特許第6160661号(P6160661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6160661ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6160661
(24)【登録日】2017年6月23日
(45)【発行日】2017年7月12日
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20170703BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20170703BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20170703BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20170703BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20170703BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20170703BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20170703BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08K5/103
   C08K3/36
   C08K5/5415
   C08K5/548
   C08L65/00
   B60C1/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-142569(P2015-142569)
(22)【出願日】2015年7月17日
(65)【公開番号】特開2016-29167(P2016-29167A)
(43)【公開日】2016年3月3日
【審査請求日】2016年7月6日
(31)【優先権主張番号】特願2014-147301(P2014-147301)
(32)【優先日】2014年7月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】築島 新
(72)【発明者】
【氏名】岡 美幸
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/098155(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/035998(WO,A1)
【文献】 特開平09−309978(JP,A)
【文献】 特開平08−027325(JP,A)
【文献】 特開2002−212353(JP,A)
【文献】 特開2011−052090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 21/00−21/02
65/00−65/04
B60C 1/00
C08K 3/00−5/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ジエン系ゴム100質量部に対し、
(B)シリカを5〜200質量部、
(C)硫黄含有シランカップリング剤を前記シリカに対し1〜20質量%、
(D)下記式(1)で表されるアルキルトリエトキシシランを前記シリカに対し1〜20質量%、および
(E)炭素数8〜24の脂肪酸を由来とするグリセリンモノ脂肪酸エステルを前記(B)シリカの質量に対し1〜20質量%配合してなり、
【化1】
(式(1)中、R1は炭素数1〜20のアルキル基を表し、Etはエチル基を表す。)
かつ、下記(1)〜(3)の共重合体および下記(4)の水素添加物のうち少なくとも1種をさらに配合してなり、なおかつ前記(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルが不飽和結合を含むことを特徴とするゴム組成物。
(1) α−ピネン−芳香族ビニル共重合体
(2) β−ピネン−芳香族ビニル共重合体
(3) α−ピネン、β−ピネン、ジペンテンからなる群のうち少なくとも2種と芳香族ビニルとの共重合体
(4) 上記(1)〜(3)の共重合体の水素添加物。
【請求項2】
前記(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量が、前記(D)式(1)で表されるアルキルトリエトキシシランに対して10〜1000質量%であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のゴム組成物をトレッドに使用した空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、シリカの分散性を高め、破断特性を向上させるとともに、硫黄のヤケの問題も防止可能なゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年益々厳しくなるタイヤ高性能化への要求に伴い、タイヤにシリカを配合する手法が知られている。しかしながらシリカは、その粒子表面に存在するシラノール基による水素結合の形成のために凝集する傾向を有し、混練時にゴム組成物のムーニー粘度が高くなり、加工性を悪化させるという問題点があった。
シリカの分散性を高めるためには、反応性の高い硫黄含有シランカップリング剤を添加するのが有利である。しかし、このような硫黄含有シランカップリング剤は、未加硫ゴムのヤケ等、加工上の問題があるため多量に配合することができず、シリカの十分な分散性が得られないという課題があった。
【0003】
一方、下記特許文献1には、硫黄含有シランカップリング剤とアルキルトリエトキシシランとを併用し、シリカの分散性を高める技術が開示されている。この技術によれば、加工性を損なうことなくシリカの高い分散性が得られるが、アルキルトリエトキシシランは、シリカ−ポリマー間に結合を生成しないためゴムの補強性を低下させてしまい、これにより破断特性が低下し耐摩耗性を悪化させることが懸念されていた。この理由としては、シリカ表面のシラノール基に対する、硫黄含有シランカップリング剤とアルキルトリエトキシシランカップリング剤の反応速度が両者間であまり変わらず、硫黄含有シランカップリング剤の反応量が相対的に減少するためであると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4930661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、シリカの分散性を高め、破断特性を向上させるとともに、硫黄のヤケの問題も防止可能なゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ジエン系ゴムに対し、シリカ、硫黄含有シランカップリング剤、アルキルトリエトキシシランおよび特定のグリセリンモノ脂肪酸エステルを特定量でもって配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下の通りである。
【0007】
1.(A)ジエン系ゴム100質量部に対し、
(B)シリカを5〜200質量部、
(C)硫黄含有シランカップリング剤を前記シリカに対し1〜20質量%、
(D)下記式(1)で表されるアルキルトリエトキシシランを前記シリカに対し1〜20質量%、および
(E)炭素数8〜24の脂肪酸を由来とするグリセリンモノ脂肪酸エステルを前記(B)シリカの質量に対し1〜20質量%配合してなることを特徴とするゴム組成物。
【0008】
【化1】
【0009】
(式(1)中、Rは炭素数1〜20のアルキル基を表し、Etはエチル基を表す。)
【0010】
2.下記(1)〜(3)の共重合体および下記(4)の水素添加物のうち少なくとも1種をさらに配合してなることを特徴とする前記1に記載のゴム組成物。
(1) α−ピネン−芳香族ビニル共重合体
(2) β−ピネン−芳香族ビニル共重合体
(3) α−ピネン、β−ピネン、ジペンテンからなる群のうち少なくとも2種と芳香族ビニルとの共重合体
(4) 上記(1)〜(3)の共重合体の水素添加物。
【0011】
3.前記(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量が、前記(D)式(1)で表されるアルキルトリエトキシシランに対して10〜1000質量%であることを特徴とする前記1に記載のゴム組成物。
4.前記(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルが不飽和結合を含むことを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載のゴム組成物。
5.前記1〜4のいずれかに記載のゴム組成物をトレッドに使用した空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、(A)ジエン系ゴムに対し、(B)シリカ、(C)硫黄含有シランカップリング剤、(D)アルキルトリエトキシシランおよび特定の(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルを特定量でもって配合したので、(B)シリカの分散性を高め、破断特性を向上させるとともに、硫黄のヤケの問題も防止可能なゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
とくに、(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルの持つ2つの−OH基が(B)シリカ表面のシラノール基に吸着し、脂肪酸の炭素鎖が疎水化部位として作用し分散性が向上し、シリカ凝集塊がより細かくなる。この作用によってシリカの表面積が増加するため、カップリング剤との反応点も増加する。一方で(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルはシリカ表面には水素結合を介して吸着しているのみで脱離可能であり、シランカップリング剤の反応を阻害しない。そのため、(D)アルキルトリエトキシシラン存在下でも破断特性は悪化しない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0014】
(A)ジエン系ゴム
本発明で使用される(A)ジエン系ゴムは、通常のゴム組成物に配合することができる任意のジエン系ゴムを用いることができ、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
これらのジエン系ゴムの中でも、本発明の効果の点からジエン系ゴムはSBR、BRが好ましい。
【0015】
(B)シリカ
本発明で使用されるシリカとしては、乾式シリカ、湿式シリカ、コロイダルシリカおよび沈降シリカなど、従来からゴム組成物において使用することが知られている任意のシリカを単独でまたは2種以上組み合わせて使用できる。
なお本発明では、本発明の効果がさらに向上するという観点から、シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は100〜400m/gであるのが好ましく、150〜300m/gであるのがさらに好ましい。窒素吸着比表面積(NSA)はJIS K6217−2に準拠して求めた値である。
【0016】
(C)硫黄含有シランカップリング剤
本発明で使用される硫黄含有シランカップリング剤は、シリカ配合のゴム組成物に使用可能なものであればよく、例えばビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等を例示することができる。
【0017】
(D)アルキルトリエトキシシラン
本発明で使用されるアルキルトリエトキシシランは、下記式(1)で表される化合物である。
【0018】
【化2】
【0019】
(式(1)中、R1は炭素数1〜20のアルキル基を表し、Etはエチル基を表す。)
シラン化合物である。
【0020】
ここで、R1の炭素数1〜20のアルキル基としては、中でも、炭素数7〜20のアルキル基が好ましく、具体的には、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。これらのうち、ジエン系ゴムとの相溶性の観点から、炭素数8〜10のアルキル基がさらに好ましく、オクチル基、ノニル基であるのがとくに好ましい。
(D)アルキルトリエトキシシランを用いることにより、シリカの凝集や粘度上昇を抑制する効果を奏する。
【0021】
(E)グリセリンモノ脂肪酸エステル
本発明で使用される(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルは、炭素数8〜24の脂肪酸を由来とするモノグリセリドである。
脂肪酸としては、具体的には、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の直鎖脂肪酸類が挙げられる。
グリセリンモノ脂肪酸エステルは、1種類を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の効果が向上するという観点から、前記脂肪酸は、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸が好ましい。
特に、(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルのアルキル鎖が不飽和である場合、不飽和結合が硫黄との反応点となり、ポリマーの架橋密度を相対的に低下させ、余分な架橋を抑制する事で破断強度・破断伸びを向上させることが可能である。
【0022】
(ゴム組成物の配合割合)
本発明のゴム組成物は、
(A)ジエン系ゴム100質量部に対し、
(B)シリカを5〜200質量部、
(C)硫黄含有シランカップリング剤を前記シリカに対し1〜20質量%、
(D)前記式(1)で表されるアルキルトリエトキシシランを前記シリカに対し1〜20質量%、および
(E)炭素数8〜24の脂肪酸を由来とするグリセリンモノ脂肪酸エステルを前記(B)シリカの質量に対し1〜20質量%配合してなることを特徴とする。
【0023】
(B)シリカの配合量が5質量部未満であると、補強性が悪化し、200質量部を超えると加工性が悪化する。
(C)硫黄含有シランカップリング剤の配合量が(B)シリカに対し1質量%未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に20質量%を超えるとスコーチが悪化する。
(D)アルキルトリエトキシシランの配合量が(B)シリカに対し1質量%未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に20質量%を超えると破断強度・破断伸びが悪化する。
(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量が(B)シリカに対し1質量%未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に20質量%を超えると破断強度・破断伸びが悪化する。
【0024】
(B)シリカのさらに好ましい配合量は、(A)ジエン系ゴム100質量部に対し、50〜150質量部である。
(C)硫黄含有シランカップリング剤のさらに好ましい配合量は、(B)シリカに対し、2〜15質量%である。
(D)アルキルトリエトキシシランのさらに好ましい配合量は、(B)シリカに対し、2〜10質量%である。
(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルのさらに好ましい配合量は、(B)シリカに対し、1〜10質量%である。
【0025】
ここで本発明では、(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量が、(D)アルキルトリエトキシシランに対して10〜1000質量%であることが未加硫ゴムのヤケ防止、破断特性の向上の観点から好ましい。さらに好ましい上記割合は、20〜500質量%である。
【0026】
また本発明では、破断特性をさらに向上させることを目的として、下記(1)〜(3)の共重合体および下記(4)の水素添加物のうち少なくとも1種をさらに配合してなることが好ましい。
(1) α−ピネン−芳香族ビニル共重合体
(2) β−ピネン−芳香族ビニル共重合体
(3) α−ピネン、β−ピネン、ジペンテンからなる群のうち少なくとも2種と芳香族ビニルとの共重合体
(4) 上記(1)〜(3)の共重合体の水素添加物。
上記共重合体を構成する芳香族ビニルは、例えば、スチレン、α−メチルスチレンが挙げられ、スチレンを用いるのが好ましい。
上記共重合体の配合量は、(A)ジエン系ゴム100重量部に対し3〜30重量部であるのが好ましい。
【0027】
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;酸化亜鉛、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウムのような各種充填剤;老化防止剤;可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0028】
また本発明のゴム組成物は従来の空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造するのに適しており、トレッドに適用するのがよい。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0030】
標準例1、実施例1〜2および比較例1〜7
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、混練物をミキサー外に放出させて質量冷却させ、同バンバリーミキサーにて加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で未加硫のゴム組成物および加硫ゴム試験片の物性を測定した。
【0031】
ムーニービス:JIS K6300に従い、100℃における未加硫ゴムの粘度を測定した。結果は標準例1の値を100として指数表示した。この値が低いほど粘度が低く、加工性が良好であることを示す。
ムーニースコーチ:JIS K6300に従い、125℃で試験した。結果は標準例1の値を100として指数表示した。この値が高いほど、ヤケ性に優れることを示す。
破断強度:JIS K 6251に従い、室温で試験した。結果は標準例1の値を100として指数表示した。この値が高いほど、補強性に優れることを示す。
破断伸び:JIS K 6251に従い、室温で試験した。結果は標準例1の値を100として指数表示した。この値が高いほど、耐摩耗性に優れることを示す。
結果を表1に併せて示す。
【0032】
【表1】
【0033】
*1:SBR(旭化成(株)製タフデン3830、油展量=SBR100質量部に対し37.5質量部)
*2:BR(日本ゼオン(株)製Nipol BR1220)
*3:シリカ(ローディア社製Zeosil 1165MP、窒素吸着比表面積(NSA)=165m/g)
*4:カーボンブラック(キャボットジャパン(株)製ショウブラックN339、窒素吸着比表面積(NSA)=90m/g))
*5:シランカップリング剤(エボニックデグッサ社製Si69、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
*6:アルキルトリエトキシシラン(信越化学(株)製KBE−3083、n−オクチルトリエトキシシラン)
*7:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*8:ステアリン酸(日油(株)製ステアリン酸YR)
*9:老化防止剤(Solutia Europe社製Santoflex 6PPD)
*10:プロセスオイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S)
*11:化合物−1(シグマアルドリッチ社製モノステアリン酸グリセロール)
*12:化合物−2(シグマアルドリッチ社製モノオレイン酸グリセロール)
*13:化合物−3(シグマアルドリッチ社製グリセリン)
*14:化合物−4(シグマアルドリッチ社製トリステアリン酸グリセリン)
*15:硫黄(軽井沢精錬所社製油処理イオウ)
*16:加硫促進剤−1(大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ−G)
*17:加硫促進剤−2(Flexsys社製Perkacit DPG)
【0034】
上記の表1の結果から明らかなように、実施例1および2で得られたゴム組成物は、(A)ジエン系ゴムに対し、(B)シリカ、(C)硫黄含有シランカップリング剤、(D−1)アルキルトリエトキシシランおよび特定の(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルを特定量でもって配合したので、前記(D)および(E)を配合していない標準例1に対し、(B)シリカの分散性が高まり、破断特性が向上し、硫黄のヤケの問題も防止されていることが分かる。
比較例1は、標準例1に記載のゴム組成物に、(D−1)アルキルトリエトキシシランを配合した例であるが、破断強度が悪化した。
比較例2は、標準例1に記載のゴム組成物に、(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルを配合した例であるが、ムーニービスが悪化した。
比較例3は、標準例1に記載のゴム組成物における(C)硫黄含有シランカップリング剤を増量した例であるが、破断伸びおよびスコーチが悪化した。
比較例4は、(C)硫黄含有シランカップリング剤を配合していないので、破断強度およびムーニービスが悪化した。
比較例5は、(C)硫黄含有シランカップリング剤および(D−1)アルキルトリエトキシシランを配合せず、(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルを増量した例であるので、破断強度およびムーニービスが悪化した。
比較例6は、(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルを配合せず、その替わりにグリセリンを配合した例であるので、破断伸びおよびスコーチが悪化した。
比較例7は、(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルを配合せず、その替わりにトリステアリン酸グリセリンを配合した例であるので、破断強度が悪化した。
【0035】
実施例3〜7および比較例8〜11
(B)シリカに対する(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量を種々変更する以外は、上記例を繰り返した。結果を表2に示す。なお、前掲の標準例1、実施例1、比較例1の結果も併せて表2に記載した。
【0036】
実施例8〜9および比較例12
樹脂を添加した系において、(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合の効果を調べた。それ以外は、上記例を繰り返した。結果を表2に併せて示す。
【0037】
【表2】
【0038】
樹脂:(ヤスハラケミカル(株)製テルペンスチレン樹脂TO−125)
【0039】
表2の結果から、比較例1、8、10は、(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルを配合していないか、配合量が本発明で規定する下限未満であるので、破断強度が悪化した。
これに対し、実施例3、5は、(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量が本発明で規定する範囲内であるので、スコーチを悪化させずにムーニービスおよび破断伸びが向上している。実施例4、6、7は、(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量を増加させた例であり、各物性がさらに向上している。
比較例9、11は、(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、破断強度が悪化した。
比較例12は、(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルを配合せずに、樹脂を配合した例であるが、破断伸びおよびムーニービスが悪化した。
これに対し、実施例8、9は、(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルを本発明で規定する範囲内で配合したので、比較例12の結果に比べ、すべての物性が向上した。
【0040】
実施例10〜15および比較例13〜16
(D−1)アルキルトリエトキシシランに対する(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量を種々変更する以外は、上記例を繰り返した。結果を表3に示す。なお、前掲の標準例1の結果も併せて表3に記載した。
【0041】
【表3】
【0042】
表3の結果から、実施例10〜15は、(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量が、(D−1)アルキルトリエトキシシランに対して10〜1000質量%の範囲内であるので、各種物性が良化している。
比較例13、15は、(D−1)アルキルトリエトキシシランの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、ムーニービスが悪化し、その他の物性も良化しなかった。
比較例14、16は、(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量が本発明で規定する下限未満であり、(E)グリセリンモノ脂肪酸エステルの配合量が、(D−1)アルキルトリエトキシシランに対して約2質量%であるので、破断強度が悪化した。
なお、実施例9以外の実施例は参考例である。