(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発熱体は、前記複数のパルス電圧値により、それぞれ一定間隔をあけ、且つそれぞれ算出したいガスの種類の数だけ異なる温度に加熱制御されることを特徴とする請求項1に記載の熱伝導式ガスセンサ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施形態1)
以下、本発明における実施形態を説明する。なお、本発明の熱伝導式ガスセンサを水素センサに適用した場合を例に説明するが、前述のように、本発明はガスの種類によって熱伝導率が異なる性質であることを利用した検出原理に基づくもので、水素センサに限定されるものではない。
【0015】
図1は、本実施形態1の水素センサを説明するための断面構造図である。本実施形態1による水素センサ1は、測定対象ガス濃度を検出する検知素子2と、環境温度を検出するための参照素子3を有し、測定環境に暴露された同じ空間に配置される。本実施例では、セラミックパッケージ4に検知素子2と参照素子3を配置し、測定環境に暴露させるために通気口6を備えたリッド5により水素センサ1を形成した。
【0016】
検知素子2は、基板7、絶縁膜8、マイクロヒータ9、マイクロヒータ保護膜10、薄膜サーミスタ電極11、薄膜サーミスタ12、薄膜サーミスタ保護膜13を備える。
【0017】
参照素子3は、検知素子を加熱するための発熱体としてマイクロヒータ9を備えていない以外は検知素子2と同じである。このような構成にすることで、検知素子2と参照素子3の素子特性を同じにすることができる。すなわち、熱容量の違いによる応答時間の差がなく、環境温度の変化に対して常に同じ挙動とすることができる。
【0018】
更には、検知素子2と参照素子3を隣接させて同時に形成することで、製造工程におけるばらつきも同じものとなり、素子間の特性がそろったものを作ることができる。これにより、素子間の特性がそろったものを組み合わせるといった選別工程もなくすことができる。
【0019】
基板7としては、適度な機械的強度を有し、且つエッチングなどの微細加工に適した材質であれば、特に限定されるものではない。例えば、シリコン単結晶基板、サファイア単結晶基板、セラミック基板、石英基板、ガラス基板などが好適である。基板の表面および裏面には、シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜などの絶縁膜8が形成される。絶縁膜8として、例えばシリコン酸化膜を形成するには、熱酸化法やCVD(Chemical Vapor Deposition)による成膜法を適用すればよい。膜厚は、絶縁膜8上に形成する膜と基板との絶縁がとれ、且つキャビティ14を形成する際のエッチング停止層として機能すればよい。通常0.1〜1.0μm程度が好適である。
【0020】
基板7には、マイクロヒータ9を高温動作させた時に、熱が基板へ伝導するのを抑制するためにマイクロヒータ9の位置に対応して基板の一部を薄肉化したキャビティ14を有している。このキャビティ14により基板が取り除かれた部分はメンブレン15と呼ばれる。メンブレン15では基板を薄肉化した分だけ熱容量が小さくなるため、非常に少ない消費電力でマイクロヒータ9を高温にすることができる。また、基板7への伝導経路が数μmの薄膜部分のみで形成された断熱構造であるため、基板7への熱伝導が小さく、効率よくマイクロヒータ9を高温にすることができる。
【0021】
マイクロヒータ9の材質としては、薄膜サーミスタ12の成膜工程および熱処理工程などのプロセスに耐えうる導電性物質で比較的高融点の材料からなる金属層であって、例えば、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、金(Au)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)又はこれら何れか2種以上を含む合金などが好適である。また、イオンミリングなどの高精度なドライエッチングが可能である導電材質であることが好ましく、さらに耐腐食性が高い、Ptなどがより好適である。また絶縁膜8との密着性を向上させるためにはPtの下部にはチタン(Ti)などの密着層を形成するのが好ましい。
【0022】
図1において、ガスによるマイクロヒータ9の温度検出用の感熱素子として、薄膜サーミスタ12が形成されている。薄膜サーミスタ12は薄膜サーミスタ電極11を備え、マイクロヒータ9を覆うように形成される。これによりマイクロヒータ9の温度を直接検出することができる。
【0023】
薄膜サーミスタ12を形成するサーミスタの材質としては、複合金属酸化物、アモルファスシリコン、ポリシリコン、ゲルマニウムなどの負の温度抵抗係数を持つ材料をスパッタ法、CVDなどの薄膜プロセスを用いて形成する。膜厚は目標とするサーミスタ抵抗値に応じて調整すればよく、例えばMnNiCo系酸化物を用いて室温での抵抗値(R25)を140kΩ程度に設定するのであれば、素子の電極間の距離にもよるが0.2〜1μm程度の膜厚に設定すればよい。
【0024】
なお、マイクロヒータ9の温度検出用の感熱素子としては薄膜サーミスタ12が好適である。まず、薄膜の積層構造であるために、マイクロヒータ9の発熱を直上にて直接検出することができる。また、白金測温体などに比べて抵抗温度係数が大きいために、検出感度を大きくすることができるためである。
【0025】
薄膜サーミスタ12の電気信号を取り出す為に、薄膜サーミスタ電極11が形成される。薄膜サーミスタ電極11の材質としては、薄膜サーミスタ12の成膜工程および熱処理工
程などのプロセスに耐えうる導電性物質で比較的高融点の材料、例えば、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、金(Au)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)又はこれら何れか2種以上を含む合金などが好適である。
【0026】
マイクロヒータ9及び絶縁膜8を覆うようにマイクロヒータ保護膜10が形成される。マイクロヒータ保護膜10としては、絶縁膜8と同じ材料であることが望ましい。マイクロヒータ9は数百度にまで上昇し、次に常温へ下がるという熱ストレスを繰り返し受ける。この熱ストレスを継続的に受けると層間剥離やクラックといった破壊につながる。同じ材料同士は、異種材料を積層した場合に比べて材料特性が同じであり密着性が強固で機械的強度も強い。このため、マイクロヒータ9の熱ストレスに対しても破壊を防止することができる。マイクロヒータ保護膜10として、例えばシリコン酸化膜を形成するには、熱酸化法やCVDによる成膜法を適用すればよい。膜厚は、マイクロヒータ9を確実に覆うことができ層間絶縁ができる厚みが良い。通常0.1〜3.0μm程度が好適である。
【0027】
また、薄膜サーミスタ12に、複合金属酸化物等を利用する場合においては、マイクロヒータ保護膜10は、絶縁性を有する酸化膜であることが望ましく、例えばシリコン酸化膜等が望ましい。マイクロヒータ保護膜10の上には薄膜サーミスタ12および薄膜サーミスタ電極11が形成される。マイクロヒータ保護膜10は、マイクロヒータ9の保護膜であると同時に、薄膜サーミスタ12の下地層でもあり、薄膜サーミスタ12と直接接触する。
【0028】
一般的に、複合金属酸化物を利用したサーミスタは、高温で還元劣化があるためサーミスタ全体を耐還元材料でコーティングする方法が知られている。即ち、サーミスタを還元性を持つ材料と接触させて高温状態にすると、サーミスタから酸素を奪って還元を引き起こし、サーミスタ特性に影響を与えてしまう。よって薄膜サーミスタ保護膜13においてもシリコン酸化膜等の絶縁性を有する酸化膜であることが望ましい。
【0029】
また、同様な理由により、薄膜サーミスタ電極11は薄膜サーミスタ12の基板側に形成されていることが望ましい。すなわち、マイクロヒータ9上に、絶縁層であるマイクロヒータ保護膜10を介して、薄膜サーミスタ電極11、薄膜サーミスタ12の順に積層し形成されている。つまり、薄膜サーミスタ電極11の上に薄膜サーミスタ12が形成される。一般的に、薄膜電極は、電極材料と下地との密着力を上げるために密着層が形成される。例えばクロム(Cr)やチタン(Ti)等が数nm程度の膜厚で形成される。薄膜サーミスタ12上に薄膜サーミスタ電極11が形成された場合、この密着層が直接薄膜サーミスタと接触し、サーミスタからの酸素を奪う等により酸化することで、界面抵抗が上昇し薄膜サーミスタ7の検出特性が変動してしまい好ましくない。
【0030】
薄膜サーミスタ電極11、マイクロヒータ9はメンブレン15の外で、電極パッド16と接続される。電極パッド16は、ワイヤーボンド17などでセラミックパッケージ電極18などで外部の回路と電気的接続され、例えばアルミニウム(Al)や金(Au)などの材料で形成され、必要に応じて積層してもよい。
【0031】
素子は、ウエハ状態から個片へと切断された後、ダイペースト(図示せず)を用いてパッケージ4に固定した後、電極パッド16と、パッケージ電極18を、ワイヤボンディング装置を用いて、ワイヤ17で接続する。ワイヤ17はAu、Al、Cuなど、抵抗の低い金属ワイヤが好適である。
【0032】
最後に、パッケージ4と外気との通気口6を設けたリッド5を、樹脂(図示せず)を用いて固定する。この際、樹脂(図示せず)の硬化の加熱時に、樹脂に含まれる物質がガスとなって発生するが、通気口6により容易にパッケージ外へ放出されるため、素子自体に
悪影響を与えることはない。以上により水素センサ1を得ることができる。
【0033】
続いて、
図2〜
図7を使ってガス検知の動作について説明する。説明の便宜上、ここでは目的とする測定対象ガスを水素、目的とする測定対象ガス以外のガスを湿度とし、水素と湿度の2種類のガス濃度を求める場合について説明する。
【0034】
まず、水素センサ1は
図2A,Bに示すようにマイクロヒータ9を間欠動作、いわゆるパルス駆動で動作させる。パルスはそれぞれ一定間隔をあけて印加される。パルス電圧が印加されていないOFF時間を設けることで、加熱された薄膜サーミスタ12を環境温度Tに冷却することができ、素子自体の熱の蓄積による加熱制御精度の低下を防ぐことがでる。
【0035】
また、パルス電圧は複数の異なるパルス電圧値が印加され、2種類のガス濃度を求める場合はV1、V2の2種類のパルス電圧の組み合わせで印加される。これにより薄膜サーミ
スタ12は異なるパルス電圧V1、V2に応じた異なる温度T1、T2に加熱されることになる。
【0036】
測定タイミングは、マイクロヒータ9がOFFのタイミングにおいて参照素子3の出力Vcを検出し、ONのタイミングにおいて薄膜サーミスタ12が加熱され、検知素子2の出力Vdを検出する。出力Vcは環境温度に依存して出力される値であり、薄膜サーミスタ12の加熱制御温度がT1の時の出力がVdt1、薄膜サーミスタ12の加熱制御温度がT2の時の出力がVdt2である。
【0037】
また、パルス電圧V1、V2は参照素子3の出力Vcから得られる環境温度Tに基づき制御される。すなわち、環境温度T0の時に薄膜サーミスタ12の加熱制御温度をT1、T2にそれぞれ加熱制御する場合は、パルス電圧をそれぞれV1、V2とする。また、環境温度T0´(ただし、T0´<T0<T0´´)の時に薄膜サーミスタ12の加熱制御温度をT1、T2にそれぞれ加熱制御する場合は、パルス電圧をそれぞれV1´、V2´とする。また、環境温度T0´´の時に薄膜サーミスタ12の加熱制御温度をT1、T2にそれぞれ加熱制御する場合は、パルス電圧をそれぞれV1´´、V2´´とする。なお、上記の環境温度とパルス電圧の関係は、使用するマイクロヒータ9の材質や、温度制御方法等により異なる。
【0038】
このように、環境温度Tを基準にしてパルス電圧Vを制御することにより、環境温度Tに左右されずに薄膜サーミスタ12を所望の温度T1、T2に加熱制御することができるため高精度の温度制御が可能となる。
【0039】
メンブレン15に形成されている薄膜サーミスタ12は非常に熱容量が小さいのでマイクロヒータ9がONになると直ちに所望の温度に到達し、OFFになると直ちに環境温度に戻る。測定は、検知素子2の出力Vdt1、Vdt2およびその直前に測定される参照素子3の出力Vcが測定フローの1サイクルとなる。例えば、パルス24、25であれば30のVcとVdt1、Vdt2、パルス26、27であれば31のVcとVdt1、Vdt2、パルス28、29であれば32のVcとVdt1、Vdt2の組み合わせが1サイクルである。
【0040】
ここで、参照素子3の出力Vcは薄膜サーミスタ12が加熱制御されていないタイミングで検出される。これは、検知素子2が隣接して形成されているので、薄膜サーミスタ12が加熱されると瞬間的に熱が基板や空間(空気)を主な経路として参照素子3に伝わってしまい、正確な環境温度を測定することができないためである。即ち、空間(空気)を経路として伝わってくる熱は、空間(空気)に存在するガスの熱伝導率によって左右され、
毎回同じでもないので、正確な環境温度を測定していることにはならない。
【0041】
次に、
図4の検知処理フロー図を使って説明する。まず、
図4(a)の通り、水素センサ1は参照素子3より得た環境温度による出力Vcから、検知素子2のマイクロヒータ9に印加するパルス電圧を制御する。即ち、薄膜サーミスタ12の加熱時の温度は環境温度の影響を受けて変動するので、定電圧や定電流で加熱した場合は加熱温度が安定しない。これに対し、環境温度を基準にして、マイクロヒータ9に印加するパルス電圧を都度制御することで常に所望の安定した加熱制御を実現することができる。
図6はその関係を示し、予め環境温度とパルス電圧の関係式を作っておき、これに基づきマイクロヒータ9のパルス電圧が決定される。
【0042】
次に、
図4(b)の通り、マイクロヒータ9によって加熱制御された状態で検知素子2の出力Vdt1、Vdt2を検出する。出力Vdt1、Vdt2は、測定対象ガスと測定対象ガスを含んだガス中に混在する他のガスとの混合ガスの影響を含んだ出力値である。ここでは測定対象ガスは水素、他のガスは湿度を指す。ガスの熱伝導率はガスの種類、温度により異なるため、加熱制御温度が異なるとガスの検出感度もそれぞれ異なる。なお、出力Vdは近似式として式1で表すことができる。
【0043】
aX + bY = c (式1)
なお、aはある温度における水素の検出感度、bはある温度における湿度の検出感度、cは出力Vdであり、出力Vdは測定ガス中の水素濃度X、湿度濃度Yに依存する。
【0044】
次に
図4(c)の通り、式1を使って、出力Vdt1、Vdt2、および温度T1、T2における水素、湿度のそれぞれの温度における検出感度より、式2、式3を得る。
at1X + bt1Y = Vdt1 (式2)
at2X + bt2Y = Vdt2 (式3)
【0045】
なお、
図3に水素、湿度の温度と検出感度の関係を示す。温度T1での水素の検出感度がat1(μV/ppm)、湿度の検出感度がbt1(μV/ppm)、温度T2での水素の検出感度がat2(μV/ppm)、湿度の検出感度がbt2(μV/ppm)である。
【0046】
よって、式2、式3の連立方程式を解くことにより、出力Vd中の水素と湿度の影響による出力割合、すなわち水素濃度X、湿度濃度Yを求めることができるため、水素の影響と湿度の影響を切り分けることができる(
図4(d))。これにより、測定対象ガスである水素濃度を精度よく算出することができる。
【0047】
なお、予め水素、湿度のそれぞれの温度と検出感度を求めておく必要がある。水素検出感度は、乾燥空気と水素の混合ガス雰囲気中に水素センサ1を入れて測定し、水素濃度と出力Vdの関係から、また、湿度検出感度は、同様に乾燥空気と湿度の混合ガス雰囲気中に水素センサ1を入れて測定し、湿度濃度と出力Vdの関係から得る。また、薄膜サーミスタ12の加熱温度を変えて測定することで
図3の通り温度と検出感度の関係を求めることができ、本実施形態1では4水準の温度で測定した。
【0048】
また、検出感度の測定にあたっては、実際にセンサが使用される環境を想定した雰囲気で測定することで、より精度のある検出感度を得ることができる。ここでは乾燥空気に対する水素、湿度との検出感度としたが、実際に使用される環境を想定して乾燥空気の代わりに窒素や、他のガス等であっても良い。例えば、窒素中の水素と湿度を検出する目的で水素センサを作製するのであれば、水素検出感度は窒素と水素の混合ガス雰囲気中で測定し、湿度検出感度は窒素と湿度の混合ガス雰囲気中で測定するのが好ましい。
【0049】
続いて
図5の回路構成概略図を用いて説明する。水素センサ1を構成する検知素子2、参照素子3はセラミックパッケージ電極18を介してそれぞれ外部の固定抵抗R2、R1と接続されブリッジ回路を構成する。
【0050】
固定抵抗R2、R1は同じ抵抗値である必要はなく、ハーフブリッジ回路を構成する参照素子3の抵抗値Rc、検知素子2の抵抗値Rdにおいて、出力Vc、出力Vdがそれぞれ大きくとれるような値に個々に調整することができる。これにより、それぞれ感度の高い測定が可能になるため、高精度なセンサを得ることができる。例えば、参照素子3は使用される環境温度域において扱いやすい抵抗値であればよく数キロΩから数百キロΩ程度が最適である。これは、抵抗値が小さ過ぎると素子に流れる電流値が大きくなり、結果として消費電力が大きくなってしまうためである。また、逆に大き過ぎると信号にノイズを含みやすくなる。一方、検知素子2においては、加熱されている時の抵抗値が扱いやすい値に調整し、例えばT1を200℃、T2を225℃とするのであれば、それぞれの温度で数キロΩ〜数百キロΩ程度になるような設計にするのが最適である。
【0051】
そして、参照素子3の出力Vcがボルテージフォロワ19、アナログデジタルコンバータ20を介して演算処理装置であるマイクロプロセッサ23に入力される。マイクロプロセッサ23には予め
図3に示すそれぞれのガス温度と検出感度の近似式、参照素子3の出力Vcに応じてマイクロヒータ9への印加電圧の近似式、それぞれの出力電圧とガス濃度を演算するための近似式等がメモリされており演算される。演算値はデジタルアナログコンバータ22を介して、マイクロヒータ9、および増幅回路21等へ出力される。
【0052】
そして、マイクロヒータ9にパルス電圧が印加され、検知素子2の薄膜サーミスタ12を加熱制御する。このタイミングにおいて出力Vdt1、Vdt2を検出する。その後、出力Vdt1、Vdt2は増幅回路21に入力され、マイクロプロセッサ23で、水素濃度、湿度濃度が算出される。
【0053】
なお、異なる電圧値をV1、V2の2種類で説明したが、3種類のガスを測定したい場
合は異なる電圧値を3種類にするといった要領で、測定したいガスの種類だけ異なる電圧値を印加し、加熱制御温度をガスの種類だけ異なる温度で測定すればよく、得られた出力値とそれぞれの加熱温度における検出感度を使って、その数だけ連立方程式を立て解くことで、それぞれのガス濃度を算出することができる。
【0054】
(実施形態2)
図9は、本実施形態2の水素センサを説明するための断面構造図である。本実施形態2による水素センサ41は、測定対象ガス濃度を検出する検知素子42と、環境温度を検出するための参照素子43を有し、測定環境に暴露された同じ空間に配置される。本実施例では、セラミックパッケージ4に検知素子42と参照素子43を配置し、測定環境に暴露させるために通気口6を備えたリッド5により水素センサ41を形成した。
【0055】
検知素子42は、基板7、絶縁膜8、マイクロヒータ9、マイクロヒータ保護膜10、白金抵抗体51、白金保護膜53を備える。
【0056】
参照素子43は、検知素子を加熱するための発熱体としてマイクロヒータ9を備えていない以外は検知素子42と同じである。
【0057】
実施形態1の水素センサ1と、実施形態2の水素センサ41との構成の違いは、温度変化を検知するための感熱素子として、薄膜サーミスタを用いているか又は、白金抵抗体を用いているかの違いである。具体的には、水素センサ1の検知素子2は、感熱素子として薄膜サーミスタ12、薄膜サーミスタ電極11及び、薄膜サーミスタ保護膜13を有しているが、実施形態2に於いては、薄膜サーミスタ12、薄膜サーミスタ電極11の替わりとして白金抵抗体51が、薄膜サーミスタ保護膜13の替わりに白金保護膜53を備えていることである。その他の基板7、セラミックパッケージ4等の材質及び構成は同じである。
【0058】
水素センサ41の感熱素子である検知素子42、参照素子43では、水素センサ1に於ける薄膜サーミスタ12が積層されていない。そのため水素センサ1に於ける薄膜サーミスタ12の熱伝導の変化を温度変化として検出する役割を、白金抵抗体51が担っている。
【0059】
水素センサ41を用いたガス検知動作は、水素センサ1を用いたガス検知動作と同じであり、水素センサ1については、前記、
図2〜
図7を使ってガス検知の動作を説明してあるため、ここでは説明を省略する。尚、
図5に水素センサ41を適用する場合には、検知素子2を検知素子42とし、参照素子3を参照素子43とされたい。
【0060】
また、
図10は、実施形態2に於ける回路構成概略図である。水素センサ41を構成する検知素子42、参照素子43はセラミックパッケージ電極18を介してそれぞれ外部の固定抵抗R2、R1と接続されブリッジ回路を構成する。
【0061】
検知素子42、参照素子43は感熱素子として、白金抵抗体51を用いている。白金抵抗体51は、薄膜サーミスタ12に比べて抵抗値が低いために回路としての消費電力が大きくなる傾向にある。この消費電力を低く抑える手段として、ガス検出動作時に白金抵抗体51にパルス電圧を印加する動作が有効である。
【0062】
固定抵抗R2、R1は、マイクロヒータ9と同じく、デジタルアナログコンバータ22に接続される回路構成である。固定抵抗R2、R1には、それぞれ、ガス検出動作時に又、環境温度検出時に、デジタルアナログコンバータ22を介して、マイクロプロセッサ23にて制御されたパルス電圧を印加する。この動作により、パルス電圧印加時以外は、ブリッジ回路に電圧が印加されないため、消費電力が抑えられる。このブリッジ回路に対するパルス電圧印加手段以外は、
図5の実施形態1に於ける回路と同じ構成である。
【0063】
ところで、検知素子42のように白金抵抗体51とマイクロヒータ9とが同じ材料で構成されている場合には、検知素子42がマイクロヒータ9を兼用してもよい。具体的には、
図10に於けるマイクロヒータ(
図9のマイクロヒータ9)を外す。代わりにマイクロヒータ9が担っていた白金抵抗体51を特定の温度に加熱するという役割を、白金抵抗体51が特定の温度にて発熱するように、白金抵抗体51を有するブリッジ回路にパルス電圧を印加する。これにより、検知素子42がマイクロヒータ9を兼用することが出来る。つまり、感熱素子が前記発熱体の機能を併せ持つということである。
【0064】
雰囲気中の測定対象ガスの検出に用いる感熱素子として、薄膜サーミスタ及び、白金抵抗体の例を上げたが、熱伝導の変化を温度変化として検出可能な素子であれば、前記薄膜サーミスタ及び、白金抵抗体に限られるものではない。