(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圃場から作物を引き抜いて搬送する引抜搬送装置(19)を設け、該引抜搬送装置(19)の機体前側に開閉部材(100,100)を設け、該開閉部材(100,100)よりも機体後側に、該開閉部材(100,100)の開閉量を調節して引抜搬送域(T)の幅を変更する調節機構(108,108)を設け、
前記引抜搬送装置(19)を構成する引抜フレーム(14,14)に回動軸(101,101)を設け、該回動軸(101,101)に前記開閉部材(100,100)を設け、前記開閉部材(100,100)の機体後側に延長部(103,103)を形成し、該延長部(103,103)に前記開閉部材(100,100)が所定量以上回動すると引抜フレーム(14,14)に接触して回動を規制する回動規制部材(104,104)を設けたことを特徴とする農作物収穫機。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の実施の形態について説明する。
図1から
図11に示すのは、実施例の一つとして示す作物収穫機の一種である歩行型の玉葱収穫機である。本件発明では、機体の前進方向を基準として右側を左右一側、左側を左右他側と称するものとする。
【0031】
図1から
図3、及び
図10、
図11で示すとおり、機体フレーム1の後部にエンジン2とミッションケース3を内装する駆動ケース4を設け、該駆動ケース4の上部に燃料タンク5を設けるとともに、前部に分岐伝動ケース6を設ける。該エンジン2は、内装されるリコイルスタータ(図示省略)を手動で始動操作するための、始動グリップ2sを備えており、作業者が始動グリップ2sを引っ張ることでエンジン2を作動させる構成とする。
【0032】
そして、該分岐伝動ケース6の前部に側面視でへの字形状の左右のハンドル支持フレーム7,7の基部を垂直姿勢で設け、該左右のハンドル支持フレーム7,7の屈曲部より上側を後上がり傾斜姿勢で配置し、該左右のハンドル支持フレーム7,7の後端部を平面視でコの字形状のハンドル8で連結する。該ハンドル8は燃料タンク5よりも機体後方に突出させて配置し、該ハンドル8の左右両側にはサイドクラッチ機構(図示省略)を入切させるクラッチハンドル9,9を各々設ける。
【0033】
さらに、
図2及び
図11で示すとおり、前記燃料タンク5の左右一側、即ち機体右側に、機体の前後進及び走行速度を操作する走行操作レバー10を設けるとともに、左右他側、即ち機体左側に、収穫作業に用いる、後述する引抜搬送装置19、横引起し装置41、縦引起し装置64及び左右の走行伝動ケース80L,80Rへの駆動力の入切を切り替える作業操作レバー11を設ける。また、前記ハンドル8の左右一側にエンジン2を停止させるエンジン停止スイッチ96を設けると共に、左右他側にエンジン2の回転数を増減させるスロットルレバー97を設ける。
【0034】
そして、
図1及び
図2で示すとおり、前記分岐伝動ケース6から前側上方に向かって左右の引抜駆動シャフト12,12を後下がり傾斜姿勢で設け、該左右の引抜駆動シャフト12,12の上端部に左右の引抜駆動プーリ13,13を各々装着する。また、前記左右の引抜駆動プーリ13,13の下部に前後方向の長辺を有する左右の引抜フレーム14,14を後上がり傾斜姿勢で各々設け、該左右の引抜フレーム14,14の前端部に左右の引抜従動プーリ15,15を各々回転自在に設ける。
【0035】
さらに、該左右の引抜従動プーリ15,15と左右の引抜駆動プーリ13,13の前後間に亘って複数の左右のテンションローラ16,16…を回転自在に設け、左右の引抜従動プーリ15,15と左右の引抜駆動プーリ13,13と左右のテンションローラ16,16…に玉葱の茎葉部を挟持して圃場から引き抜く左右の引抜搬送ベルト17,17を夫々巻回する。そして、前記左右の引抜フレーム14,14の上方に左右の引抜カバー18,18を左右の引抜フレーム14,14と平行姿勢、即ち傾斜角度を略同じとする後上がり傾斜姿勢で設けることにより、引抜搬送装置19が構成される。
【0036】
また、前記左右の引抜駆動シャフト12,12を被覆する左右のシャフトカバー12a,12aのうち、機体左右他側に、前記引抜搬送装置19の搬送終端部から排出される玉葱の茎葉部を機体左側に排出案内する排葉ガイドプレート20を配置する。該排葉ガイドプレート20は、前記左側の引抜駆動プーリ13の下部で、且つ引抜搬送装置19が茎葉部を搬送しない機体外側位置、即ち非作業位置に配置する。また、排葉ガイドプレート20は、バネ鋼材等の、弾性を有する素材で構成するものとする。
【0037】
上記構成としたことにより、後述する切断回転刃49及び切断固定刃で切断した玉葱の茎葉部が引抜搬送装置19の終端部まで移動すると、茎葉部は左側または右側の引抜搬送ベルト17と排葉ガイドプレート20に挟まれた状態で、機体の左外側または右外側に排出されるので、引抜搬送装置19や機体フレーム1上に茎葉部が残ることが防止され、切断された茎葉部の除去作業が不要とになり、メンテナンス性が向上する。
【0038】
上記の引抜搬送装置19の引抜搬送終端部には、玉葱から切断された茎葉部が搬送され、排葉ガイドプレート20によって機体左側に排出されるが、このとき、茎葉部の一部や、茎葉部に付着している土砂は、下方に落下する。該引抜搬送装置19の引抜搬送終端部の下方には、左右の引抜駆動シャフト12,12と、該引抜駆動シャフト12,12を装着する分岐伝動ケース6が設けられており、この部分に茎葉部が巻き付いたり、土砂が堆積したりしやすい。
【0039】
前記左右の引抜駆動シャフト12,12は、外周部に各々シャフトカバー12a,12aを設けていると共に、分岐伝動ケース6は土砂が入り込み得る隙間のない構造であるので、茎葉部が左右の引抜駆動シャフト12,12に巻き付いて引抜搬送装置19の駆動を停止させたり、土砂が分岐伝動ケース6内の構造部品、例えば、伝動ギア機構6gを摩耗させたりすることは、まず生じ得ない。
【0040】
しかしながら、前記左右のシャフトカバー12a,12aに巻き付いた茎葉部を取り除く必要があると共に、分岐伝動ケース6に付着した土砂を取り除く必要がある。玉葱の茎葉部から生じる粘液は腐食性が強く、放置していると構成部品の耐久性を低下させるものである。また、土砂についても、水分や含有物質によっては構成部品を腐食させることがあるので、付着した茎葉部や土砂は、なるべく速やかに除去する必要があるが、その分作業者が時間と労力を費やす必要がある。
【0041】
上記の問題を解消すべく、
図8及び
図9に示すとおり、前記左右の引抜駆動プーリ13,13に、機体か方に向かって突出するスクレーパ120,120を装着する。該左右のスクレーパ120,120は、前記分岐伝動ケース6の上面に接触する長さとすると共に、ゴムや合成樹脂、あるいは針金等の弾性材で平板状に構成し、分岐伝動ケース6上に付着した茎葉部や土砂を払いつつ、接触時に分岐伝動ケース6の表面を削って傷付けることのない構成とする。
【0042】
また、前記左右のスクレーパ120,120は、左右の引抜駆動プーリ13,13に1つ、または左右の引抜駆動シャフト12,12を中心として点対象となるように2つ設け、左右の引抜駆動プーリ13,13が回転する際の抵抗にならない構成とする。茎葉部や土砂は付着しないこともあると共に、短時間で大量に付着するものではないので、1つまたは2つ設けられていれば十分な除去効果を発揮し得る。
【0043】
なお、前記左右のスクレーパ120,120は、平面視でへの字形状とし、前記左右の引抜駆動プーリ13,13の中心部から外周縁部に向かって突出する平板120sと、前記左右の引抜駆動プーリ13,13の外周縁部の曲線に沿う形状の円弧板120pを組み合わせて構成し、円弧板120pで茎葉部を掻き取ると共に、平板120sと円弧板120pで土砂をかき集めて、下方に落下させる構成としてもよい。
【0044】
さらに、前記左右の引抜駆動シャフト12,12に取り付ける左右の引抜駆動シャフト12,12に、各々ワンウェイクラッチ機構121,121を設ける。該左右のワンウェイクラッチ機構121,121のうち、機体右側のワンウェイクラッチ機構121は、引抜駆動プーリ13の駆動回転を平面視で反時計回りにのみ許容し、時計回り方向に回転させる力がかかるときは空回りさせる。一方、機体左側のワンウェイクラッチ機構121は、引抜駆動プーリ13の駆動回転を平面視で時計回りにのみ許容し、反時計回り方向に回転させる力がかかるときは空回りさせる。
【0045】
上記により、左右の引抜駆動プーリ13,13と分岐伝動ケース6の上下間や、左右のスクレーパ120,120に石等の夾雑物が入り込んだときは、作業者が左右の引抜駆動プーリ13,13を各々空回りする方向に回転させることにより、簡単に夾雑物を除去することができるので、引抜収穫作業の速やかな再開が可能となり、作業能率が向上する。
【0046】
なお、前記左右のワンウェイクラッチ機構121,121のワンウェイ爪122,122は、シアーピンのような、他の部分よりも低い負荷で破断する部材で構成すると、過負荷がかかった際にワンウェイ爪122,122が破断し、左右の引抜駆動プーリ13,13に駆動力が伝動されず、負荷もかからない状態になるので、引抜搬送装置19や、分岐伝動ケース6に過負荷が伝わり続けて破損することが防止される。
【0047】
上記ワンウェイ爪122,122は、引抜搬送装置19の左右両外側から出し入れする構成とすると、破断時の除去作業や交換作業が容易になり、作業能率が向上する。
本願の玉葱収穫機において、前記引抜搬送装置19は、一度に二条分、即ち二つの玉葱の茎葉部を同時、または僅かな間隔を空けて交互に挟持して、土中から玉葱を引き抜くものである。これにより、太い茎葉部をまとめて挟持したり、茎葉部に付着した土や石を茎葉部ごと挟持したりすると、引抜搬送装置19が茎葉部を機体後側に挟持搬送できなくなる、所謂詰まり状態が生じることがある。詰まり状態になると、玉葱の引抜収穫ができなくなる問題が生じると共に、引抜搬送装置19に負荷がかかり、耐久性の低下や破損という問題が生じる。
【0048】
この問題を防止すべく、引抜搬送装置19に、次の構成を加える。
図6で示すとおり、前記左右の引抜フレーム14,14の機体前側で且つ上面に、回動プレート100,100を、機体上下方向の回動軸101,10を介して各々回動自在に装着する。該左右の回動プレート100,100の機体前側端部には、前記左右の引抜従動プーリ15,15を引抜従動回転軸15a,15aを介して各々設けると共に、前記左右の引抜従動プーリ15,15よりも機体後側で、且つ前記左右の引抜搬送ベルト17,17の引抜搬送域T側、即ち引抜搬送装置19の左右方向中央寄りとなる位置に、前記左右の引抜搬送ベルト17,17を巻回域内から引抜搬送域T側に向かって押圧する挟持テンションローラ102,102を各々設ける。
【0049】
そして、前記左右の回動軸101,101よりも機体後側で、且つ前記左右の引抜フレーム14,14よりも機体左右方向の外側、即ち、引抜搬送装置19の引抜搬送域Tから離間する側に、前記左右の回動プレート100,100から機体後側に向かって突出する、プレート延長部103,103を各々形成する。また、該左右のプレート延長部103,103の下面側に、下方に向かって突出し、前記左右の回動プレート100,100が所定量回動すると左右の引抜フレーム14,14に接触するストッパプレート104,104を各々設け、該ストッパプレート104,104には、内周部に螺子溝を刻んだ機体左右方向の雌螺旋孔104a,104aを各々形成する。さらに、前記左右の引抜フレーム14,14の上部側で、且つ引抜搬送域T側に受けナット105,105を各々設け、該左右の受けナット105,105と左右の雌螺旋孔104a,104aに、引抜搬送装置19の左右両外側からアジャストボルト106,106を各々回転可能に差し込む。該左右のアジャストボルト106,106には、外周部に雄螺子溝(図示省力)を形成する。
【0050】
なお、左右の受けナット105,105の径は、左右の引抜フレーム14,14に接する側を左右のストッパプレート104,104の前後幅とする。また、左右の受けナット105,105は、Uナット等の弛み止め機能付きのものとすると、左右の引抜フレーム14,14の反対側、即ち引抜搬送域Tから離間する側に弛み止め用のロックナットを設ける必要がなくなるので、部品点数の削減が図られる。
【0051】
また、左右のアジャストボルト106,106は、左右のストッパプレート104,104を引抜搬送域T側に押して左右の回動プレート100,100を回動させる、押しボルトとしてもよい。
【0052】
そして、前記左右のストッパプレート104,104と左右の受けナット105,105の左右間で、且つ左右のアジャストボルト106,106の外周部に、該左右のアジャストボルト106,106を引抜搬送装置19の左右外側に向かって付勢する、アシストスプリング107,107を各々配置することにより、左右のアジャストボルト106,106の回転操作によって左右の回動プレート100,100を、左右の回動軸101,101を支点として機体左右方向に開閉及び回動させる、アジャスト機構108,108が構成される。
【0053】
これに加えて、前記左右のアジャストボルト106,106と左右の引抜搬送ベルト17,17の左右間隔を拡げるべく、該左右の引抜搬送ベルト17,17に非引抜搬送域NTの巻回域内から接触し、左右の引抜搬送ベルト17,17を引抜搬送域T側に向かって屈曲させる屈曲テンションローラ109,109を設ける。該左右の屈曲テンションローラ109,109は、前記左右のアジャスト機構108,108を操作して回動プレート100,100を回動させるとき、該左右の回動プレート100,100と一緒に回動することを防止すべく、前記左右の回動軸101,101に各々固定する取付プレート110,110の、外側端部に設けるものとする。
【0054】
なお、前記左右の取付プレート110,110は、左右の屈曲テンションローラ109,109を設ける側は該左右の屈曲テンションローラ109,109の径よりも小さく、左右の回動軸101,101に近い位置ほど大きくなる、平面視で扇形状とすると、左右の取付プレート110,110が左右の回動プレート100,100や左右の引抜搬送ベルト17,17と干渉することが無く、玉葱の引抜収穫作業の能率の低下や、左右の回動プレート100,100の回動量が制限されることが防止される。
【0055】
上記の左右のアジャスト機構108,108の動作について説明する。
前記左右のアジャストボルト106,106を締め込む方向、即ち、引抜搬送装置19の外側から、左右方向中央の引抜搬送域Tに向かって操作すると、左右のアジャストボルト106,106に形成した螺子溝が左右のストッパプレート104,104に形成した雌螺旋孔104a,104aに噛み合って引抜搬送域T側に押すことにより、左右のストッパプレート104,104を設けている左右の回動プレート100,100が回動軸101,101を回動支点として、機体前側ほど大きく引抜搬送装置19の外側方向に回動する。
【0056】
該左右の回動プレート100,100のうち、少なくとも左右一方が外側方向に回動すると、引抜搬送装置19を構成する左右の引抜搬送ベルト17,17同士の左右間隔が広がり、挟持されている茎葉部等が自然に下方に落下する、または、簡単に取り除くことが可能な状態になる。
【0057】
また、前記左右のアジャストボルト106,106を締め込み方向に操作する量によっては、左右の引抜搬送ベルト17,17同士の左右間隔を変更することにより、引抜搬送装置19の引抜搬送始端部の間隔を調節することができるので、玉葱の茎葉部の生育状態や、玉葱の植付間隔等の作業条件に合わせて、茎葉部の詰まりが生じにくい状態で作業を行うことが可能となる。
【0058】
また、前記左右のアジャストボルト106,106は捩込式であるので、微調整が容易であり、細かい設定が可能になる。
そして、前記左右のアジャストボルト106,106を弛み方向、即ち引抜搬送装置19の引抜搬送域Tから離間する側に向かって操作すると、左右のストッパプレート104,104が左右のアジャストボルト106,106に引っ張られ、左右の回動プレート100,100が引抜搬送域Tに向かって回動する。
【0059】
このとき、左右のアシストスプリング107,107が左右のアジャストボルト106,106を引抜搬送装置19の左右外側に向かって付勢することにより、左右のアジャストボルト106,106を弛み方向に操作する力が軽減されているので、詰まりの除去作業後や、左右の引抜搬送ベルト17,17の左右間隔を基本位置に戻す際に、調節作業に要する時間の軽減を図ることができる。
【0060】
上記構成としたことにより、引抜搬送装置19の左右両外側から操作可能な左右のアジャスト機構108,108によって、引抜搬送装置19の引抜搬送始端側の開閉や間隔調節を行うことができるので、引抜搬送装置19に詰まった玉葱の茎葉部や土等を除去するときに左右の引抜カバー18,18を外す必要がなくなり、作業能率が向上する。
【0061】
また、工具を持っていなくても開閉操作、間隔調節を行うことができるので、工具を取りにいく時間が生じなくなり、作業能率が向上する。
そして、左右のアジャスト機構108,108を、左右の回動軸101,101よりも機体後側に設けたことにより、茎葉部と共に引き上げられる土砂や雑草等の夾雑物が左右のアジャスト機構108,108に接触することを防止できるので、土砂や茎葉部がアシストスプリング107,107や、左右のストッパプレート104,104と引抜フレーム14,14の左右間に詰まることがなく、引抜搬送装置19の搬送始端側の開閉操作ができなくなることや、左右のアジャスト機構108,108の破損が防止される。
【0062】
さらに、左右のプレート延長部103,103の下方に左右のストッパプレート104,104を設けたことにより、左右のストッパプレート104,104が左右の引抜フレーム14,14に接触すると左右の回動プレート100,100の回動が規制されるので、引抜搬送装置19の詰まり状態を解除する際に左右の回動プレート100,100を回動させ過ぎることが防止され、詰まり解消後の左右のアジャスト機構108,108の操作に要する時間の短縮が図られる。
【0063】
そして、左右の回動プレート100,100が引抜フレーム14,14の機体前側に設けられることにより、左右の回動プレート100,100の前後長さが短くなり、重量が抑えられるので、回動操作に要する作業者の労力の軽減が図られる。
【0064】
また、左右のアジャストボルト106,106をアシストスプリング107,107で引抜搬送装置19の左右外側に向かって付勢することにより、左右の回動プレート100,100を回動させて引抜搬送装置19の引抜搬送始端側の左右間隔を拡げるときには、左右のアジャストボルト106,106の操作に強い力が必要となるので、左右のアジャストボルト106,106を締め込み過ぎて左右間隔が拡がり過ぎることが防止され、引抜搬送装置19の開閉操作の操作性が向上する。
【0065】
一方、引抜搬送装置19の引抜搬送始端側の左右間隔を狭めるときには、左右のアジャストボルト106,106の操作に必要な力を軽減することができるので、作業者の労力の軽減や、開閉操作に要する時間の短縮が図られる。
【0066】
そして、左右の回動軸101,101に固定した左右の取付プレート110,110に左右の屈曲テンションローラ109,109を設けたことにより、左右の回動プレート100,100を回動させても左右の屈曲テンションローラ109,109が左右の引抜搬送ベルト17,17に接触する位置が変化しないので、左右の屈曲テンションローラ109,109が左右の引抜搬送ベルト17,17を屈曲させる位置が変わらず、左右の引抜搬送ベルト17,17と左右のアジャストボルト106,106の左右間隔が一定に保たれ、左右のアジャスト機構108,108の操作性が維持される。
【0067】
なお、引抜搬送装置19の詰まり状態は、左右の回動プレート100,100のどちらか一方を回動させれば解消することができるので、左右のアジャスト機構108,108のうち、左右どちらか一方にのみ設ける構成とすると、部品点数の削減や、機体の軽量化が図られる。
【0068】
このとき、アジャスト機構108を設けない側の引抜フレーム14には、回動プレート100をボルトとナット(図示省略)を介して締結し、ボルトとナットの締結度合いを調節することにより、回動プレート100が回動可能な構成とする。
【0069】
これにより、アジャスト機構108を操作して一方の回動プレート100を回動させても詰まり状態が解消されないときに、ボルトを緩めて他方の回動プレート100を回動可能とすることにより、詰まり状態を確実に解消できる構成となる。
【0070】
上記のアジャスト機構108は、工具を持っていないときでも操作できるが、アジャストボルト106を手作業で操作する必要があり、開閉、間隔調節作業を行う位置によっては、このアジャストボルト106を握りにくく、開閉、間隔調節作業に多くの時間を要することがある。
【0071】
この問題を解消すべく、下記の要素を加えるものとする。
図7で示すとおり、前記左右のアジャストボルト106,106のうち、左右のアジャストボルト106,106を最大まで締め込んだとき、及び最大まで弛めたときに左右の引抜フレーム14,14の上方に位置する部分、無螺子溝区間NSには雄螺子溝を形成せず、左右のストッパプレート104,104及び左右の受けナット105,105を貫通する部分にのみ、雄螺子溝を形成する。前記左右のストッパプレート104,104及び左右の受けナット105,105は、該無螺子溝区間NSが左右の引抜フレーム14,14の上面に接触する上下位置に配置し、左右のアジャストボルト106,106が左右の引抜フレーム14,14に支持される構成とする。
【0072】
そして、茎葉部を機体左側に排出する前記排葉ガイドプレート20を設けていない、機体右側の前記アジャストボルト106の右端にクランク部材106cを設け、該クランク部材106cのうち、機体左右方向を向く部分に、アジャストボルト106の外周を覆うハンドグリップ111を装着する。
【0073】
該ハンドグリップ111は、滑りにくいゴムや合成樹脂で構成し、アジャスト機構108の操作時に作業者の手から離れにくくする。これに加えて、ハンドグリップ111は、細かい凹凸を形成したり、上下方向の所定間隔ごとに溝部を形成したりすると、いっそう滑りにくい構成となる。
【0074】
上記の構成のとおり、アジャストボルト106にクランク部材106cを設けたことにより、アジャストボルト106を回転させる際に必要となる力を抑えることができるので、作業者の労力が軽減される。
【0075】
また、アジャストボルト106に無螺子溝区間NSを形成すると共に、この無螺子溝区間NSを引抜フレーム14が下方から支持することにより、アジャストボルト106が操作時の押し下げ力で歪むことを防止できるので、アジャスト機構108の耐久性が向上する。
【0076】
上記のアジャストボルト106は、ハンドグリップ111を装着する部分が機体一側に突出するため、この部分に隣接条の、引抜作業が行われていない玉葱の茎葉部が接触しやすく、茎葉部が引っ掛かったままで機体を前進させると、茎葉部がちぎれたり、玉葱が地表近くまで持ち上げられたりすることがある。
【0077】
茎葉部がちぎれて短くなると、縦引起し装置64や横引起し装置41が茎葉部を引き起こしにくくなると共に、引き起こされた茎葉部が引抜搬送装置19の搬送始端部に到達する前に倒れて、玉葱が圃場から抜き残される問題がある。また、玉葱が地表まで持ち上げられると、茎葉部の引き起こしの際に玉葱が転がったり、茎葉部が引抜搬送装置19の引抜搬送始端部から逃げたりするので、茎葉部が残ったままの玉葱が発生し、作業者が手作業で茎葉部を除去する必要が生じる。
【0078】
これを防止すべく、アジャストボルト106の右側端部に、クランク部材106aを、回動ピン113を介して回動自在に装着する。該クランク部材106aの右側端部の左右方向の直線部分には、前記ハンドグリップ111を装着する。
【0079】
前記クランク部材106aは、機体前側に回動させると、ハンドグリップ111を設けた部分が機体左右方向を向いて操作状態になると共に、機体後側に回動させると、クランク部材106aが引抜搬送ベルト17の非引抜搬送域NTに接近する収納状態になるものとする。収納状態としたとき、前記クランク部材106aの回動基部とハンドグリップ111の各右端部が、前記引抜搬送装置19の機体右側端部と同一直線状、乃至引抜搬送装置19の機体右側端部よりも引抜搬送域T側に位置するものとする。
【0080】
上記の構成により、アジャストボルト106を操作しないときは、クランク部材106aを機体後側に回動させて収納状態とすることにより、クランク部材106aが機体外側に突出し、未収穫の玉葱の茎葉部を引っ掛けることを防止できるので、玉葱の茎葉部がちぎれたり、地表まで引き抜かれたりすることが防止され、土中に玉葱が抜き残されず、手作業で残った玉葱を引き抜く作業が不要となる。
【0081】
また、茎葉部が玉葱に残されることを防止できるので、収穫作業後に手作業で茎葉部を除去する作業が不要となり、作業者の労力が軽減される。
本件のアジャスト機構108は、引抜搬送装置19に茎葉部が詰まるなどして引抜収穫作業が中断されたときに、引抜カバー18,18を外すことなく搬送始端部の開閉操作を行うものである。しかしながら、引抜カバー18,18を外していないことにより、詰まり解消後に引抜搬送装置19の引抜搬送始端部を閉じる際、適切な位置に戻すことができたかどうかを、目視することが困難である。さらに、引抜カバー18を外しても、回動フレーム100,100の基準となる位置を示すものは無いので、メンテナンス作業後に搬送始端部の間隔を調節するときに、位置調節に余分な時間を費やすことがある。
【0082】
上記の問題を解消すべく、アジャスト機構108を操作しても動かない左右の引抜フレーム14の前端部側に基準目印孔14hを形成し、回動フレーム100のうち、引抜従動回転軸15aと回動軸101の中心点を結ぶ直線状で、且つ基準目印孔14hの上方に、位置合わせ孔100hを形成する。さらに、前記引抜カバー18のうち、基準目印孔14h及び位置合わせ孔100hの上方に、確認孔(図示省略)を形成する。
【0083】
前記基準目印孔14hと位置合わせ孔100hを合わせることにより、引抜搬送装置19の引抜搬送始端部の位置調節の基準を定めることができるので、詰まり状態の解除作業後や、メンテナンス作業後に回動プレート100を回動させる作業に要する時間が短縮される。
【0084】
また、引抜カバー18にも確認孔を形成したことにより、引抜カバー18を外すことなく基準目印孔14hと位置合わせ孔100hを合わせることができるので、余分な着脱作業が省略され、作業能率の向上や作業者の労力の軽減が図られる。
【0085】
前記左右のアジャストボルト106,106のうち、引抜搬送域T寄りの端部は、玉葱や茎葉部に付着していた土砂が接触しやすく、この土砂が雄螺子溝内に入り込んだ状態でアジャストボルト106,106を回すと、雄螺子溝、またはストッパプレート104,104や受けナット105,105に形成した雌螺子溝が摩滅、あるいは変形し、アジャスト機構108,108が正常に機能しなくなるおそれがある。
【0086】
これを防止すべく、
図7で示すとおり、左右のアジャストボルト106,106の端部を覆う蛇腹状のキャップ113,113を、受けナット105,105から引抜搬送域Tに向かって装着する。
【0087】
上記により、搬送中の玉葱や茎葉部から落下する土砂は、キャップ113,113を介して圃場に落下するので、アジャストボルト106,106に土砂が付着することが防止され、アジャストボルト106,106の破損が防止される。
【0088】
図1で示すとおり、前記出力軸6aから駆動力を受けて玉葱の側方及び下方の土を解す揺動ソイラ29を、平面視で前後方向に回動自在に設ける。なお、該揺動ソイラ29は、機体左右他側にも設けてもよい。
【0089】
上記の構成により、出力軸6aを回転させると揺動ソイラ29が平面視で前後方向に回動するので、揺動ソイラ29の基部側から端部側に亘って土を確実に掘り解すことができ、複数条の玉葱を引き抜く際に土が抵抗になることが防止され、作業能率が向上する。
【0090】
特に、揺動ソイラ29の取付基部から機体内側方向に離れた位置に植生している玉葱、即ち畝の左右方向の中央寄りに植生している玉葱の周囲の土が解れやすくなるので、引抜作業能率が向上すると共に、玉葱の抜き残しが防止され、作業者が手作業で玉葱を収穫する時間と労力が軽減される。
【0091】
なお、該揺動ソイラ29は、機体の前進に伴い畝の中に進入し、畝土を土中から解すものであり、土中に植生する玉葱に接触することを防止すべく、玉葱の下方を通過させるものである。揺動ソイラ29が玉葱の下方を通過することにより、玉葱の下部から土中に伸びている細いひげ根に揺動ソイラ29を接触させ、このひげ根を土を解す際に切断することができるので、収穫後の玉葱からひげ根を除去する作業の労力が軽減される。
【0092】
次に、圃場から引き抜いた玉葱の茎葉部を決められた高さで切断し、圃場面に移動させる構成について説明する。
図1または
図2で示すとおり、前記引抜搬送装置19の前端部に設けた左右の引抜従動プーリ16,16の左右の回転軸16a,16aの上端部を、前記左右の引抜カバー19,19を貫通させて上方に突出させ、該左右の回転軸16a,16aの上端部に左右の入力スプロケット31,31を機体前側部分に内装した左右の伝動ケース34,34を後上がり傾斜姿勢で左右の引抜カバー19,19の上部に設ける。また、該左右の伝動ケース34,34の後側に左右の出力スプロケット32,32を回転自在に各々内装するとともに、該左右の入力スプロケット31,31と左右の出力プーリ32,32に左右の伝動チェーン33,33を各々巻回する。
【0093】
そして、前記左右の出力スプロケット32,32の上部側に左右の第1ユニバーサルジョイント35,35の下端部を装着し、該左右の第1ユニバーサルジョイント35,35の上端部に左右の横引起し駆動プーリ36,36を各々装着するとともに、該左右の横引起し駆動プーリ36,36を装着する左右の横引起しフレーム37,37を後上り傾斜姿勢で配置する。該左右の横引起しフレーム37,37の後上がり傾斜角度は、前記左右の引抜フレーム14,14の後上がり傾斜角度よりも大きく設定する。
【0094】
さらに、該左右の横引起しフレーム37,37の下端部に左右の横引起し従動プーリ38,38を各々回転自在に設け、該左右の横引起し駆動プーリ36,36と左右の横引起し従動プーリ38,38の上下間に複数の横引起しテンションプーリ(図示省略)を設ける。また、左右の横引起し駆動プーリ36,36と左右の横引起し従動プーリ38,38と複数の横引起しテンションプーリにゴムやスポンジ等の弾性体で構成する複数の横引起しラグ39a…を等間隔に設けた左右の横引起しベルト39,39を巻回し、該左右の横引起しベルト39,39の上方に前記左右の横引起しフレーム37,37と平行姿勢で左右の横引起しカバー40,40を各々設けることにより、横引起し装置41が構成される。
【0095】
なお、前記左右の横引起しベルト39,39に設けた横引起しラグ39,39a…は、先端部同士が引抜搬送装置19の引抜搬送域Tに近接するとともに互いに接触しない位置に配置する。
【0096】
上記構成により、横引起しラグ39a,39a…同士が接触することが防止されるので、接触の衝撃で引き起こし中の茎葉部が落下することが防止され、引抜搬送装置19で確実に玉葱を圃場から引き抜くことができ、作業能率が向上する。
【0097】
また、前記左右の出力伝動ケース34,34の下部側に、左右の第2ユニバーサルジョイント(図示省略)を内装する中継伝動ケース42,42の上端部を設け、該左右の中継伝動ケース42,42の下端部に左右の肩揃え駆動プーリ43,43をそれぞれ設ける。そして、該左右の肩揃えプーリ43,43の上部及び下部に、左右の上部肩揃えフレーム44,44と左右の下部肩揃えフレーム45,45の前端部を設け、該左右の上部肩揃えフレーム44,44と左右の下部肩揃えフレーム45,45の後端部に左右の肩揃え従動プーリ46L,46Rを各々回転自在に装着し、該左右の肩揃え駆動プーリ43,43と左右の肩揃え従動プーリ46L,46Rに左右の肩揃えベルト50,50を無端状に巻回する。
【0098】
さらに、前記左右の上部肩揃えフレーム44,44のうち、機体左右一側の上部肩揃えフレーム44に、機体後部側を中心に上下回動する切断フレーム47を設け、該切断フレーム47の機体前部側に、前記左右の肩揃えベルト50,50と左右の引抜搬送ベルト17,17で挟持搬送中の茎葉切断刃49を着脱可能に設けると共に、該茎葉切断刃49を回転駆動させる切断モータ48を設けることにより、引抜搬送装置19で搬送中の玉葱の上昇を下部肩揃えフレーム45,45で制限し、茎葉部の切断位置を所定位置に揃えてから切断する、肩揃え装置51が構成される。
【0099】
なお、前記切断モータ48は、バッテリから電気を受けて作動する電動式、後述する油圧バルブ92から作動油を受けて作動する油圧式、あるいはその他の作動方式から、適宜構成しやすいものを用いるものとする。
【0100】
上記構成により、切断位置が所定位置に揃えられてから茎葉部が茎葉切断刃49に切断されるので、茎葉部が大きく切り残されて作業者が後から手作業で茎葉部を切断する作業が不要となるので、作業者の労力が軽減されるとともに、作業能率が向上する。
【0101】
また、玉葱が持ち上げられ過ぎ、茎葉切断刃49が玉葱の球形部分、所謂可食部を切断することを防止できるので、玉葱が傷付くことがなく、玉葱の商品価値が維持される。
そして、茎葉切断刃49を着脱自在に設けたことにより、収穫後に行う玉葱の乾燥作業を、玉葱を吊り下げて行う場合は、茎葉部を切断せずに掘り起こすことができるので、作業条件の適応性の高い作物収穫機となる。
【0102】
さらに、切断フレーム47を上下回動自在に設けたことにより、切断フレーム47を上下方向に回動させて茎葉切断刃49の切断高さを変更自在に構成することができるので、玉葱を圃場で天日乾燥させる際には不茎葉部を僅かに(約3〜5cm)残す切断高さとし、玉葱を乾燥機等に吊るして乾燥させる際には、玉葱を吊るすための茎葉部を大幅に(約10〜20cm)残す切断高さとすることができるので、作業条件の適応性の高い作物収穫機となる。
【0103】
なお、機体左右他側の上部肩揃えフレーム44に固定切断刃を着脱自在に設け、この尾定切断刃を茎葉切断刃49の刃縁部の上側または下側とオーバーラップさせて茎葉部を挟み切る構成とすると、茎葉部を逃がすことなく切断することができるので、玉葱に茎葉部が切断されずに残り、作業者が手作業で残葉を切断する作業が不要となる。ただし、玉葱の茎葉部切除する際、球形部分の近傍から切除すると商品価値を有する可食部が傷付き、品質や商品価値の低下を招くので、茎葉部の下端部側は僅かに切り残されるものとする。
【0104】
また、
図2に示すとおり、右側(機体左右一側)の肩揃え従動プーリ46Rを、左側(機体左右他側)の肩揃え従動プーリ46Lよりも機体前側位置に配置すると共に、左右の上部肩揃えフレーム44,44に、左側の肩揃え従動プーリ46L側に茎葉部を案内するガイドバー52を各々設ける。さらに、左側の肩揃え従動プーリ46Lには、突起を備える円盤部材、所謂スターホイルを装着し、この突起で茎葉部を機体左外側に案内する構成とする。
【0105】
上記構成により、切断された茎葉部を肩揃え装置51の搬送終端部で挟持状態から開放したあと、左側の肩揃えベルト50と左右のガイドバー52,52によって茎葉部を機体左側に案内することができるので、茎葉部の排出方向が一定になり、茎葉部を圃場から回収する際の作業が容易になる。
【0106】
また、機体左側に茎葉部が集中して排出されることにより、機体右側の未収穫の玉葱に茎葉部が落下することを防止できるので、収穫作業を行う玉葱の上に乗った茎葉部が玉葱の収穫作業を妨害することが防止され、作業能率が向上する。
【0107】
前記肩揃え装置51の左右中心の後側には、
図1及び
図4で示すとおり、前記分岐伝動ケース6から駆動力を受けて回転する案内駆動プーリ53を設けた案内駆動ケース56を後下がり傾斜姿勢で且つ後部側を上下回動自在に設け、該案内駆動ケース56の後側下部に案内従動プーリ54を夫々回転自在に設け、該案内駆動プーリ53と案内従動プーリ54に案内ベルト55を巻回して、案内装置57を形成している。
【0108】
該案内装置57を構成する案内ベルト55には、外周縁部に等間隔毎に突起を設け、切り残された茎葉部を受けて玉葱を畝上に案内し、玉葱の茎葉部と根部(ひげ根)が、圃場面に接触しない姿勢で畝上に排出案内するものとする。
【0109】
なお、前記案内駆動プーリ53は、
図4に示すとおり、分岐伝動ケース6からベベルギア機構6bを介して駆動力を受けて回転する駆動回転軸53aに支持され、前記案内従動プーリ54は、右側の上部肩揃えフレーム44から支持する左右一対の支持ロッド54L,54Rに設ける従動回転軸54aに支持される。
【0110】
このとき、左側の支持ロッド54Lを案内ベルト55の巻回域内に進入せず、案内装置57に沿って下方に向かう屈曲形状とすると共に、右側の支持ロッド54Rを案内ベルト55の巻回域内に機体左側から進入し、機体右側から案内装置57に沿って下方に向かう屈曲形状とする。
【0111】
上記により、該案内装置57を、機体下側に向かうほど機体左側に向かう傾斜姿勢とすることができるので、玉葱の根部が地面に接触しない姿勢で圃場面に案内され、乾燥中に根部が再度活着することが防止され、玉葱の回収作業能率が向上すると共に、過度の玉葱の生育が防止され、収穫物の品質が向上する。
【0112】
畝上に排出案内された玉葱の茎葉部と根部が、圃場面に接触しない姿勢となることにより、土に触れた根部が伸びて土中に入り込み、回収時に軽い力で圃場から離れなくことが防止される。また、根部が伸びると、その分玉葱の養分が消費されるので、玉葱の品質が低下するが、この品質低下も防止される。
【0113】
そして、切断後に残っている茎葉部が圃場面に接触していないことにより、手作業で玉葱を回収するときに作業者が玉葱を掴み易くなり、回収作業の能率が向上する。
上記構成により、マルチフィルム等を畝上に敷設して玉葱を栽培しており、移植作業の際に形成する穴部の周縁部と茎葉部が絡み合い、玉葱の引抜収穫の際にマルチフィルムを一緒に持ち上げることがあっても、案内装置57がマルチフィルム越しに玉葱に接触して後側下方に案内することができるので、玉葱が落下する際にマルチフィルムが極端に重なり合うことが防止され、マルチフィルムの除去作業が容易になるとともに、畝上に掘り起こした玉葱の回収作業が容易になる。
【0114】
また、案内装置57の後部側を上下方向に回動可能に構成したことにより、マルチフィルムを敷設しない露地栽培の玉葱を収穫するときなど案内装置57が不要なときには案内作用部を機体フレーム1側に退避させることができるので、様々な作業条件に適応可能な作物収穫機となる。
【0115】
上述のとおり、案内装置57は下部側がマルチフィルムに接触する可能性があるので、マルチフィルムの破損防止を考慮すると、案内ベルト55はゴムに比べて摩擦力の低い、スポンジ等で構成することが望ましい。
【0116】
上記の案内装置57で排出される玉葱は、収穫前に植生していた畝上に落下し、収穫作業後、または天日乾燥後に回収される。しかしながら、正常な玉葱は球状であることにより、排出された際に畝上を転がり、左右の駆動輪84L,84Rやゲージ輪73、及び玉葱の回収作業を行うトラクタ等の作業機の走行装置が通過する畝溝に落下することがある。また、一つの畝に3条または4条の玉葱が植え付けられている畝において、1,2条目の玉葱を収穫する際に、排出される玉葱が、未収穫側、即ち3,4条目の玉葱の植生する側に移動することがある。
【0117】
畝溝に玉葱が落ちていると、作業者は玉葱の収穫作業や回収作業を行う前に、畝溝内の玉葱を畝上に拾い上げる作業が必要になるので、作業能率が低下すると共に、作業者の労力が増大する問題がある。
【0118】
そして、畝溝に玉葱が落ちていることに作業者が気付かず、左右の駆動輪84L,84Rやゲージ輪73、またはトラクタ等の作業機の走行装置が玉葱を踏み潰し、商品価値を失わせてしまうので、収穫量が減少する問題がある。
【0119】
また、未収穫側の畝上に玉葱が転がり落ちると、縦引起し装置64や横引起し装置41、引抜搬送装置19による茎葉部の引起しや挟持引抜搬送を畝上に転がる玉葱が妨げるので、玉葱の抜き残しが発生して作業者が手作業で玉葱を引き抜く必要が生じ、作業者の労力が増大する問題がある。
【0120】
さらに、縦引起し装置64や横引起し装置41、引抜搬送装置19が転がっている玉葱に接触し、玉葱を傷付け、商品価値を低下させてしまう問題がある。
上記の問題を解決すべく、
図1及び
図4で示すとおり、前記機体フレーム1の下部側で、且つ左右の肩揃えベルト50,50の左右両側部に、支持ステー130を各々設ける。
そして、該左右の支持ステー130,130に、前記肩揃え装置51の搬送経路中央部に向かって下方傾斜する屈曲部を形成した調節支持板131を各々設ける。該左右の調節支持板131,131には左右方向の長孔(図示省略)を形成し、この長孔にはノブボルト133等の装着部材を、保持力を緩めたときには摺動自在に設ける。
【0121】
さらに、作業時にゲージ輪73や駆動輪84Rが通過する、畝溝に近い左側の調節支持板131に、玉葱が畝溝に転がることを防止する第1ガイドプレート134を、前記ノブボルト133を介して左右方向に摺動自在に設ける。該第1ガイドプレート134は、調節支持板131に沿って左側に摺動させると畝の上面に接触し、右側に摺動させると下部側が土中に潜り込む上下長さとする。
【0122】
一方、畝の左右方向中央部に近い右側の調節支持板131に、引き抜き収穫した玉葱が、次工程の引き抜き収穫作業位置に移動することを防止する第2ガイドプレート135を、前記ノブボルト133を介して左右方向に摺動自在に設ける。該第2ガイドプレート134は、調節支持板131に沿って右側に摺動させると畝の上面よりも上方に離間し、左側に摺動させると下部側が畝の上面に接触する上下長さとする。
【0123】
そして、左右の第1ガイドプレート134,第2ガイドプレート135の前側下部に、側面視において、機体前側から後側に向かう前下がり傾斜の第1切欠部134c及び第2切欠部135cを形成する。該第2切欠部135cを形成する第2ガイドプレート135の前側端部は、第1切欠部134cを形成する第1ガイドプレート134の前側端部よりも機体後側に形成する。玉葱一つ分に相当する、100〜150mm程度機体後側位置に形成すると、第2ガイドプレート135が玉葱を引抜搬送装置19の引抜搬送域Tに移動することを妨げることが無く、確実に玉葱の引き抜き収穫が行え、作業能率が向上する。
【0124】
上記の構成により、第1ガイドプレート134と第2ガイドプレート135は、正面(背面)視において、機体上側ほど左右間隔が広くなるので、左右間隔が最も狭い箇所を2個の玉葱が左右方向に並んで通過する際、間隔部に詰まって機体後方に移動されなくなり、作業を中断して詰まりを解消する必要が無く、作業能率が向上する。
【0125】
前記第1ガイドプレート134と第2ガイドプレート135の下端部の左右間隔は、標準的なサイズの玉葱2個分に相当する、200〜300mm程度とするとよい。
また、第1ガイドプレート134と第2ガイドプレート135は、各々ゴム等の、強い力がかかると弾性変形し得る材質で構成すると、破損が生じにくく長持ちする。
【0126】
上記の構成により、肩揃え装置51で切断位置を揃えられ、切断回転刃49で茎葉部を切断され、案内装置56によって畝上に排出案内される玉葱は、第1ガイドプレート134と第2ガイドプレート135によって、引抜収穫される前に植生していた、収穫作業の終わった状態の畝上に載置されることになる。これにより、玉葱が畝溝や収穫作業が行われていない側に転がることが防止される。
【0127】
従って、畝溝に落ちた玉葱を拾い集める作業が必要なくなり、次の玉葱の収穫作業や、畝上の玉葱の回収作業を必要なときに行うことができるので、作業能率が向上すると共に、作業者の費やす労力が軽減される。
【0128】
そして、畝溝内に玉葱が無いことにより、左右の駆動輪84L,84Rやゲージ輪73、またはトラクタ等の作業機の走行装置が玉葱を踏み潰すことがなく、玉葱の収穫量が減ることが防止される。
【0129】
また、玉葱が収穫作業を行っていない側に転がることを防止できるので、縦引起し装置64や横引起し装置41、引抜搬送装置19による玉葱の引抜収穫作業が妨げられることがなく、作業能率が向上する。
【0130】
さらに、縦引起し装置64、横引起し装置41及び引抜搬送装置19が、転がっている玉葱を打撃、または圧迫して傷付けることを防止できるので、玉葱の商品価値が維持される。
【0131】
そして、第1ガイドプレート134の上下長さを、下端部が畝上に接触する長さとしたことにより、サイズの小さい玉葱が畝溝に移動する隙間が無くなるので、玉葱が畝溝に落ちることが確実に防止される。
【0132】
また、第1ガイドプレート134の前後長さを、第1ガイドプレート134の後端部が分岐伝動ケース6の下方に位置する長さとしたことにより、機体を前進走行させていても、案内装置57から排出されて後方に向かって転がる玉葱を第1ガイドプレート134で受けて、畝溝に落下することを防止できるので、玉葱を拾う作業が不要となり、作業者の労力の軽減や作業能率の向上、収穫量の減少の防止が図られる。
【0133】
さらに、第1ガイドプレート134の後端部に左右他側に向かう屈曲案内部133aを形成すると共に、第2ガイドプレート134の後端部を案内装置56の搬送方向上手側までとしたことにより、サイズの大きい玉葱が並んだ際、第2ガイドプレート134の後端部から玉葱が側方に移動することができるので、第1ガイドプレート134と第2ガイドプレート135との間に玉葱が詰まることが防止される。
【0134】
これにより、玉葱が引き摺られ、圃場面との摩擦抵抗で傷付くことを防止できるので、玉葱の商品価値が維持される。
また、畝上に排出された玉葱が密集しにくくなるので、天日乾燥させる際には風通しや日当たりが良くなるので、乾燥に要する期間が短縮される。
【0135】
そして、
図1及び
図2で示すとおり、前記分岐伝動ケース6の左右一側に第2分岐伝動ケース6aを設け、該第2分岐伝動ケース6aの前部から機体前方に向かって引起し出力軸58を設け、該引起し出力軸58の前端部に駆動力を左右他側から左右一側に向かう方向に変更するベベルケース59aを装着する。該ベベルケース59aの内部には、一対のベベルギア(図示省略)が内装されており、この一対のベベルギアを介して出力ケース内の引起し出力軸58の駆動力を縦引起し伝動軸59に伝達する。そして、該縦引起し伝動軸59の左右一側端部と左右他側端部と左右方向の略中央部に縦引起し駆動プーリ60,60,60を各々装着し、該縦引起し駆動プーリ60,60,60の左右両側を覆う縦引起しカバー61,61,61を後上がり傾斜姿勢で且つ上下回動自在に装着する。また、該縦引起しカバー61,61,61の下端部に縦引起し従動プーリ62,62,62を各々設け、該縦引起し駆動プーリ60,60,60と縦引起し従動プーリ62,62,62に圃場に倒伏している玉葱の茎葉部を引き起こす縦引起しラグ63a…を複数設けた縦引起しベルト63,63,63を巻回して、縦引起し装置64を構成する。
【0136】
なお、前記縦引起し装置64の後上がり傾斜角度は、前記横引起し装置41の後上がり傾斜角度と略同じ傾斜角度とする。これにより、縦引起し装置64が引き起こした茎葉部が縦引起しラグ63a…から離れるタイミングで横引き起こし装置41の横引起しラグ39a…に引き継がれるので、茎葉部を確実に引き起こして引抜搬送装置19の搬送始端部に案内でき、玉葱の収穫作業能率の向上が図られる。
【0137】
また、畝溝に近い左側(機体左右他側)の端部においては、縦引起し従動プーリ62を、他の位置の縦引起し従動プーリ62よりも機体前側に配置し、縦引起しラグ63a…の引起し作用位置が機体前側に位置する構成とする。これにより、畝と畝溝の境目に垂れ下がっている茎葉部を早めに引き起こすことができるので、茎葉部を掴み損ない、玉葱を引抜収穫し損なうことが防止される。
【0138】
そして、右側と左右中央の縦引起しカバー61,61の前側下部に、縦引起しラグ63a…の茎葉部の持ち上げを補助する第1補助引起しバー65を各々設ける。該第1補助引起しバー65,65は、縦引起しラグ63a…を避ける屈曲部を形成したZ字形状とする。また、中央の第1補助引起しバー65には、該中央の補助引起しバー65の基部とは反対側に延出された延長引起しバー65aが設けられ、2つの玉葱の茎葉部がどのように圃場面に垂れ下がっていても、引き起こしが可能な構成とする。
【0139】
一方、左側の立て引起しカバー61には、前記第1補助引起しバー65,65よりも前後方向に長い、第2補助引起しバー66を直線状に設け、畝と畝溝の境目に垂れ下がる茎葉部が、補助引起しラグ63a…で持ち上げやすい状態とされる構成とする。
【0140】
また、前記縦引起し伝動軸59の左側(機体左右他側)端部には、畝の上面から畝溝に向かう、畝の法面に沿って垂れ下がっている茎葉部を引き起こす、畝溝引起し装置69を設ける。該畝溝引起し装置69を構成する畝溝引起しベルト68には、等間隔にへの字形状に屈曲した畝溝引起しラグ68a…を設け、畝の法面に折り重なるように垂れ下がっている茎葉部を、確実に引き上げる構成とする。
【0141】
なお、
図1及び
図2に示すとおり、前記畝溝引起しラグ68a…が最も機体前側に突出する位相にあるとき、縦引起しラグ63a…の前端部より機体前側に突出すると共に、前記第1補助引起しバー65及び第2補助引起しバー66の前端部よりは機体後側に位置するものとする。
【0142】
これにより、法面に垂れ下がる茎葉部を先行して掻き上げて、機体左側の縦引起し装置63に茎葉部を引き継がせることができ、茎葉部を掴み損ない、玉葱が圃場に残されることが防止される。
【0143】
さらに、前記縦引起し伝動軸59の左側端部にゲージ輪昇降ケース70を設け、該ゲージ輪昇降ケース70の下部に上部アーム71を設け、該上部アーム71にゲージ輪73を回転自在に装着する下部アーム72を上下動自在に設ける。また、前記駆動ケース4側に固定プレート75を設け、該固定プレート75と前記ゲージ輪昇降ケース70の後部の間に、ゲージ輪昇降ケース70内のベベルギア機構(図示省略)を回転させるゲージ輪昇降ロッド76を設け、該ゲージ輪昇降ロッド76を回転させることにより、前記下部アーム72を上下動させるゲージ輪調節ハンドル77を設ける。
【0144】
上記構成としたことにより、畝溝に垂れ下がっている収穫畝上の玉葱の茎葉部をゲージ輪73が踏み付ける前に引き起こすことにより、縦引起し装置64や横引起し装置41が確実に玉葱の茎葉部を引き起こすことができるので、引き起こされた茎葉部を引抜搬送装置19で挟持して土中から引き抜くことができ、作業者が手作業で残された玉葱を引き抜く作業が不要となり、作業者の労力が軽減される。
【0145】
また、収穫畝上の玉葱の茎葉部と隣接畝上の玉葱の茎葉部が畝溝に垂れ下がって絡み合っていても、茎葉部同士を持ち上げて絡み合いを解くことができるので、隣接条の玉葱を半端に引き上げることが防止され、引抜搬送装置19で確実に玉葱を引き抜くことが可能になる。
【0146】
そして、ゲージ輪調節ハンドル77を操作してゲージ輪73を設けた下部アーム72を上昇または下降させることにより、横引起し装置41や引抜搬送装置19の作用位置を玉葱の生育状態や畝の高さに合わせて変更することができるので、茎葉部の引き起こしや引抜搬送が確実に行われ、作業能率が向上する。
【0147】
次に、本機の走行伝動系の構成を示す。
図2及び
図4に示すとおり、前記駆動ケース4の左側(機体左右他側)に左側出力軸78Lを設け、該左側出力軸78Lに走行駆動スプロケット79を装着し、該走行駆動スプロケット79を左側の走行伝動ケース80Lの上端側に内装する。そして、該左側の走行伝動ケース80Lを後上がり傾斜姿勢とし、機体前側に位置する左側の走行伝動ケース80Lの下端側に走行従動スプロケット81を回転自在に内装し、該走行駆動スプロケット79と走行従動スプロケット81に走行伝動チェーン82を巻回する。
【0148】
なお、走行伝動チェーン82の巻回域内にテンションスプロケットを設けたり、負荷がかかると走行伝動チェーン82から退避したりして、駆動を停止させて破損を防止するクラッチ機構を設けてもよい。
【0149】
また、前記走行従動スプロケット81に車軸83を装着し、該車軸83に左側の駆動輪84Lを設ける。
そして、
図1から
図4に示すとおり、前記分岐伝動ケース6の右側(機体左右一側)端部に、右側出力軸78Rを左右方向に摺動自在に設け、該右側出力軸78Rに走行駆動スプロケット79を装着し、該走行駆動スプロケット79を右側の走行伝動ケース80Rの上部に内装する。このとき、前記右側出力軸78Rを装着するための走行伝動ケース80Rの取付孔部は、右側出力軸78Rの径よりも僅かに大径とし、右側出力軸78Rが僅かに上下及び前後方向に移動できる構成とする。
【0150】
また、該右側走行伝動ケース80Rを後上がり傾斜姿勢で配置し、機体前側に位置する右側走行伝動ケース80Rの下端側に走行従動スプロケット81を回転自在に内装し、該走行駆動スプロケット79と走行従動スプロケット81に走行伝動チェーン82を巻回する。また、前記走行従動スプロケット81に車軸83を装着し、該車軸83に右側の駆動輪84Rを設ける。
【0151】
さらに、前記右側出力軸78Rよりも機体前側で、且つ前記分岐伝動ケース6と右側の走行伝動ケース80Rの間に、右側の走行伝動ケース80Rを左右方向に移動させ、左右の駆動輪84L,84Rの左右間隔、所謂トレッドを調節する調節シリンダ89を、機体左右方向に伸縮自在に設ける。そして、該調節シリンダ89よりも機体前側に、前記調節シリンダ89の伸縮によって右側出力軸78Rと共に左右方向に摺動する、摺動ガイド90を機体フレーム1に設ける。また、該摺動ガイド90と右側出力軸78を連結プレート91で連結し、該連結プレート91に形成したU字型の溝部91uに、調節シリンダ89を伸縮自在に臨ませる構成とする。これにより、トレッド調節機構95が構成される。
【0152】
なお、
図2及び
図3に示すとおり、該調節シリンダ89の固定側の基部、即ち機体左側端部は、回動ピン89aによって取り付け、該調節シリンダ89の端部側、即ち機体右側が上下方向に回動自在となる構成とする。
【0153】
該調節シリンダ89を伸縮させる作動油を供給する油圧バルブ92は、前記ミッションケース3の上部で、且つ機体左右方向中央寄りに配置する。該油圧バルブ92には、リリーフバルブ92rを内装し、油圧回路に高負荷がかかると作動油をリリーフバルブ92rからオイルタンク92tに解放し、過負荷による破損の発生を防止する構造とする。このとき、
図5に示すとおり、油圧バルブ92から調節シリンダ89への作動油のやり取りを行う送油ホース93も、溝部91uを通過させる構成とする。
【0154】
なお、上記の調節シリンダ89を電動式とし、この電動式の調節シリンダ89と電源(バッテリ)の間に、負荷による温度上昇によって変形するバイメタルによるスイッチを設け、負荷による過熱状態になると調節シリンダ89の伸縮が停止する構成としてもよい。
【0155】
さらに、前記調節シリンダ89を伸縮操作するトレッド調節レバー94を、前記油圧バルブ92に左右方向に回動自在に設ける。該トレッド調節レバー94は、機体後方で且つ上方に向かって屈曲するへの字形状であり、機体の後方に立つ作業者の近くに端部のグリップ部が位置する構成とする。
【0156】
前記トレッド調節レバー94の下方には、
図1から
図3に示すとおり、前記エンジン2が外気を吸入するエアクリーナ2pが位置すると共に、該エンジン2の排気を放出するマフラ(図示省略)からは大きく離間する配置構成とする。
【0157】
上記の構成では、調節シリンダ89を伸縮させて左右の駆動輪84L,84Rの左右間隔、所謂トレッドの変更を行う構成としたことにより、走行速度や前後進に関係なくトレッド調節機構95を作動させてトレッド調節を行なうことができるので、畝幅が変化するたびに引抜収穫作業を中断して機体を前後進させる必要がなくなり、作業能率の向上や作業者の労力の軽減が図られる。
【0158】
また、畝幅に合わせてトレッドを変更することができるので、畝幅の異なる圃場で作業をするときに右側駆動輪84Rが畝上を移動することがなく、安定した姿勢で玉葱の引抜収穫作業を行うことができ、作業能率が向上する。
【0159】
そして、機体を軽トラック等の荷台に積み込むときや、倉庫等に収容する際には、トレッドを限界まで狭くすることにより、機体の左右幅を短くすることができるので、機体の積み込み作業や収納作業が能率よく行える。
【0160】
さらに、調節シリンダ89の後方に右側伝動軸78Rを設けると共に、調節シリンダ89の前方に摺動ガイド90を設けたことにより、右側の駆動輪84Rの接地や走行によって生じる負荷を分散させることができるので、調節シリンダ89が歪んだり捩れたりして破損することや、伸縮範囲が小さくなり、トレッド調節幅が制限されることが防止される。
【0161】
これに加えて、右側の走行伝動ケース80Rを左右方向に移動させる際、複数個所を機体外側に押す、または機体内側に引く構成となるので、右側の走行伝動ケース80Rは姿勢を変更されることなく移動でき、右側の駆動輪84Rの向きが微細にずれて機体の進行方向が乱れることが防止され、走行性や作物の収穫作業能率が低下することが防止される。
【0162】
また、走行伝動ケース80Rの取付孔部の径を、右側伝動軸78Rの径よりも僅かに大径としたことにより、圃場の凹凸等により右側の駆動輪84Rが上下動した際、右側伝動軸78Rが上下及び前後方向に移動することができるので、負荷によって右側伝動軸78Rが破損することが防止される。
【0163】
そして、調節シリンダ89の固定側の取付基部を、回動ピン89aを介して設けたことにより、圃場の凹凸等により右側の駆動輪84Rが上下動しても、調節シリンダ89は右側の駆動輪84Rの上下動に追従して上下回動するので、トレッドの調節が必要なときに調節シリンダ89が伸縮可能となり、右側の駆動輪84Rの上下位置を変更する必要がなく、作業能率が向上する。
【0164】
さらに、右側出力軸78と摺動ガイド90を連結プレート91で連結したことにより、右側出力軸78と摺動ガイド90が連動して摺動するので、右側の走行伝動ケース80Rや駆動輪84Rが傾斜姿勢になることが防止され、任意のトレッドが設定できると共に、走行性能が安定する。
【0165】
また、油圧バルブ92に、作動油をオイルタンク92tに移動させて減圧するリリーフバルブ92rを設けたことにより、走行停止中にトレッド調節レバー94を誤操作してトレッド調節機構95が作動しても、油圧バルブ92内の圧力が高くなるとリリーフバルブ92rが作動油をオイルタンク92tに還流させ、調節シリンダ89の伸縮を停止させることができるので、トレッド調節機構95が過負荷により破損することが防止される。
【0166】
走行停止中に右側の駆動輪84Rを機体側方に摺動させると、強い接地抵抗が生じるので、調節シリンダ89や右側出力軸78に過負荷がかかり、誤操作等によりトレッド調節機構95が作動したことに気付かないと破損してしまう問題があるが、本構成では過負荷がかかる前に調節シリンダ89の伸縮が自動停止するので、問題の発生が防止される。
【0167】
そして、調節シリンダ89を最大限まで伸ばしたとき、あるいは最小限まで縮めたときにトレッド調節レバー94が操作され続け、過負荷が生じる状態になると、リリーフバルブ92rから作動油がオイルタンク92tに還流されるので、自動的に調節シリンダ89の伸縮操作が終了され、トレッド調節機構95の破損が防止される。
【0168】
また、調節シリンダ89と作動油が移動する送油ホース93を、連結プレート91の溝部91u内に配置したことにより、送油ホース93を調節シリンダ89から抜き取るだけで外すことができるので、メンテナンス作業時に着脱する部材が減り、メンテナンス性が向上する。
【0169】
そして、トレッド調節レバー94を機体後方で且つ上方に向かって屈曲する形状としたことにより、機体後方で操縦作業をする作業者がトレッド調節レバー94を操作しやすくなるので、作業者の労力が軽減されると共に、操作性が向上する。
【0170】
さらに、トレッド調節レバー94を、エアクリーナ2pの上方で、該且つマフラからは左右方向に離間した位置に配置することにより、作業者がマフラから排出される高温の排気ガスに晒されることがなく、作業の快適性が向上する。
【0171】
これに加えて、トレッド調節機構95を操作しやすく、また扱いやすくする構成について、下記のとおり説明する。
図12及び
図13に示すとおり、前記作業操作レバー11の基部側を取り付けるレバーボス11aを機体右側に突出させ、該レバーボス11aに、正面または背面視でU字形状のレバー受けプレート122を設ける。該レバー受けプレート122は、作業操作レバー11を非作業位置、即ち、分岐伝動ケース6から機体各部への駆動力の伝動を遮断する位置に操作すると、該レバー受けプレート122がトレッド調節レバー94を挟み込み、該トレッド調節レバー94の左右方向への操作を規制する状態になる。
【0172】
一方、作業操作レバー11を作業位置、即ち、分岐伝動ケース6から機体各部への駆動力を伝動させる位置に操作すると、該レバー受けプレート122がトレッド調節レバー94よりも下方位置に退避し、該トレッド調節レバー94を左右方向に操作可能な状態になる。
【0173】
上記の構成により、作業操作レバー11の操作に連動してトレッド調節レバー94を操作可能な状態と操作が規制される状態とに切り替えることができるので、停車中に誤ってトレッド調節レバー94が操作され、調節シリンダ89が伸縮することを防止できるので、過負荷により調節シリンダ89が破損することが防止される。
【0174】
一方、作業操作レバー11を操作するとトレッド調節レバー94も同時に操作可能な状態に切り替わることにより、玉葱の収穫開始時にトレッド調節レバー94を操作可能な状態に切り替える必要が無く、作業能率が向上する。
【0175】
なお、前記作業操作レバー11を装着する操作ガイド11gには、非作業位置よりも機体左側、及び機体後側に延長操作孔部11eを形成し、該延長操作孔部11eまで作業操作レバー11を操作すると、前記左右の走行伝動ケース80L,80R内の走行クラッチ(図示省略)が切状態になり、走行伝動のみが遮断される構成としてもよい。
【0176】
このとき、延長操作孔部11eを機体左側及び機体後側に形成し、作業操作レバー11が移動する孔部の形状を平面視でZ形状としたことにより、一旦機体全体への駆動力の伝動が遮断されてから、走行系統のみ駆動力の伝動が停止する状態に切り替わるので、引抜搬送装置19や縦引起し装置64、横引起し装置41及び肩揃え装置54の動作を停止し忘れることが防止される。