特許第6160552号(P6160552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6160552
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】頭部保護エアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/232 20110101AFI20170703BHJP
【FI】
   B60R21/232
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-94101(P2014-94101)
(22)【出願日】2014年4月30日
(65)【公開番号】特開2015-209192(P2015-209192A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2016年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】奥原 正晃
(72)【発明者】
【氏名】河村 功士
(72)【発明者】
【氏名】堀田 直紀
(72)【発明者】
【氏名】陳内 僚介
(72)【発明者】
【氏名】水野 喜夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−056977(JP,A)
【文献】 特表2005−524565(JP,A)
【文献】 特開2011−079354(JP,A)
【文献】 特開2004−249841(JP,A)
【文献】 特開2011−201518(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0218798(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車内側における窓の上縁側に折り畳まれて収納され、上縁側を前記車両のボディ側に取付固定させて、インフレーターからの膨張用ガスを内部に流入させて収納部位から下方に突出しつつ、前記窓の車内側を覆うように展開膨張する構成とされ、
膨張時に、車内側に位置する車内側壁部と車外側に位置する車外側壁部とを離隔させるように内部に前記膨張用ガスを流入させて膨張して、前記窓の車内側を覆う膨張遮蔽部と、
該膨張遮蔽部の上縁側から上方に突出するとともに、前記膨張遮蔽部の上縁を前記窓の上縁側に取り付ける複数の取付部と、
前記膨張遮蔽部の上縁側から上方に突出するとともに、先端側を、前記インフレーターを接続可能に開口させて構成されて、前記インフレーターと接続される略筒状の接続口部と、
を備える構成の頭部保護エアバッグであって、
前記取付部及び前記接続口部が、前記膨張遮蔽部と別体として、前記膨張遮蔽部に取り付けられて配設される構成とされ、
前記膨張遮蔽部が、袋織りにより形成される袋織りバッグ部と、前記車内側壁部を構成する車内側シートと前記車外側壁部を構成する車外側シートとを縫合することにより形成される縫製バッグ部と、を、上下方向側で並設させるとともに、前記袋織りバッグ部と前記縫製バッグ部とを縫合して連結させることにより、袋状として構成され、
前記袋織りバッグ部が、前記膨張遮蔽部の上側の領域を構成するとともに、前記車内側壁部と前記車外側壁部とを重ねるように平らに展開した状態の外形形状を、長方形状とされ
前記縫製バッグ部が、前記膨張遮蔽部における上下の中央より下側の領域に、配設される構成とされていることを特徴とする頭部保護エアバッグ。
【請求項2】
前記袋織りバッグ部は、下縁を、前記縫製バッグ部の上縁の内側に重ねられるようにして、前記下縁を、前記縫製バッグ部の前記上縁に縫合されていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ。
【請求項3】
前記縫製バッグ部の前記車内側シートと前記車外側シートとが、ノンコート布から形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の頭部保護エアバッグ。
【請求項4】
前記接続口部が、前記袋織りバッグ部と別体の織布からなる接続口部用素材から、構成され、
前記袋織りバッグ部が、上縁側に、前記接続口部を挿入させて取り付けるための開口を、備える構成とされ、
前記接続口部が、二つ折りした前記接続口部用素材を前記開口から前記袋織りバッグ部内に挿入させた状態で、前記接続口部を前記開口周縁に縫着させる縫合部位と、前記袋織りバッグ部の開口から前記接続口部の前縁側にかけての部位を縫着させる縫合部位と、前記折りバッグ部の開口から前記接続口部の後縁側にかけての部位を縫着させる縫合部位と、によって、前記袋織りバッグ部に連結される構成とされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の頭部保護エアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車内側における窓の上縁側に折り畳まれて収納され、上縁側を車両のボディ側に取付固定させて、インフレーターからの膨張用ガスを内部に流入させて収納部位から下方に突出しつつ、窓の車内側を覆うように展開膨張する構成の頭部保護エアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、頭部保護エアバッグとしては、袋織りにより形成されて、膨張完了時に窓の車内側を覆う膨張遮蔽部を、外形形状を略長方形状とし、膨張遮蔽部の上縁側から上方に突出する取付部と接続口部とを、膨張遮蔽部と別体として、構成されるものがあった(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の頭部保護エアバッグでは、製造時に、部分的に突出する部位のない略長方形状の膨張遮蔽部のみが、長尺状のシート体からなるエアバッグ用素材を幅方向側で複数に裁断して形成されることから、歩留まりを良好に製造することができた。
【0003】
しかしながら、この特許文献1に記載の頭部保護エアバッグ装置では、膨張遮蔽部全体を袋織りから形成していることから、製造コストを低減させ難く、また、異なる車両に搭載する場合の設計変更が容易ではなかった。
【0004】
また、頭部保護エアバッグとしては、袋織りにより形成される袋織りバッグ部と、車内側壁部を構成する車内側シートと車外側壁部を構成する車外側シートとを縫合することにより形成される縫製バッグ部と、を、前後方向側で並設させ、この袋織りバッグ部と縫製バッグ部とを縫着させることにより、袋状としたものがあった(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2に記載の頭部保護エアバッグでは、エアバッグを、袋織りバッグ部と縫製バッグ部とを並設させることにより、袋織りバッグ部を共用し、縫製バッグ部を搭載させる車両に応じて取り替えることができて、異なる車両に搭載する場合にも、設計変更が容易であった。また、エアバッグ全体を袋織りから形成する場合と比較して、安価に製造可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−89544公報
【特許文献2】特開2009−56977公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に記載の頭部保護エアバッグでは、袋織りバッグ部と縫製バッグ部とを前後方向側で並設させており、袋織りバッグ部が、エアバッグの一部を、上下の全域にわたって構成していることから、窓の高さが異なる車両に搭載させる際には、袋織りバッグ部の形状変更が必要となって、容易に設計変更し難かった。また、上記特許文献2に記載の頭部保護エアバッグを、窓の高さが大きなタイプの車両に搭載する場合、袋織りバッグ部自体の上下方向側の幅寸法を大きく設定することが必要となって、製造コストの増大を避けられず、製造コストの増大を抑制する点に改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、搭載させる車両の窓の高さが異なる場合にも、容易に対処して設計変更することができ、かつ、製造コストの増大も抑制可能な頭部保護エアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る頭部保護エアバッグは、車両の車内側における窓の上縁側に折り畳まれて収納され、上縁側を車両のボディ側に取付固定させて、インフレーターからの膨張用ガスを内部に流入させて収納部位から下方に突出しつつ、窓の車内側を覆うように展開膨張する構成とされ、
膨張時に、車内側に位置する車内側壁部と車外側に位置する車外側壁部とを離隔させるように内部に膨張用ガスを流入させて膨張して、窓の車内側を覆う膨張遮蔽部と、
膨張遮蔽部の上縁側から上方に突出するとともに、膨張遮蔽部の上縁を窓の上縁側に取り付ける複数の取付部と、
膨張遮蔽部の上縁側から上方に突出するとともに、先端側を、インフレーターを接続可能に開口させて構成されて、インフレーターと接続される略筒状の接続口部と、
を備える構成の頭部保護エアバッグであって、
取付部及び接続口部が、膨張遮蔽部と別体として、膨張遮蔽部に取り付けられて配設される構成とされ、
膨張遮蔽部が、袋織りにより形成される袋織りバッグ部と、車内側壁部を構成する車内側シートと車外側壁部を構成する車外側シートとを縫合することにより形成される縫製バッグ部と、を、上下方向側で並設させるとともに、袋織りバッグ部と縫製バッグ部とを縫合して連結させることにより、袋状として構成され、
袋織りバッグ部が、膨張遮蔽部の上側の領域を構成するとともに、車内側壁部と車外側壁部とを重ねるように平らに展開した状態の外形形状を、長方形状とされていることを特徴とする。
【0009】
本発明の頭部保護エアバッグでは、膨張完了時に窓の車内側を覆う膨張遮蔽部が、上下方向側で並設される袋織りバッグ部と縫製バッグ部とから構成されるとともに、袋織りバッグ部を、上側の領域に、配置させて構成されている。すなわち、本発明の頭部保護エアバッグでは、搭載する車両に応じて形状を変更させる際に、袋織りと比較して、素材の裁断寸法を変更するだけで容易でかつ安価に形状変更可能な縫製バッグ部が、膨張遮蔽部の下側の領域を前後の全域にわたって構成していることから、窓の高さが異なる車両に搭載する場合、単に、縫製バッグ部の上下方向側の幅寸法を変更すれば、袋織りバッグ部を共用化させることができ、容易に対処して設計変更することができ、かつ、製造コストの増大も抑制できる。また、本発明の頭部保護エアバッグでは、袋織りバッグ部は、平らに展開した状態の外形形状を、長方形状とされていることから、歩留まりを良好にすることができ、また、製造時において、長尺状のシート体からなるエアバッグ用素材を織成する際に、幅寸法(膨張完了時の上下方向側の幅寸法)を小さく設定される分、従来の頭部保護エアバッグの膨張遮蔽部と比較して、袋織りバッグ部を、多く並設させることができることから、製造コストを一層低減させることができる。
【0010】
したがって、本発明の頭部保護エアバッグでは、搭載させる車両の窓の高さが異なる場合にも、容易に対処して設計変更することができ、かつ、製造コストの増大も抑制できる。
【0011】
また、本発明の頭部保護エアバッグにおいて、袋織りバッグ部を、下縁を縫製バッグ部の上縁の内側に重ねるようにして、下縁を縫製バッグ部の上縁に縫合させる構成とすれば、車内側壁部側と車外側壁部側とにおいて、ともに、膨張用ガスの流入方向の上流側に位置する部位が、内側に配置されることから、エアバッグが内部に膨張用ガスを流入させて膨張する際に、この縫合部位から膨張用ガスが抜け難く、エアバッグを迅速に膨張させることができて、好ましい。
【0012】
さらに、上記構成の頭部保護エアバッグにおいて、縫製バッグ部の車内側シートと車外側シートとを、ノンコート布から形成すれば、エアバッグの製造コストを一層低減させることができ、また、エアバッグ自体の軽量化や折り畳まれたエアバッグのコンパクト化を図ることができて、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態である頭部保護エアバッグを使用した頭部保護エアバッグ装置の車両搭載状態を車内側から見た概略正面図である。
図2】実施形態の頭部保護エアバッグを平らに展開した状態を示す正面図である。
図3図2のIII−III部位の部分拡大断面図である。
図4】実施形態の頭部保護エアバッグの膨張遮蔽部を構成する袋織りバッグ部を平らに展開した状態を示す正面図である。
図5】実施形態の頭部保護エアバッグを構成する部材を並べた状態を示す概略斜視図である。
図6】実施形態の頭部保護エアバッグの製造過程において、袋織りバッグ用素材を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の頭部保護エアバッグ(以下、単に「エアバッグ」と省略する)19は、図1に示すように、2つの窓(サイドウィンド)W1,W2を有した二列シートタイプの車両Vに搭載される頭部保護エアバッグ装置Mに、使用されている。頭部保護エアバッグ装置Mは、エアバッグ19と、インフレーター14と、取付ブラケット11,15と、エアバッグカバー9と、を備えて構成されている。エアバッグ19は、図1に示すように、車両Vの車内側における窓W1,W2の上縁側において、フロントピラー部FPの下縁側から、ルーフサイドレール部RRの下縁側を経て、リヤピラー部RPの上方の領域まで、折り畳まれて収納されている。
【0015】
エアバッグカバー9は、図1に示すように、フロントピラー部FPに配置されるフロントピラーガーニッシュ4と、ルーフサイドレール部RRに配置されるルーフヘッドライニング5と、のそれぞれの下縁から、構成されている。フロントピラーガーニッシュ4とルーフヘッドライニング5とは、合成樹脂製として、フロントピラー部FPとルーフサイドレール部RRとにおいて、それぞれ、ボディ1(車体)側のインナパネル2における車内側に、取付固定されている。また、エアバッグカバー9は、折り畳まれて収納されるエアバッグ19の車内側を覆って、展開膨張時のエアバッグ19を車内側へ突出可能とするために、エアバッグ19に押されて開き可能に構成されている。
【0016】
インフレーター14は、エアバッグ19に膨張用ガスを供給するもので、図1に示すように、外形形状を略円柱状としたシリンダタイプとして、先端側に、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口を、配設させている。インフレーター14は、ガス吐出口付近を含めた先端側を、エアバッグ19の後述する接続口部62に挿入させ、接続口部62(接続口部本体63)の後端63a外周側に配置されるクランプ17を利用して、エアバッグ19に対して連結されている。また、インフレーター14は、図1に示すように、インフレーター14を保持する取付ブラケット15と、取付ブラケット15をボディ(車体)1側のインナパネル2に固定するためのボルト16と、を利用して、インナパネル2においてセンターピラー部CPの上方となる位置に、取り付けられている。インフレーター14は、図示しないリード線を介して、車両Vの図示しない制御装置と電気的に接続されている。
【0017】
取付ブラケット11は、2枚の板金製のプレートから構成されるもので、エアバッグ19の後述する各取付部66,69a,70aを挟むようにして、各取付部66,69a,70aに取り付けられ、取付ボルト12を利用して、各取付部66,69a,70aを、ボディ1側のインナパネル2に取付固定している(図1参照)。
【0018】
エアバッグ19は、図1の二点鎖線に示すように、インフレーター14からの膨張用ガスを内部に流入させて、折り畳み状態から展開して、窓W1,W2や、窓W1,W2の間に配置されるセンターピラー部CPのセンターピラーガーニッシュ6、及び、窓W2の後側に配置されるリヤピラー部RPのリヤピラーガーニッシュ7の車内側を覆うように、展開膨張する構成とされている。実施形態の場合、エアバッグ19は、図2に示すように、膨張完了時に窓W1,W2の車内側を覆う膨張遮蔽部20と、膨張遮蔽部20の上縁20a側から上方に突出して膨張遮蔽部20の上縁20aを窓W1,W2の上縁側に取り付ける複数の取付部66と、膨張遮蔽部20の上縁20a側から上方に突出する略筒状の接続口部62と、を備える構成とされている。取付部66及び接続口部62は、膨張遮蔽部20と別体として構成されている。また、エアバッグ19は、膨張遮蔽部20の前縁から前方に延びて前端側をボディ1側のインナパネル2に取り付けられる連結部材68も、備えている。この連結部材68も、膨張遮蔽部20と別体とされている。
【0019】
また、エアバッグ19は、図2,3に示すように、膨張完了時に車内側Iに位置する車内側壁部21aと車外側Oに位置する車外側壁部21bとを離隔させるように内部に膨張用ガスGを流入させて膨張するガス流入部21と、膨張用ガスGを流入させない非流入部28と、を備えている。ガス流入部21は、膨張遮蔽部20を構成するガス供給路部23、前席用保護部24、及び、後席用保護部25と、接続口部62と、を備える構成とされている。
【0020】
ガス供給路部23は、図2に示すように、膨張遮蔽部20の上縁20a側において、車両Vの前後方向に沿うように、膨張遮蔽部20の前後の略全域にわたって配置されており、インフレーター14から吐出される膨張用ガスを、接続口部62を経て、内部に流入させ、ガス供給路部23の下方に配置される前席用保護部24と後席用保護部25とに案内する構成である。ガス供給路部23において、前後の中央よりやや前方となる位置には、接続口部62が、ガス供給路部23と連通されて上方に突出するように、配置されている。接続口部62は、膨張遮蔽部20(ガス供給路部23)と別体として、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布から形成されている。実施形態の場合、接続口部62は、ガス供給路部23内に配置されるインナチューブ部64と、インナチューブ部64と連通されてガス供給路部23から上方に突出して配置される接続口部本体63と、を備えている。インナチューブ部64は、前後方向に沿って配置される略筒状として、前後両端側を開口させて構成されている。接続口部本体63は、先端側を後方に向けるように屈曲して配置されるもので、先端側となる後端63a側を、インフレーター14を接続可能に開口させている。なお、実施形態では、接続口部62は、インナチューブ部64の下縁側の部位で連結された状態の接続口部用素材74(図5参照)を、二つ折りして、開口を除いた対応する縁部相互を縫合糸を用いて縫着させることにより(図7参照)、後端63a側を開口させた筒状に、形成されている。
【0021】
前席用保護部24は、エアバッグ19の膨張完了時に前席側方の窓W1の車内側を覆うように配置されるもので、後席用保護部25は、後席側方の窓W2の車内側を覆うように配置される。前席用保護部24は、内部領域に厚さ規制部32を配置させるとともに、区画部30,31によって内部領域を区画されて、膨張完了時の厚さを規制されている。後席用保護部25は、内部領域に厚さ規制部33を配置させて、膨張完了時の厚さを規制されている。
【0022】
非流入部28は、膨張遮蔽部20を構成する周縁部29、区画部30,31、厚さ規制部32,33、及び、板状部34と、取付部66と、連結部材68と、を備える構成とされている。なお、膨張遮蔽部20において、非流入部28は、後述する袋織りバッグ部37の領域では、車内側壁部38a(21a)と車外側壁部38b(21b)とを結合させるように織成されて形成されており(図2〜4参照)、後述する縫製バッグ部45の領域では、車内側壁部21aを構成する車内側シート46と車外側壁部21bを構成する車外側シート47とを縫合糸を用いて縫着させて形成される縫合部位56,57から、構成されている(図2,3参照)。
【0023】
周縁部29は、エアバッグ19の外周縁を構成するもので、接続口部62の後端63a側の開口の領域を除いて、膨張遮蔽部20と接続口部62における接続口部本体63との外周側を、全周にわたって囲むように、形成されている。区画部30は、ガス供給路部23の下縁側を構成するとともに、ガス供給路部23と前席用保護部24との一部を区画するように、板状部34の前上端から前方に延び、先端側を斜め下方に向けるように、屈曲して形成されている。区画部31は、区画部30と板状部34との間において、膨張遮蔽部20の下縁側を構成する周縁部29から上方に延びるように、形成されている。厚さ規制部32は、ガス供給路部23の前端近傍となる位置に配置されるもので、外形形状を略楕円形状とされている。厚さ規制部33は、後席用保護部25の領域内において、前後の中央よりやや前方となる位置に配置されるもので、上下方向に沿わせた長尺状として、上端側をガス供給路部23の領域内に配置させている。板状部34は、略長方形状として、前席用保護部24と後席用保護部25との間においてガス供給路部23の下方となる位置に、配置されている。
【0024】
取付部66は、膨張遮蔽部20の上縁20a側から上方に突出するようにして、前後方向に沿って複数(実施形態の場合、4個)配設されている。各取付部66は、膨張遮蔽部20と別体として、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布から形成されて、膨張遮蔽部20の上縁20a側となる周縁部29の部位に、縫合糸を用いて縫着されている。各取付部66には、取付ボルト12を挿通可能な取付孔(図符号省略)が、形成されている。連結部材68は、膨張遮蔽部20の前縁から前方に延びるように配置されている。この連結部材68も、膨張遮蔽部20と別体として、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる織布から形成されている。実施形態の場合、連結部材68は、図2に示すように、膨張遮蔽部20側となる後側部位69を上下に幅広の略長方形状として、前側に、後側部位69の前下端側から前後方向に略沿って前方に延びるベルト部70を配置させている。そして、連結部材68において、後側部位69の上縁側と、ベルト部70の先端(前端)側と、には、取付ボルト12を挿通可能な取付孔(図符号省略)を有した取付部69a,70aが、形成されている。
【0025】
実施形態の場合、エアバッグ19の膨張遮蔽部20は、車内側壁部21aと車外側壁部21bとを重ねるように平らに展開した形状を、略長方形状とされている(図2参照)。さらに、膨張遮蔽部20は、膨張完了形状も、窓W1,W2及びセンターピラーガーニッシュ6,リヤピラーガーニッシュ7の車内側を覆い可能な略長方形板状として、構成されている。
【0026】
また、実施形態の場合、膨張遮蔽部20は、図2,3,5に示すように、袋織りにより形成される袋織りバッグ部37と、車内側壁部21aを構成する車内側シート46と車外側壁部21bを構成する車外側シート47とを縫合することにより形成される縫製バッグ部45と、を、上下方向側で並設させるとともに、袋織りバッグ部37と縫製バッグ部45とを縫合して連結させることにより、袋状として構成されている。
【0027】
袋織りバッグ部37は、ポリアミド糸等を使用した袋織りにより形成されており、膨張用ガスを内部に流入させて車内側壁部38aと車外側壁部38bとを離すように膨張可能としてガス流入部21を構成する膨張部38と、車内側壁部38aと車外側壁部38bとを結合させるように構成されて非流入部28を構成する非膨張部39と、を備え、外表面側(外周面側)を、ガス漏れ防止用のシリコン等からなるコーティング剤により覆われている。縫製バッグ部45は、ポリアミド糸等からなる織布の表面に、コーティング剤を塗布させていないノンコート布から、形成されている。
【0028】
袋織りバッグ部37は、図2に示すように、膨張遮蔽部20の上側の領域を構成するとともに、図4に示すように、車内側壁部38aと車外側壁部38bとを重ねるように平らに展開した状態の外形形状を、長方形状とされている。袋織りバッグ部37は、下縁37b側を、板状部34の部位を除いて車内側壁部38aと車外側壁部38bとに分離可能に、構成されている(図4参照)。この袋織りバッグ部37の車内側壁部38aと車外側壁部38bとに分離している下縁37b側の部位は、縫製バッグ部45の上縁48a,50a側を縫着させるための縫合代部40を構成している。そして、袋織りバッグ部37において、ガス流入部21を構成する部位(前席用保護部24,後席用保護部25の部位)では、この車内側壁部38aと車外側壁部38bとの分離状態から連なって、下縁37b側を開口させるように構成されている(図3,4参照)。また、袋織りバッグ部37は、上縁37a側に、接続口部62を挿入させて取り付けるための開口43を、備えている。この開口43は、図4に示すように、後述する袋織りバッグ用素材73を裁断して形成される袋織りバッグ部37において、車内側壁部38aと車外側壁部38bとを分離させるように開口している。
【0029】
縫製バッグ部45は、実施形態の場合、図2,5に示すように、膨張遮蔽部20において前席用保護部24の下側の領域を構成する前側部位48と、後席用保護部25の下側の領域を構成する後側部位50と、を有する構成とされている。前側部位48と後側部位50とは前後で分離されている。すなわち、実施形態のエアバッグ19では、縫製バッグ部45は、板状部34の下側の領域には、配置されていない。前側部位48と後側部位50とは、それぞれ、長手方向を前後方向に沿わせた略長方形状とされている。実施形態の場合、袋織りバッグ部37と縫製バッグ部45とは、上下方向側の幅寸法比を3:1程度に、設定されており、換言すれば、縫製バッグ部45は、膨張遮蔽部20における上下の中央より下側の領域に、配設されている。縫製バッグ部45を構成する前側部位48と後側部位50とは、それぞれ、上縁48a,50a側を開口させるように構成されている。前側部位48には、周縁部29において前席用保護部24の下部側周縁の領域となる前下側部位29aと、区画部30の下側部位31aと、を構成する縫合部位56が、周縁部29から連なるようにして、形成されている。後側部位50には、周縁部29において後席用保護部25の下部側周縁の領域となる後下側部位29bを構成する縫合部位57が、周縁部29から連なるようにして、形成されている。これらの縫合部位56,57は、両端末を、縫合代部40と各上縁48a,50aとを縫着させている縫合部位53,54を超えて、周縁部29の領域まで進入させるようにして、形成されている(図2参照)。
【0030】
そして、実施形態の場合、袋織りバッグ部37と縫製バッグ部45における前側部位48,後側部位50とは、袋織りバッグ部37における開口41,42周縁となる下縁37b側の縫合代部40を、それぞれ、縫製バッグ部45における前側部位48,後側部位50の開口49,51周縁の上縁48a,50aの内側に重ねるようにして、袋織りバッグ部37の下縁37b側の縫合代部40を、前側部位48,後側部位50の上縁48a,50aに、縫合糸を用いて縫着させるようにして、連結して、袋状の膨張遮蔽部20を構成している(図3参照)。袋織りバッグ部37の下縁37bを、前側部位48,後側部位50の上縁48a,50aに縫着させる縫合部位53,54は、図2に示すように、前後方向に略沿って、前後の略全域にわたって、形成されている。
【0031】
また、袋織りバッグ部37の上縁37a側に形成される接続口部62連結用の開口43は、内部に接続口部62を挿入させた状態で、図2に示すように、車内側壁部38aと車外側壁部38bとを縫着させる縫合部位60F,60Rによって、閉塞されている。開口43は、前後方向に沿った開口幅寸法を、接続口部62におけるインナチューブ部64より大きく設定されている。接続口部62は、開口43の前後の略中央となる領域に、連結されることとなり、開口43における接続口部62を縫着させた部位の前後の残部は、相互に重ねられた状態の車内側壁部38aと車外側壁部38bとを、縫合糸を用いて相互に縫着させることにより、閉塞されている。開口43を閉塞させる縫合部位60F,60Rは、接続口部62を開口43周縁に縫着させている縫合部位59と交差するように形成されるとともに、ガス供給路部23と周縁部29との境界部位より若干下方に位置するように、形成されている。そして、各縫合部位60F,60Rは、端末を、周縁部29の端末と交差させるように、端縁を上方に向けて湾曲させている。また、実施形態の場合、各縫合部位60F,60Rは、接続口部62の前縁62a,後縁62bを、それぞれ、縫着させるように、接続口部62の前縁62a側と後縁62b側とにかけて、連続的に形成されている(図2参照)。
【0032】
次に、実施形態のエアバッグ19の製造について、説明をする。まず、図6に示すように、袋織りバッグ部37を直列的に連続させ、かつ、複数個(実施形態の場合、7個)並設させるように織成され、外表面側にコーティング剤を塗布された袋織りバッグ用素材73を、裁断して、袋織りバッグ部37を、形成する。次に、接続口部用素材74を、二つ折りした状態で、袋織りバッグ部37の上縁37a側の開口43から内部に挿入させ、袋織りバッグ部37の開口43から接続口部62の後縁62b側にかけての部位を、縫合糸を用いて縫着させて縫合部位60Rを形成し、同様に、袋織りバッグ部37の開口43から接続口部62の前縁62a側にかけての部位を、縫合糸を用いて縫着させて縫合部位60Fを形成することにより、後端63a側を開口させた接続口部62を形成すると同時に、袋織りバッグ部37に接続口部62を連結させる。その後、各取付部66と連結部材68とを、縫合糸を用いて、袋織りバッグ部37に縫着させる。
【0033】
次いで、袋織りバッグ部37の車外側壁部38bにおける縫合代部40の外側(車外側O)に、縫製バッグ部45の車外側シート47F,47Rの各上縁48a,50aを重ね、縫合代部40と各上縁48a,50aとを、縫合糸を用いて縫着させて縫合部位53,54を形成する。同様に、袋織りバッグ部37の車内側壁部38aにおける縫合代部40の外側(車内側I)に、縫製バッグ部45の車内側シート46F,46Rの各上縁48a,50aを重ね、縫合代部40と各上縁48a,50aとを、縫合糸を用いて縫着させて、縫合部位53,54を形成する。次いで、縫製バッグ部45の前側部位48を構成する車内側シート46Fと車外側シート47Fを平らに展開した状態で重ね、縫合糸を用いて車内側シート46Fと車外側シート47Fとを縫着させ、周縁部29の前下側部位29aと区画部31の下側部位31aとを構成する縫合部位56を形成する。同様に、縫製バッグ部45の後側部位50を構成する車内側シート46Rと車外側シート47Rとを平らに展開した状態で重ね、縫合糸を用いて車内側シート46Rと車外側シート47Rとを縫着させ、周縁部29の後下側部位29bを構成する縫合部位57を形成すれば、エアバッグ19を製造することができる。
【0034】
次いで、実施形態のエアバッグ19を用いた頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明する。まず、車内側壁部21aと車外側壁部21bとを重ねて平らに展開した状態のエアバッグ19の膨張遮蔽部20を、下縁20b側を上縁20a側に接近させるように、連結部材68ごと、上下方向の幅寸法を縮めるように折り畳んで、エアバッグ19を折り畳む。エアバッグ19の折り畳み完了後には、破断可能な図示しない折り崩れ防止用のラッピング材により、エアバッグ19の所定箇所をくるんでおく。
【0035】
その後、取付ブラケット15を取付済みのインフレーター14を、クランプ17を利用して、エアバッグ19の接続口部62と接続させ、各取付部66,69a,70aに、取付ブラケット11を固着させて、エアバッグ組付体を形成する。次いで、取付ブラケット11,15を、ボディ1側のインナパネル2の所定位置に配置させて、ボルト12,16止めし、所定のインフレーター作動用の制御回路から延びる図示しないリード線を、インフレーター14に結線し、フロントピラーガーニッシュ4やルーフヘッドライニング5をボディ1に取り付け、さらに、センターピラーガーニッシュ6やリヤピラーガーニッシュ7をボディ1に取り付ければ、頭部保護エアバッグ装置Mを車両Vに搭載させることができる。
【0036】
そして、頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載後に、インフレーター14が作動されれば、インフレーター14から吐出される膨張用ガスGが、図2の二点鎖線に示すごとく、膨張遮蔽部20内に流入し、エアバッグ19の膨張遮蔽部20が、図示しないラッピング材を破断させ、さらに、フロントピラーガーニッシュ4とルーフヘッドライニング5との下縁で構成されるエアバッグカバー9を押し開いて、下方へ突出しつつ、図1の二点鎖線に示す如く、窓W1,W2、センターピラー部CP、及び、リヤピラー部RPの車内側を覆うように、大きく膨張することとなる。
【0037】
実施形態のエアバッグ19では、膨張完了時に窓W1,W2の車内側を覆う膨張遮蔽部20が、上下方向側で並設される袋織りバッグ部37と縫製バッグ部45とから構成されるとともに、袋織りバッグ部37を、上側の領域に、配置させて構成されている。すなわち、実施形態のエアバッグ19では、搭載する車両に応じて形状を変更させる際に、袋織りと比較して、素材の裁断寸法を変更するだけで容易でかつ安価に形状変更可能な縫製バッグ部45が、膨張遮蔽部20の下側の領域を前後の全域にわたって構成していることから、窓の高さが異なる車両に搭載する場合、単に、縫製バッグ部45の上下方向側の幅寸法を変更すれば、袋織りバッグ部37を共用化させることができ、容易に対処して設計変更することができ、かつ、製造コストの増大も抑制できる。また、実施形態のエアバッグ19では、袋織りバッグ部37は、平らに展開した状態の外形形状を、長方形状とされていることから、歩留まりを良好にすることができ、また、製造時において、長尺状のシート体からなるエアバッグ用素材(袋織りバッグ用素材73)を織成する際に、幅寸法(膨張完了時の上下方向側の幅寸法)を小さく設定される分、従来の頭部保護エアバッグの膨張遮蔽部と比較して、袋織りバッグ部37を、多く並設させることができることから、製造コストを一層低減させることができる。なお、実施形態では、図6に示すように、袋織りバッグ用素材73に、袋織りバッグ部37を、7個並設させている。ちなみに、従来の膨張遮蔽部全体を袋織りから形成するタイプのエアバッグでは、エアバッグ用素材に、膨張遮蔽部を3〜4個並設させていた。
【0038】
したがって、実施形態のエアバッグ19では、搭載させる車両の窓の高さが異なる場合にも、容易に対処して設計変更することができ、かつ、製造コストの増大も抑制できる。
【0039】
また、実施形態のエアバッグ19では、袋織りバッグ部37を、下縁37bを縫製バッグ部45の上縁48a,50aの内側に重ねるようにして、下縁37bを縫製バッグ部45の上縁48a,50aに縫合させていることから、車内側壁部21a側と車外側壁部21b側とにおいて、ともに、膨張用ガスの流入方向の上流側に位置する部位が、内側に配置されることとなって、エアバッグ19が内部に膨張用ガスを流入させて膨張する際に、下縁37bと上縁48a,50aとを縫着させている縫合部位53,54から膨張用ガスが抜け難く、エアバッグ19を迅速に膨張させることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、袋織りバッグ部の下縁を、縫製バッグ部の上縁の外側に重ねるようにして、袋織りバッグ部の下縁を、縫製バッグ部の上縁に縫着させる構成としてもよい。
【0040】
さらに、実施形態のエアバッグ19では、縫製バッグ部45の車内側シート46と車外側シート47とを、ノンコート布から形成していることから、エアバッグ19の製造コストを一層低減させることができ、また、エアバッグ19自体の軽量化や折り畳まれたエアバッグ19のコンパクト化を図ることができる。特に、実施形態のエアバッグ19では、縫製バッグ部45を、前側部位48と後側部位50とに分割して、板状部34の下側の領域には、縫製バッグ部を配置させない構成としているから、製造コストをより一層低減させることができて、エアバッグ19の軽量化や、折り畳まれたエアバッグ19のコンパクト化を一層図ることができる。なお、このような点を考慮しなければ、縫製バッグ部を構成する車内側シートと車外側シートを、外表面にコーティング剤を塗布させたコート布から、形成してもよく、また、前側部位と後側部位とに分離させず、膨張遮蔽部の前後の全域にわたって配置させる構成としてもよい。
【0041】
なお、実施形態では、袋織りバッグ部37は、板状部34の領域も含めて一体的に構成されて、外形形状を長方形状とされているが、長方形状の袋織りバッグ部としては、織成時の外形形状を長方形状とされればよく、織成後に板状部の部位を切り欠かれたものも含むものである。なお、板状部の領域を切り欠く場合、切欠部位は、別体の布材により塞がれることが望ましい。勿論、切欠部位は、別体の布材により塞がなくともよく、また、この板状部を切り欠いて形成される切り抜き部位は、接続口部や、接続口部の内側に配置されるインナチューブに、転用することができる。
【符号の説明】
【0042】
19…エアバッグ(頭部保護エアバッグ)、20…膨張遮蔽部、20a…上縁、21…ガス流入部、21a…車内側壁部、21b…車外側壁部、28…非流入部、37…袋織りバッグ部、37a…上縁、37b…下縁、45…縫製バッグ部、46…車内側シート、47…車外側シート、48…前側部位、48a…上縁、50…後側部位、50a…上縁、53,54…縫合部位、62…接続口部、66…取付部、W1,W2…窓、V…車両、M…頭部保護エアバッグ装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6