(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態(以下「本実施形態」とも記す。)について詳細に説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されない。
【0013】
本実施形態の新規脂環式ジオール化合物は、下記式(1)で表される化合物である。
【0015】
このような式(1)で表される脂環式ジオール化合物は、例えば、ポリエステル樹脂の原料として使用することができ、また、該脂環式ジオール化合物を用いることにより、光学特性及び耐熱性に優れる材料を製造し得る。このような特性を有する材料の用途としては、特に限定されないが、例えば、レンズ等の光学材料用途が挙げられる
【0016】
また、本実施形態の新規脂環式ジオール化合物の製造方法は、下記工程(a)〜(c)を含む。
(a)下記式(4)で表される4−イソプロペニル−1−メチル−1−シクロヘキセンをフッ化水素(以下「HF」とも記す。)の存在下、一酸化炭素と反応させて下記式(3)で表される脂環式ジカルボン酸フロライドを得る工程(以下「カルボニル化工程」と略すこともある)。
(b)得られた下記式(3)で表わされる脂環式ジカルボン酸フロライドをアルコールと反応させ、下記式(2)で表される脂環式ジカルボン酸エステル化合物を得る工程、(以下「エステル化工程」と略すこともある)。
(c)得られた下記式(2)で表される脂環式ジカルボン酸エステル化合物を還元して下記式(1)で表される脂環式ジオール化合物を得る工程(以下「還元工程」と略すこともある)。
【0017】
【化5】
(式中Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0018】
<(a)カルボニル化工程>
工程(a)において、下記式(4)で表される4−イソプロペニル−1−メチル−1−シクロヘキセンのカルボニル化反応は、HFの存在下で一酸化炭素の加圧下に実施することが好ましい。工程(a)により、下記式(3)で表される脂環式カルボニル化合物(以下「脂環式ジカルボン酸フロライド」とも記す。)が得られる。工程(a)におけるカルボニル化反応生成物中には、種々の副生物(他の異性体を含む)が含まれていてもよい。
【0020】
[一酸化炭素]
カルボニル化工程に使用する一酸化炭素は、窒素やメタン等の不活性ガスが含まれていてもよい。カルボニル化工程は、一酸化炭素分圧として、好ましくは0.5〜5MPa、より好ましくは1〜4MPa、さらに好ましくは1.5〜3MPaの範囲で実施する。該一酸化炭素分圧が0.5MPaより高ければ、カルボニル化反応が十分に進行し、不均化や重合等の副反応が併発せず、高収率に目的物である脂環式ジカルボン酸フロライドを得ることができる。また該一酸化炭素分圧が5MPa以下であることは設備負荷の観点から好ましい。
【0021】
[フッ化水素]
カルボニル化工程に使用するHFは、反応の溶媒であり、触媒であり、かつ副原料となるため、実質的に無水のHFを用いることが好ましい。本実施形態において、実質的に無水のHFとは、水分濃度が200ppm以下であるHFのことを意味する。カルボニル化工程において、HFの使用量は、原料の4−イソプロペニル−1−メチル−1−シクロヘキセンに対して、好ましくは4〜30モル倍、より好ましくは7〜20モル倍、さらに好ましくは10〜15モル倍である。該HFの使用量が4モル倍以上あれば、カルボニル化反応は効率良く進行し、不均化や重合等の副反応を抑制でき、高収率で目的物である脂環式ジカルボン酸フロライドを得ることができる。また、該HFの使用量は、原料コスト及び生産性の観点から、30モル倍であることが好ましく、15モル倍以下あることがより好ましい。
【0022】
[反応条件]
工程(a)におけるカルボニル化反応の形式は特に限定されず、回分式、半連続式、連続式等の何れの形式でもよい。
【0023】
工程(a)におけるカルボニル化反応の反応温度は、好ましくは−50℃〜30℃、より好ましくは−40℃〜0℃、さらに好ましくは−30〜−10℃の範囲である。該カルボニル化反応の反応温度が30℃以下、特に−10℃以下であれば選択性が良好となる傾向にある。また、工程(a)におけるカルボニル化反応は、反応速度の観点から−50℃以上で行なうことが好ましい。
【0024】
工程(a)におけるカルボニル化反応の反応圧力は、好ましくは0.6〜5.0MPa、より好ましくは1.1〜4.0MPa、さらに好ましくは1.6〜3.0MPaの範囲である。
【0025】
<(b)エステル化工程>
エステル化工程は、前記カルボニル化工程で生成した脂環式ジカルボン酸フロライドを、炭素数1〜4のアルコールと反応させて脂環式ジカルボン酸エステル化合物とする工程である。なお、エステル化工程において、前記カルボニル化工程で生成した反応液をそのまま用いてもよい。反応装置の腐食性の観点から、エステル化工程において、前記カルボニル化工程で生成した反応液に所定量のアルコールを添加していく方法が好ましい。また、前記カルボニル化工程で生成した反応液から過剰のHFを留去した後、該反応液にアルコールを添加してエステル化を行なうこともできる。
【0026】
また、カルボニル化反応で生成した酸フロライド反応液は、該エステル化工程の代わりに、(I)過剰のHFを留去した後、蒸留等の常法により精製し、酸フロライドのまま次工程である還元工程の原料として用いることもできるし、(II)過剰のHFを留去した後、加水分解させて相当するカルボン酸を得て、該カルボン酸を蒸留等の常法により精製後に次工程である還元工程の原料として用いることもできる。
【0027】
【化7】
(式中Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0028】
エステル化工程で用いられる具体的なアルコールとしては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコールが挙げられる。これらの内、反応性の観点からメタノール又はエタノールが好ましい。エステル化工程において、アルコールは1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0029】
エステル化工程において、アルコールの使用量は、前記カルボニル化工程の原料4−イソプロペニル−1−メチル−1−シクロヘキセンに対して、好ましくは1.0〜2.5モル倍、より好ましくは1.2〜2.3モル倍、さらに好ましくは1.5〜2.0モル倍である。該アルコールの使用量が1.0モル倍以上であれば、未反応の脂環式ジカルボン酸フロライドの残量が少なく、後工程での装置腐食が小さいことから好ましく、また、アルコールの分子間脱水反応で生成する水による装置腐食を抑制する観点から、該アルコールの使用量は、2.5モル倍以下が好ましい。
【0030】
エステル化工程の反応温度は、上記式(2)で表される脂環式ジカルボン酸エステル化合物の分解抑制の観点から、好ましくは−40℃以上20℃以下、より好ましくは−30℃〜10℃、さらに好ましくは−30℃〜0℃である。該反応温度を−40℃以上にすることで、エステル化速度を高め収率を向上させることができる。また、該反応温度を20℃以下にすることで、エステルの分解を抑制するとともに、アルコールの脱水反応による水の副生を抑制することができる。
【0031】
エステル化工程は、常圧で行うことが好ましい。
【0032】
<(c)還元工程>
(c)工程において、前記エステル化工程で得られた式(2)で表される脂環式ジカルボン酸エステル化合物(以下「脂環式ジカルボン酸エステル化合物」とも記す。)の還元方法は、通常、カルボニル化合物をアルコールに還元する際に用いられる方法であればいずれも使用でき、特に限定されない。当該還元方法としては、例えば第5版 実験化学講座14巻(丸善株式会社)11〜27頁記載のヒドリド還元、金属及び金属塩による還元方法、接触水素化による還元方法などをいずれも用いることができるが、経済性の観点から接触水素化による還元方法が好ましい。
【0033】
【化8】
(式中Rはそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0034】
[接触水素化触媒]
脂環式ジカルボン酸エステル化合物の接触水素化に用いられる触媒(以下「接触水素化触媒」とも記す。)は、カルボニル化合物の水素化に用いられる通常の触媒であれば特に限定されないが、周期表第8〜11属金属から選ばれる少なくとも1種を含有する触媒が好ましい。
【0035】
接触水素化触媒の具体例としては、特に限定されないが、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金及び金から選ばれる少なくとも1種を含有する接触水素化触媒が挙げられる。
【0036】
接触水素化触媒は、固体触媒でも均一系触媒でもよいが、反応物との分離性の観点から固体触媒が好ましい。固体触媒としては、特に限定されないが、例えば、非担持型金属触媒や担持金属触媒などが挙げられる。
【0037】
非担持型金属触媒としては、ラネーニッケル、ラネーコバルト、ラネー銅などのラネー触媒、又は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの酸化物やコロイド触媒が好ましい。
【0038】
担持金属触媒としては、特に限定されないが、例えば、マグネシア、ジルコニア、セリア、ケイソウ土、活性炭、アルミナ、シリカ、ゼオライト、又はチタニアなどの担体に鉄、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、オスミウム、イリジウム、白金、金のうち少なくとも1種を担持あるいは混合した担持金属触媒が挙げられる。中でも、銅−クロム触媒(Adkins触媒)、銅−亜鉛触媒又は銅−鉄等の担持銅触媒、Pt/CやPt/アルミナ等の担持白金触媒、Pd/CやPd/アルミナ等の担持パラジウム触媒、Ru/CやRu/アルミナ等の担持ルテニウム触媒、又は、Rh/CやRh/アルミナ等の担持ロジウム触媒等が好ましい。これらのうち、反応活性の点で、ニッケル及び銅からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する触媒がより好ましい。
【0039】
還元工程において、接触水素化触媒の使用量は触媒の種類によって異なるが、原料である脂環式ジカルボン酸エステル化合物100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは3〜30質量部、さらに好ましくは5〜20質量部である。
【0040】
[溶媒]
還元工程は無溶媒で行うことができるが、溶媒を使用してもよい。
【0041】
還元工程に用いる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水、ギ酸、酢酸などの有機酸類;ベンゼン、o-ジクロロベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物類;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジグライム等のエーテル類あるいはこれらの混合物が挙げられる。これらのうち、無溶媒;ベンゼン、o-ジクロロベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物類;ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジグライム等のエーテル類あるいはこれらの混合物を用いることが好ましい。
【0042】
還元工程において、溶媒の使用量は、エステル化工程で得られた式(2)で表される脂環式ジカルボン酸エステル化合物に対し、好ましくは0〜30質量倍、より好ましくは0〜20質量倍、さらに好ましくは0〜10質量倍である。
【0043】
[反応条件]
還元工程における水素の圧力は、反応平衡をアルコール側に移動させるという観点からは高圧ほど好ましいが、設備コストを考慮して、1〜30MPaが好ましく、5〜25MPaがより好ましく、10〜20MPaがさらに好ましい。
【0044】
還元工程における反応温度は、十分な反応速度を得るという観点より、100℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましく、180℃以上がさらに好ましい。また、還元工程における反応温度は、生成する式(1)で表される脂環式ジオール化合物と式(2)で表される脂環式ジカルボン酸エステル化合物とのエステル交換反応を抑制する観点から、300℃以下が好ましく、290℃以下がより好ましく、280℃以下がさらに好ましい。
【0045】
還元工程における反応圧力は、好ましくは1.5〜30MPa、より好ましくは6〜25MPa、さらに好ましくは10〜20MPaの範囲である。
【0046】
還元工程の形式は、特に限定されない。例えば、接触水素化による還元方法の場合においても、還元工程の形式は、接触水素化反応が可能であれば特に限定されるものでなく、通常用いられる公知の形式でよい。還元工程を行う反応器としては、特に限定されないが、例えば、触媒を流体で流動化させて接触水素化反応を行う懸濁床反応器、触媒を充填固定化し流体を供給することで接触水素化反応を行う固定床反応器等が挙げられる。
【0047】
還元工程において、反応中に炭素数1〜4のアルコールが副生する場合がある。還元工程は、これらの副生物を存在させたまま行うことができるが、反応中に連続的あるいは断続的にこれらの副生物を除去しながら行うこともできる。
【0048】
<その他の工程>
本実施形態の製造方法は、上述した工程(a)及び(b)以外にその他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、特に限定されないが、例えば、液々抽出工程、触媒回収工程、中和水洗工程、助剤回収工程、精製工程が挙げられる。
【0049】
精製工程としては、特に限定されないが、例えば、エステル化工程で得られた式(2)で表される脂環式ジカルボン酸エステル化合物を含む反応液からHFを留去した後、該反応液を蒸留等の常法により精製する工程や還元工程で得られた式(1)で表される脂環式ジオール化合物を含む生成物から水素化触媒を分離した後、該生成物を蒸留や再結晶などの常法に従い精製する工程が挙げられる。このような精製工程を行うことにより、高純度の式(1)で表される新規脂環式ジオールを得ることができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下において“%”は、特に断らない限り質量%を意味する。
【0051】
<分析方法、条件>
[ガスクロマトグラフィー分析条件]
ガスクロマトグラフィーにおいて、測定装置として島津製作所製GC−17Aを用い、キャピラリーカラムとしてULBON製 HR−1(0.32mmφ×25m×0.50μm)を用いた。また、昇温条件は、100℃から300℃まで5℃/分で昇温する条件とした。
【0052】
[ジカルボン酸エステル化合物の収率及び異性体比]
ガスクロマトグラフィー分析により、生成物である数種類の異性体ジカルボン酸エステル化合物の面積割合(GC%)を求め、内部標準法によりジカルボン酸エステル化合物の収率及び異性体比を下記式により算出した。
【0053】
{ジカルボン酸エステル化合物の収率(モル%)}={ジカルボン酸エステル化合物の合計取得質量/256.3}/{原料の仕込み質量/136.2}×100
【0054】
{異性体比(%)}={メチル−4−(1−メトキシ−2−メチル−1−オキソプロパン−2−イル)−1−メチルシクロヘキサンカルボキシレート(GC%)}/{ジカルボン酸エステル化合物の合計(GC%)}×100
【0055】
なお、ここで異性体とは、カルボニル基の挿入位置が異なる構造異性体をいう。
【0056】
[脂環式ジオール化合物の収率]
ガスクロマトグラフィー分析により、生成物である数種類の異性体ジオール化合物の面積割合(GC%)を求め、内部標準法により2−(4−(ヒドロキシメチル)−4−メチルシクロヘキシル)−2−メチルプロパン−1−オールの収率を算出した。
【0057】
[GC−MS]
GC−MS測定装置として、Thermo ELECTRON社製GC−MSスペクトル装置のPOLARIS Qを用いた。
【0058】
[NMR]
下記条件によりNMRを測定した。
【0059】
装置 :Bruker Avance 600II(600MHz−NMR)
モード:Proton、Carbon、DEPT45°、90°、135°、Carbon i.g.、INADEQUATE
溶媒 :CDCl3(重クロロホルム)
内部標準物質:テトラメチルシラン
【0060】
<実施例1>
メチル−4−(1−メトキシ−2−メチル−1−オキソプロパン−2−イル)−1−メチルシクロヘキサンカルボキシレートの製造((a)カルボニル化工程、及び(b)エステル化工程)。
【0061】
【化9】
【0062】
[カルボニル化工程]
ナックドライブ式撹拌機、上部に3個の入口ノズル及び底部に1個の抜き出しノズルを備え、ジャケットにより内部温度を制御できる内容積500mlのステンレス製オートクレーブを用いてカルボニル化工程を以下のとおり行った。
【0063】
まず、オートクレーブ内部を一酸化炭素で置換した。その後、オートクレーブに、無水フッ化水素230g(11.5モル)を導入し、オートクレーブ内部の液温を−27℃とした。その後、オートクレーブ内部を一酸化炭素にて2MPaまで加圧した。
【0064】
オートクレーブ内において、反応温度を−27℃に保持し、かつ反応圧力を2MPaに保ちながら、4−イソプロペニル−1−メチル−1−シクロヘキセン104.4g(0.77モル)をオートクレーブ上部より供給してカルボニル化反応を行った。供給終了後、一酸化炭素の吸収が認められなくなるまで約10分間、反応液の撹拌を継続して、脂環式ジカルボン酸フロライドを得た。
【0065】
[エステル化工程]
引き続いて、オートクレーブ内において、反応温度を−27℃に保持しながら、メタノールをオートクレーブ上部より49.1g(1.53モル)供給して、反応液を撹拌しながら1時間、脂環式ジカルボン酸フロライドのエステル化を行った。
【0066】
反応液をオートクレーブ底部より氷水中に抜き出し、油相と水相とを分離した。その後、油相を2%苛性ソーダ水溶液100mlで2回、蒸留水100mlで2回洗浄し、10gの無水硫酸ナトリウムで脱水した。脱水後、得られた液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、ジカルボン酸エステル化合物の収率は、26.6モル%(4−イソプロペニル−1−メチル−1−シクロヘキセン基準)であり、メチル−4−(1−メトキシ−2−メチル−1−オキソプロパン−2−イル)−1−メチルシクロヘキサンカルボキシレートの収率は、21.1モル%(4−イソプロペニル−1−メチル−1−シクロヘキセン基準、異性体比79.2%)であった。
【0067】
[エステル化反応生成物の単離精製]
上記エステル化工程で得られた液をエバポレーターで減圧蒸留することにより、該液から低沸物を除去した。その後、低沸物を除去した液を、理論段数20段の精留塔を用いて精留した(留出温度177℃、真空度20torr)。該精留により、主留部分としてガスクロマトグラフィー分析で異性体比が92.0%の生成物が、42.0g(蒸留収率93.2モル%、1−メトキシ−2−メチル−1−オキソプロパン−2−イル)−1−メチルシクロヘキサンカルボキシレート基準)で得られた。
【0068】
[還元工程]
2−(4−(ヒドロキシメチル)−4−メチルシクロヘキシル)−2−メチルプロパン−1−オールの製造。
【0069】
【化10】
【0070】
ステンレス製オートクレーブに、アルミナに担持した銅−亜鉛触媒(日揮触媒化成製)3.0g、前記単離精製で主留部分として得られた生成物(メチル−4−(1−メトキシ−2−メチル−1−オキソプロパン−2−イル)−1−メチルシクロヘキサンカルボキシレートの異性体比が92.0%、その他の異性体が8.0%を含む)30.0gを入れ、無溶媒で水素を流通させながら15MPaの水素圧下、280℃で15時間攪拌して、メチル−4−(1−メトキシ−2−メチル−1−オキソプロパン−2−イル)−1−メチルシクロヘキサンカルボキシレートの還元反応を行った。
【0071】
反応液を濾過して触媒を除き、メチル−4−(1−メトキシ−2−メチル−1−オキソプロパン−2−イル)−1−メチルシクロヘキサンカルボキシレート0.8%、全水素添加物9.6%、2−(4−(ヒドロキシメチル)−4−メチルシクロヘキシル)−2−メチルプロパン−1−オール89.0%、その他の異性体が0.6%含有する製品(混合物)を19.1g製造した。2−(4−(ヒドロキシメチル)−4−メチルシクロヘキシル)−2−メチルプロパン−1−オールの収率は、78.9モル%(メチル−4−(1−メトキシ−2−メチル−1−オキソプロパン−2−イル)−1−メチルシクロヘキサンカルボキシレート基準)であった。
【0072】
[還元反応生成物の再結晶精製]
前記還元工程で得られた生成物をメタノールに溶解させた。その後、得られた溶液に、n−ヘキサン40gをゆっくりと注加して、析出した結晶をろ過分別した。得られた生成物は純度100%の白色固体であった(12.6g、晶析収率65.7モル%:2−(4−(ヒドロキシメチル)−4−メチルシクロヘキシル)−2−メチルプロパン−1−オール基準)。
【0073】
<生成物の同定>
実施例1の上記再結晶精製で得られた生成物についてGC−MS分析を行った結果、分子量は200であった。
【0074】
また、前記NMR装置を用いて、1H−NMR測定、13C−NMR測定、DEPT45°、90°、135°−NMR測定、Carbon i.g.−NMR測定、INADEQUATE−NMR測定を行った。1H−NMR測定及び13C−NMR測定の結果を以下に示し、DEPT45°、90°、135°−NMR測定、Carbon i.g.−NMR測定及びINADEQUATE−NMR測定の結果を
図1〜
図6に示す。
【0075】
[実施例1で得られた生成物のNMR測定結果]
1H−NMR(600MHz、CDCl3、TMS、ppm)δ:0.700〜0.955(m,9H)、1.113〜1.231(m,6H)、1.473〜1.560(m,2H)、1.638〜1.726(m,2H)、3.281〜3.457(m,4H)、4.907(m,1H)
【0076】
13C−NMR(600MHz、CDCl3、TMS、ppm)δ:22.27、23.29、28.22、35.07、36.02、37.86、43.94、49.01、66.64、70.60
【0077】
図1はDEPT45°−NMR測定の結果を示す。
図1から、四級炭素原子である4番と6番とのピーク消失が分った。
図2はDEPT90°−NMR測定の結果を示す。
図2から、三級炭素原子である7番のピークが強く検出されていることが分った。
図3はDEPT135°−NMR測定の結果を示す。二級炭素原子である2番と5番と8番と9番とが下向きに検出されていることが分った。
図4はCarbon i.g.−NMR測定結果を示す。
図4より、炭素数が確認できた。
図5及び
図6はINADEQUATE−NMR測定結果を示す(
図6は、
図5における15〜50ppm部分の測定結果の拡大図である)。
図5及び
図6より、炭素-炭素間の直接結合の相関関係が分った。
【0078】
これらの測定結果から総合的に判断して、実施例1で得られた生成物の主成分は2−(4−(ヒドロキシメチル)−4−メチルシクロヘキシル)−2−メチルプロパン−1−オールであると同定された。