(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、エンドリングに冷却ファンを固定する構造を採用すると、誘導機のロータを高速で回転させる場合、冷却ファンに空気の攪拌抵抗と遠心力とがかかり、ロータを構成する部品及び同ロータに固定される部品の強度が不足する虞がある。例えば、冷却ファンとロータバーとの接合部に応力が発生し、ロータの強度が不足する。また、冷却ファンをシャフトに固定する構造を採用すると、冷却ファンの径方向内側に軸受を配置するためのスペースが無くなり、軸受を配置するためのスペースを確保すべく誘導機の軸方向長さを大きくする必要が生じる。
【0006】
本発明の目的は、冷却ファンの回転に伴い発生する応力に対する強度を確保することができるとともに軸方向での小型化を図ることができる誘導機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための誘導機は、ハウジングと、前記ハウジング内に配置され、ステータコアとコイルとを有するステータと、シャフト、当該シャフトに固定されたロータコア、及び二次導体を有し、二次導体がロータバーとエンドリングとを含むロータと、前記ハウジング内に配置され、前記シャフトを回転可能に支持する軸受と、前記ハウジング内に配置され、羽根部を有する冷却ファンと、前記冷却ファンを前記ロータに固定する冷却ファン固定手段と、を備える。前記羽根部は、前記エンドリングの軸方向外側に配置され、軸方向における前記羽根部の先端が前記コイルのコイルエンドより軸方向外側まで延びている。前記冷却ファンは、前記エンドリングの径方向内側に配置される固定部と、該固定部から前記羽根部にまで延びる円筒状の延設部とを有し、前記固定部が前記冷却ファン固定手段により前記ロータに固定される。
前記冷却ファン固定手段は、前記冷却ファンと別体であるとともに、前記円筒状の延設部の径方向内側の領域に配置される。前記冷却ファン固定手段は、前記円筒状の延設部の径方向内側の領域内で前記固定部を軸方向において前記ロータコアとの間に挟持する固定部材である。前記軸受は、前記羽根部の前記先端より軸方向の内側に位置する。
上記の目的を達成するための誘導機は、ハウジングと、前記ハウジング内に配置され、ステータコアとコイルとを有するステータと、シャフト、当該シャフトに固定されたロータコア、及び二次導体を有し、二次導体がロータバーとエンドリングとを含むロータと、前記ハウジング内に配置され、前記シャフトを回転可能に支持する軸受と、前記ハウジング内に配置され、羽根部を有する冷却ファンと、前記冷却ファンを前記ロータに固定する冷却ファン固定手段と、を備える。前記羽根部は、前記エンドリングの軸方向外側に配置され、軸方向における前記羽根部の先端が前記コイルのコイルエンドより軸方向外側まで延びている。前記冷却ファンは、前記エンドリングの径方向内側に配置される固定部と、該固定部から前記羽根部にまで延びる円筒状の延設部とを有し、前記固定部が前記冷却ファン固定手段により前記ロータに固定される。前記冷却ファン固定手段は、前記冷却ファンと別体であるとともに、前記円筒状の延設部の径方向内側の領域に配置される。前記冷却ファン固定手段は、前記円筒状の延設部の径方向内側の領域内で前記固定部を軸方向において前記シャフトに設けられた突起との間に挟持する固定部材である。前記軸受は、前記羽根部の前記先端より軸方向の内側に位置する。
上記の目的を達成するための誘導機は、ハウジングと、前記ハウジング内に配置され、ステータコアとコイルとを有するステータと、シャフト、当該シャフトに固定されたロータコア、及び二次導体を有し、二次導体がロータバーとエンドリングとを含むロータと、前記ハウジング内に配置され、前記シャフトを回転可能に支持する軸受と、前記ハウジング内に配置され、羽根部を有する冷却ファンと、前記冷却ファンを前記ロータに固定する冷却ファン固定手段と、を備える。前記羽根部は、前記エンドリングの軸方向外側に配置され、軸方向における前記羽根部の先端が前記コイルのコイルエンドより軸方向外側まで延びている。前記冷却ファンは、前記エンドリングの径方向内側に配置される固定部と、該固定部から前記羽根部にまで延びる円筒状の延設部とを有し、前記固定部が前記冷却ファン固定手段により前記ロータに固定される。前記冷却ファン固定手段は、前記冷却ファンと別体であるとともに、前記円筒状の延設部の径方向内側の領域に配置される。前記冷却ファン固定手段は、前記円筒状の延設部の径方向内側の領域内で前記固定部を軸方向において前記ロータコアとの間に挟持するように前記シャフトに設けられた突起である。前記軸受は、前記羽根部の前記先端より軸方向の内側に位置する。
【0008】
上記の構成によれば、冷却ファンがエンドリングに固定される場合に比べ冷却ファンの回転に伴い発生する応力に対する強度を確保することができる。さらに、軸受が羽根部の先端より軸方向の内側に位置するので、誘導機の軸方向での長さが長くなることを抑制して軸方向での小型化を図ることができる。
【0009】
前記冷却ファン固定手段
が、
前記円筒状の延設部の径方向内側の領域内で前記固定部を軸方向において前記ロータコアとの間に挟持する固定部材であ
る場合、固定部材はロータコア押えを兼用できる。また、固定部材でロータの回転バランスを調整することが可能となる。
【0010】
前記冷却ファン固定手段
が、
前記円筒状の延設部の径方向内側の領域内で前記固定部を軸方向において前記シャフト
に設けられた突起との間に挟持する固定部材であ
る場合、固定部材でロータの回転バランスを調整することが可能となる。
【0012】
上記の誘導機において、前記羽根部は前記エンドリングの内周より径方向外側に位置してもよい。
【0013】
上記の誘導機において、前記冷却ファンは板材よりなってもよく、その場合には、曲げ加工や絞り加工により冷却ファンを形成することができる。
【0014】
上記の誘導機において、前記羽根部と前記エンドリングとは熱的に結合していてもよく、その場合には、エンドリングに発生する熱を冷却ファンに伝達してエンドリングを冷却することができる。
【0015】
上記の誘導機において、前記羽根部と前記エンドリングとは接触していてもよい。
【0016】
上記の誘導機において、前記冷却ファンは、前記羽根部から軸方向へ延びるエンドリング押え部を有していてもよく、その場合には、エンドリングが遠心力によって径方向外側へ拡がらないようにエンドリングを押えることができる。
【0017】
上記の誘導機において、前記エンドリング押え部は、前記エンドリングの外周面上に位置してもよい。
【0018】
上記の誘導機において、前記エンドリング押え部は、前記エンドリングの端面に設けられた凹部に係合してもよい。
上記の目的を達成するための誘導機は、ハウジングと、前記ハウジング内に配置され、ステータコアとコイルとを有するステータと、シャフト、当該シャフトに固定されたロータコア、及び二次導体を有し、二次導体がロータバーとエンドリングとを含むロータと、前記ハウジング内に配置され、前記シャフトを回転可能に支持する軸受と、前記ハウジング内に配置され、羽根部を有する冷却ファンと、前記冷却ファンを前記ロータに固定する冷却ファン固定手段と、を備える。前記羽根部は、前記エンドリングの軸方向外側に配置され、軸方向における前記羽根部の先端が前記コイルのコイルエンドより軸方向外側まで延びている。前記冷却ファンは、前記エンドリングの径方向内側に配置される固定部と、該固定部から前記羽根部にまで延びる円筒状の延設部とを有し、前記固定部が前記冷却ファン固定手段により前記ロータに固定される。前記冷却ファン固定手段は、前記冷却ファンと別体であるとともに、前記円筒状の延設部の径方向内側の領域に配置される。前記軸受は、前記羽根部の前記先端より軸方向の内側に位置する。前記羽根部と前記エンドリングとは熱的に結合し、かつ接触している。
上記の構成によれば、冷却ファンがエンドリングに固定される場合に比べ冷却ファンの回転に伴い発生する応力に対する強度を確保することができる。さらに、軸受が羽根部の先端より軸方向の内側に位置するので、誘導機の軸方向での長さが長くなることを抑制して軸方向での小型化を図ることができる。また、羽根部とエンドリングとが熱的に結合しているので、エンドリングに発生する熱を冷却ファンに伝達してエンドリングを冷却することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、冷却ファンの回転に伴い発生する応力に対する強度を確保することができるとともに軸方向での小型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
【0022】
図1に示すように、誘導機10は、ハウジング20とステータ30とロータ40と軸受50,51と冷却ファン60,61とを備えている。ハウジング20に固定されたステータ30の径方向内側において、ハウジング20に対し軸受50,51によりロータ40が支持されている。
【0023】
ハウジング20は、全体形状として、軸方向両端が塞がれた円筒状をなしている。詳しくは、ハウジング20は、第1ハウジング構成部材21と第2ハウジング構成部材22とを有する。第1ハウジング構成部材21は、円筒状の本体部21aと、本体部21aの第1端の開口部を閉塞する円板状のフロントプレート21bとを含む。第2ハウジング構成部材22は、円筒状の本体部22aと、本体部22aの第1端の開口部を閉塞する円板状のリヤプレート22bとを含む。第1ハウジング構成部材21及び第2ハウジング構成部材22は金属材料(例えばアルミニウム)により形成されている。
【0024】
第1ハウジング構成部材21の開口縁には鍔部21cが形成されている。第2ハウジング構成部材22の開口縁には鍔部22cが形成されている。鍔部22cを貫通するネジが鍔部21cに螺入されることにより第1ハウジング構成部材21と第2ハウジング構成部材22とが相互に連結及び固定されている。
【0025】
誘導機10に対する冷却は開放方式で行われるようになっており、フロントプレート21bには空気取入口25が形成されているとともに本体部21aにおけるフロントプレート21b寄りの端部には空気排出口26が形成されている。また、リヤプレート22bには空気取入口27が形成されているとともに本体部22aにおけるリヤプレート22b寄りの端部には空気排出口28が形成されている。
【0026】
ロータ40のロータコア42をシャフト41が貫通しており、シャフト41は前記軸受50,51により回転可能に支持されている。詳しくは、シャフト41の第1端側部位は、軸受50を介して、フロントプレート21bに突設された円筒状の軸支部21dに回転可能に支持されている。また、シャフト41の第2端側部位は、軸受51を介して、リヤプレート22bに突設された円筒状の軸支部22dに回転可能に支持されている。即ち、軸受50,51はハウジング20内に配置され、軸受50はシャフト41の第1端側部位を、軸受51はシャフト41の第2端側部位を回転可能に支持している。シャフト41の第1端すなわち出力端は、フロントプレート21bを貫通してハウジング20外へ突出しており、同出力端には、変速機(図示略)等が取り付けられる。
【0027】
第1ハウジング構成部材21の本体部21aの内周面には前記ステータ30が固定されている。即ち、ステータ30はハウジング20内に配置され、本体部21aの内周面に固定された環状のステータコア31と、ステータコア31のティース(図示せず)に捲回されたコイル32とを有する。ステータコア31は、電磁鋼板を積層して構成されている。
【0028】
ステータ30は、本体部21aの第2端の開口部を介して本体部21a内に挿入されるとともに、焼き嵌めによって本体部21aの内周面に固定されている。
【0029】
ステータ30の径方向内側には前記ロータ40が配設されている。ロータ40は、前記シャフト41と前記ロータコア42と二次導体43とを有する。
【0030】
ロータコア42がシャフト41に固定されている。ロータコア42は、電磁鋼板を積層して構成されている。ロータコア42は、後述する固定部材100とシャフト41に形成された突起(鍔部)49との間で挟み込まれており、シャフト41の軸方向への移動が規制されている。
【0031】
図1,2に示すように、二次導体43は、複数のロータバー45とエンドリング46,47とを有する。ロータバー45はロータコア42の内部に埋設され、ロータコア42を軸方向に貫通するように配置されている。エンドリング46はロータコア42の第1端面に配置され、ロータバー45の第1端と連結されている。エンドリング47はロータコア42の第2端面に配置され、ロータバー45の第2端と連結されている。二次導体43(ロータバー45及びエンドリング46,47)はアルミよりなり、詳しくは、アルミダイキャストで製作している。
【0032】
前記冷却ファン60,61はハウジング20内に配置されている。冷却ファン60,61は互いに同様な構成を有しており、板材よりなる。冷却ファン60,61は曲げ加工と絞り加工とにより形成されている。
【0033】
図3,4に示すように、冷却ファン60,61は、エンドリング46,47と別体であり、強度の高い材料(例えばアルミ合金やステンレス鋼)で製作している。各冷却ファン60,61は複数の羽根部65と固定部66と延設部67とを有する。シャフト41に固定される部分である固定部66は円板状(フランジ状又はリング状)をなし、シャフト41の挿通を許容する。円板状の固定部66の外周縁から円筒状の延設部67が軸方向に延びている。円筒状の延設部67の先端に複数の羽根部65が形成されている。各羽根部65は、平板部65aと空気受け用の曲面部65bとを有する。平板部65aがシャフト41の軸線に直交する径方向に延び、平板部65aの外周側領域に曲面部65bが平板部65aに対して屈曲して軸方向に延びるように形成されている。複数の曲面部65bは周方向に等角度間隔で配置されている。各曲面部65bの軸方向における端面は、各羽根部65の軸方向における先端65cに相当する。
【0034】
冷却ファン60,61の回転に伴い、曲面部65bがシャフト41の径方向外側に向かう方向への空気流を生じさせる。つまり、ハウジング20のフロントプレート21bに形成した空気取入口25、及びリヤプレート22bに形成した空気取入口27から外気をハウジング20内に導入できるとともにハウジング20の本体部21aに形成した空気排出口26、本体部22aに形成した空気排出口28からハウジング20外に排出できるようになっている。
【0035】
また、冷却ファン60では、円筒状の延設部67が羽根部65からエンドリング46の径方向内側の領域に延びるとともに、同エンドリング46の径方向内側の領域において、固定部66が冷却ファン固定手段(或いは、冷却ファン固定具)としての固定部材100によりロータ40に固定されている。固定部材100は延設部67の径方向内側の領域に配置される。つまり、冷却ファン固定手段は、冷却ファン60(詳しくは、固定部66)を軸方向においてロータコア42との間に挟持する固定部材100である。固定部材100は鉄製であり、リング状をなしている。冷却ファン60の羽根部65は、エンドリング46の軸方向外側に配置され、軸方向における羽根部65の先端65cがコイル32のコイルエンド32aより軸方向外側まで延びている。
【0036】
冷却ファン61では、円筒状の延設部67が羽根部65からエンドリング47の径方向内側の領域に延びるとともに、同エンドリング47の径方向内側の領域において、固定部66が冷却ファン固定手段(或いは、冷却ファン固定具)としての固定部材101によりロータ40に固定されている。固定部材101は延設部67の径方向内側の領域に配置される。つまり、冷却ファン固定手段は、冷却ファン61(詳しくは、固定部66)を軸方向においてシャフト41の突起49との間に挟持する固定部材101である。固定部材101は鉄製であり、リング状をなしている。冷却ファン61の羽根部65は、エンドリング47の軸方向外側に配置され、軸方向における羽根部65の先端65cがコイル32のコイルエンド32bより軸方向外側まで延びている。
【0037】
軸受50は、冷却ファン60の羽根部65の先端65cより軸方向の内側に位置している。同様に、軸受51は、冷却ファン61の羽根部65の先端65cより軸方向の内側に位置している。
【0038】
また、冷却ファン60の羽根部65はエンドリング46の内周より径方向外側に位置している。同様に、冷却ファン61の羽根部65はエンドリング47の内周より径方向外側に位置している。
【0039】
図3,4に示した冷却ファン60,61をロータ40に組み付けると、
図1に示すように、固定部材100,101が冷却ファン60,61の羽根部65よりも軸方向内側に入ることで、誘導機10の軸方向長さを長くすることなく、冷却ファン60,61をシャフト41に固定できる。
【0040】
なお、固定部材100,101を比重の重い材料で形成した場合には、固定部材100,101を(例えば孔を開ける等して)部分的に減量することにより、固定部材100,101をロータ40の回転バランスを調整するための部材としても活用できる。
【0041】
次に、このように構成した誘導機10の作用について説明する。
【0042】
コイル32が通電されるとステータ30において回転磁界が作られる。回転磁界が発生すると、電磁誘導作用により二次導体43(ロータバー45及びエンドリング46,47)に二次電流が流れる。このようにロータ40にトルクを発生させるための電流経路として機能する二次導体43に誘導電流、即ち、二次電流が流れると、ロータ40において磁極が生成される。このロータ40に生成された磁極とステータ30の作る回転磁界との間には電磁力が働き、ロータ40が回転する。
【0043】
ロータ40の回転に伴い冷却ファン60,61も回転する。冷却ファン60,61の回転によりハウジング20の空気取入口25,27から軸方向に空気(外気)がハウジング20内に導入され、羽根部65を通ってハウジング20の空気排出口26,28から径方向にハウジング20外に排出される。この空気によりハウジング20の内部に発生した熱が排出される。
【0044】
比較例を
図10に示す。
図10において、ロータコア201にはアルミ製のロータバー202が差し込まれている。冷却ファン203が固定されて一体化されたエンドリング204が、ロータバー202に嵌め込まれている。この構成ではロータ200を高速で回転させる場合、冷却ファン203に空気の攪拌抵抗と遠心力とがかかり、冷却ファン203とロータバー202との接合部に大きい応力が発生し、ロータの強度が不足する虞がある。
図11の比較例では、冷却ファン211をロータコアとは別体としてシャフト205に固定部材210によって固定している。この場合、固定部材210の配置スペースが必要となり、軸受206を配置するスペースを確保するために、誘導機10の軸方向長さを長くする必要がある。固定部材210を使用する代わりに、ロータコアの軸方向への移動を規制する押え部材に冷却ファンを一体化した場合には、押え部材の形状が複雑となり製造が困難なものとなってしまう。
【0045】
これに対し、本実施形態においては、誘導機10のロータ40を高速で回転させても強度が確保できるように、エンドリング46,47と冷却ファン60,61とが別体となっている。エンドリング46,47には電気を流す必要があるので、エンドリング46,47は高純度(例えば99%以上)のアルミで形成されているが、強度的には低いものとなる。これに対し、冷却ファン60,61は強度が高い材質であるアルミ合金で形成することができる。このように、エンドリング46,47と冷却ファン60,61とを別体としているので、それらの部品を形成するために使用可能な材料の選択性が増す(強度を考慮して適切な材質を選定することができる)。
【0046】
また、シャフト41に固定するために必要な冷却ファン60,61の部位、すなわち固定部66及び延設部67を含む部位の形状はカップ形状である。このカップ形状は、板状の材料から絞り加工で形成可能である。これにより、冷却ファン60,61の固定部66及び延設部67がエンドリング46,47の径方向内側の領域に入り込むことが可能であるとともに、冷却ファン60,61全体は、板状の材料から絞り加工と曲げ加工とで製作可能である。その結果、誘導機10の軸方向長さを長くすることなく、高速で回転可能な誘導機10を容易に製造することが可能となる。
【0047】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0048】
(1)冷却ファン60,61の羽根部65は、エンドリング46,47の軸方向外側に配置される。軸方向における羽根部65の先端65cがコイル32のコイルエンド32a,32bより軸方向外側まで延びている。冷却ファン60,61は、エンドリング46,47の径方向内側に配置される固定部66と、該固定部66から羽根部65にまで延びる円筒状の延設部67とを有し、固定部66が冷却ファン固定手段としての固定部材100,101によりロータ40に固定されている。よって、冷却ファン60,61がエンドリング46,47に固定される場合に比べ冷却ファン60,61の回転に伴い発生する応力を小さくすることができる。さらに、軸受50,51は、羽根部65の先端65cより軸方向の内側に位置する。よって、軸方向での長さが長くなることを抑制して軸方向での小型化を図ることができる。
【0049】
(2)冷却ファン固定手段は、冷却ファン60(詳しくは、固定部66)を軸方向においてロータコア42との間に挟持する固定部材100であるので、固定部材100はロータコア42を軸方向に押える部材を兼用している。また、固定部材100でロータ40の回転バランスを調整することが可能となる。
【0050】
(3)冷却ファン固定手段は、冷却ファン61を軸方向においてシャフト41の突起49との間に挟持する固定部材101であるので、固定部材101でロータ40の回転バランスを調整することが可能となる。
【0051】
(4)冷却ファンの羽根部65がエンドリング46,47の内周より径方向外側に位置する構成は、冷却風をハウジング20の外部から取り込んで、冷却に用いた後にハウジング20の外部に排出する上で好ましい。
【0052】
(5)冷却ファン60,61は板材から曲げ加工や絞り加工で容易に形成することができる。
【0053】
(6)冷却風は軸方向に沿ってハウジング20内に取り込まれ、ハウジング20から径方向に排出されるので、ハウジング20の外表面に配した部品も冷却することが可能となる。
【0054】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
【0055】
・
図1では、両側の冷却ファン60,61をそれぞれ固定部材100,101で固定する構造としたが、これに代わり、片側の冷却ファン61(60)は、
図5に示すように、ロータコア42とシャフト41の突起102とによって挟まれてもよい。この場合、冷却ファン固定手段は、冷却ファン61を軸方向においてロータコア42との間に挟持するシャフト41の突起102である。この場合においては部品点数が削減できる。
【0056】
・
図1等では、エンドリング46,47と冷却ファン60,61の羽根部65とを接触させていないが、
図6に示すように接触させることで、エンドリング46,47で発生する熱を冷却ファン60,61に伝達して冷却してもよい。エンドリング46,47と冷却ファン60,61とを直接接触させるのに代えて、エンドリング46,47と冷却ファン60,61とを放熱部材を介して熱的に結合してもよい。
【0057】
このように、羽根部65とエンドリング46,47とを接触させる等して熱的に結合させることにより、エンドリング46,47で発生する熱を冷却ファン60,61に伝達してエンドリング46,47を冷却することができる。なお、
図6において羽根部65の表面に絶縁皮膜を付けておくと、冷却ファン60,61をエンドリング46,47から確実に絶縁することができる。
【0058】
・
図7,8に示すように、冷却ファン60,61は、各羽根部65から軸方向へ延びるエンドリング押え部110を有する構成としてもよい。エンドリング押え部110は板材よりなる。
図8に示すように、冷却ファン60,61の各羽根部65の径方向外側端部に、エンドリング押え部110がエンドリング46,47に向かって延びるように、羽根部65に対して屈曲形成されている。つまり、冷却ファン60,61を曲げ加工と絞り加工とにより形成するときにエンドリング押え部110が成形される。
図7に示すように、エンドリング押え部110は、エンドリング46,47の外周面115上に位置する。
【0059】
高回転時において、エンドリング46,47には、エンドリング46,47を径方向外側へ拡げようとする遠心力が作用するが、エンドリング押え部110により、エンドリング46,47を径方向外側から押えることができる。
【0060】
図7,8に示すように冷却ファン60,61でエンドリング46,47を保持する構成を採用した場合においても、エンドリング46,47と冷却ファン60,61とは互いに別体として形成されている。よって、冷却ファン60,61の材質としてエンドリング46,47より高強度のものを選択することができ、よって回転子の強度向上を図ることができる。また、冷却ファン60,61とエンドリング46,47とを面接触させることで冷却効率が向上する。さらに、シャフト41に固定するために必要な冷却ファン60,61の部位(固定部66及び延設部67)の形状を、板状の材料から絞り加工で形成可能なカップ形状(窪み形状)としている。このカップ形状の部位には、ファン固定手段としてのシャフト41の突起102が入り込んでいる。また、冷却ファン60,61は切断加工と曲げ加工とで製作可能な形状を有する。以上の結果、誘導機10をその軸方向長さを長くすることなく容易に製造することが可能となり、高速回転可能で且つ冷却性能及び強度が高く、しかも小型化可能な誘導機を実現することができる。なお、
図7,8に示す構成を採用した場合においても、羽根部65の表面に絶縁皮膜を付けておくと、冷却ファン60,61をエンドリング46,47から確実に絶縁することができる。
【0061】
・エンドリング46,47を押える構成として、
図7,8に示すようにエンドリング46,47の外周面上に位置するエンドリング押え部110に代えて、
図9に示すように、冷却ファン60,61に形成された突起(120)をエンドリング46,47に形成された凹部(或いは溝)131に係合させる構成を採用してもよい。詳しくは、冷却ファン60,61の各羽根部65にエンドリング押え部120が設けられ、このエンドリング押え部120がエンドリング46,47の端面130に設けられた凹部131に係合する。エンドリング押え部120は、各羽根部65の平板部65aからエンドリング46,47に向かって突出する突起であり、周方向に沿って複数配置される。冷却ファン60,61を曲げ加工と絞り加工とにより形成するときに、エンドリング押え部120が絞り加工により成形される。各エンドリング46,47の端面130にはエンドリング押え部120にそれぞれ対応する位置に凹部131が形成されている。凹部131にエンドリング押え部(凸部)120が嵌められる。
【0062】
エンドリング46,47の凹部131に係合するエンドリング押え部120は、エンドリング46,47が遠心力によって径方向外側へ拡がらないようにエンドリング46,47を押える。この構成では、
図7,8に示した構成に比べ冷却ファン60,61の材料を少なくできる。なお、
図9に示す構成においても、羽根部65の表面に絶縁皮膜を付けておくと、冷却ファン60,61をエンドリング46,47から確実に絶縁することができる。
【0063】
・冷却ファンはシャフト41の軸方向両側にそれぞれ配したが、シャフト41の軸方向片側だけに配置してもよい。