(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0015】
(水素含有電解水生成装置の構成)
図1は、本実施形態に係る水素含有電解水生成装置の構成例を示す図である。
図1において、水素含有電解水生成装置100は、第1の給水ヘッダHH1および第2の給水ヘッダHH2と、電解槽DK1〜DK6と、循環ポンプP1〜P6と、フロースイッチFS1〜FS6と、戻し配管M1およびM6と、制御基板SK1〜SK6と、制御部CLと、空気抜き弁AV1〜AV6と、給水流量計FMと、ドレンバルブDVと、を備えている。
【0016】
第1の給水ヘッダHH1は、給水点WP10において給水路WR1に接続され、給水路WR1の一部を構成する。第2の給水ヘッダHH2は、排水点WP20において排水路WR2に接続され、排水路WR2の一部を構成する。第1の給水ヘッダHH1および第2の給水ヘッダHH2は、水素含有電解水生成装置100内の他の部分の配管よりも内径が大きな管によって構成されている。第1の給水ヘッダHH1により、給水路WR1側から給水点WP11〜WP16および循環ポンプP1〜P6を介して電解槽DK1〜DK6へ水を供給することができる。また、電解槽DK1〜DK6から流出する水を、フロースイッチFS1〜FS6および排水点WP21〜WP26を介して排水路WR2側の第2の給水ヘッダHH2に排出することができる。
【0017】
電解槽DK1〜DK6は、第1の給水ヘッダHH1と第2の給水ヘッダHH2との間に並列に設けられている。電解槽DK1〜DK6は、それぞれが別々の水素含有電解水生成部として機能する。電解槽DK1〜DK6は、後述する電極を備えており、この電極に直流電圧(以下、正電圧)を印加することにより、水素含有電解水を生成することができる。また、この電極に正電圧とはプラスマイナスが逆の直流電圧(以下、逆電圧)、すなわち水素含有電解水を生成するための電圧とは異なる電圧を印加することにより、スケールを除去することができる。
【0018】
循環ポンプP1〜P6は、電解槽DK1〜DK6それぞれの給水路WR1側に設けられている。循環ポンプP1〜P6は、第1の給水ヘッダHH1の給水点WP11〜WP16から、対応する電解槽DK1〜DK6へ給水を行う。循環ポンプP1〜P6は、対応するフロースイッチFS1〜FS6の状態によって動作する。
【0019】
フロースイッチFS1〜FS6は、電解槽DK1〜DK6それぞれの排水路WR2側に設けられている。フロースイッチFS1〜FS6は、対応する電解槽DK1〜DK6から、第2の給水ヘッダHH2の接続点である排水点WP21〜WP26への流水量に基づいて、循環ポンプP1〜P6を動作させるための制御信号を出力する。
【0020】
フロースイッチFS1〜FS6は、対応する電解槽DK1〜DK6の排水路WR2側の水量が減少すると給水量を増加させるように制御信号を出力し、循環ポンプP1〜P6を動作させる。また、フロースイッチFS1〜FS6は、対応する電解槽DK1〜DK6の第2の給水ヘッダHH2側の水量が増加すると給水量を減少させるように制御信号を出力し、循環ポンプP1〜P6を動作させる。したがって、フロースイッチFS1〜FS6および循環ポンプP1〜P6によって、電解槽DK1〜DK6に流れる水量を制御することができる。
【0021】
戻し配管M1およびM6は、第1の給水ヘッダHH1と第2の給水ヘッダHH2との間に直接接続されている。戻し配管M1は、並列に6個並んだ電解槽DK1〜DK6のうち、電解槽DK1に隣接して設けられている。電解槽DK1は、排水路WR2に接続されている第2の給水ヘッダHH2への排水点WP20から最も遠い排水点WP21に排水する位置に設けられている。戻し配管M6は、並列に6個並んだ電解槽DK1〜DK6のうち、電解槽DK6に隣接して設けられている。電解槽DK6は、排水路WR2に接続されている第2の給水ヘッダHH2への排水点WP20から最も遠い排水点WP26に排水する位置に設けられている。
【0022】
複数並んだ電解槽のうち、排水点WP20から遠い位置の排水点に排水する電解槽について、その排水点の近傍に一端を接続した戻し配管を設ける必要がある。排水点WP20に比較的近い位置の排水点に排水する電解槽については、その排水点の近傍に一端を接続した戻し配管を設けなくてもよいし、設けてもよい。電解槽が複数個設けられている場合において、第2の給水ヘッダHH2への排水点WP20から最も遠い位置に排水する電解槽について、その排水点の近傍に一端を接続した戻し配管を設けることで、各電解槽への給水を均等にすることができる。つまり、第2の給水ヘッダHH2への排水点WP20から最も遠い位置の排水点の近傍は水圧が高まる可能性があるので、その近傍から第1の給水ヘッダHH1へバイパスする戻し配管M1およびM6を設けることにより、圧力を逃がして各電解槽への給水を均等にすることができる。
【0023】
制御部CLは、制御基板SK1〜SK6を制御するための制御信号を出力する。制御部CLから出力される制御信号によって指示されることにより、制御基板SK1〜SK6は、電解槽DK1〜DK6に正電圧または逆電圧を印加する。電解槽DK1〜DK6に正電圧を印加した状態で循環ポンプP1〜P6を動作させることにより、水素含有電解水を生成することができる。
【0024】
空気抜き弁AV1〜AV6は、電解槽DK1〜DK6に溜まった空気を抜くために設けられている。
【0025】
給水流量計FMは、水素含有電解水生成装置100への給水の流量を計測するために設けられている。
【0026】
ドレンバルブDVは、水素含有電解水生成装置100内の水を抜くために設けられている。例えば、後述するクエン酸による洗浄が終了した後、ドレンバルブDVを開けることにより、水素含有電解水生成装置100内の水を抜くことができる。
【0027】
バルブV1およびV2を開けてバルブV3を閉じることにより、バルブV1を介して給水装置W1から水素含有電解水生成装置100へ給水することができ、バルブV2を介して水素含有電解水生成装置100から浴槽BTへ水素含有電解水を供給することができる。なお、バルブV1およびV2を閉じてバルブV3を開けることにより、水素含有電解水生成装置100への給水を遮断することができ、給水装置W1から浴槽BTへ直接給水することもできる。
【0028】
(電解槽)
電解槽DK1〜DK6は、水素含有水生成用電極を備えている。
図2、
図3は、
図1中の電解槽DK1〜DK6に用いられる水素含有水生成用電極の例を示す斜視図である。水素含有水生成用電極10は、水の電気分解作用を利用して、水道水等の原水から、水素を含有する水である水素含有水を生成する。水素含有水は、中性を示す水である。
図2、
図3に示すように、水素含有水生成用電極10は、陽極11と、陰極12と、絶縁体13とを有する。陽極11及び陰極12は、いずれも筒状の導電体である。本実施形態において、陽極11及び陰極12の形状は、いずれも円筒形状であるが、これに限定されるものではない。絶縁体13は、陽極11の外周部に設けられて、陽極11と接している。陰極12は、絶縁体13の外周部に設けられて絶縁体13と接している。すなわち、絶縁体13は、陽極11と、陽極11の外側に設けられた陰極12との間に配置されて、陽極11及び陰極12と接している。陽極11、陰極12及び絶縁体13は、いずれも網状の部材である。本実施形態において、絶縁体13は、陽極11及び陰極12と接触しているが、必ずしも接触していなくてもよい。
【0029】
陽極11は、棒状の導体である陽極用給電部材14が電気的に接続されている。陰極12は、棒状の導体である陰極用給電部材15が電気的に接続されている。陽極用給電部材14は、電源(直流電源)20の陽極と電気的に接続されている。陰極用給電部材15は、電源20の陰極と電気的に接続されている。このような構造により、陽極11は、電源20の陽極と陽極用給電部材14を介して電気的に接続され、陰極12は、電源20の陰極と陰極用給電部材15を介して電気的に接続される。電源20は、例えば、先述した制御基板SK1〜SK6から与えられる。
【0030】
本実施形態において、陽極11は、棒状の部材である陽極用支持部材18が取り付けられている。陽極用支持部材18は、陽極11の陽極用給電部材14が取り付けられている側とは反対側に取り付けられる。陰極12は、棒状の部材である陰極用支持部材19が取り付けられている。陰極用支持部材19は、陰極12の陰極用給電部材15が取り付けられている側とは反対側に取り付けられる。本実施形態において、陽極用支持部材18、陰極用支持部材19、陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15は、いずれも同一の材料であるが、このようなものに限定されない。例えば、陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15を同一の材料とし、陽極用支持部材18及び陰極用支持部材19はこれらと異なる材料としてもよい。本実施形態において、陽極11及び陰極12は、陽極用支持部材18及び陰極用支持部材19を必ずしも備えていなくてもよい。
【0031】
図2、
図3に示すように、水素含有水生成用電極10、より具体的には陽極11及び陰極12は、両方の端部にそれぞれ開口部としての端部側開口部10HA、10HBを有している。水素含有水生成用電極10は、端部側開口部10HA、10HBを有していなくてもよいし、少なくとも一方の端部に端部側開口部10HA又は端部側開口部10HBを有していてもよい。
【0032】
陽極11は、長手方向、すなわち筒状の部材である陽極11が延びる方向に向かうスリット11SLを有している。陰極12は、長手方向、すなわち筒状の部材である陰極12が延びる方向に向かうスリット12SLを有している。
図2、
図3に示すように、水素含有水生成用電極10は、陰極用給電部材15と陰極用支持部材19との間、かつ陰極12の外側部に拘束部材40が設けられている。拘束部材40は、陽極11のスリット11SL及び陰極12のスリット12SLを閉じて、陰極12と絶縁体13と陽極11とを陰極12及び陽極11の周方向から拘束する。次に、水素含有水生成用電極10による作用を説明する。
【0033】
図4は、電解槽DK1〜DK6に用いられる水素含有水生成用電極による作用を示す図である。水素含有水生成用電極10は、循環ポンプP1〜P6から供給される原水W中で水素含有水を生成する。原水Wは、給水装置W1から第1の給水ヘッダHH1を経由して電解槽DK1〜DK6に供給される温水等である。水素含有水生成用電極10の陽極11と陰極12との間に電源20から所定の電圧(直流電圧)が印加されると、陽極11において、下記式(1)の反応が生じる。
【0034】
2H
2O→O
2+4H
++4e
− ・・・(1)
【0035】
また、本実施形態における水素含有水生成装置100は、水素含有水生成用電極10の陽極11と陰極12との間に電源20から所定の電圧(直流電圧)が印加されると、陰極12において、下記式(2)の反応が生じる。
【0036】
4H
++4e
−→ 2H
2・・・(2)
【0037】
本実施形態における水素含有水生成装置100は、水素含有水生成用電極10の陽極11と陰極12との間に電源20から所定の電圧(直流電圧)が印加されると、陽極11及び陰極12の全体において、下記式(3)の反応が生じる。
【0039】
本実施形態における水素含有水生成装置100において生成される水素含有水は、例えばpH7以上7.5以下程度の中性になる。このように、陽極11で発生する電離した水素イオンH
+は絶縁体13を通過して陰極12側に集まり、陰極12に水素ガス(H
2)の気泡が生成される。この気泡は、直径がナノメートルオーダーの微小な気泡である。酸素ガス(O
2)は、筒状の陽極11の内側に気泡となって集まり、陽極11の内側に沿って移動して、端部側開口部10HBから陽極11の外部に放出される。酸素ガス(O
2)は、空気抜き弁AV1〜AV6から水素含有電解水生成装置100の外部に放出される。次に、水素含有水生成用電極10について、より詳細に説明する。
【0040】
図5は、電解槽DK1〜DK6に用いられる水素含有水生成用電極10を示す側面図である。
図5は、水素含有水生成用電極10の陰極12及び絶縁体13の一部を除いた状態を示している。
図6は、電解槽DK1〜DK6に用いられる水素含有水生成用電極10を、その中心軸を含む平面で切った断面を示す図である。
図7は、
図5のA−A断面図である。筒状、本実施形態では円筒形状の陽極11及び陰極12が延びる方向(適宜長手方向という)Eと平行な方向が、これらの中心軸Ztである。中心軸Ztは、中心軸Ztと直交する陽極11及び陰極12の断面内の中心(重心)を通る軸である。
【0041】
図5に示すように、陽極11は、側部に複数の開口11Hを有しており、陰極12は、側部に複数の開口12Hを有している。陽極11が有する複数の開口11Hは、陽極11の側部を陽極11の厚み方向に貫通している。陰極12が有する複数の開口12Hは、陰極12の側部を陰極12の厚み方向に貫通している。本実施形態において、陽極11及び陰極12は導電体で製造されており、本実施形態においては、チタン(Ti)に白金(Pt)をめっきしたものである。めっきは、例えば、白金(Pt)−イリジウム(Ir)めっきであってもよい。本実施形態において、チタンは純チタンである。陽極11及び陰極12は、チタンに白金をめっきしたものに限定されるものではないが、原水Wに溶け出さない材料(例えば、バナジウム(V))であることが好ましい。本実施形態においては、陽極11及び陰極12の両方がめっきされているが、陽極11のみをめっきし、陰極12はめっきしなくてもよい。このようにすることで、水素含有水生成用電極10の製造コストを低減することができる。
【0042】
図6に示すように、陽極11と、陽極11の外側の側部(外側部)11Soと、陰極12の内側の側部(内側部)12Siとの間に介在する絶縁体13は、陽極11の外側部11Soと陰極12の内側部12Siとに接している。絶縁体13は、複数の開口13Hを有している。開口13Hは、絶縁体13をその厚み方向に貫通している。絶縁体13は、例えば、絶縁性を有する材料(例えば樹脂)の繊維で編まれた網を用いることができる。本実施形態において、絶縁体13は、電気的に中性である網状の部材である。
【0043】
また、絶縁体13としては、イオン交換機能を有していてもよい。例えば、絶縁体13は、イオン交換膜(陽イオン交換膜)であってもよい。この場合、絶縁体13は、開口13Hを有していなくてもよい。陽イオン交換膜は、膜に固定されている陰イオン基のため負に帯電している。このため、陰イオンは反発されて通ることができず、陽イオンだけが通過する。したがって、水素含有水生成用電極10において、陽イオン交換膜を用いた絶縁体13は、陽イオン、すなわち水素イオンH
+だけを透過し、陰イオン、すなわち電離した水酸イオンOH
−を反発する。このため、絶縁体13を通過して陽極11側に移動する水酸イオンOH
−の量を低減できる。その結果、陽極11側においては酸素及び酸性のイオン水の発生が抑制される。
【0044】
前述したように、絶縁体13は、イオン交換膜を用いてもよいが、電気的に中性である材料が用いられる。このようにすることで、絶縁体の製造コストを低減でき、また、加工も容易になる。また、イオン交換膜は、イオンは通過させるが水分子が通過させない程度の孔を有している。イオン交換膜を絶縁体13に用いると、この絶縁体13を備えた水素含有水生成用電極10は、水素含有水を生成する際に必要な電圧が高くなり、消費電力が大きくなる可能性を有している。本実施形態において、絶縁体13は、電気的に中性である網状の部材である。このため、イオン交換膜と比較して低い電圧で水素含有水を生成することができ、消費電力を抑制できる。
【0045】
絶縁性を有する繊維で編まれた網を絶縁体13に用いる場合、絶縁体13の厚みは、0.1mmから1mm程度とする。
図7に示すように、本実施形態において、陽極11の外側部(外周部に相当)11Soと陰極12の内側部(内周部に相当)12Siとの間に設けられた絶縁体13は、陰極12のスリット12SLから陰極12の外側部(外周部に相当)12So側に端部が取り出されている。絶縁体13の端部は、陽極11のスリット11SLから陽極11の内側部(内周部に相当)11Si側に取り出されてもよい。
【0046】
図5に示すように、陽極用給電部材14は、陽極11の第1の端部(一方の端部)11T1から第2の端部(他方の端部)11T2に向かって延びる棒状の導体である。
図6、
図7に示すように、陽極用給電部材14は、陽極11が延びる方向(長手方向)Eにおける陽極11の寸法Lの半分L/2よりも短い部分が、陽極11の内側部11Siに取り付けられる。陰極用給電部材15は、陰極12の第1の端部12T1から第2の端部12T2に向かって延びる棒状の導体である。
図6、
図7に示すように、陰極用給電部材15は、陰極12が延びる方向(長手方向)Eにおける陰極12の寸法Lの半分L/2よりも短い部分が、陰極12の外側部12Soに取り付けられる。陽極用給電部材14の陽極11に取り付けられる部分の長さ及び陰極用給電部材15の陰極12に取り付けられる部分の長さは、いずれもLSである。本実施形態において、LS<L/2である。
【0047】
図5に示すように、陽極用支持部材18は、陽極11の第2の端部11T2から第1の端部11T1に向かって延びる棒状の導体である。
図6に示すように、陽極用支持部材18は、陽極11の長手方向Eにおける陽極11の寸法Lの半分L/2よりも短い部分が、陽極11の内側部11Siに取り付けられる。陰極用指示部材19は、陰極12の第2の端部12T2から第1の端部12T1に向かって延びる棒状の導体である。
図6に示すように、陰極用支持部材19は、陰極12の長手方向Eにおける陰極12の寸法Lの半分L/2よりも短い部分が、陰極12の外側部12Soに取り付けられる。
【0048】
本実施形態において、陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15並びに陽極用支持部材18及び陰極用支持部材19は、陽極11及び陰極12と同様に、チタンに白金をめっきした部材である。陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15並びに陽極用支持部材18及び陰極用支持部材19は、陽極11及び陰極12と同様に、チタンに白金をめっきしたものに限定されるものではないが、原水Wに溶け出さない材料であることが好ましい。陽極用給電部材14と陰極用給電部材15とは、例えば、溶接等の接合手段によって、それぞれ、陽極11と陰極12とに接合されて、電気的に接続される。陽極用給電部材14と陰極用給電部材15とは、例えば、溶接等の接合手段によって、それぞれ、陽極11と陰極12とに接合されて、取り付けられる。
【0049】
陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15並びに陽極用支持部材18及び陰極用支持部材19に施されるめっきは、例えば、白金(Pt)−イリジウム(Ir)めっきであってもよい。本実施形態において、陰極12はめっきを施さなくてもよいが、この場合、陰極用給電部材15もめっきを施さなくてもよい。
【0050】
本実施形態においては、
図6に示すように、陽極用給電部材14と陰極用給電部材15とは、それぞれ、スポット溶接によって複数箇所の接合部CPで陽極11と陰極12とに電気的に接合されている。陽極用支持部材18及び陰極用支持部材19も陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15と同様である。陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15の接合は、スポット溶接に限定されるものではない。
【0051】
複数の接合部CPは、陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15の長手方向Eにおいて、一部分に偏らないように設けられている。このようにすることで、陽極用給電部材14と陰極用給電部材15とは、自身の長手方向Eの全体から電力を供給することができる。陰極用給電部材15及び陰極用支持部材19は、それぞれ別部材として、陰極12が延びる方向(長手方向)Eにおける陰極12の寸法Lの半分L/2よりも短い部分が、陰極12の外側部12Soに取り付けられる。このため、陰極12の外側部12Soにおいて、陰極用給電部材15と陰極用支持部材19との間には、これらが存在しない部分(隙間)が生じる。水素含有水生成用電極10は、陰極12の外側部12Soの陰極用給電部材15及び陰極用支持部材19が存在しない部分に拘束部材40を取り付けることができる。拘束部材40は、陰極用給電部材15及び陰極用支持部材19とは干渉しないので、陰極12、絶縁体13及び陽極11を、陰極12の外周部全体にわたって均等な力で拘束することができる。
【0052】
図5、
図6に示すように、陽極用給電部材14は、陽極11の第1の端部11T1から突出しており、陰極用給電部材15は、陰極12の第1の端部12T1から突出している。このようにすることで、陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15は、
図5に示すように、第1の端部11T1、12T1から突出した部分を取付対象ST1に取り付けることができる。その結果、陽極11及び陰極12は、陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15を介して取付対象ST1に取り付けられる。取付対象ST1は、例えば、電解槽DK1〜DK6の筐体である。
【0053】
本実施形態において、陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15は、
図5に示すように、第1の端部11T1、12T1から突出した部分に雄ねじ14S、15Sが設けられている。陽極用給電部材14と陰極用給電部材15とは、この雄ねじ14S、15Sにそれぞれねじ込まれたボルト32、32によって、取付対象ST1に取り付けられ、固定される。
【0054】
陽極11は、第1の端部11T1が取付対象ST1と接し、かつ陽極用給電部材14を介してボルト32によって取付対象ST1に固定されている。同様に、陰極12は、第1の端部12T1が取付対象ST1と接し、かつ陰極用給電部材15を介してボルト32によって取付対象ST1に固定されている。このため、陽極11及び陰極12は、それぞれの広い範囲が取付対象ST1と接触するので、取付対象ST1に対して安定して取り付けられる。
【0055】
また、それぞれのボルト32、32と、雄ねじ14S、15Sにそれぞれねじ込まれたボルト33、33とで、陽極用給電部材14と配線とを電気的に接続する端子34及び陰極用給電部材15と配線とを電気的に接続する端子34を固定する。このような構造により、端子34、34及び陽極用給電部材14、陰極用給電部材15を介して、陽極11、陰極12に電力が印加される。
【0056】
図5、
図6に示すように、陽極用支持部材18は、陽極11の第2の端部11T2から突出しており、陰極用支持部材19は、陰極12の第2の端部12T2から突出している。このようにすることで、陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15は、
図5に示すように、第2の端部11T2、12T2から突出した部分を取付対象ST2に取り付けることができる。その結果、陽極11及び陰極12は、陽極用支持部材18及び陰極用支持部材19を介して取付対象ST2に取り付けられる。取付対象ST2は、例えば、電解槽DK1〜DK6の筐体である。
【0057】
本実施形態において、陽極用支持部材18及び陰極用支持部材19は、
図5に示すように、第2の端部11T2、12T2から突出した部分に雄ねじ18S、19Sが設けられている。陽極用支持部材18と陰極用支持部材19とは、この雄ねじ18S、19Sにそれぞれねじ込まれたボルト31、31によって、取付対象ST2に取り付けられ、固定される。
【0058】
陽極11は、第2の端部11T2が取付対象ST2と接し、かつ陽極用支持部材18を介してボルト31によって取付対象ST2に固定されている。同様に、陰極12は、第2の端部12T2が取付対象ST2と接し、かつ陰極用支持部材19を介してボルト31によって取付対象ST2に固定されている。このため、陽極11及び陰極12は、それぞれの広い範囲が取付対象ST2と接触するので、取付対象ST2に対して安定して取り付けられる。
【0059】
水素含有水生成用電極10は、陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15並びに陽極用支持部材18及び陰極用支持部材19によって、陽極11及び陰極12の両側から取付対象ST1、ST2に取り付けられることが可能である。また、水素含有水生成用電極10は、陽極用給電部材14及び陰極用給電部材15又は陽極用支持部材18及び陰極用支持部材19の一方を用いて1つの取付対象に取り付けられてもよい。このように、水素含有水生成用電極10は、取付の自由度が高いという利点がある。
【0060】
(水素含有電解水生成装置への給水)
上記の水素含有水生成用電極10を備えた電解槽DK1〜DK6を有する水素含有電解水生成装置100において、電解槽DK1〜DK6の電極に正電圧を印加した状態で、給水装置W1から各電解槽DK1〜DK6に給水すると、水素含有電解水を生成することができる。生成された水素含有電解水は、水素含有電解水生成装置100から浴槽BTへ供給される。
【0061】
第1の給水ヘッダHH1と第2の給水ヘッダHH2との間には、電解槽DK1〜DK6に対応して循環ポンプP1〜P6が設けられており、循環ポンプP1〜P6の動作によって電解槽DK1〜DK6に給水される。このため、電解槽DK1〜DK6には、第1の給水ヘッダHH1から第2の給水ヘッダHH2へ向かう方向に水が流れる。したがって、戻し配管M1およびM6を設けない場合は、第2の給水ヘッダHH2における水圧が第1の給水ヘッダHH1における水圧よりも高くなる。第2の給水ヘッダHH2における水圧が高まると、電解槽DK1〜DK6の流水量に偏りが生じ、流水量が均一でなくなることがある。すなわち、戻し配管M1およびM6を設けない場合、第2の給水ヘッダHH2の、排水路WR2の排水点WP20に比較的近い位置が排水点WP23、WP24になっている電解槽DK3、DK4には水がスムーズに流れるのに対し、排水路WR2への排水点WP20から最も遠い位置が排水点WP21、WP26になっている電解槽DK1、DK6には水がスムーズに流れないことがある。
【0062】
そこで、本実施形態では、排水点WP20から最も遠い排水点WP21、WP26に対応する電解槽DK1、DK6の排水点WP21、WP26の近傍に戻し配管M1、M6を設けている。これにより、第2の給水ヘッダHH2における水圧が高まると、戻し配管M1およびM6には、第2の給水ヘッダHH2から第1の給水ヘッダHH1へ向かう方向に水が流れる。つまり、戻し配管M1およびM6は、電解槽DK1〜DK6それぞれから第2の給水ヘッダHH2へ流入する水の一部を第1の給水ヘッダHH1側に戻し、第2の給水ヘッダHH2において高まる水圧を逃がす機能を有する。これにより、第1の給水ヘッダHH1から第2の給水ヘッダHH2へ向かう方向に流れる、各電解槽DK1〜DK6の流水量を均等にすることができる。
【0063】
複数の電解槽DK1〜DK6に均等に給水することにより、スケールが均等に付着し、特定の電解槽の電極にスケールが多く付着することはなく、スケールの付着によって特定の水素含有電解水生成部の電極の寿命を縮めることはない。これにより、特定の水素含有電解水生成部の電極だけ寿命が短くなることはなく、装置全体のメンテナンスを良好に行うことができる。
【0064】
ここで、電解槽DK1〜DK6それぞれに流量計を設けて流量を計測し、電解槽DK1〜DK6に均等に給水するように循環ポンプP1〜P6を制御することも考えられる。しかしながら、そのようにすると流量計が複数必要になるため、コスト高を招くことになる。また、そのようにすると均等に給水するための制御が複雑になる。
【0065】
本実施形態では、並列に6個並んだ電解槽DK1〜DK6のうち、排水点WP20から最も遠い位置が排水点になっている電解槽DK1、DK6に隣接して戻し配管M1、M6を設けている。このため、電解槽DK1〜DK6それぞれに流量計を設ける必要はないので、コスト高を招かず、かつ、制御が複雑になることなく、電解槽DK1〜DK6へ均等に給水することができる。
【0066】
また、本実施形態では、電解槽DK1〜DK6のうち、排水路WR2への排水点WP20から最も遠い位置の排水点WP21、26に対応する電解槽DK1、DK6の排水点の近傍に戻し配管M1、戻し配管M6を設けている。排水点WP20から最も遠い位置の排水点WP21、WP26に対応して設けられた電解槽DK1、DK6に、戻し配管M1、M6を設けているのは、排水路WR2への排水点WP20から最も遠い位置を排水点WP21、WP26とする電解槽DK1、DK6を流れる水量が低下しないようにするためである。すなわち、戻し配管M1、M6を設けることにより、複数の電解槽DK1〜DK6に均等に給水できるので、スケールが均等に付着し、特定の電解槽の電極にスケールが多く付着することはなく、スケールの付着によって電極の寿命を縮めることがない。
【0067】
(動作例)
次に、本実施形態による水素含有電解水生成装置の動作例について説明する。
図8は、本実施形態による水素含有電解水生成装置の動作例を示すフローチャートである。制御部CLから出力される制御信号によって、制御基板SK1〜SK6から電解槽DK1〜DK6に正電圧または逆電圧を印加した状態で、電解槽DK1〜DK6に給水することによって以下の動作を実現できる。
【0068】
まず、ステップS101において、6個の電解槽DK1〜DK6に正電圧を印加した状態で、電解槽DK1〜DK6に給水する。これにより、水素含有水を生成でき、浴槽BTに供給することができる。
【0069】
次に、ステップS102において、所定時間が経過したか否かを判断する。所定時間が経過するまでステップS101に戻り、6個の電解槽DK1〜DK6によって水素含有水を生成する。ステップS102において、所定時間が経過した場合、ステップS103に移行する。なお、ステップS102の所定時間は、例えば、1時間とする。浴槽BTの容量によって所定時間を決定すれば、浴槽BTに水素含有水を速やかに満たすことができる。
【0070】
ステップS103において、6個の電解槽DK1〜DK6のうちの3個、例えば電解槽DK1、DK3、DK5に正電圧を印加した状態で、それらの電解槽DK1、DK3、DK5に給水する。これにより、6個の電解槽DK1〜DK6のうちの半数の電解槽によって、水素含有水を生成し続ける。
【0071】
また、ステップS104において、6個の電解槽DK1〜DK6のうちの他の3個の電解槽DK2、DK4、DK6には水素含有電解水を生成するための電圧とは異なる逆電圧を印加した状態で、それらの電解槽DK2、DK4、DK6に給水する。これにより、6個の電解槽DK1〜DK6のうちの半数について、均等に給水した状態で電極に付着したスケールを剥がす、クリーニングを行うことができる。
【0072】
さらに、ステップS105において、所定時間が経過したか否かを判断する。ステップS105の所定時間は、電極のクリーニングを行う時間であり、例えば、2分間とする。所定時間が経過するまでステップS104に戻り、3個の電解槽DK1、DK3、DK5によって水素含有水を生成し続ける。ステップS105において、所定時間が経過した場合、ステップS106に移行する。
【0073】
ステップS106において、水素含有電解水生成装置100の動作を終了するか否かを判断する。水素含有電解水生成装置100の動作を終了しない場合、ステップS107に移行する。
【0074】
ステップS107において、正電圧を印加する電解水生成部すなわち電解槽を切り替える。したがって、ステップS103に戻り、3個の電解槽DK2、DK4、DK6に正電圧を印加し、ステップS104において他の3個の電解槽DK1、DK3、DK5には逆電圧を印加する。この状態で6個の電解槽DK1〜DK6に給水することにより、半数の電解槽によって水素含有水を生成し続け、他の半数の電解槽について、均等に給水した状態で電極のクリーニングを行うことができる。
【0075】
なお、ステップS106において、動作を終了する場合、水素含有電解水生成装置100の処理は終了となる。
【0076】
以上のように、本実施形態の水素含有電解水生成装置100は、水素含有電解水をそれぞれ生成する複数の水素含有電解水生成部と、上記複数の水素含有電解水生成部が共通に並んで接続され上記少なくとも3つの水素含有電解水生成部それぞれに給水するための給水路と、上記複数の水素含有電解水生成部が共通に並んで接続され上記複数の水素含有電解水生成部からそれぞれ排水する排水路と、上記複数の水素含有電解水生成部のうち、給水点から遠い位置に設けられた水素含有電解水生成部に隣接して設けられて上記給水路と上記排水路とを直接接続する配管と、を含む。この構成によれば、複数の水素含有電解水生成部に均等に給水できるため、特定の水素含有電解水生成部の電極にスケールが多く付着することはなく、スケールが均等に付着し、スケールの付着によって特定の水素含有電解水生成部の電極の寿命を縮めることはない。
【0077】
ところで、本実施形態では、水素含有電解水生成部である6個の電解槽DK1〜DK6のうち、3個の電解槽をまとめて、正電圧または逆電圧を印加する単位としている。すなわち、例えば、3個の電解槽DK1、DK3、DK5と、3個の電解槽DK2、DK4、DK6と、について、一方に正電圧を印加して水素含有電解水を生成している場合に、他方に逆電圧を印加して電極のクリーニングを行う。このように、3個の電解槽を、電解水生成動作の単位またはクリーニングの単位とすることにより、三相電源を容易に利用することができる。三相電源を利用することにより、各相にかかる負荷のバランスを保ち、水素含有電解水生成装置100に供給する電源の質を向上させることができる。また、三相電源を利用することにより、定格の高くない部品を使用して装置を製造でき、装置全体のコストを抑えることができる。
【0078】
(クエン酸を用いた洗浄)
ところで、水素含有電解水生成装置100の近傍には、電解槽洗浄装置DSが設けられている。電解槽洗浄装置DSは、洗浄槽S1と、逆止弁Rと、バルブV4およびV5とを備えている。
【0079】
電解槽洗浄装置DSによって水素含有電解水生成装置100を洗浄する場合、例えばクエン酸を用いてもよい。クエン酸を用いる場合、洗浄槽S1内へクエン酸を投入する。そして、バルブV1およびV2を閉じ、バルブV4およびV5を開けて洗浄水を水素含有電解水生成装置100に循環させる。洗浄水を循環させることにより、イオン交換膜などの絶縁体13を洗浄することができる。
【0080】
洗浄終了後は、ドレンバルブDVを開け、洗浄水を排出する。洗浄水を排出した後、バルブV4およびV5を閉じ、バルブV1およびV2を開けて給水装置W1から水素含有電解水生成装置100へ給水を行うことにより、先述したように水素含有電解水を生成することができる。
【0081】
以上のようにクエン酸を用いた洗浄を行うことにより、電解槽DK1〜DK6の機能を正常に保つことができる。また、電極の寿命を長くすることができる。なお、クエン酸を用いて行う水素含有電解水生成装置100の洗浄は、例えば1〜2か月に1度または300時間ごとに行うのが好ましい。