(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
【0014】
(セルロースアシレートの製造方法)
本実施形態に係るセルロースアシレートの製造方法は、硫酸の存在下でセルロースをアシル化するアシル化工程と、塩酸の存在下で前記アシル化したセルロースを脱アシル化する脱アシル化工程と、前記脱アシル化したセルロースを、前記脱アシル化したセルロースの全質量に対して5倍の質量の水に分散することにより調製した水分散液の電導度が50μS以下となるまで、前記脱アシル化したセルロースを洗浄する洗浄工程と、前記洗浄後の脱アシル化したセルロースに対して、下記式1を満たすように、カルシウム有機酸塩、マグネシウム有機酸塩及びナトリウム有機酸塩よりなる群から選ばれた、少なくとも1種の化合物を添加する安定化工程と、を有する。
式1:0.5≦([M1]/2)+[M2]≦5.0
M1:100質量部の洗浄後の脱アシル化したセルロースに対する前記ナトリウム有機酸塩に含まれるナトリウム質量分
M2:100質量部の洗浄後の脱アシル化したセルロースに対する前記カルシウム有機酸塩、及び、マグネシウム有機酸塩に含まれるカルシウム質量分とマグネシウム質量分の合計量
【0015】
ここで、従来、セルロースをアシル化するとき、一般的に触媒(以下「アシル化触媒」とも称する)として硫酸が用いられている。
しかし、得られるセルロースアシレート(アシル化セルロース)を含む樹脂組成物を加熱して成形(例えば、射出成型等)した場合に、得られる樹脂成形体に着色が起こる場合がある。
これは、前記触媒として使用された硫酸が、前記樹脂組成物内に残留すると、加熱する成形時に硫酸によるセルロースアシレートの分解が引き起こされるためである。
よって、上記着色を抑制するため、塩基性塩を加えて硫酸イオンを中和する。
しかし、上記塩基性塩の添加により、前記セルロースアシレートや前記樹脂組成物内にカルシウムイオン、マグネシウムイオン、又は、ナトリウムイオンが残留することによっても、上記着色が引き起こされる。
【0016】
それに対して、本実施形態に係るセルロースアシレートの製造方法によれば、得られるセルロースアシレートを含む樹脂組成物を加熱して成形したときに生じる、樹脂成形体の着色が抑制されたセルロースアシレートの製造が実現される。
その理由は、次の通り推測される。
従来の脱アシル化を行う工程において硫酸を用いる方法と比較して、脱アシル化工程における脱アシル化において塩酸を使用すること、及び、前記脱アシル化したセルロースの全質量に対して5倍の質量の水に分散することにより調製した水分散液の電導度が50μS以下となるまで、前記脱アシル化したセルロースを洗浄するにより、残留する遊離硫酸量が減少するため、得られるセルロースアシレートを含む樹脂組成物を加熱して成形したときに生じる、樹脂成形体の着色が抑制されたセルロースアシレートの製造が実現される。
更に、安定化工程において、硫酸の中和を行うことにより、残留するエステル化した硫酸が更に減少し、かつ、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、及び、ナトリウムイオンの残留量が減少するため、得られるセルロースアシレートを含む樹脂組成物を加熱して成形したときに生じる、樹脂成形体の着色が抑制されたセルロースアシレートの製造が実現される。
【0017】
以下、本実施形態に係るセルロースアシレートの製造方法の詳細について説明する。
【0018】
<第1実施形態>
第1実施形態に係るセルロースアシレートの製造方法は、例えば、
硫酸の存在下でセルロースをアシル化するアシル化工程(以下「第1アシル化工程」とも称する)と、塩酸の存在下で前記アシル化したセルロースを脱アシル化する脱アシル化工程(以下「第1脱アシル化工程」とも称する)と、前記脱アシル化したセルロースの全質量に対して5倍の質量の水に分散することにより調製した水分散液の電導度が50μS以下となるまで、前記脱アシル化したセルロースを洗浄する洗浄工程(以下「第1洗浄工程」とも称する)と、前記洗浄後の脱アシル化したセルロースに対して、下記式1を満たすように、カルシウム有機酸塩、マグネシウム有機酸塩及びナトリウム有機酸塩よりなる群から選ばれた、少なくとも1種の化合物を添加する安定化工程(以下「第1安定化工程」とも称する)と、を有し、
前記脱アシル化工程において、前記アシル化したセルロースの解重合を行う。
式1:0.5≦([M1]/2)+[M2]≦5.0
M1:100質量部の洗浄後の脱アシル化したセルロースに対する前記ナトリウム有機酸塩に含まれるナトリウム質量分
M2:100質量部の洗浄後の脱アシル化したセルロースに対する前記カルシウム有機酸塩、及び、マグネシウム有機酸塩に含まれるカルシウム質量分とマグネシウム質量分の合計量
【0019】
第1実施形態に係るセルロースアシレートの製造方法によれば、得られるセルロースアシレートを含む樹脂組成物を加熱して成形したときに生じる、樹脂成形体の着色が抑制され、かつ、分子量分布が狭いセルロースアシレートが得られる。
分子量分布が狭いセルロースアシレートが得られる詳細な理由は不明であるが、塩酸の存在下で、脱アシル化(加水分解又はケン化)及び解重合を行うと、これら反応が均質化して進行するものと考えられる。これにより、分子量分布の広がりが抑えられ、分子量分布が狭いセルロースアシレートが得られると推測される。
【0020】
〔第1アシル化工程〕
第1アシル化工程では、硫酸の存在下でセルロースをアシル化する。
具体的には、第1アシル化工程では、例えば、硫酸、アシル化剤、及びアシル化溶媒を含む溶液にセルロースを浸漬又は分散させた状態で、撹拌しながら、セルロースをアシル化する。なお、硫酸、アシル化剤、及びアシル化溶媒を含む溶液にセルロースを浸漬又は分散させてもよいし、アシル化溶媒にセルロースを浸漬又は分散させた溶液に、硫酸及びアシル化剤を添加してもよい。
【0021】
−セルロース−
アシル化の対象となるセルロースとしては、高分子量のセルロース(例えば重合度1,000以上1万以下のセルロース)である。高分子量のセルロースとしては、例えば、木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ)、コットンリンターパルプ等の種々の原料セルロースを使用する。また、高分子量のセルロースとしては、市販のセルロースを使用してもよい。高分子量のセルロースの市販品としては、例えば、日本製紙社製のKCフロックW50、W100、W200、W300G、W400G、W−100F、W60MG、W−50GK、W−100GK、NDPT、NDPS、LNDP、NSPP−HR等が挙げられる。
なお、アシル化の対象となるセルロースには、通常、原料(パルプ)を由来とするヘミセルロース等の異成分も含むことがある。このため、本願明細書では、用語「セルロース」は、ヘミセルロース等の異成分を含むことも意味する。
【0022】
アシル化の対象となるセルロースには、活性化処理を施してもよい。活性化処理は、例えば、水を含む活性化剤を用いて、セルロースを処理する方法(活性化剤をセルロースに噴霧する方法、セルロースを活性化剤に浸漬する方法等)である。活性化剤はアシル化溶媒を使用してもよい。具体的には、活性化処理としては、1)セルロースと水とを混合し、セルロースを濾過した後、セルロースとアシル化溶媒とを混合し、セルロースを濾過する方法、2)水及びセルロースの混合液(例えば水量が0超え50質量%以下の混合液)とセルロースとを混合し、セルロースを濾過する方法等が挙げられる。
【0023】
なお、活性化処理の温度は、例えば、0℃以上100℃以下(好ましくは10℃以上40℃以下)である。
活性化処理の時間(2回処理するときは合計の時間)は、例えば、0.1時間以上20時間以下(好ましくは1時間以上15時間以下)である。
【0024】
−アシル化触媒−
アシル化触媒としては、硫酸が適用される。アシル化触媒としては、その他、蟻酸、硝酸、塩酸などを併用してもよい。
【0025】
アシル化触媒としての硫酸量は、樹脂成形体の着色抑制の観点から、セルロースに対する質量比で、1質量%以上20質量%以下が好ましく、4質量%以上12質量%以下がより好ましい。
【0026】
−アシル化剤−
アシル化剤としては、アシル基を有する化合物が挙げられる。具体的には、アシル化剤としては、アルキルカルボン酸無水物(例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水吉草酸等の直鎖状又は分岐鎖状で炭素数2以上6以下のアルキルカルボン酸無水物)、有機酸ハライド(例えば、酢酸クロライド、プロピオン酸クロライド、酪酸クロライド等)が好適に挙げられる。ただし、通常、アシル化剤としては、アルキルカルボン酸無水物を使用する。
アシル化剤としては、アシル化で得たいセルロースアシレートの種類に応じて選択される。例えば、セルロースアセテートを得る場合は、アシル化剤として無水酢酸を適用する。また、セルロースアセテートプロピオネートを得る場合は、アシル化剤として、無水酢酸および無水プロピオン酸の2種を適用する。
なお、アシル化剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0027】
アシル化剤量は、アシル化で得たいセルロースアシレートの置換度に応じて選択される。通常、第1アシル化工程では、置換度3のセルロースアシレート(セルローストリアシレート)を得ることが多い。この場合、アシル化剤量は、セルロースの水酸基に対するモル比で、1倍以上5倍以下が好ましく、1.5倍以上4倍以下がより好ましい。
【0028】
−アシル化溶媒−
アシル化溶媒としては、アルキルカルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸等の直鎖状又は分岐鎖状で炭素数1以上6以下のアルキルカルボン酸)が好適に挙げられる。
これらの中でも、樹脂成形体の着色抑制の観点から、アシル化溶媒としては、ギ酸、酢酸が好ましく、酢酸が特に好ましい。
なお、アシル化剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0029】
アシル化溶媒量は、反応性を高め、後の溶媒除去工程を簡素化する観点から、セルロースに対する質量比で、3倍以上20倍以下が好ましく、5倍以上15倍以下がより好ましい
【0030】
アシル化溶媒は、アルキルカルボン酸と共に水も併用してもよい。ただし、水量は、アルキルカルボン酸に対して50質量%以下とする。
【0031】
−第1アシル化工程の条件−
第1アシル化工程の好適な条件としては、例えば、次の通りである。
温度:例えば、10℃以上80℃以下(好ましくは15℃以上40℃以下)
時間:例えば、1時間以上12時間以下(好ましくは2時間以上8時間以下)である。
【0032】
〔第1脱アシル化工程〕
第1脱アシル化工程では、塩酸の存在下で、アシル化したセルロース(以下「一次セルロースアシレート」とも称する)を脱アシル化及び解重合する。第1脱アシル化工程は、脱アシル化(加水分解又はケン化)により、一次セルロースアシレートの置換度を調整すると共に、解重合により一次セルロースアシレートの低分子量化を行い、目的とする置換度及び重合度のセルロースアシレート(以下「二次セルロースアシレート」とも称する)を得る工程である。
【0033】
具体的には、第1脱アシル化工程では、例えば、第1アシル化工程を経た溶液(一次セルロースアシレート、アシル化触媒、アシル化剤、及びアシル化溶媒を含む溶液)に、塩酸水溶液を加えた後、撹拌する。つまり、生産性の観点から、第1アシル化工程と第1脱アシル化工程とは、同じ容器内で連続して実施することがよい。
【0034】
−失活剤−
なお、塩酸水溶液を加える前に、残存したアシル化剤を失活させるため、水、または、水とアシル化溶媒(アルキルカルボン酸)及び中和剤から選択された少なくとも一種とを含む混合液等の失活剤を溶液に加えることよい。
中和剤としては、アルカリ金属化合物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機酸塩など)、アルカリ土類金属化合物(水酸化カルシウム等の水酸化物;炭酸カルシウム等の炭酸塩;酢酸カルシウム等の有機酸塩など)などの塩基が挙げられる。
【0035】
−塩酸−
第1脱アシル化工程において、塩酸量は、樹脂成形体の着色抑制の観点から、一次セルロースアシレート(第1アシル化工程でアシル化したセルロース)に対する質量比で、0.5質量%以上5質量%以下が好ましく、1質量%以上3質量%以下がより好ましい。
なお、アシル化工程と脱アシル化工程とを同じ容器内で連続して実施する場合は、仕込んだセルロースが全て置換度3のトリアシレートになっていると仮定して一次セルロースアシレートの質量を算出する。
【0036】
−第1脱アシル化工程の条件−
第1脱アシル化工程の好適な条件としては、得たい二次セルロースアシレートの置換度及び重合度に応じて選択されるが、例えば、次の通りである。
温度:例えば、40℃以上100℃以下(好ましくは50℃以上90℃以下)
時間:例えば、 1 時間以上15時間以下(好ましくは2時間以上12時間以下)である。
【0037】
なお、第1脱アシル化工程は、第1アシル化工程後、例えば、一次セルロースアシレートを析出及び濾過して得た(必要に応じて、洗浄、乾燥等も実施して得た)、粉末状の一次セルロースアシレートを使用してもよい。ここで、一次セルロースアシレートの析出は、例えば、一次セルロースアシレートを含む溶液と多量の水とを混合することで実施する。
この場合、第1脱アシル化工程では、塩酸、及び脱アシル化溶媒(アシル化溶媒と同じ溶媒、具体的には、アルキルカルボン酸、又はアルキルカルボン酸及び水の混合溶媒)を含む溶液に粉末状の一次セルロースアシレートを溶解させた状態で、一次セルロースアシレートを脱アシル化及び解重合する。なお、塩酸及び溶媒を含む溶液に粉末状の一次セルロースアシレートを溶解させてもよいし、溶媒に粉末状の一次セルロースアシレートを溶解させた溶液に、塩酸水溶液を添加してもよい。
【0038】
〔第1洗浄工程〕
第1洗浄工程においては、前記脱アシル化したセルロースの全質量に対して5倍の質量の水に分散することにより調製した水分散液の電導度が50μS以下となるまで、二次セルロースアシレートを洗浄する。
第1洗浄工程は、硫酸、アシル化剤、及び、塩酸を除く工程である。
洗浄方法としては、特に制限はなく、公知の方法により洗浄してもよく、例えば、前記第1アシル化工程の終了後に水を用いて最沈殿させた後に濾過を行い、ろ物を更に洗浄液を用いて洗浄する方法が挙げられる。
前記洗浄液としては、水があげられ、洗浄性の観点から、ナトリウム、カリウムなどのアルカリイオンを含んでもよい。
電導度は、脱アシル化したセルロース(二次セルロースアシレート)の全質量に対して5倍の質量の水に分散することにより調製した水分散液を作製し、交流2電極法により測定する。分散液中の二次セルロースアシレートの質量は、第1アシル化工程に使用したセルロース量及び置換度から算出する。
前記電導度としては、50μS以下が好ましく、30μS以下がより好ましく、10μS以下が更に好ましい。
前記電導度の下限は特に限定されず、0.1μS以上であればよい。
前記電導度が50μS以下であれば、得られるセルロースアシレートを含む樹脂組成物を加熱して成形したときに生じる、樹脂成形体の着色の抑制に優れる。
【0039】
〔第1安定化工程〕
第1安定化工程においては、洗浄後の脱アシル化したセルロースに対して、下記式1を満たすように、カルシウム有機酸塩、マグネシウム有機酸塩及びナトリウム有機酸塩よりなる群から選ばれた、少なくとも1種の化合物(以下、「特定有機酸塩」ともいう。)を添加する。
式1:0.5≦([M1]/2)+[M2]≦5.0
M1:100質量部の洗浄後の脱アシル化したセルロースに対する前記ナトリウム有機酸塩に含まれるナトリウム質量分
M2:100質量部の洗浄後の脱アシル化したセルロースに対する前記カルシウム有機酸塩、及び、マグネシウム有機酸塩に含まれるカルシウム質量分とマグネシウム質量分の合計量
本実施形態の第1安定化工程によれば、洗浄後の脱アシル化したセルロースと硫酸エステルを形成して残留している硫酸が、特定有機酸塩に含まれるカルシウム、マグネシウム又はナトリウムと硫酸塩を形成することにより脱アシル化したセルロースから除去されるため、得られるセルロースアシレートを含む樹脂組成物を加熱して成形したときに生じる、硫酸によるセルロースアシレートの分解に由来する樹脂成形体の着色が抑制されると推測している。
また一方で、前記第1脱アシル化工程において塩酸を使用すること、及び、前記第1洗浄化工程を行うことにより、残留する硫酸量が減少するため、第1安定化工程において使用する特定有機酸塩の量を減少させられる。その結果、本実施形態の第1安定化工程によれば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン又はナトリウムイオンに由来する樹脂成形体の着色も抑制されると推測している。
【0040】
第1安定化工程においては、洗浄後の脱アシル化したセルロースに対して、式1を満たすように、特定有機酸塩を添加し、下記式2を満たすように、特定有機酸塩を添加することが好ましく、下記式3を満たすように、特定有機酸塩を添加することがより好ましい。
式2:0.7≦([M1]/2)+[M2]≦4.0
式3:0.8≦([M1]/2)+[M2]≦3.0
洗浄後の脱アシル化したセルロースに対して、式1を満たすように、特定有機酸塩を添加することにより、得られるセルロースアシレートを含む樹脂組成物を加熱して成形したときに生じる、樹脂成形体の着色の抑制に優れる。
【0041】
前記式1乃至式3に記載されたM1及びM2における、洗浄後の脱アシル化したセルロースの量は、第1アシル化工程に使用したセルロース量及び置換度から算出する。また、M1及びM2における、前記ナトリウム有機酸塩に含まれるナトリウム質量分、又は、カルシウム有機酸塩、及び、マグネシウム有機酸塩に含まれるカルシウム質量分とマグネシウム質量分は、使用する特定有機酸塩の量、及び、特定有機酸塩の分子量より算出される。
例えば、特定有機酸塩として、第1アシル化工程に使用したセルロース量が100質量部であり、第1脱アシル化工程後の置換度が2.4であり、酢酸カルシウム0.285質量部を使用した場合、([M1]/2)+[M2]は、下記のように求められる。
脱アシル化したセルロースの量 = 100×263/162≒162質量部
M1 = 0
M2 = 100/162×0.285×40/158≒0.044
([M1]/2)+[M2]=0.044
なお、上記計算には下記の値を使用した。
第1アシル化工程に使用したセルロースの構成単位分子量=162
第1脱アシル化工程後の置換度が2.4のセルロースアシレートの構成単位分子量=263
酢酸カルシウムの分子量=158
カルシウムの原子量=40
【0042】
−特定有機酸塩−
本実施形態において使用される特定有機酸塩は、アルキルカルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸等の直鎖状又は分岐鎖状で炭素数1以上6以下のアルキルカルボン酸)のカルシウム塩、マグネシウム塩、及び、ナトリウム塩が挙げられ、酢酸のカルシウム塩、マグネシウム塩、及び、ナトリウム塩が好ましく挙げられる。
また、特定有機酸塩におけるカルシウム塩、マグネシウム塩、及び、ナトリウム塩の中では、得られるセルロースアシレートを含む樹脂組成物を加熱して成形したときに生じる、樹脂成形体の着色を抑制する観点から、カルシウム塩、及び、マグネシウム塩が好ましく、カルシウム塩がより好ましい。
特定有機酸塩は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
−第1安定化工程の条件−
第1安定化工程は、洗浄後の脱アシル化したセルロースを溶媒に分散した分散液中に、特定有機酸塩を添加することにより行われることが好ましい。
前記溶媒としては、洗浄後の脱アシル化したセルロースを溶解せず、特定有機酸塩を溶解する溶媒であれば、特に制限されないが、水が好ましい。
前記分散液における、洗浄後の脱アシル化したセルロースの濃度は、分散液の全質量に対し、5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、7質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
なお、特定有機酸塩の添加は、特定有機酸塩及び溶媒を含む溶液(例えば特定有機酸塩の水溶液)に洗浄後の脱アシル化したセルロースを分散させることにより行ってもよいし、溶媒を含む溶液にセルロースを分散させた後、特定有機溶媒の水溶液を添加することにより行ってもよい。
第1安定化工程の好適な条件としては、例えば、次の通りである。
温度:例えば、10℃以上80℃以下(好ましくは15℃以上40℃以下)
時間:例えば、0.5時間以上10時間以下(好ましくは1時間以上5時間以下)である。
【0044】
〔その他の工程〕
前記第1安定化工程の後に、洗浄後の脱アシル化したセルロースを水等で洗浄する工程等を実施した後、乾燥して、目的とする粉末状のセルロースアシレートを得ることがよい。
【0045】
<第2実施形態>
第2実施形態に係るセルロースアシレートの製造方法は、例えば、硫酸の存在下で重合度が100以上350以下であるセルロースをアシル化するアシル化工程(以下、「第2アシル化工程」ともいう。)と、塩酸の存在下で前記アシル化したセルロースを脱アシル化する脱アシル化工程(以下、「第2脱アシル化工程」ともいう。)と、前記脱アシル化したセルロースの全質量に対して5倍の質量の水に分散することにより調製した水分散液の電導度が50μS以下となるまで、前記脱アシル化したセルロースを洗浄する洗浄工程(以下、「第2洗浄工程」ともいう。)と、前記洗浄後の脱アシル化したセルロースに対して、下記式1を満たすように、カルシウム有機酸塩、マグネシウム有機酸塩及びナトリウム有機酸塩よりなる群から選ばれた、少なくとも1種の化合物を添加する安定化工程(以下、「第2安定化工程」ともいう。)と、を有する。
式1:0.5≦([M1]/2)+[M2]≦5.0
M1:100質量部の洗浄後の脱アシル化したセルロースに対する前記ナトリウム有機酸塩に含まれるナトリウム質量分
M2:100質量部の洗浄後の脱アシル化したセルロースに対する前記カルシウム有機酸塩、及び、マグネシウム有機酸塩に含まれるカルシウム質量分とマグネシウム質量分の合計量
【0046】
〔第2アシル化工程〕
第2実施形態に係るセルロースアシレートの製造方法では、セルロースとして重合度が100以上350以下のセルロースをアシル化する以外は、第2アシル化工程を第1実施形態の第1アシル化工程と同様に実施する。
このため、第2実施形態に係るセルロースアシレートの製造方法でも、得られるセルロースアシレートを含む樹脂組成物を加熱して成形したときに生じる、樹脂成形体の着色が抑制される。
【0047】
なお、第2アシル化工程後、セルロースアシレートを含む溶液に水を加え、セルロースアシレートを析出、濾過した後、乾燥することにより、目的とする粉末状のセルロースアシレートが得られる。
【0048】
ここで、第2実施形態に係るセルロースアシレートの製造方法では、必要に応じて、第2アシル化工程前に、塩酸の存在下で、高分子量のセルロース、重合度が100以上350以下のセルロースを得る工程(以下「解重合工程」とも称する)を実施してもよい。
【0049】
〔解重合工程〕
解重合工程は、解重合により高分子量のセルロースを低分子量化し、目的とする分子量のセルロース(重合度が100以上350以下のセルロース)を得る工程である。
具体的には、解重合工程では、例えば、塩酸、溶媒(水、ギ酸、酢酸等の溶媒)を含む溶液に高分子量のセルロースを浸漬又は分散させた状態で、撹拌しながら、高分子量のセルロースを解重合する。なお、塩酸及び溶媒を含む溶液(例えば塩酸水溶液)にセルロースを浸漬又は分散させてもよいし、溶媒を含む溶液にセルロースを浸漬又は分散させた後、塩酸水溶液を添加してもよい。
【0050】
高分子量のセルロースは、例えば、重合度1,000以上1万以下のセルロースであり、第1実施形態の第1アシル化工程で説明したセルロースが挙げられる。
【0051】
解重合工程において、塩酸量は、分子量分布の広がり抑制の観点から、高分子量のセルロースに対する質量比で、10質量%以上200質量%以下が好ましく、30質量%以上150質量%以下がより好ましい。
【0052】
解重合工程の好適な条件としては、得たいセルロースの重合度に応じて選択されるが、例えば、次の通りである。
温度:例えば、18℃以上100℃以下(好ましくは20℃以上80℃以下)
時間:例えば、0.5時間以上30時間以下(好ましくは1時間以上25時間以下)である。
【0053】
解重合工程後、目的とする重合度のセルロースを含む溶液に、析出及び濾過して(必要に応じて、洗浄、乾燥等も実施して)得た、粉末状のセルロースを得る。
【0054】
(第2脱アシル化工程)
第2脱アシル化工程は、脱アシル化(加水分解又はケン化)により、第2アシル化工程でアシル化したセルロース(以下「一次セルロースアシレート」とも称する)の置換度を調整し、目的とする置換度のセルロースアシレート(以下「二次セルロースアシレート」とも称する)を得る工程である。
【0055】
具体的には、第2脱アシル化工程では、例えば、塩酸、及び脱アシル化溶媒を含む溶液に一次セルロースアシレートを溶解させた状態で、一次セルロースアシレートを脱アシル化する。なお、塩酸、及び溶媒を含む溶液に一次セルロースアシレートを溶解させてもよいし、溶媒に一次セルロースアシレートを溶解させた溶液に、塩酸水溶液を添加してもよい。
【0056】
ここで、一次セルロースアシレートは、第2アシル化工程を経た溶液(一次セルロースアシレート、アシル化触媒、アシル化剤、及びアシル化溶媒を含む溶液)から、一次セルロースアシレートを析出及び濾過して得た(必要に応じて、洗浄、乾燥等も実施して得た)、粉末状の一次セルロースアシレートを使用する。
【0057】
また、脱アシル化溶媒は、第2アシル化工程で使用するアシル化溶媒と同じ溶媒が挙げられる。つまり、脱アシル化溶媒は、アルキルカルボン酸、又はアルキルカルボン酸及び水の混合溶媒が挙げられる。
【0058】
第2脱アシル化工程において、塩酸量は、置換度の均質化の観点から、一次セルロースアシレート(第2アシル化工程でアシル化したセルロース)に対する質量比で、10質量%以上200質量%以下が好ましく、30質量%以上150質量%以下がより好ましい。
【0059】
第2脱アシル化工程の好適な条件としては、得たい二次セルロースアシレートの置換度に応じて選択されるが、例えば、次の通りである。
温度:例えば、18℃以上100℃以下(好ましくは20℃以上80℃以下)
時間:例えば、0.5時間以上30時間以下(好ましくは1時間以上25時間以下)である。
【0060】
なお、第2脱アシル化工程では、例えば、第2アシル化工程を経た溶液(一次セルロースアシレート、アシル化触媒、アシル化剤、及びアシル化溶媒を含む溶液)に、塩酸水溶液を加えて実施してもよい。
この場合、塩酸水溶液を加える前に、残存したアシル化剤を失活させるため、水、または、水とアシル化溶媒(アルキルカルボン酸)及び中和剤から選択された少なくとも一種とを含む混合液等の失活剤を溶液に加えることよい。
中和剤は、アルカリ金属化合物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機酸塩など)、アルカリ土類金属化合物(水酸化カルシウム等の水酸化物;炭酸カルシウム等の炭酸塩;酢酸カルシウム等の有機酸塩など)などの塩基が挙げられる。
【0061】
〔第2洗浄工程〕
第2洗浄工程は、第2脱アシル化工程において得られた二次セルロースアシレートを使用して、第1洗浄工程と同様に実施する。
【0062】
〔第2安定化工程〕
第2安定化工程は、第2洗浄工程において得られた洗浄後の二次セルロースアシレートを使用して、第1安定化工程と同様に実施する。
【0063】
〔その他の工程〕
前記第2安定化工程の後に、洗浄後の脱アシル化したセルロースを水等で洗浄する工程等を実施した後、乾燥して、目的とする粉末状のセルロースアシレートを得ることがよい。
【0064】
以上説明した本実施形態に係るセルロースアシレートの製造方法では、アシル化剤の種類に応じて、セルロースモノアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の種々のセルロースアシレートが得られる。
【0065】
(セルロースアシレート)
以下、本実施形態に係るセルロースアシレートの製造方法で製造されるセルロースアシレート(以下「本実施形態に係るセルロースアシレート」とも称する)の好適な特性について説明する。
【0066】
本実施形態に係るセルロースアシレートは、重合度が100以上350以下、であり、かつ、置換度が2.1以上2.6以下であるセルロースアシレート(特に、セルロースジアセテート)であることが好ましい。
重合度及び置換度が上記範囲内であれば、セルロースアシレートを含む樹脂組成物を加熱して成形したときに生じる、樹脂成形体の着色が抑制される。
ただし、本実施形態に係るセルロースアシレートの特性は、上記特性に限られず、セルロースアシレートの使用目的に応じて選択される。
【0067】
本実施形態に係るセルロースアシレートの重合度は、溶融温度の低減(成形性の向上)、得られる樹脂組成物の強度向上の観点から、100以上350以下が好ましく、100以上350以下が好ましく、150以上300以下がより好ましい。
【0068】
ここで、重合度は、以下の手順で重量平均分子量から求める。
まず、セルロースアシレートの重量平均分子量を、ジメチルアセトアミド/塩化リチウム=90/10溶液を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ装置(GPC装置:東ソー社製、HLC−8320GPC、カラム:TSKgelα−M)にてポリスチレン換算で測定する。
次いで、セルロースアシレートの構成単位分子量で割ることで、セルロースアシレートの重合度を求める。なお、例えば、セルロースアシレートの置換基がアセチル基の場合、構成単位分子量は、置換度が2.4のとき263、置換度が2.9のとき287となる
【0069】
本実施形態に係るセルロースアシレートの置換度は、溶融温度の低減(成形性の向上)、得られる樹脂組成物の強度向上の観点から、置換度が2.1以上2.6以下が好ましく、2.1以上2.5以下がより好ましい。
【0070】
ここで、置換度とは、セルロースが有する水酸基がアシル基により置換されている程度を示す指標である。つまり、置換度は、セルロースアシレートのアシル化の程度を示す指標となる。具体的には、置換度は、セルロースアシレートのD−グルコピラノース単位に3個ある水酸基がアシル基で置換された置換個数の分子内平均を意味する。
そして、置換度は、H
1−NMR(JMN−ECA/JEOL RESONANCE社製)にて、セルロース由来水素とアシル基由来ピークの積分比から測定する。
【0071】
本実施形態に係るセルロースアシレートの分子量分布は、透明性の向上、溶融温度の低減(成形性の向上)の観点から、1.5以上5以下が好ましく、2以上3.5以下がより好ましい。
【0072】
ここで、分子量分布は、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)である。
そして、重量平均分子量Mw、及び数平均分子量Mnは、ジメチルアセトアミド/塩化リチウム=90/10溶液を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ装置(GPC装置:東ソー社製、HLC−8320GPC、カラム:TSKgelα−M)にてポリスチレン換算により測定する。
【0073】
本実施形態に係るセルロースアシレートは、樹脂成形体形成用の樹脂、具体的には、射出成形用樹脂、押し出し成形用樹脂等に利用される。
【0074】
(樹脂組成物)
以下、本実施形態に係るセルロースアシレートを使用した樹脂組成物(以下「本実施形態に係る樹脂組成物」とも称する)について説明する。
【0075】
本実施形態に係る樹脂組成物は、本実施形態に係るセルロースアシレートを含む。
本実施形態に係るセルロースアシレートの含有量は、樹脂成形体の着色を抑制する観点から、樹脂組成物の全質量に対し、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましい。前記含有量の上限は特に限定されず、100質量%以下であればよい。
本実施形態に係る樹脂組成物は、必要に応じて、可塑剤、その他の成分等を含んでもよい。
【0076】
なお、可塑剤の含有量は、樹脂組成物全体に占めるセルロースアシレートの比率が前述の範囲となる量とすることが好ましい。より具体的には、樹脂組成物全体に占める可塑剤の比率は15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。可塑剤の比率が上記範囲であることにより、弾性率がより高くなり、耐熱性もより高くなる。また、可塑剤のブリード(可塑剤が析出する現象)も抑制される。
【0077】
<可塑剤>
可塑剤としては、例えば、アジピン酸エステル含有化合物、ポリエーテルエステル化合物、セバシン酸エステル化合物、グリコールエステル化合物、酢酸エステル、二塩基酸エステル化合物、リン酸エステル化合物、フタル酸エステル化合物、樟脳、クエン酸エステル、ステアリン酸エステル、金属石鹸、ポリオール、ポリアルキレンオキサイド等が挙げられる。
これらの中でも、アジピン酸エステル含有化合物、ポリエーテルエステル化合物が好ましく、アジピン酸エステル含有化合物がより好ましい。
【0078】
〔アジピン酸エステル含有化合物〕
アジピン酸エステル含有化合物(アジピン酸エステルを含む化合物)とは、アジピン酸エステル単独の化合物、又は、アジピン酸エステルとアジピン酸エステル以外の成分(アジピン酸エステルとは異なる化合物)との混合物であることを示す。但し、アジピン酸エステル含有化合物は、アジピン酸エステルを全成分に対して50質量%以上で含むことがよい。
【0079】
アジピン酸エステルとしては、例えば、アジピン酸ジエステル、アジピン酸ポリエステルが挙げられる。具体的には、下記一般式(AE−1)で示されるアジピン酸ジエステル、及び下記一般式(AE−2)で示されるアジピン酸ポリエステル等が挙げられる。
【0081】
一般式(AE−1)及び(AE−2)中、R
AE1及びR
AE2は、それぞれ独立に、アルキル基、又はポリオキシアルキル基[−(C
xH
2X−O)
y−R
A1](但し、R
A1はアルキル基を、xは1以上10以下の整数を、yは1以上10以下の整数を、表す。)を表す。
R
AE3は、アルキレン基を表す。
m1は、1以上20以下の整数を表す。
m2は、1以上10以下の整数を表す。
【0082】
一般式(AE−1)及び(AE−2)中、R
AE1及びR
AE2が表すアルキル基は、炭素数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上4以下のアルキル基がより好ましい。R
AE1及びR
AE2が表すアルキル基は、直鎖状、分岐状、又は、環状のいずれでもよいが、直鎖状、又は、分岐状が好ましい。
一般式(AE−1)及び(AE−2)中、R
AE1及びR
AE2が表すポリオキシアルキル基[−(C
xH
2X−O)
y−R
A1]において、R
A1が表すアルキル基は、炭素数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素数1以上4以下のアルキル基がより好ましい。R
A1が表すアルキル基は、直鎖状、分岐状、又は、環状のいずれでもよいが、直鎖状、又は、分岐状が好ましい。
【0083】
一般式(AE−2)中、R
AE3が表すアルキレン基は、炭素数1以上6以下のアルキレン基が好ましく、炭素数1以上4以下のアルキレン基がより好ましい。アルキレン基は、直鎖状、分岐状、又は、環状のいずれでもよいが、直鎖状、又は、分岐状が好ましい。
【0084】
一般式(AE−1)及び(AE−2)中、各符号が表す基は、置換基で置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基等が挙げられる。
【0085】
アジピン酸エステルの分子量(又は重量平均分子量)は、200以上5,000以下が好ましく、300以上2,000以下がより好ましい。なお、重量平均分子量は、前述のセルロースアシレートの重量平均分子量の測定方法に準拠して測定された値である。
【0086】
以下、アジピン酸エステル含有化合物の具体例を示すが、これに限られるわけではない。
【0088】
−ポリエーテルエステル化合物−
ポリエーテルエステル化合物として具体的には、例えば、一般式(EE)で表されるポリエーテルエステル化合物が挙げられる。
【0090】
一般式(EE)中、R
EE1、及びR
EE2は、それぞれ独立に、炭素数2以上10以下のアルキレン基を表す。A
EE1、及びA
EE2はそれぞれ独立に、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数6以上12以下のアリール基、又は炭素数7以上18以下のアラルキル基を表す。mは、1以上の整数を表す。
【0091】
一般式(EE)中、R
EE1が表すアルキレン基としては、炭素数3以上10以下のアルキレン基が好ましく、炭素数3以上6以下のアルキレン基がより好ましい。R
EE1が表すアルキレン基は、直鎖状、分岐状、又は、環状のいずれであってもよいが、直鎖状が好ましい。
R
EE1が表すアルキレン基の炭素数を3以上にすると、樹脂組成物の流動性の低下が抑制され、熱可塑性が発現しやすくなる。R
EE1が表すアルキレン基の炭素数を10以下又はR
EE1が表すアルキレン基を直鎖状にすると、セルロースアシレートとの親和性が高まりやすくなる。このため、R
EE1が表すアルキレン基を直鎖状とし、且つ炭素数を上記範囲とすると、樹脂組成物の成形性が向上する。
これら観点から、特に、R
EE1が表すアルキレン基は、n−ヘキシレン基(−(CH
2)
6−)が好ましい。つまり、ポリエーテルエステル化合物は、R
EE1としてn−ヘキシレン基(−(CH
2)
6−)を表す化合物であることが好ましい。
【0092】
一般式(EE)中、R
EE2が表すアルキレン基としては、炭素数3以上10以下のアルキレン基が好ましく、炭素数3以上6以下のアルキレン基がより好ましい。R
EE2が表すアルキレン基は、直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよいが、直鎖状が好ましい。
R
EE2が表すアルキレン基の炭素数を3以上にすると、樹脂組成物の流動性の低下が抑制され、熱可塑性が発現しやすくなる。R
EE2が表すアルキレン基の炭素数を10以下又はR
EE2が表すアルキレン基を直鎖状にすると、セルロースアシレートとの親和性が高まりやすくなる。このため、R
EE2が表すアルキレン基を直鎖状とし、且つ炭素数を上記範囲とすると、樹脂組成物の成形性が向上する。
これら観点から、特に、R
EE2が表すアルキレン基は、n−ブチレン基(−(CH
2)
4−)が好ましい。つまり、ポリエーテルエステル化合物は、R
EE2としてn−ブチレン基(−(CH
2)
4−)を表す化合物であることが好ましい。
【0093】
一般式(EE)中、A
EE1、及びA
EE2が表すアルキル基は、炭素数1以上6以下のアルキル基であり、炭素数2以上4以下のアルキル基がより好ましい。A
EE1、及びA
EE2が表すアルキル基は、直鎖状、分岐状、及び環式のいずれであってもよいが、分岐状が好ましい。
A
EE1、及びA
EE2が表すアリール基は、炭素数6以上12以下のアリール基であり、フェニル基、ナフチル基等の無置換アリール基、又はt−ブチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基等の置換フェニル基が挙げられる。
A
EE1、及びA
EE2が表すアラルキル基としては、−R
A−Phで示される基である。R
Aは、直鎖状又は分岐状の炭素数1以上6以下(好ましくは炭素数2以上4以下)のアルキレン基を表す。Phは、無置換フェニル基、又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1以上6以下(好ましくは炭素数2以上6以下)のアルキル基で置換された置換フェニル基を表す。アラルキル基として具体的には、例えば、ベンジル基、フェニルメチル基(フェネチル基)、フェニルプロピル基、フェニルブチル基等の無置換アラルキル基、又はメチルベンジル基、ジメチルベンジル基、メチルフェネチル基等の置換アラルキル基が挙げられる。
【0094】
A
EE1、及びA
EE2の少なくとも一方は、アリール基又はアラルキル基を表すことが好ましい。つまり、ポリエーテルエステル化合物は、A
EE1、及びA
EE2の少なくとも一方としてアリール基(好ましくはフェニル基)又はアラルキル基を表す化合物であることが好ましく、A
EE1、及びA
EE2の双方としてアリール基(好ましくはフェニル基)又はアラルキル基を表す化合物であることが好ましい。
【0095】
次に、ポリエーテルエステル化合物の特性について説明する。
【0096】
ポリエーテルエステル化合物の重量平均分子量(Mw)は、450以上650以下が好ましく、500以上600以下がより好ましい。
重量平均分子量(Mw)を450以上にすると、ブリード(析出する現象)し難くなる。重量平均分子量(Mw)を650以下にすると、セルロースアシレートとの親和性が高まりやすくなる。このため、重量平均分子量(Mw)を上記範囲にすると、樹脂組成物の成形性が向上する。
なお、ポリエーテルエステル化合物の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定される値である。具体的には、GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー社製、HPLC1100を用い、東ソー製カラム・TSKgel GMHHR−M+TSKgel GMHHR−M(7.8mmI.D.30cm)を使用し、クロロホルム溶媒で行う。そして、重量平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0097】
ポリエーテルエステル化合物の25℃における粘度は、35mPa・s以上50mPa・s以下が好ましく、40mPa・s以上45mPa・s以下がより好ましい。
粘度を35mPa・s以上にすると、セルロースアシレートへの分散性が向上しやすくなる。粘度を50mPa・s以下にすると、ポリエーテルエステル化合物の分散の異方性が出現し難くなる。このため、粘度を上記範囲にすると、樹脂組成物の成形性が向上する。
なお、粘度は、E型粘度計により測定される値である。
【0098】
ポリエーテルエステル化合物の溶解度パラメータ(SP値)が、9.5以上9.9以下が好ましく、9.6以上9.8以下がより好ましい。
溶解度パラメータ(SP値)を9.5以上9.9以下にすると、セルロースアシレートへの分散性が向上しやすくなる。
溶解度パラメータ(SP値)は、Fedorの方法により算出された値である、具体的には、溶解度パラメータ(SP値)は、例えば、Polym.Eng.Sci.,vol.14,p.147(1974)の記載に準拠し、下記式によりSP値を算出する。
式:SP値=√(Ev/v)=√(ΣΔei/ΣΔvi)
(式中、Ev:蒸発エネルギー(cal/mol)、v:モル体積(cm
3/mol)、Δei:それぞれの原子又は原子団の蒸発エネルギー、Δvi:それぞれの原子又は原子団のモル体積)
なお、溶解度パラメータ(SP値)は、単位として(cal/cm
3)
1/2を採用するが、慣行に従い単位を省略し、無次元で表記する。
【0099】
以下、ポリエーテルエステル化合物の具体例を示すが、これに限られるわけではない。
【0101】
〔その他の成分〕
その他の成分としては、例えば、難燃剤、相溶化剤、酸化防止剤、離型剤、耐光剤、耐候剤、着色剤、顔料、改質剤、ドリップ防止剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、充填剤、補強剤(ガラス繊維、炭素繊維、タルク、クレー、マイカ、ガラスフレーク、ミルドガラス、ガラスビーズ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド等)などが挙げられる。これらの成分の含有量は、樹脂組成物全体に対してそれぞれ、0質量%以上5質量%以下であることが好ましい。ここで、「0質量%」とはその他の成分を含まないことを意味する。
【0102】
〔他の樹脂〕
本実施形態に係る樹脂組成物は、上記セルロースアシレート以外の他の樹脂を含有していてもよい。但し、他の樹脂は、樹脂組成物全体に占めるセルロースアシレートの比率が前述の範囲となる量とすることが好ましい。
他の樹脂としては、例えば、従来公知の熱可塑性樹脂が挙げられ、具体的には、ポリカーボネート樹脂;ポリプロピレン樹脂;ポリエステル樹脂;ポリオレフィン樹脂;ポリエステルカーボネート樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリアリーレン樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリビニルアセタール樹脂;ポリケトン樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリアリールケトン樹脂;ポリエーテルニトリル樹脂;液晶樹脂;ポリベンズイミダゾール樹脂;ポリパラバン酸樹脂;芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、及びシアン化ビニル化合物よりなる群から選ばれる1種以上のビニル単量体を、重合若しくは共重合させて得られるビニル系重合体若しくは共重合体樹脂;ジエン−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂;シアン化ビニル−ジエン−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂;芳香族アルケニル化合物−ジエン−シアン化ビニル−N−フェニルマレイミド共重合体樹脂;シアン化ビニル−(エチレン−ジエン−プロピレン(EPDM))−芳香族アルケニル化合物共重合体樹脂;塩化ビニル樹脂;塩素化塩化ビニル樹脂;などが挙げられる。これら樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0103】
〔樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、セルロースアシレートと、必要に応じて、可塑剤、その他の成分等と、を少なくとも含む混合物を溶融混練することにより製造される。ほかに、本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、上記成分を溶剤に溶解することによっても製造される。
溶融混練の手段としては公知の手段が挙げられ、具体的には例えば、二軸押出機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、コニーダ等が挙げられる。
なお、混練の際の温度は、使用するセルロースアシレートの溶融温度に応じて決定すればよいが、熱分解と流動性の点から、例えば、140℃以上240℃以下が好ましく、160℃以上200℃以下がより好ましい。
【0104】
(樹脂成形体)
以下、本実施形態に係る樹脂組成物を使用した樹脂成形体(以下「本実施形態に係る樹脂成形体」とも称する)について説明する。
【0105】
本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を含む。つまり、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物と同じ組成で構成されている。
具体的には、本実施形態に係る樹脂成形体は、本実施形態に係る樹脂組成物を成形して得られる。成形方法は、例えば、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、熱プレス成形、カレンダ成形、コーティング成形、キャスト成形、ディッピング成形、真空成形、トランスファ成形などを適用してよい。
【0106】
本実施形態に係る樹脂成形体の成形方法は、形状の自由度が高い点で、射出成形が好ましい。射出成形については、樹脂組成物を加熱溶融し、金型に流し込み、固化させることで成形体が得られる。射出圧縮成形によって成形してもよい。
射出成形のシリンダ温度は、例えば140℃以上240℃以下であり、好ましくは150℃以上220℃以下であり、より好ましくは160℃以上200℃以下である。射出成形の金型温度は、例えば30℃以上120℃以下であり、40℃以上80℃以下がより好ましい。射出成形は、例えば、日精樹脂工業製NEX500、日精樹脂工業製NEX150、日精樹脂工業製NEX70000、東芝機械製SE50D等の市販の装置を用いて行ってもよい。
【0107】
本実施形態に係る樹脂成形体は、電子機器、電気機器、事務機器、家電製品、自動車内装材、エンジンカバー、車体、容器などの用途に好適に用いられる。より具体的には、電子・電気機器や家電製品の筐体;電子機器、電気機器や家電製品の各種部品;自動車の内装部品;CD−ROMやDVD等の収納ケース;食器;飲料ボトル;食品トレイ;ラップ材;フィルム;シート;などである。
【実施例】
【0108】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特に断りのない限り「部」は「質量部」を表す。
【0109】
(セルロースアシレートの合成)
<セルロースアセテート(CA1)の合成>
〔アシル化工程〕
セルロース粉末(日本製紙ケミカル社製、KCフロックW50、重合度=1020)3kg、濃硫酸156g(硫酸量=150g)、酢酸30kg、無水酢酸6kgを50L反応容器に入れ、20℃で4時間攪拌した。これにより、セルローストリアセテートを生成した。
【0110】
〔脱アシル化工程〕
得られたセルローストリアセテートを含む溶液に、攪拌終了後ただちに3kgの酢酸と1.2Lの純水を加え、20℃で30分間攪拌後、0.2M塩酸水溶液20L(塩酸量=0.3kg)を加え、75℃に加熱して、5時間攪拌した。これにより、セルローストリアセテートの脱アシル化と共に解重合を進行させた。
次に、攪拌後の溶液を、200Lの純水に2時間かけて滴下し、20時間静置した後、孔径6μmのフィルターを通してろ過し、4kgの白色粉末(セルロースジアセテート)を得た。
【0111】
〔洗浄工程〕
得られた白色粉末(セルロースジアセテート)を、フィルタープレス(栗田機械社製、SF(PP))を用い、純水にて電導度が50μS以下になるまで洗浄後、乾燥した。
【0112】
〔安定化工程〕
乾燥後の白色粉末3kgに200gの酢酸カルシウムと30Lの純水を加え、25℃で2時間撹拌した後、濾過し、得られた粉末を60℃で72時間乾燥し、セルロースアセテート(CA1)を2.5kg得た。
【0113】
<セルロースアセテート(CA2)の合成>
アシル化工程に用いる硫酸量150gを290gとした以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースアセテート(CA2)を得た。
【0114】
<セルロースアセテートCA3の合成>
アシル化工程に用いる硫酸量150gを70gとした以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースアセテート(CA3)を得た。
【0115】
<セルロースアセテートCA4の合成>
脱アシル化工程において5時間撹拌したところを7時間に変えた以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースアセテート(CA4)を得た。
【0116】
<セルロースアセテートCA5の合成>
脱アシル化工程において5時間撹拌したところを4時間30分に変えた以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースアセテート(CA5)を得た。
【0117】
<セルロースアセテートCA6の合成>
アシル化工程で得られた溶液を室温で10時間放置した後、脱アシル化工程を行った以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースアセテート(CA6)を得た。
【0118】
<セルロースアセテートCA7の合成>
脱アシル化工程において75℃で5時間撹拌するところを、65℃で7時間撹拌した以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースアセテート(CA7)を得た。
【0119】
<セルロースアセテートCA8の合成>
脱アシル化工程において75℃で5時間撹拌するところを、80℃で4時間撹拌した以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースアセテート(CA8)を得た。
【0120】
<セルロースプロピオネートCP1の合成>
アシル化工程に無水酢酸6kgを用いたところを、無水プロピオン酸12.5kg用いた以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースプロピオネート(CP1)を得た。
【0121】
<セルロースアセテートCA9の合成>
安定化工程において、200gの酢酸カルシウムの代わりに、200gの酢酸マグネシウムを使用した以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースアセテート(CA9)を得た。
【0122】
<セルロースアセテートCA10の合成>
安定化工程において、200gの酢酸カルシウムの代わりに、400gの酢酸ナトリウムを使用した以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースアセテート(CA10)を得た。
【0123】
<セルロースアセテートCA11の合成>
安定化工程において、200gの酢酸カルシウムの代わりに、600gの酢酸カルシウムを使用した以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースアセテート(CA11)を得た。
【0124】
<セルロースアセテートCA12の合成>
安定化工程において、200gの酢酸カルシウムの代わりに、40gの酢酸カルシウムを使用した以外は、セルロースアセテート(CA1)と同様にして、セルロースアセテート(CA12)を得た。
【0125】
<セルロースアシレートの物性>
安定化工程における特定有機酸塩の種類、及び、前記式1に記載の[M1]/2+[M2]の値、並びに、得られた各セルロースアシレートの物性(置換基、重合度、置換度)について、既述の方法に従って測定又は算出した。その結果を表3に示す。
【0126】
(アジピン酸エステル含有化合物の準備)
市販のアジピン酸エステル含有化合物(大八化学工業(株)製、Daifatty101)を化合物AE1として準備した。
【0127】
(実施例、比較例)
表4に示す仕込み組成比で、シリンダ温度を調整し、2軸混練装置(東芝機械社製、TEX41SS)にて混練を実施し、樹脂組成物(ペレット)を得た。
得られたペレットについて、射出成形機(日精樹脂工業社製、NEX140III)を用い、射出ピーク圧力が180MPaを越えないシリンダ温度で、D1及びD2試験片(測定部寸法:幅60×60mm/厚さ1mmのD1試験片及び幅60×60mm/厚さ2mmのD2試験片)を成形した。シリンダ温度については表4に示した。
なお、アジピン酸エステル含有化合物を含有しない樹脂組成物を使用した実施例又は比較例については、表4中のアジピン酸エステル含有化合物の欄に「−」と記載した。
【0128】
(射出成形後の着色評価)
得られたD1及びD2試験片の全光線透過率(%)を分光ヘイズメーター(日本電色工業社製、SH7000)にて測定し、着色を定量評価した。結果を表4に示す。
【0129】
以下、実施例及び比較例の詳細について、表3及び表4に一覧にして示す。
【0130】
【表3】
【0131】
【表4】
【0132】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、加熱して射出成形を行っても、試験片の全光線透過率が高く、着色が抑制されていることがわかる。
【課題】安定化工程において添加される特定の有機酸塩の添加量より算出された式1中の(([M1]/2)+[M2])の値が0.5未満であるか、5.0を超える場合に比べ、得られるセルロースアシレートを含む樹脂組成物を加熱して成形したときに生じる、樹脂成形体の着色が抑制されたセルロースアシレートの製造方法を提供すること。
【解決手段】硫酸の存在下でセルロースをアシル化するアシル化工程と、塩酸の存在下で前記アシル化したセルロースを脱アシル化する脱アシル化工程と、前記脱アシル化したセルロースを、特定の水分散液の電導度が50μS以下となるまで洗浄する洗浄工程と、前記洗浄後の脱アシル化したセルロースに対して、式1を満たすように、特定の有機酸塩を添加する安定化工程と、を有するセルロースアシレートの製造方法。式1:0.5≦([M1]/2)+[M2]≦5.0