(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の成形体は、ショアA硬度が95以下であり、押し込み荷重を10μNとして測定したインデンテーション硬さが400N/mm
2以上であることを特徴とする。本発明の成形体は、ショアA硬度が小さいと同時に、表面の硬度が高いという、従来にはない特性を有していることから、柔軟性を有するにも関わらず、優れた非粘着性及び低摩擦性を有している。
【0020】
上記ショアA硬度は、成形体の柔軟性が一層優れることから、90以下であることが好ましく、85以下であることがより好ましく、60以上であることが好ましく、65以上であることがより好ましい。
【0021】
上記ショアA硬度は、JISK6253に準拠して測定することができる。
【0022】
上記インデンテーション硬さは、成形体の非粘着性及び低摩擦性が一層優れることから、450N/mm
2以上であることが好ましく、500N/mm
2以上であることがより好ましく、上限は定めないが、変形に対する追従性が必要なことから2000N/mm
2以下であることが好ましく、1500N/mm
2以下であることがより好ましい。
【0023】
上記インデンテーション硬さは、ISO14577−1の規格に準拠して測定することができる。
【0024】
本発明の成形体は、また、上記構成を有することから、ゴム表面にフッ素樹脂をコーティングして得られる従来の成形体と対比した場合、特に高荷重下での低摩擦性及び耐摩耗性に優れている。
【0025】
本発明の成形体は、ゴム(A)を含む組成物からなる。ゴム(A)は、ゴム弾性を有する非晶質の重合体からなるものである。
【0026】
ゴム(A)は、加工性が良好な点から、ムーニー粘度(ML
1+10(100℃))が5〜140であることが好ましく、10〜120であることがより好ましく、20〜100であることが更に好ましい。
上記ムーニー粘度(ML
1+10(100℃))は、ASTM D1646に準拠して測定される値である。
【0027】
ゴム(A)としては、例えば、フッ素ゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)又はその水素化物(HNBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)等のジエン系ゴム、エチレン−プロピレン−ターモノマー共重合体ゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム(ACM)等が挙げられる。
【0028】
耐熱性が優れることから、ゴム(A)は、フッ素ゴム、NBR、HNBR及びACMからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、非粘着性及び低摩擦性が優れることから、ゴム(A)は、フッ素ゴムであることが好ましい。
【0029】
上記フッ素ゴムは、通常、主鎖を構成する炭素原子に結合しているフッ素原子を有し且つゴム弾性を有する非晶質の重合体からなる。上記フッ素ゴムは、1種の重合体からなるものであってもよいし、2種以上の重合体からなるものであってもよい。
【0030】
上記フッ素ゴムは、加工性が良好な点から、ムーニー粘度(ML
1+10(100℃))が5〜140であることが好ましく、10〜120であることがより好ましく、20〜100であることが更に好ましい。
上記ムーニー粘度(ML
1+10(100℃))は、ASTM D1646に準拠して測定される値である。
【0031】
上記フッ素ゴムは、フッ素含有率64質量%以上のフッ素ゴムであることが好ましく、フッ素含有率66質量%以上のフッ素ゴムであることがより好ましい。フッ素含有率が、64質量%未満であると耐薬品性、耐燃料油性、燃料透過性が劣る傾向がある。フッ素含有率の上限値は特に限定されないが、フッ素含有率は74質量%以下であることが好ましい。フッ素含有率は、ポリマー組成から計算によって求めることができる。
【0032】
上記フッ素ゴムとしては、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VdF)及び式(1):
CF
2=CF−Rf
a (1)
(式中、Rf
aは−CF
3又はORf
b(Rf
bは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基))で表されるパーフルオロエチレン性不飽和化合物(例えばヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)等)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体に由来する重合単位を含むことが好ましい。
なお、本明細書において、「重合単位」は、フッ素ゴムやフッ素樹脂の分子構造上の一部分であって、対応する単量体に基づく部分を意味する。
【0033】
上記フッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン(VdF)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)系フッ素ゴム、テトラフルオロエチレン(TFE)/プロピレン(Pr)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン(Et)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)系フッ素ゴム、エチレン(Et)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/ビニリデンフルオライド(VdF)系フッ素ゴム、エチレン(Et)/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)/テトラフルオロエチレン(TFE)系フッ素ゴム、フルオロシリコーン系フッ素ゴム、フルオロホスファゼン系フッ素ゴム、TFE/PAVE系フッ素ゴム等が挙げられ、これらをそれぞれ単独で、又は本発明の効果を損なわない範囲で任意に組み合わせて用いることができる。
【0034】
上記TFE/PAVE系フッ素ゴムは、TFE/PAVEの組成が、(50〜90)/(50〜10)(モル%)であることが好ましく、より好ましくは、(50〜80)/(50〜20)(モル%)であり、更に好ましくは、(55〜75)/(45〜25)(モル%)である。この場合のPAVEとしては、例えばPMVE、PPVE等が挙げられ、これらをそれぞれ単独で、又は任意に組み合わせて用いることができる。
【0035】
上記TFE/プロピレン(Pr)系フッ素ゴムは、TFE/プロピレンの組成が、(45〜70)/(55〜30)(モル%)からなる含フッ素共重合体をいう。TFE/プロピレン(Pr)系フッ素ゴムは、これら2成分のみからなるものであってもよいし、更に、特定の第3成分(例えばPAVE)をTFE単位及びプロピレン単位の合計に対し0〜40モル%含んでいてもよい。
【0036】
エチレン(Et)/HFP系フッ素ゴムは、Et/HFPの組成が、(35〜80)/(65〜20)(モル%)であることが好ましく、(40〜75)/(60〜25)(モル%)がより好ましい。
【0037】
Et/HFP/TFE系フッ素ゴムは、Et/HFP/TFEの組成が、(35〜75)/(25〜50)/(0〜15)(モル%)であることが好ましく、(45〜75)/(25〜45)/(0〜10)(モル%)がより好ましい。
【0038】
上記VdF系フッ素ゴムは、少なくともVdFに由来する重合単位(VdF単位)を含むフッ素ゴムである。
【0039】
上記VdF系フッ素ゴムは、VdF単位の含有量が、VdF単位とその他の共単量体に由来する重合単位との合計モル数に対し20モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましく、45モル%以上が更に好ましく、50モル%以上が更により好ましく、55モル%以上が特に好ましく、60モル%以上が最も好ましい。VdF単位の含有量はまた、VdF単位とその他の共単量体に由来する重合単位との合計モル数に対し90モル%以下が好ましく、85モル%以下がより好ましく、80モル%以下が更に好ましく、78モル%以下が更により好ましい。
【0040】
また、上記その他の共単量体に由来する重合単位の含有量は、VdF単位とその他の共単量体に由来する重合単位との合計モル数に対し10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上が更に好ましく、22モル%以上が更により好ましく、25モル%以上が特に好ましく、30モル%以上が最も好ましい。その他の共単量体に由来する重合単位の含有量はまた、VdF単位とその他の共単量体に由来する重合単位との合計モル数に対し80モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましく、55モル%以下が更に好ましく、50モル%以下が更により好ましく、45モル%以下が特に好ましく、40モル%以下が最も好ましい。
【0041】
上記VdF系フッ素ゴムにおける共単量体としてはVdFと共重合可能であれば特に限定されず、例えば、TFE、HFP、PAVE、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、ヨウ素含有フッ素化ビニルエーテル、下記一般式(2):
CH
2=CFRf (2)
(式中、Rfは炭素数1〜12の直鎖又は分岐したフルオロアルキル基)で表される含フッ素単量体等の含フッ素単量体(2);エチレン(Et)、プロピレン(Pr)、アルキルビニルエーテル等のフッ素非含有単量体、架橋性基(キュアサイト)を与える単量体、及び、反応性乳化剤等が挙げられ、これらの単量体や化合物のなかから1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
上記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)が好ましく、特にPMVEが好ましい。
【0043】
また、上記PAVEとして、下記一般式:
CF
2=CFOCF
2ORf
c
(式中、Rf
cは炭素数1〜6の直鎖又は分岐状パーフルオロアルキル基、炭素数5〜6の環式パーフルオロアルキル基、または、1〜3個の酸素原子を含む炭素数2〜6の直鎖又は分岐状パーフルオロオキシアルキル基である)で表される単量体を用いてもよく、例えば、CF
2=CFOCF
2OCF
3、CF
2=CFOCF
2OCF
2CF
3、又は、CF
2=CFOCF
2OCF
2CF
2OCF
3を用いることが好ましい。
【0044】
上記一般式(2)で表される含フッ素単量体(2)としては、Rfが直鎖のフルオロアルキル基である単量体が好ましく、Rfが直鎖のパーフルオロアルキル基である単量体がより好ましい。Rfの炭素数は1〜6であることが好ましい。上記一般式(2)で表される含フッ素単量体としては、CH
2=CFCF
3、CH
2=CFCF
2CF
3、CH
2=CFCF
2CF
2CF
3、CH
2=CFCF
2CF
2CF
2CF
3等が挙げられ、なかでも、CH
2=CFCF
3で示される2,3,3,3−テトラフルオロプロピレンが好ましい。
【0045】
上記VdF系フッ素ゴムとしては、VdF単位及び含フッ素単量体由来の共重合単位(但し、VdF単位は除く。)を含む共重合体であることが好ましい。VdF単位を含む共重合体は、更に、VdF及び含フッ素単量体と共重合可能な単量体由来の共重合単位を含むことも好ましい。
【0046】
上記VdF系フッ素ゴムとしては、VdF/HFP共重合体、VdF/TFE/HFP共重合体、VdF/CTFE共重合体、VdF/CTFE/TFE共重合体、VdF/PAVE共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体、VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体、VdF/TFE/プロピレン(Pr)共重合体、VdF/エチレン(Et)/HFP共重合体及びVdF/式(2)で表される含フッ素単量体(2)の共重合体からなる群より選択される少なくとも1種の共重合体が好ましい。
このなかでも、耐熱性、圧縮永久ひずみ、加工性、コストの点から、VdF/HFP共重合体、VdF/HFP/TFE共重合体、VdF/PAVE共重合体、VdF/TFE/PAVE共重合体、VdF/HFP/PAVE共重合体、及び、VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、VdF/HFP共重合体、及び、VdF/HFP/TFE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましい。
【0047】
VdF/HFP共重合体は、VdF/HFPの組成が、(45〜85)/(55〜15)(モル%)であることが好ましく、より好ましくは(50〜80)/(50〜20)(モル%)であり、更に好ましくは(60〜80)/(40〜20)(モル%)である。
【0048】
VdF/TFE/HFP共重合体は、VdF/TFE/HFPの組成が(30〜80)/(4〜35)/(10〜35)(モル%)のものが好ましい。
【0049】
VdF/PAVE共重合体としては、VdF/PAVEの組成が(65〜90)/(35〜10)(モル%)のものが好ましい。
【0050】
VdF/TFE/PAVE共重合体としては、VdF/TFE/PAVEの組成が(40〜80)/(3〜40)/(15〜35)(モル%)のものが好ましい。
【0051】
VdF/HFP/PAVE共重合体としては、VdF/HFP/PAVEの組成が(65〜90)/(3〜25)/(3〜25)(モル%)のものが好ましい。
【0052】
VdF/HFP/TFE/PAVE共重合体としては、VdF/HFP/TFE/PAVEの組成が(40〜90)/(0〜25)/(0〜40)/(3〜35)(モル%)のものが好ましく、(40〜80)/(3〜25)/(3〜40)/(3〜25)(モル%)のものがより好ましい。
【0053】
VdF/式(2)で表される含フッ素単量体(2)の共重合体としては、VdF/含フッ素単量体(2)単位のモル%比が85/15〜20/80であり、VdF及び含フッ素単量体(2)以外の他の単量体単位が全単量体単位の0〜50モル%のものが好ましく、VdF/含フッ素単量体(2)単位のモル%比が80/20〜20/80であることがより好ましい。またVdF/含フッ素単量体(2)単位のモル%比が85/15〜50/50であり、VdF及び含フッ素単量体(2)以外他の単量体単位が全単量体単位の1〜50モル%であるものも好ましい。VdF及び含フッ素単量体(2)以外の他の単量体としては、TFE、HFP、PMVE、パーフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)、PPVE、CTFE、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、エチレン(Et)、プロピレン(Pr)、アルキルビニルエーテル、架橋性基を与える単量体、反応性乳化剤等の、上記VdFの共単量体として例示した単量体が好ましく、なかでもPMVE、CTFE、HFP、TFEであることがより好ましい。
【0054】
上記フッ素ゴムは、中でも、VdF系フッ素ゴム、TFE/Pr系フッ素ゴム、TFE/Pr/VdF系フッ素ゴムが、耐熱老化性、耐油性が良好な点からより好適であり、成形体の機械物性に優れることから、VdF系フッ素ゴムが更に好ましく、VdF/HFP共重合体、及び、VdF/HFP/TFE共重合体からなる群より選択される少なくとも1種が特に好ましい。
【0055】
上記フッ素ゴムは、架橋性基を与えるモノマー由来の共重合単位を含む共重合体からなることも好ましい。架橋性基を与えるモノマーとしては、例えば特公平5−63482号公報、特開平7−316234号公報に記載されているようなパーフルオロ(6,6−ジヒドロ−6−ヨード−3−オキサ−1−ヘキセン)やパーフルオロ(5−ヨード−3−オキサ−1−ペンテン)などのヨウ素含有モノマー、特表平4−505341号公報に記載されている臭素含有モノマー、特表平4−505345号公報、特表平5−500070号公報に記載されているようなシアノ基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、アルコキシカルボニル基含有モノマーなどが挙げられる。
【0056】
上記フッ素ゴムは、主鎖末端にヨウ素原子又は臭素原子を有するフッ素ゴムであることも好ましい。主鎖末端にヨウ素原子又は臭素原子を有するフッ素ゴムは、実質的に無酸素下で、水媒体中でハロゲン化合物の存在下に、ラジカル開始剤を添加してモノマーの乳化重合を行うことにより製造できる。使用するハロゲン化合物の代表例としては、例えば、一般式:
R
2I
xBr
y
(式中、x及びyはそれぞれ0〜2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、R
2は、炭素数1〜16の飽和若しくは不飽和のフルオロ炭化水素基、炭素数1〜16の飽和若しくは不飽和のクロロフルオロ炭化水素基、炭素数1〜3の炭化水素基、又は、ヨウ素原子若しくは臭素原子で置換されていてもよい炭素数3〜10の環状炭化水素基であり、これらは酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物が挙げられる。
【0057】
ハロゲン化合物としては、例えば1,3−ジヨードパーフルオロプロパン、1,3−ジヨード−2−クロロパーフルオロプロパン、1,4−ジヨードパーフルオロブタン、1,5−ジヨード−2,4−ジクロロパーフルオロペンタン、1,6−ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8−ジヨードパーフルオロオクタン、1,12−ジヨードパーフルオロドデカン、1,16−ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2−ジヨードエタン、1,3−ジヨード−n−プロパン、CF
2Br
2、BrCF
2CF
2Br、CF
3CFBrCF
2Br、CFClBr
2、BrCF
2CFClBr、CFBrClCFClBr、BrCF
2CF
2CF
2Br、BrCF
2CFBrOCF
3、1−ブロモ−2−ヨードパーフルオロエタン、1−ブロモ−3−ヨードパーフルオロプロパン、1−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブタン、2−ブロモ−3−ヨードパーフルオロブタン、3−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、2−ブロモ−4−ヨードパーフルオロブテン−1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ベンゼンのジヨードモノブロモ置換体、並びに、ベンゼンの(2−ヨードエチル)及び(2−ブロモエチル)置換体などが挙げられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性などの点から、1,4−ジヨードパーフルオロブタン又はジヨードメタンを用いるのが好ましい。
【0058】
上記フッ素ゴムは、乳化重合、懸濁重合、溶液重合等の常法により製造することができる。特にヨウ素(臭素)移動重合として知られるヨウ素(臭素)化合物を使用した重合法によれば、分子量分布が狭いフッ素ゴムを製造できる。上記重合において、温度、圧力などの各条件、重合開始剤、乳化剤やその他の添加剤は、フッ素ゴムの組成や量に応じて適宜設定することができる。特開2009−52034号公報、国際公開第2008/001895号に開示されている製造方法によりフッ素ゴムを製造することができる。
【0059】
上記重合開始剤としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート(NPP)等のパーオキシカーボネート類に代表される油溶性ラジカル重合開始剤や、例えば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸のアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性ラジカル重合開始剤等を使用できる。
【0060】
上記乳化剤としては、たとえば、重合中におこる乳化剤分子への連鎖移動反応を抑制する観点から、フルオロカーボン鎖またはフルオロポリエーテル鎖を有するカルボン酸の塩類が好ましい。
【0061】
具体的には、たとえば、パーフルオロオクタン酸アンモニウム、CF
3(CF
2)
nCOONH
4(n=2〜8)、CHF
2(CF
2)
nCOONH
4(n=6〜8)、C
3F
7OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4、CH
2=CFCF
2OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4などが挙げられる。
【0062】
上記組成物は、更に、含二酸化ケイ素化合物(B)を含むことが好ましい。
【0063】
含二酸化ケイ素化合物(B)としては、一般にシリカと言われる二酸化ケイ素、汎用的にゴムにフィラーとして配合される、タルク、珪藻土、ウォラストナイトなどの各種二酸化ケイ素と金属酸化物からなる硅酸塩類、その他組成に二酸化ケイ素を含む化合物であればよい。
その中でも、ゴムに対する分散性の観点より、直径10μm以下の粒径のパウダー状化合物、もしくは液状化合物、もしくはゴムとの混練時に液化しゴム中に分散するものが好ましい。含二酸化ケイ素化合物(B)としては、二酸化ケイ素と金属酸化物からなるケイ酸塩化合物、及び、シリカからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、二酸化ケイ素と金属酸化物からなるケイ酸塩化合物がより好ましい。
上記ケイ酸塩化合物としては、水ガラス、メタケイ酸ナトリウム又はその水和物などのケイ酸ナトリウム化合物、ケイ酸カリウム化合物、ケイ酸リチウム化合物などの二酸化ケイ素とアルカリ金属との塩がさらに好ましい。中でも、ケイ酸ナトリウム化合物がさらに好ましい。
上記シリカとしては、カープレックス1120(DSL.ジャパン(株)製)、Vulkasil A1(Bayer Material Science AG製)等が挙げられる。
上記ケイ酸ナトリウム化合物としては、例えば、メタケイ酸ソーダ9水塩(大阪硅曹(株)製又は日本化学工業(株)製)等のメタケイ酸ナトリウム九水和物;1号ケイ酸ソーダ(富士化学(株)製又はAGCエスアイテック(株)製)等が挙げられる。
上記ケイ酸カリウム化合物としては、1号ケイ酸カリウム(富士化学(株)製)、ケイ酸カリウム溶液(純正化学(株)製)等が挙げられる。
【0064】
非粘着性及び低摩擦性に優れることから、含二酸化ケイ素化合物(B)は、ゴム(A)100質量部に対して、0.01質量部以上含まれていることが好ましく、0.1質量部以上含まれていることがより好ましい。また配合量が増大すると、ゴム弾性が損なわれる恐れがあることから、含二酸化ケイ素化合物(B)の配合量は、ゴム(A)100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましい。
ゴム(A)に起因する柔軟性と、含二酸化ケイ素化合物(B)に起因する低摩擦性の両方が良好な点から、含二酸化ケイ素化合物(B)の配合量は、0.3質量部以上であることが更に好ましく、0.5質量部以上であることが特に好ましい。また、70質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることが更に好ましく、20質量部以下であることが特に好ましい。
【0065】
ゴム(A)を含む組成物は、必要に応じてゴム中に配合される通常の配合剤、例えば充填剤(例えば、N990(Cancarb社製)、アサヒサーマル(旭カーボン(株)製)、HTCII20(新日化カーボン(株)製)等のカーボンブラック)、加工助剤、可塑剤、着色剤、安定剤、接着助剤、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤などの各種添加剤を含むものであってもよい。これらの添加剤、配合剤は、本発明の効果を損なわない範囲で使用すればよい。例えば、充填剤としてカーボンブラックを用いる場合には、カーボンブラックの含有量は、ゴム(A)100質量部に対して1〜80質量部であることが好ましく、1〜65質量部であることがより好ましく、1〜50質量部であることが更に好ましい。
【0066】
本発明の成形体は、ゴム(A)としてフッ素ゴムを含み、更に含二酸化ケイ素化合物(B)を含む組成物からなる成形体であって、下記XとYの比率〔X/Y〕が、2.0以上であることが好ましい。
X:成形体表面を赤外分光法分析することにより測定された、吸収位置1097cm
−1の強度(bX)と吸収位置1395cm
−1の強度(aX)の比〔強度(bX)/強度(aX)〕
Y:成形体内部を赤外分光法分析することにより測定された、吸収位置1097cm
−1の強度(bY)と吸収位置1395cm
−1の強度(aY)の比〔強度(bY)/強度(aY)〕
なお、含二酸化ケイ素化合物(B)の含有量と、上記吸収位置1097cm
−1の強度((bX)及び(bY))とに相関があり、フッ素ゴムの含有量と、吸収位置1395cm
−1の強度((aX)及び(aY))とに相関があるため、比率〔X/Y〕から、成形体の表面に含二酸化ケイ素化合物(B)が偏析しているかを確認することができる。
本発明の成形体は、上記のように比率〔X/Y〕が2.0以上であることによって、優れた非粘着性及び低摩擦性を有する。この比率〔X/Y〕が2.0以上であると、成形体の表面に充分に含二酸化ケイ素化合物(B)が偏析しているものと推定される。
上記比率〔X/Y〕は、2.5以上であることがより好ましく、3.0以上であることが更に好ましい。
一方で、比率〔X/Y〕が大きすぎると、常態物性が損なわれるため、200以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、50以下であることが更に好ましい。
上記IR分析は、例えば、サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製のフーリエ変換赤外分光装置(FT−IR NICOLET6700)を用いて、成形体表面及び内部の各々任意の領域に赤外光を照射し、赤外吸収スペクトルを測定することによって定性を行う分析方法のひとつである。
【0067】
本発明の成形体は、表面に線状の凸部を有していることが好ましい。上記線状の凸部は、ゴム(A)を含む組成物からなる。本発明の成形体は、上記特定の凸部を有するものであることによって、より優れた非粘着性及び低摩擦性を有する。上記線状の凸部の表面には含二酸化ケイ素化合物(B)が偏析していることが好ましい。
【0068】
上記凸部は、成形体の表面に線状に形成されており、線状の凸部の稜線を形成する頂部と、頂部から凹部に向かって傾斜する傾斜面とを有する。
上記凸部は、蛇行しながら連続的に伸びていてもよく、略直線状又は波線状に連続的に伸びる領域、及び、L字形状、U字形状、V字形状又はC字形状を形成しながら連続して伸びる領域を有していてもよく、複雑な形状をとりながら連続して伸びるほうが低摩擦性に優れる傾向にある。
【0069】
上記凸部の形状について、図面を参照しながらもう少し詳しく説明する。
図1に、後述する実施例1で得られた成形体の表面をレーザー顕微鏡で観察した3D画像を示す。
図1において、成形体の表面には複数の線状の凸部11が形成されており、隣接する2つの凸部11の間には凹部12が形成されている。また、
図1からわかるように、凸部の稜線は、平面から見て、略直線状又は波線状である部分と、L字形状、U字形状、V字形状又はC字形状である部分とを有している。また、凸部11は、分岐部15を有しており、分岐部15から多方向に凸部(稜線)が伸びている。
図2は、
図1において、成形体の表面に垂直な直線B
1と直線B
2を含む平面で成形体を切断した断面を示す断面模式図である。凸部11は、頂部13と、頂部13から凹部12に向かって傾斜する傾斜面14とを有する。凸部の表面(例えば、頂部13又は傾斜面14)では、成形体の構成材料である含二酸化ケイ素化合物(B)が偏析しており、成形体の非粘着性及び低摩擦性を実現する。また、
図2に示されるように、凸部の断面形状は、略楕円形状又は略放物線状であり、鋭く尖った頂部を有していない。この特徴的な断面形状も、本発明の成形体が非粘着性及び低摩擦性に優れる理由の1つである。
図3は、
図1において、成形体の表面に垂直な直線C
1と直線C
2を含む平面で成形体を切断した断面模式図である。頂部13は、一定の高さで、又は、波打つように高さを変えながら、線状の凸部11の稜線を形成している。
図4は、
図1において、成形体表面と平行な平面で凸部の底部を切断した面(底部断面)を示す模式図である。後述する底部断面積は、この成形体表面と平行な平面で凸部の底部を切断した面において観察される凸部11の断面に於ける面積の値をいう。
図1〜4に示す実施態様では、成形体の表面に複雑な模様を描く線状の凸部を備えることから、非粘着性及び低摩擦性に優れる。
図19に特開2012−153880号公報に記載の成形体の表面をレーザー顕微鏡で観察した3D画像を示す。この成形体も表面に凸部を有しているが、全ての凸部の形状が平面からみて略円状又は略楕円状であり、線状に伸びた凸部を一切備えていないことから、上記線状の凸部を有する成形体に比べて摩擦係数が大きく、非粘着性も低下する。
【0070】
上記線状の凸部は、線方向の長さが50μm以上であることが好ましい。線方向の長さが上記範囲であることにより、本発明の成形体は、非粘着性及び低摩擦性に優れる。より好ましくは、100μm以上であり、更に好ましくは、150μm以上である。
上記線方向の長さは、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700)付属アプリケシーションソフトVK Analyzerを用い、プロファイル計測解析することで得られる値である。
【0071】
上記線状の凸部は、底部最小幅が1〜40μmであることが好ましい。上記幅が上記範囲であることにより、非粘着性及び低摩擦性が優れる。より好ましくは、1〜25μmであり、4〜20μmであり、更に好ましくは、6〜15μmである。
上記幅は、線方向の長さ計測と同様に、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700)付属アプリケシーションソフトVK Analyzerを用い、プロファイル計測解析することで得られる値である。
【0072】
非粘着性及び低摩擦性が優れることから、上記線上の凸部の最大高さが1〜100μmであることが好ましい。より好ましくは、3〜80μmであり、更に好ましくは、5〜50μmである。
ここで、凸部の高さとは、成形体表面から突出した部分の高さをいう(
図2中、H参照)。
上記凸部の高さは、線方向の長さ計測と同様に、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700)付属アプリケシーションソフトVK Analyzerを用い、プロファイル計測解析することで得られる値である。
【0073】
本発明の成形体は、非粘着性及び低摩擦性が優れることから、成形体表面に対する凸部を有する領域の面積比(凸部の占有率)が、40%以上であることが好ましい。より好ましくは45%以上であり、更に好ましくは50%以上である。
上記成形体表面に対する凸部を有する領域の面積比は、上記凸部の底部断面積を評価する切断面において、凸部が占める面積の比率をいう。
凸部を有する領域の占有率(凸部の占有率)は、キーエンス社製、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700)を用いて、成形品表面の任意の領域(200μm×280μm)を測定し、凸部の底部断面積を求め、断面積の合計の値が、測定全領域面積に占める割合である。レーザー顕微鏡の解析ソフトとしては、三谷商事株式会社製のWinRooF Ver.6.4.0を用いる。
【0074】
非粘着性及び低摩擦性が優れることから、本発明の成形体の表面には、複数(2以上)の線状の凸部が形成されており、1つの凸部の稜線と該凸部に隣接する凸部の稜線との距離(
図2中のL参照)が3〜50μmであることが好ましい。複数の凸部はお互いに不規則な方向に伸びていることが好ましい。上記隣接する凸部の稜線との距離は、5〜40μmであることがより好ましく、10〜30μmであることが更に好ましい。
上記隣接する凸部の稜線との距離は、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700)付属アプリケシーションソフトVK Analyzerを用い、プロファイル計測解析することで得られる値である。
【0075】
上記線状の凸部は、必ずしも一本の線を形成するように伸びている必要はなく、分岐部を有し、該分岐部から多方向に伸びる複数の線を形成するように伸びていてもよい。
本発明の成形体は、線状の凸部が連結していてもよいし、交差していてもよい。
ある2つの線状の凸部を見たとき、2つの線状の凸部は交差していないが、1つの線状の凸部の延長線が、もう一つの線状の凸部と交差している形状も好ましい。
【0076】
上記線状の凸部は、ゴム(A)としてフッ素ゴムを含み、更に含二酸化ケイ素化合物(B)を含む組成物からなっており、表面に含二酸化ケイ素化合物(B)が偏析しているものであることが好ましい。
含二酸化ケイ素化合物(B)は、フッ素ゴムに比べ格段に摩擦係数が低いので、フッ素ゴムと比較して格段に低摩擦性が向上する。このような凸部は、例えば後述するような方法により、上記組成物に含まれる含二酸化ケイ素化合物(B)を表面に析出させて形成することが出来る。
凸部の表面に含二酸化ケイ素化合物(B)が偏析していることは、成形体の表面及び内部をIR分析することで、フッ素ゴムの吸収位置1395cm
−1の強度と、含二酸化ケイ素化合物(B)の吸収位置1097cm
−1の強度を検出することで確認できる。上記のように比率〔X/Y〕が2.0以上であれば、凸部の表面に充分に含二酸化ケイ素化合物(B)が偏析しているものと推定される。
【0077】
本発明の成形体は、上記線状の凸部を表面に有するものが好ましいが、線状以外の凸部(例えば、点状の凸部)が併存していても良い。
【0078】
上記組成物は、更に、フッ素樹脂(C)を含むことが好ましい。
【0079】
フッ素樹脂(C)は、溶融加工性のフッ素樹脂であることが好ましい。溶融加工性のフッ素樹脂を用いることによって、より優れた低摩擦性、非粘着性及び耐磨耗性を有する成形体を得ることができる。
【0080】
フッ素樹脂(C)は、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、フッ化ビニリデン〔VdF〕、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、フッ化ビニル〔VF〕、へキサフルオロプロピレン〔HFP〕、へキサフルオロイソブテン〔HFIB〕、CH
2=CX
1(CF
2)
nX
2(式中、X
1はH又はF、X
2はH、F又はCl、nは1〜10の整数である。)で示される単量体、CF
2=CF−ORf
1(式中、Rf
1は、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕、及び、CF
2=CF−OCH
2−Rf
2(式中、Rf
2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロブテン、テトラフルオロイソブテン、ヨウ素含有フッ素化ビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素単量体に基づく重合単位を有することが好ましい。フッ素樹脂(C)は、フッ素非含有単量体として、エチレン〔Et〕、プロピレン〔Pr〕、及び、アルキルビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種の単量体に基づく重合単位を有していてもよい。
フッ素樹脂(C)は、TFE、HFP、PAVE、CTFE、VdF及びVFからなる群より選択される少なくとも1種の単量体に基づく重合単位を含む共重合体であることがより好ましい。フッ素樹脂(C)は、フッ素非含有単量体として、Etに基づく重合単位を有する共重合体であることも好ましい。
本明細書において、上記「重合単位」は、含フッ素ポリマー(a)の分子構造上の一部分であって、対応する単量体に基づく部分を意味する。
【0081】
フッ素樹脂(C)は、TFE/HFP共重合体〔FEP〕、TFE/PAVE共重合体〔PFA〕、Et/TFE共重合体、Et/TFE/HFP共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン〔PCTFE〕、CTFE/TFE共重合体、Et/CTFE共重合体、ポリフッ化ビニリデン〔PVdF〕、TFE/VdF共重合体、VdF/HFP/TFE共重合体、VdF/HFP共重合体、及び、ポリフッ化ビニル〔PVF〕からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、溶融加工性であれば、低分子量のポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕を用いることも可能である。
なお、本明細書中で、上述のように、「TFE/HFP共重合体」と記載する場合には、TFEに基づく重合単位(TFE単位)と、HFPに基づく重合単位(HFP単位)とを含む共重合体であることを意味する。他の共重合体についても同様である。
【0082】
上記PFAにおけるPAVEとしては、炭素数1〜6のアルキル基を有するものが好ましく、PMVE、PEVE又はPPVEがより好ましい。上記PFAは、PAVE単位が2質量%を超え、5質量%以下であることが好ましく、2.5〜4.0質量%であることがより好ましい。
上記PFAは、それぞれ上述の組成を有するものであれば、更に、その他の単量体を重合させたものであってよい。上記その他の単量体として、例えば、HFPが挙げられる。上記その他の単量体は、1種又は2種以上を用いることができる。
上記PFAと重合させるその他の単量体は、その種類によって異なるが、通常、PFAの質量の1質量%以下であることが好ましい。より好ましい上限は0.5質量%であり、更に好ましい上限は0.3質量%である。
【0083】
上記Et/TFE共重合体は、Et単位:TFE単位のモル比が20:80〜80:20であるものが好ましい。Et単位の含有量が20:80未満であると、生産性が悪い場合があり、Et単位の含有量が80:20を超えると、耐食性が悪化する場合がある。より好ましくは、Et単位:TFE単位のモル比が35:65〜55:45である。Et/TFE共重合体は、TFEに基づく重合単位と、Etに基づく重合単位とを含む共重合体であり、他の含フッ素単量体に基づく重合単位を有していてもよい。
【0084】
上記Et/TFE共重合体は、単量体成分として、Et単位及びTFE単位以外に、その他の含フッ素単量体、及び、フッ素を全く含まない単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体に基づく単量体単位を有するものであることも好ましい形態の一つである。上記その他の含フッ素単量体としては、エチレン及びTFEの両方に付加し得るものであれば特に限定されないが、炭素数3〜10の含フッ素ビニルモノマーが使用しやすく、例えば、ヘキサフルオロイソブチレン、CH
2=CFC
3F
6H、HFP等が挙げられる。中でも、下記一般式:
CH
2=CH−Rf
5
(式中、Rf
5は炭素数4〜8のパーフルオロアルキル基を表す。)で表される含フッ素ビニルモノマーであることが好ましい。また、フッ素を全く含まない単量体としては、下記一般式:
CH
2=CH−R
4
(式中、R
4は、特に炭素数は限定されず、芳香環を含んでいても良く、カルボニル基、エステル基、エーテル基、アミド基、シアノ基、水酸基、エポキシ基を含んでいてもよい。R
4は、フッ素を含まない。)で表されるビニルモノマーであってもよい。
また、Et/TFE共重合体は、Et/TFE/HFP共重合体(EFEP)であることも好ましい形態の一つであり、さらに他の含フッ素単量体(HFPを除く。)、あるいは、フッ素を全く含まない単量体に基づく単量体単位を有するものであってもよい。上記エチレンとTFE以外の単量体は、上記エチレンとTFEとからなる共重合体の単量体成分全体の10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましい。Et単位:TFE単位:その他の含フッ素単量体、あるいは、フッ素を全く含まない単量体に基づく単量体単位のモル比としては、31.5〜54.7:40.5〜64.7:0.5〜10であることが好ましい。
【0085】
上記PCTFEは、重合単位が実質的にCTFE単位のみからなる重合体である。
【0086】
上記CTFE/TFE共重合体は、CTFE単位とTFE単位とのモル比がCTFE:TFE=2:98〜98:2であることが好ましく、5:95〜90:10であることがより好ましく、20:80〜90:10であることが更に好ましい。
上記CTFE/TFE共重合体は、CTFE、TFE、並びに、CTFE及びTFEと共重合可能な単量体からなる共重合体であることも好ましい。CTFE及びTFEと共重合可能な単量体としては、エチレン、VdF、HFP、CH
2=CX
1(CF
2)
nX
2(式中、X
1はH又はF、X
2はH、F又はCl、nは1〜10の整数である。)で示される単量体、PAVE、及び、CF
2=CF−OCH
2−Rf
3(式中、Rf
3は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられ、なかでも、エチレン、VdF、HFP及びPAVEからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、PAVEであることがより好ましい。PAVEとしては、上述したものが挙げられる。CTFE単位とTFE単位とCTFE及びTFEと共重合可能な単量体単位とのモル比は、CTFE単位及びTFE単位の合計の単量体単位:CTFE及びTFEと共重合可能な単量体単位=90〜99.9:10〜0.1であることが好ましい。
【0087】
上記Et/CTFE共重合体は、Et単位とCTFE単位とのモル比がCTFE:Et=30:70〜70:30であることが好ましく、40:60〜60:40であることがより好ましい。
【0088】
上記PVdFは、重合単位が実質的にVdF単位のみからなる重合体である。
【0089】
VdF/HFP共重合体としては、VdF/HFPのモル比が45〜85/55〜15であるものが好ましく、より好ましくは50〜80/50〜20であり、さらに好ましくは60〜80/40〜20である。VdF/HFP共重合体は、VdFに基づく重合単位と、HFPに基づく重合単位とを含む共重合体であり、他の含フッ素単量体に基づく重合単位を有していてもよい。例えば、VdF/HFP/TFE共重合体であることも好ましい形態の一つである。
【0090】
VdF/HFP/TFE共重合体としては、VdF/HFP/TFEのモル比が40〜80/10〜35/10〜25のものが好ましい。なお、VdF/HFP/TFE共重合体は、樹脂である場合もあるし、エラストマーである場合もあるが、上記組成範囲を有する場合、通常樹脂である。
【0091】
上記PVFは、重合単位が実質的にVF単位のみからなる重合体である。
【0092】
上記低分子量のPTFEは、数平均分子量が60万以下であることが好ましい。S.Wuの方法(Polymer Engineering&Science,1988, Vol.28,538、同1989,Vol.29,273)に準処して数平均分子量を求めることができる。
上記低分子量のPTFEは、TFE単独重合体であってもよいし、変性PTFEであってもよい。本明細書において、上記「変性PTFE」とは、得られる共重合体に溶融加工性を付与しない程度の少量の共単量体(変性剤)をTFEと共重合してなるものを意味する。
上記変性PTFEにおける変性剤としてはTFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、HFP等のパーフルオロオレフィン;CTFE等のクロロフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、VdF等の水素含有フルオロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル;パーフルオロブチルエチレン等のパーフルオロアルキルエチレン;エチレン等が挙げられる。また、用いる変性剤は1種であってもよいし、複数種であってもよい。
変性剤として用いられるパーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、下記一般式(I):
CF
2=CF−ORf (I)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
変性剤として用いられるパーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上記一般式(I)において、Rfが炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基を表すものであるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕が好ましい。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、1〜5であることがより好ましい。
上記変性PTFEにおいて上記変性剤が上記変性剤とTFEとの全体量に占める割合(質量%)としては、通常、1質量%以下が好ましく、0.001〜1質量%がより好ましい。0.001質量%以上1質量%未満であることも好ましい。
【0093】
フッ素樹脂(C)の融点は、140〜340℃であることが好ましく、160〜320℃であることがより好ましく、180〜300℃であることが更に好ましい。フッ素樹脂(C)の融点が、140℃未満であると、架橋成形時にブリードアウトする傾向があり、340℃を超えると、成形体表面に線上の凸部を形成するのが困難になる傾向がある。
上記融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0094】
フッ素樹脂(C)は、372℃におけるメルトフローレート〔MFR〕が0.3〜300g/10分であることが好ましい。MFRが小さすぎると低摩擦性や非粘着性に劣るおそれがあり、MFRが大きすぎると耐摩耗性に劣るおそれがある。
上記MFRは、ASTM D 1238に準拠し、温度372℃、荷重5kgで測定して得られる値である。
【0095】
非粘着性、低摩擦性及び耐摩耗性が優れることから、フッ素樹脂(C)は、TFE/HFP共重合体、すなわち、テトラフルオロエチレンに基づく重合単位と、ヘキサフルオロプロピレンに基づく重合単位と、からなる共重合体(FEP)であることが好ましい。FEPは、成形体の摩擦係数低減効果が良好な点から好ましい。FEPは、とりわけ成形体の耐熱性が優れたものとなり、優れた燃料バリア性が発現する点でも好ましい。
【0096】
FEPとしては、TFE単位70〜99モル%及びHFP単位1〜30モル%からなる共重合体であることが好ましく、TFE単位80〜97モル%及びHFP単位3〜20モル%からなる共重合体であることがより好ましい。TFE単位が70モル%未満では機械物性が低下する傾向があり、99モル%をこえると融点が高くなりすぎ成形性が低下する傾向がある。
【0097】
FEPは、TFE、HFP、並びに、TFE及びHFPと共重合可能な単量体からなる共重合体であってもよく、当該単量体としては、CF
2=CF−ORf
6(式中、Rf
6は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕、CX
5X
6=CX
7(CF
2)
nX
8(式中、X
5、X
6及びX
7は、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、X
8は、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは2〜10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、CF
2=CF−OCH
2−Rf
7(式中、Rf
7は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられ、なかでも、PAVEであることが好ましい。
【0098】
上記PAVEとしては、PMVE、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔PEVE〕、PPVE、及び、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、なかでも、PMVE、PEVE及びPPVEからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0099】
上記アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体としては、Rf
7が炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であるものが好ましく、CF
2=CF−OCH
2−CF
2CF
3がより好ましい。
【0100】
FEPは、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に由来する単量体単位を有する場合、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1〜10モル%であり、TFE単位及びHFP単位が合計で90〜99.9モル%であることが好ましい。共重合可能な単量体単位が0.1モル%未満であると成形性、耐環境応力割れ性及び耐ストレスクラック性に劣りやすく、10モル%をこえると薬液低透過性、耐熱性、機械特性、生産性などに劣る傾向にある。
【0101】
上記組成物において、ゴム(A)とフッ素樹脂(C)との体積比(ゴム(A))/(フッ素樹脂(C))が60/40〜99/1であることが好ましい。フッ素樹脂(C)が少なすぎると摩擦係数低減の効果が充分に得られないおそれがあり、一方、フッ素樹脂(C)が多すぎると、ゴム弾性が著しく損なわれる恐れがある。柔軟性と低摩擦性の両方が良好な点から、(ゴム(A))/(フッ素樹脂(C))は、65/35〜97/3であることがより好ましく、70/30〜95/5であることが更に好ましい。
【0102】
本発明の成形体は、曲げ弾性率が40MPa以下であることが好ましい。曲げ弾性率が40MPa以下であることにより、優れた柔軟性を有する成形体となる。上記曲げ弾性率は、30MPa以下であることがより好ましく、20MPa以下であることが更に好ましい。曲げ弾性率の下限は特に限定されない。
上記曲げ弾性率は、ASTM D790に準拠した方法で測定した値である。
【0103】
次に、本発明の成形体の製造方法について説明する。
【0104】
本発明の成形体は、未架橋ゴム(a)と含二酸化ケイ素化合物(B)とを含む架橋性組成物を架橋することにより得ることができる。特に、本発明の成形体は、後述する製造方法により得られるものであることが好ましい。
【0105】
本発明の成形体は、
(I)未架橋ゴム(a)と含二酸化ケイ素化合物(B)とを混合して架橋性組成物を得る混合工程、
(II)得られた架橋性組成物を成形架橋する成形架橋工程、及び、
(III)得られた架橋成形品を150〜270℃の温度に加熱する熱処理工程
を含む方法により製造することができる。
【0106】
上記未架橋ゴム(a)は、架橋前のゴム(A)である。
【0107】
(I)混合工程
上記架橋性組成物を得る方法は、未架橋ゴム(a)と含二酸化ケイ素化合物(B)とを均一に混合できる方法を用いれば特に制限はない。例えば、未架橋ゴム(a)を単独で凝析した粉末と含二酸化ケイ素化合物(B)と、必要に応じて他の添加剤や配合剤とをオープンロール等の混練機で混練する方法が挙げられる。
上記架橋性組成物が含二酸化ケイ素化合物(B)を含むことによって、ショアA硬度及びインデンテーション硬さを上述した範囲のものとすることができ、上記比率〔X/Y〕を2.0以上にすることができ、また、上記線状の凸部を有する成形体を得ることができる。
【0108】
上記未架橋ゴム(a)が未架橋のフッ素ゴムである場合、その架橋系は、例えば、パーオキサイド架橋系、ポリオール架橋系、ポリアミン架橋系等があげられ、パーオキサイド架橋系、及び、ポリオール架橋系からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。耐薬品性の観点からはパーオキサイド架橋系が好ましく、耐熱性の観点からはポリオール架橋系が好ましい。
従って、上記架橋剤としては、ポリオール架橋剤、及び、パーオキサイド架橋剤からなる群より選択される少なくとも1種の架橋剤が好ましく、ポリオール架橋剤がより好ましい。
架橋剤の配合量は、架橋剤の種類等によって適宜選択すればよいが、未架橋ゴム(a)100質量部に対して0.2〜5.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜3.0質量部である。
【0109】
パーオキサイド架橋は、パーオキサイド架橋可能な未架橋ゴム及び架橋剤として有機過酸化物を使用することにより行うことができる。
【0110】
パーオキサイド架橋可能な未架橋ゴムとしては特に限定されず、パーオキサイド架橋可能な部位を有する未架橋ゴムであればよい。上記パーオキサイド架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、ヨウ素原子を有する部位、臭素原子を有する部位等を挙げることができる。
【0111】
有機過酸化物としては、熱や酸化還元系の存在下で容易にパーオキシラジカルを発生し得る有機過酸化物であればよく、例えば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α−ビス(t−ブチルパーオキシ)−p−ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエイトなどをあげることができる。これらの中でも、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−ヘキシン−3が好ましい。
有機過酸化物の配合量は、未架橋ゴム(a)100質量部に対して0.1〜15質量部が好ましく、より好ましくは0.3〜5質量部である。
【0112】
架橋剤が有機過酸化物である場合、上記架橋性組成物は更に架橋助剤を含むことが好ましい。架橋助剤としては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリアクリルホルマール、トリアリルトリメリテート、N,N′−m−フェニレンビスマレイミド、ジプロパギルテレフタレート、ジアリルフタレート、テトラアリルテレフタレートアミド、トリアリルホスフェート、ビスマレイミド、フッ素化トリアリルイソシアヌレート(1,3,5−トリス(2,3,3−トリフルオロ−2−プロペニル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン)、トリス(ジアリルアミン)−S−トリアジン、N,N−ジアリルアクリルアミド、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、ヘキサアリルホスホルアミド、N,N,N′,N′−テトラアリルフタルアミド、N,N,N′,N′−テトラアリルマロンアミド、トリビニルイソシアヌレート、2,4,6−トリビニルメチルトリシロキサン、トリ(5−ノルボルネン−2−メチレン)シアヌレート、トリアリルホスファイトなどが挙げられる。これらの中でも、架橋性及び機械物性、柔軟性が優れる点から、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)が好ましい。
【0113】
架橋助剤の配合量は、未架橋ゴム(a)100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、0.01〜7.0質量部であることがより好ましく、更に好ましくは0.1〜5.0質量部である。架橋助剤が、0.01質量部より少ないと、機械物性が低下したり、柔軟性が低下したりする。10質量部をこえると、耐熱性に劣り、成形体の耐久性も低下する傾向がある。
【0114】
ポリオール架橋は、ポリオール架橋可能な未架橋ゴム及び架橋剤としてポリヒドロキシ化合物を使用することにより行うことができる。ポリオール架橋系における、ポリヒドロキシ化合物の配合量としては、ポリオール架橋可能な未架橋ゴム(a)100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましい。ポリヒドロキシ化合物の配合量がこのような範囲であることにより、ポリオール架橋を充分に進行させることができる。より好ましくは0.02〜8質量部である。さらに好ましくは0.03〜4質量部である。
【0115】
上記ポリオール架橋可能な未架橋ゴムとしては特に限定されず、ポリオール架橋可能な部位を有する未架橋ゴムであればよい。上記ポリオール架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、フッ化ビニリデン(VdF)単位を有する部位等を挙げることができる。上記架橋部位を導入する方法としては、未架橋ゴム(a)の重合時に架橋部位を与える単量体を共重合する方法等が挙げられる。
【0116】
ポリヒドロキシ化合物としては、耐熱性に優れる点からポリヒドロキシ芳香族化合物が好適に用いられる。
【0117】
上記ポリヒドロキシ芳香族化合物としては、特に限定されず、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールAという)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン(以下、ビスフェノールAFという。ビスフェノールAFは、例えば、和光純薬工業(株)、セントラル硝子(株)等から入手できる。)、レゾルシン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,7−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシスチルベン、2,6−ジヒドロキシアントラセン、ヒドロキノン、カテコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン(以下、ビスフェノールBという)、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)テトラフルオロジクロロプロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、トリ(4−ヒドロキシフェニル)メタン、3,3’,5,5’−テトラクロロビスフェノールA、3,3’,5,5’−テトラブロモビスフェノールAなどが挙げられる。これらのポリヒドロキシ芳香族化合物は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などであってもよいが、酸を用いて共重合体を凝析した場合は、上記金属塩は用いないことが好ましい。ポリヒドロキシ芳香族化合物の配合量は、未架橋ゴム(a)100質量部に対して、0.1〜15質量部、好ましくは0.5〜5質量部である。
【0118】
架橋剤がポリヒドロキシ化合物である場合、上記架橋性組成物は更に架橋促進剤を含むことが好ましい。架橋促進剤は、ポリマー主鎖の脱フッ酸反応における分子内二重結合の生成と、生成した二重結合へのポリヒドロキシ化合物の付加を促進する。
なお、架橋促進剤は、更に、酸化マグネシウム等の受酸剤や、架橋助剤と組み合わせて用いてもよい。
【0119】
架橋促進剤としては、オニウム化合物があげられ、オニウム化合物のなかでも、第4級アンモニウム塩等のアンモニウム化合物、第4級ホスホニウム塩等のホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、環状アミン、及び、1官能性アミン化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、第4級アンモニウム塩及び第4級ホスホニウム塩からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0120】
第4級アンモニウム塩としては特に限定されず、例えば、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムアイオダイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−メチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムメチルスルフェート、8−エチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−プロピル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムブロミド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ドデシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−エイコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−テトラコシル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド(以下、DBU−Bとする。DBU−Bは、例えば、和光純薬工業(株)等から入手できる。)、8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムハイドロキサイド、8−フェネチル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド、8−(3−フェニルプロピル)−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライドなどが挙げられる。これらの中でも、架橋性、機械物性、及び、柔軟性の点から、DBU−Bが好ましい。
【0121】
また、第4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、例えば、テトラブチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(以下、BTPPCとする)、ベンジルトリメチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリブチルホスホニウムクロライド、トリブチルアリルホスホニウムクロライド、トリブチル−2−メトキシプロピルホスホニウムクロライド、ベンジルフェニル(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロライドなどをあげることができ、これらの中でも、架橋性、機械物性、及び、柔軟性の点から、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド(BTPPC)が好ましい。
【0122】
また、架橋促進剤として、第4級アンモニウム塩とビスフェノールAFとの固溶体、第4級ホスホニウム塩とビスフェノールAFとの固溶体、特開平11−147891号公報に開示されている塩素フリー架橋促進剤を用いることもできる。
【0123】
架橋促進剤の配合量は、未架橋ゴム(a)100質量部に対して、0.01〜8.00質量部であることが好ましく、より好ましくは0.02〜5.00質量部である。さらに好ましくは0.03〜3.00質量部である。架橋促進剤が、0.01質量部未満であると、未架橋ゴム(a)の架橋が充分に進行せず、得られる成形体の耐熱性等が低下するおそれがある。8.00質量部をこえると、上記架橋性組成物の成形加工性が低下するおそれや、機械物性における伸びが低下し、柔軟性も低下する傾向がある。
【0124】
受酸剤は、ポリオール架橋の際に発生する酸性物質を中和するために用いられものであり、具体例としては、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム(例えば、NICC5000(井上石灰工業(株)製)、CALDIC#2000、CALDIC#1000(近江化学工業(株)製))、酸化カルシウム、リサージ(酸化鉛)、亜鉛華、二塩基性亜リン酸鉛、ハイドロタルサイトなどがあげられ、高活性の酸化マグネシウム及び低活性のマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
ポリオール加硫系フッ素ゴムにおいて、頻繁に用いられる受酸剤の量は、フッ素ゴム100質量部に対して酸化マグネシウム(高活性)3質量部と水酸化カルシウム6質量部の併用であるが、本発明において、フッ素ゴムに配合する受酸剤量は、優れた低摩擦性の成形体を得る観点、上述した範囲のインデンテーション硬さを実現する観点、また、成形体に線状の凸部を形成する観点から、受酸剤の配合量はその水準より低減するほうが好ましい。
例えば、高活性の酸化マグネシウム(例えば、MA150(協和化学工業(株)製);U、U−2、CX−150(神島化学工業(株)製))をその他の受酸剤と併用せず用いる場合であれば、未架橋ゴム(A)100質量部に対して、配合量は3.5質量部以下であることが好ましく、さらに2.5質量部以下であることが好ましい。下限は特に限定されないが、0.1質量部であってよい。
架橋性組成物がフッ素樹脂を含む場合は、未架橋ゴム(A)100質量部に対して、高活性の酸化マグネシウムが4.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以下であることがより好ましい。下限は特に限定されないが、0.1質量部であってよい。
例えば、低活性の酸化マグネシウム(例えば、MA30(協和化学工業(株)製);M、M−2、L(神島化学工業(株)製))をその他の受酸剤と併用せずに用いる場合においては、未架橋ゴム(A)100質量部に対して、配合量は4.5質量部以下であることが好ましく、3.5質量部以下が更に好ましい。下限は特に限定されないが、0.1質量部であってよい。
なお、「高活性の酸化マグネシウム」とは、例えばBET比表面積(m
2/g)が130〜170である酸化マグネシウムであり、「低活性の酸化マグネシウム」とは、例えばBET比表面積(m
2/g)が30〜50である酸化マグネシウムである。
上記BET比表面積は、例えば、Quantachrome製Autosorb−1 MPを用いて測定することができる。
具体的には、下記方法により測定することができる。
装置:Quantachrome製のAutosorb−1 MP
測定方法:試料を20mg程度測定セルに導入し、482Kで真空加熱処理後、77Kでプローブガスとして純度99.99995%以上の純窒素ガスを用い、容量法にて測定し、測定データをBET法にて解析する。
測定条件:482Kで真空加熱処理後、77Kでの窒素吸着等温線測定。
【0125】
ポリアミン架橋は、ポリアミン架橋可能なフッ素ゴム及び架橋剤としてポリアミン化合物を使用することにより行うことができる。
【0126】
上記ポリアミン架橋可能なフッ素ゴムとしては特に限定されず、ポリアミン架橋可能な部位を有するフッ素ゴムであればよい。上記ポリアミン架橋可能な部位としては特に限定されず、例えば、フッ化ビニリデン(VdF)単位を有する部位等を挙げることができる。上記架橋部位を導入する方法としては、フッ素ゴムの重合時に架橋部位を与える単量体を共重合する方法等が挙げられる。
【0127】
ポリアミン化合物としては、たとえば、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ビス(アミノシクロヘキシル)メタンカルバメートなどがあげられる。これらの中でも、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサメチレンジアミンが好ましい。
【0128】
上記架橋性組成物は、含二酸化ケイ素化合物(B)と未架橋ゴム(a)との相溶性向上のため、上記架橋性組成物は少なくとも1種の多官能化合物を含んでいてもよい。多官能化合物とは、1つの分子中に同一又は異なる構造の2つ以上の官能基を有する化合物である。
多官能化合物が有する官能基としては、カルボニル基、カルボキシル基、ハロホルミル基、アミド基、オレフィン基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、エポキシ基等、一般に反応性を有することが知られている官能基であれば任意に用いることができる。これらの官能基を有する化合物は、ゴム(A)との親和性が高いだけではなく、含二酸化ケイ素化合物(B)との相溶性も向上することが期待される。
【0129】
上記架橋性組成物は、必要に応じてゴム中に配合される通常の添加剤、例えば充填剤、加工助剤、可塑剤、着色剤、安定剤、接着助剤、離型剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、表面非粘着剤、柔軟性付与剤、耐熱性改善剤、難燃剤などの各種添加剤を配合することができ、これらの添加剤は、本発明の効果を損なわない範囲で使用すればよい。
【0130】
上記未架橋ゴム(a)及び含二酸化ケイ素化合物(B)を含む架橋性組成物は、未架橋ゴム(a)100質量部に対して、含二酸化ケイ素化合物(B)の含有量が0.1〜100質量部であることが好ましい。
含二酸化ケイ素化合物(B)が少なすぎると、本発明の成形体において、上記インデンテーション硬さを上述した範囲とすることができず、上記比率〔X/Y〕を2.0以上とすることができず、また、含二酸化ケイ素化合物(B)が表面に偏析せず、充分な低摩擦性が得られないおそれがある。一方、含二酸化ケイ素化合物(B)が多すぎると、ゴム弾性が損なわれる恐れがある。ゴム(A)に起因する柔軟性と、含二酸化ケイ素化合物(B)に起因する低摩擦性の両方が良好な点から、上記未架橋ゴム(a)及び含二酸化ケイ素化合物(B)を含む架橋性組成物は、未架橋ゴム(a)100質量部に対して、含二酸化ケイ素化合物(B)の含有量が0.3質量部以上であることがより好ましい。また、70質量部以下であることがより好ましく、40質量部以下であることが更に好ましい。
上記架橋性組成物の一例として、未架橋ゴム(a)として未架橋のフッ素ゴムと、未架橋ゴム(a)100質量部に対して、0.3〜40質量部の含二酸化ケイ素化合物(B)と、0.03〜4質量部のポリヒドロキシ化合物と、0.03〜3質量部の架橋促進剤と、0.1〜2.5質量部の高活性の酸化マグネシウム又は0.1〜3.5質量部の低活性の酸化マグネシウムとを含む組成物を挙げることができる。
【0131】
上記架橋性組成物は、フッ素樹脂(C)を含むことも好ましい。フッ素樹脂(C)を含む架橋性組成物は、例えば、
未架橋ゴム(a)とフッ素樹脂(C)の各々を単独で凝析した粉末と含二酸化ケイ素化合物(B)と、必要に応じて他の添加剤や配合剤と、を粉末混合する方法、
未架橋ゴム(a)とフッ素樹脂(C)と含二酸化ケイ素化合物(B)とを溶融混練する、又は、未架橋ゴム(a)とフッ素樹脂(C)とを溶融混練してプレコンパウンド(予備混合物)を調製し、ついで、含二酸化ケイ素化合物(B)、必要に応じて他の添加剤や配合剤を添加して架橋温度未満で混練してフルコンパウンド(架橋性組成物)とする方法、
未架橋ゴム(a)とフッ素樹脂(C)とを共凝析して共凝析組成物を得た後、共凝析組成物と、含二酸化ケイ素化合物(B)と、必要に応じて他の添加剤や配合剤と、を混練りすることにより架橋性組成物を得る方法、
等により得ることができる。中でも、未架橋ゴム(a)とフッ素樹脂(C)と含二酸化ケイ素化合物(B)とを溶融混練する、又は、未架橋ゴム(a)とフッ素樹脂(C)とを溶融混練してプレコンパウンド(予備混合物)を調製し、ついで、含二酸化ケイ素化合物(B)、必要に応じて他の添加剤や配合剤を添加して架橋温度未満で混練してフルコンパウンド(架橋性組成物)とする方法、若しくは、未架橋ゴム(a)とフッ素樹脂(C)とを共凝析して共凝析組成物を得た後、共凝析組成物と、含二酸化ケイ素化合物(B)と、必要に応じて他の添加剤や配合剤と、を混練りすることにより架橋性組成物を得る方法が好ましい。
【0132】
以下に、溶融混練と共凝析について説明する。
【0133】
(溶融混練)
溶融混練は、少なくとも未架橋ゴム(a)とフッ素樹脂(C)とを、フッ素樹脂(C)の融点より5℃低い温度以上の温度、好ましくはフッ素樹脂(C)の融点以上の温度で行う。加熱温度の上限は、未架橋ゴム(a)又はフッ素樹脂(C)のいずれか低い方の熱分解温度未満である。
【0134】
溶融混練は、その温度で架橋を引き起こす条件(架橋剤、架橋促進剤及び受酸剤の存在下など)では行わないが、フッ素樹脂(C)の融点より5℃低い温度以上の溶融混練温度で架橋を引き起こさない成分(例えば、含二酸化ケイ素化合物(B)、特定の架橋剤のみ、架橋剤と架橋促進剤の組合せのみ、など)であれば、溶融混練時に添加混合してもよい。架橋を引き起こす条件としては、例えば、ポリオール架橋剤と架橋促進剤と受酸剤との組合せが挙げられる。
【0135】
したがって、上記溶融混練では、未架橋ゴム(a)とフッ素樹脂(C)とを溶融混練してプレコンパウンド(予備混合物)を調製し、ついで、架橋温度未満の温度で、含二酸化ケイ素化合物(B)、架橋剤、必要に応じて他の添加剤や配合剤を混練してフルコンパウンド(架橋性組成物)とする2段階混練法が好ましい。もちろん、全ての成分を架橋剤の架橋温度未満の温度で混練する方法でもよい。
【0136】
溶融混練は、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、押出機等を使用して、フッ素樹脂(C)の融点より5℃低い温度以上の温度、例えば180℃以上、通常220〜300℃で未架橋ゴムと混練することにより行うことができる。これらの中でも、高剪断力を加えることができる点で、加圧ニーダー又は二軸押出機等の押出機を用いることが好ましい。
【0137】
また、2段階混練法におけるフルコンパウンド化は、架橋温度未満、例えば100℃以下の温度でオープンロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダーなどを用いて行うことができる。
【0138】
上記溶融混練と類似の処理として、フッ素樹脂中で、未架橋ゴムをフッ素樹脂の溶融条件下で架橋する処理(動的架橋)がある。動的架橋は、熱可塑性樹脂のマトリックス中に未架橋ゴムをブレンドし、混練しながら未架橋ゴムを架橋させ、かつその架橋したゴムをマトリックス中にミクロに分散させる方法であるが、上記溶融混練は、架橋を引き起こさない条件(架橋に必要な成分の不存在、又はその温度で架橋反応が起こらない配合など)で溶融混練するものであり、またマトリックスは未架橋ゴム(a)となり、未架橋ゴム(a)中にフッ素樹脂(C)が均一に分散している架橋性組成物を得る点において本質的に異なる。
【0139】
(共凝析)
上記混合工程は、未架橋ゴム(a)とフッ素樹脂(C)とを共凝析して共凝析組成物を得た後、共凝析組成物と含二酸化ケイ素化合物(B)とを混練りすることにより架橋性組成物を得るものであることが好ましい。
上記未架橋ゴム(a)とフッ素樹脂(C)とを共凝析することによって、表面に形成される線状の凸部をより均一かつ微細に形成することができるし、凸部を有する領域の面積比(占有率)を十分に高くすることもできる。その結果、より優れた低摩擦性を有する成形体が得られる。
上記架橋性組成物が、未架橋ゴム(a)とフッ素樹脂(C)とを共凝析することによって得られる共凝析組成物を含む場合には、未架橋ゴム(a)とフッ素樹脂(C)とが架橋性組成物中で均一に分散していると予想される。このような架橋性組成物を架橋し、熱処理することにより、低摩擦性に優れる本発明の成形体が得られるものと考えられる。
【0140】
上記共凝析の方法としては、例えば、(i)未架橋ゴム(a)の水性分散液と、フッ素樹脂(C)の水性分散液とを混合した後に凝析させる方法、(ii)未架橋ゴム(a)の粉末を、フッ素樹脂(C)の水性分散液に添加した後に凝析させる方法、(iii)フッ素樹脂(C)の粉末を、未架橋ゴム(a)の水性分散液に添加した後に凝析させる方法が挙げられる。上記共凝析の方法としては、特に未架橋ゴム(a)及びフッ素樹脂(C)が均一に分散し易い点で、上記(i)の方法が好ましい。
【0141】
上記(i)〜(iii)の凝析方法における凝析は、例えば、凝集剤を用いて行うことができる。このような凝集剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、硫酸アルミニウム、ミョウバン等のアルミニウム塩、硫酸カルシウム等のカルシウム塩、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩、塩化ナトリウムや塩化カリウム等の一価カチオン塩等の公知の凝集剤が挙げられる。凝集剤により凝析を行う際、凝集を促進させるために酸又はアルカリを添加してpHを調整してもよい。
【0142】
上記未架橋ゴム(a)とフッ素樹脂(C)とを共凝析することによって得られる共凝析組成物は、例えば、未架橋ゴム(a)の水性分散液と、フッ素樹脂(C)の水性分散液とを混合した後に凝析し、次いで凝析物を回収し、所望により乾燥させることにより得ることができる。
未架橋ゴム(a)の架橋系によっては架橋剤が必要であるので、未架橋ゴム(a)とフッ素樹脂(C)とを共凝析して共凝析組成物を得た後、共凝析組成物に含二酸化ケイ素化合物(B)と架橋剤を添加して架橋性組成物を得てもよい。すなわち、上記架橋性組成物は、それぞれの架橋系において使用される架橋剤を含むものであってよい。また、上述した各種添加剤等を含むものであってもよい。
通常は、上記共凝析組成物に含二酸化ケイ素化合物(B)及び架橋剤を添加した後、共凝析組成物と含二酸化ケイ素化合物(B)及び架橋剤とを混合する。上記混合は、例えば、ニーダー等を用いた通常の混合方法により、フッ素樹脂(C)の融点未満の温度で混合することができる。
【0143】
(II)成形架橋工程
この工程は、混合工程(I)で得られた架橋性組成物を成形及び架橋し、製造する成形体と略同形状の架橋成形品を製造する工程である。
成形と架橋の順序は限定されず、成形した後架橋してもよいし、架橋した後成形してもよいし、成形と架橋とを同時に行ってもよい。
【0144】
成形方法としては、例えば金型などによる加圧成形法、インジェクション成形法などが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0145】
架橋方法も、スチーム架橋法、加熱により架橋反応が開始される通常の方法、放射線架橋法等が採用でき、なかでも、加熱による架橋反応が好ましい。
本発明においては、含二酸化ケイ素化合物(B)が架橋性組成物の表面層へスムーズに移行する点から、加熱による架橋反応が好適である。
【0146】
架橋を行う温度は、未架橋ゴム(a)の架橋温度以上であり、200℃未満であることが好ましい。架橋を200℃以上で行うと、インデンテーション硬さを上記の範囲とすることができなかったり、上記比率〔X/Y〕を2.0以上とすることができなかったり、線上の凸部を有する成形体を得ることができないおそれがある。
また、架橋を行う温度は、後述する熱処理工程(III)において、上記比率〔X/Y〕を2.0以上とすることができること、成形体表面に線状の凸部を形成できる点から、より好ましくは190℃以下であり、更に好ましくは180℃以下である。また、架橋条件における温度の下限は、未架橋ゴム(a)の架橋温度である。
架橋時間は、使用する架橋剤などの種類により適宜決めればよいが、通常、1分間〜24時間である。
【0147】
成形及び架橋の方法及び条件としては、採用する成形及び架橋において公知の方法及び条件の範囲内でよい。また、成形と架橋は順不同で行ってもよいし、同時に並行して行ってもよい。更に、工程(II)の後に、未架橋ゴム(a)の架橋温度未満、例えば、150℃未満に冷却する工程を行ってもよい。
【0148】
また、未架橋ゴムの架橋において、最初の架橋処理(1次架橋という)を施した後に2次架橋と称される後処理工程を施すことがあるが、つぎの熱処理工程(III)で説明するように、従来の2次架橋工程と本発明の成形架橋工程(II)及び熱処理工程(III)とは異なる処理工程である。
【0149】
なお、本発明の成形体が、ゴム(A)及び含二酸化ケイ素化合物(B)を含む組成物以外の部品を内包する場合には、この工程(II)において、例えば、予め金型内に上記部品を配置しておき、一体成形を行えばよい。
【0150】
(III)熱処理工程
この熱処理工程(III)では、工程(II)で得られた架橋成形品を150〜270℃の温度で加熱する。熱処理工程(III)を経ることにより、成形体のインデンテーション硬さを上記の範囲とすることができ、製造する成形体の表面に含二酸化ケイ素化合物(B)が偏析し、線状の凸部を形成することができる。架橋成形品がフッ素樹脂(C)を含む場合は、上記の温度範囲であって、かつ、フッ素樹脂(C)の融点以上の温度に加熱することが好ましく、フッ素樹脂(C)の融点より5℃以上高い温度に加熱することがより好ましい。
【0151】
本発明における熱処理工程(III)は、架橋成形品表面の含二酸化ケイ素化合物(B)比率を高めるために行う処理工程であり、この目的に即して、150℃以上で、かつ、ゴム(A)及び含二酸化ケイ素化合物(B)の熱分解温度未満の温度が採用される。上記加熱温度は、短時間で低摩擦化が容易な点から、155℃以上であることがより好ましく、160℃以上であることが更に好ましく、170℃以上であることが特に好ましく、180℃以上であることが殊更に好ましく、200℃以上であることが最も好ましい。架橋成形品がフッ素樹脂(C)を含む場合は、上記の温度範囲であって、かつ、フッ素樹脂(C)の融点以上の温度に加熱することが好ましく、フッ素樹脂(C)の融点より5℃以上高い温度に加熱することがより好ましい。
【0152】
加熱温度が150℃よりも低い場合は、上記インデンテーション硬さを上記の範囲にすることができなかったり、上記比率〔X/Y〕を2.0以上とすることができなかったり、架橋成形品表面に十分な凸部を形成することができない。ゴム(A)及び含二酸化ケイ素化合物(B)の熱分解を回避するために、加熱温度は、ゴム(A)の熱分解温度又は含二酸化ケイ素化合物(B)の熱分解温度のいずれか低い方の温度未満でなければならない。架橋成形品がフッ素樹脂(C)を含む場合は、ゴム(A)、含二酸化ケイ素化合物(B)又はフッ素樹脂(C)の各熱分解温度のうち、最も低い熱分解温度未満でなければならない。
【0153】
熱処理工程(III)において、加熱温度は加熱時間と密接に関係しており、加熱温度が比較的下限に近い温度では比較的長時間加熱を行い、比較的上限に近い加熱温度では比較的短い加熱時間を採用することが好ましい。
このように加熱時間は加熱温度との関係で適宜設定すればよいが、加熱処理をあまり長時間行うとゴム(A)が熱劣化することがあるので、加熱処理時間は、耐熱性に優れたフッ素ゴムを使用する場合を除いて実用上96時間までである。
通常、加熱処理時間は1分間〜72時間が好ましく、1分間〜48時間がより好ましく、生産性が良好な点から1分間〜24時間が更に好ましいが、より優れた非粘着性及び低摩擦性を有する成形体を得る観点からは、8時間以上であることが好ましい。
【0154】
また、上記(I)〜(III)の工程を経て製造した成形体は、上記インデンテーション硬さが上述した範囲内となり、上記比率〔X/Y〕が2.0以上となり、また、その表面全体に凸部が形成されることとなる。
本発明の成形体が、その表面に線状の凸部を有する場合、非粘着性及び低摩擦性が必要とされる部分の表面に凸部が形成されていれば、それ以外の表面には凸部がなくてもよい。そして、このような態様の成形体を製造する場合は、例えば、上記(III)の工程を行った後、研磨処理等により不要な部分の凸部を除去すればよい。
【0155】
ところで、従来行われている2次架橋は1次架橋終了時に残存している架橋剤を完全に分解してゴムの架橋を完結し、架橋成形品の機械的特性や圧縮永久ひずみ特性を向上させるために行う処理である。
したがって、含二酸化ケイ素化合物(B)の共存を想定していない従来の2次架橋条件は、その架橋条件が偶発的に熱処理工程の加熱条件と重なるとしても、2次架橋では含二酸化ケイ素化合物(B)の存在を架橋条件設定の要因として考慮せずに未架橋ゴム(a)の架橋の完結(架橋剤の完全分解)という目的の範囲内での加熱条件が採用されているにすぎず、含二酸化ケイ素化合物(B)を配合した場合にゴム架橋物(ゴム未架橋物ではない)中で含二酸化ケイ素化合物(B)を加熱軟化又は溶融する条件を導き出せるものではない。
【0156】
なお、成形架橋工程(II)において、未架橋ゴム(a)の架橋を完結させるため(架橋剤を完全に分解するため)の2次架橋を行ってもよい。
【0157】
また、熱処理工程(III)において、残存する架橋剤の分解が起こり未架橋ゴム(a)の架橋が完結する場合もあるが、熱処理工程(III)におけるかかる未架橋ゴム(a)の架橋はあくまで副次的な効果にすぎない。
【0158】
混合工程(I)、成形架橋工程(II)、及び、熱処理工程(III)を含む製造方法により得られる成形体は、含二酸化ケイ素化合物(B)の表面移行現象によって、成形体の表面に凸部が形成されるとともに、表面領域(凸部内を含む)で含二酸化ケイ素化合物(B)比率が増大した状態になっているものと推定される。
【0159】
なお、含二酸化ケイ素化合物(B)の表面層への移行がスムーズに起こる点から、熱処理工程(III)は150℃以上、好ましくは200℃以上での加熱処理が特に優れている。
【0160】
本発明の成形体は、優れた非粘着性及び低摩擦性を有しているため、自動車産業、航空機産業、半導体産業等の各分野において各種部品として使用することができる。
用いられる分野としては例えば、半導体関連分野、自動車分野、航空機分野、宇宙・ロケット分野、船舶分野、化学プラント等の化学品分野、医薬品等の薬品分野、現像機等の写真分野、印刷機械等の印刷分野、塗装設備等の塗装分野、分析機器、計器等の分析・理化学機械分野、食品プラント機器及び家庭用品を含む食品機器分野、飲料食品製造装置分野、医薬品製造装置分野、医療部品分野、化学薬品輸送用機器分野、原子力プラント機器分野、鉄板加工設備等の鉄鋼分野、一般工業分野、電気分野、燃料電池分野、電子部品分野、光学機器部品分野、宇宙用機器部品分野、石油化学プラント機器分野、石油、ガス等のエネルギー資源探索採掘機器部品分野、石油精製分野、石油輸送機器部品分野などが挙げられる。
【0161】
本発明の成形体の使用形態としては、例えば、リング、パッキン、ガスケット、ダイアフラム、オイルシール、ベアリングシール、リップシール、プランジャーシール、ドアシール、リップ及びフェースシール、ガスデリバリープレートシール、ウエハサポートシール、バレルシール等の各種シール材やパッキンなどが挙げられる。シール材としては、優れた非粘着性及び低摩擦性が要求される用途に用いることができる。
また、チューブ、ホース、ロール、各種ゴムロール、フレキシブルジョイント、ゴム板、コーティング、ベルト、ダンパー、バルブ、バルブシート、バルブの弁体、耐薬品用コーティング材料、ラミネート用材料、ライニング用材料などとしても使用できる。
なお、上記リング、パッキン、シールの断面形状は、種々の形状のものであってよく、具体的には、例えば、四角、O字、へルールなどの形状であってもよいし、D字、L字、T字、V字、X字、Y字などの異形状であってもよい。
【0162】
上記半導体関連分野においては、例えば、半導体製造装置、液晶パネル製造装置、プラズマパネル製造装置、プラズマディスプレイパネル製造装置、プラズマアドレス液晶パネル製造装置、有機ELパネル製造装置、フィールドエミッションディスプレイパネル製造装置、太陽電池基板製造装置、半導体搬送装置等に用いることができる。そのような装置としては、例えば、CVD装置、半導体用ガス制御装置等のガス制御装置、ドライエッチング装置、ウェットエッチング装置、プラズマエッチング装置、反応性イオンエッチング装置、反応性イオンビームエッチング装置、スパッタエッチング装置、イオンビームエッチング装置、酸化拡散装置、スパッタリング装置、アッシング装置、プラズマアッシング装置、洗浄装置、イオン注入装置、プラズマCVD装置、排気装置、露光装置、研磨装置、成膜装置、乾式エッチング洗浄装置、UV/O
3洗浄装置、イオンビーム洗浄装置、レーザービーム洗浄装置、プラズマ洗浄装置、ガスエッチング洗浄装置、抽出洗浄装置、ソックスレー抽出洗浄装置、高温高圧抽出洗浄装置、マイクロウェーブ抽出洗浄装置、超臨界抽出洗浄装置、フッ酸、塩酸、硫酸、オゾン水等を用いる洗浄装置、ステッパー、コータ・デベロッパー、CMP装置、エキシマレーザー露光機、薬液配管、ガス配管、NF
3プラズマ処理、O
2プラズマ処理、フッ素プラズマ処理等のプラズマ処理が行われる装置、熱処理成膜装置、ウエハ搬送機器、ウエハ洗浄装置、シリコンウエハ洗浄装置、シリコンウエハ処理装置、LP−CVD工程に用いられる装置、ランプアニーリング工程に用いられる装置、リフロー工程に用いられる装置などが挙げられる。
【0163】
半導体関連分野における具体的な使用形態としては、例えば、ゲートバルブ、クォーツウィンドウ、チャンバー、チャンバーリット、ゲート、ベルジャー、カップリング、ポンプのO−リングやガスケット等の各種シール材;レジスト現像液や剥離液用のO−リング等の各種シール材、ホースやチューブ;レジスト現像液槽、剥離液槽、ウエハ洗浄液槽、ウェットエッチング槽のライニングやコーティング;ポンプのダイアフラム;ウエハ搬送用のロール;ウエハ洗浄液用のホースチューブ;クリーンルーム等のクリーン設備用シーラントといったクリーン設備用シール材;半導体製造装置やウエハ等のデバイスを保管する保管庫用のシーリング材;半導体を製造する工程で用いられる薬液移送用ダイアフラムなどが挙げられる。
【0164】
上記自動車分野においては、エンジン本体、主運動系、動弁系、潤滑・冷却系、燃料系、吸気・排気系、駆動系のトランスミッション系、シャーシのステアリング系、ブレーキ系や、基本電装部品、制御系電装部品、装備電装部品等の電装部品などに用いることができる。なお、上記自動車分野には、自動二輪車も含まれる。
上述のようなエンジン本体やその周辺装置では、耐熱性、耐油性、燃料油耐性、エンジン冷却用不凍液耐性、耐スチーム性が要求される各種シール材に本発明の成形体を用いることができ、そのようなシール材としては、例えば、ガスケット、シャフトシール、バルブステムシール等のシールや、セルフシールパッキン、ピストンリング、割リング形パッキン、メカニカルシール、オイルシール等の非接触型又は接触型のパッキン類、ベローズ、ダイアフラム、ホース、チューブの他、電線、緩衝材、防振材、ベルトAT装置に用いられる各種シール材などが挙げられる。
【0165】
上記燃料系における具体的な使用形態としては、燃料インジェクター、コールドスタートインジェクター、燃料ラインのクイックコネクター、センダー・フランジ・クイックコネクター、燃料ポンプ、燃料タンク・クイック・コネクター、ガソリン混合ポンプ、ガソリンポンプ、燃料チューブのチューブ本体、燃料チューブのコネクター、インジェクター等に用いられるO−リング;呼気系マニフォールド、燃料フィルター、圧力調整弁、キャニスター、燃料タンクのキャップ、燃料ポンプ、燃料タンク、燃料タンクのセンダーユニット、燃料噴射装置、燃料高圧ポンプ、燃料ラインコネクターシステム、ポンプタイミングコントロールバルブ、サクションコントロールバルブ、ソレノイドサブアッシー、フューエルカットバルブ等に用いられるシール;キャニスタ・パージ・ソレノイド・バルブシール、オンボード・リフューエリング・ベイパー・リカバリー(ORVR)バルブシール、燃料ポンプ用のオイルシール、フューエルセンダーシール、燃料タンクロールオーバー・バルブシール、フィラーシール、インジェクターシール、フィラーキャップシール、フィラーキャップバルブのシール;燃料ホース、燃料供給ホース、燃料リターンホース、ベーパー(エバポ)ホース、ベント(ブリーザー)ホース、フィラーホース、フィラーネックホース、燃料タンク内のホース(インタンクホース)、キャブレターのコントロールホース、フューエルインレットホース、フューエルブリーザホース等のホース;燃料フィルター、燃料ラインコネクターシステム等に用いられるガスケットや、キャブレター等に用いられるフランジガスケット;蒸気回収ライン、フューエルフィードライン、ベーパー・ORVRライン等のライン材;キャニスター、ORVR、燃料ポンプ、燃料タンク圧力センサー、ガソリンポンプ、キャブレターのセンサー、複合空気制御装置(CAC)、パルセーションダンパー、キャニスター用、オートコック等に用いられるダイアフラムや、燃料噴射装置のプレッシャーレギュレーターダイアフラム;燃料ポンプ用のバルブ、キャブレーターニードルバルブ、ロールオーバーチェックバルブ、チェックバルブ類;ベント(ブリーザー)、燃料タンク内に用いられるチューブ;燃料タンク等のタンクパッキン、キャブレターの加速ポンプピストンのパッキン;燃料タンク用のフューエルセンダー防振部品;燃料圧力を制御するためのO−リングや、ダイアフラム;アクセレレータ・ポンプ・カップ;インタンクフューエルポンプマウント;燃料噴射装置のインジェクタークッションリング;インジェクターシールリング;キャブレターのニードルバルブ芯弁;キャブレターの加速ポンプピストン;複合空気制御装置(CAC)のバルブシート;フューエルタンク本体;ソレノイドバルブ用シール部品などが挙げられる。
【0166】
上記ブレーキ系における具体的な使用形態としては、マスターバック、油圧ブレーキホースエアーブレーキ、エアーブレーキのブレーキチャンバー等に用いられるダイアフラム;ブレーキホース、ブレーキオイルホース、バキュームブレーキホース等に用いられるホース;オイルシール、O−リング、パッキン、ブレーキピストンシール等の各種シール材;マスターバック用の大気弁や真空弁、ブレーキバルブ用のチェック弁;マスターシリンダー用のピストンカップ(ゴムカップ)や、ブレーキカップ;油圧ブレーキのマスターシリンダーやバキュームブースター、油圧ブレーキのホイールシリンダー用のブーツ、アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)用のO−リングやグロメットなどが挙げられる。
【0167】
上記基本電装部品における具体的な使用形態としては、電線(ハーネス)の絶縁体やシース、ハーネス外装部品のチューブ、コネクター用のグロメットなどが挙げられる。
制御系電装部品における具体的な使用形態としては、各種センサー線の被覆材料などが挙げられる。
上記装備電装部品における具体的な使用形態としては、カーエアコンのO−リング、パッキンや、クーラーホース、高圧エアコンホース、エアコンホース、電子スロットルユニット用ガスケット、ダイレクトイグニッション用プラグブーツ、ディストリビューター用ダイアフラムなどが挙げられる。また、電装部品の接着にも用いることができる。
【0168】
上記吸気・排気系における具体的な使用形態としては、吸気マニホールド、排気マニホールド等に用いられるパッキンや、スロットルのスロットルボディパッキン;EGR(排気再循環)、押圧コントロール(BPT)、ウエストゲート、ターボウエストゲート、アクチュエーター、バリアブル・タービン・ジオメトリー(VTG)ターボのアクチュエーター、排気浄化バルブ等に用いられるダイアフラム;EGR(排気再循環)のコントロールホース、エミッションコントロールホース、ターボチャージャーのターボオイルホース(供給)、ターボオイルホース(リターン)、ターボエアホース、インタークーラーホース、ターボチャージャーホース、インタークーラーを備えたターボエンジンのコンプレッサーと接続されるホース、排気ガスホース、エアインテークホース、ターボホース、DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)センサーホース等のホース;エアダクトやターボエアダクト;インテークマニホールドガスケット;EGRのシール材、ABバルブのアフターバーン防止バルブシート、(ターボチャージャーなどの)タービンシャフトシールや、自動車のエンジンにおいて使用されるロッカーカバーや空気吸い込みマニホールドなどの溝部品に用いられるシール部材などが挙げられる。
【0169】
その他、排出ガス制御部品において、蒸気回収キャニスター、触媒式転化装置、排出ガスセンサー、酸素センサー等に用いられるシールや、蒸気回収および蒸気キャニスターのソレノイド・アーマチュアのシール;吸気系マニフォールドガスケットなどとして用いることができる。
また、ディーゼルエンジンに関する部品において、直噴インジェクター用のO−リングシール、回転ポンプシール、制御ダイアフラム、燃料ホース、EGR、プライミングポンプ、ブーストコンペンセーターのダイアフラムなどとして用いることができる。また、尿素SCRシステムに用いられるO−リング、シール材、ホース、チューブ、ダイアフラムや、尿素SCRシステムの尿素水タンク本体、および尿素水タンクのシール材などにも用いることができる。
【0170】
上記トランスミッション系における具体的な使用形態としては、トランスミッション関連のベアリングシール、オイルシール、O−リング、パッキン、トルコンホースなどが挙げられる。
ミッションオイルシールや、ATのミッションオイルホース、ATFホース、O−リング、パッキン類なども挙げられる。
なお、トランスミッションには、AT(オートマチック・トランスミッション)、MT(マニュアル・トランスミッション)、CVT(連続可変トランスミッション)、DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)などがある。
また、手動または自動変速機用のオイルシール、ガスケット、O−リング、パッキンや、無段変速機(ベルト式またはトロイダル式)用のオイルシール、ガスケット、O−リング、パッキンの他、ATFリニアソレノイド用パッキング、手動変速機用オイルホース、自動変速機用ATFホース、無断変速機(ベルト式またはトロイダル式)用CVTFホースなども挙げられる。
ステアリング系における具体的な使用形態としては、パワーステアリングオイルホースや高圧パワーステアリングホースなどが挙げられる。
【0171】
自動車エンジンのエンジン本体において用いられる形態としては、例えば、シリンダーヘッドガスケット、シリンダーヘッドカバーガスケット、オイルパンパッキン、一般ガスケットなどのガスケット、O−リング、パッキン、タイミングベルトカバーガスケットなどのシール、コントロールホースなどのホース、エンジンマウントの防振ゴム、コントロールバルブダイアフラム、カムシャフトオイルシールなどが挙げられる。
自動車エンジンの主運動系においては、クランクシャフトシール、カムシャフトシールなどのシャフトシールなどに用いることができる。
自動車エンジンの動弁系においては、エンジンバルブのバルブステムオイルシール、バタフライバルブのバルブシートなどに用いることができる。
自動車エンジンの潤滑・冷却系においては、エンジンオイルクーラーのエンジンオイルクーラーホース、オイルリターンホース、シールガスケットや、ラジエータ周辺のウォーターホース、ラジエータのシール、ラジエータのガスケット、ラジエータのO−リング、バキュームポンプのバキュームポンプオイルホースなどの他、ラジエーターホース、ラジエータータンク、オイルプレッシャー用ダイアフラム、ファンカップリングシールなどに用いることができる。
【0172】
このように、自動車分野における使用の具体例の一例としては、エンジンヘッドガスケット、オイルパンガスケット、マニフォールドパッキン、酸素センサー用シール、酸素センサーブッシュ、酸化窒素(NOx)センサー用シール、酸化窒素(NOx)センサーブッシュ、酸化硫黄センサー用シール、温度センサー用シール、温度センサーブッシュ、ディーゼルパーティクルフィルターセンサー用シール、ディーゼルパーティクルフィルターセンサーブッシュ、インジェクターO−リング、インジェクターパッキン、燃料ポンプのO−リングやダイアフラム、ギアボックスシール、パワーピストンパッキン、シリンダーライナーのシール、バルブステムのシール、スタティックバルブステムシール、ダイナミックバルブステムシール、自動変速機のフロントポンプシール、リアーアクスルピニオンシール、ユニバーサルジョイントのガスケット、スピードメーターのピニオンシール、フートブレーキのピストンカップ、トルク伝達装置のO−リングやオイルシール、排ガス再燃焼装置のシールやベアリングシール、再燃焼装置用ホース、キャブレターのセンサー用ダイアフラム、防振ゴム(エンジンマウント、排気部、マフラーハンガー、サスペンションブッシュ、センターベアリング、ストラットバンパーラバー等)、サスペンション用防振ゴム(ストラットマウント、ブッシュ等)、駆動系防振ゴム(ダンパー等)、燃料ホース、EGRのチューブやホース、ツインキャブチューブ、キャブレターのニードルバルブの芯弁、キャブレターのフランジガスケット、オイルホース、オイルクーラーホース、ATFホース、シリンダーヘッドガスケット、水ポンプシール、ギアボックスシール、ニードルバルブチップ、オートバイ用リードバルブのリード、自動車エンジンのオイルシール、ガソリンホースガンのシール、カーエアコン用シール、エンジンのインタークーラー用ゴムホース、送油経路コネクター装置(fuel line connector systems)のシール、CACバルブ、ニードルチップ、エンジン回り電線、フィラーホース、カーエアコンO−リング、インテークガスケット、燃料タンク材料、ディストリビューター用ダイアフラム、ウォーターホース、クラッチホース、PSホース、ATホース、マスターバックホース、ヒーターホース、エアコンホース、ベンチレーションホース、オイルフィラーキャップ、PSラックシール、ラック&ピニオンブーツ、CVJブーツ、ボールジョイントダストカバー、ストラットダストカバー、ウェザーストリップ、グラスラン、センターユニットパッキン、ボディーサイトウェルト、バンパーラバー、ドアラッチ、ダッシュインシュレーター、ハイテンションコード、平ベルト、ポリVベルト、タイミングベルト、歯付きベルト、Vリブドベルト、タイヤ、ワイパーブレード、LPG車レギュレータ用ダイアフラムやプランジャー、CNG車レギュレータ用ダイアフラムやバルブ、DME対応ゴム部品、オートテンショナのダイアフラムやブーツ、アイドルスピードコントロールのダイアフラムやバルブ、オートスピードコントロールのアクチュエーター,負圧ポンプのダイアフラムやチェックバルブやプランジャー、O.P.S.のダイアフラムやO−リング、ガソリン圧抜きバルブ、エンジンシリンダースリーブのO−リングやガスケット、ウェットシリンダースリーブのO−リングやガスケット、ディファレンシャルギヤのシールやガスケット(ギヤ油のシールやガスケット)、パワーステアリング装置のシールやガスケット(PSFのシールやガスケット)、ショックアブソーバのシールやガスケット(SAFのシールやガスケット)、等速ジョイントのシールやガスケット、ホイール軸受のシールやガスケット、メタルガスケットのコーティング剤、キャリパーシール、ブーツ類、ホイールベアリングシール、タイヤの加硫成形に使用されるブラダーなどが挙げられる。
【0173】
上記航空機分野、宇宙・ロケット分野、船舶分野においては、特に燃料系統や潤滑油系統に用いることができる。
上記航空機分野においては、例えば、航空機用各種シール部品、航空機用エンジンオイル用途の航空機用各種部品、ジェットエンジンバルブステムシールやガスケットやO−リング、ローテーティングシャフトシール、油圧機器のガスケット、防火壁シール、燃料供給用ホースやガスケットやO−リング、航空機用ケーブルやオイルシールやシャフトシールなどとして用いることが可能である。
【0174】
上記宇宙・ロケット分野においては、例えば、宇宙船、ジェットエンジン、ミサイル等のリップシール、ダイアフラム、O−リングや、耐ガスタービンエンジン用オイルのO−リング、ミサイル地上制御用防振台パッドなどとして用いることができる。
また、船舶分野においては、例えば、スクリューのプロペラシャフト船尾シール、ディーゼルエンジンの吸排気用バルブステムシール、バタフライバルブのバルブシール、バタフライバルブのバルブシートや軸シール、バタフライ弁の軸シール、船尾管シール、燃料ホース、ガスケット、エンジン用のO−リング、船舶用ケーブル、船舶用オイルシール、船舶用シャフトシールなどとして使用することができる。
【0175】
上記化学プラント等の化学品分野、医薬品等の薬品分野においては、高度の耐薬品性が要求されるような工程、例えば、医薬品、農薬、塗料、樹脂等の化学品を製造する工程に用いることができる。
上記化学品分野及び薬品分野における具体的な使用形態としては、化学装置、化学薬品用ポンプや流量計、化学薬品用配管、熱交換器、農薬散布機、農薬移送ポンプ、ガス配管、燃料電池、分析機器や理化学機器(例えば、分析機器や計器類のカラム・フィッティングなど)、排煙脱硫装置の収縮継ぎ手、硝酸プラント、発電所タービン等に用いられるシールや、医療用滅菌プロセスに用いられるシール、メッキ液用シール、製紙用ベルトのコロシール、風洞のジョイントシール;反応機、攪拌機等の化学装置、分析機器や計器類、ケミカルポンプ、ポンプハウジング、バルブ、回転計等に用いられるO−リングや、メカニカルシール用O−リング、コンプレッサーシーリング用のO−リング;高温真空乾燥機、ガスクロマトグラフィーやpHメーターのチューブ結合部等に用いられるパッキンや、硫酸製造装置のガラス冷却器パッキン;ダイアフラムポンプ、分析機器や理化学機器等に用いられるダイアフラム;分析機器、計器類に用いられるガスケット;分析機器や計器類に用いられるはめ輪(フェルール);バルブシート;Uカップ;化学装置、ガソリンタンク、風洞等に用いられるライニングや、アルマイト加工槽の耐食ライニング;メッキ用マスキング冶具のコーティング;分析機器や理化学機器の弁部品;排煙脱硫プラントのエキスパンジョンジョイント;濃硫酸等に対する耐酸ホース、塩素ガス移送ホース、耐油ホース、ベンゼンやトルエン貯槽の雨水ドレンホース;分析機器や理化学機器等に用いられる耐薬品性チューブや医療用チューブ;繊維染色用の耐トリクレン用ロールや染色用ロール;医薬品の薬栓;医療用のゴム栓;薬液ボトル、薬液タンク、バッグ、薬品容器;耐強酸、耐溶剤の手袋や長靴等の保護具などが挙げられる。
【0176】
上記現像機等の写真分野、印刷機械等の印刷分野、塗装設備等の塗装分野においては、乾式複写機のロール、ベルト、シール、弁部品等として用いることができる。
上記写真分野、印刷分野及び塗装分野における具体的な使用形態としては、複写機の転写ロールの表面層、複写機のクリーニングブレード、複写機のベルト;複写機、プリンター、ファクシミリ等のOA機器用のロール(例えば、定着ロール、圧着ロール、加圧ロールなどが挙げられる。)、ベルト;PPC複写機のロール、ロールブレード、ベルト;フィルム現像機、X線フィルム現像機のロール;印刷機械の印刷ロール、スクレーパー、チューブ、弁部品、ベルト;プリンターのインキチューブ、ロール、ベルト;塗布、塗装設備の塗装ロール、スクレーパー、チューブ、弁部品;現像ロール、グラビアロール、ガイドロール、磁気テープ製造塗工ラインのガイドロール、磁気テープ製造塗工ラインのグラビアロール、コーティングロールなどが挙げられる。
【0177】
上記食品プラント機器及び家庭用品を含む食品機器分野においては、食品製造工程や、食品移送器用または食品貯蔵器用に用いることができる。
上記食品機器分野における具体的な使用形態としては、プレート式熱交換器のシール、自動販売機の電磁弁シール、ジャーポットのパッキン、サニタリーパイプパッキン、圧力鍋のパッキン、湯沸器シール、熱交換器用ガスケット、食品加工処理装置用のダイアフラムやパッキン、食品加工処理機用ゴム材料(例えば、熱交換器ガスケット、ダイアフラム、O−リング等の各種シール、配管、ホース、サニタリーパッキン、バルブパッキン、充填時にビンなどの口と充填剤との間のジョイントとして使用される充填用パッキン)などが挙げられる。また、酒類、清涼飲料水等の製品、充填装置、食品殺菌装置、醸造装置、湯沸し器、各種自動食品販売機等に用いられるパッキン、ガスケット、チューブ、ダイアフラム、ホース、ジョイントスリーブなども挙げられる。
【0178】
上記原子力プラント機器分野においては、原子炉周辺の逆止弁や減圧弁、六フッ化ウランの濃縮装置のシールなどに用いることができる。
【0179】
上記一般工業分野における具体的な使用形態としては、工作機械、建設機械、油圧機械等の油圧機器用シール材;油圧、潤滑機械のシールやベアリングシール;マンドレル等に用いられるシール材;ドライクリーニング機器の窓等に用いられるシール;サイクロトロンのシールや(真空)バルブシール、プロトン加速器のシール、自動包装機のシール、空気中の亜硫酸ガスや塩素ガス分析装置(公害測定器)用ポンプのダイアフラム、スネークポンプライニング、印刷機のロールやベルト、搬送用のベルト(コンベアベルト)、鉄板等の酸洗い用絞りロール、ロボットのケーブル、アルミ圧延ライン等の溶剤絞りロール、カプラーのO−リング、耐酸クッション材、切削加工機械の摺動部分のダストシールやリップゴム、生ごみ焼却処理機のガスケット、摩擦材、金属またはゴムの被覆材などが挙げられる。また、製紙プロセスで用いられる装置のガスケットやシール材、クリーンルーム用フィルターユニットのシーリング剤、建築用シーリング剤、小型発電機や芝刈機等の燃料容器、金属板にプライマー処理を施すことによって得られるプレコートメタルなどとしても使用することができる。
【0180】
上記鉄鋼分野における具体的な使用形態としては、鉄板加工設備の鉄板加工ロールなどが挙げられる。
【0181】
上記電気分野における具体的な使用形態としては、新幹線の絶縁油キャップ、液封型トランスのベンチングシール、変圧器のシール、油井ケーブルのジャケット、電気炉等のオーブンのシール、電子レンジの窓枠シール、CRTのウェッジとネックとを接着させる際に用いられるシール材、ハロゲンランプのシール材、電気部品の固定剤、シーズヒーターの末端処理用シール材、電気機器リード線端子の絶縁防湿処理に用いられるシール材などが挙げられる。また、耐油・耐熱電線、高耐熱性電線、耐薬品性電線、高絶縁性電線、高圧送電線、ケーブル、地熱発電装置に用いられる電線、自動車エンジン周辺に用いられる電線等の被覆材に用いることもできる。車両用ケーブルのオイルシールやシャフトシールに用いることもできる。更には、電気絶縁材料(例えば、各種電気機器の絶縁用スペーサ、ケーブルのジョイントや末端部などに用いる絶縁テープ、熱収縮性のチューブなどに使用される材料)や、高温雰囲気で用いられる電気および電子機器材料(例えば、モータ用口出線材料、高熱炉まわりの電線材料)にも使用可能である。
【0182】
上記燃料電池分野においては、固体高分子形燃料電池、リン酸塩型燃料電池等における、電極間、電極−セパレーター間のシール材や、水素、酸素、生成水等の配管のシールやパッキン、セパレーターなどとして用いることができる。
【0183】
上記電子部品分野においては、放熱材原料、電磁波シールド材原料、コンピュータのハードディスクドライブ(磁気記録装置)用のガスケット等に用いることができる。また、ハードディスクドライブの緩衝ゴム(クラッシュストッパー)、シーリング剤、光ファイバーの石英の被覆材、光ファイバー被覆材等のフィルムやシート類、電子部品、電球等の飛散防止材、コンピュータ用ガスケット、大型コンピュータ冷却ホース、二次電池、特にリチウム二次電池用のガスケットやO−リング等のパッキン、コネクター、ダンパーなどとしても用いられる。
【0184】
上記化学薬品輸送用機器分野においては、トラック、トレーラー、タンクローリー、船舶等の安全弁や積出しバルブなどに用いることができる。
【0185】
上記石油、ガス等のエネルギー資源探索採掘機器部品分野においては、石油、天然ガス等の採掘の際に用いられる各種シール材、油井に使われる電気コネクターのブーツなどとして用いられる。
上記エネルギー資源探索採掘機器部品分野における具体的な使用形態としては、ドリルビットシール、圧力調整ダイアフラム、水平掘削モーター(ステーター)のシール、ステーターベアリング(シャフト)シール、暴噴防止装置(BOP)に用いられるシール材、回転暴噴防止装置(パイプワイパー)に用いられるシール材、MWD(リアルタイム掘削情報探知システム)に用いられるシール材や気液コネクター、検層装置(ロギングエクイップメント)に用いられる検層ツールシール(例えば、O−リング、シール、パッキン、気液コネクター、ブーツなど)、膨張型パッカーやコンプリーションパッカー及びそれらに用いるパッカーシール、セメンチング装置に用いられるシールやパッキン、パーフォレーター(穿孔装置)に用いられるシール、マッドポンプに用いられるシールやパッキンやモーターライニング、地中聴検器カバー、Uカップ、コンポジションシーティングカップ、回転シール、ラミネートエラストメリックベアリング、流量制御のシール、砂量制御のシール、安全弁のシール、水圧破砕装置(フラクチャリングエクイップメント)のシール、リニアーパッカーやリニアーハンガーのシールやパッキン、ウェルヘッドのシールやパッキン、チョークやバルブのシールやパッキン、LWD(掘削中検層)用シール材、石油探索・石油掘削用途で用いられるダイアフラム(例えば、石油掘削ピットなどの潤滑油供給用ダイアフラム)、ゲートバルブ、電子ブーツ、穿孔ガンのシールエレメントなどが挙げられる。
【0186】
その他、厨房、浴室、洗面所等の目地シール;屋外テントの引き布;印材用のシール;ガスヒートポンプ用ゴムホース、耐フロン性ゴムホース;農業用のフィルム、ライニング、耐候性カバー;建築や家電分野等で使用されるラミネート鋼板等のタンク類などにも用いることができる。
【0187】
更には、アルミ等の金属と結合させた物品として使用することも可能である。そのような使用形態としては、例えば、ドアシール、ゲートバルブ、振り子バルブ、ソレノイド先端の他、金属と結合されたピストンシールやダイアフラム、金属ガスケット等の金属と結合された金属ゴム部品などが挙げられる。
また、自転車におけるゴム部品、ブレーキシュー、ブレーキパッドなどにも用いることができる。
【0188】
また、本発明の成形体の形態の1つとしてベルトが挙げられる。このようなベルトも本発明の1つである。
上記ベルトとしては、次のものが例示される。動力伝達ベルト(平ベルト、Vベルト、Vリブドベルト、歯付きベルトなどを含む)、搬送用ベルト(コンベアベルト)として、農業用機械、工作機械、工業用機械等のエンジン周りなど各種高温となる部位に使用される平ベルト;石炭、砕石、土砂、鉱石、木材チップなどのバラ物や粒状物を高温環境下で搬送するためのコンベアベルト;高炉等の製鉄所などで使用されるコンベアベルト;精密機器組立工場、食品工場等において、高温環境下に曝される用途におけるコンベアベルト;農業用機械、一般機器(例えば、OA機器、印刷機械、業務用乾燥機等)、自動車用などのVベルトやVリブドベルト;搬送ロボットの伝動ベルト;食品機械、工作機械の伝動ベルトなどの歯付きベルト;自動車用、OA機器、医療用、印刷機械などで使用される歯付きベルトなどが挙げられる。
特に、自動車用歯付きベルトとしては、タイミングベルトが代表的である。
【0189】
上記ベルトは、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。
多層構造である場合、本発明のベルトは、上記成形体からなる層及び他の材料からなる層からなるものであってもよい。
多層構造のベルトにおいて、他の材料からなる層としては、他のゴムからなる層や熱可塑性樹脂からなる層、各種繊維補強層、帆布、金属箔層などが挙げられる。
【0190】
本発明の成形体はまた、産業用防振パッド、防振マット、鉄道用スラブマット、パッド類、自動車用防振ゴムなどに使用できる。自動車用防振ゴムとしては、エンジンマウント用、モーターマウント用、メンバマウント用、ストラットマウント用、ブッシュ用、ダンパー用、マフラーハンガー用、センターベアリング用などの防振ゴムが挙げられる。
【0191】
また、他の使用形態として、フレキシブルジョイント、エキスパンションジョイント等のジョイント部材、ブーツ、グロメットなどが挙げられる。船舶分野であれば、例えばマリンポンプ等が挙げられる。
ジョイント部材とは、配管および配管設備に用いられる継ぎ手のことであり、配管系統から発生する振動、騒音の防止、温度変化、圧力変化による伸縮や変位の吸収、寸法変動の吸収や地震、地盤沈下による影響の緩和、防止などの用途に用いられる。
フレキシブルジョイント、エキスパンションジョイントは、例えば、造船配管用、ポンプやコンプレッサーなどの機械配管用、化学プラント配管用、電気配管用、土木・水道配管用、自動車用などの複雑形状成形体として好ましく用いることができる。
ブーツは、例えば、等速ジョイントブーツ、ダストカバー、ラックアンドピニオンステアリングブーツ、ピンブーツ、ピストンブーツなどの自動車用ブーツ、農業機械用ブーツ、産業車両用ブーツ、建築機械用ブーツ、油圧機械用ブーツ、空圧機械用ブーツ、集中潤滑機用ブーツ、液体移送用ブーツ、消防用ブーツ、各種液化ガス移送用ブーツなどの各種産業用ブーツなどの複雑形状成形体として好ましく用いることができる。
【0192】
本発明の成形体は、フィルタープレス用ダイアフラム、ブロワー用ダイアフラム、給水用ダイアフラム、液体貯蔵タンク用ダイアフラム、圧力スイッチ用ダイアフラム、アキュムレーター用ダイアフラム、サスペンション等の空気ばね用ダイアフラムなどにも使用できる。
【0193】
また、本発明の成形体は、例えば、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等による化粧合板、プリント基板、電気絶縁板、硬質ポリ塩化ビニル積層板等を製造する際の熱プレス成形用クッション材としても用いることができる。
【0194】
本発明の成形体は、その他、兵器関連の封止ガスケット、侵襲性化学剤との接触に対する保護衣服のような各種支持体の不浸透性化に寄与することもできる。
【0195】
また、自動車、船舶などの輸送機関などに使われるアミン系添加剤(特に酸化防止剤、清浄分散剤として用いられるアミン系添加剤)が含まれる潤滑油(エンジンオイル、ミッションオイル、ギヤーオイルなど)や燃料油、グリース(特にウレア系グリース)をシール、封止するために使われるO(角)−リング、V−リング、X−リング、パッキン、ガスケット、ダイアフラム、オイルシール、ベアリングシール、リップシール、プランジャーシール、ドアシール、リップおよびフェースシール、ガスデリバリープレートシール、ウエハサポートシール、バレルシールその他の各種シール材等に用いることができ、チューブ、ホース、各種ゴムロール、コーティング、ベルト、バルブの弁体などとしても使用できる。また、ラミネート用材料、ライニング用材料としても使用できる。
【0196】
自動車等の内燃機関のトランスミッション油及び/又はエンジン油に接触しその油温及び/又は油圧を検出するセンサーのリード電線などに使用される耐熱耐油性電線の被覆材料や、オートマチック・トランスミッションやエンジンのオイルパン内等の高温油雰囲気中においても使用することが可能である。
【0197】
その他、本発明の成形体に加硫被膜を形成させて使用する場合がある。具体的には、複写機用非粘着耐油ロール、耐候結氷防止用ウェザーストリップ、輸液用ゴム栓、バイアルゴム栓、離型剤、非粘着軽搬送ベルト、自動車エンジンマウントのプレーガスケットの粘着防止被膜、合成繊維の被覆加工、パッキング被覆薄層をもつボルト部材または継ぎ手等の用途が挙げられる。
【0198】
なお、本発明の成形体の自動車関連部品用途については、同様の構造の自動二輪車の部品用途も含まれる。
また、上記自動車関連における燃料としては、軽油、ガソリン、ディーゼルエンジン用燃料(バイオディーゼルフューエルを含む)などが挙げられる。
本発明の成形体は、中でも、シール材、摺動部材または非粘着性部材として特に好適である。
【実施例】
【0199】
つぎに実施例を掲げて本発明を説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0200】
本明細書における各種の特性については、つぎの方法で測定した。
【0201】
(1)動摩擦係数
レスカ社製フリクションプレーヤーFPR2000で、加重20g、回転モード、回転数120rpm、回転半径10mmで測定を行い、回転後5分以上経過した後、安定した際の摩擦係数を読み取り、その数値を動摩擦係数とした。
【0202】
(2)非粘着性(タック値)
レスカ社製タッキング試験機(TAC−II)を用いて、表面温度を40℃にした成形シートに下記条件でコントロールされた測定プローブ(円柱型φ5.0mm、SUS304)を押付け、引き離す過程での粘着力を測定した。
・進入速度 120mm/分
・加圧力 500gf
・加圧時間 10秒
・引き離し速度 600mm/分
【0203】
(3)凸部の形状
キーエンス社製、カラー3Dレーザー顕微鏡(VK−9700)を用いて、成形品表面の任意の領域(200μm×280μm)を観察し、線状の凸部の有無を確認した。
【0204】
(4)赤外分光法(IR)分析
サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製のフーリエ変換赤外分光装置(FT−IR NICOLET6700)を用いて、成形体表面及び内部の各々任意の領域に赤外光を照射し、反射光(或いは透過光)を分光することで得られたスペクトルの内、吸収位置1097cm
−1の強度と、吸収位置1395cm
−1の強度を測定し、強度比X及びY(吸収位置1097cm
−1の強度)/(吸収位置1395cm
−1の強度)を算出した(Xは、成形体表面を測定した時の強度比であり、Yは成形体内部を測定した時の強度比である)。
成形体内部のIR分析は、得られた成形体をカッター等で切断して得られた試験片の内部の断面を用いて行った。
【0205】
(5)ショアA硬度
JISK6253に準拠して測定した。数値はピーク値を用いた。
【0206】
(6)インデンテーション硬さ
超微小押し込み硬さ試験機(ENT−2100、エリオニクス社製)を使用して、以下の測定条件で測定した。
負荷分割数:500
負荷ステップ間隔:20[msec]
最大荷重保持時間:5000[msec]
最大保持時測定数:250
除荷開始荷重:10[uN]
除荷終了荷重:0[uN]
除荷分割数:500
除荷ステップ間隔:20[msec]
【0207】
また、表1及び明細書中の使用材料は、それぞれ次に示すものである。
【0208】
フッ素ゴム(A1)
ダイキン工業(株)製(2元架橋性フッ素ゴム、VdF/HFP共重合体、フッ素含有率66質量%)
フッ素ゴム(A2)
ダイキン工業(株)製(2元フッ素ゴムディスパージョン、VdF/HFP共重合体、フッ素含有率66質量%)
【0209】
フッ素樹脂
FEP(TFE/HFP共重合体)水性ディスパージョン(固形分濃度21質量%、融点215℃)(フッ素樹脂ディスパージョン(FEP水性ディスパージョン)(B1))
【0210】
充填剤
カーボンブラック(N990)
【0211】
架橋剤
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)パーフルオロプロパン
【0212】
架橋促進剤
N−8−ベンジル−1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムクロライド
【0213】
受酸剤
酸化マグネシウム(高活性)
酸化マグネシウム(低活性)
水酸化カルシウム
【0214】
含二酸化ケイ素化合物
シリカ
メタケイ酸ナトリウム九水和物
1号ケイ酸ナトリウム
1号ケイ酸カリウム
【0215】
実施例1
フッ素ゴムに表1に示す所定の配合物をオープンロールにて混合し、架橋性組成物(フッ素ゴム組成物)とした。
その後、成形金型内で成形し、架橋成形品を得た。得られた架橋成形品を230℃に維持された加熱炉中に24時間入れ、加熱処理を施し成形体を得た。実施例1で得られた成形体の表面をレーザー顕微鏡で観察した3D画像を
図5に示す。
【0216】
実施例2〜9及び比較例1〜10
表1又は表2に示す配合量としたこと以外は、実施例1と同様の方法で架橋性組成物、架橋成形品、及び、加熱処理を施した成形体を得た。実施例2〜6及び比較例1〜8で得られた成形体の表面を例としてレーザー顕微鏡で観察した3D画像を
図6〜18に示す。
【0217】
実施例10〜12
真空乳化装置内に、水2000ccと硫酸アルミニウム12gをあらかじめ混合した水溶液に、FEP水性ディスパージョン(B1)とフッ素ゴム(A2)のディスパージョンとを、固形分が表1に示す質量比となるようにあらかじめ混合した溶液810gを投入し、4000rpmで3分間混合し、共凝析した。共凝析後、固形分を取り出し、乾燥炉で100℃、24時間乾燥させた。
共凝析物に、表1に示す所定の配合物をオープンロールにて混合し、架橋性組成物(フッ素ゴム組成物)とした。
その後、成形金型内で成形し、架橋成形品を得た。得られた架橋成形品を250℃に維持された加熱炉中に24時間入れ、加熱処理を施し成形体を得た。実施例10及び11で得られた成形体の表面をレーザー顕微鏡で観察した3D画像を
図20及び21に示す。
【0218】
【表1】
【0219】
【表2】