と電極110a2の2つの間で電場を作る。そして、隔壁間150には、オイル760、電解液160を収める。このようにすることによって、レンズアレイを水平だけでなく、垂直等の状態でも用いることができるようになる。
なお、蓋板700側にある電極について、透明電極を採用したならば、蓋板700の全面に形成することも可能である。
【0032】
図8は、レンズアレイの配線例を示す説明図である。電解液860、電解液862、電解液864等のように、レンズが複数あり、電解液860に対して電線872a、電線872b、電線874aがあり、電解液862に対して電線872c、電線872d、電線874cがあり、電解液864に対して電線872e、電線872f、電線874eがある。つまり、配線は、レンズ基板190側に1つのレンズにつき2つの配線(例えば、電解液860に対して電線872a、電線872b)が必要となる。なお、レンズアレイの個々のレンズの形状を制御する必要があるならば、個々のレンズ用の電源に配線すればよい。
【0033】
図8の例に示した配線を減少させるために、レンズアレイ内の溝に導電性物質を有し、その導電性物質によってその溝によって切断された電極を接続させる。図9は、レンズアレイの配線例を示す説明図である。
レンズアレイの各溝に導電処理を施して配線を減少している。つまり、レンズ基板190側の配線は、図8の例では6本(電線872a〜872f)であったが、図9(a)の例では4本(電線972a、972c、972e、972f)である。図9(b)の例は、図9(a)の例の説明領域950の横断面を拡大したものである。
溝部分に導電性物質910、導電性物質920を入れることにより、電極110a1と電極110a2を接続し、電極110b1と電極110b2を接続している。例えば、銀などの導電性を有する金属粒子をバインダーとなる樹脂に分散させた液体をディスペンサやインクジェット機器により溝内に塗布し硬化させることによって、導電性物質910、導電性物質920を形成する。導電性物質として、例えば、導電性ペーストである藤倉化成株式会社製のドータイトD500、D362、D550、アサヒ化学研究所製のLS−453−1等がある。
【0034】
次に、図10を用いて、2次元レンズアレイの製造方法について説明する。もちろんのことながら、ここでのレンズ基板190にも電極110、絶縁層120が形成されている。
この製造方法は、隔壁構造を格子状に形成するものである。主に正方形レンズの製造方法について、図10を用いて説明する。
図10(a)の例に示すような一方向(垂直方向)の隔壁形成を行う。つまり、レンズ基板190に対して、刃(Blade)1010によって垂直方向の溝(溝1020、1030、1040等)をつけることによって隔壁(隔壁1022、1024、1032、1034、1042、1044等)を生成する。
次に、図10(b)の例に示すような正方形開口の形成を行う。つまり、図10(a)とは異なる方向での隔壁形成を行う。つまり、レンズ基板190に対して、刃1010によって水平方向の溝(溝1070、1080等)をつけることによって隔壁(隔壁1072、1074、1082、1084等)を生成する。例えば、隔壁1044、1052、1074、1082によって1つの正方形開口が形成される。
なお、刃1010をレンズ基板190に対して、相対的に移動することで隔壁を形成しているが、正方形開口の形状をした刃(金型)を基板に押し当てて隔壁を形成してもよい。レーザー光によるアブレーションにより溝構造を形成してもよい。また、この場合、刃の形状として、正方形開口以外に、多角形開口(例えば、長方形(縦と横の長さが異なる四角形)、六角形等)、円開口、楕円開口等を含んでいてもよい。なお、レンズの形状(開口)とは、隔壁によって囲まれた領域の形状のことをいう。
図10(c)の例に示すような滴下装置1096による電解液の吐出を行う。レンズ基板190の第1の隔壁(隔壁1022、1024、1032、1034、1042、1044等)と第2の隔壁(隔壁1072、1074、1082、1084等)によって囲まれた領域(ここでは、正方形)に電解液(電解液1026、1036、1046、1056等)を充填する。つまり、レンズ基板190に生成された隔壁に囲まれた孔にレンズ材の電解液1036等を滴下する。
【0035】
図11は、2次元レンズアレイの配線例を示す説明図である。図10の例のように製造されたレンズアレイにおいても、前述した図9の例に示すように溝において配線を接続することができる。図11の例では、電極1100aと電極1100bを導電性物質1100によって接続し、電極1110aと電極1110bを導電性物質1110によって接続し、電極1120aと電極1120bを導電性物質1120によって接続し、電極1130aと電極1130bを導電性物質1130によって接続したものである。つまり、各レンズ周囲の溝によって切断された電極を接続するように導電性物質を入れる。これによって、レンズ基板190側における各レンズの配線はそれぞれ1箇所で済むことになる。
【0036】
図12は、2次元レンズアレイの配線例を示す説明図である。図12の例では、電極1100aと電極1100bと電極1110aと電極1110bと電極1120aと電極1120bと電極1130aと電極1130bを導電性物質1200によって接続したものである。つまり、隣り合うレンズの溝によって切断された電極を接続するように導電性物質を入れる。ここで隣り合うレンズとは、電極が切断された箇所(導電性物質1200の位置)の周囲にあるレンズ群(図12の例の場合は4つ)のことをいう。これによって、レンズアレイの配線は全体で1箇所で済むことになる。
【0037】
上述した実施の形態は、本発明の実施の形態の一態様であり、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0038】
100…樹脂基板
110…電極
120…絶縁層
130…スクラッチライン
140…溝
142…隔壁
150…隔壁間
160…電解液
170…電源
170a、170b…電線
174…電線
180…刃
190…レンズ基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12