【実施例】
【0042】
以下、実施例に基づいて、さらに詳しく本発明について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、上述した説明中で出てくるパラメータについては、以下のようにして測定した値である。
【0043】
A.ポリ乳酸の重量平均分子量
ポリ乳酸ネットをクロロホルム溶液に溶解し測定溶液とした。これをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(溶媒:クロロホルム)で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。
【0044】
B.引張強度、引張伸度
JIS L 1013:1999 8.5.1に拠って測定した。
試料を緩く張った状態で、引張試験機(オリエンテック社製“テンシロン”(登録商標)UCT−100)のつかみにつかみ間隔20cmで取り付け、引張速度20cm/分の定速伸長にて試験を行った。初荷重をかけたときの伸びを緩み(mm)として読み、更に試料を引っ張り、試料が切断したときの荷重及び伸び(mm)を測定し、次の式によって引張強さ(引張強度)及び伸び率(引張伸度)を算出した。試験回数は10回とし、その平均値を算出した。
Tb=SD/F0
ここに、Tb:引張強さ、SD:切断時の強さ、F0:試料の正量繊度である。
伸び率(%)=[(E2−E1)/(L+E1)]×100
ここに、E1:緩み(mm)、E2:切断時の伸び(mm)、L:つかみ間隔(mm)である。
【0045】
C.ネットの編目
表面をルーペで観察し、n数を10として平均を求めた。
【0046】
D.圧力損失
JIS B9908記載の形式3様の測定機を用い、ネット設置部に空気の漏れの無いようにネットを2枚重ねて設置し測定した差圧とする。
なお、測定面積は176.7cm
2(150mmφ)である。
【0047】
E.剛軟度
JIS L1096記載の曲げ反発性A法(ガーレ法)により得られた値とした。
【0048】
F.紫外線劣化試験
ネットをJIS B 7753法に準じ、1サイクルが照射180min/降雨12min、ブラックパネル温度63℃、湿度50%Rhの条件にて、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機株式会社製)を用いて450時間の照射を実施した。照射前後で引張強力を測定して破断強力の保持率(%)を求めた。n数を5として平均値を求めた。
【0049】
G.施工性
砂移動防止資材を砂漠に施工するときに、1人当たりの仕事量(10分)の仕事量について以下の3段階で評価を行った。
◎:一人当たりの施工面積が7m
2以上と作業性に非常に優れる。
〇:一人当たりの施工面積が5m
2以上と作業性に優れる。
×:一人当たりの施工面積が5m
2未満と作業性に劣る。
【0050】
H.砂移動防止効果
砂移動防止資材を砂漠に設置して1年後の砂移動状況をまとめ、以下の4段階で評価を行った。
◎:砂移動防止資材が砂に埋もれることなく、砂移動防止効果が非常に高い。
〇:砂移動防止資材の一部が砂に埋まっているが、砂移動防止効果が高い。
△:砂移動防止資材の一部が砂に埋まったり、方格内の中央部の砂面が凹となるが、砂移動防止効果がやや劣る。
×:砂移動防止効果がない。
【0051】
〔ポリ乳酸の製造〕
(a)製造例1(ポリ乳酸の製造)
光学純度99.5%のL乳酸から製造したラクチドを、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ触媒(ラクチド対触媒モル比=10000:1)を存在させてチッソ雰囲気下180℃で160分間重合を行い、ポリ乳酸樹脂P1を得た。得られたポリ乳酸の重量平均分子量は18万であった。
【0052】
(b)製造例2(ポリ乳酸の製造)
光学純度99.5%のL乳酸から製造したラクチドを、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ触媒(ラクチド対触媒モル比=10000:1)を存在させてチッソ雰囲気下180℃で140分間重合を行い、ポリ乳酸樹脂P2を得た。得られたポリ乳酸の重量平均分子量は14.5万であった。
【0053】
〔実施例1〕
製造例1で得られたポリ乳酸樹脂P1を溶融紡糸・延伸して、420dTexのモノフィラメントを得た。得られたポリ乳酸モノフィラメントの強度は3.5cN/dTex、伸度:35%であった。
得られたモノフィラメントを巾2m、長さ400m、目合いを1mm×1mmとなるようにレピア織機でネットを作成した。その後、巾0.5mに溶融コテで溶融カットし、砂移動防止材としてのネットを作成した。ネットの圧力損失は186Pa、剛軟度は84mN、紫外線劣化試験での強力保持率は85%となった。
得られたネットをほぼ平らな砂地面100m
2に、最も強い風向きに対して垂直になるようにネットの中央部付近を埋め、砂地面からネットの高さが5〜15cmにし、1m間隔で設置した。作業員4人での設置時の施工性は、18.0m
2/10分と非常に優れ、「◎」の評価であった。
1年後の状態を確認したが、砂移動防止材が砂に埋まることなく、高い砂移動防止効果が得られ、「〇」の評価であった。
【0054】
〔実施例2〕
実施例1と同じネットを用い、ほぼ平面な砂地面100m
2に、
図2に示すようにネットの一部を埋め、砂地面からネットの高さが10〜20cmにし、直交して交差するようにピッチ1mの格子状に設置した。作業員4人での設置時の施工性は、9.5m
2/10分と非常に優れ、「◎」の評価であった。
1年後の状態を確認したが、砂移動防止材が砂に埋まることなく、非常に高い砂移動防止効果が得られ、「◎」の評価であった。
【0055】
〔実施例3〕
目合いを2mm×2mmとした以外は実施例1と同じ方法でネットを得た。ネットの圧力損失は80Pa、剛軟度は40mN、紫外線劣化試験での強力保持率は83%となった。
得られたネットを砂丘のほぼ平面な砂地面100m
2に、直交して交差するように1m間隔の格子状に設置した。作業員4人での設置時の施工性は、8.0m
2/10分と非常に優れ、「◎」の評価であった。
1年後の状態を確認したが、一部の砂移動防止資材が砂に埋まる現象が見られたが、高い砂移動防止効果が得られ、「〇」の評価であった。
【0056】
〔実施例4〕
製造例2で得られたポリ乳酸樹脂P2を紡糸速度4000m/分で溶融紡糸して、106dTex、26フィラメントの半延伸糸を得た。これを2本合わせて延伸−仮撚加工を行い、167dTex、52フィラメントの1ヒーター仮撚加工糸を得た。これを釜径3.5インチ、22ゲージ丸編機を使用して筒状の編地を作成した。
得られたネットを風が強い向きに対して垂直方向に、筒状編地に砂を詰めた物を風が強い向きに対して直交して交差するように、1m間隔の格子状として砂丘のほぼ平面な砂地面100m
2に設置した。作業員4人での設置時の施工性は、5.0m
2/10分と、「〇」の評価であった。
1年後の状態は、筒状編地の一部が砂に埋もれ、格子内がやや凹になったが高い砂移動防止効果が得られ、「◎」の評価であった。
【0057】
〔実施例5〕
目合いを3mm×3mmとした以外は実施例1と同じ方法でネットを得た。ネットの圧力損失は52Pa、剛軟度は22mNとなった。
得られたネットを砂丘のほぼ平面な砂地面100m
2に、直交して交差するように1m間隔の格子状に設置した。設置時の施工性は、ネットの剛軟度が低いため、ネットをシャベルで押し込んでもネットの立ち方が悪かったが、作業性は5.8m
2/10分と、「〇」の評価となった。
1年後の状態を確認したが、一部のネット資材は土で埋まってしまい、砂移動防止効果は、「〇」の結果となった。
【0058】
〔実施例6〕
実施例2と同様の方法でネットを設置したが、ネットの一部を土に埋め込む前に、ネットを所定の長さに広げ、ネットの上面の中央部に羊柴の種を播き、ネットの中央部を地面に押し込んで種も一緒に
図1のように土に埋めた。
作業員4人での設置時の施工性は、8.8m
2/10分と非常に優れ、「◎」の評価であった。
1年後の状態を確認したが、砂移動防止資材が砂に埋まることなく、又、ネットのV字の間から羊柴が発芽しており、非常に高い砂移動防止効果が得られ、「◎」の評価であり、緑化効果も合わせて得ることができた。
【0059】
〔実施例7〕
実施例2と同様の方法でネットを設置し、ピッチ1mの格子内の砂上に洋柴の種を撒いた。
1年後の状態を確認したが、砂移動防止資材が砂に埋まることなく、又、格子内から洋柴が発芽しており、非常に高い砂移動防止効果が得られ、「◎」の評価であり、緑化効果も合わせて得ることができた。
【0060】
〔実施例8〕
ポリエチレンテレフタレートからなる420dTexのモノフィラメントを得た。得られたモノフィラメントの強度は4.7cN/dTex、伸度:40%であった。
得られたモノフィラメントを巾2m、長さ400m、目合いを1mm×1mmとなるようにレピア織機でネットを作成した。その後、巾0.5mに溶融コテで溶融カットし、砂移動防止材としてのネットを作成した。ネットの圧力損失は173Pa、剛軟度は78mN、紫外線劣化試験での強力保持率は70%となった。
得られたネットをほぼ平らな砂地面100m
2に、最も強い風向きに対して垂直になるようにネットの中央部付近を埋め、砂地面からネットの高さが5〜15cmにし、1m間隔で設置した。作業員4人での設置時の施工性は、18.0m
2/10分と非常に優れ、「◎」の評価であった。
1年後の状態を確認したが、砂移動防止材が砂に埋まることなく、高い砂移動防止効果が得られ、「〇」の評価であった。
【0061】
〔比較例1〕
実施例4で使用したポリ乳酸からなる筒状編地に砂を詰めた資材のみを用い、ほぼ平面な砂地面100m
2に、直交して交差するようにピッチ1mの格子状に設置した。作業員4人での設置時の施工性は、5.0m
2/10分と作業性に劣り、「×」の結果となった。
1年後の状態を確認したが一部が砂に埋まったり、方格内の中央部の砂面が凹となるが、砂移動防止効果が劣り、「△」の結果となった。
【0062】
〔比較例2〕
市販されているポリエチレンテレフタレートのマルチフィラメントから構成される長繊維不織布(目付100g/m
2)を巾50cmにカットして、長さ400mに巻き取った。長繊維不織布の圧力損失は452Pa、剛軟度0.81mN、紫外線劣化試験での強力保持率は70%となった。
長繊維不織布をほぼ平らな砂地面100m
2に、最も強い風向きに対して垂直になるように長繊維不織布の中央部付近を埋め、砂地面からネットの高さが5〜15cmにし、1m間隔で設置した。作業員4人での設置時の施工性は、18.0m
2/10分と非常に優れ、「◎」の評価であった。
1年後の状態を確認したが、長繊維不織布が風によって破れたり、一部が風に飛ばされたりし、砂移動防止効果が得られず、「×」の評価であった。
【0063】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2012年9月10日出願の日本特許出願(特願2012−198111)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。