特許第6160651号(P6160651)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6160651アクリル酸誘導体含有組成物、及びアクリル酸誘導体の安定化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6160651
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】アクリル酸誘導体含有組成物、及びアクリル酸誘導体の安定化方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/64 20060101AFI20170703BHJP
   C07C 57/76 20060101ALI20170703BHJP
   C07C 67/62 20060101ALI20170703BHJP
   C07C 69/653 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   C07C51/64
   C07C57/76
   C07C67/62
   C07C69/653
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-90688(P2015-90688)
(22)【出願日】2015年4月27日
(65)【公開番号】特開2016-199529(P2016-199529A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2016年4月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-80382(P2015-80382)
(32)【優先日】2015年4月9日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 誠
(72)【発明者】
【氏名】吉山 麻子
(72)【発明者】
【氏名】岸川 洋介
【審査官】 井上 千弥子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−093315(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第02350119(DE,A1)
【文献】 特表平02−500026(JP,A)
【文献】 特開平11−255703(JP,A)
【文献】 特開2003−277319(JP,A)
【文献】 特開昭57−085337(JP,A)
【文献】 特開昭62−106049(JP,A)
【文献】 特開昭60−158136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 51/00−69/96
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)式(I):
【化1】

[式中、
、及びR、水素原子を表し、
cは、基:−OR(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、又は水素原子を表す)、又はフッ素原子、又は塩素原子を表し、
及び
Xは、フッ素原子を表す。]
で表されるアクリル酸誘導体、及び
(B)式:R1011−N−CO−R12(式中、R10、及びR11は、炭素数1〜3のアルキル基を表し、及びR12は、水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)で表されるアミド
を含有する組成物であって、
アクリル酸誘導体(A)の含有量が30%(w/w)以上である
組成物。
【請求項2】
アミド(B)が、N,N−ジメチルホルムアミド、又はN,N−ジメチルアセトアミドである請求項に記載の組成物。
【請求項3】
が、メチル、又はエチルである請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(A)式(I):
【化2】

[式中、
、及びR、水素原子を表し、
cは、基:−OR(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基、又は水素原子を表す)、又はフッ素原子、又は塩素原子を表し、
及び
Xは、フッ素原子を表す。]
で表されるアクリル酸誘導体の安定化方法であって、
前記式(I)で表されるアクリル酸誘導体を、
式:R1011−N−CO−R12(式中、R10、及びR11は、炭素数1〜3のアルキル基を表し、及びR12は、水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)で表されるアミドと共存させることを含む安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル酸誘導体含有組成物、及びアクリル酸誘導体の安定化方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸誘導体は、(1)吸水性ポリマーの原料、(2)無機ガラスの代用品として、建築物若しくは乗物の窓材、照明器具のカバー、提灯看板、道路標識、日用品、事務用品、工芸品、及び腕時計の風防などに利用されるアクリル樹脂の原料、並びに(3)アクリル樹脂塗料の原料として広く使用されている。アクリル酸誘導体のなかでも、含フッ素アクリル酸誘導体は、医薬(例えば、抗生物質)の合成中間体、光学繊維のさや材料用の合成中間体、塗料用材料の合成中間体、半導体レジスト材料の合成中間体、及び機能性高分子の単量体等として有用である。
アクリル酸誘導体の製造方法としては、イソブチレンやプロピレンを酸化することでアクリル酸誘導体を製造する方法やエチレンやプロピン等を原料として遷移金属触媒を用いて製造する方法が知られている。
また、含フッ素アクリル酸誘導体の製造方法としては、例えば、特許文献1には、2−フルオロプロピオン酸エステルをラジカル開始剤の存在下に、窒素−臭素結合を有する臭素化剤と反応させる方法が開示され、及び特許文献2には、3−ハロ−2−フルオロプロピオン酸誘導体を、少なくとも一種の塩基の存在下、及び少なくとも一種の重合禁止剤の存在下で、置換された2−フルオロアクリル酸誘導体へ転化させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−001340号公報
【特許文献2】特表2012−530756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アクリル酸誘導体は構造上、活性な不飽和結合を含むので、熱、光、及び酸素等の外的刺激に対して不安定であり、及び、重合反応等により、容易にオリゴマー、又はポリマーへ変化する可能性を有している。
従って、アクリル酸誘導体を安定化する方法、及びアクリル酸誘導体を含有し、当該アクリル酸誘導体が安定化されている組成物が求められている。
本発明は、アクリル酸誘導体を安定化する方法、及びアクリル酸誘導体を含有し、当該アクリル酸誘導体が安定化されている組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討の結果、
(A)式(I):
【化1】
[式中、
、及びRは、同一又は異なって、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は水素原子を表し、
cは、基:−OR(式中、Rは、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は水素原子を表す)、又はハロゲン原子を表し、及び
Xは、フルオロアルキル基、アルキル基、水素原子、又はハロゲン原子を表す。]
で表されるアクリル酸誘導体、及び
(B)アミド
を含有する組成物によって、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、次の態様を含む。
【0007】
項1.
(A)式(I):
【化2】
[式中、
、及びRは、同一又は異なって、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は水素原子を表し、
cは、基:−OR(式中、Rは、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は水素原子を表す)、又はハロゲン原子を表し、及び
Xは、フルオロアルキル基、アルキル基、水素原子、又はハロゲン原子を表す。]
で表されるアクリル酸誘導体、及び
(B)アミド
を含有する組成物であって、
アクリル酸誘導体(A)の含有量が30%(w/w)以上である
組成物。
項2.
アミド(B)が、炭素数1〜6のアミドである項1に記載の組成物。
項3.
アミド(B)が、N,N−ジメチルホルムアミド、又はN,N−ジメチルアセトアミドである項2に記載の組成物。
項4.
が、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のフルオロアルキル基である項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
項5.
が、水素原子である項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
項6.
が、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のフルオロアルキル基である項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
項7.
が、水素原子である項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
項8.
が、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基である項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
項9.
Xが、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、フッ素原子、又は塩素原子である項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
項10.
Xが、フッ素原子である項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
項11.
式(I):
【化3】
[式中、
、及びRは、同一又は異なって、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は水素原子を表し、
cは、基:−OR(式中、Rは、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は水素原子を表す)、又はハロゲン原子を表し、及び
Xは、フルオロアルキル基、アルキル基、水素原子、又はハロゲン原子を表す。]
で表されるアクリル酸誘導体の安定化方法であって、
前記式(I)で表されるアクリル酸誘導体を、アミドと共存させることを含む安定化方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物は、アクリル酸誘導体を含有し、当該アクリル酸誘導体が安定化されている。
本発明の方法によれば、アクリル酸誘導体が安定化される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
用語
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本発明が属する技術分野において通常用いられる意味に解される。
本明細書中、室温は、10〜40℃の範囲内の温度を意味する。
【0010】
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
【0011】
本明細書中、アクリル酸誘導体の「安定化」とは、ポリマー等の他の物質へアクリル酸誘導体が変化することが抑制されていることを意味する。
【0012】
本明細書中、「アルキル基」(当該用語「アルキル基」は、「フルオロアルキル基」等における「アルキル基」の部分を包含する。)は、環状、直鎖状、又は分枝鎖状のアルキル基であることができる。
本明細書中、「アルキル基」は、例えば、炭素数1〜20、炭素数1〜12、炭素数1〜6、炭素数1〜4、又は炭素数1〜3のアルキル基であることができる。
本明細書中、「アルキル基」として、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、及びヘキシル基等の直鎖状、又は分枝鎖状のアルキル基が挙げられる。
本明細書中、「アルキル基」として、具体的には、また、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシル等の炭素数3〜6の環状のアルキル基(シクロアルキル基)が挙げられる。
【0013】
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基である。
本明細書中、「フルオロアルキル基」が有するフッ素原子の数は、1個以上(例、1〜3個、1〜6個、1〜12個、1個から置換可能な最大数)であることができる。
「フルオロアルキル基」は、パーフルオロアルキル基を包含する。「パーフルオロアルキル基」は、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基である。
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、例えば、炭素数1〜20、炭素数1〜12、炭素数1〜6、炭素数1〜4、又は炭素数1〜3のフルオロアルキル基であることができる。
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、直鎖状、又は分枝鎖状のフルオロアルキル基であることができる。
本明細書中、「フルオロアルキル基」として、具体的には、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、テトラフルオロプロピル基(例、HCFCFCH−)、ヘキサフルオロプロピル基(例、(CFCH−)、ノナフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基(例、HCFCFCFCFCH−)、及びトリデカフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0014】
本明細書中、「アリール基」としては、例えば、フェニル基、及びナフチル基等が挙げられる。
【0015】
本明細書中、「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0016】
本明細書中、「アルコキシ基」は、アルキル−O−基である。
【0017】
本明細書中、「アシル基」としては、例えば、アルカノイル基(すなわち、アルキル−CO−基)等が挙げられる。
【0018】
本明細書中、「エステル基」としては、例えば、アルキルカルボニルオキシ基(すなわち、アルキル−CO−O−基)、及びアルコキシカルボニル基(すなわち、アルキル−O−CO−基)等が挙げられる。
【0019】
組成物
本発明の組成物は、
(A)式(I):
【化4】
[式中、
、及びRは、同一又は異なって、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、ハロゲン原子、又は水素原子を表し、
cは、基:−OR(式中、Rは、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又は水素原子を表す)、又はハロゲン原子を表し、及び
Xは、フルオロアルキル基、アルキル基、水素原子、又はハロゲン原子を表す。]
で表されるアクリル酸誘導体(本明細書中、アクリル酸誘導体(A)と称する場合がある。)、及び
(B)アミド
を含有する組成物であって、
アクリル酸誘導体(A)の含有量が30%(w/w)以上である
組成物
である。
【0020】
アクリル酸誘導体(A)
以下に、アクリル酸誘導体(A)を表す式(I)中の記号を説明する。
、R、及びRでそれぞれ表される「1個以上の置換基を有していてもよいアリール基」における置換基の好ましい例としては、フッ素原子、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、エステル基、シアノ基、ニトロ基、及びフルオロアルキル基が挙げられ、より好ましい例としては、フッ素原子が挙げられる。
当該「置換基」の数は、好ましくは、0個(すなわち、無置換)、1個、2個、又は3個である。
は、好ましくは水素原子、炭素数1〜20(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜6、更に好ましくは炭素数1〜4、より更に好ましくは炭素数1〜3、特に好ましくは炭素数1、又は2)のアルキル基、又は炭素数1〜20のフルオロアルキル基であり、及びより好ましくは水素原子である。
【0021】
は、好ましくは水素原子、炭素数1〜20(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜6、更に好ましくは炭素数1〜4、より更に好ましくは炭素数1〜3、特に好ましくは炭素数1、又は2)のアルキル基、又は炭素数1〜20(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜6、更に好ましくは炭素数1〜4、より更に好ましくは炭素数1〜3、特に好ましくは炭素数1、又は2)のフルオロアルキル基であり、及びより好ましくは水素原子である。
【0022】
で表されるハロゲン原子は、好ましくは、フッ素原子、又は塩素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。
は、好ましくは式:−ORである。
は、好ましくは、炭素数1〜20の直鎖状アルキル基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜6、更に好ましくは炭素数1〜4、より更に好ましくは炭素数1〜3、特に好ましくは炭素数1、又は2)である。
【0023】
Xは、炭素数1〜20(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜6、更に好ましくは炭素数1〜4、より更に好ましくは炭素数1〜3、特に好ましくは炭素数1、又は2)のフルオロアルキル基、フッ素原子、又は塩素原子であり、及びより好ましくはフッ素原子である。
【0024】
前記式(I)において、
好ましくは、
は、水素原子であり、
は、水素原子であり、
は、基:−ORであり、
は、メチル基、又はエチル基(より好ましくはメチル基)であり、且つ
Xは、フッ素原子、又は塩素原子(より好ましくはフッ素原子)
である。
【0025】
本発明の組成物は、1種以上のアクリル酸誘導体(A)を含有することができるが、本発明の組成物は、好ましくは、1種のみのアクリル酸誘導体(A)を含有する。
【0026】
本発明で用いられるアクリル酸誘導体(A)は、公知の製造方法又はこれに準じる方法により製造することができ、或いは商業的に入手可能である。
本発明で用いられるアクリル酸誘導体(A)は、式(I)におけるRが基:−ORである場合、例えば、国際公開第2014/034906号、特開2014−24755号、及び米国特許第3262968号等の公知文献に記載の製造方法、又はこれに準じる方法により製造することができる。
本発明で用いられるアクリル酸誘導体(A)は、式(I)におけるRがハロゲン原子である場合、例えば、特開昭60−078940号公報、及び特開昭61−085345号公報等の公知文献に記載の製造方法、又はこれに準じる方法により製造することができる。
【0027】
本発明の組成物におけるアクリル酸誘導体(A)の含有量は、30%(w/w)以上である。
一般に、アクリル酸誘導体(A)の濃度が高い場合、望まざる重合反応等が生じやすい。しかし、本発明の組成物では、アクリル酸誘導体(A)の含有量がこのように高くても、アクリル酸誘導体(A)が安定であることができる。
更に、本発明の組成物におけるアクリル酸誘導体(A)の含有量は、好ましくは40%(w/w)以上、50%(w/w)以上、60%(w/w)以上、70%(w/w)以上、80%(w/w)以上、又は90%(w/w)以上であることができる。
本発明の組成物におけるアクリル酸誘導体(A)の含有量の上限は、特に限定されないが、例えば、98%(w/w)、95%(w/w)、又は90%(w/w)であることができる。但し、当業者が当然に理解するように、本発明の組成物におけるアクリル酸誘導体(A)の含有量の上限は、本発明の組成物が含有するアミド(B)の量によって制限を受ける場合がある。
【0028】
アミド(B)
本発明の組成物が含有するアミド(B)の具体例は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、及びN,N−ジエチルアセトアミドを包含する。
本発明の組成物が含有するアミド(B)は、好ましくは、式:R1011-N-CO-R12(式中、R10、及びR11は、炭素数1〜3のアルキル基を表し、及びR12は、水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
本発明の組成物が含有するアミド(B)は、好ましくは炭素数3〜8のアミドである。
本発明の組成物が含有するアミド(B)は、特に好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、又はN,N−ジメチルアセトアミドである。
本発明では、当該アミド(B)を、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
本発明の組成物におけるアミド(B)の含有量の下限は、好ましくは0.01%(w/w)、0.05%(w/w)、0.1%(w/w)、0.5%(w/w)、1.0%(w/w)、より好ましくは3.0%(w/w)、及び更に好ましくは5.0%(w/w)である。
アクリル酸誘導体(A)の安定化の目的においては、本発明の組成物におけるアミド(B)の含有量の上限は、特に限定されないが、所望するアクリル酸誘導体(A)の安定化の効果が達成される量を超えてアミド(B)を用いることは、コスト面で不利である。従って、本発明の組成物におけるアミド(B)の含有量の上限は、通常、例えば、50%(w/w)、40%(w/w)、30%(w/w)、20%(w/w)、又は10%(w/w)であることができる。
本発明の組成物におけるアミド(B)の含有量は、好ましくは0.01〜50%(w/w)の範囲内、より好ましくは1.0〜40%(w/w)の範囲内、更に好ましくは5.0〜30%(w/w)、より更に好ましくは1〜3%(w/w)の範囲内である。
【0030】
本発明の組成物において、アクリル酸誘導体(A)に対するアミド(B)の量比[アミド(B)/アクリル酸誘導体(A)]の下限は、好ましくは0.01%(w/w)、0.05%(w/w)、より好ましくは0.1%(w/w)、更に好ましくは0.5%(w/w)、より更に好ましくは1.0%(w/w)、特に好ましくは3.0%、より特に好ましくは5.0%(w/w)である。
アクリル酸誘導体(A)の安定化の目的においては、アクリル酸誘導体(A)に対するアミド(B)の量比[アミド(B)/アクリル酸誘導体(A)]の上限は、特に限定されないが、所望するアクリル酸誘導体(A)の安定化の効果が達成される量を超えてアミド(B)を用いることは、コスト面で不利である。従って、アクリル酸誘導体(A)に対するアミド(B)の量比[アミド(B)/アクリル酸誘導体(A)]の上限は、通常、例えば、200%(w/w)、190%(w/w)、170%(w/w)、150%(w/w)、100%(w/w)70%(w/w)、50%(w/w)、40%(w/w)、又は30%(w/w)であることができる。
本発明の組成物において、アクリル酸誘導体(A)に対するアミド(B)の量比は、好ましくは0.01〜200%(w/w)の範囲内、より好ましくは0.1〜190%(w/w)の範囲内、更に好ましくは1〜170%(w/w)、より更に好ましくは3〜50%(w/w)、及び特に好ましくは5〜50%(w/w)の範囲内である。
【0031】
任意成分
本発明の組成物は、アクリル酸誘導体(A)及びアミド(B)に加えて任意成分を含有していてもよい。当該任意成分は、本発明の組成物の製造のために用意したアクリル酸誘導体(A)、又はアミド(B)に共存する不純物であってもよい。
このような任意成分としては、例えば水や有機溶媒等が挙げられる。
本発明の組成物では、アミド(B)によって、アクリル酸誘導体(A)が安定化されているので、アクリル酸誘導体(A)の安定化の目的で重合禁止剤を含有する意義は小さいが、本発明の組成物は、任意成分として、重合禁止剤を含有し得る。
【0032】
望まざる重合反応等を防止する手段として、特許文献2に記載の重合禁止剤のような、重合禁止剤を用いる方法が知られている。しかし、アクリル酸誘導体は、その保存時、又は使用時等において、様々な条件に曝され得る。ここで、汎用の重合禁止剤はアクリル酸誘導体と沸点が大きく異なるので、しばしば、アクリル酸誘導体と共存させることが困難な場合がある。この場合、重合禁止剤は、その機能を十分に果たし得ない。
【0033】
本発明の組成物の安定性
本発明の組成物においては、アクリル酸誘導体(A)は、安定化されている。すなわち、本発明の組成物において、これに含有されるアクリル酸誘導体(A)は、高い安定性を有する。
具体的には、例えば、本発明の組成物においては、アクリル酸誘導体(A)は、アミド(B)が共存しない場合に比べて、ポリマー等へのアクリル酸誘導体(A)の変化が抑制されている。
本発明において、他の物質へのアクリル酸誘導体(A)の変化は、例えば、NMR分析法等の方法により分析できる。また、例えば、ポリマーへのアクリル酸誘導体の変化は、アクリル酸誘導体の無色透明の溶液が固体へ変化することの観察等により、容易に検知することができる。
本発明の組成物においては、アクリル酸誘導体(A)がアミド(B)と共存することによって、アクリル酸誘導体(A)が安定化されている。
従来、アクリル酸誘導体を安定化する手段としては、前記アクリル酸誘導体を重合禁止剤と共存させる方法が知られている。
しかし、アクリル酸誘導体(A)は、その保存時、又は使用時等において、様々な条件に曝され得るので、しばしば、アクリル酸誘導体と共存させることが困難な場合がある。この場合、重合禁止剤は、その機能を十分に果たし得ない。
これに対して、アミド(B)はアクリル酸誘導体(A)と近い沸点を有し得るので、アクリル酸誘導体(A)と共存させることが容易である。従って、本発明の組成物におけるアクリル酸誘導体(A)は、様々な条件下で、安定化されている。
【0034】
製造方法
本発明の組成物は、例えば、撹拌等の慣用の方法により、アクリル酸誘導体(A)、アミド(B)、及び所望により添加される任意成分を混合することによって製造できる。
アミド(B)の一部、又は全部は、本発明の組成物の製造のために用意したアクリル酸誘導体(A)中に、不純物、又は添加剤として含有されていてもよい。
【0035】
アクリル酸誘導体(A)の安定化方法
本発明の、前記式(I)で表されるアクリル酸誘導体(前記アクリル酸誘導体(A))の安定化方法は、当該アクリル酸誘導体(A)を、アミド(前記アミド(B))と共存させることを含む。
アクリル酸誘導体(A)を、アミド(B)と共存させる方法は特に限定されず、その例としては、例えば、
[1]アクリル酸誘導体(A)及びアミド(B)を混合すること、
[2]アクリル酸誘導体(A)を含有する系中で、アミド(B)を生成させること、
[3]アミド(B)を含有する系中で、アクリル酸誘導体(A)を生成させること、及び
[4]単一の系中での、アクリル酸誘導体(A)及びアミド(B)をそれぞれ生成させること
が挙げられる。
【0036】
本発明のアクリル酸誘導体(A)の安定化方法におけるアクリル酸誘導体(A)は、本発明の組成物に関して述べた通りである。
【0037】
本発明のアクリル酸誘導体(A)の安定化方法におけるアミド(B)は、本発明の組成物に関して述べた通りである。
【0038】
本発明のアクリル酸誘導体(A)の安定化方法では、好ましくは、アミド(B)を、アクリル酸誘導体(A)に対して所定の量比で用いる。当該量比は、本発明の組成物に関して述べた通りである。
【0039】
以上の事項を含む、アクリル酸誘導体(A)の安定化方法についての詳細は、前記の、本発明の組成物について述べた説明から理解される。
【実施例】
【0040】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
実施例1
蒸留精製したフッ化2−フルオロアクリロイルを用意した。
0.23gのN,N−ジメチルアセトアミド、及び9.92gのフッ化2−フルオロアクリロイルを混合して、試料組成物を調製した。一方、9.9gの蒸留精製したフッ化2−フルオロアクリロイルを対照に用いた。両者とも、用意した時点では、透明の液体であった。
サンプル瓶の中に、試料組成物、又は対照であるフッ化2−フルオロアクリロイルをそれぞれ入れ、蓋をして、1日間室温で静置し、その後、両者の性状を観察した。その結果、対照では固形物が観察されたが、N,N−ジメチルアセトアミド、及びフッ化2−フルオロアクリロイルを含有する試料組成物は透明の液体であり、性状には変化は見られなかった。
これにより、N,N−ジメチルアセトアミドがフッ化2−フルオロアクリロイルを安定化できることが確認された。
【0042】
実施例2
2-フルオロアクリル酸メチルエステル100質量%に対して、表1に示す量のN,N−ジメチルホルムアミドを添加して、各試料を調製した。
サンプル瓶の中に、各試料をそれぞれ入れ、蓋をして、5時間60℃で静置し、これらの性状を観察した。その結果、3時間後まではいずれも性状に変化は見られなかった。しかし、その後、N,N−ジメチルホルムアミドを添加していない2-フルオロアクリル酸メチルエステル(試料2−1)(対照)では次第に粘性が高くなり、5時間後には完全に固化した。一方、5時間後でも、N,N−ジメチルホルムアミド、及び2-フルオロアクリル酸メチルエステルを含有する試料組成物(試料2−2、試料2−3)の性状には変化は見られなかった。
これにより、N,N−ジメチルアセトアミドが2-フルオロアクリル酸メチルエステルを安定化できることが確認された。
【0043】
【表1】